【実施例】
【0019】
図1は、本発明を採用したシート後処理装置Bと、このシート後処理装置Bとともに用いられる画像形成装置Aからなる画像形成システムの全体構成を示している。
図1の画像形成システムは、画像形成装置Aとシート後処理装置Bから構成されている。特に、
図2〜
図13は、
図1において画像形成装置Aとともに用いられるシート後処理装置Bの要部の構成および動作をより詳細に示している。
【0020】
図1に示すように、本実施例の画像形成システムは、画像形成装置A、およびシート後処理装置(以下、処理装置との略称も用いる)Bから構成されている。本実施例の画像形成システムは、給排紙路が画像形成装置Aの排紙口3と処理装置Bの搬入口23aの部位で連結された構成となっている。
図1、
図2の画像形成システムにおいて、画像形成装置Aで画像形成されたシートは、処理装置Bでステイプル綴じしてスタックトレイ21およびサドルトレイ22に排紙、収納される。
【0021】
図1の画像形成装置Aは、概略、以下のように構成されている。給排紙に関し、
図1の画像形成装置Aは、給紙部1からシートを画像形成部2に送り、画像形成部2でシートに画像を形成した後、排紙口3からシートを排出するよう構成されている。給紙部1は複数のサイズや給紙の向きの異なるシート(普通紙など)を収納する給紙カセット1a、1bから成り、ユーザ操作などにより指定されたシートを1枚ずつ分離して搬送路1cを介して画像形成部2に給送する。搬送路1cは給紙ガイド、不図示のモータなどにより駆動される搬送ローラなどから成る公知の構成であり、その途中には手差し供給路1dなどが必要に応じて配置される。
【0022】
図1では、画像形成部2として電子写真方式のものを例示してある。ただし、画像形成装置Aの画像形成方式は本発明の必須要件を構成しないため、画像形成部2の画像形成方式は例えばインクジェット方式など他の方式であっても構わない。
図1の画像形成部2は静電ドラム4を有し、静電ドラム4上には記録ヘッドとしてのレーザ発光器5によって静電潜像が形成される。レーザ発光器5の記録画像信号により変調された光はミラーなどを含む光学系5aを介して静電ドラム4に照射される。
【0023】
静電ドラム4の周囲には、現像器6、転写チャージャ7、定着器8が配置される。静電ドラム4上に形成された静電潜像は現像器6でトナー現像され、このトナー像は転写チャージャ7でシート上に転写され、定着器8で加熱定着される。
【0024】
画像形成されたシートは排紙口3から順次搬出される。定着器8の下流には、循環経路9、スイッチバック経路10が設けられる。これらの搬送路は、例えば定着器8から表面側に印刷したシートは、循環経路9を介してスイッチバック経路10に送られ、スイッチバック経路10で表裏反転した後、再び画像形成部2に給送するよう用いられる。これら循環経路9およびスイッチバック経路10は、例えばシートの裏面側に印刷する両面印刷を行う場合などに用いられる。両面印刷されたシートは、スイッチバック経路10で表裏反転された後、排紙口3から搬出される。
【0025】
図1の画像形成装置Aは上部に原稿画像を読み取るための画像読取装置11を有している。画像読取装置11は、プラテン12上にセットした原稿シートをスキャンユニット13で走査し、スキャンユニット13の光電変換素子(不図示)で電気的に読み取るよう構成されている。この画像データは画像処理部で例えばデジタル処理された後、データ記憶部14に転送され、記憶される。
【0026】
データ記憶部14に記憶した読取画像データを画像形成する動作(コピー動作)において、読取画像データは記録可能な画像信号に変換され、記録ヘッドを構成するレーザ発光器5に送信される。画像読取装置11上部に配置された原稿送り装置15は、たとえば自動原稿搬送装置(フィーダ装置)として構成されるもので、画像読取のためスタックトレイ16に載置された原稿シートをプラテン12に給送する。プラテン12は、ガラスなどの透明材料から構成され、スキャンユニット13の走査範囲に渡って配置される。
【0027】
上記のように構成された画像形成装置Aには、ユーザーインターフェース手段としてコントロールパネル18が設けられる。ユーザは、コントロールパネル18の操作を介して、所望の画像形成条件、例えばシートサイズ指定、カラー・モノクロ印刷指定、プリント部数指定、片面・両面印刷指定、拡大・縮小印刷指定などの印刷条件を設定することができる。コントロールパネル18には、LCD(液晶表示器)およびキーボードなどのユーザーインターフェース手段が配置される。
【0028】
また、画像形成装置Aには、上述のスキャンユニット13で読み取った画像データ(あるいは外部のネットワークから転送された画像データなど)を蓄積するデータ貯蔵部17が設けられている。データ貯蔵部17は例えばSSDやHDDなどの外部記憶装置から構成することができる。画像形成時、画像データはデータ貯蔵部17からバッファメモリ19に転送され、バッファメモリ19から順次、レーザ発光器5にデータ信号が移送される。
【0029】
コントロールパネル18からは、上述の片面/両面印刷、拡大/縮小印刷、モノクロ/カラー印刷などの画像形成条件と同時に、処理装置Bに行わせるシート後処理条件も入力指定することができる。このシート後処理条件としては、例えば「プリントアウトモード」、「オフセットモード」、「綴じ仕上げモード」、「冊子仕上げモード」などを選択することができる。上述のステイプラによる綴じ処理は「綴じ仕上げモード」や「冊子仕上げモード」で用いられる。
【0030】
処理装置Bは、次のような後処理を行うことができる。
【0031】
(1)画像形成装置Aの排紙口3から画像形成されたシートを受け取り、このシートをスタックトレイ21に収容する。
【0032】
(2)画像形成装置Aの排紙口3から画像形成されたシートを受け取り、束状に部揃えしてステイプル綴じした後、スタックトレイ21に収納する。
【0033】
(3)画像形成装置Aの排紙口3から画像形成されたシートを受け取り、束状に部揃えしてその中央をステイプル綴じした後、冊子状に折り畳んでサドルトレイ22に収納する。
【0034】
上記のようなシート後処理を行うため、処理装置Bは、以下のように構成されている。処理装置Bのケーシング20(筐体)には搬入口23aが設けられている。この搬入口23aは画像形成装置Aの排紙口3に対向して配置される。
【0035】
処理装置Bのケーシング20内には搬入口23aからのシートを部揃え集積して綴じ仕上げする第1処理部BX1と、搬入口23aからのシートを部揃え集積して冊子仕上げする第2処理部BX2が設けられている。
【0036】
第1処理部BX1と搬入口23aとの間には第1搬入経路P1が、また第2処理部BX2と搬入口23aとの間には第2搬入経路P2がそれぞれ設けられている。搬入口23aから搬入されたシートは、第1処理部BX1と第2処理部BX2に振り分けて案内される。このために、搬入口23aに面して配置された搬入ローラ23の下流にはシートセンサS1と第1または第2搬入経路P1、P2にシートを振り分ける経路切換手段24(フラッパ部材)が設けられている。
【0037】
第1搬入経路P1にはパンチユニット50と、バッファ経路P3が設けられている。パンチユニット50は例えば丸穴をシート束に穿孔する機構から構成され、バインダー綴じ用の丸穴をシート束に穿孔するなどの目的で用いられる。
【0038】
バッファ経路P3は処理トレイ29に向かう経路の途中に設けられている。このバッファ経路P3は、処理トレイ29上に部揃え集積したシート束にステイプル綴じ等の後処理を施す際、後処理動作中にシート搬入口23aに送られた後続シートを一時的に滞留させるためのものである。すなわち、第1搬入経路P1には処理トレイ29に至る経路上流側に
図1に示すようにケーシング20の鉛直方向にバッファ経路P3が分岐して配置され、第1搬入経路P1からのシートをスイッチバックさせて滞留させるようになっている(
図1、
図2)。このような構成により、処理トレイ29に部揃え集積したシート束に後処理(後述の端綴じ処理)を施す際に、搬入口に送られる後続シートを一時的にバッファ経路P3に滞留させることができる。バッファ経路P3に滞留させた後続シートは、処理トレイ29の処理シートが搬出された後、バッファ経路P3から処理トレイ29に移送することができる。
【0039】
第1搬入経路P1は、ケーシング20で構成される装置ハウジングの上部にほぼ水平方向に配置され、この第1搬入経路P1の下流側に第1処理部BX1が配置され、第1処理部BX1の下流側にスタックトレイ21が配置されている。また、第2搬入経路P2はケーシング20の下部にほぼ鉛直方向に配置され、この第2搬入経路P2の下流側に第2処理部BX2が配置され、第2処理部BX2の下流側にサドルトレイ22が配置されている。第1搬入経路P1の搬入口23aと第1処理部BX1の間には上述のパンチユニット50とシフトローラユニット110が配置され、第2搬入経路P2の第2処理部BX2とサドルトレイ22の間には後述のトリマユニット91が配置されている。
【0040】
さらに、第1搬入経路P1の出口側には、
図2、
図3に示すように排紙ローラ25と排紙口25xが設けられている。また、排紙口25xの近傍(上流側)には第1搬入経路P1を通過するシートを検出する排紙センサS2が配置されている。この排紙センサS2によって、ジャム検出やシートの通過枚数のカウントなどが可能となる。また、排紙口25xの下流側には段差を成して処理トレイ29が配置されている。一方、第2搬入経路P2には搬送ローラ27が設けられ(
図2)、搬送ローラ27の下流側には段差を形成して集積ガイド45が配置されている。
【0041】
第1処理部BX1には、第1搬入経路P1に配置された処理トレイ29、この処理トレイ29に対向して配置された端綴じステイプルユニット31、およびスリップローラ51が設けられる。端綴じステイプルユニット31は後述する機構(
図6)によって、ほぼシートの幅方向に渡り、移動できるよう構成されており、このため、
図1〜
図3では端綴じステイプルユニット31の位置を破線によって示してある。
【0042】
図2、
図3に示すように、処理トレイ29は合成樹脂プレートなどで形成され、シートを積載支持するシート支持面29aを備えている。
図4は処理トレイ29の構造を斜視図の様式で示している。
【0043】
シート支持面29aは排紙口25xの下流側に段差を形成して配置され(
図4)、排紙口25xからのシートを積載収納するようになっている。シート支持面29aは、シートの排紙方向長さより短い長さ寸法に形成され、排紙口25xからのシートの後端部を支持し、シート先端部はスタックトレイ21の最上シートの上に支持される(いわゆるブリッジ支持)するようになっている。
【0044】
処理トレイ29には、シート端規制手段32が設けられ、このシート端規制手段32には排紙口25xから供給されるシート後端(または先端であっても良い)を突き当てて整列させることができる。処理トレイ29の上方にはトレイ上に搬入したシートをシート端規制手段32に向かって移送するスイッチバックローラ26と、スリップローラ51と、サイド整合手段34が配置されている。後述のスイッチバックローラ26は、可動ローラ26a、固定ローラ26bから構成されている(
図2、
図3)。
【0045】
ここで第2処理部BX2の構成について説明しておく。第2処理部BX2は、第2搬入経路P2に配置された集積ガイド45と、この集積ガイド45に配置された中綴じステイプルユニット40と、折りローラ46と突き板47で構成されている(
図2)。
【0046】
集積ガイド45は、前述の第2搬入経路P2の下流側に連続して配置され、搬入口23aから給送されたシートを立位姿勢で順次上方に積載収納するよう構成されている。集積ガイド45は、ケーシング20を縦断するようにほぼ鉛直方向に配置され、シートを立位姿勢で集積するように構成されている。また、集積ガイド45は中央で屈曲したガイドプレートで構成され、この集積ガイド45は内部に最大サイズシートを収納する長さ形状に形成されている。すなわち、集積ガイド45は中綴じステイプルユニット40を配置する側に突出するように湾曲または屈曲した形状に構成されている。また、集積ガイド45にはシート先端を規制する先端ストッパ43が設けられ、この先端ストッパ43はシートサイズ(排紙方向の長さ)に応じて移動するよう構成されている。
【0047】
搬送ローラ27と先端ストッパ43で搬送方向の位置決めされたシートはサイド整合板70によって、幅方向の位置決めが行われる。
【0048】
サイド整合板70は集積ガイド45の手前側、奥側に対で配置されており、サイド整合手段34と同様に同一量移動することでセンター基準で整合を行う。
【0049】
シートは、サイド整合板70によって整合された後、中綴じステイプルユニット40で綴じ処理を行った後、突き板47でシート中心を押し折りローラ46でシート束を折ってトリマユニット91へと搬送される。
【0050】
トリマユニット91ではユーザの選択によって、シート束の下流端面(小口側端部)をトリム処理する。そして、シート束は、束搬送路90を通過しサドルトレイ22へと積載される。
【0051】
以下、処理装置Bの各部について、さらに詳細に説明する。
【0052】
再び第1処理部BX1に関連して、処理トレイ29の図面右方の端部には、
図2、
図3、
図4に示すように処理トレイ29に搬入されたシートの先後端の一端縁を位置決めするシート端規制手段32が配置されている。シート端規制手段32は、
図4に示すようにシートの後端縁を突き当て規制するシート端面規制面32aと、最上シートの上紙面を位置規制するシート上面規制面32bを有するストッパ部材で構成されている。このシート端規制手段32は処理トレイ29の後端縁(
図2〜
図4の右方の端縁)に配置される。
【0053】
シート端規制手段32は、スイッチバックローラ26とスリップローラ51で移送されるシートの後端縁を突き当て規制し、予め設定されている端綴じステイプルユニット31による後処理位置(綴じ位置;以下同様)にシートを位置決めする。このときシート上面規制面32bは先端がカールしたシートの反り返り面を規制し、シート端面規制面32aでシート端縁を位置規制する。
【0054】
図4に示すように、シート端面規制面32aとシート上面規制面32bは樹脂や、金属板などから一体形成されたストッパ部材で構成されているが、この両規制面は個別の部材で形成することも可能である。図示のシート端規制手段32は、シート幅方向のセンターに固定ストッパ部材32Aが、シート幅方向の左右端部に第1,第2可動ストッパ部材32B、32Cが、それぞれ所定間隔で配置され、これ等の複数のストッパ部材で構成されている。なお、固定ストッパ部材32Aには、
図4に一部拡大して示すようにシート先端のカールを矯正するためのストッパ部材に取付けられた矯正部材32sが設けられている。矯正部材32sは、ほぼコの字型に形成されシート端面規制面32a〜シート上面規制面32bの間でシート先端のカールを矯正するよう作用する。矯正部材32sは第1,第2可動ストッパ部材32B、32Cにも同様に設けられる。
【0055】
また、シート幅方向の左右端部に位置する第1および第2可動ストッパ部材32B、32Cはシートサイズに応じて位置を移動できるようになっている(
図4)。このため、処理トレイ29の底面壁には右スライド部材38aと左スライド部材38bがシート幅方向に移動可能に嵌合支持されている。そしてこの左右のスライド部材38a、38bに第1可動ストッパ部材32Bと第2可動ストッパ部材32Cがそれぞれ固定されている。この左右のスライド部材38a、38bは後述するようにシートサイドを整合する整合板34L、34Rに連動するようにそれぞれ連結されている。
【0056】
上述のように構成されたシート端規制手段32は、少なくともシート上面規制面32bがシート積載方向に上下動可能に構成されている。これはシート束搬出手段100で処理トレイ29上のシート束をトレイから搬出する際に、このシート束搬出手段100でトレイ上のシート束を上方に持ち上げる必要が生じることがあるためである。シート上面規制面32bは、このシート束の上方移動に追従して上方に移動できるよう構成される。
【0057】
このため、
図4に示すように、固定ストッパ部材32Aは処理トレイ29の底壁に揺動可能に軸支持され、付勢バネ33で図示下方に付勢支持されている。また、第1,第2可動ストッパ部材32B、32Cは、上記左右のスライド部材38a、38bにそれぞれ弾性変形可能に構成された部位(32α)をネジ止めすることにより取付けられる。
【0058】
上述のように、処理トレイ29には、排紙口25xから搬入されたシートをシート端規制手段32に案内するシート移送手段としてスイッチバックローラ26が配置されている。上述のように、スイッチバックローラ26は可動ローラ26a、固定ローラ26bから構成される他、ベルトなどの摩擦回転体で構成される場合もある。スイッチバックローラ26は、排紙口25xから処理トレイ29に搬出されたシートをシート端規制手段32に移送するために用いられる。
【0059】
処理トレイ29上には上述のスイッチバックローラ26と共にシートをシート端規制手段32に移送するスリップローラ51が備えられている。スリップローラ51は摩擦回転体52を有しており、摩擦回転体52は、
図5に示すように排紙口25xの下方に配置され、処理トレイ29に搬入されたシートの後端を掻き込んでシート端規制手段32に向けて移送する。また、スイッチバックローラ26は、不図示の駆動手段によって、処理トレイ29に対して当接、退避するよう駆動される。以上のスイッチバックローラ26とスリップローラ51により、シートの搬送方向を決定することができる。
【0060】
処理トレイ29に配置されたサイド整合手段34は、排紙口25xから処理トレイ29に搬入されたシートのサイド整合(幅寄せ整合)を行う。サイド整合手段34は、処理トレイ29に搬入されたシートのセンターを基準に位置合わせするセンター基準と、シート幅方向の左右一側縁を基準に位置合わせするサイド基準のいずれかによってシートのサイド整合(幅寄せ整合)を行う(
図4)。
【0061】
サイド整合手段34は、例えば
図4に示すように処理トレイ29上のシートの左側縁と係合する左整合板34Lと、シートの右側縁と係合する右整合板34Rとで構成される。この左右の整合板34L、34Rはそれぞれ処理トレイのシート支持面29aに形成されているガイド溝に嵌合支持され、シート幅方向に位置移動することができる。また、処理トレイ29の底部には、左整合板34L、および右整合板34Rを移動させる不図示の整合板移動手段が設けられ、左右の両整合板をシート幅方向左右に位置移動することができる。これら左整合板34L、および右整合板34Rを移動させることによりシートをセンター基準に整合、若しくは所定量オフセットしサイド基準に整合することができる。これにより、整合されたシート束をコーナ綴じなどの処理を行う場合のシートの幅方向の位置が決定される。
【0062】
シートの搬送方向、および幅方向が位置決めされた後、ユーザの選択したモードによって、綴じ手段、すなわち端綴じステイプルユニット31によって端綴じ処理が行われる。その後、シート束搬出手段100によって、端綴じされたシート束はスタックトレイ21に積載されるか、あるいは綴じ処理を行わずスタックトレイ21に積載されるよう搬出される。
【0063】
ここで端綴じステイプルユニット31の構成例につき説明する。この種の装置において用いられる、端綴じ(ステイプル)方式には、金属針で綴じる方式、シート束のシートを一部切って変形させ、絡ませて綴じる方式などあるが、本実施例では金属針で綴じる場合について説明する。以下では、ステイプル(綴じ部材)として金属針が用いられるものとし、必要に応じて「ステイプル」、「金属針」、「針」などの用語も用いることがある。
【0064】
本実施例のステイプルとして金属針を用いる端綴じステイプルユニット31は、
図6に示すようにステイプルスライダ67上に可動支持される。ステイプルスライダ67は、端綴じステイプルユニット31を処理トレイ29上に積載されたシートの端縁に沿って移動させることができる。これにより端綴じステイプルユニット31を、例えば筐体内を搬送されてきたシートの端縁の異なる綴じ位置に移動させることができる。
【0065】
ステイプルスライダ67は、ステイプルモータ60、ステイプル移動プーリ61、およびステイプル移動ベルト62を介して、端綴じステイプルユニット31を異なる綴じ位置に移動することができる。ステイプルスライダ67、ステイプルモータ60、ステイプル移動プーリ61、およびステイプル移動ベルト62は、ステイプルガイド部67a上に配置されている。ステイプルガイド部67aは、端綴じステイプルユニット31をシート端縁に沿って移動させるガイド溝67bを有している。
【0066】
上記の機構によって、端綴じステイプルユニット31はシート端縁の異なる綴じ位置や、後述のアクセス位置、あるいは後述の保護措置のための位置などに移動することができる。
図6では、例えば4つの位置に移動された状態の端綴じステイプルユニット31を全て図示している。
図6の端綴じステイプルユニット31の4つの姿勢のうち、両端の2つは、例えば処理トレイ29上のシートの角部に斜めにステイプルを打てるよう、処理トレイ29に対して傾斜した姿勢となっている。ステイプルガイド部67aのガイド溝67bの形状に沿ってステイプルスライダ67を移動させることにより、
図6のような端綴じステイプルユニット31の位置および姿勢の制御が可能となる。
【0067】
端綴じステイプルユニット31を支持するステイプルスライダ67は、不図示の部位でステイプルガイド部67a下部のステイプル移動プーリ61に架装されたステイプル移動ベルト62と結合されている。ステイプルガイド部67aに設けられたガイド溝67bは、ステイプルスライダ67の基部と係合してステイプルスライダ67をガイドし、
図6のような異なる位置に端綴じステイプルユニット31を移動させることができる形状に形成する。このような構成により、ステイプルモータ60を介してステイプル移動プーリ61の1つを駆動することにより、端綴じステイプルユニット31を所定の綴じ位置に移動させることができる。
【0068】
特に、本実施例では、
図6のようなシート端縁の異なる綴じ位置の他、後述のアクセス位置(300)、あるいは保護位置(301)にも端綴じステイプルユニット31を移動できるよう、ガイド溝67bを例えば上記のような形状とする。
【0069】
上記のステイプルモータ60、ステイプル移動プーリ61、ステイプル移動ベルト62、ステイプルスライダ67、ステイプルガイド部67aの各部は端綴じステイプルユニット31の移動手段を構成する。この移動手段により、端綴じステイプルユニット31(綴じ手段)をシートに対する所定の綴じ位置と、保守操作のため端綴じステイプルユニット31にユーザがアクセス可能なアクセス位置(300:後述)に移動させることができる。
【0070】
図7は端綴じステイプルユニット31の構成を示している。
図7(a)に示すように、端綴じステイプルユニット31はステイプルを収納するカートリッジ66、揺動動作によってステイプルをシートに打ち込むドライバー64を有する。また、ドライバー64の作用部に対向して、打ち込まれた針を曲げるアンビル65が設けられている。
図7(b)はステイプルを収納するカートリッジ66を端綴じステイプルユニット31から引抜いた状態で示している。例えば、後述する保守操作においてカートリッジ66にステイプルを補給する場合には、
図7(b)に示すようにカートリッジ66を端綴じステイプルユニット31から引き抜くことができる。
【0071】
次に、上記構成におけるカートリッジ脱着作業と、端綴じステイプルユニット31の頭出し動作について説明する。
【0072】
この種の装置において、カートリッジ66を端綴じステイプルユニット31から取り外す必要が生じるのは、例えば端綴じステイプルユニット31が針ジャムを起した時、あるいはカートリッジ66への針補充が必要となった時である。ここで「針ジャム」とは、端綴じステイプルユニット31内部でステイプルが絡まるなどして正常な端綴じステイプルユニット31の正常な動作が不可能になった状態をいう。また、カートリッジ66内の未使用の針(ステイプル)の残数が0となった場合も当然、端綴じ動作は不可能となり、この場合には針補充(針補給)が必要になる。
【0073】
端綴じステイプルユニット31には、通常、上記の針ジャム状態の有無やステイプルの残量を検知するセンサが設けられる。端綴じステイプルユニット31に設けられるこの種のセンサは公知であり、ここでは詳細な説明は省略する。例えば後述の制御回路(
図14)などが、検知手段として機能する端綴じステイプルユニット31に設けられたセンサの出力状態を総合することによって、端綴じステイプルユニット31が正常に打ち出せるか否かを判定することができる。
【0074】
端綴じステイプルユニット31が正常に打ち出せない状態にあることを上記の検知手段が検出した場合は、針ジャム、ステイプル残量無しのいずれの場合も、通常のシート後処理動作を実行中であればシート後処理動作を停止する。そして端綴じステイプルユニット31で異常が起きていること、ないしは針ジャム回復操作やステイプル補充などの保守操作が必要である旨を画像形成装置Aのコントロールパネル18よりユーザに通知する。なお、針ジャム回復操作やステイプル補充のいずれが必要であるかは端綴じステイプルユニット31に設けられた上述のセンサの出力状態に応じてコントロールパネル18に表示することができる。
【0075】
端綴じステイプルユニット31の針ジャム回復操作やステイプル補充などの保守操作は、端綴じステイプルユニット31を特定のアクセス位置に移動させて行う。ここで「アクセス位置」とはユーザ(あるいはサービスマン)が端綴じステイプルユニット31の機構にアクセス可能な位置、といった意味である。
【0076】
図8は、端綴じステイプルユニット31がアクセス位置に移動され、ユーザ(あるいはサービスマン)の「アクセス」が可能となった状態の一例を例示している。この
図8の端綴じステイプルユニット31のアクセス位置は、後述の
図11のアクセス位置300に対応する。
【0077】
図8では、ケーシング20に設けられた図中右側のカバー(不図示)を開いた状態となっている。この状態では、開口部20dを介してユーザ(あるいはサービスマン)は端綴じステイプルユニット31にアクセスでき、例えばカートリッジ66の引抜き(
図7(b))を含む保守操作を行うことができる。
【0078】
端綴じステイプルユニット31の正常な動作が行えない状態を検出している場合、後述の制御回路がカートリッジ66の脱着作業時、端綴じステイプルユニット31はアクセス位置まで移動させる。そして、このアクセス位置において、ユーザ(あるいはサービスマン)は端綴じステイプルユニット31に対して綴じ部材(ステイプル)のジャムからの回復操作や、補充操作などの保守操作を行うことができる。
【0079】
ユーザ(あるいはサービスマン)は、保守操作(針ジャム回復操作や針補充など)を行った後、再度カートリッジ66を端綴じステイプルユニット31に装着する。そして、端綴じステイプルユニット31にカートリッジ66が装着されると、制御回路(後述)は端綴じステイプルユニット31に頭出し(いわゆる針頭出し)動作を行わせる。
【0080】
ここで、
図9は端綴じステイプルユニット31の異なる動作状態を示しており、
図9(a)は通常(待機)状態、
図9(b)はステイプルを打ち出してかしめる時のクリンチ状態を示している。上記の頭出し(針頭出し)動作は、カートリッジ66内のステイプルを押し出すために
図9(a)〜
図9(b)の状態を遷移するクリンチ動作を数回繰り返すものである。この頭出し動作は、ステイプルがカートリッジ66内のどこにあるか分からないために行う動作であり、次回のステイプル動作を最初から確実に行わせるための前動作である。
【0081】
従来では、この頭出し動作は、
図8に示した端綴じステイプルユニット31のアクセス位置(
図11の300)で行っていた。例えば、従来では、
図8のようにカバーを開きアクセス位置に移動された端綴じステイプルユニット31に対して綴じ部材(ステイプル)のジャム回復操作や、補充操作などの保守操作を行う。そして、例えば、端綴じステイプルユニット31にカートリッジ66が装着されたタイミングなどにおいて、そのアクセス位置で頭出しのためのクリンチ動作を行っていた。このアクセス位置では、ユーザ(あるいはサービスマン)による保守操作が行い易いよう端綴じステイプルユニット31は装置外部に近い状態である。
【0082】
また、近年のシート後処理装置では、ユーザが手動操作で端綴じステイプルユニット近傍までシート束を差し込みシート束の綴じ処理を行う、いわゆるマニュアル(手動)ステイプルの機能が追加される場合がある。例えば、マニュアルステイプル機能を設ける場合には、
図8に示すようにケーシング20の一部に開口部200を設け、この開口部200を介して端綴じステイプルユニット近傍までシート束を差し込めるよう構成される。マニュアルステイプルのための綴じ位置においても、ユーザの操作性を向上するために、装置外部に近い位置で端綴じステイプルユニット31による綴じ処理を行うのが好ましい。そのため、
図8のような構成では、アクセス位置と、マニュアルステイプルのための綴じ位置が近接した構成となる。このような構成では、保守作業の後、アクセス位置でそのまま頭出しを行わせると、開口部200から挿し込まれたシートを傷つけてしまうなどの問題が生じる可能性がある(例えば後述の
図10(b))。
【0083】
マニュアルステイプルでは、例えばユーザが開口部200にシート束を挿入しケーシング20などに設けられたマニュアルステイプルを指令するスイッチ(例えばスイッチ220)を操作する。これによって、端綴じステイプルユニット31が開口部200を介してドライバー64の位置まで挿入されたシート束にステイプル処理を行う。
【0084】
本実施形態では、
図8のように、装置の前面側(図の手前側)から左側面にかけてケーシング20の角部をまたいで開口部200を設けている。このような構成の場合、マニュアルステイプルのために端綴じステイプルユニット31を移動させる位置は、
図16に701で示した綴じ位置となる。また、
図16では、処理トレイ29(上面にリブ状の構造を図示した部分)より左側の角部がケーシング20に設けた開口部200の部位に相当する。
【0085】
図16は、(後述の
図11も同様)ステイプルガイド部67aで移動される端綴じステイプルユニット31および処理トレイ29を上方から示している。
図16では、筐体の内部に存在するシート、例えば装置内部をフィードされ、処理トレイ29上まで搬送されてきたシートを綴じるための端綴じステイプルユニット31の3つの綴じ位置400、500、600が示されている。
【0086】
ここで、筐体の内部に存在するシート、例えば装置内部をフィードされ、処理トレイ29上まで搬送されてきたシートを綴じる位置を第1の綴じ位置とする。また、上記のように開口部200などを介して外部から手差しされたシートに対してマニュアルステイプルを行う位置を第2の綴じ位置とする。その場合、第1の綴じ位置と第2の綴じ位置をどのように配するかについては、いくつかの可能性がある。
【0087】
例えば、筐体の内部に存在するシートの(第1の)綴じ位置を処理トレイ29(上面にリブ状の構造を図示した部分)に面した綴じ位置(400、500、600)とする。そして、開口部200などを介して外部から手差しされたシートの(第2の)綴じ位置は綴じ位置(400、500、600)とは異なる綴じ位置701に限定するような構成である。このように、第1の綴じ位置と第2の綴じ位置を分離する場合には、例えば開口部200などを介して外部から手差しされたシートが処理トレイ29(上面にリブ状の構造を図示した部分)の領域には差し込めないように制限する仕切り(不図示)を設ける。
【0088】
また、後処理装置の仕様によっては、第1の綴じ位置と第2の綴じ位置を明確に分離しないような構成も考えられる。即ち、
図8のような開口部200から手差しされたシートを上記のような仕切り(不図示)で制限せず、処理トレイ29(上面にリブ状の構造を図示した部分)の領域まで差し込めるようにする構成である。この構成では、開口部200から手差しされたシートを、装置内部をフィードされてきたシートと同じように処理トレイ29に面した綴じ位置(400、500、600)で綴じることができる。例えば、ユーザは開口部200にシート束を挿入して、スイッチ220を手動操作し、端綴じステイプルユニット31のドライバー64およびアンビル65により端綴じを行うことができる。ただし、この場合には、開口部200から手差しされたシートにスイッチバックローラ26やスリップローラ51などが干渉しないよう退避させるような機構が別途必要となる可能性がある。
【0089】
第1および第2の綴じ位置の構成が例えば上記のいずれであっても、もし、アクセス位置(300)と、第1または第2の綴じ位置で綴じられるシートが近接した位置関係となる構成であれば、アクセス位置(300)で端綴じステイプルユニット31の頭出し動作を行うと、上記の手差ししたシートにダメージを与えるなどの問題を生じる可能性がある。例えば、処理トレイ29上に筐体内を搬送されてきたシートが揃った状態において、そのタイミングでステイプル切れとなり、アクセス位置(300)での保守作業が必要となる場合が考えられる。また、
図8、
図16、
図10(b)のように、アクセス位置(300)の近傍に第2の綴じ位置(701)が配される場合には、開口部200から手差しされたシートが、アクセス位置(300)に位置する端綴じステイプルユニット31の頭出し動作によって損なわれる可能性がある。
【0090】
また、ユーザ(あるいはサービスマン)がマニュアルステイプルを行っている際、針ジャム回復操作若しくは針補充が必要となった場合、ユーザがカートリッジ66を引抜き針ジャム回復操作や針補充を行うことになる。その後、再度カートリッジ66を端綴じステイプルユニット31に装着したら、すぐにマニュアルステイプル処理が再開できるとユーザは判断しがちであるが、実際には端綴じステイプルユニット31に頭出し動作を行わせる必要がある。
【0091】
このタイミングで、ユーザが頭出し動作を行うことを認識していないと、カートリッジ66を端綴じステイプルユニット31に装着した直後にシート束SAを開口部200に挿入してしまう可能性がある。このような操作が行われると、端綴じステイプルユニット31のクリンチ動作領域にシート束SAが入り込んでしまい、ステイプルユニット31の頭出し動作によってシート束SAを傷つける可能性がある。
【0092】
このような問題を防止するために、端綴じステイプルユニット31をアクセス位置に移動した後に行なう頭出し動作の際に、適当な保護措置を講じる必要がある。本実施例では、この保護措置の一形態として例えば、端綴じステイプルユニット31を保護位置に移動させる制御を行う(後述の
図11)。この保護位置は、例えば
図11に示す保護位置301である。この保護位置301は、上記の第1の綴じ位置(400〜600)で綴じ処理されるよう処理トレイ29上に位置するシート、あるいは第2の綴じ位置で綴じ処理されるよう手差しされるシートに干渉しない位置に相当する。具体的には、この保護措置では、例えばアクセス位置(300)よりも装置内部側に端綴じステイプルユニット31を移動してから端綴じステイプルユニット31に頭出し動作を行わせる。
【0093】
また、保護措置の別の一形態としては、開口部を介してシートが挿入されることを規制する規制手段を設ける構成が考えられる。例えば、この規制手段は、端綴じステイプルユニット31の作用部を装置外部に対して遮蔽するシャッタ機構(開閉機構:後述の
図12の210)により構成できる。この場合、保守作業のため端綴じステイプルユニット31を前記アクセス位置へ移動した後、頭出し動作を行うとき、シート束SAを挿入できないように開口部200を塞ぐよう制御する。
【0094】
特に、
図8に示すような構成では、端綴じステイプルユニット31のアクセス位置はこの開口部200に近い位置にあるため、頭出し動作時に開口部200から異物を挿入された際、クリンチ動作時に異物を噛み込んでしまう可能性がある。端綴じステイプルユニット31は、このような異物噛み込みによって故障する可能性がある。また、頭出し動作時に開口部からシート束を挿入されることによりシート束に傷やダメージを付けてしまう可能性がある。
【0095】
図10は、アクセス位置300に移動された端綴じステイプルユニット31を、ケーシング20の内部側から見た状態で図示している。
図10(a)に示すように端綴じステイプルユニット31のアクセス位置と開口部200は近い位置にあり、異物等を入れるとクリンチ動作時に噛み込んでしまう恐れがある。
図10(b)は開口部200にマニュアルステイプル操作のためシート束SAを挿入した状態を示しており、このような状態で頭出し動作を行うとクリンチ動作時に噛み込んでしまいシート束SAにダメージを与える恐れがある。シートの手差しを許容する構成においては、上述の第1の綴じ位置と第2の綴じ位置が分離された構成でも、あるいはこれらが明確に分離されていない構成でも、
図10(b)のような状態は同様に生じ得る。
【0096】
図11は端綴じステイプルユニット31の異なる移動位置(300、400、500、600)を装置の上方から示している。
図11において、移動位置400、500、600はシート中央部や角部などの綴じ位置に対応している。
【0097】
特に、
図11において300は
図8に示した端綴じステイプルユニット31のアクセス位置に相当する。このアクセス位置300は上述のようにマニュアルステイプル操作のための開口部200に近いため、この位置で端綴じステイプルユニット31の頭出し動作を行うのは望ましくない。
【0098】
そこで、本実施例では、頭出し動作が必要な場合は、少なくともアクセス位置300よりも少し装置の内部側に寄った保護位置301まで端綴じステイプルユニット31を移動する。この保護位置301は、例えば上記の第1の綴じ位置(400〜600)で綴じ処理されるよう処理トレイ29上に位置するシート、あるいは第2の綴じ位置で綴じ処理されるよう手差しされるシートのどちらにも干渉しない位置に相当する。なお、第1の綴じ位置(400〜600)に面した処理トレイ29上にシートが存在しないことが処理トレイ上に設けたシートセンサ(不図示)などにより明確に確認できる場合も考えられる。この場合には、頭出し動作のために少なくともアクセス位置300から移動させる保護位置は、第1の綴じ位置(400〜600)と同じであってもよい。すなわち、本実施例による保護措置は、端綴じステイプルユニット31をアクセス位置300とは異なる位置に移動させてから頭出し動作を行うものである。
【0099】
上記のような保護措置を行うことにより、本実施例によれば、マニュアルステイプル用の開口部200に挿入される可能性のあるシート束、あるいは端綴じステイプルユニット31を保護することができる。すなわち、頭出し動作が必要な場合には、移動位置400、500、600、あるいは301に示すような動作位置に端綴じステイプルユニット31を移動して頭出し動作を行わせる。これにより、開口部200から異物やシート束を挿入されてもクリンチ動作で噛み込む恐れが無く、端綴じステイプルユニット31の故障や、シート束を傷つけることを防ぐことができる。
【0100】
マニュアルステイプル用の開口部200に挿入される可能性のあるシート束、あるいは端綴じステイプルユニット31を確実に保護するためには、上記構成以外にも、
図12、
図13に示すような構成が考えられる。
【0101】
図12の構成では、開口部200および端綴じステイプルユニット31の近傍に保護措置のための機構を設けている。この保護措置のための機構としては、開口部を介してシートが挿入されることを規制する規制手段を設ける構成が考えられる。この規制手段は、例えば端綴じステイプルユニット31の作用部である開口部200を装置外部から遮蔽するシャッタ機構210のような開閉機構により構成できる。
【0102】
例えば
図12に示すように端綴じステイプルユニット31近傍にシャッタ機構210を装着する。
図12のシャッタ機構210は、シャッタ駆動部材211、シャッタ部材212、およびシャッタ駆動部材211とシャッタ部材212を結合するリンク213から構成されている。これらのうち、シャッタ駆動部材211は例えばソレノイドなどから構成され、リンク213は、例えば不図示のカムなどによって姿勢制御されるレバーなどから構成される。シャッタ駆動部材211によりリンク213を介して開閉駆動されるシャッタ部材212は、たとえば次のような動作を行える形状に構成される。
【0103】
図12(a)はシャッタ部材212を退避させ開口部200を開けた状態を示した図、
図12(b)はシャッタ部材212で開口部200を閉じた状態を示した図である。特に、
図12(a)の姿勢では、シャッタ部材212の、同図下方を向いた面の形状は開口部200の端縁の形状と対応している。したがって
図12(b)のようにリンク213、シャッタ駆動部材211によりシャッタ部材212を揺動させると、シャッタ部材212の
図12(a)では下面として示した面が開口部200の端縁に沿って確実に開口部200を遮蔽する。
【0104】
ここで、開口部200は、端綴じステイプルユニット31のアクセス位置において、端綴じステイプルユニット31の要部と装置外部とを連通させる経路と考えることができる。したがって、開口部200をシャッタ機構210のシャッタ部材212で閉鎖することによって、端綴じステイプルユニット31(綴じ手段)の機構部を装置外部に対して遮蔽する保護措置を講じることができる。
【0105】
なお、本実施例では、連結部材としてのリンク213でシャッタ部材212とシャッタ駆動部材211を連結している。しかしながら、連結部材としてギア形状の部材やカム形状の部材を用いてシャッタ部材212とシャッタ駆動部材211を連動させるようにすることもできる。さらには、端綴じステイプルユニット31の移動軌跡上にシャッタ部材212を設けて、端綴じステイプルユニット31の移動によってシャッタ部材212を押し上げる等の開閉動作を行うような構造を採用してもよい。
【0106】
上記のようなシャッタ部材212を設けることにより、端綴じステイプルユニット31の頭出し動作中、装置外部(開口部200)に対して端綴じステイプルユニット31の作用部を遮蔽することができる。これによって、端綴じステイプルユニット31の頭出し動作に伴うクリンチ動作時、異物やシート束の挿入を防ぎ、シート束、あるいは端綴じステイプルユニット31を確実に保護することができる。
【0107】
ここで、シート後処理装置Bの制御系と、この制御系が上述の端綴じステイプルユニット31に対してアクセス位置で保守操作を行う際に実行する制御手順の一例について、
図14および
図15を参照して説明する。
【0108】
図14はシート後処理装置Bの制御手段として設けられる制御回路の概略構成を示している。
図14の制御回路はシート後処理装置B全体を制御するCPU1201を中心として構成されている。CPU1201には、後述する制御手順をCPU1201のプログラムとして格納するROM1202、CPU1201がワークエリアとして用いるRAM1203が接続されている。
図14の左方に1ブロックとして示したセンサ群1210は、シート後処理装置Bに設けられた各種センサを含む。
【0109】
すなわち、センサ群1210は、例えばシート後処理装置B内のシート搬送路上に適宜配置された上述のシート検出のためのセンサ(S1、S2…)を含む。また、センサ群1210は、端綴じステイプルユニット31が端綴じステイプルユニット31内に設けられたに設けられたジャムセンサやステイプルの残量センサなどを含む。端綴じステイプルユニット31のこれらのセンサはステイプルを正常に打ち出せる状態にある否かを検知する検知手段を構成する。
【0110】
また、
図14の右方に1ブロックとして示したアクチュエータ群1220は、シート後処理装置B内の各種モータやソレノイドを含む。特に、本実施例の制御に関して、アクチュエータ群1220はステイプルモータ60、シャッタ駆動部材211(ソレノイドなど)を含むものとする。また、CPU1201には、シート後処理装置Bのユーザーインターフェース1230が接続されている。ユーザーインターフェース1230は、例えばスイッチ、キーボード、表示器などから構成される。本実施例の制御に関して、ユーザーインターフェース1230は、例えば上述のマニュアルステイプルを指令するスイッチ(
図8、
図13の220)などを含むものとする。
【0111】
図14に示した各部はシステムバスなどのインターフェース手段を介して接続される。このようなインターフェース手段は、たとえば採用されるCPU1201の製品仕様に応じて任意のインターフェース規格のものを用いることができる。
【0112】
上記構成において、
図14のCPU1201は、ユーザーインターフェース1230から指定された態様で画像形成装置Aから搬入されるシートに対して後処理を行う。この後処理の態様は、例えば前述の「プリントアウトモード」、「オフセットモード」、「綴じ仕上げモード」、「冊子仕上げモード」などである。このうち、「綴じ仕上げモード」や「冊子仕上げモード」などにおいて端綴じステイプルユニット31による綴じ処理が行われる。
【0113】
図15は、CPU1201が行う端綴じステイプルユニット31の制御手順の一例を示している。
図15の手順はCPU1201の制御プログラムとして、ROM1202(あるいは他の適当な記憶手段)に格納しておくことができる。
【0114】
CPU1201は、ステップS1301にてユーザーインターフェース1230からステイプル処理を行う後処理が指定されているか否かを判定する。ここで、ステイプル処理が指定されていない場合(S1301のNo)は、ステイプル処理要求が来るまで端綴じステイプルユニット31を待機させる。
【0115】
ステイプル処理を行う後処理が指定されている場合(S1301のYes)は、センサ群1210を介して端綴じステイプルユニット31がステイプルを正常に打ち出せる状態にあるか否かを検知する(ステップS1302)。
【0116】
端綴じステイプルユニット31が正常にステイプルを打ち出せる正常動作可能な場合(S1302のYes)、ユーザーインターフェース1230から指示に従って指示のあった位置へステイプル処理を行う(ステップS1303)。
【0117】
そして、S1301で指示されたステイプル処理が終了したか否かを判定する(ステップS1304)。ステイプル処理が終了していない場合は(S1304のNo)、S1302に戻り、ステイプル処理を継続する。ステイプル処理が終了している場合(S1304のYes)、端綴じステイプルユニット31を、アクセス位置(300:
図11)よりも装置の内部側にある不図示のホームポジションへ移動させ(ステップS1305)、
図15のフローを終了する。
【0118】
一方、センサ群1210は、端綴じステイプルユニット31内に設けられたに設けられたジャムセンサやステイプルの残量センサによって端綴じステイプルユニット31がステイプルを正常に打ち出せる状態か否かを検知する(S1302)。そして、端綴じステイプルユニット31がステイプルを正常に打ち出せる状態ではない場合(S1302のNo)には、処理はステップS1306に進む。
【0119】
ステップS1306では、CPU1201はシート後処理装置Bの通常動作を停止させる。そして、上述の移動手段を介して端綴じステイプルユニット31を上述のアクセス位置(300:
図11)に移動する(ステップS1307)。そして、端綴じステイプルユニット31でジャムやステイプル残量なしなどの障害が発生していること、あるいはさらに保守操作が必要であることなどをユーザーインターフェース1230の音声や表示出力によってユーザに報知する(ステップS1308)。
【0120】
これに応じて、上述のユーザ(あるいはサービスマン)はステイプルジャム回復操作やステイプルの補給などの保守操作を行うこととなる。この保守操作の終了はステップS1309で判定される。ステップS1309では、例えばセンサ群1210を介してステイプルジャムの非検出やステイプル残量を検出することによって端綴じステイプルユニット31が正常状態に戻ったことを検出することによって保守操作の終了を判定することができる。あるいは、アクセス位置の開口部20dのカバーが綴じられたことであるとか、ユーザーインターフェース1230で所定の操作が行われたこと、などを条件として保守操作の終了を判定するようにしてもよい。
【0121】
保守操作が終了したと判定された場合(S1309のYes)、次回の端綴じステイプルユニット31の駆動から確実に綴じ処理を行なえることを保証するため、上述のステイプルユニット頭出し処理を行う必要がある。本実施例では、これに先立ち、前述のようにシート束や異物が挿入されないようにするための保護措置を行う(ステップS1310)。
【0122】
このステップS1310の保護措置として、CPU1201はアクセス位置とは異なる位置に端綴じステイプルユニット31を移動する制御を行わせることができる。例えば、
図11の装置の内部側に寄った保護位置301に端綴じステイプルユニット31を移動してから頭出しを行わせることにより、シート束や異物が挿入されることを防ぎ、にシート束やステイプルユニット31を保護することができる。
【0123】
また、
図12に示したようなシャッタ手段を用いる構成においては、S13010の保護措置として、CPU1201は端綴じステイプルユニット31の作用部を装置外部(例えば開口部200)に対して遮蔽する制御を行わせることができる。この場合、例えば
図12に示したシャッタ部材212を作動させて、ステイプルユニット31の作用部を装置外部に対して遮蔽してから頭出しを行わせることによりシート束や端綴じステイプルユニット31を保護することができる。
【0124】
そして、保護措置をした後、ステップS1311で端綴じステイプルユニット31に頭出し処理を行わせる。端綴じステイプルユニット31の頭出し処理が終了すると(S1311のYes)、CPU1201は装置の動作を通常の後処理動作に復帰させ、S1303に移行してステイプル処理を行う。そして、S1304でユーザから指示のあったステイプル処理が終了したか否かの判定を行う。ここでステイプル処理が終了していない場合(S1304のNo)は、ステイプル処理が終了するまで処理を継続させる。また、ステイプル処理が終了した場合(S1304のYes)は、端綴じステイプルユニット31をホームポジション(不図示)へ移動させて(ステップS1305)制御を終了する。
【0125】
上述のような制御により、端綴じステイプルユニット31の動作に応じて行なわれる保守操作後の頭出し処理に関して、保護措置(ステップS1310)を実施する制御を行うことができる。この保護措置(ステップS1310)では、上述の通り、端綴じステイプルユニット31をアクセス位置とは異なる保護位置(301)に移動させてから、あるいはシャッタ部材212を作動させてから、端綴じステイプルユニット31に頭出しを行わせる。これによって、シート束や端綴じステイプルユニット31を保護することができる。
【0126】
また、保守操作のためのアクセス位置で頭出し動作を行うと装置内の部品や搬送路などを噛みこんでしまう場合についても、アクセス位置とは異なる位置に端綴じステイプルユニット31を移動させてから頭出し動作を行うようにしている。このため、装置内の部品や搬送路なども保護することができ、端綴じステイプルユニット31の故障を防ぐことができる。
【0127】
なお、上記の保護措置(ステップS1310)として、端綴じステイプルユニット31をアクセス位置とは異なる保護位置に移動させる場合、その保護位置は、前述の保護位置301として種々説明した通りである。
【0128】
例えば、ここで、端綴じステイプルユニット31(綴じ手段)は、次のような位置に移動可能であるものとする。
【0129】
(1)綴じ部材を用いて筐体の内部を搬送されて来たシートに対する第1の綴じ処理を行う第1の綴じ位置。
【0130】
(2)外部から開口部200を介して挿入されるシートに対して第2の綴じ処理を行う第1の綴じ位置とは異なる第2の綴じ位置。
【0131】
(3)ユーザが端綴じステイプルユニット31(綴じ手段)にアクセス可能なアクセス位置。
【0132】
そして、端綴じステイプルユニット31に頭出し動作を行わせる保護措置において、端綴じステイプルユニット31を、第1および第2の綴じ位置で綴じ処理されるシートのいずれにも干渉しない位置に移動させてから頭出し動作を行わせる。これにより、特に、第1ないし第2の綴じ位置のために綴じ処理されるよう、例えば処理トレイ29に堆積されたシートや、開口部200から手差しされたシートのいずれも保護することができる。
【0133】
以上、本発明に好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これら実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することのない範囲内において適宜の変更が可能である。例えば、上記実施例では画像形成装置の画像形成方式として電子写真方式を例示したが、画像形成装置側の画像形成方式などその他の構成は本発明に必須の構成要件ではない。画像形成装置はシート後処理装置に対して後処理すべきシートを供給できる装置であればどのような構成であっても構わない。
【0134】
なお、本発明は、端綴じステイプルユニットによるシートの端綴じ処理を行うとともに、特に保守操作のためアクセス位置に端綴じステイプルユニットを移動し、その後、針頭出し操作を行うようなシート後処理装置に好適に実施することができる。ただし、上述の保護措置のうち、シャッタ部材を用いた構成においては、シャッタ部材により端綴じステイプルユニットの作用部を装置外部に対して遮蔽した状態とする制御は、頭出し動作のみならず通常の綴じ動作に関して実行してもよい。特に、アクセス位置(例えば
図11では300)に近い綴じ位置などにおいて端綴じを行なわせる場合にはシャッタ部材で装置外部と連通する通路(マニュアルステイプル用の開口部など)を遮蔽する制御を行なうことができる。この場合には、例えば端綴じステイプルユニットの通常綴じ動作を妨げず、装置外部と連通する通路のみを遮蔽するようにシャッタ部材の形状を決めておけばよい。