特許第5986663号(P5986663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5986663
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】背負式噴霧機
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20160823BHJP
   B05B 9/08 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   A01M7/00 B
   B05B9/08
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-93896(P2015-93896)
(22)【出願日】2015年5月1日
【審査請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】304065879
【氏名又は名称】株式会社 マルナカ
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 雄一郎
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−181368(JP,U)
【文献】 特開2007−159588(JP,A)
【文献】 実開平03−066654(JP,U)
【文献】 米国特許第04095726(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
B05B 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容し作業者に背負われるタンクと、
このタンクに取り付けられ、前記タンク内に収容されていた前記液体を圧送するポンプと、
前記ポンプが有する前記液体を外部へ圧送するための吐出口を前記タンクの一部に固定する吐出口固定機構とを具備してなり、
前記タンクが、前記液体を貯留する液体貯留部と、前記タンクの内面同士を隙間無く接合することにより前記液体の通過を禁止するシール部とを有するものであり、
前記吐出口固定機構が、前記シール部に前記吐出口を固定するものであることを特徴とする背負式噴霧機。
【請求項2】
前記吐出口固定機構が、前記タンクに取り付けられるための第一の固定部と、圧送された前記液体を噴霧すべく外部へ送出するための噴霧用ホースを固定するための第二の固定部とを有し、
これら第一の固定部と第二の固定部とが隣接して設けられている請求項1記載の背負式噴霧機。
【請求項3】
前記タンクが前記ポンプを収容すべく正面側を凹ませて形成したポンプ収容部を有するものであり、
前記吐出口固定機構が、前記ポンプ収容部から前記シール部を貫通して前記タンクの背面から前記吐出口を露出させている請求項1又は2記載の背負式噴霧機。
【請求項4】
前記ポンプ収容部が、前記吐出口以外の前記ポンプの背面及び両側面を覆うように形成されており、
前記タンクが、正面側略全域を使用者の背中に接し得る別体をなした背当て板により被覆されている請求項記載の背負式噴霧機。
【請求項5】
前記吐出口固定機構が、前記シール部を前記タンクを構成する素材の厚み方向に挟み込みながら前記ポンプを固定する請求項1、2、又は4記載の背負式噴霧機。
【請求項6】
前記シール部が平断面視湾曲形状をなすものであり、
前記シール部が前記ポンプの背面側及び両側面を覆う形状をなす請求項1、2、3、4又は5記載の背負式噴霧機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に農業用途に利用される背負式噴霧機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農作業における薬剤散布の際、作業者が容易に作業を行い得る噴霧機の一つとして、背負式噴霧機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この背負式噴霧機は、散布しようとする薬剤を水に溶解させた液体を貯留したタンクにポンプを取り付けたもので、使用者はタンクを背負いながら薬剤散布を行うことができる。このような背負式噴霧機は、使用者が把持して取り扱う散布用のノズルからタンクまでのホースの取り回しが障害物に干渉され難く、使用者が快適に薬剤散布の作業を行い得るという利点を有する。また上記特許文献1に記載のものはポンプを駆動する駆動力を当該ポンプに取り付けられたハンドルの往復動作から得るという、所謂人力式のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−034453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の背負式噴霧機をはじめとした従来の背負式噴霧機では、ポンプの作動のみならず、使用者の噴霧作業をはじめとしたポンプに外力が作用しても安定してタンクに固定された状態を維持しなくてはならない。すなわちポンプをタンクに取り付けるにあたり、タンクの種々な箇所に加工を施し、且つポンプ側にも多くの箇所に格別の加工を施さなければならない。そうなると、ポンプやタンクの構造が複雑となり、部品点数の不要な増大を招来しているというのが現状である。
【0005】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、簡素な構成でありながらポンプをタンクに確実に固定し得る背負式噴霧機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0007】
すなわち本発明に係る背負式噴霧機は液体を収容し作業者に背負われるタンクと、このタンクに取り付けられ、前記タンク内に収容されていた前記液体を圧送するポンプと、前記ポンプが有する前記液体を外部へ圧送するための吐出口を前記タンクの一部に固定する吐出口固定機構とを具備することを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、ポンプにおいて外力が働きやすく、且つ高圧の液体を圧送させるために構造上強度が高く構成された吐出口をタンクに固定することにより、吐出口近傍に加わるポンプへの外力をタンクへも分散させることができる。そのため、従来のように吐出口以外の箇所でポンプをタンクに固定する態様のものに比べて安定してポンプをタンクに固定することができる。その結果本発明によれば、簡素な構成でありながらポンプをタンクに確実に固定し得る背負式噴霧機を提供することが可能となる。
【0009】
そして、ポンプの組み付け強度をより高くしつつポンプへの外力が当該組み付けに影響してしまうことを有効に回避するためには、吐出口固定機構を、タンクに取り付けられるための第一の固定部と、圧送された液体を噴霧すべく外部へ送出するための噴霧用ホースを固定するための第二の固定部とを有するものとし、これら第一の固定部と第二の固定部とが隣接して設けおくことが望ましい。
【0010】
また、ポンプを安定して支持し得るタンク側の構成の具体的な態様として、タンクが、液体を貯留する液体貯留部と、タンクの内面同士を隙間無く接合することにより液体の通過を禁止するシール部とを有するものであり、吐出口固定機構が、シール部に吐出口を固定するものである。
【0011】
そして、ポンプを外方からの衝撃から有効に保護するための構成としては、タンクがポンプを収容すべく正面側を凹ませて形成したポンプ収容部を有するものであり、吐出口固定機構が、ポンプ収容部からシール部を貫通してタンクの背面から吐出口を露出させている態様を挙げることができる。
【0012】
特に有効にポンプを保護し得る具体的態様としては、ポンプ収容部が、吐出口以外のポンプの背面及び両側面を覆うように形成されており、タンクが、正面側略全域を別体をなす緩衝シートにより被覆されている態様が挙げられる。
【0013】
さらに、ポンプをタンクに強固に固定し得るようにするためには、吐出口固定機構を、シール部をタンクを構成する素材の厚み方向に挟み込みながらポンプを固定するようにすることが望ましい。
【0014】
また、ポンプを強固に固定しつつ強度を高く構成するためには、シール部が平断面視湾曲形状をなすものとし、シール部がポンプの背面側及び両側面を覆う形状をなしたものとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡素な構成でありながらポンプをタンクに確実に固定し得る背負式噴霧機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る斜視図。
図2】同背面図。
図3】同側面図。
図4】同底面図。
図5】同分解斜視図。
図6図2に係るI−I線断面図。
図7図3に係るII−II線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る背負式噴霧機Aは、図1図7に示すように、例えば農作業における薬剤散布の際、作業者がタンク1をポンプ2ごと背負いながら容易に作業を行い得るものである。なお同図では説明の便宜上、使用者が背負式噴霧機Aを背負うためにタンク1に掛け設けられるショルダーベルトやウエストベルト、そしてポンプ2に接続された噴霧用ホース5の先端に取り付けられる噴霧ノズルの図示を省略している。
【0019】
ここで、本実施形態に係る背負式噴霧機Aは、液体を収容し作業者に背負われるタンク1と、このタンク1に取り付けられ、タンク1内に収容されていた液体を圧送するポンプ2と、ポンプ2が有する液体を外部へ圧送するための吐出口64bをタンク1の一部に固定する吐出口固定機構Xとを具備することを特徴とする。以下、この背負式噴霧機Aの具体的な構成について説明する。
【0020】
背負式噴霧機Aは、上記タンク1及びポンプ2に加え、タンク1の正面側に取り付けられる背当て板3と、ポンプ2を駆動するために使用者が操作するためのハンドル4と、ポンプ2の吐出口64bに接続される噴霧用ホース5と、この噴霧用ホース5の先端に取り付けられる図示しない噴霧ノズルを有している。
【0021】
背当て板3は、タンク1の正面側の略前面を覆う形状に設定された、可撓性及びクッション性を有する例えばウレタン等の素材を主体としてなる。この背当て板3は、タンク1に取り付けられる板状或いはシート状をなす背当て本体30と、この背当て本体30の上側を膨出させて使用者の肩胛骨及びその周囲に快適に接し得るように形成された上クッション31と、背当て本体30の下側を膨出させて使用者の腰部に快適に接し得るように形成された下クッション32と、背当て本体30の周囲において複数形成された図示しないボルト又はビスを挿通させてタンク1側に固定するためのねじ挿通孔33とを有している。
【0022】
タンク1は、本実施形態では例えばブロー成型等によって成型された一体成形品の内部に液体を貯留し得るように構成されたものである。またタンク1は、底面側を平坦に構成することにより縦向けに自立し得るようにし、背面側には使用者が把持し得るように凹ませて形成した把手17が形成されるとともに、上端近傍及び両側面下側において図示しないショルダーベルトやウエストベルトを取り付けるためのベルト取付部18が設けられている。このタンク1は、その前面側に幅方向中央を下端から上端近傍まで凹ませ内側面14aにポンプ2を組み付け収容し得るように形成したポンプ収容部14と、このポンプ収容部14の周囲の前面側において計6箇所において図示しない市販の六角形状をなすナットを嵌め込み背当て板3を固定するための背当て取付部15とを有している。このタンク1は、液体を貯留したときに背負式噴霧機A全体の重心が高くなるように上側のみに液体を貯留し得るように構成されたものである。
【0023】
更にタンク1は、上側において液体を貯留する液体貯留部11と、下側において底面を平坦に構成した空洞形成部13と、これら液体貯留部11及び空洞形成部13との間において樹脂素材を隙間無く溶着することにより、上下間の液体の流通を完全に遮断したシール部12とを有している。
【0024】
液体貯留部11は、例えば10リットル程度といった使用者が通常背負い得る量の液体を貯留できるよう適宜サイズ及び形状が設定されたものであり、上端には上蓋16を取り付け得る、液体の導入及び廃棄をおこなうための液導入穴11aと、内部の液体をポンプ2側へ導くために形成された液取出穴11bとを有している。
【0025】
空洞形成部13は、タンク1の下部両側に亘って液体を貯留しない空洞を形成したものであり、底面を平坦に構成した接地面13bと、左右どちら側からでもハンドル4を挿通させて回転可能に支持するためのハンドル挿通孔13aとを有している。
【0026】
シール部12は、タンク1の上下方向中間部分において素材を前後から内面同士を密着させ隙間無く接合したもので、ポンプ2の背面側及び両側面を覆うべく平断面視湾曲形状をなすように形成されている。このシール部12の正面側にはポンプ2において平面視最も外形が大きいボディ6が組み付けられ、背面側には当該ボディ6から液体を吐出させるべく貫通させたポンプ取付穴12aが形成されている。このポンプ取付穴12aの背面側周囲は素材に凹凸を設け、後述する固定ねじ部材21の逆転を防止するための逆転防止面12bとしている。このシール部12のポンプ取付穴12aは、後述するポンプ2側の固定部7とともに吐出口64bをシール部12に固定する吐出口固定機構Xを構成する。
【0027】
ハンドル4は、概略L字状をなした断面多角形状をなす金属製の棒材であるハンドル本体41の先端にグリップ42を装着したものである。このハンドル本体41の基端はハンドル挿通孔13aに回転可能に取り付けられ、使用者が作業中にグリップ42を前後させるように往復回動することで、ポンプ2に駆動力を付与するためのものである。このハンドル4は、グリップ42をタンク1の左右何れに位置付けるようにしても使用者が快適に操作し得る。なおタンク1に対するハンドル4の位置を左右変更するときは、それに合わせてグリップ42の向きも前後逆にすることができる。
【0028】
ポンプ2は、ハンドル4に付与される外力を利用してダイヤフラム25を拡縮動作させることによって畜圧容器たるアキュムレータ26内に液体を加圧した状態で保持し、図示しない噴霧ノズルの弁を開いたときにアキュムレータ26内の液体が噴霧ノズルへと圧送されるようにした通常のものである。このポンプ2は、タンク1内に位置付けられた吸入ホース23と、この吸入ホース23に液取出穴11bを介して接続する導入ホース24と、導入ホース24を通った液体を内部に吸入し外部へ圧送すべく拡縮動作するダイヤフラム25と、このダイヤフラム25を内蔵し、タンク1側に直接取りつけられるボディ6と、このボディ6の上側に固定されダイヤフラム25から導入された液体を圧力が付与された状態で保持し得るアキュムレータ26と、ボディ6をシール部12に取りつけるべくねじ止めする固定ねじ部材21と、ボディ6に噴霧用ホース5を取り付けるためのホース取付部22とを有している。
【0029】
ボディ6は、液体の導入する液導入部61と、ダイヤフラム25を内側へ組み付けるダイヤフラム取付部62と、上側にアキュムレータ26を取り付けるアキュムレータ取付部63と、アキュムレータ26において加圧された液体を外部へ吐出する吐出部64と、ハンドル4に付与された外力をダイヤフラム25を拡縮させる往復動作へと変換する動作変換部65と、吐出口64bをタンク1に強固に固定するための固定部7とを有している。
【0030】
液導入部61には導入用逆止弁61aが設けられ、一端ダイヤフラム25内に導入された液体がタンク1側へ逆流することはない。一方アキュムレータ取付部63には畜圧用逆止弁63aが設けられており、一端ダイヤフラム25からアキュムレータ26へ押し出された液体は勿論ダイヤフラム25に逆流することはない。吐出部64は、アキュムレータ26から圧送される液体の通路である吐出路64aと、この吐出路64aを通った液体を外部へと導く吐出口64bとを有している。
【0031】
動作変換部65は、ハンドル4の回転動作をアキュムレータ26に付与する往復直線動作へと変換するためのもので、ハンドル4を回転可能に組み付ける、例えばハンドル4の断面形状に応じた角穴であるハンドル取付部65aと、ボディ6に回転可能に組み付けられハンドル4の回転とともに回転するピニオン65bと、このピニオン65bの回転に伴い上下動を行い得るようボディ6に組み付けられたラック65cと、このラック65cの上端に設けられダイヤフラム25を下方から圧縮する作動子とを有している。なお本実施形態ではボディ6又は動作変換部65の何れか又は両方に、ラック65cを下端位置に保持しダイヤフラム25が圧縮されない初期位置となるよう付勢する既存の付勢機構が設けられているが当該付勢機構の説明は省略する。
【0032】
固定部7は、吐出部64近傍の部分をタンク1に固定するためのもので、シール部12の内面に当接する取付面71と、ポンプ取付穴12aに略隙間無く貫通する貫通部72と、この貫通部72の先端側においてポンプ2の背面側へ突出する突出部73とを有している。この突出部73には、固定ねじ部材21をねじ止めするための第一の固定部たる第一雄ねじ面74と、この第一雄ねじ面74に隣接し噴霧用ホース5を組み付けるホース取付部22を取り付けるための第二の固定部たる第二雄ねじ面75とを有している。本実施形態ではこれら第一雄ねじ面74、第二雄ねじ面75を、共に吐出路64aを軸心とした軸心周りに形成しつつ、第一雄ねじ面74の内径よりも第二雄ねじ面75の外径が小さくなるように設定している。このため、固定ねじ部材21は第二雄ねじ面75に触れることなく第一雄ねじ面74に直接取り付けることができる。
【0033】
ここで、本実施形態に係る背負式噴霧機Aは、図6及び図7に特に示すように、ポンプ2が有する液体を外部へ圧送するための吐出口64bをタンク1の一部に固定する吐出口固定機構Xを有している。具体的には当該吐出口固定機構Xは、タンク1側のシール部12と、ポンプ2側の上記固定部7及びこの固定部7に組み付けられる固定ねじ部材21並びにホース取付部22によって構成される。そして吐出口固定機構Xは、ポンプ収容部14からシール部12を貫通してタンク1の背面における幅方向中央から吐出口64bを露出させるようにしている。
【0034】
特に本実施形態では、吐出口固定機構Xが、シール部12をタンク1を構成する素材の厚み方向に挟み込みながらポンプ2を固定するようにして、タンク1とポンプ2との組み付けを強固なものとしている。そして本実施形態では、この吐出口固定機構Xによって吐出口64b近傍が主に固定される、アキュムレータ26がタンク1の液体貯留部11に嵌るようにポンプ収容部14の内側面14aが形成されることによって、ポンプ2がタンク1に強固且つ安定して支持されている。
【0035】
固定ねじ部材21は、第一雄ねじ面74にねじ止めされる雌ねじ面21aと、正面側を凹凸形状に形成することでシール部12の逆転防止面12bに係り合って取り外し方向の逆転を防止する逆転禁止面21bとを有している。この逆転防止面12bと逆転禁止面21bとの係り合いにより、一端強固に固定された固定ねじ部材21は、ボディ6をシール部12に強固に固定した状態を安定して維持せしめている。
【0036】
ホース取付部22は、基端側が吐出口64bの先端側に取り付けられるとともに先端側が噴霧用ホース5の基端に差し込まれるホース取付部材22aと、このホース取付部材22a及び噴霧用ホース5の基端を覆いつつ第二雄ねじ面75にねじ止めされることで噴霧用ホース5を外れ難く固定するホース固定部材22bとを有した通常のものである。
【0037】
このように吐出口固定機構Xにより、タンク1において素材を溶着させ強度を高く構成したシール部12に対し、加圧された液体を流通させるべく強度を高く構成した吐出口64b及びその近傍を固定させているので、他の箇所に大がかりな固定機構を設けることなくポンプ2をタンク1に強固に固定せしめている。
【0038】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る背負式噴霧機Aポンプ2において外力が働きやすく、且つ高圧の液体を圧送させるために構造上強度が高く構成された吐出口64bをタンク1に固定することにより、吐出口64b近傍に加わるポンプ2への外力をタンク1へも有効に分散せしめている。その結果、従来のように吐出口64b以外の箇所でポンプ2をタンク1に固定する態様のものに比べて安定してポンプ2をタンク1に固定することができる。すなわち本実施形態によれば、簡素な構成でありながらポンプ2をタンク1に確実に固定し得る背負式噴霧機Aを実現している。
【0039】
そして、ポンプ2の組み付け強度をより高くしつつポンプ2への外力が当該組み付けに影響してしまうことを有効に回避するために本実施形態では、吐出口固定機構Xを、タンク1に取り付けられるための第一雄ねじ面74と、噴霧用ホース5を固定するための第二雄ねじ面75とを隣接させて設けている。
【0040】
また、ポンプ2を安定して支持し得るタンク1側の構成の具体的な態様として本実施形態では、タンク1の形状として液体を貯留する液体貯留部11と空洞形成部13との間にシール部12を設けた形状を適用し、吐出口固定機構Xがこの強度を高く構成したシール部12に吐出口64bを固定するという態様を適用している。
【0041】
そして、ポンプ2を外方からの衝撃から有効に保護するために本実施形態では、タンク1がポンプ2を収容すべく正面側を凹ませて形成したポンプ収容部14を設け、出口固定機構が、ポンプ収容部14からシール部12を貫通してタンク1の背面から吐出口64bを露出させている態様としている。
【0042】
さらに有効にポンプ2を保護するために本実施形態では、吐出口64b以外のポンプ2の背面及び両側面を覆うようにポンプ収容部14を形成しておき、正面側の略前面をクッション性を有する背当て板3により被覆するようにしている。
【0043】
特に、ポンプ2をタンク1に強固に固定し得るようにするために本実施形態では、吐出口固定機構Xを、シール部12をタンク1を構成する素材の厚み方向に挟み込みながらポンプ2を固定するようにしている。
【0044】
また、ポンプ2を強固に固定しつつ強度を高く構成するために本実施形態では、シール部12が平断面視湾曲形状をなすものとし、シール部12がポンプ2の背面側及び両側面を覆う形状をなしたものとしている。
【0045】
さらに本実施形態では、ポンプ2の構成として吐出口64bよりも上方において強度を保持すべく素材重量が嵩むアキュムレータ26を位置付けてタンク1上側の液体貯留部11に添設させている。これにより、特に作業中における背負式噴霧機A全体としての重心を上側へ偏位させ、使用者が背負うために要する負担を有効に軽減せしめている。
【0046】
加えて本実施形態では吐出口64bを、タンク1の巾方向中央に位置付けているので、左右何れの手で噴霧を行っても噴霧用ホース5の取り回しを容易に行い得る。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態ではポンプに動作変換部を配して人力により液体を圧送する所謂人力式の構成を適用した態様を開示したが勿論、モータ又はエンジンを駆動原としたポンプを適用したものであってもよい。またタンクの具体的な形状やポンプの具体的仕様、さらには本明細書にて図示しなかった噴霧ノズル、ショルダーベルトやウエストベルトの仕様といった詳細な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0049】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は農業用途において好適に利用される背負式噴霧機として利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
A…背負式噴霧機
1…タンク
11…液体貯留部
12…シール部
14…ポンプ収容部
2…ポンプ
3…背当て板
64b…吐出口
74…第一の固定部(第一雄ねじ面)
75…第二の固定部(第二雄ねじ面)
X…吐出口固定機構
【要約】
【課題】簡素な構成でありながらポンプをタンクに確実に固定し得る背負式噴霧機を提供する。
【解決手段】本発明に係る背負式噴霧機は、液体を収容し作業者に背負われるタンクと、このタンクに取り付けられ、前記タンク内に収容されていた前記液体を圧送するポンプと、前記ポンプが有する前記液体を外部へ圧送するための吐出口を前記タンクの一部に固定する吐出口固定機構とを具備し、この吐出口固定機構が、前記タンクに取り付けられるための第一の固定部と、圧送された前記液体を噴霧すべく外部へ送出するための噴霧用ホースを固定するための第二の固定部とを有し、これら第一の固定部と第二の固定部とが隣接して設けられている。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7