(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986730
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】モータのコイルアッシー構造、モータおよびモータのコイルアッシー構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20160823BHJP
H02K 37/04 20060101ALI20160823BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K37/04 501X
H02K5/22
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-228489(P2011-228489)
(22)【出願日】2011年10月18日
(65)【公開番号】特開2013-90429(P2013-90429A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩
(72)【発明者】
【氏名】大屋敷 剛敏
(72)【発明者】
【氏名】木下 真
(72)【発明者】
【氏名】中村 医
【審査官】
津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−072107(JP,U)
【文献】
特開2008−294120(JP,A)
【文献】
特開平10−271795(JP,A)
【文献】
特開2011−078152(JP,A)
【文献】
特開平08−251851(JP,A)
【文献】
特開平08−172746(JP,A)
【文献】
特開2003−018792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 3/50
H02K 5/22
H02K 37/04
H02K 37/12
H02K 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のマグネットワイヤが巻回された略環形状を有する第1のボビンと、
第2のマグネットワイヤが巻回され、軸方向において前記第1のボビンと対向し、略環形状を有する第2のボビンと、
前記第1のボビンと前記第2のボビンとの間に挟まれた位置にあり、軟磁性体で構成され、内側にロータを収める円形の孔が形成されたステータ部と
を備え、
前記第1のボビンの前記第2のボビンに対向する面の外縁には、前記第1のマグネットワイヤの端部が接続される端子ピンを備えた第1の端子部が設けられ、
前記第2のボビンの前記第1のボビンに対向する面の外縁の前記第1の端子部に対向する部分には、前記第2のマグネットワイヤの端部が接続される端子ピンを備えた第2の端子部が設けられ、
前記第1の端子部と前記第2の端子部の互いの対向面の一部に、該対向面から相手の対向面方向に突出し、先端が平坦面でその突出高さが略一定の凸状形状部がそれぞれ設けられ、
前記第1の端子部側における前記凸状形状部の前記先端と前記第2の端子部側における前記凸状形状部の前記先端とが接触した状態で、前記第1の端子部および前記第2の端子部の変形が生じ、前記第1の端子部の前記端子ピンに接続された前記第1のマグネットワイヤおよび前記第2の端子部の前記端子ピンに接続された前記第2のマグネットワイヤに弛みが生じていることを特徴とするモータのコイルアッシー構造。
【請求項2】
前記凸状形状部を含む前記第1の端子部は、前記第1のボビンの前記ステータ部に接触する部分に対して前記第2の端子部の方向に突出しており、
前記凸状形状部を含む前記第2の端子部は、前記第2のボビンの前記ステータ部に接触する部分に対して前記第1の端子部の方向に突出しており、
前記第1の端子部における前記第2の端子部の方向への前記凸状形状部の前記先端までの突出の寸法と前記第2の端子部における前記第1の端子部の方向への前記凸状形状部の前記先端までの突出の寸法との和が、前記ステータ部の軸方向の厚み寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のモータのコイルアッシー構造。
【請求項3】
前記第1の端子部および前記第2の端子部に、一対の前記端子ピンが並列して設けられ、前記凸状形状部は該端子ピンの並列方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のモータのコイルアッシー構造。
【請求項4】
前記第1の端子部および前記第2の端子部の基部に溝が形成されており、この溝の部分で前記第1の端子部および前記第2の端子部が折れ曲がっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のモータのコイルアッシー構造。
【請求項5】
前記第1の端子部と前記第2の端子部とが互いに離れる方向に倒れていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモータのコイルアッシー構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のモータのコイルアッシー構造と、
該モータのステータ構造の内側に回転自在な状態で納められロータと
を備えることを特徴とするモータ。
【請求項7】
第1のマグネットワイヤが巻回された略環形状を有する第1のボビンと、
第2のマグネットワイヤが巻回され、軸方向において前記第1のボビンと対向し、略環形状を有する第2のボビンと、
前記第1のボビンと前記第2のボビンとの間に挟まれた位置にあり、軟磁性体で構成され、内側にロータを収める円形の孔が形成されたステータ部と
を備え、
前記第1のボビンの前記第2のボビンに対向する面の外縁には、前記第1のマグネットワイヤの端部が接続される端子ピンを備えた第1の端子部が設けられ、
前記第2のボビンの前記第1のボビンに対向する面の外縁の前記第1の端子部に対向する部分には、前記第2のマグネットワイヤの端部が接続される端子ピンを備えた第2の端子部が設けられ、
前記第1の端子部と前記第2の端子部の互いの対向面の一部に、該対向面から相手の対向面方向に突出し、先端が平坦面でその突出高さが略一定の凸状形状部がそれぞれ設けられ、
前記凸状形状部を含む前記第1の端子部は、前記第1のボビンの前記ステータ部に接触する部分に対して前記第2の端子部の方向に突出しており、
前記凸状形状部を含む前記第2の端子部は、前記第2のボビンの前記ステータ部に接触する部分に対して前記第1の端子部の方向に突出しており、
前記第1の端子部における前記第2の端子部の方向への前記凸状形状部の前記先端までの突出の寸法と前記第2の端子部における前記第1の端子部の方向への前記凸状形状部の前記先端までの突出の寸法との和が、前記ステータ部の軸方向の厚み寸法よりも大きいモータのステータ構造の製造方法であって、
間に前記ステータ部を挟んだ状態において、前記第1のボビンと前記第2のボビンとを軸方向で結合させる工程と、
前記結合させる工程において、前記第1の端子部における前記凸状形状部の前記先端と前記第2の端子部における前記凸状形状部の前記先端とを接触させることで、前記第1の端子部と前記第2の端子部とを変形させ、前記第1の端子部の前記端子ピンに接続された前記第1のマグネットワイヤを弛ませ、且つ、前記第2の端子部の前記端子ピンに接続された前記第2のマグネットワイヤを弛ませることを特徴とするモータのコイルアッシー構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータに配置された界磁コイルの巻線が接続される端子の構造に特徴のあるモータのステータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
クローポール構造のPM(パーマネントマグネット)型ステッピングモータが知られている。このPM型ステッピングモータは、ボビンにコイルが巻回され、このボビンが外側ヨークと内側ヨークを組み合わせた構造の内側に納められた第1のステータと、この第1のステータと同様な構造の第2のステータを備えている。そして、これら第1のステータと第2のステータが軸方向で重ねられてステータが構成されている。ステータの内側には、ロータがステータに対して回転可能な状態で配置されている。
【0003】
ところで、ステータ側に配置される界磁コイルのコイル線は、自動巻線機によってボビンに巻回されるが、端子部では張力がかかった状態となる。この張力を残したまま組み付けると断線の虞があるので、端子部近くにおけるコイル線に弛みをつける必要がある。この作業は、例えば、弛みを形成するためのピンを配置した状態で巻線作業を行い、その後に手作業でピンを除去するといった煩雑な作業となる。この作業は、製造コストの上昇、品質のバラツキといった点で問題がある。このコイル線に弛みをつける構造については、特許文献1に記載されている。特許文献1には、ボビンをステータ部に組み付けた際に、ボビンと一体となった端子部がステータ部によって内側から押されて動き、端子ピン近くのコイル線の引き回し部分に弛みを生じさせる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2011−78152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クローポール型の構造では、略環形状あるいは略筒形状のボビンの内側にステータ部を軸方向から挿入し、両者の結合が行われるが、特許文献1に記載の技術では、端子部が径方向外側に向かってステータ部から押される必要がある。このため、特許文献1に記載の技術では、予めボビンの端子部を変形させた状態でボビンとステータ部との結合を行う第1の方法、あるいは、ボビンの端子部の内側にステータ部を斜めから接触させて端子部を径方向外側の向きに押圧し、その状態を維持しつつステータ部をボビンの内側に嵌め込む第2の方法を採用する必要がある。しかしながら、第1の方法は、作業が煩雑であり、また端子部の変形が過度に行われることによる端子部の破損が生じる可能性がある。また、第2の方法は、ステータ部をボビンに対して傾けた状態で端子部の変形を行い、その後、ステータ部のボビンに対する傾き具合を調整しながらボビンとステータ部に挿入する煩雑で細かい作業が必要となる。これら作業は、自動化が困難であり、高コストであり、また不良が発生する可能性の高い。
【0006】
このような背景において、本発明は、組み立てコストの増加を招かずに端子付近のコイル線に弛みを形成できる技術を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、請求項1に記載の発明は、第1のマグネットワイヤが巻回された略環形状を有する第1のボビンと、第2のマグネットワイヤが巻回され、軸方向において前記第1のボビンと対向し、略環形状を有する第2のボビンと、前記第1のボビンと前記第2のボビンとの間に挟まれた位置にあり、軟磁性体で構成され、内側にロータを収める円形の孔が形成されたステータ部とを備え、前記第1のボビンの前記第2のボビンに対向する面の外縁には、前記第1のマグネットワイヤの端部が接続される端子ピンを備えた第1の端子部が設けられ、前記第2のボビンの前記第1のボビンに対向する面の外縁の前記第1の端子部に対向する部分には、前記第2のマグネットワイヤの端部が接続される端子ピンを備えた第2の端子部が設けられ、前記第1の端子部と前記第2の端子部の互いの対向面の一部に、該対向面から相手の対向面方向に突出し、先端が平坦面でその突出高さが略一定の凸状形状部がそれぞれ設けられ、前記第1の端子部側における前記凸状形状部の前記先端と前記第2の端子部側における前記凸状形状部の前記先端とが接触
した状態で、前記第1の端子部および前記第2の端子部の変形が生じ、前記第1の端子部の前記端子ピンに接続された前記第1のマグネットワイヤおよび前記第2の端子部の前記端子ピンに接続された前記第2のマグネットワイヤに弛みが生じていることを特徴とするモータのコイルアッシー構造である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、2つの端子部が接触することで、両端子部が変形し、各端子部の端子ピンに接続されているマグネットワイヤに弛みが生じる。結合する2つのボビンの端子部同士の接触により、マグネットワイヤに弛み(緩み)が生じるので、組み立ての工程が煩雑とならない。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記凸状形状部を含む前記第1の端子部は、前記第1のボビンの前記ステータ部に接触する部分に対して前記第2の端子部の方向に突出しており、
前記凸状形状部を含む前記第2の端子部は、前記第2のボビンの前記ステータ部に接触する部分に対して前記第1の端子部の方向に突出しており、前記第1の端子部
における前記第2の端子部の方向への
前記凸状形状部の前記先端までの突出の寸法と前記第2の端子部
における前記第1の端子部の方向への
前記凸状形状部の前記先端までの突出の寸法との和が、前記ステータ部の軸方向の厚み寸法よりも大きいことを特徴とする。請求項2に記載の発明によれば、第1のボビンと第2のボビンとを結合させた際に、寸法関係に起因して第1の端子部
の凸状形状部と第2の端子部
の凸状形状部との接触による両端子部の変形が生じ、マグネットワイヤに弛みが発生する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、
前記第1の端子部および前記第2の端子部に、前記端子ピンが並列して設けられ、前記凸状形状部は該端子ピンの並列方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項
4に記載の発明は、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の端子部および前記第2の端子部の基部に溝が形成されており、この溝の部分で前記第1の端子部および前記第2の端子部が折れ曲がっていることを特徴とする。請求項4に記載の発明によれば、端子部が溝の部分で折れ曲がるので、製品毎における端子部の変形の状態のバラツキが小さく、マグネットワイヤに生じる弛みの状態の再現性を高くできる。
【0013】
請求項
5に記載の発明は、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の端子部と前記第2の端子部とが互いに離れる方向に倒れていることを特徴とする。
【0014】
請求項
6に記載の発明は、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のモータのコイルアッシー構造と、該モータのステータ構造の内側に回転自在な状態で納められロータとを備えることを特徴とするモータである。
【0015】
請求項
7に記載の発明は、第1のマグネットワイヤが巻回された略環形状を有する第1のボビンと、第2のマグネットワイヤが巻回され、軸方向において前記第1のボビンと対向し、略環形状を有する第2のボビンと、前記第1のボビンと前記第2のボビンとの間に挟まれた位置にあり、軟磁性体で構成され、内側にロータを収める円形の孔が形成されたステータ部とを備え、前記第1のボビンの前記第2のボビンに対向する面の外縁には、前記第1のマグネットワイヤの端部が接続される端子ピンを備えた第1の端子部が設けられ、前記第2のボビンの前記第1のボビンに対向する面の外縁の前記第1の端子部に対向する部分には、前記第2のマグネットワイヤの端部が接続される端子ピンを備えた第2の端子部が設けられ、
前記第1の端子部と前記第2の端子部の互いの対向面の一部に、該対向面から相手の対向面方向に突出し、先端が平坦面でその突出高さが略一定の凸状形状部がそれぞれ設けられ、前記凸状形状部を含む前記第1の端子部は、前記第1のボビンの前記ステータ部に接触する部分に対して前記第2の端子部の方向に突出しており、
前記凸状形状部を含む前記第2の端子部は、前記第2のボビンの前記ステータ部に接触する部分に対して前記第1の端子部の方向に突出しており、前記第1の端子部
における前記第2の端子部の方向への
前記凸状形状部の前記先端までの突出の寸法と前記第2の端子部
における前記第1の端子部の方向への
前記凸状形状部の前記先端までの突出の寸法との和が、前記ステータ部の軸方向の厚み寸法よりも大きいモータのステータ構造の製造方法であって、間に前記ステータ部を挟んだ状態において、前記第1のボビンと前記第2のボビンとを軸方向で結合させる工程と、前記結合させる工程において、前記第1の端子部
における前記凸状形状部の前記先端と前記第2の端子部
における前記凸状形状部の前記先端とを接触させることで、前記第1の端子部と前記第2の端子部とを変形させ、前記第1の端子部の前記端子ピンに接続された前記第1のマグネットワイヤを弛ませ、且つ、前記第2の端子部の前記端子ピンに接続された前記第2のマグネットワイヤを弛ませることを特徴とするモータのコイルアッシー構造の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、組み立てコストの増加を招かずに端子付近のコイル線に弛みを形成できる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】発明の実施形態のステータの一部を示す分解斜視図である。
【
図2】発明の実施形態のステータの一部を示す拡大側面図である。
【
図3】発明の実施形態のステータの一部を示す拡大側面図である。
【
図4】発明の実施形態のステータの分解斜視図である。
【
図6】発明の実施形態のステータの一部を示す拡大側面図である。
【
図7】発明の実施形態のステータの一部を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(構成)
以下、図面を参照して、本発明を利用したクローポール構造のPM型ステッピングモータのステータ部分について説明する。
図1には、2つのボビン101,102と、この2つのボビン101と102の間に挟まれた状態で保持される第1のステータ部200が示されている。
図2には、
図1の一部を拡大した側面図が示されている。ボビン101と102は、同じ構造であり、軸方向の向きが反対(つまり、一方を他方に対して軸方向で反転させた状態)の位置関係を有している。
【0019】
ボビン101と102は、同じ構造であるので、ここでは、代表してボビン101について説明する。ボビン101は、樹脂製であり、樹脂を原料とした射出成形により形成されている。ボビン101は、全体として略環形状を有している。すなわち、ボビン101は、軸方向の長さの短い円筒構造を有する円筒部111、円筒部111の軸方向における一方の縁の部分からラジアル方向に立ち上がった円環部112、円筒部111の軸方向における他方の縁の部分からラジアル方向に立ち上がった円環部113を有している。円環部112と113の間の部分における円筒部111の外周面にマグネットワイヤとなるコイル線が巻回され、界磁コイル114が構成されている。
【0020】
円環部113は、第1のステータ部200の側に位置し、この円環部113のボビン102に対向する面の外縁(図の上部)には、円環部113と一体に成形されている端子部115が配置されている。端子部115には、端子ピン116と117が埋め込まれている。端子ピン116と117は、金属性であり、圧入により埋め込まれる。なお、端子ピン116と117は、射出成形時にインサート成形により端子部115に埋め込まれた状態とすることもできる。端子ピン116と117には、界磁コイル114の巻線の端部が絡げ配線により接続されている。
【0021】
すなわち、界磁コイル114の巻線の一方の端部は、リード
部120として引き出され、更に端子ピン116に絡げられることで、絡げ部118において端子ピン116に接続されている。また、界磁コイル114の巻線の他方の端部は、リード
部121として引き出され、更に端子ピン117に絡げられることで、絡げ部119において端子ピン117に接続されている。界磁コイル114の巻回作業および絡げ部118,119への絡げ作業は、機械巻線機を用いた自動作業により行われる。
【0022】
端子部115のボビン102に対向する側の面には、部分的に軸方向に突出した2箇所の凸形状部が設けられている。
図2では、一方の凸形状部123が見えている。凸状形状部123もボビン101の射出成形時に他の部分と同時に形成される。これは、図では見えていないもう一つの凸状形状部についても同じである。
【0023】
次に、ボビン101と同じ構造であるボビン102についても簡単に説明する。ボビン102は、ボビン101に対向する側に円環部132を有している。円環部132の上部の端子部115に対向する部分には、端子部115と同様の端子部135が設けられている。端子部135には、端子ピン136,137が埋め込まれた状態で配置されている。ボビン102には、界磁コイル134が巻回され、界磁コイル134の端部の一方は、図示しないリード部を経て、絡げ部138において端子ピン136に接続されている。界磁コイル134の端部の他方は、リード部141(
図2参照)を経て、絡げ部139において端子ピン137に接続されている。
【0024】
端子部135の端子部115に対向する側には、軸方向に突出した凸状形状部142,143が配置されている。凸状形状部142は、端子部115側の図では見えていない凸状形状部に対向する位置に設けられ、凸状形状部143は、端子部115側の凸状形状部123に対向する位置に設けられている。
【0025】
次に第1のステータ部200について説明する。第1のステータ部200は、内側にロータを収容するための円形の孔201が形成された略環状の構造を有している。この例において、第1のステータ200は、ステータ部材210,220を軸方向で積層した構造を有している。ステータ部材210,220は、軟磁性材料である電磁鋼板をプレス加工したものに、更に折り曲げ加工を施すことで製造されている。
【0026】
ステータ部材210は平たい略円環形状を有した円環部211、および円環部211の内側の縁からボビン101の内側の空間に向かって延在した複数の極歯212を有している。極歯212は、折り曲げ加工により図示する方向に折り曲げられている。極歯212は、周方向に沿って間隔をおいて、隣接するものの間で隙間を有した状態で複数が配置されている。
【0027】
ステータ部材220は平たい略円環形状を有した円環部221、および円環部221の内側の縁からボビン102の内側の空間に向かって延在した複数の極歯222を有している。極歯222は、折り曲げ加工により図示する方向に折り曲げられている。極歯222は、周方向に沿って間隔をおいて、隣接するものの間で隙間を有した状態で複数が配置されている。また、極歯212と222は、軸方向から見てずれた位置関係を有している。また、円環部211と221の上部には、端子部115,135と円環部221,221との干渉を防止する切り欠き部231が設けられている。
【0028】
また、
図2に示すように、AとBの寸法は、2A>Bを満たす関係に設定されている。すなわち、端子部115は、ボビン101の第1のステータ部200に接触する面101aの軸方向(
図2の左右の方向)における位置に対して、端子部135の方向に寸法Aで突出している。また、端子部135は、ボビン102のステータ部200に接触する面102aの軸方向における位置に対して端子部115の方向に寸法Aで突出している。ここで、これら2つの突出寸法の和2Aが第1のステータ部200の軸方向の厚み寸法Bよりも大きくなる設定とされている。この設定によれば、面101aをステータ部材210に接触させ、面102aをステータ部材220に接触させた際に、端子部115と135が図の左右の方向に傾くように変形する。
【0029】
図1に示すボビン101とボビン102の間に第1のステータ部200を挟んだ状態で、これら3つの部材を軸方向で重ねて結合した状態がステータ部材400として、
図4に示されている。ステータ部材400を得る工程において、間に第1のステータ部200を挟んだ状態で、ボビン101とボビン102を軸方向で結合させる。この際、
図3に示すように、面101aがステータ部材210に接触し、面102aがステータ部材220に接触する。当然、凸状形状部123と凸状形状部143も接触するが、ここで、2A>Bであるから、
図3に示すように端子部115と端子部135とが、互いに離れる方向(矢印の方向)に倒れるように変形する。仮に、2A≦Bである場合、この端子部115,135の変形は生じない。
【0030】
上記端子部115,135の変形により、端子ピン117(116)が界磁コイル114側に傾き、端子ピン137(136)が界磁コイル134側に傾く。この結果、リード部121(120)およびリード部141に弛みが生じる。すなわち、巻線機を用いて界磁コイル114の巻回を行い、更に絡げ部119の絡げを行うと、作業終了後の状態において、リード部121には、張力が加わった状態となる。これは、他のリード部においても同じである。ここで、
図3に示す端子部115,135の変形が生じると、絡げ部119が界磁コイル114側に傾き、絡げ部139が界磁コイル134側に傾くので、リード部121と141に弛みが生じる。これは、他のリード部においても同じである。
【0031】
図4に示すように、ステータ部材400は、軸方向の前後から第2のステータ部500および第3のステータ部600によって挟まれる。軸方向の前後から第2のステータ部500および第3のステータ部600によってステータ部材400が挟まれることで、
図5に示すステータ700が得られる。
【0032】
第2のステータ部500および第3のステータ部600は、軟磁性材料である電磁鋼板をプレス加工したものに、更に折り曲げ加工を施すことで製造されている。第2のステータ500は、円筒部501、円環部502、円環部502の内側の縁から軸方向に延在した複数の極歯503を有している。ここで、複数の極歯503は、周方向に特定の間隔で位置している。第3のステータ600は、円筒部601、円環部602、円環部602の内側の縁から軸方向に延在した複数の極歯603を有している。ここで、複数の極歯503は、周方向に特定の間隔で位置している。
【0033】
図5に示すステータ700として組み上げた状態において、複数の極歯212と複数の極歯503とが隙間を有した状態で互い違いに噛み合った位置関係となり、複数の極歯222と複数の極歯603とが隙間を有した状態で互い違いに噛み合った位置関係となる。
【0034】
図示省略されているが、ステータ700の内側にロータが回転自在な状態で納められる。ロータは、ステータ700の内側に隙間を隔てて納まる円筒形状を有し、外周に周方向に沿って交互に磁極が反転する着磁が行われた永久磁石を備えている。ロータの構造は通常のクローポール構造のPM型ステッピングモータのロータと同じである。
【0035】
(優位性)
自動巻線機を用いた界磁コイル114,134の巻回作業、および絡げ部118,119,138,139の絡げ作業は、作業の効率化に有利であるが、作業の終了後に巻線にテンションが加わった状態となるので、そのままでは、リード部(例えば符号120,121,141の部分)がその後の振動等に起因して断線する虞がある。上記の例によれば、ステータを組み上げる際に、
図3に示すように、端子部115が界磁コイル114に近づくように傾き、また端子部135が界磁コイル134に近づくように傾く。このため、リード部121と141に弛みが生じ、上記断線の虞が軽減される。
【0036】
また、このリード部121と141に弛みが生じる工程は、ステータ部材200を間に挟んでボビン101とボビン102とを軸方向で接近させ、結合させる際に行われる。この作業においては、端子部115,138を予め変形させた状態でのボビン同士の結合や、斜めからの組み付けを行うといった従来技術で問題となる煩雑な作業を必要としない。
【0037】
リード部121と141における弛みの具合は、
図2のAの値を設定することで、調整することができる。このため、コイル線の太さや材質に応じて弛み量を調整することが容易であり、高い汎用性が得られる。
【0038】
(その他)
予め端子部を界磁コイルから離れる方向に傾けておき、ボビンを結合させた際に、端子部が傾いた状態から起きて界磁コイル側に近づく変形をさせることで、端子ピンへのリード部に弛みを形成する構造も可能である。以下、この場合の一例を説明する。
図6には、ボビン101と102を結合させる前の段階で、ボビン101の端子部115と、端子部135の端子部135を互いに対向する方向(絡げ部119が界磁コイル114から離れる方向であり、絡げ部139が界磁コイル134から離れる方向)に予め傾けておいた構造が示されている。
【0039】
図6の状態において、リード部121,141には、張力が加わっている。そして、間に第1のステータ部200を挟んでボビン101と102を軸方向で接触させると、凸状形状部123と凸状形状部143とが接触し、端子部115と135が傾いた状態から起きる方向に変形する(
図7参照)。この端子台115と135の動きにより、リード部121と141に弛みが生じる。
【0040】
この場合、組み付け後に、傾斜していた端子ピン117と137が垂直に立つので、その後における端子ピン117,137への配線の作業等が行いやすい。特に端子ピン117,137にコネクタを接続する構造の場合、端子ピン117,137が垂直(あるいは垂直に近い角度)で立つので、コネクタを接続する作業が行い易い。
【0041】
また、
図6に示す例では、端子部115の第1のステータ部200の側の基部に、端子部115の幅方向に延在する溝である溝部125が設けられている。溝部125を設けることで、端子部115が、折れ曲がり、倒れ易い構造とされている。また、端子部115と同様に端子部135には、溝部145が設けられている。溝部125,145を設けておくことで、折れ曲がる位置が安定し、端子ピン117,137の位置精度を高く維持できる。この溝部125,145を設ける構造は、
図2に示す構造に適用することもできる。
【0042】
端子部115のみに凸状形状部を設ける構造、あるいは端子部135のみに凸状形状部を設ける構造も可能である。また、端子部115と135の両方に凸状形状部を設けない構造も可能である。これらの場合、
図2示す構造において、2A>Bが満たされるように各部の寸法を設定すればよい。凸状形状部が片側の端子部だけにある場合であっても、あるいは両側の端子部にない場合であっても、2A>Bの寸法関係であれば、
図3に示す場合と同様な端子部115,135の傾きを得ることができる。
【0043】
本モータはステッピングモータに限らず、同様な巻線構造を持つモータに使用できる。溝部125と145の位置は、界磁コイル側であってもよい。発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、モータに利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
101…ボビン、102…ボビン、111…円筒部、112…円環部、113…円環部、114…界磁コイル、115…端子部、116…端子ピン、117…端子ピン、118…絡げ部、119…絡げ部、120…リード部、121…リード部、123…凸状形状部、125…溝部、132…円環部、134…界磁コイル、135…端子部、136…端子ピン、137…端子ピン、138…絡げ部、139…絡げ部、141…リード部、142…凸状形状部、143…凸状形状部、145…溝部、200…第1のステータ部、201…孔、210…ステータ部材、211…円環部、212…極歯、220…ステータ部材、211…円環部、222…極歯、231…切り欠き部、400…ステータ部材、500…第2のステータ部、501…円筒部、502…円環部、503…極歯、600…第3のステータ部、601…円筒部、602…円環部、603…極歯、700…ステータ。