(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986752
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】皮革のなめし処理プロセス
(51)【国際特許分類】
C14C 3/28 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
C14C3/28
【請求項の数】10
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-16656(P2012-16656)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2012-158752(P2012-158752A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2014年12月17日
(31)【優先権主張番号】11000700.2
(32)【優先日】2011年1月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512024738
【氏名又は名称】ボックスマーク レザー プロイズヴォドーニャ イン トゥルゴヴィナ ディーオーオー
【氏名又は名称原語表記】BOXMARK LEATHER proizvodnja in trgovina d.o.o.
(74)【代理人】
【識別番号】100059306
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100171974
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】ダヴォリン,ヘルガ
【審査官】
中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第00990707(EP,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01690950(EP,A1)
【文献】
国際公開第01/032937(WO,A1)
【文献】
特開昭57−016100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68F 1/00− 3/04
C14B 1/00−99/00
C14C 1/00−99/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するドラム内で皮(hides)をミル処理する工程を含む皮革のなめし処理プロセスであって、以下の工程を含むことを特徴とする皮革のなめし処理プロセス。
(イ)皮(hides)(2)を回転するドラム(1)にてミル処理する工程であって、当該工程が以下のi),ii),iii)のサブ工程(sub-process)を含む工程、
i)回転するドラム(1)内にて皮(hides)(2)に加える初期ミル処理工程、
ii)次いで、回転するドラム(1)に設置された単一のまたは複数のノズル(4)より、化学薬剤の混合物を噴霧する工程、
iii)次いで、回転するドラム(1)内にて皮(hides)(2)を、処理後の皮(hides)(2)の絶対湿分が30から40%の範囲に収まるよう更にミル処理する工程、
(ロ)次いで、ドラム(1)の外部にて、皮(hides)(2)を乾燥する工程、
(ハ)次いで、皮(hides)(2)を回転するドラム(1)にて5から10時間最終ミル処理する工程
【請求項2】
初期ミル処理を5分から30分持続させることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記化学薬剤を5から120分の間噴霧することを特徴とする請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記工程(イ)のサブ工程iii)において、皮(hides)(2)を制御された雰囲気下におきミル処理することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記工程(イ)のサブ工程iii)において、皮(hides)(2)を加熱下におきミル処理することを特徴とする請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
皮(hides)(2)の絶対湿分が30〜40%の間に収まるまでドラム(1)内にて継続する前記工程(イ)のサブ工程iii)のミル処理の時間が1から6時間であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記工程(イ)のサブ工程iii)のミル処理をした後の皮(hides)(2)の絶対湿分が30%未満である場合には、皮(hides)(2)の絶対湿分の測定値が30から40%となるまで、回転するドラム(1)内にて皮(hides)(2)を水にて更に噴霧することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記工程(ロ)において、皮(hides)(2)の残留絶対湿分が5から10%の範囲になるまで、皮(hides)(2)を40から60度Cの高温にて乾燥することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記工程(ハ)において、ドラム(1)内にて乾燥条件下に皮(hides)(2)に施す最終ミル処理の温度が30度Cから50度Cの範囲であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記工程(ハ)を経た革(leather)に、更に仕上げ用噴霧コートを施すことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮革の処理プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮革のなめし処理プロセスについては種々の方法が知られている。そのような技術のうち、最近の技術として、なめし液を満たした回転ドラム内に皮革を投入し、前記皮革を回転処理する方法がある。回転処理する間、皮革はなめし液に水浸け(soaking)される。水浸け後は既知の種々の方法による乾燥工程に付されるが、乾燥工程そのものは本発明の主題ではなく、本発明とは関係しない。
【0003】
欧州特許第0990707号明細書は、ドラムに化学薬剤を満たし、皮革をなめし処理し、染色する方法であって、該ドラムへの化学薬剤と空気と水の注入時期を制御する方法を開示している。即ち、定常運転では前記ドラムがその軸周りに回転し、ブロアーにより空気が本ドラム内を循環する構造となっている。またドラム内の相対湿度があらかじめ設定された値以下とならないよう、発信機能を有する相対湿度計と連動するサーモスタットにより制御された加熱システムにより前記空気の温度を調節している。上記特許はさらに、少なくとも一つのノズルから水を霧状に噴霧する方法も開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0990707号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、皮革のなめし処理に際し、皮革をなめし液にさらす時間を短縮し、かつ皮革を乾燥するのに要する時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下に示す皮革のなめし処理プロセスにより解決される。
【0007】
皮(hides)、革(leather)製品若しくはそれらに類似の物品(以下、本明細書ではこれらの総称として「皮(hides)」の用語を用いる。)を回転ドラムまたは攪拌槽、または形態の異なる他の同種機能の装置に投入する。当該装置に投入した皮に化学薬剤を噴霧し、所望の湿分となるまで乾燥し、次いで乾燥と、再度回転ドラム内にてミル処理(milling)を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプロセスにより、皮革のなめし処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明方法の実施に適する装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面により本発明実施の一態様を説明する。
【0011】
図で、(1)はドラム、(2)は一または複数の皮(hides)、(3)はドラムの回転方向、(4)は化学薬剤を噴霧するノズル、(5)は前記化学薬剤の導入管を示す。
【0012】
本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、皮(hides)(2)の代わりに、化学薬剤の噴霧に曝すことによって表面を処理したい他の物品にも応用できる。
【0013】
本発明方法は、本質的には回転するドラム(1)内で行う後記するイ)、ロ)およびハ)の三つの工程よりなる。ドラム(1)の回転方向はいずれの方向であっても良い。本発明の目的からは、ドラム(1)は他の形態、例えば攪拌槽、球体容器、その他皮革表面処理に適した装置であっても良い。ドラム(1)は温度制御システムを備えているが、加熱システムを備えていることがより好ましい。またドラム(1)は、雰囲気制御システムを備えているが、湿度制御システムを備えていることがより好ましく、ドラム(1)内への水噴霧による湿度制御システムを備えていることが更に好ましい。
【0014】
皮(hides)(2)は、完成品または半完成品の形態で、ドラム(1)に投入されて最終加工製品となる。即ち皮(hides)(2)をドラム(1)内で特定の構成成分よりなる混合液で処理する。
【0015】
好ましい一実施態様においては、5から100枚の完成品形態の皮(hides)をドラム(1)に投入する。
【0016】
上述の実施態様においては、ドラム(1)は、直径が2から4メートルで、毎分10から30回転の速度で回転する。投入する皮(hides)(2)の量の目安は、大型哺乳類(例えば牛)一頭から得られる平均的な皮革の量である。
【0017】
本発明方法の実施態様の一例を以下詳述する。
(イ)第一工程
第一工程は皮(hides)(2)を化学薬剤で湿らせる工程、次いで適切な熱処理を施す工程よりなる。
【0018】
第一工程の最初の段階では、ドラム(1)内で皮(hides)(2)を5から30分にわたり回転させる。
【0019】
次いで、導入管(5)から導かれた化学薬剤の混合物をノズル(4)より噴霧する。ここで混合物の組成は問わない。またノズル(4)はドラム(1)の複数箇所に複数個設置されても良い。
【0020】
上記噴霧を続ける時間は、前記化学薬剤の混合物の濃度やドラム(1)に投入される皮(hides)(2)の量にもよるが、5から120分の範囲である。
【0021】
噴霧に引き続き、更にミル処理にかける。即ち皮(hides)(2)の絶対湿分(例えば、特にDIN EN ISO 4684の測定基準による湿分)が30%から40%の範囲になるまで、皮(hides)(2)を所要時間、好ましくは1から6時間にわたりドラム(1)内でミル処理する。より好ましくは、皮(hides)(2)を制御された雰囲気下、好ましくは加熱下におくのが良い。
【0022】
この工程の後、皮(hides)(2)の絶対湿分を測定し、もしその絶対湿分が30%
未満である場合には、ドラム(1)を回転させながら皮革(hides)(2)に追加的に水を噴霧する。
【0023】
(ロ)第二工程
第二工程は(やや湿った状態にある)皮(hides)(2)をその残留絶対湿分が5から10%の範囲になるまで、やや高めの40度Cから60度Cの温度範囲にて、乾燥させる工程である。
【0024】
この工程はドラム(1)の外部で、ラックその他従来技術により既知の手段により実行する。
【0025】
(ハ)第三工程
第三工程は皮(hides)(2)を再びドラム(1)内にて、30度Cから50度Cの温度下で5から10時間の間、乾燥条件下にミル処理する工程である。
【0026】
(ニ)任意的第四工程
任意に追加することのできる第四工程は、上記工程を経た革(leather)に仕上げ用噴霧コートを施す工程である。
【符号の説明】
【0027】
1.ドラム
2.皮(hides)
3.ドラムの回転方向
4.ノズル
5.導入管