(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
野菜、果物、花等の植物を栽培する際には、作業の省力化を図るために、チューブに一定間隔で孔(灌水孔)が形成された灌水用チューブを用いて灌水することがある。
しかし、灌水用チューブに送水した際、特に勢いよく灌水孔から水を噴出させるために水圧を上げると、灌水用チューブがその周方向に激しく回動して、目標とする位置から灌水位置がずれてしまうことがあった。
そこで、灌水用チューブとして、長尺のフィルムを重ね、その幅方向の両端部にて対向する内面同士を長手方向に沿って溶着して耳部を形成して得たものが提案されている(特許文献1,2)。この灌水用チューブでは、耳部が地面に当接することで回動範囲を制限している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に記載の灌水用チューブでは、回動の抑制が不充分であるため、灌水位置のずれ防止という目的を充分に果たしていなかった。
そこで、本発明は、送水した際の周方向の回動を充分に抑制できる灌水用チューブ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]長尺で管状の送水部と、該送水部の外周面に設けられた回転規制部とを備え、前記送水部は、その長手方向に沿って複数の灌水孔が形成され、前記回転規制部は、前記送水部の長手方向に沿った1本の帯状体であり、送水している際の、前記灌水孔と送水部内部の中心と回転規制部との角度θ(ただし、送水部内部の中心が角の頂点である。)が90°以上180°未満であることを特徴とする灌水用チューブ。
[2][1]に記載の灌水用チューブの製造方法であって、押出成形により加工用チューブを形成するチューブ形成工程と、前記加工用チューブの幅方向の一端にて、その内面同士を接合する接合工程と、加工用チューブの接合されていない部分を、該加工用チューブの長手方向に沿って所定の間隔で穿孔する穿孔工程とを有することを特徴とする灌水用チューブの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の灌水用チューブは、送水した際の周方向の回動を充分に抑制できる。
本発明の灌水用チューブの製造方法は、上記の効果を有する灌水用チューブを容易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<灌水用チューブ>
本発明の灌水用チューブの一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の灌水用チューブを示す。本実施形態の灌水用チューブ1は、送水部10と回転規制部20とを備える。
【0009】
送水部10は、長尺(例えば1m以上)で管状のものである。本実施形態における送水部10は、熱可塑性樹脂製の帯状フィルム11から構成され、内部が水の流路となっており、帯状フィルム11の長手方向に沿って複数の灌水孔H,H・・・が形成されている。
また、本実施形態における灌水用チューブ1は、送水部10の内部に水が流れていないときには、扁平状になっている。
水を送水していない際の送水部10の幅L
1は40〜70mmであることが好ましい。送水部10の幅L
1が前記下限値以上であれば、充分な水の送水量を確保でき、前記上限値以下であれば、灌水用チューブ1を地面の上に容易に配設できる。
帯状フィルム11の厚さは100〜300μmであることが好ましい。帯状フィルム11の厚さが前記下限値以上であれば、灌水用チューブ1に供給する水の圧力を高めにしても破裂しにくく、前記上限値以下であれば、充分な屈曲性を確保できる。
【0010】
送水部10を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどを用いることができる。また、帯状フィルムには、必要に応じて、顔料、染料、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、フィラー等が含まれてもよい。
【0011】
本実施形態では、灌水孔Hは、送水部10の長手方向に沿って一定の間隔でジグザグに形成されている。
灌水孔Hの、送水部10の長手方向における間隔Sは50〜300mmであることが好ましい。間隔Sが前記下限値以上であれば、適度な間隔で灌水させることができ、前記上限値以下であれば、畑において灌水されない部分が生じることを抑制できる。
灌水孔Hの孔径は、0.2〜1.0mmであることが好ましい。灌水孔Hの孔径が前記下限値以上であれば、灌水量を容易に多くすることができ、前記上限値以下であれば、畑において灌水されない部分が生じることを抑制できる。
【0012】
回転規制部20は、送水部10の長手方向に沿って連続的に形成された1本の帯状体であり、幅方向の一方の端部が送水部10の外表面に連繋している。
回転規制部20の幅L
2は、送水部10の幅L
1に対して7.0〜40.0%であることが好ましく、10.0〜30.0%であることがより好ましく、15.0〜25.0%であることがさらに好ましい。回転規制部20の幅L
2が前記下限値以上であれば、送水した際に、回転規制部20を確実に接地させることができ、また、送水部10の接地部分と回転規制部20の接地部分との間隔を充分に確保できるため、灌水用チューブ1の回動をより防止できる。しかし、幅L
2が前記上限値を超えると回動防止効果は頭打ちになるため、無駄が多くなる。
【0013】
送水している際の、灌水用チューブ1の長手方向に対して垂直な断面(
図2参照)において、灌水孔Hと送水部10の内部の中心Cと回転規制部20との角度θが90°以上180°未満であり、120〜140°であることが好ましい。ただし、角度θは、送水部10の内部の中心Cが角の頂点であり、角を構成する一方の線は、灌水孔Hの中心と送水部10の内部の中心Cとを結ぶ線であり、他方の線は、送水部10の内部の中心Cと回転規制部20の送水部10側の端部とを結ぶ線である。
前記角度θが前記下限値未満であっても前記上限値以上であっても回動抑制効果が不充分になる。また、角度θが前記範囲にあれば、送水した際に、灌水孔Hが上向きになるため、散水効果が高くなる。
【0014】
<灌水用チューブの製造方法>
(第1の製造方法)
上記灌水用チューブ1は、例えば、チューブ成形工程と接合工程と穿孔工程とを有する第1の製造方法により製造することができる。
チューブ形成工程は、押出成形により加工用チューブを形成する工程である。具体的には、チューブ成形工程では、環状ダイスを備えた押出機を用い、該押出機によって原料樹脂を溶融すると共に、環状ダイスから吐出させることによって、加工用チューブを得る。
【0015】
第1の製造方法における接合工程は、加工用チューブの幅方向の一端にて、その内面同士を接合する工程である。具体的には、接合工程では、加工用チューブを畳んで帯状とし、その帯状の状態で、幅方向の一端を、長手方向に沿って、加熱したヒートシールロールで挟む。これにより、対向する内面同士を連続的に熱溶着して接合する。この接合における接合部分は回転規制部20となる。
ヒートシールの温度および圧力は、加工用チューブの材質や厚み、ヒートシール速度等によって適宜決定される。
【0016】
第1の製造方法における穿孔工程は、加工用チューブの接合されていない部分(以下、「非接合部」という。)を、加工用チューブの長手方向に沿って所定の間隔で穿孔する工程である。
具体的に、穿孔工程では、上記加工用チューブの内部を拡げ、その状態のまま、加工用チューブの長手方向に沿って所定の間隔で非接合部の表面にレーザ光を照射して穿孔する。この穿孔によって、送水部10を得る。
内部を拡げる際には、加工用チューブの上方及び下方に吸引機を配置し、加工用チューブの上部と下部とを吸引機に吸引させる。
加工用チューブの吸引においては、内部の間隔が3〜5mmになるようにすることが好ましい。内部の間隔が前記下限値以上であれば、穿孔の際に加工用チューブの一方の面から他方の面に貫通することを防止できる。しかし、内部の間隔が前記上限値を超えるように吸引するのは困難になることがある。
穿孔時のレーザ光の強度は12〜20W/cm
2であることが好ましい。レーザ光の強度が前記下限値以上であれば、容易に穿孔でき、前記上限値以下であれば、容易に所定の孔径にすることができる。
【0017】
(第2の製造方法、第3の製造方法)
また、上記灌水用チューブ1は、帯状フィルムを管状化する接合工程の後に穿孔工程を有する第2の製造方法、又は、帯状フィルムを穿孔する穿孔工程の後に帯状フィルムを管状化する接合工程を有する第3の製造方法により製造することもできる。
【0018】
第2の製造方法における接合工程では、帯状フィルムをその長手方向に沿って移動させながら、フィルム折り機を用いて、帯状フィルムをその幅方向の中央にて連続的に折り返す。これにより、帯状フィルムの幅方向の一方の端部と他方の端部とを重ねる。なお、本発明において、「幅方向の中央」とは、幅方向の長さを等間隔に2等分する位置だけでなく、その等間隔に2等分する位置から幅方向の長さの10%以内の範囲の位置を含む。
次いで、折り返した帯状フィルムの端部同士を重ねたまま、その重ねた部分を、加熱したヒートシールロールで挟むことにより、連続的に熱溶着して接合し、管状化して加工用チューブを得る。この接合における接合部分は回転規制部20となる。ここで、「管状化」は、円管状である必要はない。
第2の製造方法における穿孔工程は、第1の製造方法における穿孔工程と同様である。
【0019】
第3の製造方法における穿孔工程では、帯状フィルムをその長手方向に沿って移動させながら、帯状フィルムの表面にレーザ光を照射して、帯状フィルムの長手方向に沿って所定の間隔で穿孔する。その際のレーザ光の強度は第1の製造方法と同様である。
第3の製造方法における接合工程では、穿孔後の帯状フィルムをその長手方向に沿って移動させながら、フィルム折り機を用いて、帯状フィルムの幅方向の中央にて連続的に折り返す。これにより、帯状フィルムの幅方向の一方の端部と他方の端部とを重ねる。次いで、これら端部を重ねたまま、その重ねた部分を、加熱したヒートシールロールで挟むことにより、連続的に熱溶着し、接合して、管状化する。この接合によって送水部10が形成され、また、接合部分が回転規制部20となる。
【0020】
<灌水用チューブの使用方法・作用効果>
上記灌水用チューブ1は、以下のように使用される。
すなわち、まず、灌水用チューブ1を畑に所定の配置で敷設し、灌水用チューブ1の長手方向の一方の端部を水道の蛇口に接続すると共に他方の端部を縛るなどして封止した後、水道の蛇口を開いて送水する。これにより、送水部10に水を流し、
図2に示すように、灌水孔Hから水Wを噴出させて畑に灌水する。
灌水用チューブ1の灌水孔Hは、1本の帯状の回転規制部20に対して上記所定の角度で形成されているため、送水した際には、回転規制部20が地面Gに押し付けられ、灌水用チューブ1の回転が規制される。そのため、灌水用チューブ1の周方向の回動を防止でき、目標位置からの灌水位置のずれを充分に防止できる。
【0021】
<他の実施形態>
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、灌水孔はジグザグに形成されていなくてもよく、長手方向の同じ位置に形成されてもよい。その場合、孔の配置は一列であってもよいし、複数列であってもよい。また、長手方向の間隔は一定間隔である必要はなく、不定の間隔であってもよい。
本発明における回転規制部は、送水部の長手方向に断続的に形成されてもよい。
灌水用チューブを製造する際の穿孔工程ではレーザ光を照射して穿孔したが、加工用チューブ又は帯状フィルムに穿孔ピンを突き刺して穿孔してもよい。
【0022】
また、本発明の灌水用チューブは、上記第1〜3の製造方法以外の方法でも製造することができる。例えば、押出機を用い、本発明の灌水用チューブの断面に対応する孔を有するダイスから、溶融させた熱可塑性樹脂を吐出させることにより、本発明の灌水用チューブを製造することができる。