特許第5986786号(P5986786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986786二重構造エアゾール缶に収納される内装パウチ
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  • 特許5986786-二重構造エアゾール缶に収納される内装パウチ 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986786
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】二重構造エアゾール缶に収納される内装パウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/06 20060101AFI20160823BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20160823BHJP
   B65D 81/32 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B65D77/06 F
   B65D65/40 D
   B65D81/32 U
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-91285(P2012-91285)
(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-220818(P2013-220818A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(73)【特許権者】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】栗山 幸治
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸二
(72)【発明者】
【氏名】山口 円
(72)【発明者】
【氏名】柴田 拓生
【審査官】 秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−231644(JP,A)
【文献】 特開平11−198950(JP,A)
【文献】 特開平11−138697(JP,A)
【文献】 特開2002−274578(JP,A)
【文献】 特開平08−104357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40、77/06、81/32、83/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強アルカリ性成分を含有する第一剤及び酸性成分から成る第二剤から成る酸化染毛剤を同時に吐出させ得る二重構造エアゾール缶に収納される、前記第一剤を収納する第一の内装パウチ及び第二剤を収納する第二の内装パウチから成る内装パウチにおいて、
前記第一の内装パウチが少なくとも、ポリオレフィン内層/内層側接着樹脂層/アルミニウム箔/外層側接着樹脂層/熱可塑性樹脂外層の層構成を有し、前記第二の内装パウチが少なくとも、ポリオレフィン内層/内層側接着樹脂層/アルミニウム箔/外層側接着樹脂層/熱可塑性樹脂外層の層構成を有し、前記第一の内装パウチの内層側接着樹脂層の接着樹脂が、ポリエーテル系ウレタン樹脂から成り、前記第二の内装パウチの内層側接着剤樹脂層の接着樹脂が、ポリエステル系ウレタン樹脂から成ることを特徴とする二重構造エアゾール缶に収納される内装パウチ。
【請求項2】
前記第一の内装パウチ及び/又は前記第二の内装パウチのポリオレフィン内層が、線状低密度ポリエチレンから成る請求項1記載の二重構造エアゾール缶に収納される内装パウチ。
【請求項3】
前記第一の内装パウチ及び/又は第二の内装パウチのポリオレフィン内層と内層側接着樹脂層の間に、接着樹脂層/熱可塑性樹脂層が更に形成されている請求項1又は2記載の二重構造エアゾール缶に収納される内装パウチ。
【請求項4】
前記第一の内装パウチにおける前記熱可塑性樹脂層が、ポリアミド樹脂から成る請求項記載の二重構造エアゾール缶に収納される内装パウチ。
【請求項5】
前記第二の内装パウチにおける前記熱可塑性樹脂層が、ポリエステル樹脂から成る請求項3又は4記載の二重構造エアゾール缶に収納される内装パウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一剤及び第二剤から成る酸化染毛剤を同時に吐出可能な二重構造エアゾール缶に収納される内装パウチに関するものであり、より詳細には、バリア性に優れていると共に、層間接着性及び耐衝撃性に優れた内装パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
強アルカリ性成分を含有する第一剤及び酸性成分から成る第二剤から成る酸化染毛剤を一つのエアゾール型容器に収納し、これらの同時吐出を試みた二重構造エアゾール缶は従来より公知である。
このような二重構造エアゾール缶に収納される、酸化染毛剤においては、第一剤は染料とアンモニアを主要成分とする強アルカリ性成分からなり、第一剤の成分が保存中に空気中の酸素と接触すると、第一剤が化学的に変質し染毛機能も低下し、酸素との接触を続けると染毛不能となってしまうので、第一剤を収納する内装パウチにおいては、高度の酸素遮蔽性(バリア性)が要求されると共に、内容物成分の内装パウチ外への揮散による消失を阻止する必要もあり、内装パウチ本体において高いガス遮蔽性機能を備えることが必須となる。また、強いアルカリ性成分による層材料の腐食や層間剥離が防止されていることも要求される。
【0003】
また第二剤は過酸化水素を主要成分とする酸化性の酸性成分からなり、酸化剤の過酸化水素の分解に由来して発生した酸素による内部膨張圧への抵抗性が要求されると共に、内容物の内装パウチ外への揮散による消失を阻止することも必要である。また第一剤用内装パウチと同様に、層材料の腐食や層間剥離が防止されていることも要求される。
【0004】
本出願人等は、このような二重構造エアゾール缶に収納される酸化染毛剤の第一剤及び第二剤のそれぞれに適した内装パウチとして、各々の内装パウチが金属箔と熱可塑性樹脂からなる積層材料あるいは熱可塑性樹脂から構成され、内装パウチの少なくともいずれかが金属箔と熱可塑性樹脂からなる積層材料から構成されることを特徴とする、染毛剤における二重構造エアゾール缶容器に収納される内装パウチを提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4332444号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記二重構造エアゾール缶に収納される内装パウチは、酸化染毛剤における性質の異なる第一剤及び第二剤をそれぞれの性質を変化させることなく保存可能であると共に、層間剥離やブリスター(膨れ)の発生もなく、優れたものであるが、落下等により過度の衝撃を受けると、層間剥離を生じるおそれがあることがわかった。
また一般にエアゾール缶は40℃以上の高温環境で保存しないことが定められており、通常の環境下では上記内装パウチは優れた性能を保持できるものであるが、安全を見越して40℃付近での高温環境下においても上述した性能が維持されていることが望ましい。
【0007】
従って本発明の目的は、酸化性染毛剤の第一剤及び第二剤を収納可能な、二重構造エアゾール缶の内装パウチにおいて、落下衝撃等を受けた場合にも層間剥離を生じることが有効に防止された内装パウチを提供することである。
本発明の他の目的は、比較的高温の環境下においても、優れた性能を維持可能な内装パウチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、強アルカリ性成分を含有する第一剤及び酸性成分から成る第二剤から成る酸化染毛剤を同時に吐出させ得る二重構造エアゾール缶に収納される、前記第一剤を収納する第一の内装パウチ及び第二剤を収納する第二の内装パウチから成る内装パウチにおいて、 前記第一の内装パウチが少なくとも、ポリオレフィン内層/内層側接着樹脂層/アルミニウム箔/外層側接着樹脂層/熱可塑性樹脂外層の層構成を有し、前記第二の内装パウチが少なくとも、ポリオレフィン内層/内層側接着樹脂層/アルミニウム箔/外層側接着樹脂層/熱可塑性樹脂外層の層構成を有し、前記第一の内装パウチの内層側接着樹脂層の接着樹脂が、ポリエーテル系ウレタン樹脂から成り、前記第二の内装パウチの内層側接着剤樹脂層の接着樹脂が、ポリエステル系ウレタン樹脂から成ることを特徴とする二重構造エアゾール缶に収納される内装パウチが提供される。
【0009】
本発明の二重構造エアゾール缶に収納される内層パウチにおいては、
1.前記第一の内装パウチ及び/又は前記第二の内装パウチのポリオレフィン内層が、線状低密度ポリエチレンから成ること、
.前記第一の内装パウチ及び/又は第二の内装パウチのポリオレフィン内層と内層側接着樹脂層の間に、接着樹脂層/熱可塑性樹脂層が更に形成されていること、
.前記第一の内装パウチにおける前記熱可塑性樹脂層が、ポリアミド樹脂から成ること、
.前記第二の内装パウチにおける前記熱可塑性樹脂層が、ポリエステル樹脂から成ること、
が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内装パウチにおいては、二剤式の酸化染毛剤の容器として、内容物である染毛剤の染毛機能の低下や内容物成分の内装パウチ外への揮散による消失もなく、また内装パウチの腐食や層間剥離、或いはブリスターの発生が有効に防止されていると共に、落下衝撃を受けた場合にも、層間剥離等の発生が有効に防止されている。
また本発明の第一の内装パウチ及び第二の内装パウチにおいては、酸化染毛剤の第一剤及び第二剤をそれぞれ充填し、これを1本のエアゾール缶に収納し、同一の加圧ガスにより加圧噴射されることにより、第一剤及び第二剤を一定の比率量で混合を行うことができる。
本発明の上記効果は後述する実施例の結果からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】二重構造エアゾール缶の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一の内装パウチ)
本発明の二重構造エアゾール缶に収納される第一の内装パウチに収納される第一剤は、前述した通り、染料とアンモニアを主要成分とする強アルカリ性成分から成っている。
従来より、二重構造エアゾール缶に収納される内装パウチの構成は、内層は耐湿性やヒートシール性等の見地からポリオレフィン樹脂から構成されることが望ましく、また中間層として内容物である第一剤及び第二剤の透過揮散を防止するためにアルミニウム箔等の金属箔が使用され、更に外層として基材樹脂となる熱可塑性樹脂が使用されており、本発明の第一の内装パウチにおいても、基本的な構成は、ポリオレフィン内層/内層側接着樹脂層/アルミニウム箔/外層側接着樹脂層/熱可塑性樹脂外層から成っている。
【0013】
このような基本構成を有する内装パウチに、酸化染毛剤の第一剤を収納すると、内層を構成するポリオレフィン樹脂はガス透過性が高く、中間層を構成するアルミニウム箔はガス遮断性が高いことから、ポリオレフィン内層を透過した強アルカリ成分はアルミニウム箔で遮断され、ポリオレフィン内層とアルミニウム箔層の間に位置する接着樹脂層に留まることになる。その結果、強アルカリ性成分によって接着樹脂が変質劣化して、接着強度が低下して層間剥離を生じると共に、強アルカリ性成分とアルミニウムが反応して水素が発生し、ブリスターが発生すると考えられる。
更に、従来の内装パウチにおいては、酸変性熱可塑性接着樹脂を用いた粉末コートラミネーションにより積層されていたことから、接着に際して、ポリオレフィン内層に付着させた粉末を加熱溶融することが必要であり、この際ポリオレフィン内面層も一時的に溶融し、冷却の過程で結晶化することから脆化して、落下衝撃性が低下していたと考えられる。
【0014】
本発明においては、このような見地から、第一内装パウチのポリオレフィン内層とアルミニウム箔層の間に用いる内層側接着樹脂として、特に耐アルカリ性に優れると共に、ドライラミネーションにより接着可能なポリエーテル系ウレタン樹脂を用いることが重要な特徴であり、これにより、優れた層間密着性を実現すると共に、耐衝撃性を向上することが可能になる。
ポリエーテル系ウレタン樹脂は、イソシアネート成分と、ポリオール成分としてポリエーテルポリオールを用いて成るウレタン樹脂であり、本発明においては、従来より接着樹脂として使用されているものを使用することができるが、耐アルカリ性の点から特に架橋密度の高いものが望ましいことから、イソシアネート成分の配合量が多いものを好適に使用することができる。
尚、内層側接着樹脂の塗布量は、2.0〜6.0g/mの範囲にあることが好ましい。
【0015】
このような架橋密度の高いポリエーテル系ウレタン樹脂としては具体的には、下記のイソシアネート成分及びポリエーテルポリオール成分から成るものを挙げることができる。
イソシアネート成分としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;水添ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添トリレンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート類;トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオホスフェートなどの芳香族ポリイソシアネート類、が挙げられ、これらを単独にもしくは2種以上を混合して用いることができ、さらにこれらの変性体を用いることもできる。
耐アルカリ性に優れたポリエーテル系ウレタン樹脂としてイソシアネート成分の配合比を多くする場合、TDI、MDIなどの芳香族ポリイソシアネート類を用いることが特に好ましい。
またポリエーテルポリオール成分としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0016】
また本発明の第一の内装パウチにおいて、ポリオレフィン内層は、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)、アイソタクテイツクまたはシンジオタクテックポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体等のオレフィン系樹脂から構成されるが、特に耐衝撃性の点で、線状低密度ポリエチレンを好適に使用することができる。
この線状低密度ポリエチレンとしては、密度が0.91乃至0.94g/cmの範囲にあるものを好適に使用することができる。
ポリオレフィン内層においては、ヒートシール性の点からフィルムは未延伸であることが好適である。
【0017】
更に熱可塑性樹脂外層としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、オレフィン系樹脂等、従来公知の包装容器の積層材料の基材として用いられている熱可塑性樹脂を使用し得るが、落下衝撃等に対する耐性を向上するために、機械的強度に優れた熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド樹脂を用いることができる。中でもポリエチレンテレフタレートやナイロン6、ナイロン6,6等を好適に使用することができる。この熱可塑性樹脂外層においては、未延伸又は延伸フィルムのいずれも用いることができる。
またアルミニウム箔としては、従来包装材料に用いられていたものを使用することができ、表面に熱可塑性樹脂の保護層が設けられているものであってもよい。
【0018】
熱可塑性樹脂外層とアルミニウム箔を接着するために用いる外層側接着樹脂は、内層側接着樹脂のように強アルカリ性成分の影響を受けることがないので、上述した熱可塑性樹脂とアルミニウム箔とを接着し得る限り、従来公知の接着樹脂を用いることができるが、内層側接着樹脂と同様にウレタン系接着剤であることが、積層を容易にする上で望ましい。
ウレタン系接着剤であれば特に制限はなく、上述したポリエーテル系ウレタン樹脂のみならず、ポリオール成分としてポリエステルポリオールを用いて成るポリエステル系ポリウレタン樹脂から成る接着樹脂を用いることもでき、各内装パウチの層間の接着に用いられる何れかの接着樹脂と同じ接着樹脂を用いることが、生産性の点で望ましい。
尚、外層側接着樹脂の塗布量は、2.0〜6.0g/mの範囲にあることが好ましい。
【0019】
ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、具体的には、前述したポリエーテル系ポリウレタン樹脂に用いたイソシアネート成分と、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3′−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類若しくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール、或いはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオールから得られるものを例示できる。
ポリエステルポリオール成分とイソシアネート成分とを配合する場合、ポリエステルポリオール成分を多くするのが好ましく、イソシアネート成分としては脂肪族ないし脂環族が好ましい。
接着方法は、用いる接着剤によって従来公知の接着方法から適宜選択できるが、上述したウレタン系接着樹脂を用いる場合には、前述したようなポリオレフィン内層の脆化を生じることなく、効率よく強固に層間を接着可能なドライラミネーション法により接着することが好適である。
【0020】
第一の内装パウチにおいては、上記基本構造における各層の厚みは、ポリオレフィン内層は、20乃至200μm、特に50乃至120μmの範囲にあることが好ましく、またアルミニウム箔は、5乃至15μm、特に7乃至12μmの範囲にあることが好ましく、熱可塑性樹脂外層は、10乃至25μmの範囲にあることが好ましい。
【0021】
第一の内装パウチの好適な層構成は、これに限定されるものではないが、以下のものを例示できる。
(内層)ポリエチレン/ポリエーテル系ウレタン接着樹脂/アルミニウム箔/ポリエーテル系ウレタン接着樹脂/ポリエチレンテレフタレート(外層)
(内層)ポリエチレン/ポリエーテル系ウレタン接着樹脂/アルミニウム箔/ポリエステル系ウレタン接着樹脂/ナイロン(外層)
尚、第一の内装パウチにおいて、上記基本構成に他の層を更に組み合わせることも可能であり、その場合は以下のようにポリアミドからなる層を形成するのが好ましい。
(内層)ポリエチレン/ポリエーテル系ウレタン接着樹脂/ナイロン/ポリエーテル系ウレタン接着樹脂/アルミニウム箔/ポリエステル系ウレタン接着樹脂/ポリエチレンテレフタレート(外層)
アルミニウム箔よりも内側にポリエステルからなる層を形成することは、ポリエステルが加水分解してしまうため好ましくない。
【0022】
(第二の内装パウチ)
本発明の二重構造エアゾール缶に収納される第二の内装パウチに収納される第二剤は、過酸化水素を主要成分とする酸性成分から成っており、前述した第一の内装パウチと同様、第二の内装パウチにおいても、過酸化水素の分解により発生する酸素がアルミニウム箔に接触して水素が発生し、ブリスター発生の原因になると考えられる。
このような観点から、第二の内装パウチにおいても第一の内装パウチと同様、ポリオレフィン内層/内層側接着樹脂層/アルミニウム箔/外層側接着樹脂層/熱可塑性樹脂外層という基本構成において、内層側接着樹脂として耐酸性に優れたポリエステル系ウレタン樹脂から成る接着樹脂を用いることが望ましい。またポリオレフィン内層及び熱可塑性樹脂外層は第一の内装パウチと同様のものを用いることができ、第一の内層パウチと同様に、ドライラミネーションにより積層することが好適である。
尚、ポリエステル系ポリウレタン樹脂の耐酸性を向上させる手法としては、ポリエステルポリオール成分に多塩基酸を配合ないし末端に反応させることが好ましい。
多塩基酸としては、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、マレイン酸等が挙げられ、これらの無水物も使用でき、ポリエステルポリオール成分に対し0.1〜20重量%程度の量で配合することが好ましい。
また接着促進剤として、公知のシランカップリング剤やリンの酸素酸等を、多塩基酸と共に添加することもできる。
尚、内層側接着樹脂の塗布量は、2.0〜6.0g/mの範囲にあることが好ましい。
【0023】
第二の内装パウチにおいて、上記基本構造における各層の厚みは、ポリオレフィン内層は、20乃至200μm、特に50乃至120μmの範囲にあることが好ましく、またアルミニウム箔は、5乃至15μm、特に7乃至12μmの範囲にあることが好ましく、熱可塑性樹脂外層は、10乃至25μmの範囲にあることが好ましい。
【0024】
第二の内装パウチにおいても、上述した基本構成に他の層を更に組み合わせることも可能であり、特にポリオレフィン内層とアルミニウム箔の間に、上述した耐衝撃性熱可塑性樹脂からなる層を設けることが好適である。例えば、耐衝撃性熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレートを、ポリオレフィン内層とアルミニウム箔の間に形成することにより、耐衝撃性のみならず、耐酸性をも向上することができる。尚、耐衝撃性の向上という点では、アルミニウム箔よりも内側にナイロンからなる層を形成することも可能であるが、この場合にはナイロンが酸化劣化し、ブリスターの発生の原因になるおそれがある。
ポリオレフィン内層と耐衝撃性熱可塑性樹脂層の接着に好適な樹脂は特に限定されないが、他の層間の接着に用いた樹脂の何れかと同じ接着樹脂を併用するのが、生産効率上好ましい。
第二の内装パウチの層構成は、これに限定されるものではないが、以下のものを例示できる。
(内層)ポリエチレン/ポリエステル系ウレタン接着樹脂/アルミニウム箔/ポリエステル系ウレタン接着樹脂/ポリエチレンテレフタレート(外層)
(内層)ポリエチレン/ポリエステル系ウレタン接着樹脂/ポリエチレンテレフタレート/ポリエステル系ウレタン接着樹脂/アルミニウム箔/ポリエステル系ウレタン接着樹脂/ポリエチレンテレフタレート(外層)
(内層)ポリプロピレン/ポリエステル系ウレタン接着樹脂/ポリエチレンテレフタレート/ポリエステル系ウレタン接着樹脂/アルミニウム箔/ポリエステル系ウレタン接着樹脂/ポリエチレンテレフタレート(外層)
【0025】
(エアゾール缶)
本発明で上記内装パウチを収納して成る二重構造エアゾール缶1は、これに限定されるものではないが、図1に示すように、金属缶2の開口部に、中央開口に内容物吐出機構3が設置された蓋4をカシメて成るエアゾール缶の内部に、染毛剤の第一剤を充填した第一の内装パウチ5及び染毛剤の第二剤を充填した第二の内装パウチ6を収納して、窒素ガスなどの圧力ガスにより二種の充填物を同時に吐出させうる、染毛剤における二重構造エアゾール缶容器である。
二つの内装パウチは図示されているように、第一の内装パウチ5を内容物吐出機構3に設けた第一通路7に接続可能とし、第二の内装パウチ6を内容物吐出機構3に設けた第二通路8に接続可能とし、第一剤用の第一通路7と第二剤用の第二通路8とが接触しないように形成されている。第一剤は第一通路7を通り、第二剤は第二通路8を通って、それぞれ第一のステム9及び第二のステム10の先端まで第一剤と第二剤を混合することなく分離状態で吐出することができる。
第一及び第二の内装パウチが1本のエアゾール缶に収納されているので、消費者の指先のワンタッチ操作により、二剤が同時に吐出すると共に、一定の比率量にて混合される。 エアゾール缶の加圧ガスとしては、通常の窒素ガス又は二酸化炭素ガスあるいは亜酸化チッソガスやアルゴンガスなどの一種または複数種のガスが封入される。
尚、エアゾール缶の吐出口に櫛やブラシ歯を一体的に取り付けて、吐出混合された染毛剤をそれらに塗りつけて頭髪を梳くようにして、染毛するようにしてもよい。
【0026】
第一及び第二の内装パウチにそれぞれ収納される、染料とアンモニアを主要成分とする強アルカリ性成分からなる第一剤、過酸化水素を主要成分とする酸化性の酸性成分からなる第二剤としては、これに限定されないが、以下のものを例示することができる。
強アルカリ性成分からなる第一剤としては、アンモニア及びフェニレンジアミン類やアミノフェノール類などの酸化染料中間体、並びに4−ニトロ−o−フェニレンジアミンや1,4−ジアミノアントラキノンなどの直接染料が配合されており、第一剤の成分が保存中に空気中の酸素と接触すると、化学的な変質を生じ染毛機能も低下し、酸素との接触を続けると染毛不能となってしまう。
酸化性の酸性成分からなる第二剤においては、酸化剤の過酸化水素及びフェナンセチンやEDTAなどの安定剤やpH調整剤が配合されている。
【実施例】
【0027】
(各内装パウチの作成)
表1および2に示した層構成の積層フィルムをドライラミネーション法により作成した。
表中、第1層が外側で、第7層まであるものは、耐衝撃性、耐内容物性の向上を目的として、アルミニウム箔の内層側、ポリオレフィン内層との間に熱可塑性樹脂を積層したものである。
尚、表1及び2において、「12PET」は12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、「15NY」は15μmの二軸延伸ナイロンフィルム、「9AL」は9μmのアルミニウム箔、「60PP」は60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム、「60PE」は60μm,「100PE」は100μmの無延伸線状低密度ポリエチレンフィルム、をそれぞれ表わす。
また、各層間の接着剤として、エーテル系はポリエーテル系ウレタン樹脂接着剤を塗布量3.0g/m、エステル系はポリエステル系ウレタン樹脂接着剤を塗布量4.0g/m、耐酸性エステル系は耐酸性を付与されたポリエステル系ウレタン樹脂接着剤を塗布量4.0g/m、を使用した。
作成した各積層フィルムを用いて、内容量60gの第一内装パウチおよび第二内装パウチをそれぞれ製袋した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
(エアゾール缶の作成)
第一内装パウチおよび第二内装パウチを、表3に示した組み合わせにより、図1に示した内容物吐出機構3の第一通路7、第二通路8にそれぞれ接続し、各パウチ内部を真空吸引しておき、金属缶2に挿入した。
内容物吐出機構3が取り付けられている蓋4を、圧力ガスとして窒素を所定圧(0.48MPa)まで充填しつつ、金属缶2のビード部にカシメて固定した。
その後、各ステム9,10から市販染毛剤の第一剤、第二剤を順次充填した。第一剤のpHは約10,第二剤のpHは約3であった。
【0031】
(保管試験)
作成したエアゾール缶を、45℃雰囲気の促進条件で保管し、1ヶ月区、2ヶ月区、3ヶ月区、の経時区ごとに以下の評価を行い、不良があった場合、表3の該当欄に保管温度と経時区を記載した。
(開缶評価)
所定条件の経時後、室温まで戻してから、製品特性として、重量変化、圧力、噴射状態、各剤のPH測定を行った。これらの項目については、各サンプルとも適正範囲であった。
その後、缶を解体して、各内装パウチの層間剥離、ブリスターの発生状態を確認した。
(落下試験)
所定条件の経時後、5℃にて1日保管後、1mの高さから正立姿勢で3回、横倒し姿勢で3回落下した。その後、缶を解体して内装パウチの状態を確認した。
(評価)
各内装パウチの単独評価において、落下試験で破袋が生じたもの、層間剥離が生じたものは×とした。ブリスターについては、1ヶ月区で発生したものは×、2ヶ月区で発生し、他の項目に不良のなかったものは△、3ヶ月区で発生し、他の項目に不良のなかったものは○とした。いずれの評価項目でも不良がなかったものを◎とした。
エアゾール缶としての総合評価は、悪かった方の内装パウチの評価を採用した。
【0032】
【表3】
【0033】
(結果の考察)
第一の内装パウチに関し、1−1と1−2の比較から、第一内装パウチの内層側接着樹脂としては、耐アルカリ性に優れるポリエーテル系ウレタン樹脂接着剤が適切なことが分かった。
1−2と1−5の比較から、アルミニウム箔の内側に二軸延伸ナイロン(ポリアミド樹脂)を追加すると耐内容物性が向上することが分かった。しかし1−4によると、アルミニウム箔の内側に追加する熱可塑性樹脂が二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル樹脂)の場合、かえって耐内容物性が悪化した。これは、透過した強アルカリ性成分によりポリエステル樹脂が加水分解されるためと推定される。
また1−2と1−6の比較から、最内層のポリオレフィン内層を厚くすることによっても耐内容物性が向上することが分かった。
【0034】
第二の内装パウチに関し、2−1と2−2の比較から、第二内装パウチの内層側接着樹脂としてはポリエステル系ウレタン樹脂接着剤が適切であり、さらに2−2と2−4の比較から、耐酸性を付与されたポリエステル系ウレタン樹脂接着剤がより優れることが分かった。
2−4と2−6の比較から、アルミニウム箔の内側に二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル樹脂)を追加すると耐内容物性が向上することが分かった。しかし2−5によると、アルミニウム箔の内側に追加する熱可塑性樹脂が二軸延伸ナイロン(ポリアミド樹脂)の場合、かえって耐内容物性が悪化した。これは、透過した酸性成分によりポリアミド樹脂が酸化劣化するためと推定される。
1−2と1−3の比較、および2−2と2−3の比較から、最内層のポリオレフィン内層としては線状低密度ポリエチレンが好適であり、ポリプロピレンは落下強度の点で劣ることが分かった。しかしながら2−7によれば、アルミニウム箔の内側に適切な熱可塑性樹脂を追加すれば耐衝撃性が向上し、ポリオレフィン内層としてポリプロピレンを採用可能なことが分かった。
【0035】
エアゾール缶としての総合評価は、表3のNo.9(第一内装パウチ1−5、第二内装パウチ2−6)が◎、No.10(第一内装パウチ1−6、第二内装パウチ2−7)が○であったが、各内装パウチの単独評価結果からすれば、第一内装パウチとして1−5、第二内装パウチとして2−7を選択しても、総合評価で◎の評価が得られると考えられる。
また、第一内装パウチとして1−6、第二内装パウチとして2−4を含めた選択肢から組み合わせても、○の評価は得られると考えられる。
総合評価が○または◎であった表3のNo.9、10について、40℃−6ヶ月区で同様の評価を行ったところ、不良の発生は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の二重構造エアゾール缶に収納される第一の内装パウチ及び第二の内装パウチは、酸化染毛剤における性質の異なる第一剤及び第二剤の性質を変化させることなく保存可能であると共に、内容物による腐食やブリスターの発生もなく、更に落下等により過度の衝撃を受けても層間剥離を生じないことから、二剤式の酸化染毛剤に好適に使用することができる。
また第一の内装パウチ及び第二の内装パウチは、それぞれ耐アルカリ性及び耐酸性に優れていることから、酸化性染毛剤の用途以外にも、それぞれ強アルカリ性内容物、酸性内容物に対しても好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 二重構造エアゾール缶、2 金属缶、3 内容物吐出機構、4 蓋、5 第一の内装パウチ、6 第二の内装パウチ、7 第一の通路、8 第二の通路、9 第一のステム,10 第二のステム。
図1