(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るバッテリケーブルへの電流センサ取付構造(電流センサ取付構造)1で使用される電流センサ3は、
図2〜
図5で示すように、絶縁性の合成樹脂等で構成されているハウジング(筐体)5と、ホルダ(固定材)7とを備えて構成されている。ハウジング5には、車両等のバッテリケーブル9の芯線を流れる電流を検出する電流検出部11が設けられている。
【0018】
バッテリケーブル9は、導電性の芯線(図示せず)と絶縁性の被覆部(図示せず)とを備えて構成されており、ある程度の可撓性を備えている。芯線は、たとえば、複数本の素線(銅等の金属で構成された素線)が撚られて形成されている。被覆部は、たとえばポリ塩化ビニル等の合成樹脂からなり、芯線を被覆している。
【0019】
バッテリケーブル9の断面(長手方向に対して直交する平面による断面)は、常態では(たとえば、電流センサ3が設置されていない状態では)円形状になっている。さらに説明すると、芯線の断面は、概ね円形状になっており、被覆部の断面は、内径が芯線の外径と等しい円環状になっている。被覆部の外周がバッテリケーブルの外周になっている。
【0020】
なお、本実施形態では、バッテリケーブル9を例に掲げて説明するが、バッテリケーブル以外のケーブル(電線)に、電流センサ取付構造1を適用してもよい。
【0021】
電流センサ3は、バッテリケーブル9の長手方向の端部近傍もしくは中間部に設置されるようになっている。
【0022】
電流検出部11が検出した電流値は、ハウジング5に設けられている基板12の回路で増幅されて、コネクタ部13(
図1、
図2参照)に接続されたケーブル(図示せず)を介して出力されるようになっている。
【0023】
ホルダ7は、ホルダ本体(絶縁性の合成樹脂等で構成されているホルダ本体)15とこのホルダ本体15に設けられたシールド材(金属等の導電性材料で構成されているシールド材)17とを備えて構成されている。また、ホルダ7は、係合位置(たとえば保持位置;
図3、
図5参照)P1と、開放位置(
図4参照)P2との間を移動するように、ハウジング5に係合している(係合位置P1、開放位置P2、および、係合位置P1と開放位置P2との間の任意の位置では、ハウジング5から離れないように、ホルダ7がハウジング5に常にくっついている)。
【0024】
係合位置P1は、ホルダ7がハウジング5とともにバッテリケーブル9に係合する(たとえばハウジング5と協働してバッテリケーブル9を挟み込み保持する)位置である。
【0025】
開放位置P2は、電流センサ3に対してバッテリケーブル9が相対的に自由に移動できるように、バッテリケーブル9との係合(たとえばバッテリケーブル9の保持)を開放するための開口部19をホルダ7が形成する位置である。
【0026】
また、電流センサ取付構造1では、
図1や
図5で示すように、結束バンド21が使用されている。結束バンド21は、ホルダ7が係合位置P1に位置している状態で、ハウジング5とホルダ7との外周をまわってハウジング5とホルダ7とを束縛し(間接的にはケーブル9も束縛している)一体化している。
【0027】
また、ホルダ7が係合位置P1に位置している状態では、
図3や
図5で示すように、ホルダ7の両端部がハウジング5に係合してハウジング5とホルダ7とが概ね環状になっている。そして、ケーブル9が環状になっているハウジング5とホルダ7との貫通部(貫通孔)23を通って延伸しハウジング5とホルダ7とに係合している。
【0028】
ホルダ7が開放位置P2に位置している状態では、
図4で示すように、ホルダ7の一端部がハウジング5に係合しこの係合部25を回動中心にしてホルダ7がハウジング5に対して回動している。
【0029】
上記回動を適宜したことで、ホルダ7の他端部がハウジング5から外れて開口部19が形成され、ホルダ7とハウジング5とが「C」字状になる。この「C」字の間隙19を通過させることで、ケーブル9をハウジング5とホルダ7との内側から外側へ移動することができ、逆に、ケーブル9をハウジング5とホルダ7との外側から内側へ移動することができるようになっている。
【0030】
ホルダ7が係合位置P1に位置してホルダ7とハウジング5とで形成されている貫通部23をケーブル9が通っている状態では、たとえば、結束バンド21を用いていなくても、貫通部23を通っているケーブル9が強い力で挟み込まれて保持されている。
【0031】
これにより、もともと円形状であったケーブル9の断面(ケーブル9の長手方向に対して直交する平面による断面)が押しつぶされて楕円状になっている(
図5参照)。そして、力(たとえばケーブル9の長手方向の力)を加えてもホルダ7とハウジング5とが(電流センサ3が)ケーブル9に対してほとんど移動しないようになっている。この場合、結束バンド21は、ホルダ7が係合位置(係止位置)P1に位置している状態が確実に維持されることを保証するために設けられている。
【0032】
なお、ホルダ7が係合位置に位置してホルダ7とハウジング5とで形成されている貫通部23をケーブル9が通っている状態において、ホルダ7とハウジング5とが協働してケーブル9をごく小さい力で挟み込んで保持しており、ホルダ7とハウジング5とがケーブル9に仮固定されており、小さい力を加えても、ホルダ7とハウジング5とが(電流センサ3が)ケーブル9に対して移動しないように構成してもよい。この場合、ケーブル9の断面(ケーブル9の長手方向に対して直交する平面による断面)がほぼ円形状になっており、ハウジング5に対するホルダ7の位置は、
図5で示す場合よりも僅かに下方に位置している(ホルダ7から離れている)。
【0033】
続いて、結束バンド21でホルダ7とハウジング5とを束縛したときに、係合位置(仮係止位置)に位置している場合に比べてホルダ7がハウジング5側にさらに移動し(
図5で示す位置になり;係止位置になり)、ホルダ7とハウジング5とで形成されている貫通部23が、ホルダ7が係合位置(仮係止位置)に位置している場合に比べて小さくなるようにしてもよい。
【0034】
そして、貫通部23を通っているケーブル9が、ホルダ7が仮係止位置に位置している場合に比べてより強い力で挟み込まれて保持され(ホルダ7とハウジング5とで挟み込まれて保持され)、上述したように、もともと円形状であったケーブル9の断面が押しつぶされて楕円状になるようにしてもよい。
【0035】
また、ホルダ7が係合位置に位置してホルダ7とハウジング5とで形成されている貫通部23をケーブル9が通っている状態において、貫通部23とケーブル9との間に僅かな間隙が形成されていて、ホルダ7とハウジング5とが(電流センサ3が)ケーブル9に対して移動(ケーブル9の長手方向で移動)することができるようにしてもよい。そして、結束バンド21でホルダ7とハウジング5とを束縛したときに、ホルダ7が、
図5で示すところ(係止位置)に位置し、ホルダ7とハウジング5とで形成されている貫通部23を通っているケーブル9が強い力で挟み込まれて楕円状になって保持されるように構成してもよい。
【0036】
結束バンド21は、たとえば、樹脂性のインシュロック(登録商標)で構成されている。すなわち、結束バンド21は、小さな環状部27とこの環状部27から延出している可撓性を備えた帯状部29とを備えて構成されている。環状部27の内側には、係止部が形成されており、帯状部29にはこの長手方向に並んでいる多数の突起で形成されている被係止部が形成されている。
【0037】
そして、環状部27に帯状部29を先端から挿入すると、帯状部29の被係止部が環状部27の係止部に係止されて、結束バンド21は「P」字状になり、「P」字の環状の部位内にハウジング5とホルダ7とを位置させることで、ハウジング5とホルダ7とを束縛するようになっている。
【0038】
なお、帯状部29の被係止部が環状部27の係止部に係止されている状態では、帯状部29は、環状部27に対して、「P」字の環状の部位の内径が小さくなる方向には移動できるが、逆方向(「P」字の環状の部位の内径が大きくなる方向)には、移動できないようになっている。
【0039】
また、
図2に示すように、ハウジング5には、一対の長円状の凹部31が形成されており、ホルダ7には、一対の円柱状の凸部33が形成さている。そして、一対の長円状の凹部31のそれぞれに一対の円柱状の凸部33が係合することで、ホルダ7が係合位置P1と開放位置P2との間を移動するように構成されている。
【0040】
ここで、電流センサ3についてさらに詳しく説明する(
図2〜
図5参照)。説明の便宜のために、空間における所定の一方向を縦方向とし、この縦方向に対して直交する所定の他の一方向を横方向とし、縦方向と横方向とに直交する方向を高さ方向とする。
【0041】
ハウジング5は、ハウジング本体35とコネクタ部13とケーブル係合部37と係止部39とを備えて構成されている。ハウジング本体35は、矩形な枡状に形成されており、ハウジング本体35の内側に、基板12と電流検出部11とが一体的に設けられている。ハウジング本体35の開口部は、ケーブル係合部37で塞がれている。ケーブル係合部37は、枡状のハウジング本体35の下側で開口している開口部に設置され開口部をほぼ塞いでいる。
【0042】
ケーブル係合部37は、ハウジング5がホルダ7と協動してケーブル9を挟み込むときに、ケーブル9に接するものであり、ケーブル9に接する部位は、ケーブル9の曲率半径よりも曲率半径が大きな円弧状(円柱側面の一部の形状)になっている。
【0043】
ハウジング本体35の一対の側壁(幅方向の両端に位置している側壁)41(41A,41B)は厚めに形成されている。側壁41のそれぞれには、「U」字状に形成されているホルダ7の一対の側部43が入り込むための一対の穴部45(45A,45B)が形成されている。穴部45は、矩形な平板状に形成されている。そして、側壁41や穴部45の厚さ方向は横方向と一致している。
【0044】
また、一方の側壁41Aの穴部45Aには、一対の長円状の凹部31が形成されている。各凹部31は、高さ方向に延伸し、穴部45Aの縦方向の両端部に形成されている。また、各凹部31は、穴部45Aとつながって、穴部45Aとともに、側壁41Aを穿つ態様で形成されている。
【0045】
ハウジング5の係止部39は、ハウジング本体35の一対の側壁41の端部(下側の端部)で形成されている。
【0046】
ホルダ本体15とシールド板17とは矩形な平板状の素材を2箇所で曲げた「U」字状に形成されている。シールド板17は、ホルダ本体15の内側で、ホルダ本体15に一体的に設置されている。
【0047】
ホルダ本体15には、一対の凸部33と、一対の被係止部47と、ケーブル係合部37と同様なケーブル係合部49とが設けられている。
【0048】
「U」字状のホルダ7は、底部51と一対の側部43(43A,43B)とを備えて構成されている。
【0049】
一対の凸部33は、ホルダ本体15の一方の側部43Aに設けられている。また、一対の凸部33は、縦方向で側部43Aの両端部から突出しており、高さ方向では、側部43Aの上端(先端;底部51とは反対の端部)の近傍に設けられている。
【0050】
そして、ホルダ7の一対の凸部33のそれぞれが、ハウジング5の一対の凹部31のそれぞれに入り込み係合するようになっている。
【0051】
さらに説明すると、ホルダ7が開放位置P2に位置しているきには、ホルダ7の凸部33が、ハウジング5の長円状の凹部31の先端部(下端部)に存在している。そして、ホルダ7が、ハウジング5から離れた下方に位置し、凸部33(係合部25;凸部33の中心を通り縦方向に延伸している軸)を回動中心にして回動している(
図4参照)。
【0052】
ホルダ7が係合位置P1に位置している状態では、ホルダ7が開放位置P2に位置しているときよりも上昇し、ホルダ7の側部43が、ハウジング5の穴部45に入り込んでいるとともに、ホルダ7(ホルダ本体15)に設けられている被係止部47が、ハウジング5の係止部39に当接している。
【0053】
また、ホルダ7が係合位置P1に位置している状態では、ホルダ7の凸部33が、ハウジング5の長円状の凹部31の基端部(上端部)に存在しており、穴部45の底の近くにホルダ7の側部43の先端が位置している(穴部45のほぼ全体に側部43のほぼ全体が入り込んでいる)。
【0054】
また、たとえば、
図4に示すハウジング5の一対の穴部45の壁間の寸法B1の値は、一定であるのに対し、ホルダ7の一対の側部43の壁間の寸法B2がたとえば変化している。すなわと、角度α1が90°になっており角度α2が90°よりも僅かに大きくなっていることで、ホルダ7の高さ方向で寸法B2が変化している。具体的には、寸法B2が、底部51の近傍では、寸法B1とほぼ等しくなっており、底部51から離れるにしたがってしだい大きくなっている。そして、ホルダ7を開放位置P2から係合位置P1に移動するときと移動し終えたときに、ホルダ7が弾性変形して、角度α2が90°になり、いずれの箇所でも寸法B2が寸法B1と等しくなるようになっている。
【0055】
これにより、結束バンド21を用いていなくても、貫通部23を通っているケーブル9が挟み込まれて保持されるようになっている。
【0056】
ここで、ケーブル9への電流センサ3の設置手順について説明する。
【0057】
まず、
図4に示すように、ホルダ7が開放位置P2に位置している状態で、ホルダ7とハウジング5との内側にケーブル9を設置する。
【0058】
続いて、ホルダ7が開放位置P2から係合位置P1に移動し、結束バンド21で電流センサ3を束縛する(
図5参照)。これにより、ケーブル9への電流センサ3の設置がなされる。
【0059】
電流センサ取付構造1によれば、ホルダ7が係合位置P1に位置していても開放位置P2に位置していても、係合位置P1と開放位置P2との間の任意に位置に位置していても、ホルダ7がハウジング5に係合しいてホルダ7とハウジング5とが分離しておらず1つの部品になっているので、電流センサ3をケーブル9に設置する際、ホルダ7を開放位置P2に位置させておき、一体化しているハウジング5とホルダ7との内側にケーブル9を配置し、この後、ホルダ7を係合位置P1に位置させればよい。
【0060】
これにより、両手を用いることなく片手でも電流センサ3をケーブル9に設置することができ、ケーブル9への電流センサ3の取り付けが容易になっている(ケーブル9への電流センサ3の設置の作業性が良くなっている)。
【0061】
また、電流センサ取付構造1によれば、結束バンド21によって、ハウジング5とホルダ7とを束縛して一体化しているので、簡素な構成で電流センサ3をケーブル9に確実に固定することができる。
【0062】
結束バンド21を設置する場合にも、ホルダ7とハウジング5とがケーブル9に仮固定されているので、両手を用いることなく片手でも結束バンド21を電流センサ3に設置することができ、ケーブル9への電流センサ3の取り付けが一層容易になっている。
【0063】
また、電流センサ取付構造1によれば、ホルダ7が開放位置P2に位置している状態でホルダ7とハウジング5とが「C」字状になるので、電流センサ3にケーブル9を通す手間を省くことができ、両手を用いることなく片手でも電流センサ3をケーブル9に設置することができ、ケーブル9への電流センサ3の取り付けが容易になる。
【0064】
さらに、電流センサ取付構造1によれば、一対の長円状の凹部31のそれぞれに一対の円柱状の凸部33が係合することで、ホルダ7が係合位置P1と開放位置P2との間を移動するように構成されているので、簡素な構成で、ハウジング5に対するホルダ7の挙動(凹部31の長手方向での直線的な移動と凸部33を中心とした回動)を実現することができる。