(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今後、回収ウランの供給量が従来以上に増加することが想定されている。効率的な使用を考える上では、集合体1体当たりの回収ウランの使用量を増加させ、回収ウランを使用した集合体の数を最小限に留めることが有力な手段の1つである。ところが、特許文献1においては、反応度ロスの低減及び熱的運転余裕確保のために最適な配置を提案しているものの、集合体1体当たりの回収ウランの使用量が制限されるため、上記手段に対しては、最適な解とは言えない。むしろ、反応度ロス低減及び熱的運転余裕確保については、原子炉内の集合体の配置によってある程度解決可能となるので、特許文献1を踏まえたとしても、集合体1体当たりの回収ウランの使用量を増加させることが優先課題となる。
【0007】
ところで、ウラン236は強い共鳴吸収効果を持ち、中性子スペクトルを硬くする方向となる。このため、ウラン236を含む回収ウランを集合体中で使用する場合、減速材ボイド係数の絶対値が大きくなる。すなわち、減速材ボイド係数は負に大きい値を有する。ここで、沸騰水型原子炉は、原子炉出力が上昇しボイド率が増加した場合に、負の反応度が投入されるよう、減速材ボイド係数が十分負に大きな値となるように設計されている。すなわち、回収ウランを使用していない場合においても、減速材ボイド係数は十分負に大きな値を有している。一方、減速材ボイド係数が負の値を有していることは、原子力発電所の機器設備等のトラブルに起因した異常な過渡変化によっては、炉心に正の反応度が投入されることを意味する。例えば、異常な過渡変化により原子炉圧力が急激に上昇し炉心のボイド率が減少する過渡事象においては、正の反応度が投入されるが、この際、減速材ボイド係数の負の度合いが過大であると、投入される正の反応度が大きくなり、燃料健全性に大きな影響を与える。そこで、上記のような過渡事象が起きた場合においても燃料健全性を確保するために、運転制限値が定められている。ここで、沸騰遷移が起こる集合体出力(限界出力)と実際の集合体出力との比である限界出力比に関する運転制限値は、ボイド率が減少する事象によって定まっている。すなわち、回収ウランを使用した場合、回収ウランを使用しない場合に対して、減速材ボイド係数の絶対値の増加度合いが大きいと、限界出力比の運転制限値に対する余裕が小さくなり、安全性が低下する。その結果、場合によっては運転制限値を変更しなければならない事態が生じる。
【0008】
ここで、沸騰水型原子炉に現在装荷されている燃料集合体(以下、単に「集合体」ともいう。)の型式には以下のものが挙げられる。
(1)燃料棒が9行9列の正方格子の配列に配置されると共に、制御棒挿入位置に最近接のコーナ部に配置された燃料棒から最も近い2本のコーナ部に配置された燃料棒を結ぶ対角線上の中点が重心となるように、燃料棒7本分の領域が丸管形状の2本の水ロッドに置き換えられている型式(以下、「9×9燃料(A型)型式」とも表記する。)。
(2)燃料棒が9行9列の正方格子の配列に配置されると共に、燃料集合体のその長さ方向に直交する断面における中心部の燃料棒9本分の領域が角管形状の1本の水ロッドに置き換えられている型式(以下、「9×9燃料(B型)型式」とも表記する。)。
【0009】
これらの型式の集合体に対して、回収ウランを使用することに起因する減速材ボイド係数の絶対値の増加度合いを抑制する方策が強く望まれている。
【0010】
本発明の目的は、沸騰水型原子炉に装荷される燃料集合体内の燃料棒に回収ウランを含ませるに当たり、減速材ボイド係数の絶対値の増加度合いを抑制することにより安全性を確保した沸騰水型原子炉用の燃料集合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の沸騰水型原子炉用の燃料集合体は、被覆管と、その被覆管内に充填された所定の核燃料濃縮度を有する燃料ペレットと、を含む複数本の燃料棒を備える沸騰水型原子炉用の燃料集合体であって、前記複数本の燃料棒は、9行9列以上の正方格子の配列に配置され、前記集合体内の全ペレット領域の1/2以上を占める領域において、前記燃料ペレット中に、使用済燃料の再処理により得られた回収ウランを含み、かつ、前記正方格子の各コーナ部に配置された燃料棒と、それらの燃料棒に対して前記正方格子の行方向及び列方向に隣接して配置された燃料棒と、は、前記燃料ペレット中に前記回収ウランを含まないものであり、複数本の燃料棒領域を占める丸管形状の2本の水ロッドを備え、前記2本の水ロッドの両方に隣接して配置された燃料棒は前記回収ウランを含ま
ず、前記複数本の燃料棒のうち、前記各コーナ部に配置された前記燃料棒、それらの燃料棒の前記行方向及び前記列方向に隣接して配置された前記燃料棒、及び、前記2本の水ロッドの両方に隣接して配置された前記燃料棒、以外の全ての燃料棒は、回収ウランを含むものであるか、あるいは、複数本の燃料棒領域を占める角管形状の1本の水ロッドを備え、前記1本の水ロッドの前記行方向及び前記列方向に隣接して配置された前記燃料棒のうち、前記1本の水ロッドにおける側面の前記列方向中央部及び前記行方向中央部に隣接する燃料棒は前記回収ウランを含ま
ず、前記複数本の燃料棒のうち、前記各コーナ部に配置された前記燃料棒、それらの燃料棒の前記行方向及び前記列方向に隣接して配置された前記燃料棒、及び、前記1本の水ロッドにおける側面の前記列方向中央部及び前記行方向中央部に隣接する燃料棒、以外の全ての燃料棒は、回収ウランを含むものであ
る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、沸騰水型原子炉に装荷される燃料集合体内の燃料棒に回収ウランを含ませるに当たり、減速材ボイド係数の絶対値の増加度合いを抑制することにより安全性を確保した沸騰水型原子炉用の燃料集合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】9×9燃料(A型)型式の燃料集合体における燃料棒の配置を示す模式図である。
【
図2】9×9燃料(B型)型式の燃料集合体における燃料棒の配置を示す模式図である。
【
図3】9×9燃料(A型)型式の燃料集合体内の熱外群中性子束分布を示す模式図である。
【
図4】本発明に係る燃料集合体の一例における燃料棒の配置を示す模式図である。
【
図5】本発明とは異なる燃料集合体における燃料棒の配置を示す模式図である。
【
図6】減速材ボイド係数の絶対値について、回収ウランを全く使用しない場合に対する回収ウランを使用する場合の増分(%)を示す棒グラフである。
【
図7】9×9燃料(B型)型式の燃料集合体内の熱外群中性子束分布を示す模式図である。
【
図8】実施例に係る燃料集合体における燃料棒の配置を示す模式図である。
【
図9】実施例に係る燃料集合体における燃料棒の配置を示す模式図である。
【
図10】実施例に係る燃料集合体における燃料棒の配置を示す模式図である。
【
図11】実施例に係る燃料集合体における燃料棒の配置を示す模式図である。
【
図12】実施例に係る燃料集合体における燃料棒の配置を示す模式図である。
【
図13】実施例に係る燃料集合体における燃料棒の配置を示す模式図である。
【
図14】減速材ボイド係数の絶対値について、回収ウランを全く使用しない場合に対する回収ウランを使用する場合の増分(%)を示すプロット図である。
【
図15】(A)及び(B)は、従来の燃料集合体における燃料棒の配置を示す模式図である。
【
図16】(A)及び(B)は、従来の燃料集合体における燃料棒の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
本実施形態の沸騰水型原子炉用の燃料集合体(以下、単に「集合体」ともいう。)は、被覆管と、その被覆管内に充填された所定の核燃料濃縮度を有する燃料ペレットとを含む複数本の燃料棒を備える沸騰水型原子炉用の燃料集合体であって、複数本の燃料棒は、9行9列以上の正方格子の配列に配置され、集合体内の全ペレット領域の1/2以上を占める領域において、燃料ペレット中に、使用済燃料の再処理により得られた回収ウランを含み、かつ、正方格子の各コーナ部に配置された燃料棒(以下、「コーナ部燃料棒」という。)と、それらの燃料棒に対して正方格子の行方向及び列方向に隣接して配置された燃料棒(以下、「コーナ部隣接燃料棒」という。)とは、燃料ペレット中に回収ウランを含まないものである。本発明において、「集合体内の全ペレット領域」とは、集合体内の全燃料棒において、上下端のノード以外のノードにおけるペレット領域である。また、本発明において、「ペレット領域」とは、標準燃料棒については、軸方向(長さ方向)に24個のノードに等分した場合に、上下端のノード(好ましくはそれぞれ1〜2ノード)以外の各ノードを指す。したがって、例えば、上下端の各1個ずつのノード以外のノードは22個あるので、その22個のノードの各々が1個のペレット領域を指す。また、集合体が部分長燃料棒を備える場合、その部分長燃料棒が標準燃料棒と同じ長さであると仮定した状態で同様に24個のノードに等分した場合に、下端のノード(好ましくは1ノード)を除いた各ノードを1個のペレット領域とする。したがって、標準燃料棒であっても部分長燃料棒であっても、同じ集合体内の1個のペレット領域の軸方向の長さは同じである。本実施形態の燃料集合体は、集合体内の全ペレット領域のうち、1/2以上の領域に回収ウランを含むものである。なお、上記上下端のノードは、通常、ウランを含まないか、あるいは、他のノードと比較してウラン濃縮度が低いものである。しかしながら、上記上下端のノードが、他のノードと同程度のウラン濃縮度である場合においても、本発明は適用可能である。また、以下、燃料棒が有する燃料ペレット中に回収ウランを含む又は含まないことを、単に燃料棒が回収ウランを含む又は含まないと表現する。
【0016】
本実施形態においては、集合体のコーナ部燃料棒、及び、コーナ部隣接燃料棒が回収ウランを含まないため、全ペレット領域のうち1/2以上の領域に回収ウランを含んでも、その回収ウランの使用に伴う、減速材ボイド係数の絶対値の増加度合いを抑制することができるという効果を有する。2本の丸管形状の水ロッドを有する集合体においては、上記の燃料棒に加えて、2本の水ロッドの両方に隣接した燃料棒(以下、「丸管水ロッド隣接燃料棒」という。)に回収ウランを含めないことにより、上記効果を大きくすることができる。また、1本の角管形状の水ロッドを有する集合体においては、上記の燃料棒に加えて、1本の水ロッドの行方向及び列方向に隣接して配置された燃料棒のうち、1本の水ロッドにおける側面の列方向及び行方向中央部に隣接する燃料棒(以下、「角管水ロッド隣接燃料棒」という。)に回収ウランを含めないことにより、その効果を大きくすることができる。さらには、コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒以外の燃料棒全て、より好ましくは、コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒、並びに、丸管水ロッド隣接燃料棒、又は、角管水ロッド隣接燃料棒以外の燃料棒の全てに回収ウランを含めることにより、集合体1体当たりの回収ウラン使用量を大きくすることが可能となる。
【0017】
集合体において、全ペレット領域のうち、回収ウランを含むペレット領域の割合は、1/2、すなわち50%以上であればよいが、回収ウランを有効に活用する観点から、60%以上であると好ましく、70%以上であるとより好ましい。
【0018】
図1は、燃料棒を9行9列の正方格子の配列に配置し、制御棒挿入位置に最近接のコーナ部に配置された燃料棒から最も近い2本のコーナ部に配置された燃料棒を結ぶ対角線上の中点が重心となるように、燃料棒7本分の領域が太径の丸管形状の2本の水ロッドに置き換えられている型式(以下、「9×9燃料(A型)型式」と表記する。)の燃料集合体について、その長さ方向に直交する断面における燃料棒及び水ロッドの配置を模式的に示す図である。
図2は、燃料棒を9行9列の正方格子の配列に配置する燃料集合体であって、その長さ方向に直交する断面における中心部の燃料棒9本分(制御棒挿入位置に最近接のコーナ部に配置された燃料棒から4〜6行4〜6列の9本分)の領域が角管形状の1本の水ロッドに置き換えられている型式(以下、「9×9燃料(B型)型式」と表記する。)の燃料集合体について、その長さ方向に直交する断面における燃料棒及び水ロッドの配置を模式的に示す図である。図中、Wで示される白抜きの円形又は隅取り矩形は水ロッドを示し、白抜きの円形は燃料棒を示し、それらを包囲する二重線の隅取り矩形は集合体のチャンネルボックスを示す。
【0019】
上述のとおり、ウラン236は強い共鳴吸収効果を持つ。中性子をそのエネルギによって、エネルギの大きい方から高速中性子、熱外群中性子及び熱中性子に分類したとき、ウラン236の中性子共鳴吸収に主に寄与する中性子は、熱外群中性子である。例えば、炉心平均ボイド率からボイド率が減少し熱外群中性子が減少する場合、ウラン236の共鳴吸収が減少するため、ボイド率変動前に熱外群中性子束が大きいときに、より反応度が増加する、すなわち、減速材ボイド係数の負の値が大きくなる。したがって、炉心平均相当のボイド率で熱外群中性子束が大きい位置の燃料棒において回収ウランを使用すると、減速材ボイド係数の絶対値が大きくなることが予想される。
【0020】
熱外群中性子束は、集合体内において、中性子スペクトルの軟らかい位置で相対的に大きくなると考えられる。
図3は、9×9燃料(A型)型式の集合体において、ウラン濃縮度を全ての燃料棒で4.9質量%とした場合の、40%ボイド率時の燃料棒における熱外群中性子束の集合体内分布の模式図であり、燃料棒の位置は
図1に示す位置に対応している。ここでは、熱外群中性子束の断面平均値を1.0として規格化したとき、その相対値が1.01以上である燃料棒における相対値を示す一方、相対値が1.01未満である燃料棒では空欄としている。なお、図中「W」は水ロッドの位置を示している(以下同様。)。
図3に示すとおり、非沸騰領域に面しているコーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒、並びに、丸管水ロッド隣接燃料棒では熱外群中性子束が大きくなっている。したがって、これらの位置の燃料棒に回収ウランを使用しなければ、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制することができると考えられる。特に、コーナ部燃料棒、及び、コーナ部隣接燃料棒において熱外群中性子束が大きいため、これらの燃料棒が回収ウランを含まないのがよい。減速材ボイド係数をより低減させたい場合は、これらに加えて丸管水ロッド隣接燃料棒が回収ウランを含まないことが好ましい。
【0021】
上記検討に基づき、9×9燃料(A型)型式の集合体において、回収ウランを使用しない燃料棒の配置に関して減速材ボイド係数への影響を評価した。評価は以下の3とおりのケースについて行った。
・ケース1:コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒、並びに丸管水ロッド隣接燃料棒の合わせて14本の燃料棒は回収ウランを含まず、その他の燃料棒は全てのペレット領域において回収ウランを含む。
・ケース2:集合体の最外層から2層目及び3層目に配置される14本の燃料棒は回収ウランを含まず、その他の燃料棒は全てのペレット領域において回収ウランを含む。
・ケース3:全ての燃料棒が全てのペレット領域において回収ウランを含む。
【0022】
図4、5は、それぞれケース1、2の集合体における回収ウランを含む燃料棒の配置パターンを
図1と同様にして示したものであり、白抜きの円形で示す燃料棒は回収ウランを含まず、内部に斜線を施した円形で示す燃料棒は回収ウランを含む。
【0023】
図6は、上記各ケース1〜3における、40%ボイド率時の減速材ボイド係数の絶対値について、全ての燃料棒が回収ウランを含まない9×9燃料(A型)型式の集合体からの増分(減速材ボイド係数絶対値増分)を百分率で示す棒グラフである。
図6に示すとおり、ケース1の集合体は、ケース2、3の集合体と比較して、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制するのに大きな効果が認められる。ここで、40%ボイド率時の減速材ボイド係数は、集合体内のボイド率を0、40、70%と変動させた場合に、未燃焼時における中性子の無限増倍率がどのように変化するかを示す曲線、すなわち、ボイド率に対する無限増倍率の変化を示す曲線において、40%ボイド率時の接線の傾き((無限増倍率)/ボイド率)として定義される。40%ボイド率は概ね炉心平均ボイド率に相当する。
【0024】
図7は、9×9燃料(B型)型式の集合体において、ウラン濃縮度を全ての燃料棒で4.9質量%とした場合の、40%ボイド率時の燃料棒における熱外群中性子束の集合体内分布の模式図であり、燃料棒の位置は
図2に示す位置に対応している。ここでは、熱外群中性子束の断面平均値を1.0として規格化したとき、その相対値が1.01以上である燃料棒における相対値を示す一方、相対値が1.01未満である燃料棒では空欄としている。
図7に示すとおり、非沸騰領域に面しているコーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒、並びに、角管水ロッド隣接燃料棒では熱外群中性子束が大きくなっている。したがって、これらの位置の燃料棒に回収ウランを使用しなければ、いわゆるB型型式の集合体であっても、A型型式の集合体と同様に、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制することができると考えられる。
【0025】
本実施形態の集合体は、上述以外の構造や形状については特に限定されず、集合体を構成する各部材の配置や形状等は従来の集合体と同様であってもよい。
【0026】
すなわち、本実施形態によると、全ペレット領域のうち、回収ウランを含むペレット領域の割合が、1/2以上であるような、回収ウランの使用量が高い燃料集合体であっても、コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒が回収ウランを含まないことにより、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制し、安全性をより有効に確保した沸騰水型原子炉用の燃料集合体を提供することができる。
【0027】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、本発明は、全ペレット領域のうち、回収ウランを含むペレット領域の割合が、1/2以上であって、かつ、コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒が回収ウランを含まない以外は、回収ウランを含む又は含まない燃料棒がどのように配置されていてもよいが、本発明による効果をより有効に発揮する観点から、水ロッドに隣接する燃料棒が、回収ウランを含まないことが好ましい。また、集合体が丸管形状の2本の水ロッドを備える場合、好適にはその2本の水ロッドが
図1に示すように配置されるが、2本の水ロッドの配置はそれに限定されない。さらに、集合体が角管形状の1本の水ロッドを備える場合、好適にはその1本の水ロッドが
図2に示すように配置されるが、1本の水ロッドの配置はそれに限定されない。また、上記では、燃料棒が9行9列の正方格子の配列に配置する燃料集合体について説明したが、燃料棒の配列は、それに限定されない。例えば、10行10列の正方格子の配列に配置する燃料集合体であってもよく、11行11列の正方格子の配列に配置する燃料集合体であってもよい。
【0028】
燃料棒が10行10列の正方格子の配列に配置する場合であって、かつ、集合体が丸管形状の2本の水ロッドを備える場合、制御棒挿入位置に最近接のコーナ部に配置された燃料棒から最も近い2本のコーナ部に配置された燃料棒を結ぶ対角線上の中点が重心となるように、燃料棒8本分の領域が丸管形状の2本の水ロッドに置き換えられている型式であると好ましい。また、集合体が角管形状の1本の水ロッドを備える場合、その長さ方向に直交する断面において、制御棒挿入位置に最近接のコーナ部に配置された燃料棒から5〜7行5〜7列の9本分の領域が角管形状の1本の水ロッドに置き換えられている型式であると好ましい。
【0029】
燃料棒が11行11列の正方格子の配列に配置する場合であって、かつ、集合体が丸管形状の2本の水ロッドを備える場合、制御棒挿入位置に最近接のコーナ部に配置された燃料棒から最も近い2本のコーナ部に配置された燃料棒を結ぶ対角線上の中点が重心となるように、燃料棒7本分又は8本分の領域が丸管形状の2本の水ロッドに置き換えられている型式であると好ましい。また、集合体が角管形状の1本の水ロッドを備える場合、その長さ方向に直交する断面における中心部の燃料棒9本分(制御棒挿入位置に最近接のコーナ部に配置された燃料棒から5〜7行5〜7列の9本分)の領域が角管形状の1本の水ロッドに置き換えられている型式であると好ましい。
【0030】
また、回収ウランを含む及び/又は含まない燃料棒は、標準燃料棒であっても部分長燃料棒であってもよく、それらの集合体における割合及び配置は、従来の集合体と同様であればよい。さらに、回収ウランを含む及び/又は含まない燃料棒は、ホウ素やガドリニウムなどの可燃性毒物を従来の燃料棒と同様に含んでもよい。
【0031】
さらに、上述から明らかなように、本発明は、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制するように、回収ウランを含む燃料棒と含まない燃料棒とを配置するのに着目したものである。すなわち、本発明は、被覆管と、その被覆管内に充填された所定の核燃料濃縮度を有する燃料ペレットとを含む複数本の燃料棒を備え、それら複数の燃料棒は、使用済み燃料の再処理により得られた回収ウランを含む燃料棒と、回収ウランを含まない燃料棒とからなるものである、沸騰水型原子炉用の燃料集合体における複数の燃料棒の配置方法であって、複数の燃料棒の全てが燃料ペレット中に回収ウランを含まない燃料集合体に比べて、減速材ボイド係数の絶対値の増加度合いが抑制されるように、回収ウランを燃料ペレット中に含む燃料棒と、回収ウランを燃料ペレット中に含まない燃料棒とを配置する方法でもある。このような配置方法に基づけば、本発明の燃料集合体を得ることが可能となる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、同一の図面、あるいは、それと一連の図面においては、燃料棒のウラン濃縮度について、同じ符号で表すものは同じ濃縮度であり、可燃性毒物の濃度について、同じ符号で表すものは同じ濃度である。
【0033】
(実施例1)
本発明の実施例1として、9×9燃料(A型)型式の集合体であって、一部の燃料棒に部分長燃料棒を用いた燃料集合体を
図8に示す。
図8は、上側が集合体における燃料棒の配置を示す模式図であり、集合体の向かって左上側に制御棒の中心が位置している。
図8の下側は、燃料棒の軸方向(長さ方向)から見た回収ウランの存在位置を示す模式図であり、併せて、タイプ及び集合体に用いられている本数を示す(以下に説明する図においても同様。)。燃料棒のウラン濃縮度については、図中、Aが最高濃縮度の燃料ペレットを示し、以下、B、C、D、Eの順に燃料ペレットにおけるウラン濃縮度が高い。また、標準燃料棒については、ウラン濃縮度と可燃性毒物の有無とにより燃料棒のタイプを1〜5及びG1、G2に区別し、部分長燃料棒については、燃料棒のタイプをP1とした。なお、可燃性毒物を含む燃料棒は、Cのウラン濃縮度を有し、更に、上段に低い濃度のガドリニア(βGd)及び下段に高い濃度のガドリニア(αGd)を含むものをタイプG1、全体的に低い濃度のガドリニア(βGd)を含むものをタイプG2とした。また、それぞれの標準燃料棒の上端2ノード及び下端1ノードに低濃縮度のウランブランケットを設けた。ここで、図中、斜線で示す部分が回収ウランを含む領域である。
【0034】
本実施例では、集合体全体において、低濃縮度のウランブランケットを除く燃料ペレットが配置される領域のうち、約83%に回収ウランを含む。また、コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒は、回収ウランを含まない。すなわち、この集合体は、1体当たりの回収ウランの使用量を高めた上で、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制できる構成となっている。
【0035】
(実施例2)
本発明の実施例2として、9×9燃料(A型)型式の集合体であって、一部の燃料棒に部分長燃料棒を用いた燃料集合体を
図9に示す。タイプ3の燃料棒として回収ウランを含むものから含まないものに変更した以外は、実施例1と同様である。その結果、実施例1に対して回収ウランを含まない燃料棒が増加しているが、そのような燃料棒は、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制するのに特に効果のある位置、すなわち、2本の水ロッドの両方に隣接する燃料棒を含む。
【0036】
本実施例では、低濃縮度のウランブランケットを除く燃料ペレットが配置される領域のうち、約69%に回収ウランを含む。また、コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒、並びに、丸管水ロッド隣接燃料棒は、回収ウランを含まない。すなわち、本実施例の集合体は、実施例1と比較して、回収ウランの使用量は低下するが、減速材ボイド係数の絶対値の増加をより抑制できる構成となっている。
【0037】
(実施例3)
本発明の実施例3として、9×9燃料(A型)型式の集合体であって、一部の燃料棒に部分長燃料棒を用いた燃料集合体を
図10に示す。燃料棒のウラン濃縮度は、図中、Aが最高濃縮度の燃料ペレットを示し、以下、B、C、D、Eの順に燃料ペレットにおけるウラン濃縮度が高い。また、標準燃料棒については、ウラン濃縮度と可燃性毒物の有無とにより燃料棒のタイプを1〜5、3’及びG1’、G2’に区別し、部分長燃料棒については、燃料棒のタイプをP1とした。なお、可燃性毒物を含む燃料棒は、Cのウラン濃縮度を有し、更に、上段に低い濃度のガドリニア(βGd)及び下段に高い濃度のガドリニア(αGd)を含むものをタイプG1’、全体的に低い濃度のガドリニア(βGd)を含むものをタイプG2’とした。また、それぞれの標準燃料棒の上端2ノード及び下端1ノードに低濃縮度のウランブランケットを設けた。ここで、図中、斜線で示す部分が回収ウランを含む領域である。タイプ3の燃料棒とタイプ3’の燃料棒とでは、濃縮度は同じであるが、回収ウランの有無が異なる。また、タイプG1’の燃料棒とタイプG2’の燃料棒とは、実施例1におけるタイプG1の燃料棒、及びタイプG2の燃料棒と、それぞれ濃縮度及び可燃性毒物の濃度が同じであるが、回収ウランの有無が異なる。
【0038】
本実施例では、集合体全体において、低濃縮度のウランブランケットを除く燃料ペレットが配置される領域のうち、約61%に回収ウランを含む。また、可燃性毒物を含む燃料棒には回収ウランを含んでいないが、1体当たりの回収ウランの使用量としては、十分な量を確保している。また、コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒、並びに、丸管水ロッド隣接燃料棒は、回収ウランを含まない。すなわち、この集合体は、1体当たりの回収ウランの使用量を高めた上で、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制できる構成となっている。
【0039】
(実施例4)
本発明の実施例4として、燃料棒が10行10列の正方格子の配列に配置し、丸管形状の2本の水ロッドを備え、制御棒挿入位置に最近接のコーナ部に配置された燃料棒から最も近い2本のコーナ部に配置された燃料棒を結ぶ対角線上の中点が重心となるように、燃料棒8本分の領域が上記2本の水ロッドに置き換えられている型式の集合体であって、一部の燃料棒に部分長燃料棒を用いた燃料集合体を
図11に示す。燃料棒のウラン濃縮度については、図中、Fが最高濃縮度の燃料ペレットを示し、以下、G、H、Iの順に燃料ペレットにおけるウラン濃縮度が高い。また、標準燃料棒については、ウラン濃縮度及びその分布、並びに可燃性毒物(δGd)の有無により燃料棒のタイプを11〜14及びG3に区別し、部分長燃料棒については、回収ウランの有無により燃料棒のタイプをP2、P3に区別した。また、それぞれの標準燃料棒の上下端1ノードずつに低濃縮度のウランブランケットを設けた。ここで、図中、斜線で示す部分が回収ウランを含む領域である。
【0040】
本実施例では、集合体全体において、低濃縮度のウランブランケットを除く燃料ペレットが配置される領域のうち、約85%に回収ウランを含む。本実施例においても、コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒、並びに、丸管水ロッド隣接燃料棒は、回収ウランを含まない。これにより、9×9燃料(A型)型式の集合体と同様に、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制できる。また、この集合体は、コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒、並びに、丸管水ロッド隣接燃料棒以外の全ての燃料棒において、上下端のノードを除く全ノードが回収ウランを含む。この構成により、本実施例の集合体は、回収ウランの1体当たりの使用量を高めた上で、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制できる。
【0041】
(実施例5)
本発明の実施例5として、9×9燃料(B型)型式の燃料集合体を
図12に示す。燃料棒のウラン濃縮度については、図中、Jが最高濃縮度の燃料ペレットを示し、以下、K、L、M、Nの順に燃料ペレットにおけるウラン濃縮度が高い。また、ウラン濃縮度及びその分布、可燃性毒物の有無、並びに回収ウランの有無により燃料棒のタイプを21〜27及びG4、G5に区別した。なお、可燃性毒物を含む燃料棒は、Mのウラン濃縮度を有し、更に、上段に低い濃度のガドリニア(ηGd)及び下段に高い濃度のガドリニア(ζGd)を含むものをタイプG4、上段に低い濃度のガドリニア(ηGd)、中段に高い濃度のガドリニア(ζGd)、下段に更に高い濃度のガドリニア(εGd)を含むものをタイプG5とした。また、それぞれの燃料棒の上下端1ノードずつに低濃縮度のウランブランケットを設けた。ここで、図中、斜線で示す部分が回収ウランを含む領域である。タイプ23の燃料棒とタイプ24の燃料棒とでは、ウラン濃縮度の分布が同じであるが、回収ウランの有無が異なる。タイプ21〜22及びG4、G5の燃料棒は、上下端のノードを除く全ノードが回収ウランを含み、タイプ23の燃料棒は、上部に回収ウランを含まず、タイプ24〜27の燃料棒はウランブランケットを含む全領域に回収ウランを含まない。
【0042】
本実施例では、集合体全体において、低濃縮度のウランブランケットを除く燃料ペレットが配置される領域のうち、約59%に回収ウランを含む。コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒、並びに、角管水ロッド隣接燃料棒は、回収ウランを含まない。すなわち、この集合体は、1体当たりの回収ウランの使用量を高めた上で、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制できる構成となっている。
【0043】
(実施例6)
本発明の実施例6として、燃料棒が10行10列の正方格子の配列に配置し、角管形状の1本の水ロッドを備え、その長さ方向に直交する断面において、制御棒挿入位置に最近接のコーナ部に配置された燃料棒から5〜7行5〜7列の9本分の領域が角管形状の1本の水ロッドに置き換えられている型式の集合体であって、一部の燃料棒に部分長燃料棒を用いた燃料集合体を
図13に示す。燃料棒のウラン濃縮度については、図中、Pが最高濃縮度の燃料ペレットを示し、以下、Q、Rの順に燃料ペレットにおけるウラン濃縮度が高い。また、標準燃料棒について、ウラン濃縮度及び可燃性毒物の有無により燃料棒のタイプを31〜33及びG6〜G9に区別し、部分長燃料棒について、ウラン濃縮度により燃料棒のタイプをP4、P5に区別した。なお、可燃性毒物を含む燃料棒は、Pのウラン濃縮度を有し、更に、上段に低い濃度のガドリニア(λGd)及び下段に高い濃度のガドリニア(θGd)を含むものをタイプG6、上段に低い濃度のガドリニア(λGd)、下段にθGdよりも低い濃度のガドリニア(κGd)を含むものをタイプG7、中段から下段にかけて低い濃度のガドリニア(λGd)を含むものをタイプG8、下段に低い濃度のガドリニア(λGd)を含むものをタイプG9とした。また、標準燃料棒の上下端1ノードずつ、及び、部分長燃料棒の下端1ノードに低濃縮度のウランブランケットを設けた。ここで、図中、斜線で示す部分が回収ウランを含む領域である。
【0044】
本実施例では、集合体全体において、低濃縮度のウランブランケットを除く燃料ペレットが配置される領域のうち、約87%に回収ウランを含む。また、コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒を含む標準燃料棒の上下端及び部分長燃料棒の下端の全てに回収ウランを含む。コーナ部燃料棒及びコーナ部隣接燃料棒は、前述のとおり、熱外群中性子束が大きいが、上下端部はその絶対値が比較的小さく、かつ燃料棒全長に占める割合も小さいことから、上下端部のみに回収ウランを使用しても、減速材ボイド係数への影響は小さい。したがって、この集合体は、回収ウランの1体当たりの使用量を最大に高めた上で、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制できる。
【0045】
[減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制する効果の確認]
本発明による減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制する効果を確認するために、本発明に係る燃料集合体、及び、本発明の範囲外となる燃料集合体について、回収ウランの使用量(全ての燃料棒が回収ウランを含む場合を1とする。)に対する減速材ボイド係数の絶対値の増分のプロットを
図14に示す。図中、◇で示すプロットは、本発明に係る燃料集合体(右側から、実施例1、ケース1、実施例2、実施例3)のものであり、□で示すプロットは、ケース2、及び
図15、
図16に示すように燃料棒が配置された集合体(右側からケース2、
図15(A)、
図15(B)、
図16(A)、
図16(B))のものであり、×で示すプロットは、ケース3の集合体のものである。なお、これらのプロットでは、比較を容易にするために、各燃料棒のウラン濃縮度を4.9質量%とした。
【0046】
図14から明らかなように、本発明に係る燃料集合体は、回収ウランの使用割合が高いにも関わらず、減速材ボイド係数の絶対値の増加を抑制できる。