特許第5986816号(P5986816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986816地図表示装置、地図表示方法および地図表示用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986816
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】地図表示装置、地図表示方法および地図表示用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 17/05 20110101AFI20160823BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   G06T17/05
   G09B29/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-134806(P2012-134806)
(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公開番号】特開2013-257822(P2013-257822A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】597151563
【氏名又は名称】株式会社ゼンリン
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原口 幸治
(72)【発明者】
【氏名】入江 寛志
(72)【発明者】
【氏名】太田 信乃介
(72)【発明者】
【氏名】松尾 信介
【審査官】 村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−317116(JP,A)
【文献】 特開平04−204481(JP,A)
【文献】 特開2009−134280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 17/05
G09B 29/00 − 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元空間上の地表面を表す地表面情報と地物の形状および高さ情報を含む地物情報と前記地物の属性情報とを含む3次元地図を記憶する記憶手段と、
前記地表面情報で描かれた地表面上に、前記地物情報を参照して、前記地物の形状を鉛直方向に立ち上げる高さを0に近似させて表現する2次元モデルと前記地物の形状を鉛直方向に立ち上げる高さを前記高さ情報に基づいて表現する3次元モデルとを配置する前記3次元地図の表示内容を決定する処理手段と、
前記処理手段によって決定された前記3次元地図を表示する表示手段と、
を備える地図表示装置であって、
前記属性情報には前記地物の内部に含まれる施設の情報である施設情報が含まれており、
前記3次元モデルは前記地物の階層間を移動するための手段である階層移動手段の情報を含み、
前記処理手段は、
検索条件を入力する入力部と、
前記属性情報を用いて前記検索条件に該当する地物を検索する検索部と、
前記検索に該当した地物を選択する選択部と、
前記選択した地物を前記3次元モデルによって表現し、その他の地物を前記2次元モデルによって表現する表現部と
前記検索された地物の内部に前記施設が含まれる場合、該地物を表現する3次元モデルの内部を可視化して、該施設を表示する内部表示部と
前記3次元モデルを変形し、該変形した3次元モデルの階層間を前記階層移動手段の情報により接続するモデル変形部と
を備える地図表示装置。
【請求項2】
請求項に記載の地図表示装置であって、
前記処理手段は、前記地物に含まれる施設が地下に位置する場合、該地物を表現する3次元モデルを表示するために妨げとなる地表面および地物について、その少なくとも一部を透明または半透明にする地下表示部
を備える地図表示装置。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載の地図表示装置であって、
前記地物を表現する3次元モデルは地下の構造も含み、
前記処理手段は、前記地物に含まれる施設が地下に位置する場合、外壁を透明にし、前記施設が前記3次元モデルにおいて位置する高さ方向の位置関係を逆転させた上で、前記3次元モデルの地下の構造を該地表面の地上に移動させて表示することによって、前記施設を表示する地下移動表示部
を備える地図表示装置。
【請求項4】
請求項から請求項の何れか1つに記載の地図表示装置であって
記処理手段は、前記施設が視認可能となるように前記3次元モデルを変形する自動モデル変形部
を備える地図表示装置。
【請求項5】
請求項から請求項の何れか1つに記載の地図表示装置であって
記処理手段は、ユーザからの指示入力を受け付ける変形指示入力部と、
前記変形指示入力部で入力された指示に基づき、前記3次元モデルを手動変形する手動モデル変形部と
を備える地図表示装置。
【請求項6】
請求項から請求項の何れか1つに記載の地図表示装置であって、
前記内部表示部は、地図の縮尺が基準値未満の場合には、可視化の対象となる3次元モデルの可視化を、該3次元モデルを対象にした入力操作が行われたことを契機に実行する
地図表示装置。
【請求項7】
請求項から請求項の何れか1つに記載の地図表示装置であって、
前記地物の属性情報は該地物の外観に表示するか否かの情報を含み、
前記処理手段は、前記検索された地物の属性情報が該地物の外観に表示するという情報を含むときは、該地物を表現する3次元モデルの表面に該地物の属性情報を表示する地物表面表示部
を備える地図表示装置。
【請求項8】
記憶手段が、3次元空間上の地表面を表す地表面情報と地物の形状および高さ情報を含む地物情報と前記地物の属性情報とを含む3次元地図を記憶し、
処理手段が、前記地表面情報で描かれた地表面上に、前記地物情報を参照して、前記地物の形状を鉛直方向に立ち上げる高さを0に近似させて表現する2次元モデルと前記地物の形状を鉛直方向に立ち上げる高さを前記高さ情報に基づいて表現する3次元モデルとを配置する前記3次元地図の表示内容を決定し、
表示手段が、前記処理手段によって決定された前記3次元地図を表示する
地図表示方法であって、
前記属性情報には前記地物の内部に含まれる施設の情報である施設情報が含まれており、
前記3次元モデルは前記地物の階層間を移動するための手段である階層移動手段の情報を含み、
前記処理手段は、
検索条件入力され
前記属性情報を用いて前記検索条件に該当する地物を検索し、
前記検索に該当した地物を選択し、
前記選択した地物を前記3次元モデルによって表現し、その他の地物を前記2次元モデルによって表現するときに、
前記検索された地物の内部に前記施設が含まれる場合、該地物を表現する3次元モデルの内部を可視化して、該施設を表示し、
前記3次元モデルを変形し、該変形した3次元モデルの階層間を前記階層移動手段の情報により接続する
地図表示方法。
【請求項9】
記憶手段が、3次元空間上の地表面を表す地表面情報と地物の形状および高さ情報を含む地物情報と前記地物の属性情報とを含む3次元地図を記憶し、
処理手段が、前記地表面情報で描かれた地表面上に、前記地物情報を参照して、前記地物の形状を鉛直方向に立ち上げる高さを0に近似させて表現する2次元モデルと前記地物の形状を鉛直方向に立ち上げる高さを前記高さ情報に基づいて表現する3次元モデルとを
配置する前記3次元地図の表示内容を決定し、
表示手段が、前記処理手段によって決定された前記3次元地図を表示する
ことを前記記憶手段と前記処理手段と前記表示手段とを備えるコンピュータに実行させるための地図表示用プログラムであって、
前記属性情報には前記地物の内部に含まれる施設の情報である施設情報が含まれており、
前記3次元モデルは前記地物の階層間を移動するための手段である階層移動手段の情報を含み、
前記処理手段
検索条件入力され
前記属性情報を用いて前記検索条件に該当する地物を検索し、
前記検索に該当した地物を選択し、
前記選択した地物を前記3次元モデルによって表現し、その他の地物を前記2次元モデルによって表現するときに、
前記検索された地物の内部に前記施設が含まれる場合、該地物を表現する3次元モデルの内部を可視化して、該施設を表示し、
前記3次元モデルを変形し、該変形した3次元モデルの階層間を前記階層移動手段の情報により接続する
ための地図表示用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図表示に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元仮想空間上で表示させたいオブジェクトを検索によって特定し、そのオブジェクトを3次元仮想空間の地面から上方に向かって登場させるアニメーションを生成し、その生成したアニメーションを再生する手法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−317116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では検索対象の地物をそれ以外の地物よりも強調表示することはできるものの、地物を配置する地表面の状況や地物の内部に位置する施設まで考慮した強調表示をさせることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも1つを解決するためのものであり、以下の形態または適用例として実現できる。
【0006】
適用例1:3次元空間上の地表面を表す地表面情報と地物の形状および高さ情報を含む地物情報と前記地物の属性情報とを含む3次元地図を記憶する記憶手段と;前記地表面情報で描かれた地表面上に、前記地物情報を参照して、前記地物の形状を鉛直方向に立ち上げる高さを0に近似させて表現する2次元モデルと前記地物の形状を鉛直方向に立ち上げる高さを前記高さ情報に基づいて表現する3次元モデルとを配置する前記3次元地図の表示内容を決定する処理手段と;前記処理手段によって決定された前記3次元地図を表示する表示手段と;を備える地図表示装置であって;前記処理手段は;検索条件を入力する入力部と;前記属性情報を用いて前記検索条件に該当する地物を検索する検索部と;前記検索に該当した地物を選択する選択部と;前記選択した地物を前記3次元モデルによって表現し、その他の地物を前記2次元モデルによって表現する表現部と;を備える地図表示装置。この適用例によれば、検索に合致した地物(以下「検索地物」とも言う)を、重要でない他の地物に邪魔されずに強調表示できる。検索とは、例えば、インターネット検索でも良いし、所定のデータベース内の検索でも良い。
【0007】
適用例2:適用例1に記載の地図表示装置であって;前記属性情報には前記地物の内部に含まれる施設の情報である施設情報が含まれており;前記処理手段は、前記検索された地物の内部に前記施設が含まれる場合、該地物を表現する3次元モデルの内部を可視化して、該施設を表示する内部表示部;を備える地図表示装置。この適用例によれば、検索地物の内部に含まれる施設(以下「検索施設」とも言う)を表示できる。「3次元モデルの内部の可視化」とは、例えば、地物の内部の構造を表現する2次元地図を表示することや、地物の内部になる地図要素の3次元モデルを表示すること等である。「地物の内部にある要素の3次元モデル」とは、例えば、建築物から天井や外壁を取り払って残った構造を3次元モデル化したものである。ここで言う建築物とは、ビル、劇場、ドーム球場、地下街などが挙げられる。
【0008】
適用例3:適用例2に記載の地図表示装置であって;前記処理手段は、前記地物に含まれる施設が地下に位置する場合、該地物を表現する3次元モデルを表示するために妨げとなる地表面および地物について、その少なくとも一部を透明または半透明にする地下表示部;を備える地図表示装置。この適用例によれば、検索された施設を含む地物の形状についての地下の構造を表現し、さらにその地物の一部を透明または半透明にするのでその地物の地下の位置表示の対象となる施設を可視化して表示できる。
【0009】
適用例4:適用例2又は適用例3に記載の地図表示装置であって;前記地物を表現する3次元モデルは地下の構造も含み;前記処理手段は、前記地物に含まれる施設が地下に位置する場合、外壁を透明にし、前記施設が前記3次元モデルにおいて位置する高さ方向の位置関係を逆転させた上で、前記前記3次元モデルの地下の構造を該地表面の地上に移動させて表示することによって、前記施設を表示する地下移動表示部;を備える地図表示装置。この適用例によれば、階層の高さ方向の位置関係を逆転させることによって、地下構造を地上に表示しながら、各階層と地上との接続関係を表示できる。
【0010】
適用例5:適用例2から適用例4の何れか1つに記載の地図表示装置であって;前記3次元モデルは前記地物の階層間を移動するための手段である階層移動手段の情報を含み;前記処理手段は、前記施設が視認可能となるように前記3次元モデルを変形し、該変形した3次元モデルの階層間を前記階層移動手段の情報により接続する自動モデル変形部;を備える地図表示装置。この適用例によれば、位置表示の対象となる施設が、階層構造によって隠れることを防ぐことができる。この適用例によれば、地物の内部における検索された地物が階層構造であることによって隠れることを防ぐことができ、かつ階層同士の接続を分かりやすく表示できる。階層移動手段とは、例えば、階段、エスカレータ、エレベータ等である。
【0011】
適用例6:適用例2から適用例4の何れか1つに記載の地図表示装置であって;前記3次元モデルは前記地物の階層間を移動するための手段である階層移動手段の情報を含み;前記処理手段は、ユーザからの指示入力を受け付ける変形指示入力部と;前記変形指示入力部で入力された指示に基づき、前記3次元モデルを手動変形し、該変形した3次元モデルの階層間を前記階層移動手段の情報により接続する手動モデル変形部と;を備える地図表示装置。この適用例によれば、ユーザの希望に沿って、階層の移動を行うことができる。ここで言う指示とは、例えば、移動させる階層やその向きについてのものである。この適用例によれば、地物の内部における検索された施設が階層構造であることによって隠れることを防ぐことができ、かつ階層同士の接続を分かりやすく表示できる。階層移動手段とは、例えば、階段、エスカレータ、エレベータ等である。
【0012】
適用例7:適用例2から適用例6の何れか1つに記載の地図表示装置であって;前記内部表示部は、地図の縮尺が基準値未満の場合には、可視化の対象となる3次元モデルを自動の可視化を、該3次元モデルを対象にした入力操作が行われたことを契機に実行する;地図表示装置。この適用例によれば、縮尺が基準値未満の場合には自動で内部を実行しないようにしつつ、ユーザの入力に従って内部表示を実行できる。
【0013】
適用例8:適用例1から適用例7の何れか1つに記載の地図表示装置であって;前記地物の属性情報は該地物の外観に表示するか否かの情報を含み;前記処理手段は、前記検索された地物の属性情報が該地物の外観に表示するという情報を含むときは、該地物を表現する3次元モデルの表面に該地物の属性情報を表示する地物表面表示部;を備える地図表示装置。この適用例によれば、3次元モデルの表面に地物の属性情報を表示するものと、しないものとを分けることができる。
【0014】
本発明は、装置以外の種々の形態で実現できる。例えば、地図表示方法、地図表示用プログラム、このプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】地図表示システムの構成。
図2】検索施設表示処理を示すフローチャート。
図3】表示される地図の一例。
図4】内部が表示されたビル。
図5】検索施設が地下街に位置する場合の表示。
図6】階層の表示位置の移動に関する他の手法を示す図。
図7】階層の表示位置の移動に関する他の手法を示す図。
図8】階層の表示位置の移動に関する他の手法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
地図表示システム10の構成(図1):
図1は、地図表示システム10の構成を示す。地図表示システム10は、図1に示すように、スマートフォン20と地図サーバ50とを備える。スマートフォン20は、インターネット接続が可能な多機能携帯電話機である。スマートフォン20及び地図サーバ50は、インターネットINTを介して互いに接続できる。スマートフォン20は、基地局BSを介してインターネットINTに無線接続する。なお、実際には、スマートフォン20は、送受信アンテナ、無線基地局、交換局を介してインターネットINTに接続される。図1に示す基地局BSは、これらアンテナ、無線基地局、交換局を含むものとする。
【0017】
図1に示すように、地図サーバ50は、通信部52と、制御部54と、地図データベース56とを備える。地図データベース56は、地図データを記憶する。この地図データは、3次元地図を記憶する。3次元地図とは、地表面情報と地物情報とネットワーク情報と地物の属性情報とを含む。地表面情報は、3次元空間上の地表面を表す情報である。具体的には、地表面は地面の起伏を含む形状を表しており、等高線などの標高データと行政区画、道路、河川、海面等を区別するデータを用いて表される。地物情報とは、地物の形状および高さ情報などの情報、つまり、地物の水平方向の領域を特定する情報(代表位置の緯度・経度や地物の平面形状など)、鉛直方向の情報などである。具体的には、地物の水平方向の領域を特定する情報とは、例えば地物の水平方向の形状を表すポリゴンの構成点の緯度経度情報である。また鉛直方向の情報とは、例えば地物が地上/地下それぞれ何階建てであるかを示すものや、各階のフロアを表現した地図などである。また鉛直方向の情報としては、例えば地表面から上方向の距離や地下方向の距離で表しても良い。ネットワーク情報とは、出発地から目的地までの経路探索に利用される情報であり、階層移動手段の情報を含む。階層移動手段の情報とは、階層移動手段(階段やエスカレータ、エレベータ等)によってどのように連絡されているかを示す情報である。地物の属性情報とは、例えば、地物の種類(商業施設が入居しているビル、住宅、公共施設など)や、地物の内部に含む施設の位置および種類(レストランであれば和食、中華、洋食など)等、地物の種類に関連する情報(公共施設であれば、開館している曜日・時間帯など)を含む情報である。また、地物の属性情報には地物に含まれる地物の種類や施設の情報について、この地物の外観に表示するか否かの情報を含んでいても良い。この外観に表示するか否かについては、対象となる地物が2次元モデルで表現されるか3次元モデルで表現されるかによって異なる形態となっていても良い。制御部54は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク等を備え、地図データ送信用のプログラムを実行する。制御部54は、このプログラムの実行によって、スマートフォン20からの要求に応じた地図データを、地図データベース56から取得すると共にスマートフォン20に送信する。この送信には、通信部52とインターネットINTとが利用される。
【0018】
一方、スマートフォン20は、主制御部22、通信部32、通信制御部34、タッチパネル36、表示部38、音声出力部40及びGPS受信機42を備える。主制御部22は、CPU24と、RAM26と、ROM28とを備える。主制御部22は、スマートフォン20に備えられた他の機器を制御する。ROM28は、CPU24が実行するプログラムを記憶する。このプログラムは、検索施設表示処理(図2と共に後述)等を実現するためのものである。通信部32は、基地局BSとの間でデータ通信または音声通信を行うための回路である。通信部32は、基地局BSを介して地図サーバ50にアクセスし、地図データを取得するために動作する。通信制御部34は、音声通話のための着信や呼び出し、音声信号と電気信号との変換などを行う回路である。スマートフォン20は、通信部32と通信制御部34とを備えることによって、電話機として機能する。
【0019】
音声出力部40は、音声を出力するスピーカである。GPS受信機42は、GPS衛星と屋内GPS送信機とから送信されるGPS信号を受信することによって、スマートフォン20の現在地を示す情報を取得するための装置である。現在地とは、緯度・経度と階層位置とによって特定される位置である。階層位置とは、地物の何階に位置するかを示す情報のことである。階層位置は、GPS衛星及び/又は屋内GPS送信機からのGPS信号に基づき推定できる。表示部38は、主制御部22の制御に基づき、画像を液晶画面に表示する。タッチパネル36は、ユーザの指や専用のペン等が液晶画面に接触した位置座標を、取得すると共に主制御部22に入力する。主制御部22は、入力された位置座標に基づきユーザの指示を判別し、判別した指示に対応する処理を実行する。ユーザの指示とは、例えば、検索エンジンを用いたインターネット検索が挙げられる。
【0020】
検索施設表示処理(図2):
図2は、検索施設表示処理を示すフローチャートである。検索施設表示処理は、ユーザが入力した検索条件に基づき開始される。その検索条件とは、例えば指定した地点から半径5kmに存在する和食レストランなどとしても良い。さらに、検索条件として、検索施設(検索エンジンによる検索に合致した施設)のうち上位から所定数(例えば10件)のものについて、その位置を地図上に示すことを入力しても良い。検索施設表示処理を開始すると、主制御部22は、RAM26に格納された地図データを参照し、中心点、縮尺、俯角、方位角および視点距離の各値を用いて、地物の形状を鉛直方向に立ち上げる高さを0に近似させて表現する2次元モデルを3次元空間上の地表面に配置した3次元地図を表示する(ステップS61)。中心点、縮尺、俯角、方位角、視点距離は、ユーザの入力に基づくか、デフォルトの設定を用いる。デフォルトの場合、中心点および縮尺は、表示対象の検索施設が表示できるように設定する。俯角は90度(真下に見下ろす角度)でも良いし、90度より小さい角度によって斜めに見下ろす角度でも良い。視点距離の値は、有限でも無限でも良い。
【0021】
続いて主制御部22は、対象地物(検索施設を含む地物)及び検索地物(検索に合致した地物)について、この地物形状を高さ情報に基づき鉛直方向に立ち上げて表現した3次元モデルを2次元モデルに代えて表示する(ステップS63)。なお、主制御部22は、対象地物および検索地物を除く他の地物は2次元モデルで表現する。なお、正確には「表示」は、先述したように「表示部38が主制御部22の制御に基づき液晶画面に行う」ものであるが、ここでは「主制御部22が行う」ものとして表記する。次に主制御部22は、対象地物の外観に現れる検索施設の位置を表示する(ステップS65)。検索施設が対象地物の外観に現れるか否かは、各施設について予め定められており、地図データベース56に記憶されている。本実施形態では、検索施設が1階以外に位置する場合は、外観に現れないとものとし、1階に位置する場合に、検索施設の外周と地物の外周とが少なくとも一部で重複するときは、外観に現れるものとし、検索施設の外周と地物の外周とが重複しないときは、外観に現れないものとする、という基準を採用した。
【0022】
図3は、主制御部22によって表示される地図の一例を示す(図3)。図3(A)は、ステップS61によって表示されたビル90,91,92,93を2次元モデルで表現された地図である。ここで、例えばユーザが「レストラン」をキーワードに文字列検索をしたとすると、主制御部22は、地図データベース56を参照し、検索された施設がビルの外観に表示する情報を含む場合、該当するビルの外観に施設を表示する。本実施形態においては、ビル91には中華レストランが,ビル92には和食レストランが1階に入居しており、ビルの外観に現れるものとする。ビル90には、フレンチレストランとイタリアンレストランとが、外観に現れないものとする。一方、ビル93にはレストランが入居していないものとする。この結果、図3(B)に示すように、2次元モデルと3次元モデルとを複合した地図として、ステップS63によって対象地物として3次元モデルで表現されたビル90,91,92と、2次元モデルのままのビル93とが表示される。更に、ステップS65によって、ビル91に中華レストランの位置が示され(図3のA),ビル92に和食レストランの位置が示されている(図3のB)。
【0023】
次に主制御部22は、検索施設が外観に現れない対象地物の内部を可視化して表示する(ステップS67)。図3に例示した場合、ビル90が該当する。続いて主制御部22は、内部を可視化して表示した対象地物である3次元モデルに含まれる検索施設の位置を表示する(ステップS69)。次に主制御部22は、検索施設が表示されるように、内部が可視化された3次元モデルの階層の表示位置を自動変形する(ステップS67)。具体的には、主制御部22は、検索施設を有する3次元モデルの階層の表示位置を上の階層と重なって見えなくなっている検索施設が表示される位置まで移動させる。検索施設表示処理を終える。
【0024】
図4は、主制御部22によって内部が可視化された3次元モデルであるビル90を示す。図4(A)は主制御部22によって階層の表示位置が移動する前、図4(B)は階層の表示位置が移動した後を示す。本実施形態では、主制御部22は、ビルの外壁と天井とを透明にし、輪郭を点線で表示することによって3次元モデルの内部を可視化して、各階のフロア地図を表示する。先述したステップS69の段階においては、図4(A)に示すように、主制御部22は、ビル90内部の階層構造によって、検索施設(図4のC(フレンチレストラン),D(イタリアンレストラン))の位置を示すことができない。ステップS71の段階においては、図4(B)に示すように、主制御部22は、2階以上の階層の表示位置を適切に移動させることよって、ビル90内部の検索施設が表示する。主制御部22は、俯角および視点距離の各値および地表面情報を用いて、検索施設を表示できる3次元モデルの階層の移動後の表示位置を設定する。本実施形態においては、主制御部22は、検索施設を含む階層(図4の場合、1、2階)の全体が表示されるように、階層の表示位置を鉛直方向へ移動させる。且つ、地物の高さが極力変化しないように階層の鉛直方向の位置を移動させる。具体的には、図4(B)に示すように、主制御部22は、検索施設を含まない階層(3〜6階)と、その階層の1つ上の階層(4〜7階)との距離を縮める。
【0025】
図4における1階と2階をつなぐ点線部分および2階と7階とをつなぐ点線部分は、階層移動手段(階段、エスカレータ、エレベータ等)を示す。図4に示すように、階層移動手段を示す点線は、階層位置の移動に伴い変形する。この変形は、階層と、階層移動手段との接続関係を維持するように行われる。本実施形態においては、階層は鉛直方向に移動するので、点線の変形は、鉛直方向の並進及び/又は長さの変化ということになる。
【0026】
図5は、検索施設が地下街に位置する場合の表示を示す。本実施形態の場合、検索施設が地下街に位置する場合、地図データベース56には、検索施設は対象地物の外観に現れないものとして記憶されている。図5に示すように、主制御部22は、地図データベース56を参照し、地下街を3次元モデルにより表示するために、外壁を透明にし、施設が位置する高さ方向の位置関係を逆転させた上で、3次元モデルの地下の構造を地表面の上に移動させて表示する。具体的には、主制御部22は、地下1階を地上1階(地上)の高さに移動させ、さらに地下2階を地上2階の高さに移動させ、地下3階を地上3階の高さに移動させ、…というように高さ方向の位置関係を逆転させて地上に表示する。この結果、地下3階に位置する検索施設(図5のE)の位置が、地上3階に移動して表示される。
【0027】
効果:
この実施形態によれば、検索施設が対象地物の内部に位置して、対象地物の外観に現れない場合でも、検索施設を含む3次元モデルの内部を可視化することによって、その施設の位置を見やすく表示できる。このような表示を地下に位置する施設についても実現しているので、地下に位置する施設についても見やすく表示できる。しかも、地下1階を地上1階に移動させて表示することによって、地下1階と地上1階との接続(階段等の位置)を分かりやすく表示でき、さらに、階層の高さ方向の位置関係を逆転させることによって、各階層間の接続関係を表示できる。
【0028】
実施形態と適用例との対応関係:
ステップS63が選択部と表現部とを、ステップS65が地物表面表示部を、ステップS67が内部表示部を、ステップS71が自動モデル変形部を、図5と共に説明した内容が地下移動表示部をそれぞれ実現するためのソフトウェアに相当する。CPU24が処理手段を、RAM26が記憶手段を、タッチパネル36が表示手段を、それぞれ実現するためのハードウェア資源に相当する。
【0029】
他の実施形態:
図6は、階層の表示位置の移動に関する他の手法を示す。この手法は、先述した検索施設表示処理におけるステップS71における3次元モデルの内部の地図要素に関する鉛直方向の自動変形に代えて、ユーザの入力に基づき、3次元モデル階層の位置を移動させるというものである。デフォルトの表示は、図6に示すように、階層位置の移動を伴わない。この結果、検索施設であるC,Dの位置が隠れている。ユーザが、図6に示された矢印の向きにビル90をフリック操作し、その指示入力を受け付ける(適用例の変形指示入力部)と、主制御部22は、入力された指示に基づき、3次元モデルを手動変形し、この変形した3次元モデルの階層間を階層移動手段の情報により接続し(適用例の手動モデル変形部)、図6(B)に示されたように、各階のフロア地図が表示できるように、階層間距離の比率が変化しないようにしつつ、階層の表示位置を移動させる。なお、図6(B)に示された表示に代えて、図4(B)に示された表示を実行しても良い。
【0030】
図7は、3次元モデルの階層の表示位置の移動についての更に他の手法として、階層を水平方向に移動させる手法を示す。図7に示すように、水平方向に移動させる場合においても、階層移動手段の接続関係を維持して表示する。図7に示すように、この手法においては、階層移動手段を示す点線の角度も変更され得る。この手法を採用する場合、図6に示した上向きの矢印に代えて、左向きの矢印を表示することが考えられる。水平方向に移動させる手法は、俯角90度および有限の視点距離による3次元表示の場合に、特に有効である。また、水平方向に移動させる場合、検索施設が位置する階層のみを移動させても良い。
【0031】
図6図7に示した手法の何れにおいても、どのような入力によって階層の位置を移動させるかは種々考えられる。例えば、主制御部22は、矢印を表示しなくても良い。この場合、主制御部22は、任意の向きのフリック操作が入力されると、その向きに階層の位置を移動させても良い。或いは、主制御部22は、移動の向きが予め定められていて、矢印を表示せず、ビル90をタップしたり、スマートフォン20が有する音声入力機能を利用した指示入力をしたりすると、階層位置の移動が生じるようにしても良い。この他、主制御部22は、階層位置の移動をらせん状に行っても良い。つまり、軸(例えばエスカレータの動線)を中心に所定角度ずつ、各階の位置を回転させても良い。
【0032】
図8は、検索施設が地下街に位置する場合の表示について、別の手法を示す。図8に示すように、主制御部22は、地下街を地下に位置したまま3次元モデルで表示するために、その妨げとなる部分を透明にする。具体的には、主制御部は、地図データベース56を参照し、地表面と、2次元モデル表示された他の地物とを透明にする。対象地物(3次元モデル表示された地物)が妨げるに場合は、主制御部22は、検索順位が上位のものを見やすく表示する。つまり、主制御部22は、地下街に位置する施設の方が上位であれば、その妨げになる地物を透明にする。逆であれば、その妨げになる地物を透明にしない。図8に示すように、主制御部22は、鉛直方向下向きに階層の表示位置を移動させる。この結果、検索施設(図8のE)の位置が表示される。この内容が、適用例の地下表示部に相当する。
【0033】
この他、主制御部22は、ステップS63の前に縮尺が基準値以上かを判断するステップを追加し、3次元モデルで表示された地物内部のフロア地図表示を、縮尺が基準値未満の場合には実行しないようにしても良い。縮尺が基準値未満で地物が小さく表示される場合、このような表示をしても、見やすくなるとは限らないからである。さらに、縮尺が基準値未満の場合に地物内部のフロア地図表示を実行しないようにしたとき、その地物を対象にしたフリック操作などが行われたことを契機に、縮尺を大きくし、地物の内部を可視化してフロア地図表示を実行しても良い。
主制御部22は、地物の内部を表示するために、地面や地物の外壁および天井を、透明ではなく半透明にしても良い。
対象地物(3次元表示の対象となる地物)には、ビルや地下街以外のものも含まれる。例えば、屋内施設の特定の席(ドーム球場や劇場の指定席など)が検索施設の場合は、その屋内施設が対象地物になる。
透明や半透明で表示された地物の輪郭は、表示してもしなくても良い。
主制御部22は、検索施設表示処理のステップS71において階層間距離の比率が変化しないように、階層の位置を移動しても良い。
主制御部22は、階層構造によって検索施設の位置が隠れる場合、階層の表示位置を移動させるのではなく、検索施設の位置表示の妨げとなる他の階層の少なくとも一部を透明または半透明にしても良い。
検索施設表示処理を開始する前に表示されていた地図が、俯角が90度の2次元表示または3次元表示であった場合、ステップS61において俯角を小さくするようにしても良い。
検索施設表示処理を開始する前に表示されていた地図が、3次元表示された地物を含む場合、主制御部22は、検索施設表示処理において、3次元表示されている地物の中で、検索施設を含まないものを2次元表示に変更するようにしても良い。
検索施設が外観に現れる地物についても、内部の地図を表示しても良い。
検索施設を含まない地物についても、3次元表示した上で、内部の地図を表示しても良い。
【0034】
検索施設が地物の外観に現れるか否かの判断手法は、種々考えられる。例えば、先の実施形態とは異なり、検索施設が地物の外観に現れるか否かについて、地図データベース56が記憶せず、主制御部22が都度、判定するようにしても良い。例えば、先の実施形態と同じ基準に従って判断をしても良い。或いは、その基準に加えて、地図の俯角と方位角および地表面とに基づき判断をしても良い。つまり、例えば或る施設が、地物の1階の角に位置する場合、その角の対角の方から見れば、その施設は、その地物の外壁によって見えない。また、地表面の高さにより見えなくなる場合もある。このような場合は、外観に現れないと判定することが考えられる。
主制御部22は、位置表示の対象となる施設は、検索施設でなくても良い。例えば、ユーザが過去に訪れた場所とその回数とを記憶しておき、訪れた回数が多い場所を位置表示の対象としても良い。
組み込む装置は、スマートフォンでなくても良い。例えば、通常の携帯電話、タブレット型パソコン、据え置き型のパソコン(デスクトップ型やノート型)、カーナビゲーション装置、ヘッドマウントディスプレイ等、種々考えられる。
【0035】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、或いは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
10…地図表示システム
20…スマートフォン
22…主制御部
24…CPU
26…RAM
28…ROM
32…通信部
34…通信制御部
36…タッチパネル
38…表示部
40…音声出力部
42…GPS受信機
50…地図サーバ
52…通信部
54…制御部
56…地図データベース
90…ビル
91…ビル
92…ビル
93…ビル
BS…基地局
INT…インターネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8