(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された可燃性ガス検出装置1の全体構成図である。
図2は、可燃性ガス検出装置1の主要部となるガス検出素子3の構成を示す平面図(但し、内部構成も一部示す)であり、
図3が
図2におけるIIB−IIB線に沿ったガス検出素子の断面図である。
【0015】
[全体構成]
可燃性ガス検出装置1は、熱伝導式のガス検出素子3を用いて、可燃性ガスの濃度を検出するものであり、例えば、燃料電池自動車の客室内に設置され、水素の漏れを検出する目的等に用いられる。
【0016】
図1に示すように、可燃性ガス検出装置1は、ガス検出素子3(
図2、
図3参照)を駆動制御する制御回路5と、制御回路5の動作を制御する切替信号CG1を生成するとともに、制御回路5から得られる検出信号V1,SVTに基づいて、被検出ガス中に含まれる可燃性ガスのガス濃度を演算する処理(ガス濃度演算処理)を少なくとも含む各種処理を実行するマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)7と、直流電源Vccから可燃性ガス検出装置1への電源供給経路を導通,遮断することで制御回路5,マイコン7を起動,停止する起動スイッチ9とを備えている。
【0017】
なお、制御回路5(但し、後述する発熱抵抗体34および測温抵抗体35を除く),マイコン7,起動スイッチ9は単一の回路基板上に構成され、この回路基板とは別体にガス検出素子3は構成されている。
【0018】
[ガス検出素子]
次に、ガス検出素子3について説明する。
図2,
図3に示すように、ガス検出素子3は、平板形状(平面視四角形状)の基部30を備え、基部30の一方の面(以下「表面」という)には、複数の電極31が形成され、他方の面(以下「裏面」という)には、基部30の中心付近に、基部30の一方の方向に沿って一つの凹部301が形成されている。
【0019】
なお、ガス検出素子3は、縦横ともに数mm(例えば3mm×3mm)程度の大きさであり、例えば、シリコン基板を用いたマイクロマシニング技術(マイクロマシニング加工)により製造される。
【0020】
電極31は、基部30の一方の辺(
図2中では下方の辺)に沿って配置された二つの電極(電極パッド)311,312(以下「第1電極群」ともいう)と、他方の辺(
図2中では上方の辺)に沿って配置された二つの電極(電極パッド)314,315(以下「第2電極群」ともいう)とを備える。これらのうち、電極312,315を、以下ではグランド電極ともいう。また、電極31を構成する材料としては、例えば、アルミニウム(Al)又は金(Au)が用いられる。
【0021】
基部30は、シリコン製の基板32と、基板32の一方の面に形成された絶縁層33とを備えており、絶縁層33が部分的(ここではほぼ正方形)に露出するように基板32の一部を除去することで凹部301が形成されたダイアフラム構造をなしている。つまり、基部30では、絶縁層33側(基板32が除去されていない方)が基部30の表面となり、基板32側(基板32の一部が除去されている方を含む)が基部30の裏面となる。
【0022】
絶縁層33には、凹部301により基部30の裏面に露出した部位に、渦巻き状にパターン形成された発熱抵抗体34が埋設されているとともに、第2電極群314,315が形成された側の基部30の長辺(一辺)に沿って、温度測定に用いる測温抵抗体35が埋設されている。つまり、発熱抵抗体34は、絶縁層33にて測温抵抗体35よりも中央側の領域に配置され、測温抵抗体35は、絶縁層33の縁を形成する四辺のうちの一辺に沿った領域に配置されている。
【0023】
なお、絶縁層33は、単一の材料で形成されてもよいし、異なる材料を用いて複数層を成すように形成されてもよい。また、絶縁層33を構成する絶縁性材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO
2)や窒化珪素(Si
3N
4)が用いられる。
【0024】
発熱抵抗体34は、自身の温度変化により抵抗値が変化する温度抵抗係数が大きい導電性材料で構成され、また、測温抵抗体35は、電気抵抗が温度に比例して変化(本実施形態では、温度の上昇に伴って抵抗値が増大)する導電性材料で構成される。発熱抵抗体34および測温抵抗体35は、いずれも同じ抵抗材料、本実施形態では白金(Pt)で形成されている。
【0025】
そして、発熱抵抗体34は、発熱抵抗体34が形成された平面と同じ平面に埋設された配線36、および配線膜37を介して第1電極群311,312に接続され、測温抵抗体35は、測温抵抗体35が形成された平面と同じ平面に埋設された配線膜(図示せず)を介して第2電極群314,315に接続されている。
【0026】
なお、配線36や配線膜37を構成する材料としては、発熱抵抗体34および測温抵抗体35と同じ抵抗材料が用いられている。また、基部30の表面に形成される電極31と基部30(絶縁層33)の内部に形成される配線膜37とはコンタクトホール(接続導体)によって接続される。
【0027】
つまり、発熱抵抗体34は、一端が電極311、他端がグランド電極312と導通し、測温抵抗体35は、一端が電極314、他端がグランド電極315と導通するように接続されている。
[制御回路]
次に、制御回路5の構成について説明する。
【0028】
図1に示すように、制御回路5は、発熱抵抗体34への通電制御を行い、発熱抵抗体34の両端電圧に対応する検出信号V1を出力する通電制御回路50と、測温抵抗体35への通電を行い、被検出雰囲気の温度を表す温度検出信号SVTを出力する温度調整回路80とを備えている。
【0029】
[通電制御回路]
通電制御回路50は、発熱抵抗体34を含んで構成されたブリッジ回路(ホイートストンブリッジ回路)51と、ブリッジ回路51で検出される電位差を増幅する増幅回路53と、増幅回路53の出力に従って、ブリッジ回路51に流れる電流を増減調整する電流調整回路55とを備えている。
【0030】
電流調整回路55は、ブリッジ回路51に直流電源Vccを供給する電源ラインに接続され、増幅回路53の出力である調整信号Cに従って通電状態(オン抵抗)が変化するトランジスタを備える。具体的には、調整信号Cが大きいほど、オン抵抗が大きくなって、ブリッジ回路51に流れる電流が減少し、逆に、調整信号が小さいほど、オン抵抗が小さくなって、ブリッジ回路51に流れる電流が増大するように構成されている。
【0031】
増幅回路53は、演算増幅器531と、演算増幅器531の反転入力端子および非反転入力端子のそれぞれに接続された固定抵抗532,533と、演算増幅器531の反転入力端子と出力端子との間に並列接続された固定抵抗534,およびコンデンサ535とによって構成された周知の差動増幅回路を備える。
【0032】
つまり、非反転入力端子の入力電圧が反転入力端子の入力電圧より大きい場合に、増幅回路53の出力である調整信号Cが大きくなり(ひいては、ブリッジ回路51に流れる電流が減少し)、逆に、非反転入力端子の入力電圧が反転入力端子の入力電圧より小さい場合に、調整信号Cが小さくなる(ひいては、ブリッジ回路51に流れる電流が増大する)ように構成されている。
【0033】
ブリッジ回路51は、発熱抵抗体34および2個の固定抵抗511,512、抵抗値を切替可能な可変抵抗部52を備えており、固定抵抗511と発熱抵抗体34、固定抵抗512と可変抵抗部52をそれぞれ直列接続し、各直列回路のうち、発熱抵抗体34および可変抵抗部52側の各端部PGを接地し、固定抵抗511,512側の各端部を電源側(電流調整回路55)に接続することで構成されている。
【0034】
そして、固定抵抗511と発熱抵抗体34との接続点P+は、固定抵抗532を介して演算増幅器531の非反転入力端子に接続され、固定抵抗512と可変抵抗部52との接続点P−は、固定抵抗533を介して演算増幅器531の反転入力端子に接続されている。さらに、接続点P+の電位を、検出信号V1としてマイコン7に供給するように構成されている。
【0035】
また、可変抵抗部52は、抵抗値の異なる2個の固定抵抗521,522と、マイコン7からの切替信号CG1に従って、固定抵抗521,522のいずれか一方を有効に動作させる切替スイッチ523を備えており、切替スイッチ523により可変抵抗部52の抵抗値を切り替えることで、ブリッジ回路51のバランスを変化させることができるように構成されている。
【0036】
なお、固定抵抗521は、発熱抵抗体34が第1設定温度CH(例えば、400℃)となる抵抗値を有し、固定抵抗522は、発熱抵抗体34が第1設定温度CHより低く設定された第2設定温度CL(例えば、300℃)となる抵抗値を有する。
【0037】
このように構成された通電制御回路50では、直流電源Vccからブリッジ回路51への通電を開始すると、増幅回路53および電流調整回路55は、接続点P+,P−間に生じる電位差がゼロになるようにブリッジ回路51に流れる電流を調整する。これにより、発熱抵抗体34の抵抗値(ひいては温度)が、可変抵抗部52によって決まる一定値(ひいては第1設定温度CHまたは第2設定温度CL)に制御される。
【0038】
具体的には、被検出雰囲気中の可燃性ガスの含有量が変化し、発熱抵抗体34が発生させる熱量より、可燃性ガスによって奪われる熱量が大きくなった場合には、発熱抵抗体34の温度が低下することによって、発熱抵抗体34の抵抗値が減少する。逆に、発熱抵抗体が発生させる熱量より、可燃性ガスによって奪われる熱量が小さくなった場合には、発熱抵抗体34の温度が上昇することによって、発熱抵抗体34の抵抗値が増大する。
【0039】
これに対して、増幅回路53および電流調整回路55は、発熱抵抗体34の抵抗値が減少すると、ブリッジ回路51に流れる電流、ひいては発熱抵抗体34が発生させる熱量を増大させ、逆に、発熱抵抗体34の抵抗値が増大すると、ブリッジ回路51に流れる電流、ひいては発熱抵抗体34が発生させる熱量を減少させることで、発熱抵抗体34の抵抗値(ひいては温度)を一定の大きさに保つ。
【0040】
つまり、接続点P+の電位を表す検出信号V1からは、発熱抵抗体34に流れる電流の大きさ、即ち、発熱抵抗体34の温度(抵抗値)を一定に保つために必要な熱量(さらには、可燃性ガスによって奪われる熱量)がわかり、その熱量はガス濃度に応じた大きさとなるため、検出信号V1から可燃性ガスのガス濃度がわかることになる。なお、詳細には、ガス濃度を算出する際に、被検出雰囲気内の湿度Hを用いて補正するが、これについては後述の「ガス濃度演算処理」にて説明する。
【0041】
[温度測定回路]
次に、温度調整回路80は、測温抵抗体35を含んで構成されたブリッジ回路(ホイートストンブリッジ)81と、ブリッジ回路81から得られる電位差を増幅する増幅回路83とを備えている。
【0042】
増幅回路83は、演算増幅器831と、演算増幅器831の反転入力端子および非反転入力端子のそれぞれに接続された固定抵抗832,833と、演算増幅器831の反転入力端子と出力端子との間に並列接続された固定抵抗834,コンデンサ835によって構成された周知の差動増幅回路を備える。
【0043】
ブリッジ回路81は、測温抵抗体35および3個の固定抵抗811,812,813を備えており、固定抵抗811と測温抵抗体35、固定抵抗812と固定抵抗813をそれぞれ直列接続し、各直列回路のうち、測温抵抗体35および固定抵抗813側の各端部を接地し、固定抵抗811,812側の各端部を電源に接続することで構成されている。
【0044】
そして、固定抵抗811と測温抵抗体35との接続点P−が固定抵抗833を介して演算増幅器531の反転入力端子に接続され、固定抵抗812と固定抵抗813との接続点P+が固定抵抗832を介して演算増幅器831の非反転入力端子に接続されている。また、演算増幅器831の出力を温度検出信号SVTとしてマイコンに供給するように構成されている。
【0045】
測温抵抗体35は、ガス検出素子3が晒される被検出雰囲気の温度が、予め設定された基準温度の時に、温度検出信号SVTが基準値となるように設定される。
そして、被検出雰囲気の温度変化に伴って、測温抵抗体35の抵抗値が変化することにより電位差が生じ、この電位差を増幅したものが温度検出信号SVTとして出力される。
【0046】
なお、ガス検出素子3と制御回路5との接続において、ガス検出素子3の各電極31(311,312,314,315)は、電極311が通電制御回路50の接続点P+に、電極314が温度調整回路80の接続点P−に、グランド電極312,315が制御回路5に共通のグランドラインに接続される。
【0047】
[マイコン]
マイコン7は、ガス濃度演算処理等を実行するための各種のプログラムやデータを格納する記憶装置8(ROM,RAM等)、この記憶装置8に記憶されたプログラムを実行するCPU、各種信号を入出力するためのIOポート、計時用タイマー等を備えた周知のものである。
【0048】
ここで、第1設定温度CH(400℃)の時に検出される検出信号V1の信号レベルを高温時電圧VH、第2設定温度CL(300℃)時に検出される検出信号V1の信号レベルを低温時電圧VL、温度調整回路80から読み込んだ温度検出信号SVTの信号レベルを温度電圧VTというものとする。
【0049】
そして、記憶装置8には、被検出雰囲気内の環境温度Tと温度電圧VTとの相関関係を表す温度換算データ、被検出雰囲気内の湿度Hと高温時電圧VH,低温時電圧VL,温度電圧VTとの相関関係を表す湿度換算データ、高温時電圧VHまたは低温時電圧VL(本実施形態では高温時電圧VHを使用)と可燃性ガスのガス濃度Xとの相関関係を表す濃度換算データが少なくとも記憶されている。なお、各換算データは、具体的には、換算用マップデータや換算用計算式等で構成されており、実験等により得られたデータに基づいて予め作成されたものである。
【0050】
なお、湿度換算データには、環境温度T(ひいては温度電圧VT)と後述する電圧比VC(0)との相関関係を表す電圧比換算用マップデータ、後述する電圧比差ΔVCと湿度Hとの相関関係を表す湿度換算用マップデータが含まれている。さらに、濃度換算データには、温度電圧VTと後述する高温時電圧VH(0)との相関関係を表す高温時電圧換算用マップデータ、高温時電圧VHおよび湿度Hと後述する高温時電圧変化ΔVH(H)との相関関係を表す湿度電圧変化換算用マップデータ、温度電圧VTおよび高温時電圧VHと後述するガス感度G(VT)との相関関係を表すガス感度換算用マップデータが含まれている。
【0051】
また、マイコン7は、起動スイッチ9がオンされることによって直流電源Vccから給電が開始されると起動して、マイコン7の各部を初期化後、ガス濃度演算処理を開始する。
なお、通電制御回路50および切替信号CG1を出力するマイコン7が通電制御部の一例に相当し、ガス濃度演算処理を実行するマイコン7がガス濃度演算部の一例に相当する。
【0052】
[第1の実施形態におけるガス濃度演算処理]
次に、
図4〜
図6を参照し、本発明の第1の実施形態に係る可燃性ガス検出装置のガス濃度演算処理について説明する。
図4は、それぞれVH及びVLの取得タイミングを示すタイムチャート(
図4(a)、(b))、発熱抵抗体の第1設定温度(CH),第2設定温度(CL)を示すタイムチャート(
図4(c))、及び測温抵抗体の温度(温度電圧VT)の取得タイミングを示すタイムチャート(
図4(d))を表す。又、
図5はVH、VL及びVTの取得処理のフローチャート、
図6は後述する平均高温時電圧VH'、及び平均低温時電圧VL'を用いたガス濃度演算処理のフローチャートである。
【0053】
図4に示すように、検出中に環境温度が上昇すると、VH及びVLは時間と共に低下するため(
図4(a)、(b))、最初の周期時間TW1にてVH1を検出した後、次の周期時間TW2にてVL1を検出すると、VH1と同一のタイミング(周期時間TW1)で検出した場合に比べて低温時電圧の値が小さくなる。そこで、第1の実施形態においては、周期時間TW1、TW3で時間的に連続する2つのVH1、VH2の値を平均した平均高温時電圧VH1'と、VH1、VH2の間の周期時間TW2におけるVL1との関係(これを「第1の情報群」という)に基づいてガス濃度の演算を行う。ここで、第1の情報群に用いるVH、VLを
図4中に逆三角形の領域R1で図示する。
このように、低温時電圧(VL1)と同一の検出タイミング(周期時間TW2)における高温時電圧の予測値(平均高温時電圧VH1')を、他の周期時間TW1、TW3での高温時電圧(VH1、VH2)から推定するため、同一の検出タイミングでVH、VLの電圧差及び電圧比が得られ、環境温度の時間的変化に伴うガス濃度の検出精度の低下を抑制することができる。又、第1の情報群においては周期時間TW2での環境温度(温度電圧VTL1)を用いることで、VH、VLの電圧差及び電圧比(第1の情報群)を算出するのと同一の検出タイミングでの環境温度をガス濃度の演算に用いることができる。つまり、第1の実施形態に係るガス濃度演算処理では、時間的に連続する2つの高温時電圧VH1,VH2の値を平均した平均高温時電圧VH1'、2つの高温時電圧VH1,VH2の間の周期時間TW2における低温時電圧VL1、及び、低温時電圧VL1を検出した周期時間TW2における環境温度VTL1からなる第1情報群に基づいて、ガス濃度の演算を行うのである。
なお、
図4において、高温時電圧(VH)の添え字1,2,3の順に、時系列で高温時電圧が検出され、同様に低温時電圧(VL)の添え字1,2,3の順に、時系列で低温時電圧が検出される。又、温度電圧VTLは、低温時電圧(VL)を検出したのと同一の周期時間での温度電圧(VT)を表し、温度電圧VTHは、高温時電圧(VH)を検出したのと同一の周期時間での温度電圧(VT)を表す。
【0054】
さらに、第1の実施形態においては、上述のように周期時間TW3で第1の情報群を算出した後、第1の情報群の算出に用いた低温時電圧VL1と、次の周期時間TW4に検出される低温時電圧VL2とを平均して平均低温時電圧VL1'を算出する。そして、VL1'と、VL1、VL2の間の周期時間TW3におけるVH2との関係(これを「第2の情報群」という)に基づいてガス濃度の演算を行う。ここで、第2の情報群に用いるVH、VLを
図4中に三角形の領域R2で図示する。
第2の情報群においても、高温時電圧(VH2)と同一の検出タイミング(周期時間TW3)における低温時電圧の予測値(平均低温時電圧VL1')を、他の周期時間TW2、TW4での低温時電圧(VL1、VL2)から推定するため、同一の検出タイミングでVH、VLの電圧差及び電圧比が得られ、環境温度の時間的変化に伴うガス濃度の検出精度の低下を抑制することができる。又、第2の情報群においては周期時間TW3での環境温度(温度電圧VTH2)を用いることで、VH、VLの電圧差及び電圧比(第2の情報群)を算出するのと同一の検出タイミングでの環境温度をガス濃度の演算に用いることができる。つまり、第1の実施形態に係るガス濃度演算処理では、時間的に連続する2つの低温時電圧VL1,VL2の値を平均した平均高温時電圧VL1'、2つの低温時電圧VL1,VL2の間の周期時間TW3における高温時電圧VH2、及び、高温時電圧VH2を検出した周期時間TW3における環境温度VTH2からなる第2情報群に基づいても、ガス濃度の演算を行うものでもある。
なお、上述のように周期時間TW4で第2の情報群を算出した後、第2の情報群の算出に用いた高温時電圧VH2と、次の周期時間TW5に検出される高温時電圧VH3とを用い、上記と同様にして第1の情報群を算出する。このように、第1の情報群と第2の情報群とを交互に算出することで、周期時間TW3以降、一周期時間TW4、TW5・・・毎に同一の検出タイミングでVH、VLの電圧差及び電圧比(第1の情報群及び第2の情報群)が得られるので、ガス濃度の検出精度がさらに向上する。これに対し、後述する第2の実施形態のように、第1の情報群と第2の情報群のいずれか一方のみを算出する場合、その算出タイミングは周期時間の2倍となる(
図7参照)。
【0055】
次に、
図5、
図6を参照し、マイコン7のCPUが実行するVH、VL及びVTの取得処理、及びガス濃度演算処理を説明する。なお、ガス濃度Xを求める演算では、低温時電圧VLまたは高温時電圧VHのいずれかから濃度換算データを用いてガス濃度Xを求め、さらには、温度電圧VTから温度換算データを用いて環境温度Tを求め、演算結果であるガス濃度Xを、同じく演算結果である環境温度Tだけを用いて補正する方法もあるが、ここでは、環境温度Tに加えて湿度Hを用いてガス濃度Xを求めるものとする。この場合、後述するように、同一の検出タイミングでのVH、VLの電圧比を用いて湿度Hを算出する。
【0056】
図5に示すように、VH、VL及びVTの取得処理において、まずステップS102では、CPUは発熱抵抗体34を高温側(第1設定温度(CH)側)へ切り替えると共に、測温抵抗体35に通電を開始する。具体的には、切替信号CG1によりブリッジ回路51の抵抗値、即ち、発熱抵抗体34の設定温度を、一定の周期時間TWの間、第1設定温度CHに保持する制御を行う。
次に、S104で、CPUは、S102の周期時間での温度電圧VTHmを取得する。なお、
図4(c)は発熱抵抗体の温度を示すタイムチャートであり、
図4(d)は温度電圧VTの取得タイミングを示すタイムチャートである。添え字m、後述する添え字n、及び後述する添え字qは自然数であり、1,2,3の順に時系列で取得されることを示す(以下も同様)。
次に、S106で、CPUは、高温時電圧(VHm)の取得が初回、つまり、VH1であるか否かを判定し、Noであれば濃度演算フラグに1を割り当てると共に(S108)、演算判定フラグに1を割り当てる(S110)。さらにS110からS112へ移行する。一方、S106でYesであれば、そのままS112へ移行する。
なお、濃度演算フラグ=1は、VHmが複数回取得されたことを意味し、
図4で説明したように連続する2つのVHm-1、VHmの値を平均して平均高温時電圧VHm-1'を算出可能となったことを示す。又、演算判定フラグは、後述する
図6のフローで平均高温時電圧VHm-1'と平均低温時電圧VLn-1'のいずれを算出するかを判定するフラグであり、演算判定フラグ=1の場合、平均高温時電圧VHm-1'を算出する処理を行う。
【0057】
次に、S112で、CPUは、発熱抵抗体34の高温時電圧(VHm)を取得し、周期時間TWが経過したか否かを判定する(S114)。S114でYesであればS116へ移行し、NoであればS114に戻って周期時間TWが経過するのを待つ。なお、
図5、
図6の例では、TW=200msecである。
次に、S116で、CPUは、発熱抵抗体34を低温側(第2設定温度(CL)側)へ切り替え、S116の周期時間での温度電圧VTLnを取得する(S118)。
次に、S120で、CPUは、低温時電圧(VLn)の取得が初回、つまり、VL1であるか否かを判定し、YesであればS124へ移行し、Noであれば演算判定フラグに0を割り当てる(S122)。演算判定フラグ=0の場合、
図4で説明したように連続する2つのVLn-1、VLnの値を平均して平均低温時電圧VLn-1'を算出可能となっており、平均低温時電圧VLn-1'を算出する処理を行う。さらにS122の処理後、S124へ移行する。
次に、S124で、CPUは、発熱抵抗体34の低温時電圧(VLn)を取得し、周期時間TWが経過したか否かを判定する(S126)。S126でYesであればS128へ移行し、NoであればS126に戻って周期時間TWが経過するのを待つ。
S128で、CPUは、発熱抵抗体34を高温側(第1設定温度(CH)側)へ切り替え、S104へ戻る。
以上のようにして取得されたVHm、VLn、VTHm及びVTLnは、濃度演算フラグ及び演算判定フラグと関連付けて記憶装置8(RAM)に記憶され、以下のガス濃度演算処理で読み出される。
【0058】
次に、
図6を参照し、ガス濃度演算処理を説明する。なお、ガス濃度演算処理は、上記した周期時間TW毎に行う。すなわち、
図5のS104〜S114の区間が周期時間TWで処理されるので、S114が経過した時点でS110の演算判定フラグを読み取ったガス濃度演算処理が行われる。さらにS116〜S126の区間が次の周期時間TWで処理され、S126が経過した時点でもS122の演算判定フラグを読み取った次のガス濃度演算処理が行われることとなる。
図6において、まずステップS202では、CPUは濃度演算フラグが1であるか否かを判定する。S202でYesであればS204へ移行し、Noであれば本ガス濃度演算処理を終了し、次回に備える。次にS204で、CPUは、演算判定フラグが1であるか否かを判定する。S204でYesであれば(つまり、
図5のS104〜S114で時間的に連続する2つの高温時電圧VHm-1、VHmの取得処理がされた場合に)S206へ移行し、通電制御回路50からVHm-1、VHm、VLnを取得するとともに、温度調整回路80からVTLnを取得する。ここで、m=2,n=1の場合が
図4のR1に相当し、平均高温時電圧VHm-1'、低温時電圧VLn、及び、低温時電圧VLnを取得する周期時間の温度電圧VTLnからなる第1情報群に基づいてのガス濃度の演算処理となる。一方、S204でNoであれば、平均低温時電圧VLn-1'、高温時電圧VHm、及び、高温時電圧VHmを取得する周期時間の温度電圧VTHmからなる第2情報群に基づいてのガス濃度の演算処理に移行する。
【0059】
次に、S208では、CPUは平均高温時電圧VHm-1'を算出する。具体的には、S206で取得したVHm-1、VHmを次式(1)の入力値としてVHm−1'を算出する。
VHm-1'=(VHm-1+VHm)/2…(1)
そして、S210では、CPUは、S206にて取得したVLnと、S208で算出したVHm-1'を次式(2)の入力値として、電圧比VCqを算出する。
VCq=VHm−1'/VLn…(2)
次いで、S212では、S206にて取得した温度電圧VTLnと、電圧比換算用マップデータとに基づいて、環境温度TLn(ひいては温度電圧VTLn)においてガス濃度X、及び、湿度Hがゼロのときの電圧比VCq(0)を算出する。
【0060】
そして、S214では、S210にて算出した電圧比VCqと、S212にて算出したVCq(0)とを次式(3)の入力値として、環境温度TLn(ひいては温度電圧VTLn)における電圧比差ΔVCqを算出する。
ΔVCq=VCq−VCq(0)…(3)
次に、S216では、S214にて算出した電圧比差ΔVCqと、湿度換算用マップデータとに基づいて、電圧比差ΔVCqのときの湿度Hqを算出する。
そして、S218では、S208で算出したVHm-1'と、S206にて取得したVTLnと、高温時電圧換算用マップデータとに基づいて、環境温度TLn(ひいては温度電圧VTLn)においてガス濃度X、及び、湿度Hがゼロのときの高温時電圧VHq(0)を算出する。
続いて、S220では、S208で算出したVHm-1'と、S216にて算出した湿度Hqと、湿度電圧変化換算用マップデータとに基づいて、VHm−1'のうち湿度Hqによってもたらされた電圧変化分を表す高温時電圧変化ΔVHq(H)を算出する。
【0061】
そして、S222では、S208で算出したVHm-1'と、S218にて算出したVHq(0)と、S220にて算出したΔVHq(H)とを次式(4)の入力値として、VHm-1'のうち可燃性ガスによってもたらされた電圧変化分を表す高温時電圧変化ΔVHq(G)を算出する。
ΔVHq(G)=VHm-1'−VHq(0)−ΔVHq(H)…(4)
続いてS224では、S208で算出したVHm-1'と,S206にて取得したVTLnと、ガス感度換算用マップデータとに基づいて、VHm-1'について環境温度TLn(ひいては温度電圧VTLn)毎に予め設定された可燃性ガスに対する感度(単位はガス濃度Xの逆数)を表すガス感度Gq(VT)を算出する。
最後に、S226にて、S222にて算出した高温時電圧変化ΔVHq(G)と、S224にて算出したガス感度Gq(VT)とを次式(5)の入力値として、可燃性ガスのガス濃度Xqを算出し、本ガス濃度演算処理を終了する。
Xq=ΔVHq(G)/Gq(VT)…(5)
【0062】
一方、S204でNoの場合(つまり、
図5のS116〜S126で時間的に連続する2つの低温時電圧VLn-1、VLnの取得処理がされた場合)には、S230へ移行し、通電制御回路50からVLn-1、VLn、VHmを取得するとともに、温度調整回路80からVTHmを取得する。ここで、m=2、n=2の場合が
図4のR2に相当する。
【0063】
次に、S232では、CPUは平均低温時電圧VLn-1'を算出する。具体的には、S230で取得したVLn-1、VLnを次式(6)の入力値としてVLn+1'を算出する。
VLn-1'=(VLn-1+VLn)/2…(6)
そして、S234では、CPUは、S230にて取得したVHmと、S232で算出したVLn-1'を次式(7)の入力値として、電圧比VCqを算出する。
VCq=VHm/VLn-1'…(7)
なお、添え字qは時系列で増加する自然数であるが、m、nと直接連動する値ではないので、「q+1」等で表さずに、すべて「q」で表記する。例えば、S206以降の処理でVC1(q=1)とされ、S204でNOと判定されたとき、S230以降の処理ではVC2(q=2)となり、算出される毎に1ずつふえてゆく。
そして、S236では、S230にて取得した温度電圧VTHmと、電圧比換算用マップデータとに基づいて、環境温度THm(ひいては温度電圧VTHm)においてガス濃度X、及び、湿度Hがゼロのときの電圧比VCq(0)を算出する。
【0064】
そして、S238では、S234にて算出した電圧比VCqと、S236にて算出したVCq(0)とを次式(8)の入力値として、環境温度THm(ひいては温度電圧VTHm)における電圧比差ΔVCqを算出する。
ΔVCq=VCq−VCq(0)…(8)
次に、S240では、S238にて算出した電圧比差ΔVCqと、湿度換算用マップデータとに基づいて、電圧比差ΔVCqのときの湿度Hqを算出する。
そして、S242では、S232で算出したVLn-1'と、S230にて取得したVTHmと、高温時電圧換算用マップデータとに基づいて、環境温度THm(ひいては温度電圧VTHm)においてガス濃度X、及び、湿度Hがゼロのときの高温時電圧VHq(0)を算出する。
続いて、S244では、S230で取得したVHmと、S240にて算出した湿度Hqと、湿度電圧変化換算用マップデータとに基づいて、VHmのうち湿度Hqによってもたらされた電圧変化分を表す高温時電圧変化ΔVHq(H)を算出する。
【0065】
そして、S246では、S230で取得したVHmと、S242にて算出したVHq(0)と、S244にて算出したΔVHq(H)とを次式(9)の入力値として、VHmのうち可燃性ガスによってもたらされた電圧変化分を表す高温時電圧変化ΔVHq(G)を算出する。
ΔVHq(G)=VHm−VHq(0)−ΔVHq(H)…(9)
続いてS248では、S230で取得したVHmと,S230にて取得したVTHqと、ガス感度換算用マップデータとに基づいて、VHmについて環境温度THm(ひいては温度電圧VTHm)毎に予め設定された可燃性ガスに対する感度(単位はガス濃度Xの逆数)を表すガス感度Gq(VT)を算出する。
最後に、S250では、S246にて算出した高温時電圧変化ΔVHq(G)と、S248にて算出したガス感度Gq(VT)とを次式(10)の入力値として、可燃性ガスのガス濃度Xqを算出し、ガス濃度演算処理の最初に戻る。
Xq=ΔVHq(G)/Gq(VT)…(10)
【0066】
このように、
図5、
図6の処理では、周期時間TW毎に切替信号CG1を切替スイッチ523に出力することにより、固定抵抗512と可変抵抗部52との接続点P−から端部PG(可変抵抗部52における接地側端部)への通電経路(可変抵抗部52における通電経路)を、固定抵抗521,522のいずれか一方側から他方側に切り替え、これにより高温時電圧VHm−1、VHm,低温時電圧VLn−1,VLn、温度電圧VTLn、VTHmを取得する。そして、ガス濃度演算処理では、温度電圧VTLn、VTHmに基づいてそれぞれ環境温度TLn、THmを演算する。
さらには、低温時電圧VLnと同一の検出タイミング(周期時間)における高温時電圧の予測値(平均高温時電圧VHm−1')を、他の周期時間での高温時電圧(VHm−1、VHm)から推定し、高温時電圧VHm−1'と低温時電圧VLnの電圧比から被検出雰囲気内の湿度Hqを演算し、これら環境温度TLnと湿度Hqとを用いてガス濃度Xqを補正する。同様に、高温時電圧VHmと同一の検出タイミング(周期時間)における低温時電圧の予測値(平均低温時電圧VLn−1')を、他の周期時間での低温時電圧(VLn−1、VLn)から推定し、高温時電圧VHmと低温時電圧VLn-1'の電圧比から被検出雰囲気内の湿度Hqを演算し、これら環境温度THmと湿度Hqとを用いてガス濃度Xqを補正する。
そのため、同一の検出タイミングでの電圧比が得られ、環境温度の時間的変化に伴うガス濃度の検出精度の低下を抑制することができる。
【0067】
[第2の実施形態におけるガス濃度演算処理]
次に、
図7〜
図9を参照し、本発明の第2の実施形態に係る可燃性ガス検出装置のガス濃度演算処理について説明する。
図7は、VH及びVLの取得タイミングを示すタイムチャート(それぞれ
図7(a)、(b))、発熱抵抗体の第1設定温度(CH),第2設定温度(CL)を示すタイムチャート(
図7(c))、及び測温抵抗体の温度(温度電圧VT)の取得タイミングを示すタイムチャート(
図7(d))を表す。又、
図8はVH、VL及びVTの取得処理のフローチャート、
図9は平均高温時電圧VH'を用いたガス濃度演算処理のフローチャートである。
【0068】
図7に示すように、検出中に環境温度が上昇すると、VH及びVLは時間と共に低下するため(
図7(a)、(b))、最初の周期時間TW1にてVH1を検出した後、次の周期時間TW2にてVL1を検出すると、VH1と同一のタイミング(周期時間TW1)で検出した場合に比べて低温時電圧の値が小さくなる。そこで、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に周期時間TW1、TW3で時間的に連続する2つのVH1、VH2の値を平均した平均高温時電圧VH1'と、VH1、VH2の間の周期時間TW2におけるVL1との第1の情報群に基づいてガス濃度の演算を行う。ここで、第1の情報群に用いるVH、VLを
図7中に逆三角形の領域R1で図示する。
このように、低温時電圧(VL1)と同一の検出タイミング(周期時間TW2)における高温時電圧の予測値(平均高温時電圧VH1')を、他の周期時間TW1、TW3での高温時電圧(VH1、VH2)から推定するため、同一の検出タイミングでVH、VLの電圧差及び電圧比が得られ、環境温度の時間的変化に伴うガス濃度の検出精度の低下を抑制することができる。又、第1の情報群においては周期時間TW2での環境温度(温度電圧VTL1)を用いることで、VH、VLの電圧差及び電圧比(第1の情報群)を算出するのと同一の検出タイミングでの環境温度をガス濃度の演算に用いることができる。つまり、第2の実施形態に係るガス濃度演算処理では、時間的に連続する2つの高温時電圧VH1,VH2の値を平均した平均高温時電圧VH1'、2つの高温時電圧VH1,VH2の間の周期時間TW2における低温時電圧VL1、及び、低温時電圧VL1を検出した周期時間TW2における環境温度VTL1からなる第1情報群に基づいて、ガス濃度の演算を行うのである。
【0069】
但し、第2の実施形態においては、周期時間TW3で第1の情報群を算出した後、次に第1の情報群を算出するタイミングは2周期遅れた周期時間TW5となる。ここで、2回目に算出する第1の関係に用いるVH、VLを
図7中に逆三角形の領域R3で図示する。このように、第1の情報群と第2の情報群の一方のみを算出する場合、周期時間TWの2倍で第1の情報群、つまり同一の検出タイミングでのVH、VLの電圧差及び電圧比を算出することになるので、ガス濃度の検出精度は第1の実施形態よりは劣るが、マイコンの処理負担が軽減するという利点がある。
【0070】
次に、
図8、
図9を参照し、マイコン7のCPUが実行するVH、VL及びVTの取得処理、及びガス濃度演算処理を説明する。
【0071】
図8に示すように、VH、VL及びVTの取得処理において、まずステップS302では、CPUは発熱抵抗体34を高温側(第1設定温度(CH)側)へ切り替えると共に、測温抵抗体35に通電を開始する。具体的には、切替信号CG1によりブリッジ回路51の抵抗値、即ち、発熱抵抗体34の設定温度を、一定の周期時間TWの間、第1設定温度CHに保持する制御を行う。
次に、S306で、CPUは、高温時電圧(VHm)の取得が初回、つまり、VH1であるか否かを判定し、Noであれば濃度演算フラグに1を割り当て(S308)、S312へ移行する。S306でYesであればS312へ移行する。なお、第2の実施形態では、平均低温時電圧VLn-1'を算出しないので、演算判定フラグは用いない。
【0072】
次に、S312で、CPUは、発熱抵抗体34の高温時電圧(VHm)を取得し、周期時間TWが経過したか否かを判定する(S314)。S314でYesであればS316へ移行し、NoであればS314に戻ってTWが経過するのを待つ。なお、
図7、
図8の例では、TW=200msecである。
次に、S316で、CPUは、発熱抵抗体34を低温側(第2設定温度(CL)側)へ切り替え、S316の周期時間での温度電圧VTLnを取得する(S318)。
次に、S324で、CPUは、発熱抵抗体34の低温時電圧(VLn)を取得し、周期時間TWが経過したか否かを判定する(S326)。S326でYesであればS328へ移行し、NoであればS326に戻ってTWが経過するのを待つ。
S328で、CPUは、発熱抵抗体34を高温側(第1設定温度(CH)側)へ切り替え、S306へ戻る。
以上のようにして取得されたVHm、VLn、VTHm及びVTLnは、濃度演算フラグと関連付けて記憶装置8(RAM)に記憶され、以下のガス濃度演算処理で読み出される。
【0073】
次に、
図9を参照し、ガス濃度演算処理を説明する。なお、ガス濃度演算処理は、上記した周期時間TW毎に行う。すなわち、
図8のS306〜S314の区間が周期時間TWで処理されるので、S314が経過した時点でガス濃度演算処理(主に平均高温時電圧VHm-1'の算出)が行われ、さらに次の周期時間TWで処理されるS316〜S326の区間でもガス濃度演算処理(主にVTLn,VLnの取得)が行われることとなる。
但し、
図9の処理は、ステップS204が無く、S202から直ちにS206に移行すること以外は、
図6で述べた処理のS206〜S226と同一であるので、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0074】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。例えば、マイコン7における各処理を実行するための各種のプログラムやデータを記憶するための装置は、マイコン7の内部に備えられる記憶装置8に限られることはなく、マイコン7との間で情報伝達が可能なあらゆる形態の外部記憶装置や記録媒体でもよい。この場合、マイコン7は、外部記憶装置や記録媒体から読み込んだ各種のプログラムやデータを用いて各処理を実行する。記録媒体としては、例えば、持ち運び可能な半導体メモリ(例えば、USBメモリ、メモリカード(登録商標)など)、CD−ROMやDVDなどの光ディスク、磁気ディスク等が含まれる。