【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省、79GHz帯レーダーシステムの高度化に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(各実施形態の内容に至る経緯)
先ず、本開示に係るセンシング方法及びセンシング装置の実施形態を説明する前に、従来のセンシング方法及びセンシング装置における課題について
図1から
図3を参照して説明する。
図1は、従来のセンシング装置の第1構成例を示すブロック図である。
図2(A)は、DCオフセットが含まれない場合の遅延プロファイルである。
図2(B)は、DCオフセットが含まれる場合の遅延プロファイルである。
図2(A)及び(B)の横軸は時間[msec]、即ち高周波信号が送信されてからの経過時間であり、同図の縦軸は相関値のレベル(相関レベル)[dB]を表す。
【0014】
図1に示すセンシング装置200は、例えば送信RF部230において生じるDCオフセットを低減するための技術的工夫が無く、パルス圧縮符号(例えば相補符号)を用いて生成した高周波信号を送信周期毎に送信アンテナ240から送信する。センシング装置200から送信された高周波信号はターゲット100により反射され、反射波信号は受信アンテナ250において受信される。センシング装置200は、受信アンテナ250において受信された反射波信号を基に、センシング装置200とターゲット100との距離を測距する。
【0015】
図1に示すセンシング装置200は、パルス符号テーブル201、制御部202、パルス波生成部210、DAC(Digital Analog Converter)220、送信アンテナ240が接続された送信RF部230、受信アンテナ250が接続された受信RF部260、ADC(Analog Digital Converter)270、相関器280及びコヒーレント加算部290を含む。
【0016】
パルス符号テーブル201には、センシング装置200が送信信号を生成するために用いる符号系列として、例えば相補符号(A,B)を構成する符号系列A又はBと各符号系列A又はBが用いられる出力順序に関する情報とが格納されている。出力順序とは、例えば送信周期毎に符号系列A、B、A、B、…と各符号系列が交互に選択される順序である。
【0017】
相補符号とは、例えばペアとなる2つの相補符号系列(A
n、B
n)を用いた符号である。相補符号は、一方の相補符号系列A
nと他方の相補符号系列B
nの各自己相関演算結果において遅延時間τ[秒]を一致させた各自己相関演算結果の加算によって、相関値のピーク値を除いたサイドローブがゼロとなる性質を有する。なお、パラメータnはn=1,2〜L(符号系列長(符号長))である。また、以下の説明では、パラメータnの表記を省略し、単に符号系列A又はBと表記する。
【0018】
制御部202は、パルス符号テーブル201を参照し、高周波信号の送信周期毎に符号系列A又はBを交互に選択してパルス波生成部210に出力する。パルス波生成部210は、制御部202から出力された符号系列A又はBを用いて、パルス圧縮符号としての送信信号を生成してDAC220に出力する。DAC220は、パルス波生成部210から出力されたデジタルの送信信号をアナログの送信信号にD/A変換して送信RF部230に出力する。送信RF部230は、不図示のローカル信号発振器から出力されたローカル信号を用いて、DAC220から出力された送信信号を高周波信号に変換して送信アンテナ240から送信する。
【0019】
受信RF部260は、ターゲット100により反射された高周波信号を受信アンテナ250において受信し、不図示のローカル信号発振器から出力されたローカル信号を用いて、受信アンテナ250において受信された高周波の受信信号をベースバンドの受信信号に変換してADC270に出力する。ADC270は、受信RF部260から出力されたアナログのベースバンドの受信信号をデジタルのベースバンドの受信信号にA/D変換して相関器280に出力する。
【0020】
相関器280は、送信周期毎に、パルス波生成部210により生成された送信信号とADC270から出力された受信信号との相関値を演算してコヒーレント加算部290に出力する。コヒーレント加算部290は、所定のコヒーレント加算回数分の各送信周期において相関器280により演算された相関値を加算し、ピーク相関値(
図2(A)又は(B)参照)となる時間を基にしてターゲット100とセンシング装置200との間の距離を測距する。
図2(A)又は
図2(B)に示す遅延プロファイルは、コヒーレント加算部290におけるコヒーレント加算結果である。
【0021】
図2(A)は、送信RF部230及び受信RF部260において送信信号及び受信信号にDCオフセットが含まれない遅延プロファイルである。このため、
図2(A)では、経過時間約220[msec]におけるピーク相関値を除いた他の相関値(例えば、ノイズ、サイドローブ又はノイズ及びサイドローブの組み合わせ)の平均値(フロア平均値)のレベルがピーク相関値に比べて相対的に低くなっている。
【0022】
一方、
図2(B)は、送信RF部230又は受信RF部260において送信信号又は受信信号にDCオフセットが含まれる遅延プロファイルである。このため、
図2(B)では、経過時間約220[msec]におけるピーク相関値を除いた他の相関値の平均値(フロア平均値)のレベルが
図2(A)に示すフロア平均値のレベルに比べて相対的に高くなっている。
【0023】
従って、ターゲット100ではない他のターゲットからの反射波信号に応じたピーク相関値が
図2(B)に示すフロア平均値よりも小さい場合には、センシング装置200は、他のターゲットを検出することが困難となる。即ち、
図1に示すセンシング装置200では、ターゲットのセンシング特性が劣化している。
【0024】
図3は、従来のセンシング装置の第2構成例(例えば特許文献1参照)を示すブロック図である。
図3に示すセンシング装置300は、例えば送信RF部230において生じるDCオフセットを低減するために、
図1に示すセンシング装置200に比べて、解析部310、DAC320及び加算部330を更に含む。
図3に示すセンシング装置300の動作の説明では、
図1に示すセンシング装置200の動作と同一の内容の説明は省略し、異なる内容について説明する。
【0025】
解析部310は、例えば、ADC270から出力されたデジタルのベースバンドの受信信号の平均値を基にしてDCオフセットを算出してDAC320に出力する。具体的には、解析部310は、DCオフセットが含まれない受信信号の平均値を予め保持し、ADC270から出力された受信信号の平均値との差分をDCオフセットとして算出する。但し、解析部310におけるDCオフセットの算出方法は、平均値の差分演算方法に限定されない。
【0026】
DAC320は、解析部310から出力されたデジタルのDCオフセットをアナログの信号にD/A変換し、D/A変換後のDCオフセット信号を加算部330に出力する。加算部330は、受信RF部260から出力されたアナログの受信信号からDAC320から出力されたアナログのDCオフセット信号を減算する。加算部330からの出力信号は、受信RF部260から出力された受信信号からDCオフセット信号が減算されているため、
図3に示すセンシング装置300は、送信RF部230において生じたDCオフセットを低減でき、ターゲットのセンシング特性の劣化を抑圧できる。
【0027】
しかし、
図3に示すセンシング装置300では、ターゲットのセンシング特性の劣化を抑圧するために解析部310、DAC320及び加算部330を追加する必要があり、センシング装置300の構成が複雑になり、例えば製造コストも増大するという課題があった。
【0028】
そこで、以下の各実施形態では、無線通信において高周波信号(例えばマイクロ波又はミリ波)を用いることによって生じるDCオフセットを簡易な構成によって低減し、ターゲットのセンシング特性の劣化を抑圧するセンシング方法及びセンシング装置の例を説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
先ず、本開示に係るセンシング方法及びセンシング装置の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態のセンシング装置400は、
図4(A)に示す送信部TXと、
図4(B)に示す受信部RXとを含み、ターゲット100とセンシング装置400との間の距離を測る(測距)する。本実施形態のセンシング装置は、例えばレーダ装置又はソナー装置である。なお、本開示における発明のカテゴリーは、各実施形態のセンシング装置に限定せず、各実施形態のセンシング装置により実行される各動作(ステップ)を含むセンシング方法でも良い。
【0030】
図4(A)は、各実施形態に共通な構成のセンシング装置400の送信部TXの構成例を示すブロック図である。
図4(B)は、各実施形態に共通な構成のセンシング装置400の受信部RXの構成例を示すブロック図である。
図5は、各実施形態に共通な構成のセンシング装置の構成例を示すブロック図である。
【0031】
図4(A)に示す送信部TXは、パルス符号/位相回転テーブル401、制御部402、パルス波生成部210、位相回転部410、DAC220、及び送信アンテナ240が接続された送信RF部230を含む。
図4(B)に示す受信部RXは、受信アンテナ250が接続された受信RF部260、ADC270、位相逆回転部420、相関器280及びコヒーレント加算部290を含む。位相逆回転部420には、制御部402から出力された制御信号が入力される。なお、相関器280には、パルス波生成部210により生成された送信信号が入力される。
【0032】
パルス符号/位相回転テーブル401には、センシング装置400の送信部TXが送信信号を生成するために用いる符号系列として、例えば相補符号(A,B)を構成する符号系列A又はBと、各符号系列A又はBが用いられる出力順序に関する情報と、符号系列A又はBを基に生成された送信信号に付与する位相回転量に関する情報とが格納されている(
図6(A)参照)。
【0033】
図6(A)は、第1の実施形態の送信部TXにおいて用いられるパルス符号/位相回転テーブル401の内容の一例を示す図である。
図6(A)に示すパルス符号/位相回転テーブル401では、送信アンテナ240から送信する高周波信号の送信周期の序数と、各送信周期において用いられる符号系列と、各送信周期において生成される送信信号に付与される位相回転量とが定められている。
【0034】
本実施形態では、第1番目から第8番目までの合計8個(8=2×N、N=4)の送信周期を第1送信グループとし、第9番目から第16番目までの合計8個(8=2×N、N=4)の送信周期を第2送信グループとする。即ち、各送信グループは、相補符号を構成する符号系列(AとB)の数の倍数である2N(N:1以上の整数)個の送信周期を含む。
【0035】
本実施形態では、第1送信グループと第2送信グループとの和である16送信周期を単位として、A,B,A,B,…の各符号系列と所定の位相回転量とが繰り返し用いられる。従って、例えば第17番目の送信周期では、第1送信グループの第1番目の送信周期と同様に、符号系列Aが用いられ、符号系列Aを基に生成された送信信号に位相回転量「0」[rad]が付与される。
【0036】
更に、本実施形態では、相補符号を構成する符号系列A及びBを用いる送信周期分、即ち2送信周期を単位として、符号系列Aを基に生成される送信信号と符号系列Bを基に生成される送信信号とには同一の位相回転量が付与される。
【0037】
例えば、第1番目及び第2番目の各送信周期では、各符号系列A又はBを基に生成される送信信号には同一の位相回転量「0」[rad]が付与される。また、第3番目及び第4番目の各送信周期では、各符号系列A又はBを基に生成される送信信号には同一の位相回転量「π/2」[rad]が付与される。また、第5番目及び第6番目の各送信周期では、各符号系列A又はBを基に生成される送信信号には同一の位相回転量「π」[rad]が付与される。
【0038】
また、第7番目及び第8番目の各送信周期では、各符号系列A又はBを基に生成される送信信号には同一の位相回転量「3π/2」[rad]が付与される。説明は省略するが、第2送信グループ以降の各送信周期においても同様に、2送信周期を単位として、符号系列Aを基に生成される送信信号と符号系列Bを基に生成される送信信号とには同一の位相回転量が付与される。
【0039】
更に、本実施形態では、第1送信グループと第2送信グループとにおいて、各送信グループの第1番目及び第2番目、第3番目及び第4番目、…、第(2N−1)番目及び第2N番目の各送信周期では、第2送信グループにおいて送信信号に付与される位相回転量は、第1送信グループにおいて送信信号に付与される位相回転量にπ[rad]が加算された位相回転量、つまり、第1送信グループにおいて送信信号に付与される位相回転量が反転された位相回転量である。
【0040】
例えば、第1送信グループの第1番目及び第2番目の各送信周期において生成される送信信号に「0」[rad]の位相回転量が付与される場合、第2送信グループの第9番目及び第10番目の各送信周期において生成される送信信号に「π」[rad]の位相回転量が付与される。
【0041】
また、第1送信グループの第3番目及び第4番目の各送信周期において生成される送信信号に「π/2」[rad]の位相回転量が付与される場合、第2送信グループの第11番目及び第12番目の各送信周期において生成される送信信号に「3π/2」[rad]の位相回転量が付与される。
【0042】
また、第1送信グループの第5番目及び第6番目の各送信周期において生成される送信信号に「π」[rad]の位相回転量が付与される場合、第2送信グループの第13番目及び第14番目の各送信周期において生成される送信信号に「0」[rad]の位相回転量が付与される。
【0043】
また、第1送信グループの第7番目及び第8番目の各送信周期において生成される送信信号に「3π/2」[rad]の位相回転量が付与される場合、第2送信グループの第15番目及び第16番目の各送信周期において生成される送信信号に「π/2」[rad]の位相回転量が付与される。
【0044】
制御部402は、パルス符号/位相回転テーブル401を参照し、高周波信号の送信周期毎に、符号系列A又はBを交互に選択してパルス波生成部210に出力する。更に、制御部402は、パルス符号/位相回転テーブル401を参照し、パルス波生成部210が符号系列A又はBを基に生成した送信信号に付与する位相回転量と、ADC270から出力された受信信号に付与する位相逆回転量とを決定する。
【0045】
位相逆回転量は、位相回転量の逆位相、即ち位相回転量の符号が反転された位相である。つまり、制御部402は、送信部TXにおいて付与すると決定した位相回転量の逆位相を、受信部RXにおいて付与すると決定する。
【0046】
図6(B)に、位相逆回転量を示す。
図6(B)は、第1の実施形態の受信部RXに用いられるパルス符号/位相逆回転テーブルの内容の一例を示す図である。例えば、受信周期1では、受信周期1に対応する送信周期1では送信部TXにおける位相回転量が「0」[rad]であるため、受信部RXにおける位相逆回転量は「0」[rad]となる。
【0047】
また、受信周期3では、受信周期3に対応する送信周期3では送信部TXにおける位相回転量が「π/2」[rad]であるため、受信部RXにおける位相逆回転量は「−π/2」[rad]となる。同様に、受信周期7では、受信周期7に対応する送信周期7では送信部TXにおける位相回転量が「3π/2」[rad]であるため、受信部RXにおける位相逆回転量は「−3π/2=−(−π/2)=π/2」[rad]となる。
【0048】
制御部402は、パルス波生成部210により生成された送信信号に対し、決定された位相回転量を付与する旨の制御信号を位相回転部410に出力する。更に、制御部402は、ADC270から出力された受信信号に対し、決定された位相逆回転量を付与する旨の制御信号を位相逆回転部420に出力する。
【0049】
送信信号生成部としてのパルス波生成部210は、制御部402から出力された符号系列A又はBを基に、パルス圧縮信号(パルス圧縮波)としての送信信号を生成して位相回転部410に出力する。
【0050】
以下、本実施形態の内容を具体的に説明するために、コヒーレント加算部290におけるコヒーレント加算回数を16回又は16の倍数回とし、ターゲット100とセンシング装置400とが静止している状態であるとして説明する。具体的には、パルス波生成部210は、第1番目から第16番目までの各送信周期において、
A,B,A,B,A,B,A,B,
A,B,A,B,A,B,A,B
の各送信信号を生成する。ここでは、送信周期が2系列、送信グループは8系列、となる。
【0051】
位相回転部410は、パルス波生成部210から出力された送信信号に、制御部402から出力された制御信号に応じた位相回転量を付与する。位相回転部410は、位相回転量が付与された送信信号をDAC220に出力する。
具体的には、位相回転部410は、第1番目から第16番目までの各送信周期において、
A,B,jA,jB,−A,−B,−jA,−jB,
−A,−B,−jA,−jB,A,B,jA,jB
の各送信信号をDAC220に出力する。jは虚数単位である。
【0052】
このため、位相回転量「0」[rad]では「1」が乗算され、位相回転量「π/2」[rad]では「j」が乗算され、位相回転量「π」[rad]では、「−1」が乗算され、位相回転量「3π/2」[rad]では「−j」が乗算される。
【0053】
ここで、送信周期の第1番目から第8番目までが第1送信グループ、送信周期の第9番目から第16番目までが第2送信グループとなる。このため、第2送信グループは、第1グループの位相回転量に、更にπ[rad]を加算した位相回転量となる。
【0054】
DAC220は、位相回転部410から出力されたデジタルの送信信号をアナログの送信信号にD/A変換して送信RF部230に出力する。送信RF部230は、不図示のローカル信号発振器から出力されたローカル信号を用いて、DAC220から出力された送信信号を高周波信号に変換して送信アンテナ240から送信する。
【0055】
具体的には、送信RF部230においてDCオフセットが生じるため、第1番目から第16番目までの各送信周期における高周波信号は、
A+dc,B+dc,jA+dc,jB+dc,
−A+dc,−B+dc,−jA+dc,−jB+dc,
−A+dc,−B+dc,−jA+dc,−jB+dc,
A+dc,B+dc,jA+dc,jB+dc
となる。dcは、符号系列A及びBと同様に符号長Lのベクトルであって、構成要素が全て同一値である。
【0056】
送信アンテナ240から送信された高周波信号はターゲット100により反射され、反射波信号が受信アンテナ250において受信される。なお、以下の説明において、実際の高周波信号の伝送路では伝送路に応じた位相回転又は信号の減衰が生じるが、説明を簡単にするために、高周波信号の振幅及び位相は変化せずに受信アンテナ250において受信されるとして説明する。
【0057】
受信RF部260は、不図示のローカル信号発振器から出力されたローカル信号を用いて、受信アンテナ250において受信された高周波の受信信号をベースバンドの受信信号に変換してADC270に出力する。ADC270は、受信RF部260から出力されたアナログのベースバンドの受信信号をデジタルのベースバンドの受信信号にA/D変換して位相逆回転部420に出力する。
【0058】
位相逆回転部420は、ADC270から出力された受信信号に、制御部402から出力された制御信号に応じた位相逆回転量(
図6(B)参照)を付与する。
【0059】
位相逆回転部420は、位相逆回転量が付与された受信信号を相関器280に出力する。具体的には、位相逆回転部420は、第1番目から第16番目までの各送信周期において、
A+dc,B+dc,−j(jA+dc),−j(jB+dc),
−(−A+dc),−(−B+dc),j(−jA+dc),j(−jB+dc),
−(−A+dc),−(−B+dc),j(−jA+dc),j(−jB+dc),
A+dc,B+dc,−j(jA+dc),−j(jB+dc)
の各受信信号を相関器280に出力する。
【0060】
即ち、位相逆回転部420は、第1番目から第16番目までの各送信周期において、
A+dc,B+dc,A−jdc,B−jdc,
A−dc,B−dc,A+jdc,B+jdc,
A−dc,B−dc,A+jdc,B+jdc,
A+dc,B+dc,A−jdc,B−jdc
の各受信信号を相関器280に出力する。
【0061】
相関部としての相関器280は、送信周期毎にパルス波生成部210により生成された送信信号と位相逆回転部420から出力された受信信号との相関値を演算してコヒーレント加算部290に出力する。ここで、符号系列Xと符号系列Yとの相関値の演算をX#Yと表記し、符号系列X=[x
1,x
2,x
3,…,x
L]、Y=[y
1,y
2,y
3,…,y
L]とすると、X#Yは数式(1)により示される。X#Yは、長さLのベクトルである。
【0063】
具体的には、相関器280の演算結果は、第1番目から第16番目までの各送信周期において、
A#(A+dc),B#(B+dc),A#(A−jdc),B#(B−jdc),
A#(A−dc),B#(B−dc),A#(A+jdc),B#(B+jdc),
A#(A−dc),B#(B−dc),A#(A+jdc),B#(B+jdc),
A#(A+dc),B#(B+dc),A#(A−jdc),B#(B−jdc)
となる。
【0064】
コヒーレント加算部290は、所定のコヒーレント加算回数(例えば16回)の送信周期において相関器280により演算された相関値を加算し、ピーク相関値(
図2(A)参照)となる時間を基にしてターゲット100とセンシング装置400との間の距離を測距する。
【0065】
具体的には、コヒーレント加算部290は、第1番目から第16番目までの各送信周期におけるコヒーレント加算結果として、
A#(A+dc)+B#(B+dc)+A#(A−jdc)+B#(B−jdc)+
A#(A−dc)+B#(B−dc)+A#(A+jdc)+B#(B+jdc)+
A#(A−dc)+B#(B−dc)+A#(A+jdc)+B#(B+jdc)+
A#(A+dc)+B#(B+dc)+A#(A−jdc)+B#(B−jdc)
を演算する。
【0066】
ここで、相関値の演算は線形演算であるため、数式(2)が成立する。従って、第1番目から第16番目までの各送信周期におけるコヒーレント加算結果は、数式(3)により示される。即ち、コヒーレント加算結果は、第2項及び第4項がゼロとなり、DCオフセットがキャンセルされて符号系列Aの自己相関値と符号系列Bの自己相関値の和の成分となる。
【0067】
これにより、ターゲット100とセンシング装置400とが静止している状態では、本実施形態のセンシング装置400は、送信部TXにおいて送信信号に位相回転量を付与し、受信部RXにおいて受信信号に位相逆回転量を付与することで、例えば送信RF部230において生じるDCオフセットをキャンセルでき、センシング特性の劣化を抑圧できる。
【0070】
次に、ターゲット100が移動しており、移動中のターゲット100により反射された反射波信号(受信信号)がドップラ位相回転量φの影響を受ける場合について説明する。即ち、ターゲット100が移動している場合では、高周波信号が送信される度に、受信信号に位相回転量φが加重される。想定している位相回転量φは1から2度以下程度の小さい値であるが、コヒーレント加算部290におけるコヒーレント加算回数が例えば100回程度と大きくなると、加重される位相回転量の影響が無視できなくなる。ドップラ位相回転量φの影響として、第M(M:1以上の整数)番目の送信周期におけるドップラ位相回転量φの加重時に、係数exp(j
(M−1)φ)が受信信号に付加される。
【0071】
ターゲット100が移動している場合、第1番目から第16番目までの各送信周期におけるドップラ位相回転量φが加重された受信信号は、
exp(j
0φ)(A+dc),exp(j
1φ)(B+dc),
exp(j
2φ)(jA+dc),exp(j
3φ)(jB+dc),
exp(j
4φ)(−A+dc),exp(j
5φ)(−B+dc),
exp(j
6φ)(−jA+dc),exp(j
7φ)(−jB+dc),
exp(j
8φ)(−A+dc),exp(j
9φ)(−B+dc),
exp(j
10φ)(−jA+dc),exp(j
11φ)(−jB+dc),
exp(j
12φ)(A+dc),exp(j
13φ)(B+dc),
exp(j
14φ)(jA+dc),exp(j
15φ)(jB+dc)
となる。
【0072】
位相逆回転部420は、第1番目から第16番目までの各送信周期において、
exp(j
0φ)(A+dc),exp(j
1φ)(B+dc),
(−j)exp(j
2φ)(jA+dc),(−j)exp(j
3φ)(jB+dc),
(−1)exp(j
4φ)(−A+dc),(−1)exp(j
5φ)(−B+dc),
(j)exp(j
6φ)(−jA+dc),(j)exp(j
7φ)(−jB+dc),
(−1)exp(j
8φ)(−A+dc),(−1)exp(j
9φ)(−B+dc),
(j)exp(j
10φ)(−jA+dc),(j)exp(j
11φ)(−jB+dc),
exp(j
12φ)(A+dc),exp(j
13φ)(B+dc),
(−j)exp(j
14φ)(jA+dc),(−j)exp(j
15φ)(jB+dc)
の各受信信号を相関器280に出力する。
【0073】
即ち、位相逆回転部420は、第1番目から第16番目までの各送信周期において、
exp(j
0φ)(A+dc),exp(j
1φ)(B+dc),
exp(j
2φ)(A−jdc),exp(j
3φ)(B−jdc),
exp(j
4φ)(A−dc),exp(j
5φ)(B−dc),
exp(j
6φ)(A+jdc),exp(j
7φ)(B+jdc),
exp(j
8φ)(A−dc),exp(j
9φ)(B−dc),
exp(j
10φ)(A+jdc),exp(j
11φ)(B+jdc),
exp(j
12φ)(A+dc),exp(j
13φ)(B+dc),
exp(j
14φ)(A−jdc),exp(j
15φ)(B−jdc)
の各受信信号を相関器280に出力する。
【0074】
相関器280の演算結果は、第1番目から第16番目までの各送信周期において、
A#{exp(j
0φ)(A+dc)},B#{exp(j
1φ)(B+dc)},
A#{exp(j
2φ)(A−jdc)},B#{exp(j
3φ)(B−jdc)},
A#{exp(j
4φ)(A−dc)},B#{exp(j
5φ)(B−dc)},
A#{exp(j
6φ)(A+jdc)},B#{exp(j
7φ)(B+jdc)},
A#{exp(j
8φ)(A−dc)},B#{exp(j
9φ)(B−dc)},
A#{exp(j
10φ)(A+jdc)},B#{exp(j
11φ)(B+jdc)},
A#{exp(j
12φ)(A+dc)},B#{exp(j
13φ)(B+dc)},
A#{exp(j
14φ)(A−jdc)},B#{exp(j
15φ)(B−jdc)}
となる。
【0075】
コヒーレント加算部290は、第1番目から第16番目までの各送信周期におけるコヒーレント加算結果として、
A#{exp(j
0φ)(A+dc)}+B#{exp(j
1φ)(B+dc)}+
A#{exp(j
2φ)(A−jdc)}+B#{exp(j
3φ)(B−jdc)}+
A#{exp(j
4φ)(A−dc)}+B#{exp(j
5φ)(B−dc)}+
A#{exp(j
6φ)(A+jdc)}+B#{exp(j
7φ)(B+jdc)}+
A#{exp(j
8φ)(A−dc)}+B#{exp(j
9φ)(B−dc)}+
A#{exp(j
10φ)(A+jdc)}+B#{exp(j
11φ)(B+jdc)}+
A#{exp(j
12φ)(A+dc)}+B#{exp(j
13φ)(B+dc)}+
A#{exp(j
14φ)(A−jdc)}+B#{exp(j
15φ)(B−jdc)}
を演算する。従って、第1番目から第16番目までの各送信周期におけるコヒーレント加算結果は、数式(4)となる。
【0077】
数式(4)の第2項の大括弧内の成分は、jを含む成分とjを含まない成分とに区分けすると、数式(5)により示される。位相回転量φは1から2度程度の小さい値であるため、数式(5)について数式(6)に示す関係が成立する。このため、数式(5)はゼロに近い値に近似できる(
図7参照)。
【0079】
図7は、第1の実施形態におけるdc成分の位相のキャンセルを説明する説明図である。位相回転量φが1から2度程度の小さい値であれば、領域g1の拡大図における、ベクトル{exp(j
0φ)−exp(j
4φ)}とベクトル{−exp(j
8φ)+exp(j
12φ)}とは、大きさが同一であり、かつ、向きが反対である、と近似できる。これにより、位相回転量φが1から2度程度の小さい値であれば、数式(5)は限りなくゼロに近い値に近似できる。
【0081】
また、数式(4)の第4項の大括弧の成分は、jを含む成分とjを含まない成分とに区分けすると、数式(7)により示される。位相回転量φは1から2度程度の小さい値であるため、数式(7)について数式(8)に示す関係が成立する。このため、数式(4)の第2項と同様に、数式(4)の第4項、即ち数式(7)はゼロになるわけではないが、限りなくゼロに近い値に近似できる(
図7参照)。
【0084】
例えば、位相回転量φを1度とし、コヒーレント加算回数を64(=16×4)とする。数式(5)及び(7)の成分の大きさの和は、本実施形態のセンシング装置400では、位相回転しない場合及び位相逆回転しない場合では60.725となり、位相回転する場合及び位相逆回転する場合では1.473となる。
【0085】
更に、第1送信グループと第2送信グループとにおいて各送信グループの第1番目及び第2番目、…、第(2N−1)番目及び第2N番目の各送信周期において生成される送信信号にπ[rad]の位相差を有する位相回転量をそれぞれ付与する場合では、数式(5)及び(7)の成分の大きさの和は、0.103となる。
【0086】
従って、位相回転しない状態及び位相逆回転しない状態から、位相回転する及び位相逆回転することで、数式(5)及び(7)の成分の大きさの和は、2.4%の大きさに減少できる。
【0087】
また、位相回転しない状態及び位相逆回転しない状態から、第1送信グループの第1番目及び第2番目、…、第(2N−1)番目及び第2N番目の各送信周期において生成される送信信号に対して、第2送信グループの第1番目及び第2番目、…、第(2N−1)番目及び第2N番目の各送信周期において生成される送信信号では、位相回転量を更に、π[rad]の加算を行うことで、数式(5)及び(7)の成分の大きさの和は、0.17%の大きさに減少できる。
【0088】
以上により、本実施形態のセンシング装置400は、送信部TXにおいて、2N個の送信周期を含む第M(例えばM=1)番目の送信グループの第1番目及び第2番目、…、第(2N−1)番目及び第2N番目の各送信周期において生成される送信信号に対して、第(M+1)番目の送信グループの第1番目及び第2番目、…、第(2N−1)番目及び第2N番目の各送信周期において生成される送信信号では、位相回転量を更に、π[rad]の加算を行う(
図6(a)参照)。
【0089】
更に、センシング装置400は、受信部RXにおいて、送信部TXにおいて付与された位相回転量の逆位相を付与し(
図6(B)参照)、第M番目の送信グループと第(M+1)番目の送信グループとの各送信周期において演算された相関値をコヒーレント加算する。
【0090】
これにより、センシング装置400は、コヒーレント加算結果においてピーク相関値を除いた他の相関値の平均値(フロア平均値)のレベルを低減でき(
図8参照)、無線通信において高周波信号を用いる場合に生じるDCオフセットを簡易な構成によって低減でき、ターゲットのセンシング特性の劣化を抑圧できる。
【0091】
従って、センシング装置400は、例えば車と人間との両方を検知できる。また、センシング装置400は、無線通信において高周波信号(例えばマイクロ波又はミリ波)を用いることによって生じるDCオフセットを簡易な構成によって低減できる。これにより、センシング装置400は、複数のターゲットとして、反射断面積がそれぞれ異なる成人と子供とを識別して検知でき、以下の各実施形態のセンシング装置400においても同様である。
【0092】
図8は、第1の実施形態のセンシング装置におけるシミュレーション結果の遅延プロファイルである。
図8の横軸は時間[msec]、即ち高周波信号が送信されてからの経過時間であり、同図の縦軸は相関値のレベル(相関レベル)[dB]を表す。
図8に示すシミュレーションでは、符号長Lが32のGolay符号がパルス圧縮符号として用いられ、ターゲット100の移動速度が80[km/h]、コヒーレント加算回数が64である。
【0093】
図8では、経過時間約220[msec]におけるピーク相関値が、ピーク相関値を除いた他の相関値の平均値のレベルよりも高くなり、ピーク相関値を除いた他の相関値の平均値のレベルが−70[dB]から−50[dB]の範囲とピーク相関値に比べて低くなり、サイドローブ成分が抑圧できる。
【0094】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、センシング装置400は、第M番目の送信グループと第(M+1)番目の送信グループとにおいて付与した位相回転量を、第M番目及び第(M+1)番目の各送信グループを含む合計2個の送信グループを単位として、例えば第(M+2)番目以降の送信グループにおいても繰り返して付与した。
【0095】
第2の実施形態では、センシング装置400は、第M番目の送信グループと第(M+1)番目の送信グループとにおいて第1の実施形態と同様の位相回転量を付与する。更に、センシング装置400は、第(M+2)番目の送信グループでは第M番目の送信グループの位相回転量をπ[rad]を加算した位相回転量を付与し、第(M+3)番目の送信グループでは第(M+1)番目の送信グループの位相回転量をπ[rad]を加算した位相回転量を付与する(
図9参照)。また、第2の実施形態のセンシング装置400の構成は第1の実施形態のセンシング装置400と同様であるため、同一の符号を用いて説明する。
【0096】
図9は、第2の実施形態のパルス符号/位相回転テーブル401の内容の一例を示す図である。第1送信グループと第2送信グループとでは、
図6(A)に示すパルス符号/位相回転テーブル401と同様の位相回転量が付与される。また、第3送信グループでは第1送信グループの位相回転量をπ[rad]を加算した位相回転量が付与され、第4送信グループでは第2送信グループの位相回転量をπ[rad]を加算した位相回転量が付与される。
【0097】
第2の実施形態では、センシング装置400は、コヒーレント加算部290におけるコヒーレント加算回数を32回又は32の倍数回とし、第1送信グループから第4送信グループまでの合計4個の送信グループを単位として、第5番目以降の送信グループにおいても繰り返して位相回転量を付与する。
【0098】
第2の実施形態において、ターゲット100が静止している状態では、第3送信グループと第4送信グループとにおいて演算された相関値のコヒーレント加算結果は、第1の実施形態と同様にDCオフセット(dc成分)がキャンセルされるため(数式(3)参照)、センシング特性の劣化を抑圧できる。
【0099】
第2の実施形態において、ターゲット100が移動しており、移動中のターゲット100により反射された反射波信号(受信信号)がドップラ位相回転量φの影響を受ける場合、第1番目から第16番目までの各送信周期におけるコヒーレント加算結果は数式(4)と同じである。第17番目から第32番目までの各送信周期におけるコヒーレント加算結果は、数式(9)となり、第1番目から第16番目までの各送信周期における位相回転量がπ[rad]を加算した位相回転量が付与された演算結果に相当する。
【0101】
数式(9)の第2項の大括弧内の成分は、jを含む成分とjを含まない成分とに区分けすると、数式(10)により示される。位相回転量φは1から2度程度の小さい値であるため、数式(10)について数式(11)に示す関係が成立する。このため、数式(10)は第1の実施形態に比べて、ゼロにより近い値に近似できる(
図10参照)。
【0103】
図10は、第2の実施形態におけるdc成分の位相のキャンセルを説明する説明図である。位相回転量φが1から2度程度の小さい値であれば、領域g2の拡大図における、ベクトル{−exp(j
16φ)+exp(j
20φ)}とベクトル{−exp(j
24φ)+exp(j
28φ)}とは、大きさが同一であり、かつ、向きが反対である、と近似できる。これにより、位相回転量φが1から2度程度の小さい値であれば、数式(10)は第1の実施形態の数式(5)の値に比べて、ゼロにより近い値に近似できる。
【0105】
また、数式(9)の第4項の大括弧の成分は、jを含む成分とjを含まない成分とに区分けすると、数式(12)により示される。位相回転量φは1から2度程度の小さい値であるため、数式(12)について数式(13)に示す関係が成立する。このため、数式(9)の第2項と同様に、数式(9)の第4項、即ち数式(12)はゼロになるわけではないが、限りなくゼロに近い値に近似できる(
図10参照)。
【0108】
例えば、位相回転量φを1度とし、コヒーレント加算回数を64(=32×2)とする。数式(10)及び(12)の成分の大きさの和は、0.0145となる。従って、第1の実施形態と同様に、位相回転しない状態及び位相逆回転しない状態から、第1送信グループと第2送信グループには、
図6(A)の位相回転量を付与し、第3送信グループでは第1送信グループの位相回転量をπ[rad]を加算した位相回転量を付与し、第4送信グループでは第2送信グループの位相回転量をπ[rad]を加算した位相回転量を付与すれば、数式(10)及び(12)の成分の大きさの和は、0.024%の大きさに減少できる。
【0109】
以上により、本実施形態のセンシング装置400は、送信部TXにおいて、2N個の送信周期を含む第M番目及び第(M+3)番目の各送信グループと第(M+1)番目及び第(M+2)番目の各送信グループとにおいて、第1番目及び第2番目、…、第(2N−1)番目及び第2N番目の各送信周期において生成される送信信号にπ[rad]の位相差を有する位相回転量を付与する(
図9参照)。
更に、センシング装置400は、受信部RXにおいて、送信部TXにおいて付与された位相回転量の逆位相を付与し、第M番目の送信グループから第(M+3)番目の送信グループまでの合計4個の送信グループの各送信周期において演算された相関値をコヒーレント加算する。
【0110】
これにより、センシング装置400は、第1の実施形態において十分にゼロに近い値に低減できていなかったDCオフセットをよりゼロに近い値に低減でき、コヒーレント加算結果においてピーク相関値を除いた他の相関値の平均値(フロア平均値)のレベルを第1の実施形態のフロア平均値のレベルより一層低減できる(
図11参照)。
従って、本実施形態のセンシング装置400は、第1の実施形態のセンシング装置400に比べて、無線通信において高周波信号を用いることによって生じるDCオフセットを、簡易な構成によって低減し、ターゲットのセンシング特性の劣化を一層抑圧できる。
【0111】
図11は、第2の実施形態のセンシング装置におけるシミュレーション結果の遅延プロファイルである。
図11の横軸は時間[msec]、即ち高周波信号が送信されてからの経過時間であり、同図の縦軸は相関値のレベル(相関レベル)[dB]を表す。
図11に示すシミュレーションでは、符号長Lが32のGolay符号がパルス圧縮符号として用いられ、ターゲット100の移動速度が80[km/h]、コヒーレント加算回数が64である。
【0112】
図11では、経過時間約220[msec]におけるピーク相関値が、ピーク相関値を除いた他の相関値の平均値のレベルよりも高くなっており、ピーク相関値を除いた他の相関値の平均値のレベルが−70[dB]から−50[dB]の範囲において
図8に示す第1の実施形態のシミュレーション結果に比べて低くなっており、サイドローブ成分が第1の実施形態のシミュレーション結果に比べて一層抑圧できている。
【0113】
(第3の実施形態)
第1及び第2の各実施形態では、パルス波生成部210が送信信号を生成する場合に用いる符号系列が相補符号(A,B)を構成する符号系列A及びBであった。第3の実施形態では、パルス波生成部210は、これらの符号系列A及びBではなく、SPANO符号を用いる。SPANO符号とは、相補符号(A,B)を構成する符号系列A及びBと、符号系列Aの順序反転符号系列A’と、符号系列Bの順序反転符号系列B’とを含む符号系列であり、例えばA,B,B’,A’,B,A,A’,B’の8個の符号系列を含む。また、第3の実施形態のセンシング装置400の構成は第1の実施形態のセンシング装置400と同様であるため、同一の符号を用いて説明する。
【0114】
第1及び第2の各実施形態では、パルス波生成部210は、或る送信周期では符号系列Aを用いて次の送信周期では符号系列Bを用いる。即ち、パルス波生成部210は、2送信周期を単位として、符号系列A,Bの順番に交互に繰り返して選択した。
【0115】
第3の実施形態では、パルス波生成部210は、同様に2送信周期を単位として、SPANO符号(A,B,B’,A’,B,A,A’,B’)を構成する各符号系列(A,B,A’,B’)をSPANO符号の所定の順序に従って交互に繰り返して選択する(
図12参照)。
【0116】
図12は、第3の実施形態のパルス符号/位相回転テーブル401の内容の一例を示す図である。
図12(A)は、第1の実施形態の送信方法に対応したテーブルである。
図12(B)は、第2の実施形態の送信方法に対応したテーブルである。
図12(A)と
図6とでは、送信信号に付与される位相回転量は同じであるが、送信信号の生成に用いられる符号系列が異なる。同様に、
図12(B)と
図9とでは、送信信号に付与される位相回転量は同じであるが、送信信号の生成に用いられる符号系列が異なる。
【0117】
第3の実施形態におけるコヒーレント加算部290のコヒーレント加算結果は、第1の実施形態におけるコヒーレント加算結果(数式(3)参照又は数式(4)参照)、又は第2の実施形態におけるコヒーレント加算結果(数式(9)参照)となるため、同様に、DCオフセットを低減している。即ち、送信信号を生成する場合に用いられる符号系列は、第1及び第2の各実施形態における相補符号(A,B)を構成する各符号系列A及びBに限定されず、第3の実施形態におけるSPANO符号でも、DCオフセットを低減できる(
図13参照)。
【0118】
図13は、第3の実施形態のセンシング装置におけるシミュレーション結果の遅延プロファイルである。
図13の横軸は時間[msec]、即ち高周波信号が送信されてからの経過時間であり、同図の縦軸は相関値のレベル(相関レベル)[dB]を表す。
【0119】
図13の点線は、合計8個の送信周期を含む第1送信グループ(第1番目の送信周期から第8番目までの送信周期)と第2送信グループ(第9番目の送信周期から第16番目の送信周期)とにおいて、第1番目及び第2番目、…、第(2N−1)番目及び第2N番目の各送信周期において生成される送信信号にπ[rad]の位相差を有する位相回転量の付与が無い場合におけるコヒーレント加算結果である。
【0120】
図13の実線は、同第1送信グループと同第2送信グループとにおいて、第1番目及び第2番目、…、第(2N−1)番目及び第2N番目の各送信周期において生成される送信信号にπ[rad]の位相差を有する位相回転量の付与が有る場合におけるコヒーレント加算結果である。
【0121】
以上により、本実施形態のセンシング装置400は、第3の実施形態においてSPANO符号を用いた場合でも第1又は第2の実施形態と同様に、コヒーレント加算結果においてピーク相関値を除いた他の相関値の平均値(フロア平均値)のレベルを低減でき(
図13参照)、無線通信において高周波信号を用いることによって生じるDCオフセットを簡易な構成によって低減し、ターゲットのセンシング特性の劣化を抑圧できる。
【0122】
以上、図面を参照して各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0123】
なお、第1又は第2の実施形態において、1つの送信グループにおける送信周期の数は8個に限定されない。
図6又は
図9の例では、送信信号に付与される位相回転量は、0[rad]、π/2[rad]、π[rad]、3π/2[rad]の合計4個であるが、1つの送信グループが2N個の送信周期を含む場合、位相回転量は0から2π[rad]の範囲において(2π/N)[rad]異なれば良い。なお、
図6又は
図9ではN=4である。
【0124】
なお、第1又は第2の実施形態において、
図6又は
図9に示すパルス符号/位相回転テーブル401では2送信周期を単位として位相回転量が単調増加であるが、各送信グループにおいて2送信周期を単位としていれば位相回転量は単調増加でなくても良く、ランダムに増加しても良い。
【0125】
第2の実施形態では、センシング装置400は、第M番目及び第(M+1)番目の各送信グループでは第1の実施形態と同様の位相回転量を付与する。更に、センシング装置400は、第(M+2)番目の送信グループでは第M番目の送信グループの位相回転量をπ[rad]反転させた位相回転量を付与し、第(M+3)番目の送信グループでは第(M+1)番目の送信グループの位相回転量をπ[rad]反転させた位相回転量を付与する。更に、第2の実施形態では、センシング装置400は、第M番目から第(M+3)番目までの各送信グループを含む4送信グループを単位として、第(M+4)番目以降の4送信グループ毎に、第M番目から第(M+3)番目までの送信グループと同様の位相回転量を繰り返して付与する。
【0126】
なお、第2の実施形態の変形例として、センシング装置400は、第(M+4)番目から第(M+7)番目までの4送信グループにおいて、第(M+4)番目の送信グループでは第M番目の送信グループの位相回転量をπ[rad]反転させた位相回転量を付与し、…、第(M+7)番目の送信グループでは第(M+3)番目の送信グループの位相回転量をπ[rad]反転させた位相回転量を付与しても良い。更に、センシング装置400は、同変形例として、第M番目から第(M+7)番目までの8送信グループを単位として、第(M+8)番目以降の8送信グループ毎に、第M番目から第(M+7)番目までの送信グループと同様の位相回転量を繰り返して付与する。
【0127】
なお、第2の実施形態の更なる変形例として、センシング装置400は、所定の位相回転量を繰り返して付与する単位となる送信グループの個数を2
P(P:4以上の整数)として、同様に所定の位相回転量を繰り返して付与しても良い。