(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属封鎖剤が、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム、及びジエチレントリアミン五酢酸から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の毛髪処理剤組成物。
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の毛髪処理剤組成物の使用方法であって、前記第1層と前記第2層とが噴霧容器内で混合された後に毛髪に噴霧されることを特徴とする毛髪処理剤組成物の使用方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の毛髪処理剤組成物を具体化した実施形態を説明する。
本実施形態の毛髪処理剤組成物は、第1層と第2層とを有する。第1層と第2層とは使用時に混合される。第1層及び第2層を混合して得られた混合物は、例えば静置されると時間の経過に伴って再び第1層と第2層とに分離する。
【0011】
毛髪処理剤組成物には、カチオン性界面活性剤、金属封鎖剤、エタノール、及び油性成分が含有される。
カチオン性界面活性剤は、毛髪の感触を改善する働きを有する。カチオン性界面活性剤は、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、ジココジメチルアンモニウム塩、ジセチルジメチルアンモニウム塩、及びジステアリルジメチルアンモニウム塩から選ばれる少なくとも一種の(A)カチオン性界面活性剤を含む。(A)カチオン性界面活性剤は、二鎖型四級アンモニウム塩構造を有するカチオン性界面活性剤である。ジココジメチルアンモニウム塩は、ココジモニウム塩とも呼ばれる。ジココジメチルアンモニウム塩には、ジラウリルジメチルアンモニウム塩が含有される。(A)カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化物、臭化物、及びヨウ化物が挙げられる。
【0012】
毛髪処理剤組成物中における(A)カチオン性界面活性剤の含有量は、0.003〜2質量%であり、好ましくは0.02〜0.2質量%である。(A)カチオン性界面活性剤の含有量が0.003質量%以上であるため、毛髪の感触を改善することが容易となる。(A)カチオン性界面活性剤の含有量が2質量%以下であるため、起泡性が低下されるとともに第1層と第2層との混合に際して生じた泡が消泡され易くなる。
【0013】
(B)金属封鎖剤は、毛髪処理剤組成物中において、起泡性を低下させるとともに第1層と第2層との混合に際して生じた泡の消泡を促進する。
(B)金属封鎖剤としては、例えば、アミノカルボン酸系金属封鎖剤及びホスホン酸系金属封鎖剤が挙げられる。アミノカルボン酸系金属封鎖剤としては、例えば、エデト酸、(エチレンジアミン四酢酸:EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸(DHEDDA)、1,3−プロパンジアミン四酢酸(1,3PDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸(ASDA)、これらアミノカルボン酸の塩、アミノカルボン酸の構造又はアミノカルボン酸塩の構造を有する化合物が挙げられる。
【0014】
ホスホン酸系金属封鎖剤としては、例えば、アミノトリメチレンホスホン酸(NTMP)、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)、これらホスホン酸の塩、ホスホン酸の構造又はホスホン酸塩の構造を有する化合物が挙げられる。
【0015】
(B)金属封鎖剤は、一種類又は二種類以上を使用することができる。
毛髪処理剤組成物には、起泡性を更に低下させるという観点から、(B)金属封鎖剤として、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム、及びジエチレントリアミン五酢酸から選ばれる少なくとも一種を含有させることが好ましい。
【0016】
毛髪処理剤組成物中における(B)金属封鎖剤の含有量は、0.001〜1質量%であり、好ましくは0.01〜0.2質量%である。(B)金属封鎖剤の含有量が0.001質量%以上であるため、起泡性が低下されるとともに第1層と第2層との混合に際して生じた泡が消泡され易くなる。(B)金属封鎖剤の含有量が1質量%以下であるため、毛髪の感触を改善することが容易となる。
【0017】
(B)金属封鎖剤の含有量に対する(A)カチオン性界面活性剤の含有量の質量比(質量比=(A)カチオン性界面活性剤の含有量/(B)金属封鎖剤の含有量)は、好ましくは0.005〜50である。
【0018】
(C)エタノールは、毛髪処理剤組成物中において、起泡性を低下させるとともに第1層と第2層との混合に際して生じた泡の消泡を促進する。
毛髪処理剤組成物中における(C)エタノールの含有量は、好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは10〜20質量%である。(C)エタノールの含有量が5質量%以上の場合、起泡性を更に低下させるとともに第1層と第2層との混合に際して生じた泡の消泡が更に促進させることが容易となる。(C)エタノールの含有量が30質量%以下の場合、毛髪の感触を更に改善することが容易となる。
【0019】
(D)油性成分は、毛髪の感触を改善する働きを有する。また、(D)油性成分は、毛髪処理剤組成物中において、起泡性を低下させる。
(D)油性成分としては、常温(例えば25℃)で流動性を有するものが好適に用いられる。(D)油性成分は、動粘度(25℃)において、例えば、1〜1,000万mm
2/sの範囲のものが好ましく、より好ましくは10万mm
2/s以下のものが用いられる。(D)油性成分としては、例えば、油脂、ロウ、炭化水素、アルキルグリセリルエーテル、エステル、及びシリコーン油が挙げられる。
【0020】
油脂としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、ローズヒップ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、及び月見草油が挙げられる。ロウとしては、例えば、ホホバ油が挙げられる。
【0021】
炭化水素としては、例えば、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル(流動パラフィン、イソパラフィン等)、及びポリブテンが挙げられる。
【0022】
高級脂肪酸としては、例えば、オレイン酸が挙げられる。
アルキルグリセリルエーテルとしては、例えば、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、及びイソステアリルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0023】
エステルとしては、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10〜30の炭素数を有する脂肪酸からなるコレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジエトキシエチル、及び2−エチルヘキサン酸セチルが挙げられる。
【0024】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン(ジメチコノール)、650〜10000の平均重合度を有する高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、及びフッ素変性シリコーンが挙げられる。
【0025】
(D)油性成分は、一種類又は二種類以上を使用することができる。
毛髪処理剤組成物には、毛髪の感触を更に改善するという観点から、(D)油性成分としてシリコーン油を含有させることが好ましい。
【0026】
毛髪処理剤組成物中における(D)油性成分の含有量は、好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは10〜20質量%である。
(D)油性成分の含有量が5質量%以上の場合、毛髪の感触を更に改善することが容易となる。(D)油性成分の含有量が30質量%以下の場合、毛髪のべたつき感を抑制するとともに毛髪の滑らか感を付与した感触が得られ易くなる。
【0027】
毛髪処理剤組成物中における(C)エタノールと(D)油性成分との合計の含有量は、1〜35質量%である。(C)エタノールと(D)油性成分との合計の含有量が1〜35質量%であるため、毛髪の感触を改善することが容易となる。(D)油性成分の含有量に対する(C)エタノールの含有量の質量比(質量比=(C)エタノールの含有量/(D)油性成分の含有量)は、好ましくは0.001〜1.5であり、より好ましくは0.04〜1である。
【0028】
本実施形態の毛髪処理剤組成物には、上記以外の成分として、例えば、溶剤、上記以外の界面活性剤、糖、防腐剤、安定剤、pH調整剤、酸化防止剤、及び無機塩を含有させることができる。
【0029】
溶剤としては、水及び有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、イソプロパノール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、グリコール、及びグリセリンが挙げられる。グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールが挙げられる。グリセリンとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリンが挙げられる。
【0030】
毛髪処理剤組成物には、上記成分の含有量を調整するために、水を含有させることが好ましい。例えば、毛髪に適用後、洗い流さずに乾燥させる毛髪処理剤組成物の場合、毛髪処理剤組成物中における水の含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上である。
【0031】
界面活性剤としては、上記以外のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、及びメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0032】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩類、及びN−ラウロイルメチル−β−アラニン塩類が挙げられる。
【0033】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウロアンホ酢酸ナトリウム及びココアンホ酢酸ナトリウムが挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、エーテル型非イオン性界面活性剤、及びエステル型非イオン性界面活性剤が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、POEセチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、及びPOEセチルステアリルジエーテルが挙げられる。
【0034】
エステル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、及びラウリン酸ポリグリセリルが挙げられる。
【0035】
毛髪処理剤組成物中における上記(A)カチオン性界面活性剤以外の界面活性剤の含有量は、毛髪の感触を更に改善し、かつ起泡性を更に低下させることを容易にするという観点から、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。上記(A)カチオン性界面活性剤以外の界面活性剤は、0.1質量%以下の範囲で含有されるか、又は含有されないことが更に好ましい。
【0036】
糖としては、例えば、ソルビトール、マルトース、及びN−アセチルグルコサミンが挙げられる。
防腐剤としては、例えば、パラベン、メチルパラベン及び安息香酸ナトリウムが挙げられる。
【0037】
安定剤としては、例えば、フェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、及びタンニン酸が挙げられる。pH調整剤としては、例えば、乳酸、レブリン酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、ピロリドンカルボン酸(PCA)、コハク酸、クエン酸、タウリン、グルタミン酸、及びアルギニンが挙げられる。
【0038】
酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸、及び亜硫酸塩が挙げられる。無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、及び炭酸ナトリウムが挙げられる。
毛髪処理剤組成物には、必要に応じて、酸性染料、染毛色材、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、又は紫外線吸収剤を含有させることもできる。
【0039】
毛髪処理剤組成物は、例えば、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー、酸性染毛料(ヘアマニキュア)、塩基性染毛料、又は一時着色剤の製品形態とされる。毛髪処理剤組成物の製品形態は、例えば、カラートリートメントであってもよい。カラートリートメントは、例えば日常的なヘアケアの際に毛髪に適用されることで、染毛処理が繰り返される結果、所望する色調へ徐々に染め上げる毛髪処理剤組成物である。
【0040】
毛髪処理剤組成物は、第1層と第2層とを有し、第1層と第2層とが使用時に混合される剤型とされる。混合される前の毛髪処理剤組成物では、第1層は(A)カチオン性界面活性剤、(B)金属封鎖剤、及び(C)エタノールを水性成分として含む下層を構成するとともに、第2層は(D)油性成分を含む上層を構成する。なお、(A)カチオン性界面活性剤は、第1層と第2層との界面又は界面付近に存在し、(A)カチオン性界面活性剤の有する親油性の基が第2層に相溶される場合も考えられる。
【0041】
次に、毛髪処理剤組成物の使用方法を毛髪処理剤組成物の作用とともに説明する。
本実施形態の毛髪処理剤組成物は、噴霧容器内で保存される。噴霧容器としては、LPG等の噴射剤や圧縮窒素ガス等の圧縮ガスを用いるエアゾール容器であってもよいし、ノンエアゾール容器であってもよい。噴霧容器内の毛髪処理剤組成物は、静置された状態において、第1層と第2層とに分離されている。毛髪処理剤組成物の使用時には、噴霧容器を振とうすることで、第1層と第2層とが混合される。ここで、毛髪処理剤組成物が過剰に泡立つとともに、生じた泡が維持され易い場合には、噴霧容器内の空間(ヘッドスペース)は泡により縮小されることになる。その結果、噴霧容器の振とうを継続しても、噴霧容器内における毛髪処理剤組成物の移動が泡によって妨げられ易くなるため、第1層と第2層との更なる混合が困難となる。このとき、本実施形態の毛髪処理剤組成物には、(A)カチオン性界面活性剤、(B)金属封鎖剤、(C)エタノール、及び(D)油性成分が上述した含有量で含有されている。これにより、毛髪処理剤組成物の起泡性は低下されるとともに、第1層と第2層との混合に際して生じた泡は消泡され易くなる。このため、噴霧容器を振とうさせるに際して、噴霧容器内の所定の空間が確保され易くなる結果、噴霧容器内における毛髪処理剤組成物は移動され易くなる。従って、第1層と第2層とを十分に混合することが容易となる。このように混合された毛髪処理剤組成物は、第1層を構成していた水性成分に(D)油性成分が分散した状態、又は、第2層を構成していた(D)油性成分に水性成分が分散した状態となる。
【0042】
次に、毛髪処理剤組成物は、第1層と第2層との混合物として噴霧容器から毛髪に噴霧されることで、毛髪に適用される。毛髪処理剤組成物を適用する毛髪は、水分が付着したウエット状態であってもよいし、ドライ状態であってもよい。毛髪処理剤組成物が付着された毛髪の感触は、(A)カチオン性界面活性剤及び(D)油性成分によって容易に改善される。
【0043】
噴霧容器内に残留した毛髪処理剤組成物は、一定時間経過した後には、第1層と第2層とに分離される。
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
【0044】
(1)毛髪処理剤組成物には、(A)カチオン性界面活性剤、(B)金属封鎖剤、(C)エタノール、及び(D)油性成分が上述した含有量で含有されている。これにより、第1層と第2層とを混合するに際して、泡立ちを抑制するとともに、生じた泡を消泡させることが容易となる。従って、第1層と第2層との混合がその混合時に生じる泡によって妨げられることを抑制することが容易となる。
【0045】
(2)(B)金属封鎖剤がエデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム、及びジエチレントリアミン五酢酸から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。この場合、起泡性を更に低下させることが容易となる。
【0046】
(3)(D)油性成分がシリコーン油を含むことが好ましい。この場合、毛髪の感触を更に改善することが容易となる。
(4)噴霧容器内の毛髪処理剤組成物は、その一部を毛髪に適用した後、残された毛髪処理剤組成物は、次回の毛髪への適用まで噴霧容器内で保存することができる。このとき、毛髪処理剤組成物が消泡性を有することで、次回の毛髪への適用の際に第1層と第2層との混合は泡により阻害され難くなる。また、噴霧容器外から毛髪処理剤組成物が視認可能な場合、噴霧容器内に残された毛髪処理剤組成物の上部に泡が長時間残留することは組成物の外観上、好ましくない。本実施形態の毛髪処理剤組成物は上述した構成により、噴霧容器内の毛髪処理剤組成物を速やかに消泡させることが可能となる。従って、外観としても有利な毛髪処理剤組成物を容易に得ることができる。
【0047】
(5)毛髪処理剤組成物の使用方法では、第1層と第2層とは噴霧容器内で混合された後に毛髪に噴霧される。この使用方法によれば、第1層と第2層との混合から毛髪に適用するまでの一連の操作を簡便に行うことができる。
【0048】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・第1層及び第2層の少なくとも一方に着色成分を含有させることで、第1層と第2層とが色の相違として視認されるように構成してもよい。この場合、第1層と第2層とを有する毛髪処理剤組成物と、例えば、常時、乳化した状態の毛髪処理剤組成物とを外観上で識別することが容易となる。また、第1層と第2層とが分離した状態と、第1層と第2層とが混合された状態とを色調の相違として視認することができる。このため、第1層と第2層との混合状態が十分か否かを毛髪処理剤組成物の色調から判別することが可能となる。なお、毛髪処理剤組成物の色調を噴霧容器の外方から視認させるためには、可視光透過性を有する周知の噴霧容器が用いられる。
【0049】
・毛髪処理剤組成物は、噴霧容器以外の容器に収容されてもよい。噴霧容器以外の容器としては、例えば閉塞可能なノズルを有する容器を用いて、その容器内で振とうした後に、ノズルから毛髪処理剤組成物を吐出させて毛髪に適用してもよい。この場合であっても、第1層と第2層とを容器内で混合するに際して、毛髪処理剤組成物の起泡性が低下されるとともに、第1層と第2層との混合に際して生じた泡が消泡され易くなる。このため、容器を振とうする操作によって第1層と第2層とを十分に混合することが容易となる。
【0050】
・毛髪処理剤組成物は、各成分を強制的に混合することで調製されてもよいし、第1層を構成する第1組成物と、第2層を構成する第2組成物とを別々に調製し、所定の配合比で第1組成物と第2組成物とを配合することで調製されてもよい。
【0051】
・毛髪処理剤組成物は、例えば、紫外線等によりダメージを受けた毛髪の感触を改善するために用いてもよいし、酸化染毛剤や毛髪脱色剤の適用によりダメージを受けた毛髪の感触を改善するために用いてもよい。
【0052】
上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記毛髪処理剤組成物は容器内に収容され、前記第1層と前記第2層とが容器内で混合される毛髪処理剤組成物。
【0053】
(ロ)前記金属封鎖剤の含有量に対する前記カチオン性界面活性剤の含有量の質量比が0.005〜50である毛髪処理剤組成物。
【実施例】
【0054】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を具体的に説明する。
<毛髪処理剤組成物の調製>
下記の表1〜表4に示す実施例1〜実施例19、比較例1〜比較例6の毛髪処理剤組成物を常法に従って調製した。表1〜表4において、各成分の含有量を示す数値の単位は、質量%である。
【0055】
<起泡性の抑制>
起泡性の抑制の評価は、各例の毛髪処理剤組成物を噴霧容器に収容した後、上下に10回振とうした。そのときの起泡量について、比較例1の毛髪処理剤組成物における起泡量を基準として対比した。表1〜4中の“起泡性の抑制”欄には、比較例1の毛髪処理剤組成物における起泡量を基準として、その基準の起泡量と同等のものを“±”、基準の起泡量よりも少ないものを“+”、基準の起泡量よりも多いものを“−”として示す。
【0056】
<消泡性>
消泡効果の評価は、毛髪処理剤組成物を収容した噴霧容器を上下に10回振とうした後に、生じた泡が消えるまでの時間を測定し、その時間が60秒以下の場合を“4”、60秒を超え、120秒以下の場合を“3”、120秒を超え、180秒以下の場合を“2”、180秒を超える場合を“1”の4段階で評価した。その結果を表1〜4中の“消泡性”欄に示す。
【0057】
<毛髪の感触>
毛髪脱色剤(商品名:レセ パウダーブリーチ EX、ホーユー株式会社製)を用いて30℃、30分の条件で毛束に脱色処理を施した後、水洗及びシャンプー、並びにドライヤーを用いた乾燥を順に行った。脱色処理した毛束サンプルのうち、感触が同等の毛束を選択し、各例の毛髪処理剤組成物の評価に供する試験用毛束サンプルとした。
【0058】
試験用毛束サンプル10gに、毛髪処理剤組成物0.2gを試験用毛束サンプル全体に均等に塗布した。毛髪処理剤組成物の塗布は、ノンエアゾール容器である噴霧容器を用いた。毛髪処理剤組成物が収容された噴霧容器を第1層と第2層とが十分に混合されるまで振とうした直後、試験用毛束サンプルに毛髪処理剤組成物を噴霧した。次に、試験用毛束サンプルを15分放置した後、タオルドライし、ドライヤーにて乾燥させた。得られた試験用毛束サンプルについて次のように評価した。10人の専門テスターが、毛髪の感触が良いか否かを判断した。毛髪の感触が良いと認められると判断したテスターの人数が8名以上の場合は“4”、5〜7名の場合は“3”、2〜4名の場合は“2”、1人以下の場合は“1”の4段階で評価した。この評価結果を表1〜4中の“毛髪の感触”欄に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
表1〜表4に示されるように、各実施例における起泡性は、比較例1と同等、又は、比較例1よりも抑制されている。また、各実施例における消泡性及び毛髪の感触の評価結果は、3以上である。
【0063】
表4に示されるように、比較例1では、(A)カチオン性界面活性剤の含有量が各実施例よりも少ないため、毛髪の感触の評価結果が各実施例よりも劣る。比較例2では、(A)カチオン性界面活性剤の含有量が各実施例よりも多いため、起泡性の抑制及び消泡性の評価結果が各実施例よりも劣る。比較例3では、(B)金属封鎖剤の含有量が各実施例よりも少ないため、起泡性の抑制及び消泡性の評価結果が各実施例よりも劣る。比較例4では、(B)金属封鎖剤の含有量が各実施例よりも多いため、毛髪の感触の評価結果が各実施例よりも劣る。比較例5では、(C)エタノールと(D)油性成分の合計量が各実施例よりも少ないため、毛髪の感触の評価結果が各実施例よりも劣る。比較例6では、(C)エタノールと(D)油性成分の合計量が各実施例よりも多いため、毛髪の感触の評価結果が各実施例よりも劣る。