(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986854
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】半導体素子の絶縁取付け構造
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20160823BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
H01L23/40 E
H05K7/20 D
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-197285(P2012-197285)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-53468(P2014-53468A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】青木 孝生
(72)【発明者】
【氏名】森川 純次
【審査官】
木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−298889(JP,A)
【文献】
特開平9−139592(JP,A)
【文献】
特開2009−295706(JP,A)
【文献】
特開2012−49167(JP,A)
【文献】
特開平1−208626(JP,A)
【文献】
特開昭62−41550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34−23/473
H05K 7/20
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が直に設置される放熱フィンと、
該放熱フィンが取付けられる板金製部品と、
該板金製部品が取付けられるとともに、自身が電気的に接地されている板金製シャーシとを備え、
前記板金製部品と前記板金製シャーシとが、双方の間に一定の空間距離を確保するとともに、その一方に自らを固体絶縁部として取付けられる樹脂製絶縁部材を介して互いに結合されていることを特徴とする半導体素子の絶縁取付け構造。
【請求項2】
前記放熱フィンは、前記板金製部品に対してネジを介して直接結合されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の絶縁取付け構造。
【請求項3】
前記板金製部品は、前記半導体素子を備えた回路基板を収容設置する制御ボックスとされていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体素子の絶縁取付け構造。
【請求項4】
前記樹脂製絶縁部材は、前記板金製部品と前記板金製シャーシとの間に一定の空間距離を確保するスペーサ部と、前記板金製部品または前記板金製シャーシの一方に設けられた取付け穴に抜け止め部を介して嵌着されるとともに、前記板金製部品または前記板金製シャーシの他方および前記スペーサ部を貫通するネジが締め付け固定されるネジ結合部とを一体に樹脂成形した構成とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体素子の絶縁取付け構造。
【請求項5】
前記樹脂製絶縁部材の前記ネジ結合部は、該ネジ結合部が嵌着される前記板金製部品または前記板金製シャーシの一方と、該ネジ結合部に締め付け固定されるネジとの間を絶縁する前記固体絶縁部を備えた構成とされていることを特徴とする請求項4に記載の半導体素子の絶縁取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧・大電流が印加されるパワートランジスタ等の半導体素子を、一定の空間距離または沿面距離を確保して取付ける半導体素子の絶縁取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高電圧・大電流が印加されるパワートランジスタ等の半導体素子の取付けに際しては、JIS等の各種規格に対応した絶縁取付け構造が必要となる。これら規格を満たす絶縁取付け構造として、例えば、特許文献1には、半導体素子と放熱フィンとの間に、AIN焼結体等で構成される絶縁部材を挟んで固体絶縁したものが開示されている。また、特許文献2には、半導体素子の電極端子を覆うキャップを取付け、該キャップで固体絶縁するもの、あるいは放熱フィンに凸型加工を施し、電極端子から放熱フィンまでの空間距離あるいは沿面距離を確保して絶縁するようにしたもの等が開示されている。
【0003】
さらに、特許文献3には、モールド樹脂部に凸部、凹部、端子包囲部、階段状段差部等を設けることにより、沿面距離を確保して絶縁するようにしたものが開示され、特許文献4には、半導体素子が固定設置されている放熱フィンを、アースされている板金シャーシに対して、絶縁シート、絶縁スペーサおよび絶縁ワッシャを介してネジにより締め付け固定し、放熱フィンを絶縁支持したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2598236号公報
【特許文献2】特許第4688751号公報
【特許文献3】特開平8−97333号公報
【特許文献4】特公平7−45956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、半導体素子と放熱フィンとの間に、絶縁部材を挟んで固体絶縁したものでは、半導体素子側から放熱フィン側への熱伝導の低下が避けられないため、放熱性能が悪化する等の課題があった。更に、放熱フィンを特殊形状としたものや、半導体素子側のモールド樹脂部に特殊加工を施したものでは、加工工数の増加や製造コストの増加が避けられない等の課題があった。
【0006】
また、特許文献4に開示されたものでは、絶縁シートと、絶縁スペーサおよび絶縁ワッシャと、ネジが必要なため、部品数が多くなるとともに、放熱フィンと板金製シャーシとの間および板金シャーシとネジとの間の2箇所に、それぞれ空間距離を確保しなければならないため、設置スペースが大きくなり、小型コンパクト化や構成の簡素化の阻害要因となる等の課題を有していた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、放熱性能を悪化させずに規格を満たす絶縁性能が得られ、しかもコストや加工工数の増加を抑え、構成の簡素化とコンパクト化を実現できる半導体素子の絶縁取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の半導体素子の絶縁取付け構造は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる半導体素子の絶縁取付け構造は、半導体素子が直に設置される放熱フィンと、該放熱フィンが取付けられる板金製部品と、該板金製部品が取付けられるとともに、自身が電気的に接地されている板金製シャーシとを備え、前記板金製部品と前記板金製シャーシとが、双方の間に一定の空間距離を確保するとともに、その一方に自らを固体絶縁部として取付けられる樹脂製絶縁部材を介して互いに結合されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、半導体素子を直に放熱フィンに設置するとともに、放熱フィンが取付けられている板金製部品を、自身が電気的に接地されている板金製シャーシに対して双方の間に一定の空間距離を確保するとともに、その一方に自らを固体絶縁部として取付けられる樹脂製絶縁部材を介して結合した構成としているため、高電圧・大電流が印加されることにより発熱するパワートランジスタ等の半導体素子からの熱を直に放熱フィンに伝達して放熱できることから、半導体素子の放熱性能を一切損なうことがなく、また、半導体素子や放熱フィン自体に規格に対応した絶縁性能を満たす空間距離や沿面距離を確保する特別な工夫や構成を施すことなく、放熱フィンが取付けられている板金製部品を電気的に接地(アース)されている板金製シャーシに対して、樹脂製絶縁部材を介して一定の空間距離を確保するとともに、固体絶縁して絶縁支持することができる。従って、放熱性能を十分確保しながら、各種規格を満たす絶縁構造を提供することができる。しかも半導体素子や放熱フィン自体に構造変更や特別な工夫を施す必要がなく、製造コストや加工工数の増加を抑制することができる。また、放熱フィンが取付けられる板金製部品を放熱フィンとして機能させ、放熱性能を高めることによって、放熱フィン等の小型化を図ることができる。更には、樹脂モールド等により基礎絶縁されている半導体素子の電極端子と放熱フィンとの間が、何らかの原因で絶縁破壊されたとしても、板金製部品と板金製シャーシとの間の絶縁により、二重の絶縁構造とされることから、感電等に対する保護機能を略2倍に高めることができる。
【0010】
さらに、本発明の半導体素子の絶縁取付け構造は、上記の半導体素子の絶縁取付け構造において、前記放熱フィンは、前記板金製部品に対してネジを介して直接結合されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、放熱フィンが、板金製部品に対してネジを介して直接結合されているため、半導体素子から放熱フィンに伝達された熱を、放熱フィンだけでなく、それにネジを介して直接結合されている面積の大きい板金製部品からも放熱させることができる。従って、半導体素子の放熱性能を向上させ、ひいては放熱フィンの小型化、それらを含む回路基板および制御ボックスの小型コンパクト化を図ることができる。
【0012】
さらに、本発明の半導体素子の絶縁取付け構造は、上述のいずれかの半導体素子の絶縁取付け構造において、前記板金製部品は、前記半導体素子を備えた回路基板を収容設置する制御ボックスとされていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、板金製部品が、半導体素子を備えた回路基板を収容設置する制御ボックスとされているため、板金製部品として特別な部品を追加することなく、半導体素子を備えた回路基板を収容設置する制御ボックスを利用し、上述の絶縁取付け構造を実現することができる。従って、部品数やコスト等の増加を招くことなく、高い絶縁性能および放熱性能を有する簡素で安価な半導体素子の絶縁取付け構造を提供することができる。
【0014】
さらに、本発明の半導体素子の絶縁取付け構造は、上述のいずれかの半導体素子の絶縁取付け構造において、前記樹脂製絶縁部材は、前記板金製部品と前記板金製シャーシとの間に一定の空間距離を確保するスペーサ部と、前記板金製部品または前記板金製シャーシの一方に設けられた取付け穴に抜け止め部を介して嵌着されるとともに、前記板金製部品または前記板金製シャーシの他方および前記スペーサ部を貫通するネジが締め付け固定されるネジ結合部とを一体に樹脂成形した構成とされていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、樹脂製絶縁部材が、板金製部品と板金製シャーシとの間に一定の空間距離を確保するスペーサ部と、板金製部品または板金製シャーシの一方に設けられた取付け穴に抜け止め部を介して嵌着されるとともに、板金製部品または板金製シャーシの他方およびスペーサ部を貫通するネジが締め付け固定されるネジ結合部とを一体に樹脂成形した構成とされているため、この樹脂製絶縁部材を板金製部品と板金製シャーシとの間に介在して板金製部品と板金製シャーシとを互いに結合することにより、半導体素子および放熱フィンが設置されている板金製部品を、一定の空間距離を確保するとともに、固体絶縁部を介して板金製シャーシにより絶縁支持することができる。従って、単一の樹脂製絶縁部材を介して一定の空間距離を確保して板金製部品を板金製シャーシで絶縁支持することができ、余計なスペースを確保することなく、簡素でコンパクトな構成の半導体素子の絶縁取付け構造を得ることができる。
【0016】
さらに、本発明の半導体素子の絶縁取付け構造は、上記の半導体素子の絶縁取付け構造において、前記樹脂製絶縁部材の前記ネジ結合部は、該ネジ結合部が嵌着される前記板金製部品または前記板金製シャーシの一方と、該ネジ結合部に締め付け固定されるネジとの間を絶縁する前記固体絶縁部を備えた構成とされていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、樹脂製絶縁部材のネジ結合部が、該ネジ結合部が嵌着される板金製部品または板金製シャーシの一方と、該ネジ結合部に締め付け固定されるネジとの間を絶縁する固体絶縁部を備えた構成とされているため、樹脂製絶縁部材のスペーサ部を介して板金製部品と板金製シャーシとの間に、一定の空間距離を確保できるとともに、ネジ結合部の固体絶縁部を介して、該ネジ結合部が嵌着される板金製部品または板金製シャーシの一方と、その他方を樹脂製絶縁部材に締め付け固定するネジとの間を固体絶縁することができる。従って、放熱フィンが取付けられる板金製部品と、該板金製部品が取付けられる板金製シャーシとの間を、樹脂製絶縁部材を介して確実に絶縁することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、高電圧・大電流が印加されることにより発熱するパワートランジスタ等の半導体素子からの熱を直に放熱フィンに伝達して放熱できることから、半導体素子の放熱性能を一切損なうことがなく、また、半導体素子や放熱フィン自体に規格に対応した絶縁性能を満たす空間距離や沿面距離を確保する特別な工夫や構成を施すことなく、放熱フィンが取付けられている板金製部品を電気的に接地(アース)されている板金製シャーシに対して、樹脂製絶縁部材を介して一定の空間距離を確保するとともに、固体絶縁して絶縁支持することができるため、放熱性能を十分確保しながら、各種規格を満たす絶縁構造を提供することができる。しかも半導体素子や放熱フィン自体に構造変更や特別な工夫を施す必要がなく、製造コストや加工工数の増加を抑制することができる。また、放熱フィンが取付けられる板金製部品を放熱フィンとして機能させ、放熱性能を高めることによって、放熱フィン等の小型化を図ることができる。更には、樹脂モールド等により基礎絶縁されている半導体素子の電極端子と放熱フィンとの間が、何らかの原因で絶縁破壊されたとしても、板金製部品と板金製シャーシとの間の絶縁により、二重の絶縁構造とされることから、感電等に対する保護機能を略2倍に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る半導体素子の絶縁取付け構造を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の一実施形態について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る半導体素子の絶縁取付け構造の概略構成図が示されており、
図2には、そのA部の拡大図が示されている。
例えば、空気調和機のファンモータを駆動するファンモータドライバーには、高電圧が印加されるパワートランジスタ等の半導体素子1が組み込まれている。ここでの半導体素子1は、樹脂モールドされたものであり、その両端側から電極端子2がL字状に上方に延長されている。
【0021】
上記の半導体素子1は、その複数の電極端子2が制御ボックスを構成する板金製部品3内に設置されている回路基板4に接続され、ファンモータの駆動回路を構成している。板金製部品(制御ボックス)3は、所定の深さを有する矩形状のボックス体であり、ファンモータの駆動回路を構成する半導体素子1および回路基板4等が収容設置される大きさとされたものである。
【0022】
板金製部品(制御ボックス)3の底面には、開口部5が設けられ、この開口部5を覆うように、その外側面に、アルミ合金製の放熱フィン6がネジ7を介して直に締め付け固定されている。この放熱フィン6の基部面の表面には、半導体素子1の一面が接触配置されており、高電圧・大電流の印加により半導体素子1で発生した熱が直に放熱フィン6に熱伝導され、該放熱フィン6および放熱フィン6が直接結合されている板金製部品3を介して外気に放熱されるようになっている。
【0023】
また、板金製部品(制御ボックス)3は、その周縁に設けられたフランジ部8が、複数箇所(例えば、4箇所)で樹脂製絶縁部材10を介して板金製シャーシ9に、ネジ11により締め付け固定されている。この板金製シャーシ9は、空気調和機の筐体等を構成するものであり、電気的に接地(アース)された構成とされている。
【0024】
樹脂製絶縁部材10は、
図2に示されるように、板金製部品(制御ボックス)3と板金製シャーシ9との間に介在され、両者間に一定の空間距離Sを確保するスペーサ部10Aと、このスペーサ部10Aの一面から延出され、板金製部品3または板金製シャーシ9の一方(本実施形態では、板金製シャーシ9側)に設けられている取付け穴12に抜け止め部10Cを介して嵌着されるネジ結合部10Bとを一体に樹脂成形したものである。
【0025】
樹脂製絶縁部材10は、例えば、PPS樹脂製とすることができ、スペーサ部10Aの他面側からネジ結合部10Bに向ってネジ穴10Dが穿設され、ネジ11が螺着可能な構成とされている。このネジ穴10Dとネジ結合部10Bの外周との間に一定の厚さTを有する固体絶縁部10Eが形成され、該固体絶縁部10Eでネジ11と板金製シャーシ9との間が固体絶縁されるように構成されている。
【0026】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
モータに流れる電流を高速で遮断するために用いられるパワートランジスタ等の半導体素子1は、その時の電力ロスで発熱し、それによる過熱を防止するため、冷却する必要がある。この冷却には、一般にパワートランジスタを放熱フィン上に設置し、発熱を放熱フィンに伝熱して放熱するようにしているが、本実施形態では、半導体素子1を直に放熱フィン6上に設置するとともに、放熱フィン6が取付けられている板金製部品(制御ボックス)3を、自身が電気的に接地されている板金製シャーシ9に対して、双方の間に一定の空間距離Sを確保するとともに、その一方に自らを固体絶縁部10Eとして取付けられる樹脂製絶縁部材10を介して結合し、絶縁支持した構成としている。
【0027】
このため、半導体素子1で発生された熱を直に放熱フィン6に伝達して放熱できることから、半導体素子1の放熱性能を一切損なうことがなく、また、半導体素子1や放熱フィン6自体に規格に対応した絶縁性能を満たす空間距離や沿面距離を確保する特別な工夫や構成を施すことなく、放熱フィン6が取付けられている板金製部品(制御ボックス)3を電気的に接地(アース)されている板金製シャーシ9に対して、樹脂製絶縁部材10を介して一定の空間距離Sを確保するとともに、固体絶縁部10Eを介して確実に絶縁支持することができる。
【0028】
従って、放熱性能を十分に確保しながら、各種規格を満たすことができる絶縁構造をすることができる。しかも、半導体素子1や放熱フィン6自体に構造変更や特別な工夫を施す必要がなく、製造コストや加工工数の増加を抑えることができる。また、放熱フィン6が取付けられる板金製部品(制御ボックス)3を放熱フィンとして機能させ、放熱性能を高めることにより、放熱フィン6等の小型化を図ることができる。更に、樹脂モールド等により基礎絶縁されている半導体素子1の電極端子2と放熱フィン6との間が、何らかの原因で絶縁破壊されたとしても、板金製部品(制御ボックス)3と板金製シャーシ9との間の絶縁により、二重の絶縁構造とされることから、感電等に対する保護機能を略2倍に高めることができる。
【0029】
また、上記放熱フィン6は、板金製部品(制御ボックス)3に対してネジ7を介して直接結合されている。このため、半導体素子1から放熱フィン6に伝達された熱を、放熱フィン6だけでなく、それにネジ7を介して直接結合されている面積の大きい板金製部品3からも放熱させることができる。これにより、半導体素子1の放熱性能を向上させ、ひいては放熱フィン6の小型化、それらを含む回路基板4および制御ボックス3の小型コンパクト化を図ることができる。
【0030】
また、本実施形態において、板金製部品3は、上記の如く、半導体素子1を備えた回路基板4を収容設置する制御ボックスとされているため、板金製部品3として特別な部品を追加することなく、半導体素子1を備えた回路基板4を収容設置する制御ボックスを利用して上述の絶縁取付け構造を実現することができる。従って、部品数やコスト等の増加を招くことなく、高い絶縁性能および放熱性能を有する簡素で安価な半導体素子1の絶縁取付け構造を提供することができる。
【0031】
さらに、上記樹脂製絶縁部材10は、板金製部品(制御ボックス)3と板金製シャーシ9との間に一定の空間距離Sを確保するスペーサ部10Aと、板金製部品3または板金製シャーシ9の一方(ここでは、板金製シャーシ9)に設けられた取付け穴12に抜け止め部10Cを介して嵌着されるとともに、板金製部品3または板金製シャーシ9の他方およびスペーサ部10Aを貫通するネジ11が締め付け固定されるネジ結合部10Bとを一体に樹脂成形した構成とされている。
【0032】
このため、樹脂製絶縁部材10を板金製部品3と板金製シャーシ9との間に介在して板金製部品3と板金製シャーシ9とを互いに結合することにより、半導体素子1および放熱フィン6が設置されている板金製部品3を、一定の空間距離Sを確保するとともに、固体絶縁部10Eを介して板金製シャーシ9により絶縁支持することができる。従って、単一の樹脂製絶縁部材10を介して一定の空間距離Sを確保して板金製部品3を板金製シャーシ9で絶縁支持することができ、余計なスペースを確保することなく、簡素でコンパクトな構成の半導体素子1の絶縁取付け構造を得ることができる。
【0033】
また、上記樹脂製絶縁部材10のネジ結合部10Bは、ネジ結合部10Bが嵌着される板金製部品3または板金製シャーシ9の一方(ここでは、板金製シャーシ9)と、ネジ結合部10Bに締め付け固定されるネジ11との間を絶縁する固体絶縁部10Eを備えた構成とされている。
【0034】
このため、樹脂製絶縁部材10のスペーサ部10Aを介して板金製部品3と板金製シャーシ9との間に、一定の空間距離Sを確保することができるとともに、ネジ結合部10Bの固体絶縁部10Eを介して、ネジ結合部10Bが嵌着される板金製部品3または板金製シャーシ9の一方と、その他方を樹脂製絶縁部材10に締め付け固定するネジ11との間を固体絶縁することができ、従って、放熱フィン6が取付けられる板金製部品3と、板金製部品3が取付けられる板金製シャーシ9との間を、樹脂製絶縁部材10を介して確実に絶縁することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、樹脂製絶縁部材10を板金製シャーシ9側の取付け穴12に嵌着し、スペーサ部10Aを介在して板金製部品(制御ボックス)3をネジ11により樹脂製絶縁部材10に締め付け固定しているが、逆に板金製部品(制御ボックス)3側に樹脂製絶縁部材10を嵌着し、板金製シャーシ9側からネジ11で締め付け固定するようにしてもよい。なお、この場合は、板金製部品3側に樹脂製絶縁部材10の取付け穴12が設けられることになる。
【0036】
また、樹脂製絶縁部材10は、PPSに限らず、他の樹脂材を用いてもよく、更にスペーサ部10Aおよびネジ結合部10Bの断面形状については、円形断面に限らず、角形断面形状としてもよい等、様々な形状を選択することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 半導体素子
3 板金製部品(制御ボックス)
4 回路基板
6 放熱フィン
7 ネジ
9 板金製シャーシ
10 樹脂製絶縁部材
10A スペーサ部
10B ネジ結合部
10C 抜け止め部
10E 固体絶縁部
11 ネジ
12 取付け穴
S 空間距離