(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
[電力管理システムの全体構成例]
図1は、本実施形態における電力管理システムの全体構成例を示している。
本実施形態における電力管理システムは、電力管理地域1として示す一定範囲の地域における複数の施設100において利用される電力を管理するものである。このような電力管理システムは、例えばTEMS(Town Energy Management System)やCEMS(Community Energy Management System)などといわれるものに対応する。
そのうえで、本実施形態の電力管理システムは、電力管理地域1に供給される商用電源系統2について、例えば災害や商用電力設備の不具合などによる電力停止や電圧異常などの異常が発生した場合には、商用電源系統2から電力管理地域1への電力供給を遮断する。そして、本実施形態の電力管理システムは、電力管理地域1内の地域内蓄電池200を利用して各施設100に電力を供給することにより自立運転を図る。
【0014】
図1の電力管理地域1においては複数の施設100が存在している。これらの施設100は、例えば住宅、商業施設、産業施設、公共施設などのうちのいずれかである。これらの施設100内には、電力を使用して動作する負荷としての各種の機器が備えられている。
また、電力管理地域1には、地域内蓄電池200、自然エネルギー発電装置300、電力管理装置400及び開閉器500が備えられる。
【0015】
地域内蓄電池200は、地域内電力網PNWに接続されることで、地域内電力網PNW経由で供給された電力を充電する。例えば地域内蓄電池200は、平常時において各施設100の機器が使用する電力が少なく、商用電源系統2から供給される電力に余剰が生じた場合に、この余剰の電力を入力して充電することができる。
また、地域内蓄電池200は、商用電源系統2に異常が生じた場合には、蓄積電力を地域内電力網PNW経由で各施設100の機器に供給するための放電を行う。
【0016】
自然エネルギー発電装置300は、自然エネルギーを利用して発電する発電装置である。本実施形態の電力管理システムにおいて、自然エネルギー発電装置300が発電した電力は、地域内蓄電池200に供給される。つまり、地域内蓄電池200は、商用電源系統2の余剰電力のほかに、自然エネルギー発電装置300から供給される電力も充電することができる。
なお、自然エネルギー発電装置300の具体例としては、太陽光発電装置、風力発電装置、地熱発電装置などである。また、本実施形態において、自然エネルギー発電装置300は必ずしも備えられなくともよい。自然エネルギー発電装置300を備えない場合には、商用電源系統2の電力により地域内蓄電池200を充電することができる。
【0017】
電力管理装置400は、電力管理地域1における電力を管理する。つまり、電力管理地域1における施設100を対象として電力制御を実行する。また、電力管理地域1は、地域内蓄電池200の充電動作と放電動作を制御する。また、商用電源系統2の異常の有無に応じて開閉器500の開閉を制御する。
【0018】
地域内電力網PNWは、電力管理地域1における複数の施設100に電力を供給するためのもので、開閉器500を介して商用電源系統2と接続される。また、地域内電力網PNWは、電力管理地域1において各施設100と地域内蓄電池200と電力管理装置400と接続される。
【0019】
また、各施設100と地域内蓄電池200と電力管理装置400は、通信網NWと接続されている。これにより、電力管理装置400は、各施設100及び地域内蓄電池200と相互に通信することが可能である。なお、通信網NWは、例えばWAN(Wide Area Network)などとして構築される。
【0020】
商用電源系統2が正常に供給されている平常時においては、開閉器500は閉状態となるように電力管理装置400によって制御される。この状態においては、各施設100は、商用電源系統2から供給される電力を地域内電力網PNW経由で入力し、この入力した電力を利用して自己が備える機器を動作させる。また、電力管理装置400も、地域内電力網PNWから供給される商用電源系統2の電力を利用して動作する。
つまり、本実施形態の電力管理システムにおいて、電力管理装置400は、平常時には、電力管理地域1における負荷に対して商用電源系統2の電力が供給されるように制御する。
【0021】
また、電力管理装置400は、平常時においては、前述もしたように、商用電源系統2の余剰電力や自然エネルギー発電装置300により発生された電力により地域内蓄電池200に充電が行われるように制御する。
これにより、非常時において各施設100の機器に供給すべき電力を、平常時において地域内蓄電池200に蓄積しておくことができる。
なお、非常時とは、例えば、商用電源系統2について電力停止や電圧変動などの異常が発生するのに応じて、商用電源系統2から地域内電力網PNWへの電力供給が停止された状態をいう。
【0022】
また、非常時において、電力管理装置400は、開閉器500を開状態とする。
これにより、商用電源系統2と地域内電力網PNWは切断され、商用電源系統2から地域内電力網PNWへの電力供給が遮断される。
【0023】
この状態において、電力管理装置400は、地域内蓄電池200に放電を行わせる。これにより、地域内蓄電池200の蓄積電力が地域内電力網PNW経由で各施設100に供給される。各施設100においては、供給された電力により機器を動作させることができる。また、このときには、電力管理装置400も、地域内蓄電池200から地域内電力網PNW経由で供給される電力を利用して動作することができる。
このように、本実施形態の電力管理システムは、商用電源系統2に異常が発生した場合には、地域内蓄電池200の蓄積電力を利用して電力を供給することにより、各施設100の機器を動作させるという自立運転が可能である。地域内電力網PNW経由は、このように、各施設100に対して地域内蓄電池200から供給される電力が分配されるように形成される。
【0024】
ただし、地域内蓄電池200に蓄積される電力は有限である。このため、非常時において、平常時と同様に各施設100において使用される機器のすべてに対して無制限に電力を供給してしまうと、商用電源系統2が異常状態から復帰しないうちに短時間で地域内蓄電池200の蓄積電力が使い尽くされてしまうことにもなりかねない。
【0025】
そこで、本実施形態の電力管理装置400は、各施設100のユーザからの機器の使用に関する要求に基づいて、各施設100におけるすべての機器のうちから、非常時において電力を供給すべき機器(電力供給機器)を決定する。そして、この電力供給機器に対して地域内蓄電池200の蓄積電力が供給されるように制御する。このように、本実施形態の電力管理システムでは、電力管理地域1において自立運転を図るにあたり、負荷である機器を適切に稼働させることができる。
これにより、非常時における各施設100では、例えばユーザの要望する必要最小限の機器については動作させることができるために、ユーザが著しく不便を感じることはない。また、地域内蓄電池200の蓄積電力についても長持ちさせることができる。
【0026】
[施設の構成例]
図2は、施設100の構成例を示している。この図に示す施設100は、配電回路110と、負荷である複数の機器120(120−1〜120−N)と、施設内電力管理装置130を備える。
【0027】
配電回路110は、地域内電力網PNWから供給される電力を入力し、入力した電力を機器120に分配する。そのうえで、配電回路110は、施設内電力管理装置130の制御に応じて、機器120ごとに対する電力供給のオンオフを切り替えることができる。
なお、配電回路110は、具体的には、分電盤やコンセントなどと、これら分電盤やコンセントなどに設けられる電力供給のオンオフ切り替えのための開閉器などを含むように構成される。
【0028】
施設内電力管理装置130は、施設100における電力の管理を行う。また、施設内電力管理装置130は、非常時においては、各施設100の機器120のうち、電力管理装置400により電力供給機器として決定された機器120のみに対して電力が供給されるように配電回路110を制御する。
【0029】
図2においては、非常時において電力供給機器として決定された機器120のみに対して電力を供給するための施設内電力管理装置130の構成例が示されている。
この図に示す施設内電力管理装置130は、通信部131、機器制御部132、機器管理情報記憶部133、ユーザインターフェース部134及び非常時電力需要情報生成部135を備える。
【0030】
通信部131は、通信網NW経由で、電力管理装置400と通信を実行する。
機器制御部132は、電力管理装置400による非常時対応の給電制御の指示に応じて、電力供給機器として決定された機器120のみに対して電力が供給されるように配電回路110を制御する。
【0031】
例えば、機器制御部132は、配電回路110における配電盤、コンセントのうちで、電力供給機器として決定された機器120が接続されている配電盤、コンセントの開閉器を閉状態とする。また、機器制御部132は、電力供給機器として決定されていない機器120が接続されている配電盤、コンセントの開閉器については開状態とするように制御する。
【0032】
また、機器制御部132は、この制御を実行するにあたり、機器管理情報記憶部133に記憶されている機器管理情報を利用する。つまり、電力管理装置400から送信される非常時対応の給電制御要求には、電力供給機器として決定された機器120の機器IDが含まれている。また、機器管理情報記憶部133に記憶されている機器管理情報は、同じ施設100において備えられる機器120ごとの機器IDに、その機器IDにより特定される機器120が接続されている配電盤や回路がどれであるのかという情報(配電回路情報)が対応付けられている。
【0033】
機器制御部132は、電力管理装置400からの非常時対応の電力制御の指示に含まれる機器IDに対応付けられている配電回路情報を機器管理情報から読み出す。機器制御部132は、読み出した配電回路情報が示す配電盤あるいはコンセントなどに設けられている開閉器を閉状態とし、これ以外の開閉器を開状態とする。
これにより、非常時においては、施設100において電力供給機器として決定された機器のみを動作させることができる。また、逆に、例えばユーザが電力供給機器として決定されていない機器を動作させようとしても、この機器を動作させることはできないようにできる。
【0034】
機器管理情報記憶部133は、機器管理情報を記憶する。
ユーザインターフェース部134は、例えばキーボードやマウスなどの操作入力デバイスと、表示部、音声出力部などのユーザインターフェース機能を一括して示したものである。
【0035】
第1の実施形態において、各施設100のユーザは、非常時(商用電源系統2が遮断されているとき)に施設において電力供給を受けることが要望される機器120(電力要求機器)を電力管理装置400に対して予め登録しておくことができる。
ユーザは、この電力要求機器を登録するための操作をユーザインターフェース部134に対して行うことができる。なお、第1の実施形態において、非常時において地域内蓄電池200の蓄積電力を使用するための電気料金(使用料金)は、例えば商用電源系統2の使用料金よりも高額に設定される。ユーザは、地域内蓄電池200の蓄積電力の使用料金を考慮しながら、施設100における機器120のうちから、非常時においても自分が優先的に使用したい機器120を電力要求機器として決めればよい。
そして、ユーザは、電力要求機器を登録するための操作として、ユーザインターフェース部134に対して電力要求機器として決めた機器120を指定する操作を行ったうえで、電力要求機器の登録を指示する操作を行う。
【0036】
非常時電力需要情報生成部135は、非常時電力需要情報を生成する。非常時電力需要情報は、非常時に電力供給を受けることが要望される機器(電力供給機器)に関する情報を含む。
具体的に、非常時電力需要情報生成部135は、電力要求機器の登録を指示する操作が行われるのに応じて、電力要求機器として指定された機器120の機器IDを含む非常時電力需要情報を生成する。非常時電力需要情報生成部135は、生成した非常時電力需要情報を電力管理装置400に対して送信する。
電力管理装置400は、受信した非常時電力需要情報を記憶する。これにより、電力要求機器が登録される。
【0037】
[電力管理装置の構成例]
図3は、電力管理装置400の構成例を示している。
この図に示す電力管理装置400は、商用電源系統異常検出部401、遮断制御部402、非常時電力需要情報管理部403、非常時電力需要情報記憶部404、機器決定部405、給電制御部406及び通信部407を備える。
【0038】
商用電源系統異常検出部401は、商用電源系統2の異常の有無を検出する。商用電源系統異常検出部401は、例えば、商用電源系統2における電流、電圧を監視し、商用電源系統2からの電力供給の停止、商用電源系統2における電圧異常などを検出したことに応じて、商用電源系統2に異常が発生したと検出する。
【0039】
遮断制御部402は、商用電源系統2に異常が発生しているときに、商用電源系統2から地域内電力網PNWへの電力供給を遮断する。
具体的に、遮断制御部402は、商用電源系統異常検出部401により商用電源系統2に異常が発生していないと検出されているときには、開閉器500が閉状態となるように制御する。これにより、商用電源系統2の電力は地域内電力網PNWに供給される。
一方、商用電源系統異常検出部401により商用電源系統2に異常が発生していると検出されているときには、開閉器500が開状態となるように制御する。これにより、商用電源系統2から地域内電力網PNWへの電力供給が遮断される。
【0040】
非常時電力需要情報管理部403は、非常時電力需要情報を管理する。具体的に、非常時電力需要情報管理部403は、施設内電力管理装置130から通信網NW経由で送信された非常時電力需要情報を通信部407から入力し、入力した非常時電力需要情報を非常時電力需要情報記憶部404に記憶される非常時電力需要情報テーブルに登録する。
非常時電力需要情報記憶部404は、非常時電力需要情報テーブルを記憶する。
【0041】
機器決定部405は、非常時電力需要情報に基づいて、施設100ごとにおいて電力を供給してよい電力供給機器を決定する。
給電制御部406は、商用電源系統2に異常が発生しているときに、機器決定部405により決定された電力供給機器に対して地域内電力網PNWを経由して地域内蓄電池の蓄積電力が供給されるように制御する。この際、給電制御部406は、通信網NWを経由して、地域内蓄電池200と、施設100ごとにおける配電回路110または機器120を制御する。
通信部407は、通信網NW経由で、地域内蓄電池200、各施設100の施設内電力管理装置130と通信を実行する。
【0042】
図4は、非常時電力需要情報記憶部404に記憶される非常時電力需要情報テーブル404aの構造例を示している。
非常時電力需要情報テーブル404aは、施設内電力管理装置IDごとに1以上の機器ID(非常時電力需要情報)を対応付けた構造である。
施設内電力管理装置IDは、非常時電力需要情報の送信元の施設内電力管理装置130を一意に識別する識別子である。
機器IDは、施設内電力管理装置IDが示す施設100において電力要求機器として登録された機器120を一意に識別する識別子である。
【0043】
第1の実施形態において、施設内電力管理装置130は、ユーザの操作により指定された1以上の電力要求機器の機器IDを非常時電力需要情報に含めて送信する。非常時電力需要情報管理部403は、この非常時電力需要情報を受信するのに応じて、非常時電力需要情報に含まれる機器IDを、送信元の施設内電力管理装置130の施設内電力管理装置IDに対応付けるように非常時電力需要情報テーブル404aに登録する。非常時電力需要情報管理部403は、このような電力要求機器の登録を、非常時電力需要情報の受信ごとに随時行う。
また、非常時電力需要情報管理部403は、例えば、施設内電力管理装置130から機器IDの指定を伴う電力要求機器の削除の指示が送信された場合には、以下の処理を実行する。つまり、非常時電力需要情報管理部403は、非常時電力需要情報テーブル404aにおいて、当該指示の送信元の施設内電力管理装置130の施設内電力管理装置IDに対応付けられた機器IDのうちから、指定された機器IDを削除する。
【0044】
機器決定部405は、
図4の非常時電力需要情報テーブル404aに基づいて、電力供給機器を決定するにあたり、この非常時電力需要情報テーブル404aに登録されているすべての機器IDの機器120を電力供給機器として決定する。
給電制御部406は、施設100ごとの施設内電力管理装置130に対して、非常時給電制御要求を送信する。非常時給電制御要求は、自己が含む機器IDの機器120にのみ電力を供給する給電制御の実行を施設内電力管理装置130に要求するコマンドである。給電制御部406は、この非常時給電制御要求に、非常時電力需要情報テーブル404aにおいて送信先の施設内電力管理装置130の施設内電力管理装置IDに対応付けて登録されている機器IDを含める。
【0045】
施設内電力管理装置130における機器制御部132は、非常時給電制御要求の受信に応答して、以下のように給電制御を実行する。
ここで、
図5は、施設内電力管理装置130の機器管理情報記憶部133に記憶される機器管理情報133aの構造例を示している。この図に示すように、機器管理情報133aは、対応の施設100に備えられる機器120の機器IDごとに、その機器120が接続されているコンセントあるいは分電盤を示す配電回路情報を対応付けた構造である。
【0046】
機器制御部132は、受信した非常時給電制御要求に含まれていた機器IDに対応付けられている配電回路情報を機器管理情報133aから読み出す。機器制御部132は、読み出した配電回路情報が示す配電回路110のコンセント、分電盤に設けられている開閉器のみを開状態として、これ以外のコンセント、分電盤に設けられている開閉器を閉状態とする制御を実行する。
これにより、電力供給機器として決定された機器120と接続されているコンセントあるいは分電盤にのみ電力が供給される。つまり、ユーザは、電力供給機器として決定された機器120のみを動作させることができる。
【0047】
[処理手順例]
図6のフローチャートは、第1の実施形態における電力管理装置400が非常時において実行する処理手順例を示している。
電力管理装置400において、商用電源系統異常検出部401は、商用電源系統2における異常が検出されるのを待機している(ステップS101−NO)。商用電源系統2における異常が検出されると(ステップS101−YES)、遮断制御部402は、開閉器500を閉状態から開状態に切り替えることで、商用電源系統2から地域内電力網PNWへの電力供給が遮断されるように制御する(ステップS102)。このように、商用電源系統2から地域内電力網PNWへの電力供給が遮断されることにより、電力管理地域1は非常時の状態に移行する。
【0048】
次に、給電制御部406は、ステップS101により異常の発生が検出されたのに応じて、地域内蓄電池200の放電動作を開始させる(ステップS103)。このために、給電制御部406は、通信網NW経由で、地域内蓄電池200が放電動作を開始するように制御する。
【0049】
また、ステップS101により異常が検出されたのに応じて、機器決定部405は、前述のように非常時電力需要情報テーブル404aに登録された非常時電力需要情報を利用して施設100ごとの電力供給機器を決定する(ステップS104)。
【0050】
次に、給電制御部406は、ステップS104により決定された電力供給機器のみへの電力供給を指示する非常時給電制御要求を施設100に対して送信する(ステップS105)。
ステップS103〜S105により、各施設100において、電力供給機器として決定された機器120のみに対する地域内蓄電池200の蓄積電力の供給が開始される。
【0051】
非常時に対応する給電制御が行われている状態のもと、商用電源系統異常検出部401は、商用電源系統2が正常な状態に復帰したか否かについて検出する(ステップS106)。なお、商用電源系統異常検出部401は、例えば、商用電源系統2の電圧が正常範囲内の値になったことを検出するのに応じて、商用電源系統2が正常な状態に復帰したと検出すればよい。
【0052】
商用電源系統2が正常な状態に復帰していないと検出された場合(ステップS106−NO)、非常時電力需要情報管理部403は、さらに非常時対応の給電制御中に非常時電力需要情報が受信されたか否かについて判定する(ステップS107)。
本実施形態において、ユーザは、非常時対応の給電制御が行われているときであっても、電力要求機器を新たに登録したり変更したりするための操作を行うことができる。これにより、例えば非常時に陥ったときの施設100での生活状況などに応じて、ユーザは、臨機応変に電力要求機器の登録内容を変更することができる。
ステップS107は、上記のように非常時対応の給電制御中において施設内電力管理装置130から送信されるのに応じて、この非常時電力需要情報の受信を待機する処理である。
【0053】
非常時電力需要情報が受信されなかった場合(ステップS107−NO)、非常時電力需要情報管理部403は、ステップS106に処理を戻す。
一方、非常時電力需要情報が受信された場合(ステップS107−YES)、非常時電力需要情報管理部403は、受信した非常時電力需要情報を非常時電力需要情報テーブル404aに登録し(ステップS108)、ステップS104に処理を戻す。
このようにステップS104に戻ることで、ステップS108により更新された非常時電力需要情報テーブル404aの内容に応じて電力供給機器が再決定される。
なお、非常時に移行して最初のステップS104は、すべての施設内電力管理装置130に対して非常時給電制御要求を送信する。しかし、2回目以降のステップS104は、例えば、ステップS108に応じて非常時電力需要情報の登録内容が変更された施設100の施設内電力管理装置130に対してのみ、ステップS104による電力供給機器の再決定結果を反映させた非常時給電制御要求を送信すればよい。
【0054】
そして、商用電源系統2が正常な状態に復帰したことが判定された場合(ステップS106−YES)、給電制御部406は、地域内蓄電池200の放電動作を停止させる(ステップS109)。
また、これとともに、給電制御部406は、各施設に対して非常時対応の給電制御を停止させるための給電制御停止要求を送信する(ステップS110)。この給電制御停止要求を受信した施設内電力管理装置130においては、機器制御部132がすべての機器120に電力供給が可能なように配電回路110を切り替える。
また、遮断制御部402は、これまで開状態であった開閉器500を閉状態に切り替えることにより、商用電源系統2を地域内電力網PNWに接続する(ステップS111)。
ステップS109〜S111により、商用電源系統2から各施設100の機器120に対して電力が供給され、かつ、各施設100における機器120への配電については特に制限が無いという、平常時の状態に復帰する。
【0055】
<第2の実施形態>
[電力管理装置の構成例]
続いて、第2の実施形態について説明する。
図7は、第2の実施形態としての電力管理装置400の構成例を示している。なお、この図において、
図3と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
図7に示す電力管理装置400は、料金設定部408をさらに備える。
料金設定部408は、非常時電力需要情報が示す支払可能金額と、現在以降において予測される需要電力量(予測需要電力量)と、地域内蓄電池200の残容量と、商用電源系統の異常からの復旧見込みを示す復旧情報に基づいて、地域内蓄電池の蓄積電力を使用するための使用料金を変更する。
なお、料金設定部408は、例えば、電力管理地域1における過去の使用電力の実績データや天気予報などの情報を利用して予測需要電力量を求めることができる。
また、地域内蓄電池200の残容量は、通信網NW経由で通信を行うことにより地域内蓄電池200から取得できる。
また、復旧情報は、例えば外部のネットワーク経由で所定のサイトなどから取得することができる。
【0057】
料金設定部408は、例えば非常時電力需要情報が示す支払可能金額(例えば指定された指値)が高くなっていく傾向となるのに応じて、使用料金を高くするように設定する。
また、料金設定部408は、予測需要電力量が多くなるのに応じて使用料金を高くするように設定する。また、料金設定部408は、地域内蓄電池200の残容量が少なくなるのに応じて、使用料金を高くするように設定する。また、料金設定部408は、復旧情報が示す復旧の見込みが早いほど、使用料金を低くするように設定する。
【0058】
なお、料金設定部408は、支払可能金額と、予測需要電力量と、地域内蓄電池200の残容量と、復旧情報のうちの少なくともいずれか1つを利用して使用料金を変更してもよい。また、支払可能金額、予測需要電力量、地域内蓄電池200の残容量、復旧情報以外のパラメータを組み合わせてもよい。
【0059】
そのうえで、第2の実施形態では、施設100のユーザは、電力要求機器を登録するにあたり、その電力要求機器が地域内蓄電池200の蓄積電力の供給を受けるために支払い可能な金額(支払可能金額)を指定する。
例えば、この支払可能金額の指定には、2通りのやり方がある。1つは、指値により支払可能金額を指定するというものである。もう1つは、成行により支払可能金額を指定するというものである。
【0060】
施設100のユーザが電力要求機器の登録を指示する操作を行うのに応じて、非常時電力需要情報生成部135は、例えば電力要求機器として指定した機器120の機器IDに加えて支払可能金額の情報を含む非常時電力需要情報を生成する。また、非常時電力需要情報管理部403は、非常時電力需要情報テーブル404aにおける施設内電力管理装置IDに、機器IDと支払可能金額とを含む非常時電力需要情報を対応付けて登録する。
【0061】
図8は、第2の実施形態における非常時電力需要情報テーブル404aの構造例を示している。
この図に示す非常時電力需要情報テーブル404aは、施設内電力管理装置IDごとに、機器IDと支払可
能金額とを含む非常時電力需要情報が1以上対応付けられた構造である。
【0062】
第2の実施形態において、機器決定部405は、非常時電力需要情報において示される電力要求機器のうちから、料金設定部408により設定された蓄積電力の使用料金と、非常時電力需要情報において電力要求機器ごとに設定された支払可能金額とに基づいて電力供給機器を決定する。
具体的に、まず、機器決定部405は、非常時電力需要情報テーブル404aに登録されている機器IDのうちから、「成行」を示す支払可能金額が対応付けられた機器IDの機器を電力供給機器として決定する。
次に、機器決定部405は、非常時電力需要情報テーブル404aに登録されている機器IDのうちで、現在において料金設定部408により設定されている使用料金以上の「指値」を示す支払可能金額が対応付けられた機器IDの機器についても電力供給機器として決定する。
給電制御部406は、このように決定された電力供給機器に電力が供給されるように制御する。
【0063】
このように、第2の実施形態においては、非常時の状況に応じて蓄積電力の使用料金が変更されたうえで、電力要求機器のうちで支払可能金額が使用料金以上に設定されているものが電力供給機器として決定される。
これにより、例えば、非常時における電気代は増えてもいいので、できるだけ機器を稼働させたいというユーザは、電力要求機器に設定する支払可能金額をすべて「成行」にしたり、高い「指値」を設定したりするなど、支払可能金額を増加させればよい。これにより、ユーザの希望に沿った電力供給を受けることができる。
一方、多少不便でもいいので、必要最小限の機器120だけを稼働させたいというユーザは、例えば、その必要最小限の機器120だけを「成行」で指定すればよい。これにより、必要最小限の機器120は稼働させたうえで電気代を抑えることができる。
【0064】
つまり、第2の実施形態においては、非常時において稼働できる機器を高い自由度で選択できるようにしたうえで、そこに使用料金を課すことにより、むやみな数の機器の稼働を抑制できる。また、第2の実施形態では、例えば、電力管理地域1において地域内蓄電池200を提供し、非常時において地域内蓄電池200の蓄積電力を、施設100のユーザに販売するというビジネスモデルを実現できる。
【0065】
[処理手順例]
図9のフローチャートは、第2の実施形態における電力管理装置400が非常時において実行する処理手順例を示している。なお、この図において、
図6と同様の処理となるステップについては同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
ステップS101及びステップS102の処理は、
図6と同様である。
ステップS102により商用電源系統2から地域内電力網PNWへの電力供給が遮断された後、料金設定部408は、前述のように、支払可能金額と、予測需要電力量と、地域内蓄電池200の残容量と、復旧情報とに基づいて、地域内蓄電池200の蓄積電力の使用料金を設定する(
ステップS102−1)。
【0067】
また、機器決定部405は、ステップS103が実行された後において、非常時電力需要情報テーブル404aにおいて、「成行」を示す支払可能金額が対応付けられた機器IDを電力供給機器として決定する(ステップS104A)。これとともに、機器決定部405は、ステップS102−1により設定された使用料金以上の「指値」を示す支払可能金額が対応付けられた機器IDの機器についても電力供給機器として決定する(ステップS104A)。
ステップS105〜S111の処理は、
図6と同様である。
【0068】
なお、本実施形態の電力管理装置の構成は、これまでに説明した構成に限定されない。
例えば、電力管理システムにおいて、地域内蓄電池200の他に、応急用の蓄電池や燃料電池、ガス発電装置などの予備電源を備え、非常時の状態が長引くような場合には、これらの予備電源からも給電が行えるようにしてよい。
また、これまでの説明では、電力管理装置400は、施設100における施設内電力管理装置130を介在させて機器120に対する給電制御を行っている。しかし、例えば施設内電力管理装置130を省略して、電力管理装置400が各施設100の機器120に対する給電制御を直接的に行うようにしてもよい。ただし、本実施形態のように、施設内電力管理装置130を介在させることにより、電力管理装置400の制御の複雑化が避けられ、効率よく給電制御を行うことができる。
また、これまでの説明では、機器120に対する給電制御にあたり、配電回路110を制御することとしているのであるが、例えば、機器120自体をオンオフ制御するようにしてもよい。
【0069】
また、
図2、
図3、
図7などにおける各機能部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより非常時における給電制御を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0070】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0071】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。