(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接地圧によって上下揺動するように植付作業機(6)の下端側に配設された感知体(17A)と、該感知体(17A)の上下揺動位置に基づいて植付作業機(6)の昇降を制御する制御手段(26)と、感知体(17A)の基準姿勢を変更することにより接地圧に対する感度を調整するワイヤ(41)と、該ワイヤ(41)を作動させる作動機構(42)とを備えた移植機において、前記作動機構(42)は、ワイヤ(41)を巻き取るリール(46)と、該リール(46)を回転又は回動駆動させるモータ(47)とを有し、前記リール(46)と一体回転する係止部(46b)と、該係止部(46b)に当接するストッパー(49)とにより、前記リール(46)の回動範囲が予め定めた初期位置から一回転未満になるように構成された移植機。
前記リール(46)の回動又は回転を制御する制御部(50)を設け、該制御部(50)は、モータ(47)に出力される制御信号に基づいてワイヤ(41)の位置を算出するとともに、該算出されたワイヤ(41)位置に基づいてリール(46)の回動又は回転を制御する請求項1に記載の移植機。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び
図2は、本発明の移植機を適用した乗用田植機の側面図、及び平面図である。図示する乗用田植機は、左右一対の前輪1、1及び後輪2,2によって支持される走行機体3と、該走行機体3の後部にリンク機構4を介して昇降駆動可能に支持された植付作業機6とを備えている。
【0013】
前記走行機体3は、前側の図示しないエンジンを囲繞するボンネット7の後方にオペレータが乗り込む操縦部8が設置されており、この操縦部8は、オペレータが着座する座席9と、座席9の前方に設けられたステアリングハンドル11と、ステアリングハンドル11の左側方に支持された走行変速レバー12と、座席9の側方に設けられたリフトレバー13とを備えている。
【0014】
前記植付作業機6は、圃場に植付けられる苗が載置される苗載せ台14と、苗載せ台14の下方側に左右方向に複数並列して配置される植付部16を備えており、植付部16が苗載せ台14の苗を掻き取って圃場へ植付ける植付作業を行うように構成されている。
【0015】
該植付作業機6は、植付部16に側に動力伝動するプランタケース15の下方側に、圃場を均すフロート17が複数左右方向に並べて設けられている。各フロート17の前端側は上下揺動可能に支持されており、各フロート17の後部側は、回動軸18を介してフロート支持アーム19が連結されている。該フロート支持アーム19は、左右方向のパイプ軸21を介して植付深さ調節レバー22が連結されており、植付深さ調節レバー22の前後揺動操作に連動して、フロート支持アーム19が上下回動するように構成されている。これにより、フロート17が上下方向に変位することにより、植付深さが調節される。
【0016】
左右方向複数のフロート17のうちの中央に配置されたセンターフロート17Aは、圃場面からの土圧を感知する感知体として機能し、該感知体の土圧感知によって植付作業機6の対地高さが制御される。ちなみに、該センターフロート17Aは、前部が上下揺動することによって、感知される土圧の強さを調節するように構成されている。詳しくは後述する。
【0017】
また、植付作業機6は、油圧式アクチュエータである昇降シリンダ(油圧シリンダ)10によって昇降駆動されており、前記リフトレバー13により、植付作業機が上昇する上昇状態、植付作業機を下降させる下降状態(又は下端側で下降停止した下降停止状態)、植付作業を行う植付状態に切換操作することができる。
【0018】
さらに、油圧ポンプから昇降シリンダ10に至る油圧経路には、昇降用のコントロールバルブ30が設けられ、これにより昇降シリンダ10が伸縮作動する。該コントロールバルブ30は、側面視矩形状の作動アーム35を有しており(
図3等参照)、該作動アームの回動操作を制御することにより、植付作業機6が昇降制御される。
【0019】
このとき、植付作業機6側と走行機体3側との間には、センターフロート17Aの前端側の上下揺動と、作動アーム35の回動操作とを連係する連係機構26が設けられており、該連係機構26の中途部には、センターフロート17Aによる土圧感知の感度を調整するための土圧感度調整装置27が連結されている。詳細な構成については以下説明する。
【0020】
次に、
図3乃至6に基づいて、連係機構及び油圧感度調節装置の構成について説明する。
図3は、感知ワイヤの配置構成を示す側面図であり、
図4は、操作部を示した斜視図及びその要部拡大図であり、
図5(A)は、ワイヤ巻取り前のリールを示した図であり、
図5(B)は、ワイヤ巻取り状態のリールを示した図であり、
図6は、油圧バルブ周辺を示した側面図である。
【0021】
前記連係機構26は、センターフロート17Aの前端側に連結される上下方向の感知ロッド28と、該感知ロッド28の上部側に連結される揺動アーム29と、該揺動アーム29に連結されて前後方向に延設される連結ロッド31と、該連結ロッド31の前端側にリンク32を介して連係される操作ロッド33とを備えている。前記操作ロッド33は、連係部材34を介して前記作動アーム35に連係されるとともに、引張スプリング36,37により前方側へ向けて引張り付勢されている。
【0022】
センターフロート17Aに基づく植付作業機6の対地高さは、圃場からの土圧が高くなってセンターフロート17Aが前上がり姿勢になると、感知ロッド28が上方、連結ロッド31及び操作ロッド33が後方に移動し、これに伴って作動アーム35が後方回動し、植付作業機6が上昇駆動される。
【0023】
一方、センターフロート17Aが圃場から離間して前下がり姿勢になると、感知ロッド28が下方、連結ロッド31及び操作ロッド33が前方に移動し、これに伴って作動アーム35が前方回動し、植付作業機6が下降駆動される。
【0024】
すなわち、該構成の連係機構26によれば、植付作業機6が植付作業可能な位置に昇降されている状態において、感知体であるセンターフロート17Aの姿勢が随時適切な姿勢(略水平)で圃場面に接するように植付作業機6の対地高さが昇降制御されている。
【0025】
前記土圧感度調整装置27は、一端側が前記感知ロッド28等の植付作業機6側に連結されたワイヤ41と、該ワイヤ41の他端側が連結されて走行機体3側に固定された固定プレート38に設けられた操作部42と、ワイヤ41の操作量を設定・実行する制御部とから構成されている。
【0026】
前記ワイヤ41は、感知ワイヤ41Aと、アウタ41Bとから構成されており、該アウタ41Bの一端側は植付側アジャスタ43を介して、植付作業機6側である感知ロッド28の上端側に連結されるとともに、アウタ41Bの他端側は機体側アジャスタ44を介して、前記固定プレート38の後端側に連結されている。
【0027】
ワイヤ41の一端側が連結される植付作業機6側について説明すると、感知ロッド28の上部側には、長手方向に沿った長孔28aが穿設されており、該長孔28aに挿通されたピン(図示しない)には、前記揺動アーム29が上下にスライド可能に連結されている。また、該ピンは、感知ロッド28内でピンを感知ロッド下端側へ付勢する引張スプリング(図示しない)が係合されるとともに、前記感知ワイヤ41Aの一端側が連結されており、ピンがプッシュプルワイヤである感知ワイヤ41Aによって上下方向(感知ロッドの長手方向)に押引き操作されるように構成されている。
【0028】
感知ワイヤ41Aの他端側が連結される前記操作部42は、感知ワイヤ41Aを巻取り可能に形成されたリール46と、該リール46を回転駆動させる基準姿勢調節モータ47とを備えている。該基準姿勢調節モータ47は、固定プレート38を挟んでリール46と同一軸心上で回転駆動するように配置され、該基準姿勢調節モータ47の駆動は、後述する制御部50によって制御されている。
【0029】
前記リール46は、前記感知ワイヤ41Aが巻取られる巻取り部46aと、感知ワイヤ41Aの先端側が取付けられる感知ワイヤ取付部48とが形成されており、該感知ワイヤ取付部48は、感知ワイヤ41Aの端部に設けたクランク状に屈曲された取付用部材をリール46の設置孔に挿通することにより構成されている。また、該リール46には、リール46と一体回転するとともに、固定プレート38側から突設されたピン状のストッパー49に係止する一対の切欠きである係止部46b,46bが形成されている。
【0030】
すなわち、
図5に示すように、前記リール46の回動範囲は、一方側の係止部46bがストッパー49に係止した箇所から、他方側の係止部46bがストッパー49と係止する範囲までに限られており、基準姿勢調節モータ47によるリール46の回動は、一回転未満となるように構成されている。これにより、感知ワイヤ41Aが巻取り部46aによって巻取られる際に、感知ワイヤ41Aが巻取り部46a上で重なることがなく、さらに、該感知ワイヤ41Aは、リール46の接線方向に巻取られ、或いは繰出されるため、リール46の回動量と、感知ワイヤ41Aの操作量が一定となり、前記操作部42が簡易な構成であって且つ高精度に感知ワイヤ41Aを操作することができる。
【0031】
上記構成の感度調整装置27は、操作部42によるワイヤ41の押引き操作を介して揺動アーム29等を操作することにより、前記エンジンの回転数や圃場の状態に応じてセンターフロート17Aの基準姿勢を変更し、センターフロート17Aが圃場から受ける土圧を適切に調節することができる。
【0032】
具体的には、圃場が軟らかい場合には、センターフロート17Aの主に前側が沈下し、センターフロート17Aの前側で土圧が受け易くなって圃場でのフロート跡が深くなる。そのため、前記感度調整装置27により、センターフロート17Aの前端側を上方揺動させて姿勢を水平に保つとともに、揺動アーム29を介して連結ロッド31及び操作ロッド33を後方側に操作して、植付作業機6を上昇作動させることができるため、植付作業機6を適正な高さに保つことができる。
【0033】
一方、圃場が硬い場合には、センターフロート17Aの前側が浮いてしまい、センターフロート17Aの後部側のみが圃場に接地してしまい、フロート17によって圃場が十分に均されなくなる。そのため、前記感度調整装置27により、センターフロート17Aの前側を下方揺動させて姿勢を水平に保つとともに、揺動アーム29を介して連結ロッド31及び操作ロッド33を前方側に操作して、植付作業機6を下降作動させることができるため、植付作業機6を適正な高さに保つことができる。ちなみに、この圃場の硬さに応じた感知体の土圧感度の調節は、操縦部8に設けた油圧感度調整ダイヤル57によって、手動で調節することができる。
【0034】
また、エンジンの回転数が低い場合には、油圧ポンプの吐出圧低下によって、植付作業機6の昇降作動の速度が遅くなるため、センターフロート17Aの基準姿勢を前下がり側に調節し、センターフロート17Aの前側が土圧を受け易くする。一方、エンジンの回転数が高い場合には、油圧ポンプの吐出圧上昇によって、植付作業機6の昇降速度が速くなるため、センターフロート17Aの基準姿勢を前上がり側に調節し、センターフロート17Aの前側が土圧を受けにくくする。このエンジンの回転数による土圧感度の調節は、制御部によりエンジンの回転数に応じて自動的に行われる。
【0035】
ちなみに、
図6に示されるように、前記コントロールバルブ30には、連係機構26とは別途に、コントロールバルブ30を操作する昇降操作機構が設けられており、該昇降操作機構は、コントロールバルブ30を操作する作動アーム35に設けられたピン51と、該ピン51と当接する当接部52aが形成されたカム部材52と、該カム部材52を回動駆動させる駆動モータ53とを備えている。これにより、植付作業機6を昇降操作する昇降操作レバーの操作に応じて該駆動モータ53の駆動を制御部で制御することにより、植付作業機6を昇降操作することができる。
【0036】
前記カム部材52には、駆動モータ53の駆動軸上のピニオンギヤ54と直接噛み合うギヤ部52bが形成されている。このため、カム部材52を回動駆動させるための構成が簡素化されるとともに部品点数が少なくなり、コストを低く抑えることができる。
【0037】
図7は、制御部のブロック図である。制御部50は、マイコン(CPU,ROMやRAM等の記憶装置55を含む)を用いて構成されるものであって、走行機体3に搭載されている。制御部50の入力側には、リフトレバー13の操作位置を検出するリフトレバーセンサ51と、植付作業機6の高さ位置を検出するリフト角センサ52と、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ53と、植付作業機6の左右傾斜における角速度を検出する角速度センサ54と、植付作業機6の左右傾斜角を検出する水平ポテンショセンサ56と、センターフロート17Aの基準姿勢を手動調節する油圧感度調節ダイヤル57と、エンジンのON・OFFを検出するキースイッチ60等とが接続されており、制御部50の出力側には、センターフロート17Aの姿勢を変更して土圧感度を調整する基準姿勢調節モータ47と、植付作業機6の左右傾斜を調整する水平制御モータ58と、燃料の供給量を調整する燃料供給ソレノイド59などが接続されている。
【0038】
該制御部50は、前記角速度センサ54や水平ポテンショセンサ56により検出された植付作業機の左右傾斜に応じて水平制御モータ58を駆動させることにより、植付作業機を水平に保ち、安定した植付作業ができるように構成されている。該構成は従来技術と同様であるため詳細は省略する。
【0039】
また、制御部50のROM等の記憶装置55には、各種条件に応じてセンターフロート17Aの基準姿勢を制御する感度調整処理や、電源入切時に前記リール位置を設定する電源入切処理等を実行する制御プログラムが記憶されている。以下、感度調整処理と、電源入切処理の内容について説明する。
【0040】
図8は、感度調整処理のフロー図である。感度調整処理が実行されると、ステップS1に進む。ステップS1では、土圧感度を変更する条件(制御実行条件)が検出されるか否かが判断され、センターフロート17Aの土圧感度を変更する条件が検出された場合には、ステップS2に進み、その必要がない場合には、その後、リターンする。
【0041】
具体的には、前記リフトレバーセンサ51及びリフト角センサ62により、リフトレバーが下げ位置又は植付位置であり、且つ、植付作業機6が下降停止状態の場合、又は、植付作業機6が所定の高さ位置より下方側まで下降作動され、且つ、植付作業機6が下降停止状態の場合には、ステップS2に進む。それ以外の制御実行条件が満たされない場合、すなわち、植付作業機6が下降停止状態でない場合等においては、ステップ1の後、リターンする。
【0042】
ステップS2では、RAM等の記憶装置55に記憶された基準姿勢調節モータ47の回動位置Xを読込み、その後、ステップS3に進む。
【0043】
ステップS3では、各種条件に応じて、感知体であるセンターフロート17Aの適した姿勢となる基準姿勢調節モータ47の回動位置(以下、目標位置)が算出される。該目標位置は、エンジン回転センサ53によって検出されたエンジンの回転数に基づいて算出される目標値Aと、油圧感度調節ダイヤル57の操作位置に応じて算出される目標値Bとに基づいて算出・設定される。
【0044】
具体的には、目標値Aは、エンジン回転数が高くなる程、センターフロート17Aの基準姿勢が前上がり側となるように設定され、エンジン回転数が低くなる程、センターフロート17Aの基準姿勢が前下がり側となるように設置される。また、目標値Bは、油圧感度調整ダイヤル57が軟らかい側に操作される程、センターフロート17Aの基準姿勢が前上がりとなるように調節され、油圧感度調整ダイヤル57が硬い側に操作される程、センターフロート17Aの基準姿勢が前下がりとなるように調節される。
【0045】
ステップS4では、ステップS1で読込んだ基準姿勢調節モータ47の回動位置Xから、前記目標位置までリール46を操作するために必要な出力パルス数が算出され、ステップS5に進む。ステップS5では、基準姿勢調節モータ47に算出された出力パルス数だけモータ駆動用パルス出力し、基準姿勢調節モータ47を回動駆動させ、その後、ステップS6に進む。
【0046】
ステップS6では、目標位置まで駆動した基準姿勢調節モータ47の新たな回動位置Xを、出力パルス数に基づいて算出し、ステップS7に進む。ステップS7では、目標位置まで駆動された新たな基準姿勢調節モータ47の回動位置XをRAM等の記憶装置55に記憶し、その後、リターンする。
【0047】
すなわち、上記の感度調節処理によれば、感知ワイヤ41Aの操作位置である、基準姿勢調節モータ47の回動位置を、別途センサ類を設置することなく算出することができるため、リール46の回動位置を検出するポテンショメータ等のセンサ類を設置しない分、操作部42の設置スペースを小さくできるとともに、部品点数を削減できるため、コストを低く抑えることができる。
【0048】
図9は、電源入切処理のフロー図である。電源入切処理が実行されると、ステップS11に進む。ステップS11では、キースイッチ60のOFF状態からON状態へのスイッチ操作が検出された場合には、ステップS12に進み、燃料供給ソレノイド59をON状態に切り換えた後、ステップS13に進む。
【0049】
ステップS13では、ROM等の記憶装置55に記憶された基準姿勢調節モータ47の回動位置を、基準姿勢調節モータ47の回動位置Xに代入し、ステップS14に進む。ステップS14では、基準姿勢調節モータ47について、初期位置から読込んだ回動位置Xへ操作するために必要な出力パルス数を算出し、ステップS15に進む。ステップS15では、算出された出力パルス数に応じて基準姿勢調節モータ47を駆動させて、回動位置Xまで駆動させることにより、感知ワイヤ41Aを所定位置まで操作し、その後、リターンする。
【0050】
また、ステップS11において、キースイッチ60のOFF状態からON状態へのスイッチ操作が検出されなかった場合には、ステップS16に進む。ステップS16では、キースイッチのON状態からOFF状態へのスイッチ操作の有無を検出し、該スイッチ操作が検出された場合には、ステップS17に進む。
【0051】
ステップS17では、基準姿勢調節モータ47のその時の回動位置XをROM等の記憶装置55に記憶し、ステップS18に進む。ステップS18では、基準姿勢調節モータ47の回動位置を初期位置へ戻し、ステップS19に進む。ステップS19では、燃料供給ソレノイド59による燃料供給をOFF状態にし、その後、リターンする。
【0052】
なお、ステップS16において、キースイッチ60のON状態からOFF状態へのスイッチ操作が検出されなかった場合、言い換えると、キースイッチ60のOFF状態が維持されている場合、又は、キースイッチ60のON状態が維持されている場合には、何もせずにそのままリターンする。
【0053】
ちなみに、上記の電源入切処理は、ステップS13〜15,ステップS17を省略し、キースイッチ60がOFF状態からON状態に切換えられた場合に、基準姿勢調節モータの回動位置を必ず初期位置からスタートさせる構成にしても良い。この場合、ROMにキースイッチ60のOFF状態への切換え操作を検出時に、基準姿勢調節モータの回動位置XをROMに記憶させる必要がなくなる。