特許第5986864号(P5986864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986864衝立および衝立を複数用いて区画されるブース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986864
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】衝立および衝立を複数用いて区画されるブース
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   E04B2/74 561K
   E04B2/74 561L
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-215685(P2012-215685)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70371(P2014-70371A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】593122789
【氏名又は名称】ユーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草野 史郎
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3114552(JP,U)
【文献】 特開2003−082796(JP,A)
【文献】 特開2009−018102(JP,A)
【文献】 米国特許第04118903(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/74
A47G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延在した衝立本体と、
前記衝立本体の下端部に連設されていると共に、前記衝立本体の両側に交互に配置された少なくとも2つの水平部と、
前記衝立本体と各水平部とに跨った境界部分を切り起こすことによって形成されており、前記衝立本体に係止される係止部をそれぞれ有する少なくとも2つの切起片とを備えており、
前記衝立本体、前記少なくとも2つの水平部、および前記少なくとも2つの切起片が一枚の段ボール板に一体に形成されていることを特徴とする衝立。
【請求項2】
前記切起片が前記係止部において前記衝立本体を両側から挟持していることを特徴とする請求項1に記載の衝立。
【請求項3】
前記切起片が、前記水平部と連続した領域であって、鉛直方向に延在し且つ前記衝立本体と直交した領域を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の衝立。
【請求項4】
前記切起片の全体が、鉛直方向に延在し且つ前記衝立本体と直交していることを特徴とする請求項3に記載の衝立。
【請求項5】
前記切起片は、くの字に折り曲げられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衝立。
【請求項6】
前記係止部は、前記切起片の先端に形成された前記段ボール板の板厚と同じ幅の第1溝であり、前記第1溝内に前記衝立本体の一部が嵌め込まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の衝立。
【請求項7】
前記衝立本体には、前記切起片の前記第1溝と係合する第2溝が形成されており、前記第2溝内に前記切起片の前記第1溝の底部よりも基端側の部分が嵌め込まれていることを特徴とする請求項6に記載の衝立。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の衝立を複数用いて区画されるブースであって、
前記切起片に対応する部分に第1切欠きが形成された床板を備えていることを特徴とするブース。
【請求項9】
前記床板は、ブースの角に対応する部分に第2切欠きが形成されていることを特徴とする請求項8に記載のブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み立て式の衝立およびこの衝立を複数用いて区画されるブースに関する。
【背景技術】
【0002】
地震や台風等の災害時において被災者を一時的に避難させる際に、体育館や公民館等を避難所として利用するのが一般的である。このような避難所では広い空間を複数の人で共有することになるので、プライバシーが確保されず、被災者は過度のストレスに晒されることとなる。
【0003】
そこで、避難所の空間を区切るための組み立て式の衝立が考案されている。たとえば、特許文献1には、段ボール板で形成された衝立が開示されている。かかる衝立の下端部は、鉛直方向に延在する本体部の面と直交するように折り曲げられた支持部となっている。そして、支持部の面が床に当接するように衝立を設置することで、衝立の転倒を防ぐことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−82796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような衝立は、組み立て時に支持部の折り曲げが適正に行われなかった場合や、使用中に傷みが生じた場合に、本体部の面と支持部の面とが直交しなくなることがある。このような場合は、衝立の傾きや転倒が生じる恐れがある。また、このように避難所で使用される衝立は、組み立てや解体が容易である必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、組み立て・解体が容易であり、且つ、傾きや転倒を確実に抑制できる衝立およびこの衝立を複数用いて区画されるブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
第1の発明に係る衝立は、鉛直方向に延在した衝立本体と、前記衝立本体の下端部に連設されていると共に、前記衝立本体の両側に交互に配置された少なくとも2つの水平部と、前記衝立本体と各水平部とに跨った境界部分を切り起こすことによって形成されており、前記衝立本体に係止される係止部をそれぞれ有する少なくとも2つの切起片とを備えており、前記衝立本体、前記少なくとも2つの水平部、および前記少なくとも2つの切起片が一枚の段ボール板に一体に形成されている。
【0008】
この衝立は、衝立本体と水平部とに跨った境界部分を切り起こすことによって形成された切起片の係止部を衝立本体に係止することで、衝立本体と水平部との位置関係を固定することができる。したがって、衝立本体の面に対して水平部の面が直交する状態で、切起片により衝立本体と水平部とを固定することで、衝立の傾きや転倒を確実に抑制できる。また、一枚の段ボール板でできているので、組み立て・解体を容易に行うことができる。
【0009】
発明に係る衝立は、第1の発明に係る衝立において、前記切起片が前記係止部において前記衝立本体を両側から挟持していることが好ましい。
【0010】
この衝立では、切起片を強固に固定することができる。よって、切起片による衝立本体と水平部との固定状態を確実に維持し、衝立の傾きや転倒を抑制できる。
【0011】
第3の発明に係る衝立は、第1または第2の発明に係る衝立において、前記切起片が、前記水平部と連続した領域であって、鉛直方向に延在し且つ前記衝立本体と直交した領域を有していることが好ましい。
【0012】
この衝立では、切起片を倒れにくくすることができる。よって、切起片による衝立本体と水平部との固定状態をより確実に維持し、衝立の傾きや転倒を抑制できる。
【0013】
第4の発明に係る衝立は、第3の発明に係る衝立において、前記切起片の全体が、鉛直方向に延在し且つ前記衝立本体と直交していてもよい。
【0014】
この衝立では、切起片の構造が簡易であるので、製造・組み立て・解体が容易である。
【0015】
第5の発明に係る衝立は、第1〜第3の発明のいずれかに係る衝立において、前記切起片は、くの字に折り曲げられていてもよい。
【0016】
この衝立では、外力が切起片に作用した場合でも、切起片が倒れることがほとんどない。よって、切起片による衝立本体と水平部との固定状態をさらに確実に維持し、衝立の傾きや転倒を抑制できる。
【0017】
第6の発明に係る衝立は、第1〜第5の発明のいずれかに係る衝立において、前記係止部は、前記切起片の先端に形成された前記段ボール板の板厚と同じ幅の第1溝であり、前記第1溝内に前記衝立本体の一部が嵌め込まれていることが好ましい。
【0018】
この衝立では、簡易な構成で切起片を確実に固定することができる。
【0019】
第7の発明に係る衝立は、第6の発明に係る衝立において、前記衝立本体には、前記切起片の前記第1溝と係合する第2溝が形成されており、前記第2溝内に前記切起片の前記第1溝の底部よりも基端側の部分が嵌め込まれていることが好ましい。
【0020】
この衝立では、簡易な構成で切起片をより確実に固定することができる。
【0021】
第8の発明に係るブースは、第1〜第4の発明のいずれかに係る衝立を複数用い区画されるブースであって、前記切起片に対応する部分に第1切欠きが形成された床板を備えている。
【0022】
このブースは、ブースを構成する各衝立の傾きや転倒を確実に抑制でき、且つ、組み立て・解体を容易に行うことができる。
【0023】
第9の発明に係るブースでは、第8の発明に係るブースにおいて、前記床板は、ブースの角に対応する部分に第2切欠きが形成されていることが好ましい。
【0024】
このブースでは、ブースを解体する際に床板を外しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る衝立を示す斜視図である。
図2図1の衝立の組み立て前の状態を示す平面図である。
図3】(a)は図1の衝立の左方の切起片の拡大図であり、(b)は図1の衝立の右方の切起片の拡大図である。
図4】隣接する2つの衝立の連結を説明する図であり、(a)は連結前の状態、(b)は連結後の状態を示す。
図5】(a)は図4(b)の折り曲げ部の拡大図であり、(b)は図4(b)における2つの衝立の対向部分の下端部の拡大図である。
図6図1に示す衝立を複数用いて区画されるブースの床に敷く床板を示す図である。
図7】1つのブースに敷きつめられる床板の配置を示す図である。
図8図1に示す衝立を複数用いて区画されるブースを補強する補強部材を示す図である。
図9図8に示す補強部材の組み立て前の状態を示す平面図である。
図10図8に示す補強部材の組み立て手順を示す図であり、(a)は組み立て前の状態、(b)は2つの側壁を曲げ起した状態、(c)は残りの2つの側壁を曲げ起す状態、(b)は完成状態を示す。
図11】(a)は図1に示す衝立を複数用いて形成されるブースブロックを示す図であり、(b)は(a)に示すブースブロックに含まれる1つのブースの拡大図である。
図12図11(a)に示すブースブロックの角部を構成する衝立を示す図である。
図13図11(a)に示すブースブロックの組み立て過程を示す図であり、外壁の一部を形成した状態を示す図である。
図14図11(a)に示すブースブロックの組み立て過程を示す図であり、間仕切りを配置した状態を示す図である。
図15】本実施形態の一変形例に係る衝立を示す図である。
図16図15に示す切起片を切り起す手順を示す図であり、(a)は切り起し前の状態、(b)は先端部曲げ起した状態、(c)は基端部を曲げ起した状態、(d)は衝立本体に係止した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態にかかる衝立1およびブース10について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
本実施形態の衝立1は図11(a)、(b)に示すように、複数連結してブース10を区画できるようになっている。本実施形態においては、一方向に並んだ2つのブース10と、一方向と直交する方向に並んだ5つのブース10との合計10個のブース10を一体に形成したブースブロック100が提供される。各ブース10は、平面視において正方形状を有していると共に、衝立1と床板9とで構成されている。また、衝立1同士の連結部およびブース10の角部には、補強部材7が嵌め込まれている。
【0028】
<衝立1の全体構成>
まず、図1を参照しつつ、衝立1の全体構成について説明する。
衝立1は、図1に示すように、衝立本体3と、2つの水平部4、5とを備えている。衝立本体3は、その面が水平部4、5の面に直交するように形成されている。よって、水平部4、5が床面に当接するように衝立1を設置することで、衝立本体3は鉛直方向に延在する。2つの水平部4、5は、衝立本体3の下端部に連設されており、衝立本体3の両側(図1においては紙面手前側と奥側)にそれぞれ配置されている。なお、以下の説明において、水平であり且つ衝立本体3の面と平行な方向を「左右方向」と称し、水平であり且つ衝立本体3の面に直交する方向を「前後方向」と称する。
【0029】
ここで、衝立1の組み立て前の状態を示す図2をさらに参照する。
図2に示すように、組み立て前の衝立1は、略四角形状を有する一枚の段ボール板である。衝立本体3の左右方向に関する中央位置には、上下方向に延びる折り曲げ線11が形成されている。より詳細には、折り曲げ線11が形成されている位置には、上下方向に延びる切込線11aが形成されている。切込線11aは、3か所の連結部11bを除いて、衝立本体3の上端から下端まで延びている。これにより、衝立本体3は、折り曲げ線11において折り曲げることができるようになっている。
【0030】
水平部4は、図2に示す衝立本体3の右側半分の下端部に、左右方向に延びる折り曲げ線15を介して連設されている。水平部4は、その左端の左右方向に関する位置が衝立本体3の中央位置とほぼ一致しており、衝立本体3の右方の縁近傍まで延びている。一方、水平部5は、衝立本体3の左側半分の下端部に、折り曲げ線15を介して連設されている。水平部5は、その右端の左右方向に関する位置が衝立本体3の中央位置とほぼ一致しており、衝立本体3の左方の縁近傍まで延びている。なお、各切起片6の左右両側における折り曲げ線15が形成された位置には、切込線15aがそれぞれ形成されている。これにより、折り曲げ線15において水平部4、5を折り曲げることができるようになっている。
【0031】
衝立本体3と各水平部4、5の左右方向中央部とに跨った境界部分には、切り起こすことができる切起片6が形成されている。ここで、衝立本体3と水平部4との間に形成された切起片6について、切り起し前の状態(衝立1の組み立て前の状態)で説明する。なお、衝立本体3と水平部5との間に形成された切起片6は、衝立本体3と水平部4との間に形成された切起片6と左右対称であるので、その詳細な説明は省略する。
【0032】
衝立本体3と水平部4との間に形成された切起片6は図2に示すように、左側に膨らんだ略円弧形状を有しており衝立本体3と水平部4とに跨る切り込みと、この円弧の上端から衝立本体3の下端まで上下方向に延びる切り込みとを形成することで構成されている。すなわち切起片6は、切り起し前の状態において略逆D字形状を有していると共に、水平部4と連続している。切起片6と水平部4との境界部分には、上下方向(衝立1組み立て状態で前後方向)に延びる折り曲げ線13が形成されており、この折り曲げ線13に沿って折り曲げることで切起片6を切り起こすことができるようになっている。
【0033】
切起片6の膨らみの先端には、左右方向(衝立1組み立て状態で鉛直方向)に延びる溝61が形成されている。後で詳述するように、この溝61は、切起片6を切り起した際に衝立本体3に係止される係止部として機能する。溝61の幅は、衝立1を構成する段ボール板の板厚とほぼ同じである。また、切起片6の右上端部には、上方に延びる突出部が形成されている。この突出部により、切起片6を切り起した際に、衝立本体3に鉛直方向に延びる溝31が形成される。溝31の幅も、衝立1を構成する段ボール板の板厚とほぼ同じである。
【0034】
切起片6は図3(a)、(b)に示すように、その全体が鉛直方向に延在し且つ衝立本体3と直交するように切り起される。このとき、衝立本体3に形成された溝31内に、切起片6の溝61の底部よりも基端側(下側)の部分が嵌め込まれる。すなわち、切起片6は、溝61を衝立本体3に係止することで衝立本体3を両側から挟持する。本実施形態では、溝31の底部と溝61の底部とが接触している。
【0035】
<衝立1の連結構造にかかる構成>
次に、衝立1の連結構造にかかる構成について説明する。衝立1は、その右側の縁部と左側の縁部とで構成が異なっており、左右方向の両縁部において隣接する衝立1とそれぞれ連結可能となっている。
【0036】
衝立本体3の左右両縁部には、切欠き32a、32bがそれぞれ形成されている。切欠き32a、32bは、衝立本体3の鉛直方向略中央に位置しており、外側に向かって開いた略V字形状を有している。より詳細には、V字形状の底は鋭角ではなく直線状になっている。図2に示すように、衝立本体3の切欠き32a、32bよりも上方部分の側縁は、切欠き32a、32bよりも下方部分の側縁よりも距離L1だけ外側に位置している。すなわち、衝立本体3の幅(左右方向の長さ)は、切欠き32a、32bよりも上の部分が、切欠き32a、32bよりも下の部分に比べて広くなっている。なお、以下の説明において、図2の衝立本体3の右方の縁部に形成された切欠き32aよりも上の部分を「第1部分35a」、切欠き32aよりも下の部分を「第2部分36a」と称し、衝立本体3の左方の縁部に形成された切欠き32bよりも上の部分を「第1部分35b」、切欠き32bよりも下の部分を「第2部分36b」と称する。
【0037】
隣接する2つの衝立1は、切欠き32a、32b同士を係合させて連結される。すなわち、図4(a)、(b)に示すように、左右方向に並んだ2つの衝立を連結する場合には、左方に位置する衝立1の右側の縁部に形成された切欠き32aと、右方に位置する衝立1の左側の縁部に形成された切欠き32bとを係合させる。このとき、左方に位置する衝立1の第1部分35aが、右方に位置する衝立1の第1部分35bの前方の面と対向し、左方に位置する衝立1の第2部分36aが、右方に位置する衝立1の第2部分36bの後方の面と対向するように、衝立本体3の側縁部同士が重なり合う。以下の説明において、衝立本体3の左右の両縁部において隣接する衝立1の衝立本体3と重なり合う部分を「対向部分」と称する。
【0038】
ここで、図4(a)、(b)に示すように、左方の衝立1においては、右方の衝立1に最も近い水平部4が、この衝立1の第2部分36aから右方の衝立1の第2部分36bの後方の面に向かう方向(第1対向方向)に延びている。つまり、水平部4は前方に折り曲げられている。また、右方の衝立1においては、左方の衝立1に最も近い水平部5が、第1対向方向と反対の第2対向方向に延びている。つまり、水平部5は後方に折り曲げられている。
【0039】
衝立本体3の左右の両縁部における対向部分の上縁部には、折り曲げ部33a、33bがそれぞれ形成されている。より詳細には、図2に示すように、右方の折り曲げ部33aは衝立本体3の右縁に形成されており、左側の折り曲げ部33bは衝立本体3の左縁よりも少し内側に形成されている。折り曲げ部33a、33bは、上方に広がった台形形状を有しており、左右方向に延びる折り曲げ線14に沿って折り曲げ可能となっている。
【0040】
図5(a)に示すように、左右方向に隣接する2つの衝立1のうち、左方に位置する衝立1の右縁部に形成された折り曲げ部33aと、右方に位置する衝立1の左縁部に形成された折り曲げ部33bとは、対向するようになっている。そして、これら2つの折り曲げ部33a、33bは、互いに重なり合った状態で折り曲げられる。
【0041】
図2に示すように、水平部4の右端は、衝立本体3の右方の第2部分36の右縁よりも距離L2だけ左方に位置している。距離L2は、切欠き32a、32bよりも下の対向部分の幅D(図4(b)参照)より少し大きい。すなわち、図5(b)のように左右に並んだ2つの衝立1のうち、右方の衝立1の左方の側縁部における対向部分の下方には、左方の衝立1の水平部4は設けられていない。
【0042】
衝立本体3における右方の対向部分の下端部の角部には、切欠き37が形成されている。切欠き37は、対向部分の下端部に第2部分36aを部分的に残存させる深さを有する。切欠き37の左右方向に沿う長さL3は、距離L2よりも小さい。また、切欠き37の鉛直方向に沿う長さL4は、段ボール板の板厚よりもやや大きい。衝立本体3の左方の縁部と水平部5とには、両者に跨る切欠き38が形成されている。そして、図5(b)のように左右方向に隣接し互いに連結され2つの衝立1は、左方の衝立1において切欠き37によって側縁部の下端部に残存した第2部分36aが、右方の衝立1の切欠き38内に配置される。また、左方の衝立1の右方の側縁部における対向部分の下方には、右方の衝立1の水平部5が配置されている。
【0043】
<床板9の構成>
次に、図6、7をさらに参照しつつ、床板9の構成について説明する。
床板9は、略正方形状を有する段ボール板で構成されており、互いに連結された複数の衝立1によって正方形状に囲われたブース10の床に敷きつめられるものである。略正方形形状の床板9の1つの角部(図6において左上方の角部)には、切欠き91が形成されている。切欠き91が形成されている角部の両側の縁(図6において上方の縁および左方の縁)には、2つの切欠き92がそれぞれ形成されている。
【0044】
図7に示すように、1つのブース10には、4枚の床板9が敷きつめられる。4枚の床板9は、切欠き91が形成された角部がブース10の角となるように配置される。図11(b)に示すように、衝立1に形成された切起片6は、床板9の切欠き92内に配置される。
【0045】
<補強部材7の構成>
続いて、図8、9を参照しつつ、補強部材7の構成について説明する。
補強部材7は、一枚の段ボール板を折り曲げることによって形成されるものであり、図8に示すように有底箱形状を有している。補強部材7は、正方形状を有する上壁71と、2つの側壁72と、2つの側壁74とで構成されている。合計4つの側壁72、74は、上壁71の四辺にそれぞれ連設されていると共に、上壁71と直交する直交方向(鉛直方向)に延びている。2つの側壁72は、図8において両矢印Aで示す方向に関して互いに対向している。2つの側壁74は、図8において両矢印Bで示す方向(両矢印Aで示す方向と直交する方向)に関して互いに対向している。各側壁72、74の幅方向(鉛直方向と直交する方向)中央部分には、その下辺から上壁71に向けて鉛直方向に延びる溝85が形成されている。
【0046】
図9に示すように、正方形状を有する上壁71の四辺は折り曲げ線81で構成されており、一対の側壁72および一対の側壁74は、この折り曲げ線81を介してそれぞれ上壁71に連設されている。一対の側壁72の両側には、組み立て状態で鉛直方向に延びる折り曲げ線82が形成されている。そして、各側壁72の両側には、折り曲げ線82を介して耳部74cがそれぞれ連設されている。本実施形態においては、耳部74cの幅(組み立て状態において鉛直方向と直交する方向に沿う長さ)は、側壁74の幅のほぼ半分である。耳部74cの幅は、側壁74の幅の半分以下であることが好ましい。
【0047】
一対の側壁74は、外壁部74a、内壁部74b、および上述の耳部74cとからそれぞれなる。外壁部74aは、上壁71の一辺に連設されている。内壁部74bは、溝85の延在方向(組み立て状態で鉛直方向)と直交する方向に延びる折り曲げ線83を介して外壁部74aに連設されている。なお、図9において外壁部74aと内壁部74bとに跨って形成されている溝85aは、組み立てた際に溝85となる。本実施形態においては、外壁部74aと内壁部74bとの組み立て状態で鉛直方向に沿う長さは、ほぼ等しい。内壁部74bの鉛直方向の長さは、外壁部74aの長さ以下であればよい。
【0048】
側壁74は、折り曲げ線83において外壁部74aに対して内壁部74bを折り曲げ、耳部74cを外壁部74aと内壁部74bとによって挟み込むことで形成される。ここで、内壁部74bの先端には突起86が形成されており、上壁71において外壁部74aが連設されている折り曲げ線81の近傍には、貫通孔87が形成されている。折り曲げ線83において折り曲げられた内壁部74bは、突起86を貫通孔87に係止することで固定される。
【0049】
ここで、図10をさらに参照しつつ、補強部材7の組み立て手順について説明する。
まず、図10(a)に示すような段ボール板を用意し、折り曲げ線81に沿って上壁71に対して側壁72を90°折り曲げ起す共に、折り曲げ線82に沿って側壁72に対して耳部74cを90°内側に折り曲げる。このとき、図10(b)に示すように、一対の側壁72の一側にそれぞれ連設された2つ耳部74cは、折り曲げ線81において側壁74を構成する外壁部74aが連設される部分の上方に位置する。そして、2つの耳部74cの間には、側壁74の溝85の一部となる溝85bが形成されている。
【0050】
次に、図10(c)に示すように、折り曲げ線81に沿って上壁71に対して側壁74の外壁部74aを90°折り曲げ起すと共に、折り曲げ線83に沿って外壁部74aに対して内壁部74bを180°内側に折り曲げる。このとき、耳部74cが外壁部74aと内壁部74bとによって挟み込まれる。そして、外壁部74aと内壁部74bとに跨って形成された溝85aと、2つの耳部74cの間に形成された溝85bとによって、溝85が形成される。さらに、内壁部74bに形成された突起86を貫通孔87に嵌め込み、内壁部74bを固定する。これにより、図10(d)に示すように、有底箱形状を有する補強部材7が完成する。
【0051】
<ブースブロック100の組み立て手順>
次に、ブースブロック100を組み立てる際の手順について説明する。上述のように、本実施形態のブースブロック100は、一方向(図11(a)において両矢印Cで示す方向であり、以降、単に「C方向」と称する)に並んだ2つのブース10と、C方向に直交する方向(図11(a)において両矢印Dで示す方向であり、以降、単に「D方向」と称する)に並んだ5つのブース10との合計10個のブース10を一体に形成したものである。
【0052】
まず、図2に示すような段ボール板を用意し、折り曲げ線15に沿って衝立本体3に対して水平部4、5をそれぞれ90°折り曲げる。水平部4、5は互いに反対方向に折り曲げられる。また、このとき、切起片6を折り曲げ線13に沿って90°曲げ起し、切起片6の溝61を衝立本体3の溝31に嵌め込む。これにより、衝立本体3の面と水平部4、5の面とがほぼ直交する状態で衝立本体3と水平部4、5と位置関係が固定され、図1に示すような衝立1が完成する。
【0053】
上述のような手順で54個の衝立1を組み立てる。そして、そのうちの4枚の衝立1については、図12に示すように、上下方向に延びる折り曲げ線11に沿って90°折り曲げる。続いて、図13に示すように、ブースブロック100の外壁の一部を形成する。まず、ブースブロック100の角部として90°に折り曲げた2枚の衝立1を用意し、これら2枚の衝立1の間に3枚の折り曲げられていないフラットな衝立1がC方向に沿って配置されるように、これら5枚の衝立1を連結する。このとき、図4(a)、(b)に示すように、互いに隣接する衝立1は、切欠き32a、32b同士が係合されると共に折り曲げ部33a、33bが折り曲げられる。これにより、ブースブロック100の外壁のうちC方向に沿う1つの外壁が完成する。さらに、D方向に沿う1つの外壁を形成するために、9枚のフラットな衝立1と1枚の折り曲げられた衝立1とを連結する。
【0054】
次に、図14に示すように、2つの外壁で囲われた領域内を10個のブース10に区切る間仕切りを組み立てる。すなわち、まず10枚の衝立1をD方向に沿って並べ、互いに連結する。そして、これら10枚の連結された衝立1の列の、2番目と3番目の衝立1の連結部、4番目と5番目の衝立1の連結部、6番目と7番目の衝立1の連結部、および8番目と9番目の衝立1の連結部の両側に、C方向に隣接する互いに接続された2枚の衝立1をそれぞれ配置する。
【0055】
続いて、図11(a)に示すように、13枚の衝立1を用いて、ブースブロック100の残りの2つの外壁を完成させる。これにより、ブースブロック100の4つの外壁に囲まれた領域が、10個のブース10に区切られる。各ブース10は、平面視において一辺の長さが衝立1の2枚分の長さを有する正方形状を有している。そして、各ブース10に図6に示すような床板9を敷く。このとき、図7に示すように、1つのブース10内には、切欠き91が形成された角部がブース10の角となり、衝立1の切起片6が切欠き92内に配置されるように、4枚の床板9が敷き詰められる。さらに、衝立1同士の連結部の上端部、各ブース10の角部の上端部、およびブースブロック100のC方向に延びる外壁を構成する衝立1のC方向中央の上端部に、補強部材7を嵌め込み、ブースブロック100を完成する。各ブース10の出入りにおいては、各ブース10の4つの外壁の内、隣り合うブース10の外壁を兼用しない外壁を構成する衝立1同士の連結を解除して、連結を解除した衝立1を扉とし出入りすればよい。
【0056】
以上のように、本実施形態の衝立1は、鉛直方向に延在した衝立本体3と、衝立本体3の下端部に連設されていると共に、衝立本体3の両側にそれぞれ配置された2つの水平部4、5と、衝立本体3と各水平部4、5とに跨った境界部分を切り起こすことによって形成された2つの切起片6とを備えている。切起片6には、衝立本体3に係止される係止部として機能する溝61が形成されている。そして、これら衝立本体3、水平部4、5、および切起片6は、一枚の段ボール板に一体に形成されている。したがって、衝立本体3と各水平部4、5とに跨った境界部分を切り起こすことによって形成された2つの切起片6の溝61を衝立本体3に係止することで、衝立本体3と水平部4、5との位置関係を固定することができる。よって、衝立本体3の面に対して水平部4、5の面が直交する状態で、切起片6により衝立本体3と水平部4、5とを固定することで、衝立1の傾きや転倒を確実に抑制できる。また、一枚の段ボール板でできているので、組み立て・解体を容易に行うことができる。
【0057】
さらに、本実施形態の衝立1の切起片6は、溝61を衝立本体3に係止することで、衝立本体3を両側から挟持する。したがって、切起片6を強固に固定することができる。よって、切起片6による衝立本体3と水平部4、5との固定状態を確実に維持し、衝立1の傾きや転倒を抑制できる。
【0058】
また、本実施形態の衝立1の切起片6は、水平部4、5と連続していると共に、その全体が鉛直方向に延在し且つ衝立本体3と直交している。したがって、切起片6を倒れにくくすることができる。よって、切起片6による衝立本体3と水平部4、5との固定状態をより確実に維持し、衝立の傾きや転倒を抑制できる。さらに、切起片6の一部のみが鉛直方向に延在し且つ衝立本体3と直交している場合に比べて、構造が簡易であるので、製造・組み立て・解体が容易である。
【0059】
加えて、本実施形態の衝立1では、溝61は、切起片6の先端に形成されており且つ段ボール板の板厚とほぼ同じ幅を有している。そして、溝61内に衝立本体3の一部が嵌め込まれる。したがって、簡易な構成で切起片6を確実に固定することができる。
【0060】
また、本実施形態の衝立1では、衝立本体3には、切起片6の溝61と係合する溝31が形成されており、溝31内に切起片6の溝61の底部よりも基端側の部分が嵌め込まれている。したがって、簡易な構成で切起片をより確実に固定することができる。
【0061】
さらに、本実施形態のブース10は、衝立1を複数用い区画されるものであり、切起片6に対応する部分に切欠き92が形成された床板9を備えている。したがって、ブース10を構成する各衝立1の傾きや転倒を確実に抑制でき、且つ、組み立て・解体を容易に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態のブース10では、床板9は、ブース10の角に対応する部分に切欠き91が形成されている。したがって、ブースを解体する際に床板を外しやすくすることができる。
【0063】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。
【0064】
例えば、上述の実施形態では、切起片6の全体が鉛直方向に延在し且つ衝立本体3と直交している場合について説明したが、切起片6の形態はこれに限定されるものではない。ここで、切起片6の一変形例について、図15、16を用いて説明する。本変形例の切起片106は、その一部が鉛直方向に延在し且つ衝立本体3と直交する。
【0065】
図15に示すように、切り起こす前の本変形例の切起片106には、その左右方向の略中央部分に上下方向(組み立て状態で前後方向)に延びる折り曲げ線165が形成されており、くの字に折り曲げることができるようになっている。また、切起片106の先端に形成された溝161が嵌め込まれる衝立本体3の溝131は、左右方向に延びている。この切起片106を切り起こす際には、衝立本体3に対して水平部4、5を折り曲げた状態(図16(a)の状態)で、まず図16(b)に示すように、折り曲げ線165に沿って切起片106の先端部分を90°曲げ起こす。次に、図16(c)に示すように、折り曲げ線13に沿って切起片106の基端部分を曲げ起こす。最後に、図16(d)に示すように、切起片106の溝161を衝立本体3の溝131に嵌め込み、衝立本体3に係止する。これにより、切起片106の先端部分は水平方向に延在し且つ衝立本体3と直交し、基端部分は鉛直方向に延在し且つ衝立本体3と直交する。
本変形例の切起片106は、折り曲げ線165に沿ってくの字に折り曲げられているので、外力が作用した場合でも倒れることがほとんどない。
【0066】
また、切起片6は、鉛直方向に延在し且つ衝立本体3な領域を有していなくてもよい。
【0067】
さらに、上述の実施形態では、衝立本体3の下端部に2つの水平部4、5が連設されている場合について説明したが、3つ以上の水平部が衝立本体3の下端部に連設されていてもよい。この場合、複数の水平部は、衝立本体3の両側に交互に配置される。
【0068】
加えて、上述の実施形態では、2つの切起片6を備えている場合について説明したが、3つ以上の切起片6を備えていてもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、切起片6に形成された溝61に衝立本体3の一部を嵌め込むことで衝立本体3を両側から挟持し、切起片6を係止する場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、たとえば、切起片6の先端を衝立本体3の下端に当接させることで切起片6を係止してもよい。
【0070】
また、上述の実施形態では、衝立本体3に、切起片6に形成された溝61に係合する溝31が形成されている場合について説明したが、衝立本体3の溝31は形成されていなくてもよい。
【0071】
さらに、上述の実施形態では、ブース10の床板9におけるブース10の角に対応する部分に切欠き91が形成されている場合について説明したが、切欠き91はなくてもよい。
【0072】
加えて、上述の実施形態では、複数の衝立1を用いて、一方向に2つ、一方向と直交する方向5つ並んだ合計10個のブース10が一体に形成されたブースブロック100を構成する場合について説明したが、ブースブロック100の構成はこれに限定されるものではない。ブースブロック100において2つの方向に配列されるブース10の個数は、任意に変更可能である。また、複数の衝立1を用いて、1つの独立したブース10を形成してもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では、各ブース10が、平面視において一辺の長さが衝立1の2枚分の長さを有する正方形状を有している場合について説明したが、ブース10の形状はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0074】
1 衝立
3 衝立本体
4、5 水平部
6、106 切起片
9 床板
10 ブース
31、131 溝(第2溝)
35 第1部分
36 第2部分
61、161 溝(係止部、第1溝)
91 切欠き(第2切欠き)
92 切欠き(第1切欠き)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16