(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書、及び特許請求の範囲に記載された化学式及び一般式における立体配置は特に言及しない場合には、絶対配置を表す。
【0018】
(一般式(1)で表される化合物)
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される。
【化14】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基を表す。
【0019】
前記R
1における水酸基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Greenら、Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition,1999,John Wiley & Sons, Inc.などの成書を参照することができる。
前記水酸基の保護基としては、例えば、アラルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシアルキル基、アルカノイル基、アリールカルボニル基、トリフェニルメチル基(トリチル基)、パラメトキシフェニル基、tert−ブトキシカルボニル基などが挙げられる。前記水酸基の保護基におけるアリール環(ベンゼン環など)が置換基を有する場合には、前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−アミノベンジル基などが挙げられる。
前記トリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。
前記アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基などが挙げられる。
前記アルカノイル基としては、例えば、アセチル基、トリフルオロアセチル基などが挙げられる。
前記アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、置換フェニルカルボニル基などが挙げられる。
これらの中でも、前記R
1は、[(4R,6R)−6−アミノエチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート誘導体を合成する際の脱保護の容易性の点から、トリフェニルメチル基、tert−ブチルジメチルシリル基が好ましい。
【0020】
本明細書の以下に記載のR
1における水酸基の保護基の例示は、特に明示のない限り、前記水酸基の保護基の例示と同じものが挙げられる。好ましい態様も同様である。
【0021】
前記R
2及び前記R
3におけるアミノ基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トシル基、メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、アリル基、トリイソプロピルシリル基、ベンジル基、メトキシカルボニル基、p−メトキシベンジル基、p−メトキシフェニル基などが挙げられる。
これらの中でも、前記R
2及び前記R
3は、[(4R,6R)−6−アミノエチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート誘導体を合成する際の脱保護の容易性の点から、アリル基、ベンジル基が好ましい。
【0022】
本明細書の以下に記載のR
2及びR
3におけるアミノ基の保護基の例示は、特に明示のない限り、前記アミノ基の保護基の例示と同じものが挙げられる。好ましい態様も同様である。
【0023】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物は、立体異性体の混合物として得られる場合もあるが、この場合も本発明の範囲に包含される。
【0024】
前記一般式(1)で表される化合物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の一般式(1)で表される化合物の製造方法が好ましい。
【0025】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物は、アトルバスタチン合成の有用な中間体である、[(4R,6R)−6−アミノエチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート誘導体を合成するための物質、更にはアトルバスタチンを合成するための物質として有用である。
【0026】
(一般式(2)で表される化合物)
本発明の化合物は、下記一般式(2)で表される。
【化15】
ただし、前記一般式(2)中、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
4は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0027】
前記R
2及び前記R
3におけるアミノ基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トシル基、メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、アリル基、トリイソプロピルシリル基、ベンジル基、メトキシカルボニル基、p−メトキシベンジル基、p−メトキシフェニル基などが挙げられる。
これらの中でも、前記R
2及び前記R
3は、[(4R,6R)−6−アミノエチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート誘導体を合成する際の脱保護の容易性の点から、アリル基、ベンジル基が好ましい。
【0028】
前記R
4におけるカルボキシル基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Greenら、Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition,1999,John Wiley & Sons, Inc.などの成書を参照することができる。
前記カルボキシル基の保護基としては、例えば、アルキル基、トリアルキルシリル基などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
前記トリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられる。
これらの中でも、前記R
4は、酸性条件でも脱保護が可能である点から、tert−ブチル基が好ましい。
【0029】
本明細書の以下に記載のR
4におけるカルボキシル基の保護基の例示は、特に明示のない限り、前記カルボキシル基の保護基の例示と同じものが挙げられる。好ましい態様も同様である。
【0030】
前記一般式(2)で表される化合物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記一般式(2)で表される化合物の製造方法の一例は、後述する本発明の[(4R,6R)−6−アミノエチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート誘導体の製造方法において説明する。
【0031】
本発明の前記一般式(2)で表される化合物は、アトルバスタチン合成の有用な中間体である、[(4R,6R)−6−アミノエチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート誘導体を合成するための物質、更にはアトルバスタチンを合成するための物質として有用である。
【0032】
(一般式(1)で表される化合物の製造方法)
本発明の化合物の製造方法は、下記一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、反応工程と、変換工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【化16】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0033】
<反応工程>
前記反応工程としては、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物とを反応させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、不斉配位子を含有する触媒を用いることが好ましく、不斉配位子を含有する銅錯体を用いることがより好ましい。前記反応工程において、前記不斉配位子を含有する銅錯体を触媒として用いることにより、安価な銅を触媒源に用いて前記一般式(1)で表される化合物を製造することができる。
【化17】
ただし、前記一般式(3)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【化18】
ただし、前記一般式(4)中、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0034】
前記不斉配位子を含有する銅錯体における不斉配位子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エナンチオ選択性が優れる点で、光学活性ホスフィン配位子が好ましい。即ち前記不斉配位子を含有する銅錯体としては、銅−光学活性ホスフィン錯体が好ましい。前記銅−光学活性ホスフィン錯体は、銅と光学活性ホスフィン配位子の錯体である。
前記光学活性ホスフィン配位子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シクロヘキシルアニシルメチルホスフィン(CAMP)、1,2−ビス(アニシルフェニルホスフィノ)エタン(DIPAMP)、1,2−ビス(アルキルメチルホスフィノ)エタン(BisP*)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(CHIRAPHOS)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(PROPHOS)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5−ノルボルネン(NORPHOS)、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DIOP)、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(CYCPHOS)、1−置換−3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ピロリジン(DEGPHOS)、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(SKEWPHOS)、1,2−ビス(置換ホスホラノ)ベンゼン(DuPHOS)、1,2−ビス(置換ホスホラノ)エタン(BPE)、1−(置換ホスホラノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(UCAP−Ph)、1−(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−(置換ホスホラノ)ベンゼン(UCAP−DM)、1−(置換ホスホラノ)−2−(ビス(3,5−ジ(tert−ブチル)−4−メトキシフェニル)ホスフィノ)ベンゼン(UCAP−DTBM)、1−(置換ホスホラノ)−2−(ジ−ナフタレン−1−イル−ホスフィノ)ベンゼン(UCAP−(1−Nap))、1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン(BPPFA)、1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアルコール(BPPFOH)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ジシクロペンタン(BICP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−(5,5’,6,6’,7,7’,8,8’,−オクタヒドロビナフチル)(H
8−BINAP)、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(TOL−BINAP)、2,2’−ビス(ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(DM−BINAP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル(BICHEP)、((5,6),(5’,6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)(ビスジフェニルホスフィン)(SEGPHOS)、((5,6),(5’,6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)(DM−SEGPHOS)、((5,6),(5’,6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)(ビス(3,5−ジ(tert−ブチル)−4−メトキシフェニル)ホスフィン)(DTBM−SEGPHOS)などが挙げられる。
これらの中でも、前記光学活性ホスフィン配位子は、エナンチオ選択性がより優れる点から、(R,R)−2,5置換−BPEが好ましく、(R,R)−Ph−BPEがより好ましい。
なお、(R,R)−Ph−BPEは、以下の構造式で表される化合物である。
【化19】
ただし、「Ph」はフェニル基を表す。
【0035】
なお、チオアミドとアルデヒドとのアルドール反応においては、アルデヒドのα位に酸性の水素原子がある場合には、通常の触媒においては、量論的にチオアミドを活性化するため、多量の触媒が必要である。
しかし、前記銅−光学活性ホスフィン錯体を用いることにより、チオアミド(前記一般式(4)で表される化合物)を用いるアルドール反応において、アルデヒドのα位に酸性の水素原子がある場合にも、触媒的にチオアミドを活性化し(言い換えれば、量論的に必要とされる量を必要とせず)、前記一般式(3)で表される化合物と反応させることができる。
そのため、前記銅−光学活性ホスフィン錯体は、触媒量の使用でよい。前記触媒量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(4)で表される化合物に対して、1mol%〜15mol%が好ましい。
【0036】
前記反応工程における前記一般式(3)で表される化合物と前記一般式(4)で表される化合物との割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(3)で表される化合物に対して、前記一般式(4)で表される化合物が1.0当量〜1.5当量であることが好ましい。
【0037】
前記反応工程において使用される溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記反応工程における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、−60℃〜−30℃が好ましい。
前記反応工程における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5時間〜50時間が好ましい。
【0039】
前記反応工程で得られる化合物としては、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【化20】
ただし、前記一般式(6)中、R
1、R
2及びR
3は、前記一般式(1)におけるR
1、R
2及びR
3とそれぞれ同じである。
【0040】
前記一般式(6)で表される化合物としては、例えば、以下の構造式で表される化合物などが挙げられる。
【化21】
ただし、前記構造式中、「Tr」は、トリフェニルメチル基(トリチル基)を表す。「PMB」は、p−メトキシベンジル基を表す。「TBS」は、tert−ブチルジメチルシリル基を表す。「Boc」は、tert−ブトキシカルボニル基を表す。「Bn」は、ベンジル基を表す。「PMP」は、p−メトキシフェニル基を表す。
【0041】
なお、本発明の製造方法においては、前記反応工程において得られる前記化合物は、前記反応工程において精製して単離することなく前記変換工程に用いることができる。
【0042】
<変換工程>
前記変換工程としては、前記反応工程により得られた前記化合物を前記一般式(1)で表される化合物に変換する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0043】
前記変換工程としては、例えば、前記一般式(6)で表される化合物のチオアミド基をアミノ基に変換(還元)する工程であることが好ましい。
【0044】
前記変換工程においては、還元剤を用いることが好ましい。前記還元剤としては、例えば、LiAlH
4、NaBH
4などが挙げられる。
前記還元剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(6)で表される化合物に対して3.0当量〜6.0当量が好ましい。
【0045】
前記変換工程における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記還元剤の添加を−80℃〜−60℃で行った後、0℃〜25℃で反応させることが好ましい。
前記変換工程における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30分間〜2時間が好ましい。
【0046】
前記製造方法により得られる前記一般式(1)で表される化合物は、立体異性体の混合物として得られる場合もあるが、この場合も本発明の範囲に包含される。
【0047】
本発明の製造方法により得られる前記一般式(1)で表される化合物は、アトルバスタチン合成の有用な中間体である、[(4R,6R)−6−アミノエチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート誘導体を合成するための物質、更にはアトルバスタチンを合成するための物質として有用である。
【0048】
(アセテート誘導体の製造方法)
本発明のアセテート誘導体の製造方法は、下記一般式(5)で表される[(4R,6R)−6−アミノエチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート誘導体の製造方法であって、変換工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0049】
<変換工程>
前記変換工程としては、下記一般式(1)で表される化合物を下記一般式(5)で表されるアセテート誘導体に変換する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【化22】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【化23】
ただし、前記一般式(5)中、R
4は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立に、炭素数1〜6の炭化水素基及び水素原子のいずれかを表す(なお、前記R
5及び前記R
6は、一緒になって環構造を形成していてもよい)。
【0050】
前記炭素数1〜6の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、フェニル基などが挙げられる。
前記R
5及び前記R
6が一緒になって形成される環構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族炭化水素環などが挙げられる。前記脂肪族炭化水素環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環などが挙げられる。
【0051】
前記変換工程としては、例えば、前記一般式(1)で表される化合物を、下記一般式(2)で表される化合物へ変換する工程(工程(I))、及び下記一般式(2)で表される化合物を前記一般式(5)で表されるアセテート誘導体へ変換する工程(工程(II))をこの順で行う工程などが挙げられる。
【0052】
−工程(I)−
前記工程(I)としては、前記一般式(1)で表される化合物を下記一般式(2)で表される化合物へ変換する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【化24】
ただし、前記一般式(2)中、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
4は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0053】
前記工程(I)としては、例えば、下記反応式(1)に示すような、前記一般式(1)で表される化合物においてR
1を水素原子にした化合物(下記一般式(1−1)で表される化合物)を用い、不飽和エステルを形成する反応を行う工程などが挙げられる。
【化25】
ただし、前記反応式(1)において、「Ph」は、フェニル基を表す。
前記一般式(1−1)におけるR
2及びR
3は、前記一般式(1)におけるR
2及びR
3とそれぞれ同じである。
【0054】
前記反応式(1)においては、二酸化マンガン及びマンガン酸バリウムの少なくともいずれかを用いることが好ましい。前記反応式(1)における二酸化マンガン及びマンガン酸バリウムの使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(1−1)で表される化合物に対して5当量〜20当量が好ましい。
【0055】
前記反応式(1)における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃〜120℃が好ましい。
前記反応式(1)における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10時間〜30時間が好ましい。
【0056】
−工程(II)−
前記工程(II)としては、前記一般式(2)で表される化合物を前記一般式(5)で表されるアセテート誘導体へ変換する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0057】
前記工程(II)としては、例えば、下記反応式(2)に示すような、分子内オキシマイケル反応を利用したsyn−1,3−ジオールの合成、及びアミノ基の保護基の脱保護を含む工程などが挙げられる。
【化26】
ただし、前記反応式(2)中、R
5は、炭素数1〜6の炭化水素基を表す。
前記炭素数1〜6の炭化水素基としては、例えば、フェニル基などが挙げられる。
【0058】
前記反応式(2)においては、まず、アルデヒド(R
5CHO)が、前記一般式(2)の水酸基と反応してヘミアセタールを生成する。そして、ヘミアセタールの水酸基と、α,β−不飽和カルボニルの不飽和結合との分子内オキシマイケル反応により、syn−1,3−ジオールが合成される。
【0059】
前記反応式(2)における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子内オキシマイケル反応を利用したsyn−1,3−ジオールの合成においては、−20℃〜10℃が好ましい。
前記反応式(2)における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子内オキシマイケル反応を利用したsyn−1,3−ジオールの合成においては、30分間〜5時間が好ましい。
【0060】
前記工程(II)において、前記NR
2R
3をNH
2に変換する、即ち、アミノ基の保護基を脱保護する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラジウム触媒を用いる方法などが挙げられる。
【0061】
本発明のアセテート誘導体の製造方法は、アトルバスタチンの製造に有用な[(4R,6R)−6−アミノエチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート誘導体を効率よく安価に製造することができる。
【0062】
(アトルバスタチンの製造方法)
本発明のアトルバスタチンの製造方法は、変換工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0063】
本発明においてアトルバスタチンとは、アトルバスタチン((3R,5R)−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4−フェニルカルバモイル−1H−ピロル−1−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプタン酸)に加え、その製薬学的に許容される塩を包含する。
【0064】
前記塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリアルキルアミン塩等の有機塩基塩などが挙げられる。
前記アトルバスタチンとしては、アトルバスタチンのアルカリ土類金属塩が好ましく、アトルバスタチンカルシウムがより好ましい。
【0065】
<変換工程>
前記変換工程としては、下記一般式(1)で表される化合物を下記一般式(5)で表されるアセテート誘導体に変換する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記アセテート誘導体の製造方法に記載した変換工程などが挙げられる。
【化27】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【化28】
ただし、前記一般式(5)中、R
4は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立に、炭素数1〜6の炭化水素基及び水素原子のいずれかを表す(なお、前記R
5及び前記R
6は、一緒になって環構造を形成していてもよい)。
【0066】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、例えば、前記一般式(5)で表されるアセテート誘導体から、アトルバスタチン(特にアトルバスタチンカルシウム)を製造する工程が挙げられる。
【0068】
前記一般式(5)で表されるアセテート誘導体、即ち[(4R,6R)−6−アミノエチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート誘導体から、アトルバスタチンカルシウムを製造する工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Kelvin L.Baumann,et al.,Tetrahedron Letters,Vol.33,No.17,pp.2283−2284,1992に記載の方法などが挙げられる。
【0069】
本発明のアトルバスタチンの製造方法は、アトルバスタチンを効率よく且つ安価に製造することができる。
【0070】
(不斉配位子の回収方法)
本発明の不斉配位子の回収方法は、アトルバスタチンの製造における触媒に用いる不斉配位子の回収方法であって、反応工程と、変換工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0071】
<反応工程>
前記反応工程としては、下記一般式(3)で表される化合物と下記一般式(4)で表される化合物とを、不斉配位子を含有する触媒を用いて反応させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【化30】
ただし、前記一般式(3)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【化31】
ただし、前記一般式(4)中、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0072】
前記不斉配位子を含有する触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記一般式(1)で表される化合物の製造方法において例示した前記不斉配位子を含有する触媒が挙げられる。
前記不斉配位子を含有する触媒としては、銅−光学活性ホスフィン錯体が好ましい。
【0073】
前記反応工程における溶媒、反応温度、及び反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記一般式(1)で表される化合物の製造方法において例示した前記溶媒、前記反応温度、及び前記反応時間がそれぞれ挙げられる。好ましい態様も同様である。
【0074】
前記反応工程で得られる化合物としては、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【化32】
ただし、前記一般式(6)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0075】
なお、前記反応工程において得られる前記化合物は、前記反応工程において精製して単離することなく前記変換工程に用いることができる。
【0076】
<変換工程>
前記変換工程としては、前記反応工程により得られた前記化合物を、還元剤を用いて下記一般式(1)で表される化合物に変換する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記変換工程において前記不斉配位子が回収される。
【化33】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0077】
前記変換工程としては、例えば、前記一般式(6)で表される化合物のチオアミド基をアミノ基に変換(還元)する工程であることが好ましい。
【0078】
前記変換工程においては、反応系から前記不斉配位子が単離される。例えば、前記不斉配位子を含有する触媒が、銅−光学活性ホスフィン錯体である場合、銅が光学活性ホスフィン配位子から解離し、前記光学活性ホスフィン配位子が反応系から回収される。これには、前記還元剤が関係しているものと考えられる。
【0079】
前記変換工程において、反応系から前記不斉配位子を単離する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粗生成物を直ちに脱気済みヘキサンと脱気済みジクロロメタンの3:1(脱気済みヘキサン:脱気済みジクロロメタン(体積比))混合液を用いたシリカゲルのショートパッドカラムに通すことなどが挙げられる。
【0080】
前記還元剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、LiAlH
4、NaBH
4などが挙げられる。
【0081】
前記変換工程における反応温度、及び反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記一般式(1)で表される化合物の製造方法において例示した前記反応温度、及び前記反応時間がそれぞれ挙げられる。好ましい態様も同様である。
【0082】
本発明の不斉配位子の回収方法は、アトルバスタチンの製造における触媒に用いる不斉配位子を回収して再利用可能なため、アトルバスタチンを安価に製造することができる。
【実施例】
【0083】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、「THF」は「テトラヒドロフラン」を表す。「Ph」は「フェニル基」を表す。
【0084】
(実施例1)
<化合物X(N,N−ジアリルチオアセトアミド)の合成>
300mLナスフラスコにN,N−ジアリルアセトアミド(5.0g、36mmol、1当量、Stanislaw Krompiec, et al.,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 2005,Vol 225,No.1,91−101.に従って合成)、ローソン試薬(7.3g、18mmol、0.5当量)、及び乾燥THF(180mL)を順次加えて12時間加熱還流した後、室温に戻して1規定塩酸(3mL)加えた。得られた二相混合物を酢酸エチル(20mL)で抽出し、有機層を飽和重曹水、及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過及び濃縮後に得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1(体積比))で精製し、下記化合物X(N,N−ジアリルチオアセトアミド)を淡黄色油状物として得た。収量4.8g(収率86%)。
【化34】
【0085】
<不斉配位子を含有する銅触媒の合成>
真空乾燥した5mLナスフラスコに、メシチル銅(18.3mg、0.10mmol、 STREM CHEMICALS社製)、(R,R)−Ph−BPE(50.6mg、0.10mmol、シグマアルドリッチ社製)、及び2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマノール(22.0mg、0.10mmol、シグマアルドリッチ社製)をグローブボックス内で加えた後、アルゴン雰囲気下にてTHF(1.0mL)を加えて不斉触媒(不斉配位子を含有する銅触媒)の0.1MTHF溶液を得た。
【0086】
<化合物Aの合成>
加熱真空乾燥した30mLナスフラスコにTHF(10mL)、3−(トリチロキシ)プロパナール(316mg、1.0mmol、1当量、Amanda M.Heapy, Margaret A. Brimble, Tetrahedron,Vol.66,No.29,5424−5431.に従って合成)、N,N−ジアリルチオアセトアミド(上記化合物X、190μL、1.2mmol、1.2当量)をアルゴン雰囲気下で加え、ナスフラスコを−40℃の恒温槽へ移した。別途調製した上記不斉触媒溶液(1.0mL、0.10mmol、0.10当量)をアルゴン雰囲気下でゆっくりと加え、−40℃で40時間撹拌した後、0.1M酢酸THF溶液(2mL)を加えて反応を停止した。飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)と2,2−ビピリジン(15.6mg、0.10mmol、0.10当量)を加え、その混合溶液を酢酸エチル(10mL)で3回抽出した。得られた有機層を蒸留水、及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過及び濃縮後に得られる粗生成物をTHF(10mL)に溶解し、未精製のまま次の反応に用いた。
滴下ロートを備え付けた100mLナスフラスコを加熱真空乾燥した後に、LiAlH
4(152mg、4.0mmol、4当量)とTHF(10mL)を加え−78℃に冷却した。上記の粗生成物のTHF溶液を滴下ロートからゆっくりと加えた後、混合液をさらに10分間室温で撹拌した。再び混合液を−78℃に冷却し、脱気した蒸留水で調製した飽和ロッシェル塩水溶液(20mL)を滴下ロートからゆっくりと滴下した。滴下終了後、混合液を室温にてさらに30分間撹拌した。得られた混合溶液を脱気したクロロホルム(10mL)で3回抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過及び濃縮後に得られる粗生成物を直ちに脱気済みヘキサンと脱気済みジクロロメタンの3:1混合液(脱気済みヘキサン:脱気済みジクロロメタン=3:1(体積比))を用いたシリカゲルのショートパッドカラムに通すことで(R,R)−Ph−BPEを回収した。回収量46.2mg(回収率91%)。さらに、ヘキサンと酢酸エチルの1:1混合液(体積比)でショートパッドカラムを洗い流すことで粗生成物Aを含む溶液を得た。濾過及び濃縮後に得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1(体積比))で精製し、下記化合物Aを淡黄色油状物として得た。収量274mg(2段階収率62%,95%ee)。
【化35】
【0087】
得られた化合物Aの
1H NMRスペクトル、
13C NMRスペクトル、IRスペクトル、及びHRMSスペクトルデータを示す。
1H NMR (CDCl
3);δ7.43−7.38(m,6H), 7.28−7.17(m,9H), 5.84−5.74(m,2H), 5.17−5.12(m,4H), 3.92−3.86(m,1H), 3.25−3.11(m,4H), 2.90−2.85(m,2H), 2.69(ddd,J=13.1, 10.6, 4.1Hz,1H), 2.52(ddd,J=13.1, 4.4, 4.1Hz,1H), 1.87−1.78(m,1H), 1.70−1.61(m,1H), 1.60−1.51(m,1H), 1.47−1.41(m,1H)
13C NMR (CDCl
3);δ144.3, 134.6, 128.7, 127.7, 126.8, 118.4, 86.6, 71.1, 61.0, 56.6, 52.2, 37.7, 32.3
IR (neat);ν3301, 3060, 2938, 2817, 1490, 1448, 922cm
−1
HRMS(ESI−TOF) for C
30H
35NO
2Na m/z 464.2560 [M+Na]
+,found 464.2558
【0088】
実施例1における化合物Aを合成する反応スキームを以下に示す。
実施例1においては、化合物Aを合成すると共に、不斉配位子を回収している。
【化36】
上記反応式において、「phenol A」は、「2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマノール」を表す。
【0089】
(実施例2)
<化合物Bの合成>
10mL試験管に化合物A(20mg、0.045mmol、1当量)、塩化メチレン(200μL)、及びメタノール(200μL)を加え、氷浴で0℃に冷却した。2規定メタノール塩酸(100μL、0.20mmol、4.4当量)をゆっくりと加え、室温にて1時間撹拌後、再び0℃に冷却した後に飽和重曹水(2mL)を加えて反応を停止し、その混合溶液を塩化メチレン(2mL)で3回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過及び濃縮後に得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノール=15/1(体積比))で精製し、下記化合物Bを淡黄色油状物として得た。収量8.5mg(収率94%)。
【化37】
【0090】
得られた化合物Bの
1H NMRスペクトル、
13C NMRスペクトル、IRスペクトル、及びHRMSスペクトルデータを示す。
1H NMR (CDCl
3);δ5.88−5.78(m,2H), 5.22−5.17(m,4H), 4.09−4.02(m,1H), 3.83(dd,J=5.7, 5.0Hz,2H), 3.32(dd,J=14.0, 5.5Hz,2H), 2.90(dd,J=14.0, 7.8Hz,2H), 2.81(ddd,J=13.1, 11.5, 3.0Hz,1H), 2.61(ddd,J=13.1, 3.9, 3.9Hz,1H), 1.79−1.61(m,3H), 1.50−1.44(m,1H)
13C NMR (CDCl
3);δ134.3, 118.7, 74.2, 61.6, 56.5, 52.4, 38.6, 31.9
IR (neat);ν3376, 3078, 2977, 2935, 2882, 2821, 1643, 1447, 1419, 1349, 1058, 995, 921cm
−1
HRMS(ESI−TOF) for C
11H
21NNaO
2 m/z 222.1468 [M+Na]
+,found 222.1465
【0091】
<化合物Cの合成>
加熱真空乾燥した200mLナスフラスコに上記化合物B(590mg、2.96mmol、1当量)、tert−ブトキシカルボニルメチレントリフェニルホスホラン(2.8g、7.41mmol、2.5当量、シグマアルドリッチ社製)、活性二酸化マンガン(1.0g、11.5mmol、4当量、シグマアルドリッチ社製)、及びクロロホルム(75mL)を加えて室温で撹拌した。最初の3時間の間にさらに活性二酸化マンガン(3.0g、34.5mmol、12当量)を3回に分けて加えた後、約24時間撹拌した。セライト濾過後、クロロホルムでよく洗浄した後にろ液を濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル)で精製し、下記化合物Cを黄色油状物として得た。収量528mg(収率61%)。
【化38】
【0092】
得られた化合物Cの
1H NMRスペクトル、
13C NMRスペクトル、IRスペクトル、及びHRMSスペクトルデータを示す。
1H NMR (CDCl
3);δ6.90−6.83(m,1H), 5.88−5.77(m,3H), 5.20−5.16(m,4H), 3.93−3.87(m,1H), 3.33−3.28(m,2H), 2.90−2.85(m,2H), 2.78(ddd,J=14.6, 11.4, 3.2Hz,1H), 2.58(ddd,J=13.1, 3.7, 3.7Hz,1H), 2.43−2.36(m,1H), 2.30−2.23(m,1H), 1.67−1.57(m,2H), 1.47(s,9H)
13C NMR (CDCl
3);δ165.8, 144.2, 134.4, 125.0, 118.7, 80.1, 72.5, 56.6, 52.3, 40.3, 31.5, 28.1
IR (neat);ν3412, 3078, 2978, 2931, 2819, 1713, 1654, 1367, 1326, 1155cm
−1
HRMS (ESI−TOF) for C
17H
30NO
3 m/z 296.2220 [M+H]
+,found 296.2222
【0093】
<化合物Dの合成>
加熱真空乾燥した10mL試験管に、上記化合物C(20mg、0.068mmol、1当量)、tert−ブタノール(7μL、0.068mmol、1当量)、及びTHF(500μL)を加え、0℃に冷却した。反応液にベンズアルデヒド(7μL、0.068mmol、1当量)と1.0Mのカリウムtert−ブトキシドTHF溶液(7μL、0.007mmol、0.1当量)を順次加えた。以後、15分間毎に1.0Mのカリウムtert−ブトキシドTHF溶液(7μL、0.007mmol、0.1当量)の添加を5回行い、30分間毎にベンズアルデヒド(7μL、0.068mmol、1当量)の添加を2回行った。中性リン酸緩衝液を用いて0℃で反応を停止し、得られた混合溶液をジエチルエーテル(2mL)で3回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過及び濃縮し、得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(体積比))で精製し、下記化合物Dを褐色油状物として得た。収量20mg(収率74%)。
【化39】
【0094】
得られた化合物Dの
1H NMRスペクトル、
13C NMRスペクトル、IRスペクトル、及びHRMSスペクトルデータを示す。
1H NMR (CDCl
3);δ7.49−7.47(m,2H), 7.36−7.30(m,3H), 5.90−5.80(m,2H), 5.55(s,1H), 5.20−5.11(m,4H), 4.30−4.22(m,1H), 3.96−3.90(m,1H), 3.15−3.04(m,4H), 2.65−2.57(m,2H), 2.64(dd,J=15.1, 7.4Hz,1H), 2.43(dd,J=15.1, 6.2Hz,1H), 1.87−1.78(m,1H), 1.72−1.53(m,3H), 1.46(s,9H)
13C NMR (CDCl
3);δ170.1, 135.7, 128.5, 128.1, 128.0, 125.9, 117.4, 100.3, 80.8, 74.9, 73.5, 56.9, 48.7, 42.2, 36.6, 33.3, 28.1
IR (neat);ν2978, 2928, 2853, 1729, 1591, 1369, 1150, 1025, 752, 700 cm
−1
HRMS (ESI−TOF) for C
24H
36NO
4 m/z 402.2639 [M+H]
+,found 402.2638
【0095】
<化合物Eの合成>
加熱真空乾燥した10mL試験管にビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(14.4mg、0.025mmol、1当量、シグマアルドリッチ社製)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(10.7mg、0.025mmol、1当量,関東化学株式会社製)、及び脱気したTHF(500μL)を加えて室温で15分間撹拌し、0.05Mのパラジウム触媒THF溶液を調製した。
加熱真空乾燥した別の10mL試験管に上記化合物D(20mg、0.05mmol、1当量)、チオサリチル酸(17mg、0.11mmol、2.2当量,東京化成工業株式会社製)、及び脱気したTHF(310μL)を加えて室温で撹拌し、上記で調製したパラジウム触媒溶液(50mL、0.0025mmol、0.05当量)を加えた。反応溶液を60℃まで加熱し、3時間撹拌を続けた。反応溶液を0℃に冷却し、飽和重層水をゆっくりと加えて反応を停止した。得られた混合溶液をジクロロメタン(2mL)で3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。濾過及び濃縮後に得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノール/トリエチルアミン=95/4/1(体積比))で精製し、下記化合物Eを淡黄色油状物として得た。収量14mg(収率88%)。
【化40】
【0096】
得られた化合物Eの
1H NMRスペクトル、
13C NMRスペクトル、IRスペクトル、及びHRMSスペクトルデータを示す。
1H NMR (CDCl
3);δ7.47−4.44(m,2H), 7.36−7.30(m,3H), 5.58(s,1H), 4.30−4.23(m,1H), 4.08−4.00(m,1H), 3.76(brs,2H) 3.07−3.04(m,2H), 2.63(dd,J=15.4, 7.1Hz,1H), 2.41(dd,J=15.4, 6.2Hz,1H), 1.92−1.87(m,2H), 1.52−1.43(m,1H), 1.50−1.40(m,1H),1.45(s,9H)
13C NMR (CDCl
3);δ170.0, 138.2, 128.7, 128.2, 126.0, 100.5, 80.9, 74.5, 73.4, 42.0, 37.5, 36.3, 35.9, 28.1
IR (neat);ν3426, 2977, 1727, 1368, 1152, 1119, 1025cm
−1
HRMS (ESI−TOF) for C
18H
28NO
4 m/z 322.2013 [M+H]
+,found 322.2016
【0097】
実施例2における反応スキームを以下に示す。
【化41】
上記反応式において、「
tBu」は、tert−ブチル基を表し、「Me」はメチル基を表し、「dba」は「ジベンジリデンアセトン」を表し、「dppb」は「1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン」を表す。
【0098】
(実施例3)
<化合物Bの合成>
原料物質である前記一般式(3)で表される化合物における保護基(R
1)にtert−ブチルジメチルシリル基(TBS基)を用いて、化合物Bの合成を行った。
加熱真空乾燥した10mLナスフラスコにTHF(2mL)、3−(tert−ブチルジメチルシロキシ)プロパナール(37μL、0.2mmol、1当量、Christian U. Gruenanger, Bernhard Breit, Angewandte Chemie, International Edition, 2010, Vol 49, No.5, 967−970.に従って合成)、N,N−ジアリルチオアセトアミド(上記化合物X、47μL、0.24mmol、1.2当量)をアルゴン雰囲気下で加え、ナスフラスコを−40℃の恒温槽へ移した。別途調製した上記不斉触媒溶液(200μL、0.02mmol、0.10当量)をアルゴン雰囲気下でゆっくりと加え、−40℃で40時間撹拌した後、0.1M酢酸THF溶液(200μL)を加えて反応を停止した。飽和塩化アンモニウム水溶液(2mL)と2,2−ビピリジン(3.2mg、0.02mmol、0.10当量)を加え、その混合溶液を酢酸エチル(5mL)で3回抽出した。得られた有機層を蒸留水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過及び濃縮後に得られる粗生成物をTHF(5mL)に溶解し、未精製のまま次の反応に用いた。
加熱真空乾燥した100mLナスフラスコに、LiAlH
4(46mg、1.2mmol、6当量)とTHF(5mL)を加え−78℃に冷却した。上記の粗生成物のTHF溶液をゆっくりと滴下した。混合液をさらに10分間室温で撹拌した後、還流条件下でさらに1時間撹拌した。再び混合液を−78℃に冷却し、飽和ロッシェル塩水溶液(20mL)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、混合液を室温にてさらに終夜撹拌した。得られた混合溶液を塩化メチレンで(5mL)で3回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過及び濃縮後に得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノール=15/1(体積比))で精製し、前記化合物Bを淡黄色油状物として得た。収量16.8mg(2段階収率42%、86%ee)
【0099】
(実施例4)
原料物質である前記一般式(4)で表される化合物における保護基(R
2及びR
3)にベンジル基を用いて、化合物D’の合成を行った。
【0100】
<化合物A’の合成>
加熱真空乾燥した10mLナスフラスコに、THF(2mL)、3−(トリチロキシ)プロパナール(63.2mg、0.20mmol、1当量)、及びN,N−ジベンジルチオアセトアミド(76.6mg、0.3mmol、1.5当量、Augustowska, Ewelina.et al.,Chemical Communications, 2012, Volume 48, Issue 41, 5031−5033.に従って合成)をアルゴン雰囲気下で加え、ナスフラスコを−40℃の恒温槽へ移した。別途実施例1において調製した不斉触媒溶液(200μL、0.02mmol、0.10当量)をアルゴン雰囲気下でゆっくりと加え、−40℃で48時間撹拌した後、0.1M酢酸THF溶液(400μL)を加えて反応を停止した。飽和塩化アンモニウム水溶液(2mL)と2,2−ビピリジン(3.1mg、0.02mmol、0.10当量)を加え、その混合溶液を酢酸エチル(2mL)で3回抽出した。得られた有機層を蒸留水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過及び濃縮後に得られる粗生成物をTHF(2mL)に溶解し、未精製のまま次の反応に用いた。20mLナスフラスコを加熱真空乾燥した後に、LiAlH
4(30.1mg、0.80mmol、4当量)とTHF(2mL)を加え−78℃に冷却した。上述の粗生成物のTHF溶液を発熱に注意してゆっくりと加え−78℃で10分間撹拌した後に、混合液を室温まで昇温し、さらに1時間撹拌を続けた。再び混合液を−78℃に冷却し、飽和ロッシェル塩水溶液(5mL)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、混合液を室温にてさらに終夜撹拌した。得られた混合溶液をクロロホルム(10mL)で3回抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過及び濃縮後に得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1(体積比))で精製し、化合物A’を淡黄色油状物として得た。収量31.8mg(2段階収率29%,97%ee)。
【化42】
【0101】
得られた化合物A’の
1H NMRスペクトル、
13C NMRスペクトル、IRスペクトル、及びHRMSスペクトルデータを示す。
1H NMR (CDCl
3);δ7.47−7.20(m,25H), 5.33(brs,1H), 3.84−3.77(m,1H), 3.77(d,J=13.4Hz,2H), 3.32(d,J=13.4Hz,2H), 3.24−3.19(m,1H), 3.12−3.06(m,1H), 2.70−2.66(m,1H),2.57−2.51(m,1H), 1.76−1.64(m,2H), 1.62−1.49(m,2H)
13C NMR (CDCl
3);δ144.3, 138.2, 129.2, 128.6, 128.4, 127.9, 127.7, 126.8, 86.6, 70.6, 60.9, 58.6, 52.2, 37.2, 32.5
IR (neat);ν3315, 3059, 3027, 2937, 2809, 1492, 1450, 1073, 1030cm
−1
HRMS (ESI−TOF) for C
38H
40NO
2 m/z 542.3059 [M+H]
+,found 542.3058
【0102】
<化合物B’の合成>
10mL試験管に、化合物A’(62.0mg、0.114mmol、1当量)、塩化メチレン(1.0mL)、及びメタノール(0.20mL)を加え、氷浴で0℃に冷却した。2規定メタノール塩酸(0.25mL、0.50mmol、4.4当量)をゆっくりと加え、室温にて1時間撹拌後、再び0℃に冷却した後に飽和重曹水(4mL)を加えて反応を停止し、その混合溶液を塩化メチレン(5mL)で3回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過及び濃縮後に得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/1(体積比))で精製し、化合物B’を淡黄色油状物として得た。収量33.4mg(収率98%)。
【化43】
【0103】
得られた化合物B’の
1H NMRスペクトル、
13C NMRスペクトル、IRスペクトル、及びHRMSスペクトルデータを示す。
1H NMR (CDCl
3);δ7.40−7.27(m,10H), 3.88−3.80(m,1H), 3.87(d,J=13.1Hz,2H), 3.78−3.72(m,2H), 3.30(d,J=13.1Hz,2H), 2.862−2.76(m,1H), 2.65−2.59(m,1H), 1.88−1.78(m,1H), 1.64−1.50(m,3H)
13C NMR (CDCl
3);δ137.6, 129.3, 128.5, 127.5, 73.8, 61.6, 58.5, 52.4, 38.2, 32.0
IR (neat);ν3376, 3028, 2936, 2823, 1495, 1453, 1106, 1074, 1028cm
−1
HRMS (ESI−TOF) for C
19H
26NO
2 m/z 300.1963 [M+H]
+,found 300.1960
【0104】
(化合物C’の合成)
加熱真空乾燥した10mL試験管に、化合物B’(15mg、0.05mmol、1当量)、tert−ブトキシカルボニルメチレントリフェニルホスホラン(47mg、0.125mmol、2.5当量)、活性二酸化マンガン(18mg、0.2mmol、4当量)、及びクロロホルム(1.2mL)を加えて室温で撹拌した。最初の3時間の間にさらに活性二酸化マンガン(52mg、0.6mmol、12当量)を3回に分けて加えた後、約24時間撹拌した。セライト濾過後、クロロホルムでよく洗浄した後にろ液を濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=3/1(体積比))で精製し、化合物C’を黄色油状物として得た。収量11.3mg(収率57%)。
【化44】
【0105】
得られた化合物C’の
1H NMRスペクトル、
13C NMRスペクトル、IRスペクトル、及びHRMSスペクトルデータを示す。
1H NMR (CDCl
3);δ7.28−7.17(m,10H), 6.71(ddd,J=15.6, 7.6, 7.3Hz,1H), 5.89(brs,1H), 5.65(d,J=15.6,1H), 3.74(d,J=13.1Hz,2H), 3.66−3.60(m,1H), 3.22(d,J=13.1Hz,2H), 2.69−2.63(m,1H), 2.54−2.49(m,1H), 2.23−2.16(m,1H), 2.10−2.02(m,1H), 1.67−1.58(m,1H), 1.55−1.46(m,1H), 1.39(s,9H)
13C NMR (CDCl
3);δ165.8, 144.1, 137.7, 129.3, 128.5, 127.4, 125.0, 80.0, 72.0, 58.5, 52.2, 39.8, 31.5, 28.1
IR (neat);ν3409, 3062, 3028, 2927, 2854, 1711, 1637, 1453, 1367, 1152cm
−1
HRMS (ESI−TOF) for C
25H
34NO
3 m/z 396.2538 [M+H]
+,found 396.2537
【0106】
(化合物D’の合成)
加熱真空乾燥した10mL試験管に、化合物C’(20mg、0.05mmol、1当量)、THF(500μL)を加え、0℃に冷却した。反応液にベンズアルデヒド(5μL、0.05mmol、1当量)と1.0Mのカリウムtert−ブトキシドTHF溶液(5μL、0.005mmol、0.1当量)を順次加えた。以後30分間毎にベンズアルデヒド(5μL、0.05mmol、1当量)と1.0Mのカリウムtert−ブトキシドTHF溶液(5μL、0.005mmol、0.1当量)の添加を2回行った。中性リン酸緩衝液を用いて0℃で反応を停止し、得られた混合溶液をジエチルエーテル(2mL)で3回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過及び濃縮し、得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(体積比))で精製し、化合物D’を褐色油状物として得た。収量13mg(収率51%)。
【化45】
【0107】
得られた化合物D’の
1H NMRスペクトル、
13C NMRスペクトル、IRスペクトル、及びHRMSスペクトルデータを示す。
1H NMR (CDCl
3);δ7.30−7.20(m,15H), 5.35(s,1H), 4.13−4.10(m,1H), 3.88−3.82(m,1H), 3.54(d,J=13.5Hz,2H), 3.45(d,J=13.5Hz,2H), 2.61−2.55(m,1H), 2.52−2.44(m,2H), 2.27(dd,J=15.2, 5.6Hz,1H), 1.82−1.73(m,1H), 1.65−1.57(m,1H), 1.42−1.35(m,1H), 1.39(s,9H), 1.30−1.20(m,1H)
13C NMR (CDCl
3);δ170.2, 140.0, 138.5, 128.8, 128.3, 128.2, 128.0, 127.0, 125.9, 100.1, 80.7, 74.6, 73.5, 58.5, 48.8, 42.2, 36.4, 33.4, 28.1
IR (neat);ν3061, 3028, 2925, 2853, 1716, 1495, 1454, 1367, 1260, 1153cm
−1
HRMS (ESI−TOF) for C
32H
40NO
4 m/z 502.2957 [M+H]
+,found 502.2955
【0108】
(実施例5)
<回収した不斉配位子の再利用>
実施例1において回収した不斉配位子(R,R)−Ph−BPEを用いて、下記反応スキームに示す反応を行った。なお反応条件は、実施例1における同反応の条件と同じである。結果を表1に示す。
【化46】
ただし、上記反応スキーム中、「Tr」は、トリフェニルメチル基(トリチル基)を表す。
【0109】
【表1】
表1中、「ee」は、鏡像体過剰率を表す。
購入品の(R,R)−Ph−BPEを用いた場合(表1中、上段)と比較して、実施例1において回収した(R,R)−Ph−BPEを用いた場合(表1中、下段)に得られる一般式(6)で表される化合物の収率及び光学純度は、同程度であった。
【0110】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物である。
【化47】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基を表す。
<2> 下記一般式(2)で表されることを特徴とする化合物である。
【化48】
ただし、前記一般式(2)中、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
4は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
<3> 下記一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、
下記一般式(3)で表される化合物と下記一般式(4)で表される化合物とを反応させる反応工程と、
前記反応工程により得られた化合物を下記一般式(1)で表される化合物に変換する変換工程とを含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
【化49】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【化50】
ただし、前記一般式(3)中、R
1は、前記一般式(1)におけるR
1と同じである。
【化51】
ただし、前記一般式(4)中、R
2及びR
3は、前記一般式(1)におけるR
2及びR
3とそれぞれ同じである。
<4> 反応工程が、不斉配位子を含有する触媒を用いて行われる前記<3>に記載の化合物の製造方法である。
<5> 不斉配位子を含有する触媒が、銅−光学活性ホスフィン錯体である前記<4>に記載の化合物の製造方法である。
<6> 変換工程が、還元剤を用いて行われる前記<3>から<5>のいずれかに記載の化合物の製造方法である。
<7> 下記一般式(5)で表される[(4R,6R)−6−アミノエチル−1,3−ジオキサン−4−イル]アセテート誘導体の製造方法であって、
下記一般式(1)で表される化合物を下記一般式(5)で表されるアセテート誘導体に変換する変換工程を含むことを特徴とするアセテート誘導体の製造方法である。
【化52】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【化53】
ただし、前記一般式(5)中、R
4は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立に、炭素数1〜6の炭化水素基及び水素原子のいずれかを表す(なお、前記R
5及び前記R
6は、一緒になって環構造を形成していてもよい)。
<8> 下記一般式(1)で表される化合物を下記一般式(5)で表されるアセテート誘導体に変換する変換工程を含むことを特徴とするアトルバスタチンの製造方法である。
【化54】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【化55】
ただし、前記一般式(5)中、R
4は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立に、炭素数1〜6の炭化水素基及び水素原子のいずれかを表す(なお、前記R
5及び前記R
6は、一緒になって環構造を形成していてもよい)。
<9> アトルバスタチンの製造における触媒に用いる不斉配位子の回収方法であって、
下記一般式(3)で表される化合物と下記一般式(4)で表される化合物とを、不斉配位子を含有する触媒を用いて反応させる反応工程と、
前記反応工程により得られた化合物を、還元剤を用いて下記一般式(1)で表される化合物に変換する変換工程とを含み、
前記変換工程において前記不斉配位子を回収することを特徴とする不斉配位子の回収方法である。
【化56】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、アミノ基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【化57】
ただし、前記一般式(3)中、R
1は、前記一般式(1)におけるR
1と同じである。
【化58】
ただし、前記一般式(4)中、R
2及びR
3は、前記一般式(1)におけるR
2及びR
3とそれぞれ同じである。
<10> 不斉配位子を含有する触媒が、銅−光学活性ホスフィン錯体である前記<9>に記載の不斉配位子の回収方法である。