(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986874
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 61/34 20060101AFI20160823BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20160823BHJP
C09D 171/00 20060101ALI20160823BHJP
G11B 7/254 20130101ALI20160823BHJP
G11B 7/257 20130101ALI20160823BHJP
G11B 7/26 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
C08L61/34
C08L71/00 Z
C09D171/00
G11B7/24 534C
G11B7/26 531
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-225692(P2012-225692)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2013-91790(P2013-91790A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2015年10月5日
(31)【優先権主張番号】13/280,088
(32)【優先日】2011年10月24日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ランホイ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】リン・マー
【審査官】
久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−520116(JP,A)
【文献】
特表2013−506750(JP,A)
【文献】
特開2010−137575(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0027052(US,A1)
【文献】
特表2013−500372(JP,A)
【文献】
特表2010−505020(JP,A)
【文献】
米国特許第06620905(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C09D 4/00−201/10
C08G 8/00− 16/06
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基化ポリフルオロポリエーテルとベンゾオキサジン樹脂の重量比が1/99〜99/1である、官能基化ポリフルオロポリエーテルおよびベンゾオキサジン樹脂の混合物を含み、
前記官能基化ポリフルオロポリエーテルが、
R1−(−CF(CF3)−CF2−O−)n−R2
R1−(−CF2−CF2−CF2−O−)n−R2
R1−(−CF2−CF2−O−)n−(−CF2−O−)m−R2
および
R1−(−CF2−CF(CF3)−O−)n−(−CF2−O−)m−R2
から選択される少なくとも1つであり、式中、nおよびmは、それぞれ、反復基の数をあらわし、nは3〜120であり、mは5〜120であり、R1およびR2は、独立して、それぞれA1−CF2O−および−CF2−A2によってあらわされ、A1、A2は、独立して、
−Ak−OH
−CH2(OCH2CH2)pOH
−CH2OCH2CH(OH)CH2OH
−COORH
−Ak−Si(ORH)3
および
−Ak−OP(O)(OH)2
から選択される少なくとも1つであり、Akは、その価数に依存して、共有結合または1〜10個の炭素原子を含むアルキレン基であり、RHは、H、または1〜10個の炭素原子を含むアルキル基であり、pは1〜20である、組成物。
【請求項2】
官能基化ポリフルオロポリエーテルとベンゾオキサジン樹脂の重量比が1/99〜99/1である、官能基化ポリフルオロポリエーテルおよびベンゾオキサジン樹脂の混合物を含み、
溶媒が、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、1−ブタノール、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、N,N’−ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、およびこれらの混合物から選択され、
前記官能基化ポリフルオロポリエーテルが、
R1−(−CF(CF3)−CF2−O−)n−R2
R1−(−CF2−CF2−CF2−O−)n−R2
R1−(−CF2−CF2−O−)n−(−CF2−O−)m−R2
および
R1−(−CF2−CF(CF3)−O−)n−(−CF2−O−)m−R2
から選択される少なくとも1つであり、式中、nおよびmは、それぞれ、反復基の数をあらわし、nは3〜120であり、mは5〜120であり、R1およびR2は、独立して、それぞれA1−CF2O−および−CF2−A2によってあらわされ、A1、A2は、独立して、
−Ak−OH
−CH2(OCH2CH2)pOH
−CH2OCH2CH(OH)CH2OH
−COORH
−Ak−Si(ORH)3
および
−Ak−OP(O)(OH)2
から選択される少なくとも1つであり、Akは、その価数に依存して、共有結合または1〜10個の炭素原子を含むアルキレン基であり、RHは、H、または1〜10個の炭素原子を含むアルキル基であり、pは1〜20である、組成物。
【請求項3】
前記官能基化ポリフルオロポリエーテルが、末端がヒドロキシルのポリフルオロポリエーテル、末端がカルボン酸またはカルボン酸エステルのポリフルオロポリエーテル、末端がシランのポリフルオロポリエーテル、末端がリン酸のポリフルオロポリエーテルのいずれかである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ベンゾオキサジン
樹脂が、以下の構造を有するポリマーから選択される少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、ゼログラフィーシステムおよびゼログラフィー以外のシステムの構成要素、例えば、これらのシステムに備わっている定着器、光伝導体、自浄作用のある中間転写部材、ベルト、インクジェット印刷ヘッドの表面コーティングとして有用な新規組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の既知のコーティングに付随する欠点は、寿命を延ばすことができないこと、適切な一貫した寸法安定性が乏しいこと、ある場合には、受け入れられないほどの水吸収性をもつこと、所望の値よりも誘電率が大きいこと、温度耐性が低いことである。
【0003】
さらに、多くの既知のコーティングは、最低限の使用の後分解してしまうため、経済的ではなく、このようなコーティングを連続的に交換する必要がある。
【0004】
さらに、さまざまな表面に適した多くの既知のコーティングは、多次元ではなく、十分とは言えない数の表面および基材のコーティングにしか用いることができない。
【0005】
多くの既知の中間転写部材のコーティングおよびゼログラフィー定着器のコーティングは、繰り返し使用すると性能が悪くなり、コーティングが分解してしまうため、公称の利用でも有効ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの既知のコーティングの欠点を実質的に防ぐか、または最低限にするコーティングが必要とされている。
【0007】
また、多くの異なる用途をもつ安定なコーティングも必要とされている。
【0008】
さらに、許容範囲の寿命特性をもち、経済的かつ有効に製造可能な表面コーティングが必要とされている。
【0009】
定着器、自浄作用のある中間転写部材、ベルト、光伝導体、インクジェット印刷ヘッドなどのためのゼログラフィーシステムの表面構成要素のコーティングとして有用な組成物も別途必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書には、官能基化ポリフルオロポリエーテルとベンゾオキサジン樹脂の重量比が約1/99〜約99/1である官能基化ポリフルオロポリエーテルおよびベンゾオキサジン樹脂の混合物を含む組成物が開示されている。
【0011】
また、官能基化ポリフルオロポリエーテルおよびベンゾオキサジン樹脂の架橋した網目構造を含み、官能基化ポリフルオロポリエーテルとベンゾオキサジン樹脂の重量比が約20/80〜約80/20である表面層を備える組成物が開示されており、ここで、この表面層は、水接触角が約90°〜約150°であり、ヘキサデカン接触角が約45°〜約95°である。
【0012】
本開示のいくつかの態様では、官能基化ポリフルオロポリエーテル、ベンゾオキサジンポリマー、触媒を反応させることによって、ベンゾオキサジンポリマーに化学的に結合した官能基化ポリフルオロポリエーテルの架橋した混合物を作成することを含み、ポリフルオロポリエーテルとベンゾオキサジンの重量比が約1/99〜約99/1であるコーティング混合物を調製するためのプロセスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書には、官能基化ポリフルオロポリエーテル(PFPE)およびベンゾオキサジン樹脂で構成され、例えば、その重量比が、約1/99〜約99/1、約10/90〜約90/10、または約20/80〜約80/20であるコーティング組成物およびその表面層が開示されており、この組成物は、溶媒に分散/溶解しており、その表面層は、例えば、水接触角が約90°〜約150°、約95°〜約130°、または約110°〜約125°であり、ヘキサデカン接触角が約45°〜約95°、約55°〜約80°、または約65°〜約75°である。
【0014】
さらに、本明細書には、表面層として有用な疎水性および撥油性の新規コーティング組成物が開示されている。コーティング組成物は、溶媒に分散した、重量比が、例えば、約1/99〜約99/1、約10/90〜約90/10、約20/80〜約80/20、約25/75〜約60/40、または約30/70〜約45/55の官能基化ポリフルオロポリエーテル(PFPE)/ベンゾオキサジン樹脂コンポジットを含む。官能基化PFPEは、ベンゾオキサジンポリマーまたはベンゾオキサジン樹脂と、場合により、触媒存在下で反応し、反応は、ベンゾオキサジンにポリフルオロポリエーテルが化学的に結合および接続するまで、例えば、約100℃〜約250℃、約120℃〜約200℃、または約140℃〜約175℃に適切な時間加熱することによって行われ、時間は、例えば、約10〜約240分、約20〜約180分、または約30〜約120分である。得られた表面層コーティング組成物は、官能基化ポリフルオロポリエーテルおよびベンゾオキサジンポリマーの架橋した網目構造であると考えられる。
【0015】
本明細書に開示されている組成物およびプロセスのために選択され、疎水性/撥油性コンポジットを形成するために混合されるか、またはベンゾオキサジン樹脂と反応する官能基化ポリフルオロポリエーテル(PFPE)は、以下の式によってあらわされるか、またはこれらの混合物であり、
R
1−(−CF(CF
3)−CF
2−O−)
n−R
2
R
1−(−CF
2−CF
2−CF
2−O−)
n−R
2
R
1−(−CF
2−CF
2−O−)
n−(−CF
2−O−)
m−R
2
または
R
1−(−CF
2−CF(CF
3)−O−)
n−(−CF
2−O−)
m−R
2
式中、nおよびmは、それぞれ、反復基の数をあらわし、nは、例えば、その一部分を含む数であり、約3〜約120、約10〜約100、または約10〜約60であり、mは、例えば、約5〜約120、約12〜約105、または約10〜約60であり、n+mの合計は、例えば、約40〜約180、約75〜約150、または約80〜約125であり、比率n/mは、例えば、約0.1〜約3、または約0.5〜約2であり、R
1およびR
2は、独立して、それぞれA
1−CF
2O−および−CF
2−A
2によってあらわされ、A
1、A
2は、独立して、
−A
k−OH
−CH
2(OCH
2CH
2)
pOH
−CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OH
−COOR
H
−A
k−Si(OR
H)
3
または
−A
k−OP(O)(OH)
2
の1つであり、A
kは、その価数に依存して、化学結合またはアルキレン基、例えば、約1〜10個の炭素原子、または2〜約7個の炭素原子を含むアルキレン基であり、R
Hは、Hまたはアルキル基であり、例えば、約1〜約20個の炭素原子、または約1〜約10個の炭素原子を含むアルキル基であり、pは、例えば、約1〜約20、1〜約16、約1〜約12、約2〜約18、または約1〜約10である。
【0016】
いくつかの実施形態では、ポリフルオロポリエーテルは、以下の式/構造
HOCH
2OCF
2(CF
2CF
2CF
2O)
nCF
2CH
2OH
または
HOOCOCF
2(CF
2CF
2CF
2O)
nCF
2COOH
によってあらわされ、式中、nは、反復基の数をあらわし、場合により、約3〜約25、または7〜約15の数である。
【0017】
また、本開示のいくつかの実施形態では、官能基化ポリフルオロポリエーテルは、以下の式/構造
R
1−(−CF(CF
3)−CF
2−O−)
n−R
2
R
1−(−CF
2−CF
2−CF
2−O−)
n−R
2
R
1−(−CF
2−CF
2−O−)
n−(−CF
2−O−)
m−R
2
および
R
1−(−CF
2−CF(CF
3)−O−)
n−(−CF
2−O−)
m−R
2
のうち、少なくとも1つによってあらわされる。
【0018】
本明細書に開示する組成物に含まれる官能基化ポリフルオロポリエーテル(PFPE)の例は、末端がヒドロキシルのPFPE、末端がカルボン酸またはカルボン酸エステルのPFPE、末端がシランのPFPE、または末端がリン酸のPFPEであり、それぞれ、重量平均分子量は、GPC分析によって決定される場合、約100〜約5,000、約200〜約3,000、約200〜約1,000、または約500〜約2,000であり、その数平均分子量は、GPC分析によって決定される場合、約100〜約2,000、または約500〜約1,000であり、例えば、コーティング組成物の固形分の約20〜約80重量%、約25〜約60重量%、または約30〜約45重量%の量で存在する。
【0019】
本明細書に示した組成物およびプロセスのために選択することができる末端がヒドロキシルのPFPEの例としては、FLUOROLINK(登録商標)D(M
w=1,000、官能基−CH
2OH、フッ素含有量約62%)、FLUOROLINK(登録商標)D10−H(M
w=700、官能基 −CH
2OH、フッ素含有量約61%)、FLUOROLINK(登録商標)D10(M
w=500、官能基−CH
2OH、フッ素含有量約60%)、FLUOROLINK(登録商標)E(M
w=1,000、官能基−CH
2(OCH
2CH
2)
pOH、フッ素含有量約58%)、FLUOROLINK(登録商標)E10(M
w=500、官能基−CH
2(OCH
2CH
2)
pOH、フッ素含有量約56%)、FLUOROLINK(登録商標)T(M
w=550、官能基−CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OH、フッ素含有量約58%)、FLUOROLINK(登録商標)T10(M
w=330、官能基−CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OH、フッ素含有量約55%)など、およびこれらの混合物が挙げられ、すべてSolvay Chemical Companyから市販されている。
【0020】
開示されているコーティング組成物およびプロセスのための選択される末端がカルボン酸またはカルボン酸エステルのPFPEの例としては、FLUOROLINK(登録商標)C10(M
w=1,000、官能基−COOH、フッ素含有量約61%)、FLUOROLINK(登録商標)L(M
w=1,000、官能基−COOR
H、フッ素含有量約60%)、FLUOROLINK(登録商標)L10(M
w=500、官能基−COOR
H、フッ素含有量約58%)など、およびこれらの混合物が挙げられ、すべてSolvay Chemical Companyから市販されている。
【0021】
開示されているコーティングおよびプロセスに組み込むことが可能な末端がシランのPFPEの例としては、FLUOROLINK(登録商標)S10(M
w=1,750〜1,950、官能基−A
k−Si(OCH
2CH
3)
3)など、およびこれらの混合物が挙げられ、すべてSolvay Chemical Companyから市販されている。
【0022】
本明細書に示されているコーティング組成物およびプロセスのために選択される末端がリン酸のPFPEの例としては、FLUOROLINK(登録商標)F10(M
w=2,400〜3,100、官能基−A
k−OP(O)(OH)
2)など、およびこれらの混合物が挙げられ、すべてSolvay Chemical Companyから市販されている。
【0023】
この組成物のため、また、開示されている疎水性/撥油性コンポジットを作成するために選択されるベンゾオキサジンポリマーまたは樹脂としては、ビスフェノールAベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールFベンゾオキサジン樹脂、フェノールフタレインベンゾオキサジン樹脂、チオジフェノールベンゾオキサジン樹脂、ジシクロペンタジエンベンゾオキサジン樹脂が挙げられ、これらの樹脂は、以下の1個または反復する構造/式またはこれらの混合物によってあらわすことができる。
【化1】
【0024】
ベンゾオキサジン樹脂は、ARALDITE(登録商標)、例えば、ビスフェノールAベンゾオキサジン樹脂(ARALDITE(登録商標)35600)、ビスフェノールFベンゾオキサジン樹脂(ARALDITE(登録商標)35700)、フェノールフタレインベンゾオキサジン樹脂(ARALDITE(登録商標)35800)、チオジフェノールベンゾオキサジン樹脂(ARALDITE(登録商標)35900)、ジシクロペンタジエンベンゾオキサジン樹脂(ARALDITE(登録商標)36000)の商品名でHuntsman Advanced Materials Americas Inc.(ウッドランド、TX)から市販されている。また、ベンゾオキサジン樹脂は、HenkelからHENKEL(登録商標)99110および99120としても市販されている。
【0025】
ベンゾオキサジン樹脂は、一般的に、以下のスキーム1に示すように、アミン、フェノール、ホルムアルデヒドの反応生成物から作られ(R1、R2、R3、R4は適切な置換基であり、例えば、アルキル、アリールなどである)、官能基化ポリフルオロポリエーテルと、ベンゾオキサジンから得られる生成物は、寸法安定性、低い水吸収率、低い誘電率、高い温度耐性を含め、優れた性能を示すと考えられる。
【化2】
官能基化ポリフルオロポリエーテルと結合することができる既知の多くのベンゾオキサジン熱硬化性樹脂は、加熱すると、ホモポリマー化し、以下の反復する式/構造によってあらわされる架橋したポリマーを形成し、
【化3】
式中、Rは、適切な置換基、例えば、アルキル、アリールなどである。
【0026】
官能基化PFPEは、ベンゾオキサジンと化学的に反応し、架橋したPFPE/ベンゾオキサジンコンポジットを作成することができる。例えば、末端がヒドロキシルのPFPEは、ベンゾオキサジンと反応し、PFPEとベンゾオキサジンとの間にエーテル接続を形成し、末端がカルボキシルまたはエステルのPFPEは、ベンゾオキサジンと反応し、PFPEとベンゾオキサジンとの間にエステル接続を形成し、末端がシランのPFPEは、ベンゾオキサジンと反応し、PFPEとベンゾオキサジンとの間にシロキサン接続を形成し、または、末端がリン酸のPFPEは、ベンゾオキサジンと反応し、PFPEとベンゾオキサジンとの間にホスフェート接続を形成する。また、開示されている調製プロセスの変形例において、官能基化された(例えば、末端がヒドロキシルの)PFPEは、自己架橋したベンゾオキサジン樹脂に化学的に結合し、電子顕微鏡で概算した場合に架橋度が約60〜約99%、約70〜約95%、または約80〜約90%の架橋したコンポジットコーティングを作成することができる。
【0027】
ベンゾオキサジンの重量平均分子量は、開示されている式および構造を参照して、本明細書に示されているとおりであり、重量平均は、GPC分析によって決定する場合、例えば、約450〜約3,000、約1,000〜約2,000、または約1,200〜約1,500であり、その数平均分子量は、開示されている式および構造を参照して、本明細書に示されているとおりであり、GPC分析によって決定する場合、例えば、約400〜約2,000、約1,000〜約1,700、または約1,200〜約1,500である。
【0028】
この反応のために選択され、コーティング組成物中に残存する適切な任意要素の触媒としては、有機スズ触媒、例えば、ラウリン酸ジブチルスズ、酸触媒、例えば、p−トルエンスルホン酸または塩基触媒、例えば、トリエチルアミンが挙げられ、約0.01〜約5重量%、または約0.1〜約1重量%の量で存在する。
【0029】
コーティング混合物中に含まれるのに適した任意要素の溶媒としては、メチルエチルケトン、1−ブタノール、キシレン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、N,N’−ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、およびこれらの混合物が挙げられ、コーティング混合物の約10〜約90重量%、または約30〜約60重量%の量で存在する。基材をコーティングし、次いで、乾燥させた後、溶媒は蒸発し、官能基化PFPE/ベンゾオキサジンが架橋し、架橋したPFPE/ベンゾオキサジンコーティング組成物が生成する。
【0030】
理論によって制限されることを望まないが、フルオロ部分(PFPE)およびベンゾオキサジンが末端で化学的に接続しているため、大きな相分離を防いでいると考えられる。しかし、小さな相分離がコーティングコンポジット内で起こり、疎水性および撥油性のコーティングを生じる。疎水性の/疎水性という句は、例えば、本明細書に開示されるように、水接触角が約90°以上である表面の濡れ挙動を指し、撥油性の/撥油性という句は、例えば、本明細書に開示されるように、ヘキサデカン接触角が約45°以上である表面の濡れ挙動を指す。
【0031】
本明細書に開示されている疎水性および撥油性の架橋したコーティング混合物、または溶液コンポジットは、金属、例えば、ステンレス鋼、銅、ニッケルまたはアルミニウム、プラスチック、例えば、ポリエステルまたはポリイミド、ゴム例えば、シリコーンまたはガラスのような種々の基材をコーティングすることができる。さらに詳細には、本明細書に示されている架橋したコーティング組成物のコンポジットは、インクジェット印刷ヘッドおよび転写ドラム、ゼログラフィー中間転写部材だけではなく、デジタル、多重画像型などを含む電子写真式画像化装置のために選択することができる。
【0032】
コーティング混合物またはコーティング溶液は、任意の適切な既知の様式でコーティングすることができる。このような混合物を種々の基材層にコーティングする典型的な技術としては、フローコーティング、液体噴霧コーティング、浸漬コーティング、ワイヤ巻き付けロッドによるコーティング、流動床コーティング、粉末コーティング、静電噴霧、音波噴霧、ブレードコーティング、成形、積層などが挙げられる。
【0033】
例えば、コーティング混合物またはコーティング溶液は、約70重量%のベンゾオキサジンと約30重量%の末端がヒドロキシルのポリフルオロポリエーテルとをメチルイソブチルケトン(MIBK)中で混合することによって調製することができる。次いで、この溶液を約4〜約8時間加熱し、環流する。次いで、得られたコーティング混合物またはコーティング溶液を、75ミクロンのポリイミド膜にドローバーコーティングし、その後、約120℃〜約200℃の温度で約10〜約180分乾燥させる。約70/30の比率で架橋したベンゾオキサジン/ポリフルオロポリエーテルのコーティング組成物をポリイミド基材の上部に作成し、コーティングは、厚みが約1〜約400ミクロン、約50〜約275ミクロン、または約100〜190ミクロンである。
【実施例】
【0034】
実験的に、メチルイソブチルケトン(MIBK)中、末端がヒドロキシルのPFPE(Fluorolink(登録商標)D、Solvay)を、自己架橋可能なベンゾオキサジン樹脂(Henkel 99120)と重量比30/70で混合した。得られた濁った溶液を加熱し、6時間環流させた後、得られた透明コーティングを、ドローバーコーターによってポリイミド基材に塗布し、その後、180℃で60分間硬化させた。厚みが10μmであり、鉛筆硬度が1Hであるコンポジット可とう性コーティングを得て、主にこのコーティングの架橋性のため、優れた機械特性を示している。
【0035】
得られたコンポジットコーティングについて、さらに接触角を試験し、その結果をPTFE膜の比較データとともに表1に提示する。Contact Angle System OCA(Dataphysics Instruments GmbH、OCA15型)を用い、水およびヘキサデカンの前進接触角を周囲温度(約23℃)で測定した。少なくとも10回の個々の測定を実施し、その平均を表1に示す。
【表1】
【0036】
PTFEと比較すると、開示されているPFPE/ベンゾオキサジンコンポジットは、疎水性PTFEと匹敵する水接触角を示した。また、開示されているPFPE/ベンゾオキサジンコンポジットは、PTEEよりも約25°大きいヘキサデカン接触角を示し、このことは、開示されているPFPE/ベンゾオキサジンコンポジットが、PTFEよりも撥油性であることを示している。