【実施例】
【0024】
図1は、本発明の一実施例に係る石炭焚きボイラを表す概略構成図、
図2は、本実施例の石炭焚きボイラにおける火炉の平面図、
図3は、本実施例の石炭焚きボイラにおける異なる燃焼装置を表す平面図、
図4は、NOx還元領域における燃焼ガスの滞留時間に対するNOx発生量を表すグラフである。
【0025】
本実施例のボイラは、石炭(瀝青炭、亜瀝青炭など)を粉砕した微粉炭を微粉燃料として用い、この微粉炭を燃焼バーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を回収することが可能な微粉炭焚きボイラである。
【0026】
この本実施例において、
図1及び
図2に示すように、石炭焚きボイラ10は、コンベンショナルボイラであって、火炉11と燃焼装置12とを有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置され、この火炉11を構成する火炉壁が伝熱管により構成されている。
【0027】
また、火炉11は、内部に鉛直方向に沿う第1隔壁61が配置されている。この第1隔壁61は、火炉壁と同様に、伝熱管により構成されており、左右の側部が火炉壁に固定され、上端部が火炉11の所定高さまで上方に延出され、下端部が火炉11の所定高さまで下方に延出されている。また、火炉11は、内部にこの第1隔壁61の上端部から水平方向に沿って第2隔壁62が配置されている。この第2隔壁62は、火炉壁や第1隔壁61と同様に、伝熱管により構成されており、左右の側部が火炉壁に固定され、一端部が第1隔壁61の上端部に固定され、他端部が火炉壁に固定されている。
【0028】
即ち、火炉11は、内部に鉛直方向に沿う第1隔壁61が配置されると共に、第1隔壁61の上端部から水平方向に沿って第2隔壁62が配置されていることで、燃焼領域Aと還元領域Bが第1隔壁61を隔てて水平方向に並んで区画されている。
【0029】
具体的に説明すると、火炉11は、4つの火炉壁11a,11b,11c,11dにより形成された矩形断面に形成され、第1隔壁61は、火炉壁11a,11bと平行をなし、左右の側部が火炉壁11c,11dに固定されことで、燃焼領域Aと還元領域Bが区画されている。この場合、燃焼領域Aと還元領域Bの通路面積は、ほぼ同様に設定されている。第2隔壁62第1隔壁61の上端部に固定されると共に、火炉壁11a,11c,11dに固定されることで、燃焼領域Aの上方を閉塞している。
【0030】
即ち、燃焼領域Aは、火炉壁11a,11c,11dと側方の第1隔壁61と上方の第2隔壁62とで区画され、下方が開放されている。一方、還元領域Bは、火炉壁11b,11c,11dと側方の第1隔壁61とで区画され、上方及び下方が開放されている。そして、燃焼領域Aと還元領域Bとは、下方に連通している。
【0031】
燃焼装置12は、この火炉11を構成する火炉壁(伝熱管)の下部に設けられている。具体的に、燃焼装置12は、火炉壁11a,11c,11dと第1隔壁61と第2隔壁62とで区画さ燃焼領域Aに向けて固体燃料と空気を混合した燃料ガスを吹き込むことで火炎を形成可能な複数の燃焼バーナ21,22,23,24,25を有している。そして、この燃焼バーナ21,22,23,24,25は、第1隔壁61に対向する火炉壁11aに設けられている。本実施例にて、この燃焼バーナ21,22,23,24,25は、火炉壁11aの水平方向に沿って4個均等間隔で配設されたものが1セットとして、鉛直方向に沿って5セット、つまり、5段配置されている。なお、火炉の形状や一つの段における燃焼バーナの数、段数はこの実施例に限定されるものではない。
【0032】
この場合、第1隔壁61は、下端部が燃焼装置12(燃焼バーナ21,22,23,24,25)より鉛直方向における下方まで延設されている。即ち、火炉11は、下端部にホッパ11eが設けられており、第1隔壁61の下端部がこのホッパ11e内まで延設されている。
【0033】
そして、各燃焼バーナ21,22,23,24,25は、微粉炭供給管26,27,28,29,30を介して微粉炭機(ミル)31,32,33,34,35に連結されている。この微粉炭機31,32,33,34,35は、図示しないが、ハウジング内に鉛直方向に沿った回転軸心をもって粉砕テーブルが駆動回転可能に支持され、この粉砕テーブルの上方に対向して複数の粉砕ローラが粉砕テーブルの回転に連動して回転可能に支持されて構成されている。従って、石炭が複数の粉砕ローラと粉砕テーブルとの間に投入されると、ここで所定の大きさまで粉砕され、搬送空気(1次空気)により分級された微粉炭を微粉炭供給管26,27,28,29,30から燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給することができる。
【0034】
また、火炉11は、各燃焼バーナ21,22,23,24,25の装着位置に風箱36が設けられており、この風箱36に空気ダクト37の一端部が連結されており、この空気ダクト37は、他端部に送風機38が装着されている。更に、火炉11は、還元領域Bの上方に向けて追加空気を吹き込むアディショナル空気ノズル(空気ノズル)39が設けられており、このアディショナル空気ノズル39に空気ダクト37から分岐した分岐空気ダクト40の端部が連結されている。
【0035】
従って、送風機38により送られた燃焼用空気(2次空気)を空気ダクト37から風箱36に供給し、この風箱36から各燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給することができると共に、送風機38により送られた燃焼用空気(追加空気)を分岐空気ダクト40からアディショナル空気ノズル39に供給することができる。
【0036】
ここで、燃焼装置12について詳細に説明するが、この燃焼装置12を構成する各燃焼バーナ21,22,23,24,25は、ほぼ同様の構成をなしていることから、最上段に位置する燃焼バーナ21についてのみ説明する。
【0037】
燃焼バーナ21は、火炉11における1つの火炉壁11aに設けられる燃焼バーナ21a,21b,21c,21dから構成されている。各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dは、微粉炭供給管26から分岐した各分岐管26a,26b,26c,26dが連結されると共に、空気ダクト37から分岐した各分岐管37a,37b,37c,37dが連結されている。
【0038】
従って、火炉11の各角部にある各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dは、火炉11に対して、微粉炭と搬送用空気が混合した微粉燃料混合気を吹き込むと共に、その微粉燃料混合気の外側に燃焼用空気を吹き込む。そして、各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dからの微粉燃料混合気に着火することで、4つの火炎F1,F2,F3,F4を形成することができ、この火炎F1,F2,F3,F4は、火炉11の上方から見て(
図2にて)第1隔壁61に向かう火炎となる。
【0039】
そのため、燃焼装置12にて、各燃焼バーナ21,22,23,24,25は、微粉炭と1次空気とを混合した微粉燃料混合気(燃料ガス)を火炉11内の燃焼領域Aに吹き込み可能であると共に、2次空気を火炉11内の燃焼領域Aに吹き込み可能となっている。そして、図示しない点火トーチにより微粉燃料混合気に点火することで、燃焼領域Aに火炎を形成することができる。
【0040】
すると、燃焼領域Aで発生した燃焼ガスは、この燃焼領域Aを下方に流れ、第1隔壁61の下端部を迂回して還元領域Bに流れ、この還元領域Bを上昇する。そして、燃焼ガスが還元領域Bを通過したとき、アディショナル空気ノズル39は、追加空気を火炉11内における還元領域Bの上方を流れる燃焼ガスに吹き込み可能となっている。
【0041】
なお、一般的に、ボイラの起動時には、各燃焼バーナ21,22,23,24,25は、油燃料を火炉11内に噴射して火炎を形成している。
【0042】
火炉11は、上部に水平方向に沿った煙道50が連結されており、この煙道50に、対流伝熱部として排ガスの熱を回収するための過熱器(スーパーヒータ)51,52、再熱器53,54、節炭器(エコノマイザ)55,56,57が設けられており、火炉11での燃焼で発生した排ガスと水との間で熱交換が行われる。
【0043】
本実施例にて、火炉11は、火炉壁11dの上部側に水平方向をなす煙道50が連結されており、火炉壁11a側に燃焼領域Aが区画され、火炉壁11d側に還元領域Bが区画されている。即ち、煙道50側に還元領域Bが設けられている。そして、火炉11は、上部における第2隔壁62(燃焼領域A)側に過熱器(熱交換器)51,52が配置され、火炉壁11d側に還元領域Bを上昇する燃焼ガスを過熱器51,52に導くキッカ63が設けられている。
【0044】
従って、燃焼ガスが還元領域Bを通過して火炉11まで上昇すると、火炉壁11d側を上昇する燃焼ガスは、キッカ63により火炉壁11a側に送り出され、過熱器51,52に導かれる。
【0045】
煙道50は、その下流側に熱交換を行った排ガスが排出される排ガス管58が連結されている。この排ガス管58は、空気ダクト37との間にエアヒータ59が設けられ、空気ダクト37を流れる空気と、排ガス管58を流れる排ガスとの間で熱交換を行い、燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給する燃焼用空気を昇温することができる。
【0046】
なお、排ガス管58は、図示しないが、脱硝装置、電気集塵機、誘引送風機、脱硫装置が設けられ、下流端部に煙突が設けられている。
【0047】
従って、微粉炭機31,32,33,34,35が駆動すると、生成された微粉炭が搬送用空気と共に微粉炭供給管26,27,28,29,30を通して燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給される。また、エアヒータ59により加熱された燃焼用空気が空気ダクト37から風箱36を介して各燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給されると共に、分岐空気ダクト40からアディショナル空気ノズル39に供給される。
【0048】
すると、燃焼バーナ21,22,23,24,25は、微粉炭と搬送用空気とが混合した微粉燃料混合気を火炉11の燃焼領域Aに吹き込むと共に燃焼用空気を火炉11の燃焼領域Aに吹き込み、このときに着火することで、この燃焼領域Aで火炎を形成することができる。そして、燃焼領域Aで微粉燃料混合気と燃焼用空気が燃焼して発生した燃焼ガスは、燃焼領域Aの側方及び上方が閉塞されていることから下方に流れ、第1隔壁61の下端部を迂回して還元領域Bに流れ、この還元領域Bを上昇する。
【0049】
アディショナル空気ノズル39は、還元領域Bを通過して上昇する燃焼ガスに対して追加空気を吹き込み、燃焼制御を行うことができる。この火炉11では、燃焼領域Aで微粉燃料混合気と燃焼用空気とが燃焼して火炎が生じ、この燃焼領域Aで火炎が生じると、燃焼ガス(排ガス)が燃焼領域Aから還元領域Bに移動して上昇し、煙道50に排出される。
【0050】
このとき、火炉11では、空気の供給量が微粉炭の供給量に対して理論空気量未満となるように設定されることで、内部、つまり、還元領域Bが還元雰囲気に保持される。そして、微粉炭の燃焼により発生したNOxがこの還元領域Bで還元され、その後、追加空気(アディショナルエア)が追加供給されることで微粉炭の酸化燃焼が完結され、微粉炭の燃焼によるNOxの発生量が低減される。即ち、火炉11は、燃焼装置12(燃焼領域Aとアディショナル空気ノズル39との間に還元領域Bが形成される。
【0051】
そして、図示しない給水ポンプから供給された水は、節炭器55,56,57によって予熱された後、図示しない蒸気ドラムに供給され火炉壁の各水管(図示せず)に供給される間に加熱されて飽和蒸気となり、図示しない蒸気ドラムに送り込まれる。更に、図示しない蒸気ドラムの飽和蒸気は過熱器51,52に導入され、燃焼ガスによって過熱される。過熱器51,52で生成された過熱蒸気は、図示しない発電プラント(例えば、タービン等)に供給される。また、タービンでの膨張過程の中途で取り出した蒸気は、再熱器53,54に導入され、再度過熱されてタービンに戻される。なお、火炉11をドラム型(蒸気ドラム)として説明したが、この構造に限定されるものではない。
【0052】
その後、煙道50の節炭器55,56,57を通過した排ガスは、排ガス管58にて、図示しない脱硝装置にて、触媒によりNOxなどの有害物質が除去され、電気集塵機で粒子状物質が除去され、脱硫装置により硫黄分が除去された後、煙突から大気中に排出される。
【0053】
なお、上述した実施例にて、燃焼装置12は、燃焼バーナ21(22,23,24,25)にて、火炉11における第1隔壁61に対向する1つの火炉壁11aに4個の燃焼バーナ21a,21b,21c,21dを並列に配置して構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、
図3に示すように、燃焼装置70にて、燃焼バーナ71は、火炉11における2つの火炉壁11c,11dに設けられる燃焼バーナ71a,71b,71c,71dから構成されている。2個の燃焼バーナ71a,71bは、火炉11における第1隔壁61に隣接する1つの火炉壁11cに設けられ、燃焼バーナ71c,71dは、火炉11における第1隔壁61に隣接する1つの火炉壁11dに設けられている。そして、各燃焼バーナ71a,71b,71c,71dは、微粉炭供給管26から分岐した各分岐管26a,26b,26c,26dが連結されると共に、空気ダクト37から分岐した各分岐管37a,37b,37c,37dが連結されている。
【0054】
このように本実施例のボイラにあっては、火炉11内に鉛直方向に沿って第1隔壁61を配置すると共に、第1隔壁61の上端から水平方向に沿って第2隔壁62を配置することで、燃焼領域Aと還元領域Bを水平方向に第1隔壁61を隔てて区画し、燃焼領域Aに向けて燃料ガスを吹き込むことで火炎を形成可能な燃焼バーナ21,22,23,24,25と、還元領域Bの上方に向けて追加空気を吹き込むアディショナル空気ノズル39を設けている。
【0055】
従って、水平方向に隣接する燃焼領域Aと還元領域Bが連続して設けられていることから、燃焼バーナ21,22,23,24,25が燃焼領域Aに燃料ガスを吹き込むことで火炎が形成され、発生した燃焼ガスは、燃焼領域Aから下方に流れて還元領域Bに至り、この還元領域Bを上昇した後、アディショナル空気ノズル39から追加空気が供給される。このとき、燃料ガスは、2次空気量が微粉炭量に対して理論空気量未満となるように設定されることで、燃焼領域Aに続いて還元領域Bが形成され、ここで、微粉炭の燃焼により発生したNOxが還元され、その後、追加空気により微粉炭の酸化燃焼が完結され、微粉炭の燃焼によるNOxの発生量を抑制することができる。その結果、燃焼領域Aに対して還元領域Bを十分長く確保することで、NOxの発生を確実に抑制することができるだけでなく、火炉11の高さを抑制して建設コストを低減することができる。
【0056】
即ち、
図4に示すように、NOx還元領域における燃焼ガスの滞留時間が長くなると、NOx発生量が減少することとなる。
【0057】
本実施例のボイラでは、燃焼領域Aを火炉壁11a,11c,11dと第1隔壁61と上方の第2隔壁62とで区画して形成し、下方を開放して還元領域Bに連通している。従って、燃焼バーナ21,22,23,24,25から燃焼領域Aに噴射された燃料ガスは、ここで燃焼して燃焼ガスとなり、燃焼領域Aの下方から還元領域Bに流れ、この還元領域Bを上昇することとなり、簡単な構成で還元領域Bを十分に長く確保することができる。
【0058】
本実施例のボイラでは、燃焼バーナ21a,21b,21c,21dを第1隔壁61に対向する火炉壁11aに設けている。従って、燃焼バーナ21a,21b,21c,21dは、燃料ガスを第1隔壁61に向けて噴射することとなり、この領域に燃焼領域Aを安定して確保することができる。また、燃焼バーナ71a,71b,71c,71dを第1隔壁61に隣接する火炉壁11c,11dに設けている。従って、燃焼バーナ71a,71b,71c,71dは、燃料ガスを互いに対向して噴射することとなり、この領域に燃焼領域Aを安定して確保することができる。
【0059】
本実施例のボイラでは、第1隔壁61の下端部を燃焼バーナ21,22,23,24,25より鉛直方向における下方まで延設している。従って、燃焼領域Aと還元領域Bを適正に区画することができる。
【0060】
本実施例のボイラでは、過熱器51,52を燃焼領域A(第2隔壁62)の上方に配置し、還元領域Bの燃焼ガスを過熱器51,52側に導くキッカ63を設けている。従って、還元領域Bを上昇した燃焼ガスは、キッカ63により過熱器51,52に導かれることとなり、過熱器51,52により熱交換効率を向上することができる。
【0061】
本実施例のボイラでは、火炉11における火炉壁11dの上部側に水平方向をなす煙道50を連結し、火炉壁11a側に燃焼領域Aを区画し、火炉壁11d(煙道50)側に還元領域Bを区画し、この還元領域Bに燃焼ガスを過熱器51,52に導くキッカ63を設けている。従って、還元領域Bを上昇した燃焼ガスは、キッカ63により適正に過熱器51,52に導かれた後、適正に煙道50に流れることとなり、過熱器51,52により熱交換効率を向上することができる。
【0062】
なお、上述した実施例では、燃焼領域と還元領域の通路面積をほぼ同様としたが、火炉の形状や燃焼装置の構成、燃焼バーナの数や性能などに応じて燃焼領域と還元領域のいずれか一方を大きく設定してもよい。
【0063】
また、上述した実施例では、本発明のボイラを石炭焚きボイラとしたが、燃料としては、バイオマスや石油コークスを使用するボイラであってもよい。