(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986903
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】作業車輌
(51)【国際特許分類】
B62D 49/00 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
B62D49/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-254721(P2012-254721)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-101047(P2014-101047A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】渡部 英知
(72)【発明者】
【氏名】馬場 馨一
【審査官】
田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−247299(JP,A)
【文献】
特開2008−082648(JP,A)
【文献】
特開2000−335452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 49/00
F16B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンネットの後方に配置される機枠と、該機枠の後方においてステアリングポストの周囲を覆い、前記機枠に着脱自在に設けられるパネルリアカバーと、を備えた作業車輌において、
前記パネルリアカバーは、前記機枠側に突出すると共にリブを有する突出部を備え、
前記機枠は、前記ボンネットが取り付けられる枠部と、溝を有する嵌合部と、を備え、
前記リブは、前記突出部が前記嵌合部に嵌合することで、前記パネルリアカバーの着脱方向とは直交する方向に弾性変形して前記溝に係合する、
ことを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記パネルリアカバーの前端縁には、前記突出部と、前記枠部に固定可能な取付部と、が設けられ、
前記嵌合部は、前記枠部の左右方向における外側に設けられてなる、
請求項1記載の作業車輌。
【請求項3】
前記突出部は、薄肉部と、該薄肉部に対して前記パネルリアカバー側に配置される肉厚部と、を備え、
前記リブは、前記薄肉部から左右方向に突出すると共に、前記着脱方向に細長に延出されてなる、
請求項1又は2記載の作業車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車輌に係り、詳しくは、ステアリングポストの周囲を覆うパネルリアカバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラクタ等の作業車輌は、ボンネットの後方に配設される運転操作部において、運転席に着座した作業者の足元正面に、かつステアリングポストの周囲を覆うようにしてパネルリアカバーが配置されている。従来、該パネルリアカバーを、走行機体から立設された機枠に着脱自在に支持した作業車輌が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−335452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載のものは、機枠とパネルリアカバーに、係合具及びこれに係合する被係合具をそれぞれ振り分けて複数配置し、これら係合具と被係合具が係合することによって、機枠にパネルリアカバーが位置合わせされている。具体的には、係合具は、パネルリアカバーに一体形成されたリブからなり、該リブは、上下方向に偏平で先端中央部に凹みを形成している。被係合具は、機枠から突出し左右方向に偏平に形成されて、かつ先端中央部が前記係合具であるリブの凹みに係合するように凹みが形成されている。
【0005】
特許文献1のものは、前記係合具及び非係合具の係合による取付けが5箇所と、ボルト留めによる取付けが4箇所あり、機枠にパネルリアカバーを組み付ける際には、まず係合具及び非係合具を係合させて位置合わせし、その後ボルト留めによって固定する。
【0006】
しかしながら、係合具及び非係合具における位置合わせは、数が多く部品点数が多くなると共に、5箇所を同時に位置合わせするのは困難であり、かつこれら係合具及び非係合具の先端中央部に設けられた凹みの係合によってのみ行われるため、取付け保持力が弱いという問題があった。また、取付け保持力が弱いことに起因して、トラクタのアイドリング時や走行時等において、ビビリ音が発生する虞もあった。
【0007】
そこで、本発明は、機枠側に設けた溝にパネルリアカバー側に設けたリブが弾性変形して係合することで、機枠にパネルリアカバーを高い保持力でもって取付けて、もって上述した課題を解決する作業車輌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ボンネット(6)の後方に配置される機枠(9)と、該機枠(9)の後方においてステアリングポスト(22)の周囲を覆い、前記機枠(9)に着脱自在に設けられるパネルリアカバー(26)と、を備えた作業車輌(1)において、
前記パネルリアカバー(26)
は、前記機枠(9)側に突出すると共にリブ(33)を有する突出部(32)を
備え、
前記機枠(9)
は、
前記ボンネット(6)が取り付けられる枠部(9b)と、溝(36)を有する嵌合部(35)
と、を
備え、
前記リブ(33)は、前記突出部(32)
が前記嵌合部(35)に嵌合
することで、前記パネルリアカバー(26)の着脱方向とは直交する方向に弾性変形して前記溝(36)に係合する、
ことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、例えば図
4、図5及び図8を参照して、
前記パネルリアカバー(26)の前端縁(26c)には、前記突出部(32)と、前記枠部(9b)に固定可能な取付部(30)と、が設けられ、
前記嵌合部(35)は、前記枠部(9b)の左右方向における外側に設けられてなる。
【0010】
例えば
図6,
図7,
図9を参照して、前記突出部(32)は
、薄肉部(32a)と、該薄肉部(32a)に対して前記パネルリアカバー(26)側に配置される肉厚部(32b)と、を備え
、
前記リブ(33)は、前記薄肉部(32a)から左右方向に突出すると共に、前記着脱方向に細長に延出されてなる。
【0011】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明は、ボルト等を用いることなく突出部と嵌合部の嵌合によってパネルリアカバーを機枠に位置決め・取付けし、部品点数の削減及び組立作業を簡便にすると共に、突出部を嵌合部に嵌合する際に突出部に設けたリブが嵌合部の溝によって弾性変形するので、高い取付け保持力を有し、突出部と嵌合部から発生するビビリ音を抑制することができる。
また、リブがパネルリアカバーの着脱方向とは直交する方向に弾性変形するので、パネルリアカバーを繰り返し着脱したとしてもリブが簡単に破損することがなく、耐久性を向上することができる。
【0013】
請求項2に係る本発明は、
嵌合部を枠部の外側に設けたので、パネルリアカバーを枠部に沿って形成する必要がなく、パネルリアカバーの形状の自由度を向上することができる。また、突出部と嵌合部によってパネルリアカバーを機枠に位置決めした状態で、取付部によってパネルリアカバーを機枠に対して高い保持力で固定することができる。
【0014】
請求項3に係る本発明は、突出部が、リブを有する薄肉部に対してパネルリアカバー側に肉厚部を有するので、突出部の強度を向上して、破損を防止することができる。
また、リブが着脱方向に細長に延出されて形成されるので、リブが嵌合部に形成された溝に対して線接触して高い取り付け保持力を有し、突出部と嵌合部から発生するビビリ音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係るトラクタの全体を示す斜視図。
【
図3】本発明の実施の形態に係るトラクタのボンネットが開いた状態を示す側面図。
【
図4】ボンネット内のエンジンルームを示す斜視図。
【
図5】パネルリアカバーを示す図であって、(a)は平面図、(b)は背面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図。
【
図6】パネルリアカバーの突出部を示す拡大斜視図。
【
図7】パネルリアカバーの突出部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)は正面拡大図。
【
図8】パネルリアカバーを機枠に取付けた図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図。
【
図9】嵌合部に突出部を嵌合している状態を示す拡大平面図。
【
図10】リブが溝に係合している状態を示す図であって、(a)は背面図、(b)はその拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。本発明を適用したトラクタ(作業車輌)1は、
図1ないし
図4に示すように、前輪及び後輪(不図示)により支持される走行機体2と、該走行機体2の後部に昇降自在に連結されたロータリ耕耘装置等の作業機(不図示)と、を備え、上記走行機体2を前進走行させながら、作業機によって耕耘作業等の各種作業を行なう。
【0017】
上記走行機体2は、前後方向に延びる金属製の車台3を備えており、該車台3の前部に取付けられて、エンジンルーム5を覆うボンネット6と、該ボンネット6の後方に配置される運転操作部7と、を有している。上記ボンネット6と上記運転操作部7との間には、上記車台3から立接される機枠9が配置されており、該機枠9は、インテークカバー10によってその外面が覆われている。
【0018】
上記ボンネット6は、
図3に示すように、上記エンジンルーム5の前方を覆うフロントグリル11と、その左右側面を覆うサイドカバー12,12と、その上方を覆うボンネットフード13と、からなり、該ボンネットフード13は、その後側において上記機枠9に枢支されて開閉自在に、かつ閉じた状態で固定自在となっている。上記フロントグリル11及び左右のサイドカバー12,12は、ノブボルト(不図示)によって、上記車台3に一体的に固定された固定部材14に着脱自在に共締め固定されている。
【0019】
上記エンジンルーム5は、
図4に示すように、エンジン15,上記固定部材14の後方及び前方にそれぞれ配置されるラジエータ16,バッテリー17等を有しており、上記エンジン15を冷却するラジエータ16は、その内部に流れる冷却水が上記フロントグリル11を介してエンジンルーム5内に導入された空気によって冷却されるように構成されている。
【0020】
上記運転操作部7は、作業者が着座する運転座席19、ステアリングハンドル20、エンジンコントロールレバー21、不図示のブレーキペダル、クラッチペダル等を有している。上記ステアリングハンドル20は、その回転中心においてステアリングポスト22に接続されており、該ステアリングポスト22は下方に延びて、ポストカバー23で覆われて保護されている。更に、上記ステアリングポスト22は、上記ステアリングハンドル20の前方に配置されるパネルバイザー25と、運転座席19に着座した作業者の足元正面を覆うパネルリアカバー26と、によってその周囲が覆われている。上記パネルバイザー25は、庇部25aを有し、該庇部25aにその上方及び側方が覆われる各種メータ類を表示するメータパネル(不図示)を日差しから保護し、作業者がメータパネルを視認しやすくしている。上記パネルバイザー25及びパネルリアカバー26は、上記機枠9に着脱自在に支持されている。
【0021】
上記パネルリアカバー26は、
図5に示すように、上記運転座席19側を覆う後背面26a及び両側面26b,26bを有し、上方、下方、及び前方が開放されて、平面視略∪字状に樹脂等によって一体成形されている。上記両側面26b,26bの上縁中央部には、上記パネルバイザー25の内方に差し込まれる差し込み部27が配置されており、上記後背面26aの上縁中央部には、上記パネルバイザー25とボルトによって連結される連結部29が配置されている。また、上記両側面26b,26bの前端縁26cの中央部よりやや下方には、上記前端縁26cから上記機枠9側に突出する取付部30が配置されており、該取付部30の凹部30aにボルト31が嵌挿されて、上記機枠9にボルト留めによって固定される(
図2及び
図4参照)。
【0022】
上記前端縁26cの中央部よりやや上方には、
図5ないし
図7に示すように、上記機枠9側に突出する突出部32が形成されている。より詳しくは、該突出部32は、上記機枠9側の薄肉部32aと、該薄肉部32aに対して上記パネルリアカバー26側に配置される肉厚部32bと、を有し、該肉厚部32bは、上記前端縁26cよりも上記両側面26bの内方に亘って延出すると共に該両側面26bに一体に固定されているので、上記突出部32の強度を向上でき、破損の防止が図られている。上記薄肉部32aは、該薄肉部32aの突出方向と直交する方向、すなわち左右方向に突出するリブ33をその両側に2個ずつ有しており、これらリブ33は弾性部材からなり、一方向のみに変形しやすいように断面直角3角形状に形成されている。なお、リブ33は、弾性体であればどんな物質から構成されてもよいが、パネルリアカバー26と樹脂一体成形されると好適である。
【0023】
上記機枠9は、
図8ないし
図10に示すように、上記車台3に取り付けられる土台部9aと、該土台部9aから門形に形成される枠部9bと、を有している。上記枠部9bの両側部には、外方に突出する嵌合部35が一体に形成されており、該嵌合部35には、上下方向に細長で、かつ上方が開放された切欠き35aが形成されている。該切欠き35aの内周部には、上記突出部32に形成されたリブ33の先端部33aに対応する位置に溝36が4箇所形成されており、上下方向同じ高さに配置された2つの溝36の距離は、上記突出部32に上下方向同じ高さに配置された2つのリブ33の先端部33aの先端間の距離よりも僅かに小さく設定されている。
【0024】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、作業者が、トラクタ1のパネルリアカバー26を機枠9に取付ける際には、まず、該機枠9の嵌合部35に形成された切欠き35aに、パネルリアカバー26の突出部32を位置合わせして差し込む。この際、突出部32に形成されたリブ33の先端部33aは、
図10に示すように、嵌合部35に形成された溝36に位置合わせされると共に、嵌合部35の左右寸法(溝36から溝36)が突出部32の左右寸法(リブ33の先端部33aから先端部33a)よりも僅かに小さく設定されているために、弾性変形して、上記溝36に係合する。これにより、嵌合部35は、リブ33の先端部33aに線で当接し、高い取付け保持力を有し、突出部32と嵌合部35から発生するビビリ音を抑制することができる。リブ33は、断面直角3角形状に形成されているために、溝36に係合する際に、その先端部33aが所定の一方向(本実施の形態では、直角三角形の鈍角から直角の方向)に弾性変形し、パネルリアカバー26を機枠9から脱着する際のリブ33の破損や摩耗を軽減することができる。
【0025】
パネルリアカバー26の突出部32を機枠9の嵌合部35に差し込んだ後には、これらパネルリアカバー26と機枠9とが高い取付け保持力で取付けられて位置決めされているので、パネルバイザー25及び機枠9にそれぞれボルト留めする連結部29及び取付部30の取付けが自動的に高い精度で位置合わせされており、組立作業を簡便に行なうことができる。これら連結部29及び取付部30をボルト留めして、パネルリアカバー26を機枠9及びパネルバイザー25に固定する。突出部32及び嵌合部35の取付け保持力が高いために、他の取付箇所を減らすことができ、部品点数を削減できるとともに、組立作業が簡便になる。
【0026】
なお、本発明はトラクタに限らず、田植機等の他の作業車輌に対しても適応可能である。
【0027】
また、リブ33は、一方向に変形しやすい形状であればどんな形状でもよく、断面直角3角形状に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0028】
1 作業車輌(トラクタ)
6 ボンネット
9 機枠
22 ステアリングポスト
26 パネルリアカバー
32 突出部
32a 薄肉部
32b 肉厚部
33 リブ
35 嵌合部
36 溝