特許第5986908号(P5986908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986908
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20160823BHJP
   B41L 13/16 20060101ALI20160823BHJP
   B41F 33/14 20060101ALI20160823BHJP
   B41F 33/16 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B41J29/38 Z
   B41J29/38 B
   B41J29/38 D
   B41L13/16 B
   B41F33/14 Z
   B41F33/16
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-265164(P2012-265164)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-108603(P2014-108603A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】坂入 滋高
【審査官】 大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−177245(JP,A)
【文献】 特開2011−037109(JP,A)
【文献】 特開2000−099214(JP,A)
【文献】 特開2002−086700(JP,A)
【文献】 特開昭61−257861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41F 33/14
B41F 33/16
B41L 13/16
B65H 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷開始時には、予め設定された初期位置から動作を開始するように制御される駆動部材と、
前記駆動部材の位置を検出する検出手段と、
前記駆動部材の初期位置を記憶する記憶手段と、
前記駆動部材を初期位置に移動させる初期化処理を実行する初期化手段と、
停止処理として、消費電力を抑えた制御を行う省電力モードへの移行処理又は電源をオフする処理が設定されると共に、起動処理として、前記省電力モードから印刷処理を実行する印刷モードへの移行処理又は電源をオンする処理が設定され、前記停止処理又は前記起動処理のいずれが要求されたかを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記停止処理が要求されたと判定されたときに、前記初期化手段に前記初期化処理を実行させた後に、前記停止処理を実行し、前記判定手段により前記起動処理が要求されたと判定されたときに、前記検出手段により検出された前記駆動部材の位置と、前記記憶手段により記憶された初期位置とが異なる場合に、前記初期化手段に初期化処理を実行させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記駆動部材にセンサ光を照射すると共に、この照射されたセンサ光の透過光又は反射光を受光することにより、前記駆動部材に対する受光状態を検出し、
前記記憶手段は、前記駆動部材の初期位置における前記検出手段により検出された受光状態を初期受光状態として記憶し、
前記制御手段は、
前記判定手段により前記起動処理が要求されたと判定されたときに、前記検出手段により検出された前記駆動部材に対する受光状態と、前記記憶手段により記憶された初期受光状態とが異なる場合、前記初期化手段に初期化処理を実行させる
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記判定手段により前記停止処理が要求されたと判定された場合、前記初期化手段による初期化処理の実行後に、前記検出手段により検出された前記駆動部材に対する受光状態を前記初期受光状態として前記記憶手段に記憶させる
ことを特徴とする請求項2記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に印刷する印刷装置であり、特に、電源オン時や省電力モードからの起動時に迅速に印刷を開始する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
孔版印刷装置は、製版された孔版原紙を回転するドラムに巻き付けた後、印刷用紙をこのドラムに給紙し、ドラムを回転しながら、供給された印刷用紙をプレスロールによりドラムに圧接することにより印刷を行い、印刷された用紙を排紙台に排紙するものである。
【0003】
このような孔版印刷装置において、電源のオン操作や省電力モードから復帰させる等の起動操作が行われた場合、印刷開始できるように、ドラムの回転位置や排紙台のフェンス位置等を初期位置に移動させる初期化処理を実行する必要がある。この初期化処理を完了するには相当の時間を要するので、起動操作が行われた時に初期化処理を実行すると、印刷開始が遅延するという問題があった。
【0004】
特許文献1には、消費電力を抑える省電力制御(省電力モード)を備えた記録装置において、省電力制御中は常に記録装置の内部機器を監視し、省電力制御中にユーザによってなされた操作等に起因してメカニカルな位置の初期化や記録ヘッドのクリーニングが必要と判断した場合のみ、省電力制御から記録制御に移行した際にメカニカルな位置の初期化及び記録ヘッドのクリーニングを行う記録装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−345307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の記録装置では、省電力制御中は常に、記録装置の内部機器を監視する必要があるので、省電力制御中にもかかわらず監視するための余計な電力を消費していた。また、電源オフ中は、記録装置の内部機器を監視することができないので、電源がオンされた場合に、適切に初期化することが困難であり印刷開始が遅延するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電源オフ中や省電力モード中に余計な電力を消費することなく、電源オン時や省電力モードからの起動時においても、迅速に印刷を開始する印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第1の特徴は、印刷開始時には、予め設定された初期位置から動作を開始するように制御される駆動部材と、前記駆動部材の位置を検出する検出手段と、前記駆動部材の初期位置を記憶する記憶手段と、前記駆動部材を初期位置に移動させる初期化処理を実行する初期化手段と、停止処理として、消費電力を抑えた制御を行う省電力モードへの移行処理又は電源をオフする処理が設定されると共に、起動処理として、前記省電力モードから印刷処理を実行する印刷モードへの移行処理又は電源をオンする処理が設定され、前記停止処理又は前記起動処理のいずれが要求されたかを判定する判定手段と、前記判定手段により前記停止処理が要求されたと判定されたときに、前記初期化手段に前記初期化処理を実行させた後に、前記停止処理を実行し、前記判定手段により前記起動処理が要求されたと判定されたときに、前記検出手段により検出された前記駆動部材の位置と、前記記憶手段により記憶された初期位置とが異なる場合に、前記初期化手段に初期化処理を実行させる制御手段と、を備えたことにある。
【0009】
本発明に係る印刷装置の第2の特徴は、前記検出手段は、前記駆動部材にセンサ光を照射すると共に、この照射されたセンサ光の透過光又は反射光を受光することにより、前記駆動部材に対する受光状態を検出し、前記記憶手段は、前記駆動部材の初期位置における前記検出手段により検出された受光状態を初期受光状態として記憶し、前記制御手段は、前記判定手段により前記起動処理が要求されたと判定されたときに、前記検出手段により検出された前記駆動部材に対する受光状態と、前記記憶手段により記憶された初期受光状態とが異なる場合、前記初期化手段に初期化処理を実行させることにある。
【0010】
本発明に係る印刷装置の第3の特徴は、前記制御手段は、前記判定手段により前記停止処理が要求されたと判定された場合、前記初期化手段による初期化処理の実行後に、前記検出手段により検出された前記駆動部材に対する受光状態を前記初期受光状態として前記記憶手段に記憶させることにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る印刷装置の第1の特徴によれば、制御手段は、判定手段により停止処理が要求されたと判定されたときに、初期化手段に初期化処理を実行させた後に、停止処理を実行し、判定手段により起動処理が要求されたと判定されたときに、検出手段により検出された駆動部材の位置と、記憶手段により記憶された初期位置とが異なる場合に、初期化手段に初期化処理を実行させるので、電源オフ中や省電力モード中に余計な電力を消費することなく、電源オン時や省電力モードからの起動時においても、迅速に印刷を開始することができる。
【0012】
本発明に係る印刷装置の第2の特徴によれば、制御手段は、起動処理が要求されたと判定されたときに、検出手段により検出された駆動部材に対する受光状態と、記憶手段により記憶された初期受光状態とが異なる場合、初期化手段に初期化処理を実行させる。そのため、駆動部材の初期位置における受光状態が一定ではない場合においても、電源オフ中又は省電力モードにて制御中に、駆動部材が移動された場合のみ、初期化処理を実行するので、迅速に印刷を開始することができる。
【0013】
本発明に係る印刷装置の第3の特徴によれば、制御手段は、停止処理が要求されたと判定された場合、初期化手段による初期化処理の実行後に、検出手段により検出された駆動部材に対する受光状態を初期受光状態として記憶手段に記憶させるので、駆動部材が初期位置にある場合における検出手段により検出される受光状態が一定ではない場合においても、正確に駆動部材が移動されたか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である孔版印刷装置のハードウェア構成を示す機器構成図である。
図2】本発明の一実施形態である孔版印刷装置が備える排紙台を示した斜視図である。
図3】本発明の一実施形態である孔版印刷装置が備える排紙台を示した平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る孔版印刷装置の機能構成を示した機能構成図である。
図5】本発明の一実施形態である孔版印刷装置における停止処理の処理フローを示したフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態である孔版印刷装置における起動処理の処理フローを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
本発明の一実施形態では、印刷装置として、孔版印刷装置を例に挙げて説明する。
【0017】
<孔版印刷装置の構成>
本発明の一実施形態である孔版印刷装置の構成について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態である孔版印刷装置のハードウェア構成を示す機器構成図である。
【0019】
図1に示すように、孔版印刷装置1は、製版部2と、印刷部3と、給紙部4と、排紙部5及び排版部6とを備えている。
【0020】
製版部2は、ロールされた長尺状の孔版原紙21を収容する原紙収容部22と、この原紙収容部22の搬送下流に配置されたサーマルヘッド23と、このサーマルヘッド23の対向位置に配置されたプラテンロール24と、このプラテンロール24及びサーマルヘッド23の搬送下流に配置された一対の原紙送りロール25と、プラテンロール24及び原紙送りロール25を回転駆動させるライトパルスモータ26と、一対の原紙送りロール25の搬送下流に配置された原紙カッタ27とを有する。
【0021】
そして、製版部2は、プラテンロール24と原紙送りロール25の回転により長尺状の孔版原紙21を搬送し、図示しない画像読み取り部により読み取られた画像データに基づき、サーマルヘッド23の各点状発熱体が選択的に発熱動作することにより孔版原紙21に感熱穿孔して製版し、この製版された孔版原紙21を原紙カッタ27で切断して所定長さの孔版原紙21を作製する。
【0022】
印刷部3は、メインモータ31の駆動力によって図1の矢印A方向に回転するドラム32と、このドラム32の外周面に設けられ、孔版原紙21の先端をクランプする原紙クランプ部33とを備えている。
【0023】
また、印刷部3は、ドラム32の外周面に孔版原紙21が巻き付け装着されているか否かを検出する原紙確認センサ34と、ドラム32の基準位置を検出する基準位置検出センサ35と、メインモータ31の回転に応じて所定の周期でパルス信号を出力するロータリエンコーダ36とを有する。基準位置検出センサ35の検出出力を基にロータリエンコーダ36の出力パルス信号を検出することによってドラム32の回転角度を算出することができるようになっている。具体的には、ロータリエンコーダ36は、メインモータ31の回転軸に図示しない一定の間隔で切り欠いている遮光板が固定されている。そして、この遮光板を挟むように、センサ光を照射する発光素子と、発光素子から照射されたセンサ光を受光する受光素子とが設けられており、この遮光板にセンサ光を照射し、切り欠き部分を通過したセンサ光を受光することにより、受光状態を“オン”又は“オフ”として検出する。これにより、メインモータ31の回転軸が回転することにより、一定の周期で受光素子の受光状態が変化し、この変化に基づいて、パルス信号を出力することができる。
【0024】
さらに、印刷部3は、ドラム32の下方位置に配置されたプレスロール37を有し、このプレスロール37はソレノイド部38の駆動力によってドラム32の外周面に押圧する押圧位置と、ドラム32の外周面から離間する待機位置との間で変移可能に構成されている。プレスロール37は、給紙部4からの給紙動作に同期して待機位置から押圧位置に変移され、印刷用紙41がドラム32の下部を通過する際のみ押圧位置に位置され、それ以外の時には待機位置に位置されるようになっている。
【0025】
そして、製版部2から搬送される孔版原紙21の先端を原紙クランプ部33でクランプし、このクランプした状態でドラム32が回転されて孔版原紙21がドラム32の外周面に巻き付け装着される。そして、ドラム32の回転に同期して給紙部4より給紙される印刷用紙41をプレスロール37でドラム32に巻装された孔版原紙21に押圧することによって印刷用紙41に孔版原紙21の穿孔からインクが転写されて画像が印刷されるようになっている。
【0026】
給紙部4は、印刷用紙41が積層される給紙台42と、この給紙台42から最上位置の印刷用紙41のみを搬送させる1次給紙ロール43,44と、この1次給紙ロール43,44によって搬送された印刷用紙41をドラム32の回転に同期してドラム32とプレスロール37間に搬送する一対の2次給紙ロール45と、この一対の2次給紙ロール45間に印刷用紙41が搬送されたか否かを検出する給紙センサ46と、給紙台42に積層された印刷用紙41を検出する紙有無センサ48とを有する。1次給紙ロール43,44には給紙クラッチ47を介してメインモータ31の回転が選択的に伝達されるように構成されている。
【0027】
排紙部5は、印刷された印刷用紙41をドラム32から分離する用紙分離爪51と、この用紙分離爪51によりドラム32から離間された印刷用紙41を搬送する排紙ローラ52と、この排紙ローラを駆動する排紙モータ55と、この排紙ローラ52上を印刷用紙41が通過するか否かを検出する紙ジャム検出センサ53と、排紙ローラ52により排紙される印刷用紙41が載置される排紙台54とを有する。
【0028】
また、排紙ローラ52には、排紙ファン52aが設けられ、印刷用紙41を排紙ローラ52で排紙できるように排紙ローラ52側に吸引する。
【0029】
紙ジャム検出センサ53は、印刷部3で印刷された印刷用紙41が正しく搬送されて来るか否かを検出する。印刷後に所定時間経過しても紙ジャム検出センサ53が印刷用紙41の搬送を検出しない場合には、印刷部3内で印刷用紙41が滞留していると判定される。
【0030】
排版部6は、ドラム32の外周面よりクランプ解除された孔版原紙21の先端を導き、この導いた使用済みの孔版原紙21をドラム32より引き剥がしながら搬送する排版搬送手段61と、この排版搬送手段61により搬送されて来る孔版原紙21を収納する排版ボックス62と、排版搬送手段61により排版ボックス62内に搬送されて来た孔版原紙21を排版ボックス62の奥に押し込む排版圧縮部材63とを有する。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態である孔版印刷装置1が備える排紙台54を示した斜視図である。
【0032】
図2に示すように、排紙台54は、排紙される印刷用紙41の落下位置に配置され、この排紙台54上には排紙フェンスである一対のサイドフェンス103,104及びエンドフェンス105が設けられている。一対のサイドフェンス103,104及びエンドフェンス105は、それぞれ排紙される印刷用紙41に干渉して載置位置を規制する起立位置と印刷用紙41の載置位置を規制できない傾倒位置とに変移可能に設けられている。
【0033】
ここで、一対のサイドフェンス103,104が、図中矢印Y1方向に傾倒して、印刷用紙41の排紙台54上の載置位置を規制できない位置を傾倒位置といい、一対のサイドフェンス103,104が、図中矢印Y2方向に起立して、印刷用紙41に干渉して載置位置を規制する位置を起立位置という。
【0034】
また、一対のサイドフェンス103,104は図中矢印X1又はX2で示した左右方向に、エンドフェンス105は前後Z1又はZ2方向にそれぞれ移動可能なように設けられており、一対のサイドフェンス103,104は排紙される印刷用紙41の左右端を規制し、エンドフェンス105は排紙される印刷用紙41の前端を規制する。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態である孔版印刷装置1が備える排紙台54を示した平面図である。
【0036】
図3に示すように、サイドフェンス103には、サイドフェンス103の移動方向、即ちX1−X2方向に、サイドフェンス103を支持するラックギア107が取り付けられている。そして、モータ109の回転軸が回転することにより、この回転軸に取り付けられたウォームギア108が回転し、ウォームギア108の回転によりラックギア107とラックギア107に取り付けられたサイドフェンス103がX1−X2方向に移動する。また、サイドフェンス103の近傍には、サイドフェンス103の初期位置を検出するホームポジションセンサ116が設けられている。
【0037】
ホームポジションセンサ116は、サイドフェンス103にセンサ光を照射すると共に、この照射されたセンサ光の反射光を受光することにより、サイドフェンス103に対する受光状態を検出する。具体的には、サイドフェンス103が最もX2方向に移動された位置を初期位置とし、ホームポジションセンサ116は、サイドフェンス103が初期位置にある場合には、受光状態を“オン”として検出し、サイドフェンス103が初期位置にない場合には、受光状態を“オフ”として検出する。
【0038】
同様に、サイドフェンス104には、サイドフェンス104の移動方向、即ちX1−X2方向に、サイドフェンス104を支持するラックギア110が取り付けられている。そして、モータ112の回転軸が回転することにより、この回転軸に取り付けられたウォームギア111が回転し、ウォームギア111の回転によりラックギア110とラックギア110に取り付けられたサイドフェンス104がX1−X2方向に移動する。また、サイドフェンス104の近傍には、サイドフェンス104の初期位置を検出するホームポジションセンサ117が設けられている。
【0039】
ホームポジションセンサ117は、サイドフェンス104にセンサ光を照射すると共に、この照射されたセンサ光の反射光を受光することにより、サイドフェンス104に対する受光状態を検出する。具体的には、サイドフェンス104が最もX1方向に移動された位置を初期位置とし、ホームポジションセンサ117は、サイドフェンス104が初期位置にある場合には、受光状態を“オン”として検出し、サイドフェンス104が初期位置にない場合には、受光状態を“オフ”として検出する。
【0040】
また、エンドフェンス105には、エンドフェンス105の移動方向、即ちZ1−Z2方向に、エンドフェンス105を支持するラックギア113が取り付けられている。そして、モータ115の回転軸が回転することにより、この回転軸に取り付けられたウォームギア114が回転し、ウォームギア114の回転によりラックギア113とラックギア113に取り付けられたエンドフェンス105がZ1−Z2方向に移動する。また、エンドフェンス105の近傍には、初期位置を検出するホームポジションセンサ118が設けられている。
【0041】
ホームポジションセンサ118は、エンドフェンス105にセンサ光を照射すると共に、この照射されたセンサ光の反射光を受光することにより、エンドフェンス105に対する受光状態を検出する。具体的には、エンドフェンス105が最もZ1方向に移動された位置を初期位置とし、ホームポジションセンサ118は、エンドフェンス105が初期位置にある場合には、受光状態を“オン”として検出し、エンドフェンス105が初期位置にない場合には、受光状態を“オフ”として検出する。
【0042】
図4は、本発明の一実施形態に係る孔版印刷装置1の機能構成を示した機能構成図である。
【0043】
図4に示すように、本発明の一実施形態に係る孔版印刷装置1は、制御部70と、記憶部80と、電力制御部81と、操作部90と、メインモータ31と、ドラム32と、ロータリエンコーダ36と、モータ109と、サイドフェンス103と、ホームポジションセンサ116とを備えている。
【0044】
記憶部80は、不揮発性の記憶媒体であり、ドラム32や、サイドフェンス103等の駆動部材の初期位置におけるロータリエンコーダ36やホームポジションセンサ116等の各センサにより検出された受光状態を初期受光状態として記憶する。
【0045】
電力制御部81は、制御部70への電力供給を制御する。
【0046】
操作部90は、孔版印刷装置1の上部に設けられ、製版や印刷等を開始させるためのスタートキー、製版や印刷等を停止させるためのストップキー、印刷枚数等を入力するためのテンキー(いずれも図示せず)等の各種操作キーとを備え、利用者操作に基づく操作信号を制御部70に供給する。
【0047】
メインモータ31は、上述したように、図1の矢印A方向にドラム32を回転させ、ロータリエンコーダ36が、ドラム32の回転軸に取り付けられた遮光板にセンサ光を照射すると共に、この照射されたセンサ光の透過光又は反射光を受光することにより、ドラム32の回転軸に取り付けられた遮光板に対する受光状態を検出する。
【0048】
モータ109は、上述したように、回転軸を回転駆動することにより、ウォームギア111を介してラックギア110とラックギア110に取り付けられたサイドフェンス103をX1−X2方向に移動する。ホームポジションセンサ116は、サイドフェンス103にセンサ光を照射すると共に、この照射されたセンサ光の反射光を受光することにより、サイドフェンス103に対する受光状態を検出する。なお、ドラム32やサイドフェンス103は、印刷開始時には、予め設定された初期位置から動作を開始するように制御される。
【0049】
制御部70は、孔版印刷装置1の中枢的な制御を行う。そして、制御部70は、その機能上、初期化部71と、判定部72と、機器制御部73とを備える。
【0050】
初期化部71は、ドラム32やサイドフェンス103等の駆動する部材である駆動部材を初期位置に移動させる初期化処理を実行する。
【0051】
判定部72は、消費電力を抑えた制御を行う省電力モードへの移行処理又は電源をオフする処理である停止処理が要求されたか否かを判定する。また、判定部72は、省電力モードから印刷処理を実行する印刷モードへの移行処理又は電源をオンする処理である起動処理が要求されたか否かを判定する。
【0052】
機器制御部73は、判定部72により停止処理が要求されたと判定された場合、初期化部71に初期化処理を実行させた後に、停止処理を実行する。
【0053】
また、機器制御部73は、判定部72により起動処理が要求されたと判定されたときに、各センサにより検出された駆動部材に対する受光状態と、記憶部80により記憶された初期受光状態とが異なる場合、初期化部71に初期化処理を実行させる。
【0054】
さらに、機器制御部73は、判定部72により停止処理が要求されたと判定された場合、初期化部71による初期化処理の実行後に、各センサにより検出された駆動部材に対する受光状態を初期受光状態として記憶部80に記憶させる。
【0055】
<孔版印刷装置1の作用>
次に、本発明の一実施形態である孔版印刷装置1の停止処理及び起動処理について以下に説明する。
【0056】
≪停止処理≫
本発明の一実施形態である孔版印刷装置1における停止処理の詳細について説明する。
【0057】
図5は、本発明の一実施形態である孔版印刷装置1における停止処理の処理フローを示したフローチャートである。ここで、停止処理とは、消費電力を抑えた制御を行う省電力モードへの移行処理又は電源をオフする処理のことをいう。
【0058】
図5に示すように、判定部72は、消費電力を抑えた制御を行う省電力モードへの移行処理又は電源をオフする処理である停止処理が要求されたか否かを判定する(ステップS101)。
【0059】
ステップS101において、停止処理が要求されたと判定された場合(YESの場合)、初期化部71は、初期化処理を実行する(ステップS103)。例えば、初期化部71は、メインモータ31を回転駆動することにより、ドラム32を基準位置まで回転させたり、モータ109を回転駆動することにより、サイドフェンス103を基準位置まで移動させたりする。
【0060】
次に、記憶部80は、駆動部材の初期位置における各センサにより検出された受光状態を初期受光状態として記憶する(ステップS104)。例えば、メインモータ31が回転駆動し、ドラム32が基準位置に達したときにおけるロータリエンコーダ36の受光状態を初期受光状態として記憶すると共に、モータ109が回転駆動し、サイドフェンス103が基準位置まで達したときにおけるホームポジションセンサ116の受光状態を初期受光状態として記憶する。
【0061】
そして、制御部70は、要求に基づき、消費電力を抑えた制御を行う省電力モードへの移行処理又は電源をオフする処理である停止処理を実行する(ステップS105)。具体的には、制御部70は、省電力モードへ移行した場合、電力制御部81と制御部70と省電力制御を行い、電源をオフした場合、電力制御部81のみ通電を継続し、他の構成機器の電力供給を停止する。
【0062】
このように、電源オン時や省電力モードからの復旧時等の起動時ではなく、停止処理が要求されたと判定された場合に、初期化部71は、初期化処理を実行した後、停止処理を実行するので、電源オン時や省電力モードからの復旧時等の起動時に、初期化処理を実行する必要がなく、迅速に印刷を開始することができる。
【0063】
また、初期受光状態として記憶した後、停止処理を実行するので、電源オフ中や省電力制御中に、各センサの状態を監視する必要がなく、電源オフ中や省電力制御中に余計な電力を消費することがない。
【0064】
≪起動処理≫
本発明の一実施形態である孔版印刷装置1における起動処理の詳細について説明する。
【0065】
図6は、本発明の一実施形態である孔版印刷装置1における起動処理の処理フローを示したフローチャートである。ここで、起動処理とは、省電力モードから印刷処理を実行する印刷モードへの移行処理又は電源をオンする処理をいう。
【0066】
図6に示すように、判定部72は、省電力モードから印刷処理を実行する印刷モードへの移行処理又は電源をオンする処理である起動処理が要求されたか否かを判定する(ステップS201)。
【0067】
ステップS201において、起動処理が要求されたと判定された場合(YESの場合)、制御部70は、記憶部80から初期受光状態を読み込む(ステップS203)。
【0068】
次に、ロータリエンコーダ36や、ホームポジションセンサ116等の各センサは、受光状態を検出する(ステップS205)。
【0069】
そして、機器制御部73は、ステップS205において各センサにより検出された受光状態と、ステップS203において読み込まれた初期受光状態とが一致するか否かを判定する(ステップS207)。
【0070】
ステップS207において、検出された受光状態と、読み込まれた初期受光状態とが一致すると判定した場合(YESの場合)、省電力モード又は電源オフ中に、ドラムやサイドフェンス等の駆動部材が移動されていない、即ち、各駆動部材は初期位置を保持しているということであるので、機器制御部73は、起動処理を実行する(ステップS211)。
【0071】
一方、ステップS27において、検出された受光状態と、読み込まれた初期受光状態とが一致しないと判定した場合(NOの場合)、省電力モード又は電源オフ中に、ドラム32やサイドフェンス103等の駆動部材が移動された、即ち、各駆動部材は初期位置を保持されていないということであるので、初期化部71は、一致しない受光状態に対応する駆動部材について、初期化処理を実行する(ステップS209)。
【0072】
例えば、ロータリエンコーダ36の受光状態と初期受光状態とが一致しない場合、初期化部71は、メインモータ31を回転駆動することにより、ドラム32を基準位置まで回転させる。また、ホームポジションセンサ116の受光状態と初期受光状態とが一致しない場合、初期化部71は、モータ109を回転駆動することにより、サイドフェンス103を基準位置まで移動させる。
【0073】
以上のように、本発明の一実施形態に係る孔版印刷装置1によれば、印刷が開始されると、初期位置から駆動するドラム32やサイドフェンス103等の駆動部材と、駆動部材を初期位置に移動させる初期化処理を実行する初期化部71と、消費電力を抑えた制御を行う省電力モードへの移行処理、又は電源をオフする処理である停止処理が要求されたか否かを判定する判定部72と、判定部72により停止処理が要求されたと判定された場合、初期化部71に初期化処理を実行させた後に、停止処理を実行する機器制御部73とを備えたので、電源オフ中や省電力モード中に監視する必要がなく、また、電源オン時や省電力モードからの復旧時等の起動時において初期化処理を実行する必要がない。そのため、電源オフ中や省電力モード中に余計な電力を消費することなく、電源オン時や省電力モードからの復旧時等の起動時においても、迅速に印刷を開始することができる。
【0074】
なお、本発明の一実施形態では、駆動部材として、ドラム32やサイドフェンス103を例に挙げて説明したが、これに限らず、サイドフェンス104や、エンドフェンス105、給紙台42等の受光状態を検出するセンサを有する駆動部材であればよい。
【0075】
なお、駆動部材が初期位置にある場合、センサにより検出される受光状態が一定である場合、対象の駆動部材に対応する受光状態の記憶部80への記憶を省略することもできる。
【0076】
ロータリエンコーダ36は、メインモータ31の回転軸に一定の間隔で切り欠いている遮光板が固定されており、この遮光板にセンサ光を照射し、切り欠き部分を通過したセンサ光を受光することにより、受光状態を“オン”又は“オフ”として検出するので、ドラム32が初期位置にある場合、常に、受光状態が“オン”又は“オフ”のいずれか一定になるとは限らない。即ち、ドラム32が初期位置にある場合であっても、受光状態が“オン”である場合もあり、“オフ”である場合もあり得る。
【0077】
そのため、ロータリエンコーダ36により検出される受光状態は、停止処理を実行する前に初期受光状態として記憶部80に記憶する必要がある。
【0078】
一方、ホームポジションセンサ116は、サイドフェンス103が初期位置にある場合には、受光状態を“オン”として検出し、サイドフェンス103が初期位置にない場合には、受光状態を“オフ”として検出するので、サイドフェンス103が初期位置にある場合、常に、受光状態は“オン”で一定である。
【0079】
そのため、ホームポジションセンサ116により検出される初期受光状態は、常に一定となるので、停止処理時における記憶部80への記憶を省略することができる。即ち、初期受光状態を、予め記憶部80への記憶するようにしても良いし、図5に示したステップS104の処理のように、都度、記憶部80へ記憶するようにしてもよい。
【0080】
また、本発明の一実施形態では、製版された孔版原紙を回転するドラム32に巻き付けた後、印刷用紙をこのドラム32に給紙し、ドラムを回転しながら、供給された印刷用紙をプレスロール37によりドラム32に圧接することにより印刷を行い、印刷された用紙を排紙台54に排紙する孔版印刷装置1を例に挙げたがこれに限らない。
【0081】
光学式のセンサにより駆動部材の位置を検出する印刷装置であればよく、ライン単位で印刷を行うインクジェット方式のラインカラープリンタや、シリアルインクジェット方式のインクジェットプリンタや、レーザプリンタ等の印刷装置であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…孔版印刷装置
2…製版部
3…印刷部
4…給紙部
5…排紙部
6…排版部
32…ドラム
36…ロータリエンコーダ
54…排紙台
70…制御部
71…初期化部
72…判定部
73…機器制御部
80…記憶部
81…電力制御部
90…操作部
103,104…サイドフェンス
105…エンドフェンス
107,110,113…ラックギア
108,111,114…ウォームギア
109,112,115…モータ
116,117,118…ホームポジションセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6