(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前端がステアリングシャフトに係合するロック本体と、該ロック本体の後端側に連係するハンガーとからなり、フレームを構成するガイド部に設けられたロックガイド孔内に、ステアリングロック位置とステアリングロック解除位置との間をスライド自在に配置され、ステアリングロック位置で該ロック本体の前端が該ステアリングシャフトに係合するロック部材を具備し、
該ロックガイド孔に連通する補助ロック穴内に、補助ロック位置と補助ロック解除位置との間をスライド自在に配置され、補助ロック付勢部材によって補助ロック解除位置側から補助ロック位置側に付勢されつつ、保持手段に係合し、補助ロック解除位置に保持される補助ロック部材と、該ハンガーに設けられた補助係止受部と、からなり、該保持手段が変位して、該補助ロック部材との係合が解除された際に、該補助ロック部材が補助ロック位置へ移動しつつ、該補助係止受部に係合し、該ハンガーの変位をする補助ロック手段を備えるとともに、
該ハンガーの該補助係止受部よりも後端側に、該補助ロック部材よりも耐荷重が弱く設定されたロック側脆弱部と、該ハンガーがステアリングロック位置に位置した状態の該ロック側脆弱部に近接する該ガイド部の部位に、該ガイド部の他の一般部よりも耐荷重が弱く設定されたガイド側脆弱部とからなり、該フレームに設定値以上の荷重が掛かると該ガイド側脆弱部と該ロック側脆弱部で破断する脆弱部とを備えたステアリングロック装置であって、
前記補助係止受部は、前記ハンガーの側面に開口する凹溝形状を具備し、
前記補助ロック部材は、該補助係止受部内に収まるように断面形状が設定された補助ロック本体部と、補助係止受部の凹溝底部と係合可能に、スライドする方向に対して交差するように補助ロック本体部から突設される補助ロック係合部とからなる略L字形状を備え、
前記ロックガイド孔内の前記ハンガーが載置されるハンガー領域に隣接されつつ、前記ガイド部の前端側から後端側へ前記ガイド側脆弱部を貫通する貫通領域を該ロックガイド孔内に備え、
該ガイド部が該ガイド側脆弱部で破断した際に、破断面に該貫通領域が開口し、該破断面の該貫通領域を通じて、該補助ロック部材への接触が可能となることを特徴とするステアリングロック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のステアリングロック装置101では、駐車時における不正解錠に対して、補助ロック部材161をフレーム110で覆うことで、フレーム110とロック部材151に係合する補助ロック部材161を待機位置へ、外力によって移動できないように保護している。このため、補助ロック部材161を保護するためには、周辺のフレーム110等を肉厚にしなければならず、装置全体の重量増加を招く要因となっている。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、不正解錠に対する防盗性能を維持しつつ、重量軽減を行なうことができるステアリングロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する請求項1の発明は、前端がステアリングシャフトに係合するロック本体と、該ロック本体の後端側に連係するハンガーとからなり、フレームを構成するガイド部に設けられたロックガイド孔内に、ステアリングロック位置とステアリングロック解除位置との間をスライド自在に配置され、ステアリングロック位置で該ロック本体の前端が該ステアリングシャフトに係合するロック部材を具備し、該ロックガイド孔に連通する補助ロック穴内に、補助ロック位置と補助ロック解除位置との間をスライド自在に配置され、補助ロック付勢部材によって補助ロック解除位置側から補助ロック位置側に付勢されつつ、保持手段に係合し、補助ロック解除位置に保持される補助ロック部材と、該ハンガーに設けられた補助係止受部と、からなり、該保持手段が変位して、該補助ロック部材との係合が解除された際に、該補助ロック部材が補助ロック位置へ移動しつつ、該補助係止受部に係合し、該ハンガーの変位をする補助ロック手段を備えるとともに、該ハンガーの該補助係止受部よりも後端側に、該補助ロック部材よりも耐荷重が弱く設定されたロック側脆弱部と、該ハンガーがステアリングロック位置に位置した状態の該ロック側脆弱部に近接する該ガイド部の部位に、該ガイド部の他の一般部よりも耐荷重が弱く設定されたガイド側脆弱部とからなり、該フレームに設定値以上の荷重が掛かると該ガイド側脆弱部と該ロック側脆弱部で破断する脆弱部とを備えたステアリングロック装置であって、前記補助係止受部は、前記ハンガーの側面に開口する凹溝形状を具備し、前記補助ロック部材は、該補助係止受部内に収まるように断面形状が設定された補助ロック本体部と、補助係止受部の凹溝底部と係合可能に、スライドする方向に対して交差するように補助ロック本体部から突設される補助ロック係合部とからなる略L字形状を備え、前記ロックガイド孔内の前記ハンガーが載置されるハンガー領域に隣接されつつ、前記ガイド部の前端側から後端側へ前記ガイド側脆弱部を貫通する貫通領域を該ロックガイド孔内に備え、該ガイド部が該ガイド側脆弱部で破断した際に、破断面に該貫通領域が開口し、該破断面の該貫通領域を通じて、該補助ロック部材への接触が可能となることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載のステアリングロック装置であって、前記貫通領域に配置され、前記ロック本体を後端側から前端側に向けて付勢するロック付勢部材を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2記載のステアリングロック装置であって、前記ロック付勢部材が、巻バネからなり、巻バネの圧縮反力によって、前記ロック本体が後端側から前端側に向かって付勢されることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のステアリングロック装置であって、前記ロックガイド孔の内壁面と前記ハンガーの少なくともどちらか一方に、前記補助ロック係合部が挿脱可能に形成される補助ロック受部を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、設定値を超える外力が、施錠状態の電動ステアリングロック装置に掛かり、脆弱部で破断した場合には、破断面に貫通領域が開口し、破断面から補助ロック部材への接触が可能となる。そして、不正解錠を行なおうとして、不正作業者が補助ロック部材に触れた際に、補助ロック部材は補助係止受部である凹溝の深部に押込まれ、補助ロック係合部と凹溝底部とが係合する。これにより、補助ロック部材の補助ロック解除位置への移動が制限されて、補助ロック部材とハンガーとの係合が保持され、ハンガーの変位がより確実に制限されることで、高い防盗性能を発揮することができる。
【0012】
さらに、脆弱部が破断した後に、補助ロック部材に触れたことによって、より高い防盗性能を発揮する構成としたことで、補助ロック穴周辺の肉厚を薄くすることができる。これにより、従来技術に開示された構成のような、補助ロック部材が収容される補助ロック穴周辺の肉厚を厚くすることで、補助ロック部材を保護する構成に対して、ガイド部の重量を軽減することができる。
【0013】
また、従来技術に開示された構成のような、ハンガーとロック本体との間にロック付勢手段を挟持する構成に対して、ガイド部のスライド方向の寸法を小さくすることができる。これにより、ガイド部の重量を軽減することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、貫通領域にロック付勢部材を配置することで、ロック本体を後端側から前端側へ付勢するロック付勢部材を配置するために空間を確保する必要が無くなるため、装置全体の大型化による重量増大を防ぐことができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、ロック付勢部材を巻バネとすることで、伸縮ストロークによって貫通領域の容積を稼ぐことができる。これにより、より大きな空間が形成できることで、重量軽減を行なうことができる。
【0016】
また、巻バネの伸縮ストロークによって貫通領域の容積を稼げることによって、補助係止受部を破断面からロックガイド孔のより深い部位に設定することができる。これにより、補助ロック部材の目視確認が困難になるため、不正作業者が補助ロック部材に触れた際に、奥に押込む傾向がより強くなる。そして、補助ロック部材が奥に押込まれることによって、補助ロック部材とハンガーの補助係止受部とが、より強固に係合し、補助ロック部材の補助ロック解除位置への移動がより強く制限され、防盗性を向上させることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、補助ロック受部を設けることで、補助係止受部である凹溝の深部への補助ロック係合部の移動が容易になり、補助ロック係合部と凹溝底部との係合をより確実に行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のステアリングロック装置は、電動ステアリングロック装置1として、自動車のステアリングシャフト80を収容するステアリングコラム装置(図示せず)に固定手段(図示せず)によって取付けられる。電動ステアリングロック装置1は、
図1〜
図13に示すように、フレーム10、フレームカバー20、駆動手段30、制御基板40、ロック部材50、補助ロック手段60とで主に構成されている。
【0020】
フレーム10は、一面(
図2〜
図8などの上面)が開口する略箱形形状を有するケース部11と、ケース部11の底面11aから突設される筒状のガイド部12とを備えている。また、ケース部11は、フレームカバー20とともに、内部に収容空間としての収容室13を形成する。
【0021】
ガイド部12は、外部と収容室13を連通する角筒形状を備え、筒孔であるロックガイド孔14内にロック部材50がスライド自在に収容される。また、ガイド部12のケース部11側の基部には、外形を他よりも細く括れさせ、肉厚を薄くすることで、ガイド部12の他の一般部よりも耐荷重が弱く設定されたガイド側脆弱部15が設けられている。
【0022】
ロックガイド孔14は、ガイド部12を貫通する孔であり、ロック本体領域14a、ハンガー領域14b、および貫通領域14cの3つの領域で構成されている。
【0023】
ロック本体領域14aは、後述するロック本体51が、ステアリングロック位置とステアリングロック解除位置との間を移動する範囲に設定されており、ガイド部12の前端側に設定され、ステアリングシャフト80に面して開口している。ロック本体領域14aにおけるロックガイド孔14の孔形状は、ロック本体51がガタ付くことなく、スライド可能となるように形成されている。
【0024】
ハンガー領域14bは、後述するハンガー52が、ステアリングロック位置とステアリングロック解除位置との間を移動する範囲に設定されており、ロック本体領域14aの後端側に、ハンガー領域14bは、収容室13に開口している。ハンガー領域14bにおけるロックガイド孔14の孔形状は、ハンガー52がガタ付くことなく、スライド可能となるように形成されている。また、ハンガー領域14bの内壁面には、補助ロック手段60が収容される補助ロック穴16が、ロックガイド孔14に直交するように設けられ、開口している。また、ハンガー領域14bの収容室13側開口部には、ストッパ受部18が設定されている。
【0025】
貫通領域14cは、ロック部材50のスライド方向に沿って、ハンガー領域14bと並列に隣接するように設定されている。つまり、ロック本体領域14aの後端側に位置するとともに、収容室13には開口せずに、ガイド部12の前端側から後端側へガイド側脆弱部15を貫通しつつ、後述するロック付勢部材53が伸縮可能な広さを備えている。
【0026】
フレームカバー20は、一面(
図2〜
図8などの下面)が開口する箱形状を備え、開口部の内縁に設けた係止受部(図示せず)と、フレーム10のケース部11周縁に設けられた係止部(図示せず)とを係合することで、フレームカバー20がフレーム10に固定される。
【0027】
収容室13には、ロック部材50を駆動する駆動手段30と、駆動手段30の動作を制御する制御基板40とが収容されている。
【0028】
駆動手段30は、駆動源である電動モータ31と、電動モータ31の出力軸に配置されるウォームギヤ(図示せず)と、ウォームギヤと噛合可能な歯車に形成された円盤状のウォームホイール32とで構成される。ウォームホイール32は、その盤面に螺旋状のカム溝33を備えており、ウォームホイール32の外周面32aと、カム溝33の内側側壁とがカム面35に設定されている。カム面35は、空走区間35aと変位区間35bとで構成され、空走区間はウォームホイール32の外周面32aに、変位区間35bはカム溝33の内側側壁33aに設定されている。そして、電動モータ31が正転することで、ウォームギヤがウォームホイール32を施錠方向に回動し、電動モータ31が逆転することで、ウォームギヤがウォームホイール32を解錠方向に回動する。駆動手段30は、ウォームギヤがウォームホイール32に噛合した状態で、モータケース34に収容されてユニット化され、モータケース34ごと収容室13に配置される。
【0029】
制御基板40は、外部から電動モータ31に電力を供給し、正転、逆転、停止の制御を行なっている。
【0030】
ロック部材50は、前端がステアリングシャフト80の外周面に設けられた係合溝81に係合するロック本体51と、ロック本体51の後端側に連係するハンガー52とで構成され、ロック付勢部材53によって、ロック本体51が前端側に向けて付勢されている。また、ロック部材50を構成するロック本体51とハンガー52は、連係した状態で、ガイド部12のロックガイド孔14内にスライド自在に配置され、駆動手段によってステアリングロック位置とステアリングロック解除位置との間を変位する。なお、ステアリングロック位置では、ロック本体51の前端がガイド部12から突出して係合溝81に係合し、ステアリングシャフト80の回動を制限する。また、ステアリングロック解除位置では、ロック本体51の前端がガイド部12内に後退して係合溝81から離間し、ステアリングシャフト80の回動が可能となる。
【0031】
ロック本体51は、板状の硬質な部材からなり、前端が係合溝81に係合する係合部51aに設定され、後端がハンガー52と連係する本体側連係部51bに設定されている。本体側連係部51bは、スライド方向に延設される本体側首部51cと、本体側首部51cの後端からスライド方向に対して直交しつつ、後述するハンガー側首部52cに向かって突出する本体側連係突部51dとで、L字形状に形成されている。
【0032】
ハンガー52は、ロック本体51と同様の板厚で、ロック本体51よりも幅が狭く設定された角棒状の部材で構成されている。ハンガー52は、ロック側脆弱部52a、ハンガー側連係部52b、追従突起52e、およびストッパ52gを備えている。
【0033】
ロック側脆弱部52aは、ロック部材50がステアリングロック位置に位置した状態で、ガイド側脆弱部15に近接するハンガー52の部位に設けられている。ロック側脆弱部52aは、他の一般部よりも細く括れさせることで、ハンガー52の他の一般部、および後述する補助ロック部材61よりも耐荷重が弱くなるように設定されている。なお、ロック側脆弱部52aは、ガイド側脆弱部15とともに脆弱部70を構成し、フレーム10に設定値以上の荷重が掛かると脆弱部70で破断するように設定されている。
【0034】
ハンガー側連係部52bは、ハンガー52の前端に配置されており、スライド方向に延設されるハンガー側首部52cと、ハンガー側首部52cの前端からスライド方向に対して直交しつつ、本体側首部51cに向かって突出するハンガー側連係突部52dとで、L字形状に形成されている。
【0035】
追従突起52eは、ハンガー52の後端に位置し、ウォームホイール32に向かって突設されている。追従突起52eは、ロック部材50をロックガイド孔14内に組付け、ウォームホイール32を収容室13に設置した状態で、カム溝33内に配置される。そして、ウォームホイール32が正転、または逆転すると、追従突起52eは、ロック付勢部材53の付勢力を受けて、カム面35に当接しつつ、追従する。
【0036】
ストッパ52gは、ハンガー52の後端に位置し、追従突起52eが配置された面の裏面側に突設されている。ストッパ52gは、ハンガー52とともにスライドする。また、ストッパ52gは、ステアリングロック位置で、ストッパ受部18に施錠方向に対して係合可能に形成されている。
【0037】
ロック付勢部材53は、巻バネからなり、圧縮された状態で、ロック本体51後方の貫通領域14cに配置される。そして、巻バネの圧縮反力によって、ロック本体51を後端側から前端側に向かって付勢する。
【0038】
補助ロック手段60は、補助ロック部材61、補助ロック付勢部材62、保持手段63、補助係止受部64、および補助ロック受部65とで構成されている。
【0039】
補助ロック部材61は、補助ロック穴16内に位置する補助ロック解除位置と、補助ロック穴16から突出して、補助係止受部64と係合し、ハンガー52の変位を阻止する補助ロック位置との間をスライド可能に、補助ロック穴16内に配置されている。補助ロック部材61は、補助ロック本体部61aと補助ロック係合部61bとで、L字形状に形成されている。
【0040】
補助ロック本体部61aは、補助ロック部材61がスライドする方向に延設される板状の部材である。
【0041】
補助ロック係合部61bは、補助ロック本体部61aのハンガー側端部からスライド方向に対して直交しつつ、補助係止受部64の凹溝底部64aと係合可能に突出している。
【0042】
補助ロック付勢部材62は、巻バネからなり、圧縮された状態で、補助ロック部材61のL字形状の内側に配置される。そして、巻バネの圧縮反力によって、補助ロック部材61を補助ロック解除位置側から補助ロック位置側に向かって付勢する。
【0043】
補助係止受部64は、ハンガー側連係部52bの後方に隣接配置され、ハンガー52がステアリングロック位置に位置した状態で、補助ロック部材61が係合可能な部位に配置されている。また、補助係止受部64は、ハンガー52がステアリングロック解除位置に位置した状態で、ガイド部12のガイド側脆弱部15に近接するように、ハンガー52上に配置されている。さらに、補助係止受部64は、ハンガー52の側面52fに開口する矩形断面の凹溝形状を具備している。これにより、補助係止受部64は、ハンガー52の他の一般部よりも耐荷重が弱く設定され、ステアリングロック解除時におけるロック側脆弱部としての機能を兼ね備えている。
【0044】
補助ロック受部65は、補助ロック穴16に対向するハンガー領域14bの内壁面に、ハンガー52がスライドする方向に対して直交する方向に沿った段部で構成され、補助ロック係合部61bが係合可能に形成されている。
【0045】
保持手段63は、保持部材63a、および保持付勢部材63bとで構成されている。
【0046】
保持部材63aは、段付の軸状の部材で構成され、ロックガイド孔14に沿って、収容室13と補助ロック穴16とを連通する保持孔17内に挿脱可能に配置される。
【0047】
保持付勢部材63bは、巻バネからなり、巻バネの筒内を保持部材63aが貫通した状態で、保持孔17の収容室側開口部17aと保持部材63aの段部63cとの間に配置される。
【0048】
このように、保持手段63は、フレームカバー20をフレーム10に組付けた状態で、フレームカバー20の内面によって、保持付勢部材63bを圧縮しつつ、保持手段63の先端が保持孔17から突出した状態で保持される。なお、保持手段63の先端が、保持孔17から突出することで、保持手段63の先端が、補助ロック解除位置に位置する補助ロック部材61と係合し、補助ロック部材61を補助ロック解除位置に保持する。
【0049】
次に、上記構成において、電動ステアリングロック装置1の動作を説明する。まず、
図2に示される解錠状態の電動ステアリングロック装置1に、車体側から施錠信号が入力されると、制御基板40は電動モータ31が正転するように電力を供給する。電動モータ31が正転すると、ウォームギヤを介してウォームホイール32が施錠方向(
図3の時計回り)に回動する。ウォームホイール32が施錠方向に回動すると、ロック付勢部材53の付勢力によって、追従突起52eがカム面35上を空走区間35aから変位区間35bへと追従し、ロック部材50がステアリングロック解除位置からステアリングロック位置へ移動する。ロック部材50がステアリングロック位置に到達すると、センサ(図示せず)が反応して、制御基板40から電動モータ31への電力が止まり、電動モータ31が停止するとともに、ストッパ52gがロックガイド孔14のストッパ受部18に係合し、ロック部材50の移動が完了する。なお、ストッパ52gがストッパ受部18に当接し、ロック部材50の移動が完了しても、ウォームホイール32の回転は継続し、追従突起52eがカム面35から離間する。そして、ウォームホイール32が所定の位置まで回転することができる。そして、
図5に示されるように、ロック本体51がステアリングロック位置へ移動し、ロックガイド孔14から突出した状態で、ロック本体51の係合部51aがステアリングシャフト80の係合溝81に係合する。
【0050】
なお、ステアリングロック位置に位置するロック部材50は、ロック付勢部材53の付勢力によって、ストッパ52gがストッパ受部18に当接した状態が保持されるため、ステアリングロック位置に保持される。また、ステアリングロック位置に移動する際に、ロック本体51の係合部51aが、ステアリングシャフト80の係合溝81を構成する突起部82に乗上げた場合には、ロック付勢部材53が圧縮されて縮み、ロック本体51が突起部82に乗上げたままの状態で、ハンガー52はステアリングロック位置へ移動する。そして、ステアリングシャフト80が回動し、突起部82がロック本体51の係合部51aからずれると、ロック付勢部材53の付勢力によって、係合部51aが係合溝81に係合し、ステアリングシャフト80の回動を制限する。
【0051】
また、施錠状態の電動ステアリングロック装置1に、車体側から解錠信号が入力されると、制御基板40は電動モータ31が逆転するように電力を供給する。電動モータ31が逆転すると、ウォームギヤを介してウォームホイール32が解錠方向(
図3の反時計回り)に回動する。ウォームホイール32が解錠方向に回動すると、カム面35から離間していた追従突起52eがカム面35に当接して、変位区間35bを追従し、ロック部材50がステアリングロック位置からステアリングロック解除位置へ移動する。ロック部材50のステアリングロック解除位置への移動が完了したところで、追従突起52eは、変位区間35bから空走区間35aへ移行し、センサ(図示せず)が反応して、制御基板40から電動モータ31への電力が止まり、電動モータ31が停止する。なお、電動モータ31への電力が停止されても、ウォームホイール32は、惰性によって回転をしばらく続けるが、追従突起52eが空走区間35a上を追従しているため、ロック部材50が変位することはない。また、空走区間35aは、追従突起52eが空走区間35aの終端に到達するまでにウォームホイール32の惰性による回転が停止するように、その長さが設定されている。ロック本体51がステアリングロック解除位置へ移動し、ロックガイド孔14内部に引っ込んだ状態で、ロック本体51の係合部51aとステアリングシャフト80の係合溝81との係合が解除され、ステアリングシャフト80の回動が可能となる。
【0052】
電動ステアリングロック装置1に外力が掛かり、フレームカバー20がフレーム10から脱落した場合には、
図8〜
図13に示されるように、保持付勢部材63bの圧縮反力によって、保持部材63aが保持孔17から抜落ちて、保持部材63aと補助ロック部材61との係合が解除され、補助ロック部材61が補助ロック位置へ移動する。フレームカバー20が脱落する際に、施錠状態であった場合には、補助ロック部材61が補助ロック位置へ移動することによって、
図12,
図13に示すように、補助ロック部材61が補助係止受部64に挿入され、係合する。これによって、ハンガー52のステアリングロック解除位置への移動が制限される。また、フレームカバー20が脱落する際に、解錠状態であった場合には、補助ロック部材61が補助ロック位置へ移動することによって、補助ロック部材61がハンガー52の前端とロック本体51との間に挿入され、補助ロック部材61がハンガー52の前端と係合する(
図2参照)。これによって、ハンガー52のステアリングロック位置への移動が制限される。
【0053】
また、設定値を超える外力が、施錠状態の電動ステアリングロック装置1に掛かった場合には、
図14〜
図16に示すように、フレームカバー20がフレーム10から脱落して、保持部材63aが抜落ち、保持部材63aが補助係止受部64に係合するとともに、脆弱部70であるガイド側脆弱部15とロック側脆弱部52aが破断する。これによって、ハンガー52のステアリングロック解除位置への移動が制限される。
【0054】
そして、脆弱部70が破断することによって、破断面71にロックガイド孔14のハンガー領域14bと貫通領域14cが開口する。なお、ガイド部12側に残ったハンガー52のハンガー側連係部52b、およびロック本体51は、補助ロック部材61がハンガー52の補助係止受部64に係合しているため、破断面71から引抜くことはできない。これにより、破断面71に開口する貫通領域14cを通じて、道具90を用いて、ハンガー52越しに補助ロック部材61への接触が可能になる。しかしながら、ハンガー52越しでの接触となるため、補助ロック部材61に道具90が触れた際に、補助ロック部材61が補助係止受部64の深部に押込まれ、補助ロック係合部61bと補助係止受部64の凹溝底部64aとが係合する。これにより、補助ロック部材61の補助ロック解除位置への移動が制限されて、補助ロック部材61とハンガー52との係合が保持され、ハンガー52の変位がより確実に制限される
なお、設定値を超える外力が、解錠状態の電動ステアリングロック装置1に掛かった場合には、フレームカバー20がフレーム10から脱落して、保持部材63aが抜落ち、補助ロック部材61がハンガー52の前端、およびロック本体51の後端に係合する。これにより、ガイド部12側に残ったハンガー52のハンガー側連係部52b、およびロック本体51のステアリングロック位置への移動が制限されるとともに、破断面71からの引抜きが制限される。
【0055】
以上の構成により、本実施形態では、駐車中の車両への不正解錠行為等によって、設定値を超える外力が、施錠状態の電動ステアリングロック装置1に掛かり、脆弱部70で破断した場合には、破断面71に貫通領域14cが開口し、破断面71から補助ロック部材61への接触が可能となる。そして、不正解錠を行なおうとして、不正作業者が道具90を介して補助ロック部材61に触れた際に、補助ロック部材61は補助係止受部64である凹溝の深部に押込まれ、補助ロック係合部61bと凹溝底部64aとが係合する。これにより、補助ロック部材61の補助ロック解除位置への移動が制限されて、補助ロック部材61とハンガー52との係合が保持され、ハンガー52の変位がより確実に制限されることで、高い防盗性能を発揮することができる。
【0056】
また、車両走行中の衝突事故等によって、電動ステアリングロック装置1に運転者の脚がぶつかり、設定値を超える外力が、解錠状態の電動ステアリングロック装置1に掛かった際には、ガイド側脆弱部15と補助係止受部64とで破断し、運転者の脚部を保護する。そして、ガイド側脆弱部15と補助係止受部64とで破断することによって、補助ロック部材61がハンガー52の前端、およびロック本体51の後端に係合する。これにより、ガイド部12側に残ったハンガー52のハンガー側連係部52b、およびロック本体51のステアリングロック位置への移動と、破断面71からの引抜きが制限されるため、ステアリングロックすることがなくなり、安全に車両を移動させることができる。
【0057】
補助ロック受部65を設けることで、補助係止受部64である凹溝の深部への補助ロック係合部61bの移動が容易になり、補助ロック係合部61bと凹溝底部64aとの係合をより確実に行なうことができる。
【0058】
さらに、脆弱部70が破断した後に、補助ロック部材61に道具90を介して触れたことによって、より高い防盗性能を発揮する構成としたことで、補助ロック穴16周辺の肉厚を薄くすることができる。これにより、従来技術に開示された構成のような、補助ロック部材61が収容される補助ロック穴16周辺の肉厚を厚くすることで、補助ロック部材61を保護する構成に対して、ガイド部12の重量を軽減することができる。
【0059】
ロック付勢部材53を巻バネとすることで、伸縮ストロークによって貫通領域14cの容積を稼ぐことができる。これにより、より大きな空間が形成できることで、重量軽減を行なうことができる。
【0060】
また、巻バネの伸縮ストロークによって貫通領域14cの容積を稼げるため、補助係止受部64を破断面71からロックガイド孔14のより深い部位に設定することができる。これにより、補助ロック部材61の目視確認が困難になるため、道具90を介して不正作業者が補助ロック部材61に触れた際に、奥に押込む傾向がより強くなる。そして、補助ロック部材61が奥に押込まれることによって、補助ロック部材61とハンガー52の補助係止受部64とが、より強固に係合し、補助ロック部材61の補助ロック解除位置への移動がより強く制限され、防盗性を向上させることができる。
【0061】
また、従来技術に開示された構成のような、ハンガーとロック本体との間にロック付勢手段を挟持する構成に対して、ガイド部12のスライド方向の寸法を小さくすることができる。これにより、ガイド部12の重量を軽減することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、補助ロック本体部61aの端面は平面に、補助ロック係合部61bの角部は直角に形成されているが、補助ロック本体部61aの端面と、補助ロック係合部61bの角部に円弧、半円状等の傾斜面を設ける構成としても良い。このような構成とすることで、不正作業者が作動後の補助ロック部材61を補助ロック解除位置に移動させようとして、道具90を使って引っ掛けようとしても引っ掛かり難くなり、補助ロック部材61を補助係止受部64の深部へ押込み易くなる。したがって、上記理由と同様に、防盗性をさらに向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、ウォームホイール32について、ステアリングロック位置とステアリングロック解除位置を回転中心の上方に設定するとともに、カム溝33の外側側壁が施錠カムに設定され、カム溝33の内側側壁が解錠カムに設定されているが、ステアリングロック位置とステアリングロック解除位置を回転中心の下方に設定するとともに、カム溝の外側側壁を解錠カムに、カム溝の内側側壁を施錠カムにそれぞれ設定する構成としても良い。このような構成とすることで、解錠カム側のカム面を施錠側のカム面よりも長くすることができる。これにより、施錠状態から解錠状態に移行する際に、ロック本体51の係合部51aが、ステアリングシャフト80の係合溝81に噛み込んでしまっている場合でも、カム面が長いため、カム面の傾斜角を小さくし、引抜きトルクを大きくすることができる。