(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986910
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】電力変換装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20160823BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
H02M1/00 C
H02M1/08 301B
H02M1/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-271151(P2012-271151)
(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公開番号】特開2014-117116(P2014-117116A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】大竹 飛鳥
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−200264(JP,A)
【文献】
特開2006−351825(JP,A)
【文献】
特開平05−030728(JP,A)
【文献】
特開2005−328405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重系のゲートパルスによりスイッチング素子を点弧する電力変換装置の制御装置であって、
前記多重系のゲートパルスのうち前記スイッチング素子を最初に点弧する系のゲートパルスを選択するゲートパルス選択手段と、
前記スイッチング素子の点弧を検出する点弧検出手段と、
前記点弧検出手段により検出された前記スイッチング素子の点弧が、前記ゲートパルス選択手段により選択された前記系のゲートパルスで点弧されていないと判断した場合、前記系の異常と判断する異常判断手段と
を備えることを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
ゲートパルス選択手段は、前記スイッチング素子を点弧する系のゲートパルスが予め決められたパルスパターンを選択すること
を特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
前記異常判断手段は、前記スイッチング素子の端子間の電圧に基づいて、前記スイッチング素子の点弧を検出すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
多重系のゲートパルスによりスイッチング素子を点弧する電力変換装置の制御方法であって、
前記多重系のゲートパルスのうち前記スイッチング素子を最初に点弧する系のゲートパルスを選択し、
前記スイッチング素子の点弧を検出し、
検出した前記スイッチング素子の点弧が、選択した前記系のゲートパルスで点弧されていないと判断した場合、前記系の異常と判断すること
を含むことを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項5】
多重系のゲートパルスにより点弧されるスイッチング素子と、
前記多重系のゲートパルスのうち前記スイッチング素子を最初に点弧する系のゲートパルスを選択するゲートパルス選択手段と、
前記スイッチング素子の点弧を検出する点弧検出手段と、
前記点弧検出手段により検出された前記スイッチング素子の点弧が、前記ゲートパルス選択手段により選択された前記系のゲートパルスで点弧されていないと判断した場合、前記系の異常と判断する異常判断手段と
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スイッチング素子を用いた電力変換装置が知られている。スイッチング素子は、ゲートパルスにより駆動する。また、故障に対する運転継続性を高めるために、二重系に構成したゲートパルスによりスイッチング素子を駆動することが知られている。例えば、2組のゲートパルス発生器によりゲートパルスを発生させるサイリスタバルブのゲート制御が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−322524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二重系のゲートパルスによりスイッチング素子を駆動させる場合、片系のゲートパルスが異常でも、スイッチング素子は、正常に駆動するため、どちらの系が異常なのか分からない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、多重系のゲートパルスのうちいずれの系が異常か判断することのできる電力変換装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の観点に従った電力変換装置の制御装置は、多重系のゲートパルスによりスイッチング素子を点弧する電力変換装置の制御装置であって、前記多重系のゲートパルスのうち前記スイッチング素子を最初に点弧する系のゲートパルスを選択するゲートパルス選択手段と、前記スイッチング素子の点弧を検出する点弧検出手段と、前記点弧検出手段により検出された前記スイッチング素子の点弧が、前記ゲートパルス選択手段により選択された前記系のゲートパルスで点弧されていないと判断した場合、前記系の異常と判断する異常判断手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多重系のゲートパルスのうちいずれの系が異常か判断することのできる電力変換装置の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るゲートパルス発生器を適用した電力変換装置の構成を示す構成図。
【
図2】本実施形態に係る第1のパルスパターンの生成方法を示す簡易図。
【
図3】本実施形態に係る第2のパルスパターンの生成方法を示す簡易図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るゲートパルス発生器1を適用した電力変換装置の構成を示す構成図である。なお、図面における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。
【0011】
ゲートパルス発生器1は、VBE(valve base electronics)盤に組み込まれている。VBE盤は、サイリスタバルブ2を制御する制御装置である。ゲートパルス発生器1は、上位制御系の制御盤3から受信するサイリスタバルブコントロール信号(TVC(thyristor valve control)信号)Stvcに基づいて、サイリスタバルブ2のサイリスタ22を駆動する二重系のゲートパルスGPa,GPbを発生させる。
【0012】
サイリスタバルブ2は、複数のサイリスタ22で構成された電力変換装置である。サイリスタバルブ2には、1つのサイリスタ22に対して、2つのレーザダイオードユニット21a,21b、1つの抵抗23、及び1つの順電圧検出器24が設けられている。ここでは、主に1つのサイリスタ22についての構成について説明し、他のサイリスタ22については同様に構成されているものとして説明を省略する。
【0013】
サイリスタ22は、電力変換回路を構成するスイッチング素子である。サイリスタ22は、光信号により点弧する光トリガサイリスタである。
【0014】
2つのレーザダイオードユニット21a,21bは、A系及びB系からなる二重系に構成されている。A系レーザダイオードユニット21aは、ゲートパルス発生器1から受信したA系ゲートパルスGPaにより、サイリスタ22を点弧するためのA系の光信号(ゲートパルス)を出力する。B系レーザダイオードユニット21bは、ゲートパルス発生器1から受信したB系ゲートパルスGPbにより、サイリスタ22を点弧するためのB系の光信号(ゲートパルス)を出力する。
【0015】
抵抗23は、サイリスタバルブ2の極間に印加される直流電圧成分を各サイリスタ22に均一分圧するための分圧抵抗である。また、抵抗23は、順電圧検出器24に流れる電流を抑制する。
【0016】
順電圧検出器24は、サイリスタ22の順方向(サイリスタに電流が流れる方向)に印加された電圧(以下、「順方向電圧」という。)を検出するための検出器である。順電圧検出器24は、サイリスタ22がオフ状態のときに、FV信号(順電圧信号)Sfvを出力する。従って、順電圧検出器24は、サイリスタ22が点弧(ターンオン)されると、FV信号Sfvを出力しなくなる。順電圧検出器24は、発光ダイオードで構成されている。発光ダイオードは、スナバ回路のインピーダンスにより発生する電圧を利用して発光する。発光ダイオードから発せられた光は、ライトガイドを介して、FV信号Sfvとして、VBE盤のゲートパルス発生器1に出力される。
【0017】
ゲートパルス発生器1は、パルスパターン選択部11、ゲートパルス出力部12、及び故障検出部13を備える。
【0018】
パルスパターン選択部11は、制御盤3からTVC信号Stvcを受信すると、
図2及び
図3に示す2つのパルスパターンPT1,PT2のいずれかを選択する。パルスパターンPT1,PT2では、予めサイリスタ22をターンオンさせる系のゲートパルスの順番が決められている。パルスパターンPT1,PT2を選択することにより、サイリスタ22を最初にターンオンする系が決定される。パルスパターン選択部11によるパルスパターンPT1,PT2の選択方法は、どのようにしてもよい。例えば、パルスパターン選択部11は、2つのパルスパターンPT1,PT2を交互に選択する。パルスパターン選択部11は、選択したパルスパターンPT1,PT2をゲートパルス出力部12及び故障検出部13に出力する。
【0019】
ゲートパルス出力部12は、パルスパターン選択部11により選択されたパルスパターンPT1,PT2に従って、サイリスタバルブ2の両系のレーザダイオードユニット21a,21bにそれぞれゲートパルスGPa,GPbを出力する。
【0020】
図2は、第1のパルスパターンPT1の生成方法を示す簡易図である。
図3は、第2のパルスパターンPT2の生成方法を示す簡易図である。
【0021】
第1のパルスパターンPT1は、A系パルスPaの方がB系パルスPbよりも早くサイリスタ22に入力される。従って、A系及びB系が共に正常であれば、A系パルスPaによりサイリスタ22がターンオンされる。即ち、A系パルスPaが時刻t1で発生し、その後、B系パルスPbが時刻t2で発生した場合、通常は、ほぼ時刻t1でA系パルスPaによりサイリスタ22がターンオンされる。
【0022】
第2のパルスパターンPT2は、B系パルスPbの方がA系パルスPaよりも早くサイリスタ22に入力される。従って、A系及びB系が共に正常であれば、B系パルスPbによりサイリスタ22がターンオンされる。即ち、B系パルスPbが時刻t1で発生し、その後、A系パルスPaが時刻t2で発生した場合、通常は、ほぼ時刻t1でB系パルスPbによりサイリスタ22がターンオンされる。
【0023】
故障検出部13は、順電圧検出器24により検出されたFV信号Sfv及びパルスパターン選択部11により選択されたパルスパターンPT1,PT2に基づいて、A系又はB系の故障を検出する。故障検出部13は、故障を検出すると、故障検出信号NGを出力する。故障検出信号NGは、表示器又は機器類等に出力される。
【0024】
例えば、故障検出信号NGを受信した表示器は、A系又はB系のいずれの故障であるかを示す表示をする。これにより、管理者などは、A系又はB系の故障を知ることができる。また、故障検出信号NGを受信した機器類は、A系又はB系の故障に対応するための動作を自動的にすることができる。
【0025】
次に、故障検出部13による故障の検出方法について説明する。
【0026】
第1のパルスパターンPT1が選択された場合は、故障検出部13は、A系の故障(例えば、A系レーザダイオードユニット21aの故障)を検出する。第2のパルスパターンPT2が選択された場合は、故障検出部13は、B系の故障(例えば、B系レーザダイオードユニット21bの故障)を検出する。
【0027】
まず、パルスパターン選択部11により選択された第1のパルスパターンPT1が選択された場合について説明する。
【0028】
第1のパルスパターンPT1の場合、A系が正常であれば、最初にサイリスタ22に入力されるA系パルスPaにより、サイリスタ22がターンオンする。サイリスタ22がターンオンすると、FV信号Sfvが消滅する。その後、サイリスタ22にB系パルスPbが入力されても、既に、サイリスタ22は、ターンオンされているため、FV信号Sfvは、消滅したままである。故障検出部13は、FV信号Sfvが消滅する時刻により、サイリスタ22がターンオンした時刻を判断する。
【0029】
ここで、A系が正常であれば、
図2に示す時刻t1でサイリスタ22がターンオンする。即ち、A系パルスPaにより、サイリスタ22がターンオンする。一方、A系に異常があれば、
図2に示す時刻t2でサイリスタ22がターンオンする。即ち、B系パルスPbにより、サイリスタ22がターンオンする。
【0030】
故障検出部13は、パルスパターン選択部11から選択されたパルスパターンPT1を示す信号を受信すると、サイリスタ22に最初に入力されるA系パルスPaによりサイリスタ22がターンオンされる時刻t1を予測する。故障検出部13は、伝送時間、各種検出器の動作時間、又は演算処理時間などを考慮して、サイリスタ22がターンオンされる時刻t1を予測する。なお、故障検出部13は、サイリスタ22がターンオンされる時刻t1を予測するために、他の信号を受信してもよい。例えば、故障検出部13は、ゲートパルス出力部12からゲートパルスGPa,GPbが出力される際に、ゲートパルスGPa,GPbが出力されたことを示す信号をゲートパルス出力部12から受信してもよい。
【0031】
故障検出部13は、FV信号Sfvの消滅により測定したサイリスタ22が実際にターンオンした時刻が、サイリスタ22がターンオンされると予測した時刻t1とほぼ同時刻であるか否かを判断する。故障検出部13は、予測した時刻t1にサイリスタ22がターンオンされていないと判断した場合、A系が故障であると判断する。具体的には、故障検出部13は、予測した時刻t1から予め設定された時間内に、FV信号Sfvが消滅しなければ、A系が故障であると判断する。一方、故障検出部13は、予測した時刻t1にサイリスタ22がターンオンされていると判断した場合、A系が正常であると判断する。
【0032】
次に、パルスパターン選択部11により選択された第2のパルスパターンPT2が選択された場合について説明する。基本的には、第1のパルスパターンPT1が選択された場合と同様であるため、簡単に説明する。
【0033】
故障検出部13は、パルスパターン選択部11から選択されたパルスパターンPT2を示す信号を受信すると、B系が正常であれば、サイリスタ22がターンオンされる
図3に示す時刻t1を予測する。故障検出部13は、受信しているFV信号Sfvの消滅により、予測した時刻t1にサイリスタ22がターンオンされていないと判断すると、B系が故障であると判断する。一方、故障検出部13は、予測した時刻t1にサイリスタ22がターンオンされていると判断した場合、B系が正常であると判断する。
【0034】
本実施形態によれば、二重系のゲートパルスGPa,GPbでサイリスタ22を点弧するゲートパルス発生器1において、A系ゲートパルスGPaとB系ゲートパルスGPbの出力に時間差を設けることで、A系又はB系のいずれの系で異常が発生したかを検出することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、サイリスタ22を駆動する構成について説明したが、ゲートパルスによりスイッチングさせるスイッチング素子であれば、サイリスタ以外の素子を駆動する構成にしてもよい。また、スイッチング素子は、光信号により駆動するものに限らず、電気信号により駆動するものでもよい。
【0036】
本実施形態では、二重系のゲートパルスGPa,GPbによりサイリスタ22を駆動する構成について説明したが、二重系に限らず、多重系で構成されていてもよい。最初に、スイッチング素子を駆動させる系のゲートパルスを選択的に変更することで、各系の異常を検出することができる。
【0037】
本実施形態では、サイリスタ22の点弧をFV信号Sfvにより検出したが、サイリスタ22の点弧を検出できれば、どのような構成で検出してもよい。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…ゲートパルス発生器、2…サイリスタバルブ、3…制御盤、11…パルスパターン選択部、12…ゲートパルス出力部、13…故障検出部、21a,21b…レーザダイオードユニット、22…サイリスタ、23…抵抗、24…順電圧検出器、GPa,GPb…ゲートパルス、NG…故障検出信号、Stvc…TVC信号、Sfv…FV信号。