特許第5986912号(P5986912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986912
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   H01R13/11 C
   H01R13/11 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-273153(P2012-273153)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-120257(P2014-120257A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松村 薫
(72)【発明者】
【氏名】深谷 知由
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−331964(JP,A)
【文献】 特開2004−014477(JP,A)
【文献】 特開2008−123740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属プレートの折り曲げによって端子接続部が設けられ、前記端子接続部は、相手端子が挿入される箱部と、前記箱部の内面に片持ち支持部が重ね合わされた状態で支持され、撓み変形によって弾性変移する弾性接触部とを有する端子であって、
前記弾性接触部の撓み変形方向の直交方向の中央位置とこれに対応する前記箱部の位置のいずれか一方には位置決め突起が、他方には前記位置決め突起が挿入する位置決め孔が設けられたことを特徴とする端子。
【請求項2】
請求項1記載の端子であって、
前記位置決め突起は、前記箱部の対応箇所又は前記弾性接触部からの折り曲げによって形成され、折り曲げられた面が前記弾性接触部の撓み変形の直交方向に沿う前記位置決め孔の内面にほぼ当接していることを特徴とする端子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の端子であって、
前記端子接続部は、前記弾性接触部の前記片持ち支持部と前記箱部のいずれか一方から延設され、他方の端部を挟み込む箱開き防止部を有し、
前記位置決め突起及び前記位置決め孔は、前記箱開き防止部の内面側に設けられていることを特徴とする端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱部内に弾性接触部を有する端子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の端子としては、特許文献1に開示されたものがある。端子である雌端子50は、図8図11に示すように、所定形状の導電性金属のプレートを折り曲げ加工することによって形成されている。雌端子50は、端子接続部51を有する。端子接続部51は、箱部52とこの箱部52の内部に配置された弾性接触部58を有する。箱部52は、底壁53と、底壁53の側端より折り曲げられた一方の側壁54と、一方の側壁54の上端より折り曲げられた天壁55と、天壁55の側端より折り曲げられた他方の側壁56より構成されている。
【0003】
弾性接触部58は、他方の側壁56の側端の連結部56aを介して延設されている。弾性接触部58は、連結部56aの箇所で折り曲げられ、その片持ち支持部59側が底壁53の内面に重なるように配置されている。弾性接触部58の連結部56aとは反対側には、位置決め突起58aが設けられている。この位置決め突起58aは、一方の側壁54の位置決め孔54aに挿入され、且つ、下方に垂直に折り曲げられている。このような構成によって、弾性接触部58の支持端側は、双方の側壁54,56に支持されている。
【0004】
図11に示すように、雄端子(図示せず)の斜め挿入等によって弾性接触部58の自由端側に図11のn矢印方向に示す荷重が作用すると、位置決め突起58aが底壁53の側面に当接することによって弾性接触部58の捻れ変位を阻止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−123740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、弾性接触部58の位置決め突起58aと側壁54の位置決め孔54aは、折り曲げ加工誤差等を許容するためにクリアランスd1,d2を持った寸法に設定される。従って、雄端子(図示せず)の斜め挿入等によって弾性接触部58の自由端側に図11のn矢印方向に示す荷重が作用すると、位置決め突起58aが底壁53の側面53aより離間する方向に移動可能できるため、弾性接触部58の捻れ変位を阻止できない。特に、位置決め突起58aと位置決め孔54a間における先端側のクリアランスd1が狭く、片持ち支持部59側のクリアランスd2が広い場合には、大きく捻れ変位する可能性が高い。弾性接触部58が捻れ変位すると、雌端子50が雄端子(図示せず)に対して正規の接点位置で接触しない恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、弾性接触部の自由端側に斜め荷重が作用しても弾性接触部が捻れ変位しない端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、導電性金属プレートの折り曲げによって端子接続部が設けられ、前記端子接続部は、相手端子が挿入される箱部と、前記箱部の内面に片持ち支持部が重ね合わされた状態で支持され、撓み変形によって弾性変移する弾性接触部とを有する端子であって、
前記弾性接触部の撓み変形方向の直交方向の中央位置とこれに対応する前記箱部の位置のいずれか一方には位置決め突起が、他方には前記位置決め突起が挿入する位置決め孔が設けられたことを特徴とする端子である。
【0009】
前記位置決め突起は、前記箱部の対応箇所又は前記弾性接触部からの折り曲げによって形成され、折り曲げられた面が前記端子接触部の撓み変形の直交方向に沿う前記位置決め孔の内面にほぼ当接しているが好ましい。前記端子接続部は、前記弾性接触部の前記片持ち支持部と前記箱部のいずれか一方から延設され、他方の端部を挟み込む箱開き防止部を有し、前記位置決め突起及び前記位置決め孔は、前記箱開き防止部の内面側に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、位置決め突起と位置決め孔は、弾性接触部の中央位置とこれに対応する箱部の位置に設けられるため、弾性接触部の自由端側に作用するどの方向の斜め荷重に対しても弾性接触部の斜め変位を阻止できる。従って、端子は、弾性接触部の自由端側に斜め荷重が作用しても弾性接触部が捻れ変位しない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態を示し、(a)は雌端子の斜視図、(b)は雌端子の右側面図、(c)は雌端子の左側面図である。
図2】本発明の第1実施形態を示し、(a)は雌端子の縦断面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB部拡大図である。
図3】本発明の第1実施形態を示し、雌端子の展開図である。
図4】本発明の第1実施形態を示し、雌端子のコネクタハウジングへの収容状態を示す断面図である。
図5】本発明の第2実施形態を示し、(a)は雌端子の縦断面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は(a)のD部拡大図である。
図6】本発明の第2実施形態を示し、雌端子の展開図である。
図7】本発明の第2実施形態を示し、雌端子のコネクタハウジングへの収容状態を示す断面図である。
図8】従来例を示し、雌端子の斜視図である。
図9】従来例を示し、雌端子の前面図である。
図10図9のE−E線断面図である。
図11図9のF−F線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1図4は本発明の第1実施形態を示す。図1及び図2に示すように、端子である雌端子1Aは、所定形状(図3に示す)の導電性金属プレートを折り曲げ加工することによって形成されている。雌端子1Aは、端子接続部2と、この端子接続部2より後方側に絞り連結部29を介して設けられた電線接続部30とを有する。
【0014】
電線接続部30は、ワイヤバレル部31とインシュレーションバレル部32を有する。ワイヤバレル部31とインシュレーションバレル部32は、底壁31a,32aと、この底壁31a,32aの両側端より突設された一対の舌片部31b,32bをそれぞれ有する。底壁31a,32aは、内側に向かって緩く円弧状に折り曲げられている。ワイヤバレル部31には、電線(図示せず)の端部が外皮が取り除かれた状態で、つまり、導体のみが加締め固定される。インシュレーションバレル部32には、電線(図示せず)の端部が外皮を含めて加締め固定される。
【0015】
端子接続部2は、相手端子である雄端子45(図2(a)に示す)が挿入される箱部3と、この箱部3内に配置された弾性接触部8と、箱部3の箱開きを防止する箱開き防止部20とを有する。箱部3は、底壁4と、この底壁4の左右の側端よりそれぞれ上方側に垂直方向に折り曲げられた一対の側壁5,6と、一方の側壁5の上端より内側に水平方向に折り曲げられた天壁7とから構成されている。箱部3内には、相手端子である雄端子(図示せず)が挿入される。
【0016】
天壁7の一部には、スタビライザ9が延設されている。このスタビライザ9は、上方に折り曲げられ、上方に突出している。
【0017】
弾性接触部8は、他方の側壁6の側端に連結された片持ち支持部8aを有し、他方の側壁6の上端より内側に水平方向に折り曲げられている。片持ち支持部8aは、天壁7の内面に重ね合うように配置されている。片持ち支持部8aは、箱部3の一部を兼用している。
【0018】
弾性接触部8は、箱部3内に配置され、その先端側が箱部3の前方に向かって延びている。弾性接触部8の最先端部は、相手端子である雄端子(図示せず)の先端との突き当たりを回避するために湾曲状になっている。弾性接触部8の片持ち支持部8aと先端側の中間箇所には、天壁7の下方より突出する屈曲支点部7aが当接している。弾性接触部8は、屈曲支点部7aを支点として撓み変形する。このように弾性接触部8の撓み変形長さが短くなることで雌端子1Aの接触荷重をアップさせている。
【0019】
片持ち支持部8aの他方の側壁6とは反対側の側端には、支持突起8bが一体に設けられている。この支持突起8bは、一方の側壁5と天壁7の連結箇所の支持孔13に係止されている。このような構成によって、弾性接触部8の片持ち支持部8aは、その両側で箱部3に支持されていると共に弾性接触部8の撓み復帰変形方向への過剰変位(図2(a)の矢印方向)を阻止している。
【0020】
弾性接触部8の撓み変形方向の直交方向Tで、且つ、片持ち支持部8aの中央位置には、位置決め孔10が設けられている。この位置決め孔10には、これに対応する天壁7の位置に設けられた位置決め突起11が挿入されている。位置決め突起11は、天壁7の折り曲げによって形成され、折り曲げられた面が弾性接触部8の撓み変形の直交方向Tに沿う位置決め孔10の内面10aにほぼ当接、つまり、クリアランスなく配置されている。位置決め孔10及び位置決め突起11は、箱開き防止部20の内面に配置されている。又、位置決め孔10及び位置決め突起11は、弾性接触部8の屈曲支点部7aに対して自由先端側とは反対側、つまり、撓み変形しない位置に配置されるため、位置決め孔10と位置決め突起11間の摩擦抵抗が撓み変形量に悪影響を及ぼすことがない。
【0021】
箱開き防止部20は、弾性接触部8の片持ち支持部8aの後端より延設されている。箱開き防止部20は、天壁7の後端部を挟み込むよう折り曲げられている。これにより、箱部3が開く方向に変位するのを防止している。箱開き防止部20の垂直方向の外面は、係止面20aとされている。
【0022】
このように構成された雌端子1Aは、図4に示すように、コネクタハウジング40に収容される。つまり、コネクタハウジング40内には、端子収容室41が設けられている。各端子収容室41は、その前端側に相手端子挿入孔41aが開口し、後端側に電線引出孔41bが開口している。コネクタハウジング40には、端子収容室41に臨むようにハウジング側係止部である弾性ランス43が設けられている。
【0023】
次に、雌端子1Aの収容作業を説明する。雌端子1Aを端子収容室41の後方側の電線引出孔41bより挿入する。すると、雌端子1Aの箱部3の前端が弾性ランス43に干渉するが、弾性ランス43が撓み変形して雌端子1Aの挿入が許容される。雌端子1Aを挿入完了位置まで挿入すると、図4に詳しく示すように、弾性ランス43が復帰変形して箱開き防止部20に係止される。これにより、雌端子1Aが端子収容室41に保持(位置決め)されている。
【0024】
以上説明したように、位置決め突起11と位置決め孔10は、弾性接触部8の中央位置とこれに対応する箱部3の天壁7の位置に設けたので、弾性接触部8の自由端側に作用するどの方向の斜め荷重(図2(b)のm又はn)に対しても弾性接触部8の斜め変位を阻止できる。従って、雌端子1Aは、弾性接触部8の自由端側に斜め荷重が作用しても弾性接触部8が捻れ変位しない。これにより、雌端子1Aが雄端子45に対して正規の接点位置で接触し、安定した接触状態が得られる。
【0025】
より詳細には、位置決め突起11は、弾性接触部8や箱部3の天壁7の折り曲げ加工の後に、箱部3の天壁7からの折り曲げによって形成され、この第1実施形態のように、折り曲げられた面が弾性接触部8の撓み変形の直交方向Tに沿う位置決め孔10の内面10aにほぼ当接、クリアランスなしの状態に形成できる。従って、弾性接触部8の自由端側に作用するどの方向の斜め荷重(図2(b)のm又はn)に対しても弾性接触部8の斜め変位を確実に阻止できる。
【0026】
位置決め突起11及び前記位置決め孔10は、箱開き防止部20の内面側(領域内)に設けられている。従って、位置決め突起11及び前記位置決め孔10は、箱開き防止部20によって最も位置ずれしない箇所に設けられるため、正確な位置決めを行うことができる。
【0027】
(第2実施形態)
図5図7は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態の雌端子1Bは、前記第1実施形態のものと比較するに、位置決め突起が天壁7に設けられ、位置決め孔10が弾性接触部8に設けられている点のみが相違する。他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。図面の同一構成箇所には、同一符号を付して明確化を図る。
【0028】
この第2実施形態でも前記第1実施形態と同様の理由によって、弾性接触部8の自由端側に作用するどの方向の斜め荷重(図2(b)のm又はn)に対しても弾性接触部8の斜め変位を阻止できる。従って、雌端子1Bは、弾性接触部8の自由端側に斜め荷重が作用しても弾性接触部8が捻れ変位しない。これにより、雌端子1Bが雄端子45に対して正規の接点位置で接触し、安定した接触状態が得られる。
【0029】
(変形例)
前記第1及び第2実施形態では、箱開き防止部20は、弾性接触部8に設けられているが、箱部3の天壁7に設けても良し、弾性接触部8と天壁7の双方に設けても良い。
【符号の説明】
【0030】
1A,1B 雌端子(端子)
2 端子接続部
3 箱部
8 弾性接触部
10 位置決め孔
11 位置決め突起
20 箱開き防止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11