特許第5986919号(P5986919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5986919-コネクタの嵌合構造 図000002
  • 特許5986919-コネクタの嵌合構造 図000003
  • 特許5986919-コネクタの嵌合構造 図000004
  • 特許5986919-コネクタの嵌合構造 図000005
  • 特許5986919-コネクタの嵌合構造 図000006
  • 特許5986919-コネクタの嵌合構造 図000007
  • 特許5986919-コネクタの嵌合構造 図000008
  • 特許5986919-コネクタの嵌合構造 図000009
  • 特許5986919-コネクタの嵌合構造 図000010
  • 特許5986919-コネクタの嵌合構造 図000011
  • 特許5986919-コネクタの嵌合構造 図000012
  • 特許5986919-コネクタの嵌合構造 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986919
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】コネクタの嵌合構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/64 20060101AFI20160823BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H01R13/64
   H01R13/639 Z
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-282473(P2012-282473)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-127319(P2014-127319A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】宮川 知之
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 一人
(72)【発明者】
【氏名】山本 寿典
(72)【発明者】
【氏名】本間 秀輝
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−144401(JP,A)
【文献】 特開2011−40251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/64
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補器側コネクタとハーネス側コネクタとの嵌合構造であって、
前記補器側コネクタは、
前記ハーネス側コネクタを収容し、且つ該ハーネス側コネクタの嵌合方向に沿って延設されたピンを有するホルダと、
を有し、
前記ハーネス側コネクタは、
端子と、
前記ホルダに嵌合され、且つ前記端子を保持する接続部を備えたハウジングと、
前記接続部の前記ホルダに対する嵌合方向に沿って移動可能に、該接続部に保持されるスライダーと、
前記接続部の両側に設けられて前記接続部と前記スライダーによって挟持された、前記接続部の前記ホルダに対する嵌合方向に沿って配置された2つの板ばねと、
を有し、
前記スライダーは、前記ハウジングとの間で前記板ばねを挟持するために前記板ばねに当接する受け片と、前記受け片に連設された側壁と、を有し、
前記側壁には、前記接続部の前記ホルダに対する嵌合方向後方側へ前記スライダーが移動することによって該側壁に近づくように撓む前記板ばねの一部が挿通される開口部が形成されている、
ことを特徴とするコネクタの嵌合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のエアバックシステム等に用いられるコネクタの嵌合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエアバックシステム等に用いられるコネクタには、機器側の相手方コネクタに嵌合するメスハウジングを有し、相手方コネクタのハウジングにメスハウジングの接続部を嵌合して接続した状態で、これらのハウジングを互いにロックする機構を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、上記のコネクタにおいて、互いのハウジングがロックされる前の状態で接続作業を止めてしまうと、互いのハウジングが半嵌合状態となり、不完全に接続された状態となる。
【0004】
このような、相手方コネクタのハウジングに対するメスハウジングの半嵌合などの嵌合不良を防止するために、図9から図11に示すように、メスハウジング1の接続部2の上部における幅方向の中央に配置させたコイルバネ3によって、相手方コネクタ4側へ付勢されたスライダー5をメスハウジング1に設け、相手方コネクタ4に対してメスハウジング1が半嵌合状態のときにコイルバネ3の反力でメスハウジング1が押し戻されるようにしたコネクタ6がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−22846号公報
【特許文献2】特開2012−59368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のコネクタ6では、コイルバネ3の代わりに板ばねを用いることが考えられる。コイルバネ3と異なり、屈曲した板ばねは、屈曲部分が板ばねの両端よりも外側に膨らんで位置する。このため、メスハウジング1には、撓んで屈曲した板ばねの屈曲部分が接触しないように、板ばねを収容するための収容スペースを確保しなければならない。しかしながら、この収容スペースを確保するとなると、メスハウジング1の幅寸法が嵩張って大型化し、このメスハウジング1が接続される相手方コネクタ4も大型化してしまう。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化を図ることができるコネクタの嵌合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタの嵌合構造は、下記(1)を特徴としている。
(1) 補器側コネクタとハーネス側コネクタとの嵌合構造であって、
前記補器側コネクタは、
前記ハーネス側コネクタを収容し、且つ該ハーネス側コネクタの嵌合方向に沿って延設されたピンを有するホルダと、
を有し、
前記ハーネス側コネクタは、
端子と、
前記ホルダに嵌合され、且つ前記端子を保持する接続部を備えたハウジングと、
前記接続部の前記ホルダに対する嵌合方向に沿って移動可能に、該接続部に保持されるスライダーと、
前記接続部の両側に設けられて前記接続部と前記スライダーによって挟持された、前記接続部の前記ホルダに対する嵌合方向に沿って配置された2つの板ばねと、
を有し、
前記スライダーは、前記ハウジングとの間で前記板ばねを挟持するために前記板ばねに当接する受け片と、前記受け片に連設された側壁とを有し、
前記側壁には、前記接続部の前記ホルダに対する嵌合方向後方側へ前記スライダーが移動することによって該側壁に近づくように撓む前記板ばねの一部が挿通される開口部が形成されていること。
【0009】
上記(1)の構成のコネクタの嵌合構造では、スライダーが板ばねの付勢力に抗して嵌合方向後方側へスライドされると、板ばねは、その中間部分が大きく屈曲するように撓み、その屈曲部分が開口部に入り込む。したがって、板ばねが周囲の部品に干渉して変形が妨げられるような不具合を防止することができる。また、開口部を形成することで板ばねの屈曲部分との干渉を避ける構造であるので、スライダーの幅寸法を極力小さくすることができ、よって、補器側コネクタ及びハーネス側コネクタの小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型化を図ることができるコネクタの嵌合構造を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、補器側コネクタ及びハーネス側コネクタの斜視図である。
図2図2は、補器側コネクタ及びハーネス側コネクタの断面図である。
図3図3は、補器側コネクタの分解斜視図である。
図4図4は、ハーネス側コネクタの分解斜視図である。
図5図5は、補器側コネクタとハーネス側コネクタとの嵌合状態を示す図であって、図5(a)〜図5(c)は、それぞれ断面図である。
図6図6は、補器側コネクタの正面図である。
図7図7は、開口部のないスライダーを備えたハーネス側コネクタの断面図である。
図8図8は、開口部のないスライダーを備えたハーネス側コネクタにおけるバネ収容スペース部分における断面図である。
図9図9は、従来例を説明する補器側コネクタ及びハーネス側コネクタの斜視図である。
図10図10は、従来例を説明するハーネス側コネクタの分解斜視図である。
図11図11は、補器側コネクタの正面図である。
図12図12は、傾いた状態で嵌合される状況を示す補器側コネクタ及びハーネス側コネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、補器側コネクタ及びハーネス側コネクタの斜視図、図2は、補器側コネクタ及びハーネス側コネクタの断面図、図3は、補器側コネクタの分解斜視図、図4は、ハーネス側コネクタの分解斜視図、図5は、補器側コネクタとハーネス側コネクタとの嵌合状態を示す図であって、図5(a)〜図5(c)は、それぞれ断面図、図6は、補器側コネクタの正面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るコネクタの嵌合構造は、補器側コネクタ10とハーネス側コネクタ11との嵌合構造である。
【0016】
補器側コネクタ10は、例えば車載のエアバッグシステムの電気コネクタにおけるソケットであり、ハーネス側コネクタ11は、エアバッグシステムの電気コネクタにおけるプラグである。ハーネス側コネクタ11は、補器側コネクタ10に嵌合接続される。
【0017】
図2及び図3に示すように、補器側コネクタ10は、ピン12と、ホルダ13と、シャントリング14と、ショート端子15とを有している。
【0018】
ホルダ13は、合成樹脂から成形されている。このホルダ13は、円筒状に形成された周壁部21と、この周壁部21の一方側に設けられた底部22とを有する有底円筒状に形成されており、ハーネス側コネクタ11の嵌合側が開口部23とされている。ホルダ13の周壁部21には、開口部23近傍における内周面に、溝部24が形成されている。また、このホルダ13には、底部22に、間隔をあけて2本のピン12が固定されており、これらのピン12が開口部23側へ向かって延在されている。ピン12は、導電性金属材料から形成されたもので、補器側の回路に接続されている。
【0019】
シャントリング14は、合成樹脂から成形されている。このシャントリング14は、円筒状の周壁部31を有しており、ホルダ13に開口部23側から嵌め込まれて装着される。そして、このシャントリング14は、ホルダ13に装着されることで、周壁部31内がピン12を囲むようにホルダ13内に収容される。このシャントリング14は、周壁部31の外周面から径方向外方へ突出された複数の係止爪32を有しており、これらの係止爪32は、ホルダ13内にシャントリング14を嵌め込んだ際に、ホルダ13の溝部24に係合する。これにより、シャントリング14がホルダ13内に固定されることとなる。また、シャントリング14には、その両側に、2つの嵌合ロック33が形成されている。これらの嵌合ロック33は、ピン12を挟む位置に配置されており、ハーネス側コネクタ11の嵌合方向前方側の端部で連結されて嵌合方向後方側へ延在されている。これらの嵌合ロック33は、その先端部に、ピン12側へ向かって突出する爪部34を有している。
【0020】
ショート端子15は、導電性金属材料から形成されたもので、側面視U字状に形成されている。このショート端子15は、シャントリング14内に装着されており、シャントリング14をホルダ13へ装着することで、2本のピン12に押し付けられて接触する。これにより、ピン12は、ショート端子15によって互いに導通され、よって、補器側の回路が短絡状態とされる。このように、補器側の回路が短絡状態とされることで、補器の誤作動が防止されて安全性が確保される。
【0021】
図2及び図4に示すように、ハーネス側コネクタ11は、端子41と、フェライトコア42と、ハウジング43と、スライダー44と、板ばね45とを有している。
【0022】
端子41は、導電性金属材料から形成されたもので、側面視L字状に形成されている。これらの端子41は、接続端子部51と、電線接続部52とを有しており、電線接続部52に、ワイヤハーネスの電線53が接続されている。ワイヤハーネスの電線53には、フェライトコア42が取り付けられる。このフェライトコア42は、金属酸化物の強磁性体をブロック状に形成した部品であり、外部からの種々の電磁波によってノイズ電流が電線53に流れることを防止するノイズ対策部品として挿通孔42aに電線53を通すことで電線53に装着される。
【0023】
端子41の接続端子部51は、先端が開口した箱状に形成されており、先端側からピン12が挿し込まれる。この接続端子部51には、内部に接触突起部55及び押圧片56が設けられており、ピン12が接触突起部55と押圧片56との間に挿し込まれる。これにより、ピン12が接触突起部55と押圧片56とで挟持され、よって、ピン12と端子41とが導通接続される。
【0024】
ハウジング43は、合成樹脂から成形されたもので、補器側コネクタ10への嵌合側に突出する接続部61を有している。このハウジング43は、その背面側が開放されており、この開放された背面側から、電線53が接続された端子41及び電線53に取り付けられたフェライトコア42が収容される。ハウジング43には、開放された背面を覆うようにカバー62が取り付けられ、このカバー62を取り付けることで、端子41及びフェライトコア42がハウジング43に収容されて保持される。
【0025】
ハウジング43の接続部61には、2つのキャビティ63が形成されており、これらのキャビティ63に、端子41の接続端子部51が収容されている。また、接続部61には、その先端に、キャビティ63に連通する2つの挿入孔64が形成されており、これらの挿入孔64からピン12が挿し込まれる。
【0026】
接続部61の先端における両側部には、側方へ僅かに突出されたロックビーク65が形成されている。これらのロックビーク65の側面同士の間隔は、シャントリング14の嵌合ロック33の爪部34同士の間隔よりも大きくされている。また、ロックビーク65には、先端における側面に、補器側コネクタ10への嵌合方向前方へ向かって次第に中央へ傾斜するテーパ形状のガイド面66が形成されている。また、接続部61の両側面には、ロックビーク65よりも補器側コネクタ10への嵌合方向後方側に、係止穴67が形成されている。
【0027】
スライダー44は、合成樹脂から成形されたもので、上面板部71と、2つのスライド部72とを有している。このスライダー44は、ハウジング43の接続部61に装着され、補器側コネクタ10に対する嵌合方向に沿って移動可能とされる。そして、このスライダー44は、ハウジング43の接続部61に装着されることで、両側部のスライド部72が接続部61の両側部に配置される。
【0028】
スライド部72には、移動方向と直交する方向に受け片73が形成されている。そして、スライド部72における受け片73よりも補器側コネクタ10に対する嵌合方向後方側の空間部分は、板ばね45が収容されるバネ収容スペース74とされている。また、スライド部72には、受け片73よりも補器側コネクタ10への嵌合方向前方側へ向けて延びる正面視コ字状のコジリ防止片75が形成されている。互いに対向する各コジリ防止片75の内面75a同士の間隔は、シャントリング14の各嵌合ロック33の外面33a同士の間隔よりも僅かに広くされている。
【0029】
スライダー44の各スライド部72は、受け片73に連設された側壁76を有しており、この側壁76には、バネ収容スペース74と連通する開口部77が形成されている。また、スライダー44の各スライド部72には、補器側コネクタ10への嵌合方向後方側の端部に、外側へ突出する操作用突起78が形成されており、これらの操作用突起78を把持してスライダー44を移動させることが可能とされている。
【0030】
板ばね45は、バネ鋼などの弾性を有する金属材料から形成されたもので、スライダー44のバネ収容スペース74に収容されている。これらの板ばね45は、一端側がスライダー44の受け片73に固定され、他端側がハウジング43に形成されたフランジ部43aに固定されている。これにより、スライダー44は、ハウジング43に対して、補器側コネクタ10への嵌合方向前方側へ付勢されている。各板ばね45は、それぞれスライダー44の各スライド部72に形成された開口部77側へ向かって膨出するように僅かに湾曲されている。これにより、スライダー44が板ばね45の付勢力に抗して嵌合方向後方側へ押圧されると、板ばね45は、その中間部分が撓んで開口部77へ向かって大きく屈曲する。
【0031】
次に、補器側コネクタ10へハーネス側コネクタ11を嵌合させて接続させる場合について説明する。
【0032】
補器側コネクタ10へハーネス側コネクタ11を嵌合させるには、ハーネス側コネクタ11の接続部61を補器側コネクタ10の開口部23へ挿し込む。
【0033】
このようにすると、図5(a)に示すように、補器側コネクタ10のピン12が挿入孔64に挿し込まれる。これにより、端子41の接続端子部51の接触突起部55と押圧片56との間にピン12が入り込み、接触突起部55と押圧片56とでピン12が挟持されてピン12と端子41とが導通接続される。
【0034】
また、シャントリング14の嵌合ロック33の爪部34が接続部61のロックビーク65に形成されたガイド面66に接触して摺動する。これにより、嵌合ロック33がガイド面66によって側方へ押し出され、爪部34がロックビーク65の側面に乗り上げて当接する。
【0035】
ここで、本実施形態では、スライダー44を嵌合方向前方側へ付勢する板ばね45を、接続部61の両側部に配置させ、また、スライダー44の両側にコジリ防止片75を設けている。したがって、補器側コネクタ10に対してハーネス側コネクタ11の接続部61が斜めに傾いた状態で挿し込まれようとすると、一方のコジリ防止片75が一方の嵌合ロック33に当接し、傾いた状態での嵌合が阻止される。また、スライダー44が両側の板ばね45で嵌合方向前方に付勢されているので、傾いて挿し込まれたハーネス側コネクタ11の姿勢が板ばね45の付勢力で修正される。しかも、図6に示すように、スライダー44を付勢する弾性部材として占有スペースが小さい板ばね45をスライダー44の両側に設けたことで、補器側コネクタ10における接続部61の収容間口A(図6における網目部分)の幅寸法Wを極力抑えつつ高さ寸法Hが大幅に小さくされ、よって、傾いた状態での接続部61の挿し込みが極力抑制される。
【0036】
ハーネス側コネクタ11の接続部61を補器側コネクタ10の開口部23へさらに挿し込むと、図5(b)に示すように、さらに補器側コネクタ10のピン12が挿入孔64に挿し込まれる。すると、スライダー44のスライド部72のコジリ防止片75が、側方へ押し出された嵌合ロック33に当接する。したがって、スライダー44は、板ばね45の付勢力に抗して嵌合方向後方側へ移動する。このとき、板ばね45は、その中間部分が撓んで大きく屈曲するように変形し、その屈曲部分は、開口部77に入り込む。したがって、板ばね45が周囲の部品に干渉して変形が妨げられるようなことはない。
【0037】
さらにハーネス側コネクタ11の接続部61を補器側コネクタ10の開口部23へ挿し込むと、図5(c)に示すように、さらに補器側コネクタ10のピン12が挿入孔64に挿し込まれる。そして、ロックビーク65が嵌合ロック33の爪部34における嵌合方向前方側へ超えると、爪部34が、ロックビーク65における嵌合方向後方側の係止穴67に入り込む。これにより、ハウジング43の接続部61が嵌合ロック33によって確実に係止され、補器側コネクタ10とハーネス側コネクタ11とが確実に接続された状態となる。
【0038】
また、ロックビーク65によって外側へ弾性変形されていた嵌合ロック33が復元して内側へ変位し、嵌合ロック33の先端がスライダー44のコジリ防止片75の内側に入り込む。すると、スライダー44が板ばね45の付勢力によって嵌合方向前方側へ移動し、コジリ防止片75が嵌合ロック33の外側に配置される。これにより、嵌合ロック33の外側への変位がコジリ防止片75によって防止され、よって、嵌合ロック33によるハウジング43の接続部61の係止状態が維持される。
【0039】
また、上記のように、補器側コネクタ10にハーネス側コネクタ11が嵌合されると、接続部61の樹脂部分がピン12とショート端子15との間に入り込むことにより、ショート端子15がピン12から離間し、ピン12同士の導通状態が解除され、補器側の回路の短絡状態が解除される。これにより、例えば、補器側の回路では、警告灯が消灯することで、補器側コネクタ10にハーネス側コネクタ11が正規嵌合していることを確認することができる。
【0040】
なお、上記の嵌合工程において、補器側コネクタ10とハーネス側コネクタ11との嵌合が不完全である半嵌合の状態(図5(b)の状態)で嵌合作業が止められた場合、板ばね45により嵌合方向前方へ付勢されているスライダー44の反力によってハーネス側コネクタ11の接続部61が補器側コネクタ10から押し出されることとなる。よって、補器側コネクタ10とハーネス側コネクタ11との半嵌合などの嵌合不良が防止される。
【0041】
また、ハーネス側コネクタ11の接続部61が補器側コネクタ10から押し出されると、ショート端子15がピン12と接触することで補器側の回路が短絡状態とされる。したがって、補器側の回路に設けた警告灯が点灯することで、補器側コネクタ10にハーネス側コネクタ11が正規嵌合していないことを確認することができる。
【0042】
なお、補器側コネクタ10に嵌合させたハーネス側コネクタ11を補器側コネクタ10から外して接続状態を解除する場合は、スライダー44の操作用突起78を把持し、板ばね45の付勢力に抗して補器側コネクタ10への嵌合方向後方側へスライダー44を移動させる。このようにすると、スライダー44のコジリ防止片75による嵌合ロック33の外側への移動の規制が解除される。そして、この状態で、ハーネス側コネクタ11を補器側コネクタ10から離間させる。すると、嵌合ロック33が外側へ弾性変形し、爪部34が係止穴67から抜け出され、嵌合ロック33とロックビーク65とのロック状態が解除される。これにより、ハーネス側コネクタ11の接続部61が補器側コネクタ10から抜き取られ、補器側コネクタ10とハーネス側コネクタ11との接続状態が解除される。
【0043】
以上、説明したように、本実施形態によれば、スライダー44にコジリ防止片75を設けている。これにより、補器側コネクタ10に対してハーネス側コネクタ11の接続部61が斜めに傾いた状態で挿し込まれようとしても、コジリ防止片75が嵌合ロック33に当接されるので、傾いた状態での嵌合を阻止することができる。また、スライダー44を嵌合方向前方側へ付勢する板ばね45を、接続部61の両側部に配置させてスライダー44を両側の板ばね45で嵌合方向前方に付勢する構造であるので、傾いて挿し込まれたハーネス側コネクタ11の姿勢を板ばね45の付勢力で修正することができる。しかも、スライダー44を付勢する弾性部材として占有スペースが小さい板ばね45をスライダー44の両側に設けたことで、補器側コネクタ10における接続部61の収容間口Aの幅寸法Wが極力抑えられ、しかも、高さ寸法Hが大幅に小さくされ、よって、傾いた状態での接続部61の挿し込みを極力抑制することができる。
【0044】
これにより、補器側コネクタ10に対してハーネス側コネクタ11が傾いて無理に嵌合されることで生じるピン12の折れ曲がりなどの変形を防止することができ、ピン12が変形することで生じる導通不良や嵌合不良を確実に防止することができる。
【0045】
また、スライダー44が板ばね45の付勢力に抗して嵌合方向後方側へスライドされると、板ばね45は、その中間部分が大きく屈曲するように撓み、その屈曲部分が開口部77に入り込む。したがって、板ばね45が周囲の部品に干渉して変形が妨げられるような不具合を防止することができる。
【0046】
ここで、図7に示すように、スライド部72に開口部77を設けないスライダー44を備えたハーネス側コネクタ11では、板ばね45が撓んで屈曲した際に、図8に示すように、その屈曲部分が接触しないように、大きなバネ収容スペース74を確保しなければならず、ハーネス側コネクタ11の幅寸法が嵩張って大型化し、このハーネス側コネクタ11が接続される補器側コネクタ10も大型化してしまう。
【0047】
これに対して、本実施形態では、開口部77を形成することで板ばね45の屈曲部分との干渉を避ける構造であるので、スライダー44の幅寸法を極力小さくすることができ、補器側コネクタ10及びハーネス側コネクタ11の小型化を図ることができる。
【0048】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0049】
10 補器側コネクタ
11 ハーネス側コネクタ
12 ピン
13 ホルダ
14 シャントリング
33 嵌合ロック
41 端子
43 ハウジング
44 スライダー
45 板ばね
61 接続部
65 ロックビーク
73 受け片
75 コジリ防止片
76 側壁
77 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12