(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記構造の発光表示装置は、透光性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)84とリードフレーム83とは熱膨張係数が大きく異なり、透光性樹脂84の熱膨張係数はリードフレーム83の熱膨張係数の5倍以上となっている。そのため、発光表示装置の製造工程における透光性樹脂84の加熱硬化後や発光表示装置の実装基板に対するはんだ実装後の冷却過程において透光性樹脂84とリードフレーム83との界面に熱膨張係数差による熱応力が発生して残留応力として潜在化し、表示装置として実使用状態におけるLEDチップ82の点灯・消灯の繰り返しによる温度変化により残留応力が顕在化して、透光性樹脂84とリードフレーム83との間の界面剥離、LEDチップ82やボンディングワイヤ85のリードフレーム83からの剥離、あるいはボンディングワイヤ85の断線等の異常事態が発生し、光度低下や不点灯等の不具合の発生要因となる。
【0006】
特に、リードフレーム83と反射ケース80で囲まれてLEDチップ82を内包すると共に透光性樹脂84が充填された導光部81は、顕在化した残留応力が外部に分散されることなく内部に蓄積されると共に、顕在化した残留応力の導光部内における応力分布が不均一となり、局部的に大きな集中応力が生じることになる。その結果、上記異常事態の発生が顕著になって上記不具合による信頼性の低下を招くことになる。
【0007】
また、反射ケース80内に充填された透光性樹脂84の熱応力によってリードフレーム83自体に面方向に働く力が加わり、透光性樹脂84とリードフレーム83との界面において面方向の相対的なずれを生じる。この面方向のずれは、リードフレーム83の、特にLEDチップ82がダイボンディングされた部分に生じた場合は、上記異常事態の発生要因となる恐れが十分にある。
【0008】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、反射ケースに充填される透光性樹脂(充填樹脂)とLEDチップ(LED素子)が実装されたリードフレームとの界面において、熱膨張係数差により特にLEDチップを内包する導光部(セグメント部)内で発生する熱応力を緩和して、透光性樹脂とリードフレームとの間の界面剥離、LEDチップやボンディングワイヤのリードフレームからの剥離、あるいはボンディングワイヤの断線等の異常事態の発生を抑制し、光度低下や不点灯等の不具合の発生を防止することにある。これにより、信頼性の高い発光表示装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、内側面で囲まれた導光孔を有するケースと、前記導光孔の底部を塞ぐように配設された複数のリードフレームと、前記導光孔の底部内に位置し前記複数のリードフレームの少なくとも1つに実装された半導体発光素子と、前記ケースと前記リードフレームを一体化すると共に前記導光孔に充填され且つ前記リードフレームを封止する充填樹脂を備え、前記複数のリードフレームの少なくとも1つは貫通孔を有し、前記貫通孔は前記充填樹脂が充填されると共にその一部が前記ケースの、前記導光孔の底部の内側面近傍の部分で塞がれ、他の部分が前記導光孔の底部内に位置していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発光表示装置は、内側面で囲まれた導光孔を有するケースと、導光孔の底部を塞ぐように配設され、夫々半導体発光素子が実装され或いはボンディングワイヤが接続された複数のリードフレームと、ケースとリードフレームを一体化する充填樹脂を備え、複数のリードフレームの少なくとも1つは貫通孔を有し、前記貫通孔はその一部が前記ケースの、導光孔の底部の内側面近傍の部分で塞がれ、他の部分が導光孔の底部内に位置している。
【0011】
その結果、貫通孔の、導光孔の底部内に位置している部分が、充填樹脂の熱応力を外部に分散し、導光孔内に残留する熱応力の低減と拡散を図ると同時に、リードフレームに対する充填樹脂のアンカー効果が充填樹脂とリードフレームとのずれを抑制する。この結果、充填樹脂とリードフレームとの間の界面剥離、半導体発光素子やボンディングワイヤのリードフレームからの剥離、或いはボンディングワイヤ断線等の不具合の発生を防止して信頼性の向上に寄与するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の好適な実施形態を
図1〜
図8を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0014】
図1〜
図7は、発光表示装置の実施形態の7セグメント数字表示器に係る説明図であり、
図1は7セグメント数字表示器の上面説明図、
図2は
図1のA−A断面説明図、
図3はリードフレームの上面説明図、
図4はリードフレームの側面説明図、
図5は半導体発光素子が実装されたリードフレームの上面説明図、
図6は導光孔に充填された充填樹脂を除去した状態の7セグメント数字表示器の上面説明図、
図7は
図6のB−B断面説明図(導光孔に充填樹脂が充填された状態)である。
【0015】
7セグメント数字表示器(以下、「数字表示器」と略称する)1は、反射ケース10、リードフレーム(以下、「リード」と略称する)20、半導体発光素子(例えば、LED素子)30、ボンディングワイヤ40及び充填樹脂50を備えている。
【0016】
そのうち、反射ケース10は、反射性及び遮光性を有する樹脂材料からなり、表面11に光出射面となるセグメント(a)表示部〜セグメント(g)表示部(以下、「セグメント(a)〜セグメント(g)」と略称する)及びデシマルポイント(dp)表示部(以下、デシマルポイント(dp)と呼称する)を有し、セグメント(a)〜セグメント(g)及びデシマルポイント(dp)の夫々に対応する位置に、表面11から裏側に貫通する貫通孔からなる導光孔(A)〜(G)、(DP)が設けられており、裏側は開口12を有している。
【0017】
各導光孔(A)〜(G)、(DP)の内側面は、反射ケース10の生地がそのまま露出して反射面を形成している。
【0018】
リード20は、金属の板材を打ち抜き加工や折り曲げ加工等の板金加工により、複数の分割部21に分割されたボンディング部22と、複数の分割部21の夫々から延長されてボンディング部21の対向する両端部から該ボンディング部22に垂直に折曲された複数の電極部23からなる略コ字形状に形成し、その後はんだメッキ等による表面処理が施されている。ボンディング部22には更に、後述する所定の分割部21の所定の位置に、貫通孔24が設けられている(
図3及び
図4参照)。
【0019】
リード20のボンディング部22の分割部21の、各導光孔(A)〜(G)、(DP)に対応する位置には導電性接合部材35を介してLED素子30が載設される(
図5参照)。
【0020】
図1及び
図2に戻って、分割部21の、各導光孔(A)〜(G)、(DP)に対応する位置に導電性接合部材35を介してLED素子30が載設されると、LED素子30の下部電極(図示せず)とLED素子30が載設された分割部21が電気的に接続されている。
【0021】
同時に、LED素子30の上部電極(図示せず)とLED素子30が載設された分割部21とは電気的に分離された他の分割部21がボンディングワイヤ40を介して電気的に接続されている。
【0022】
リード20は、反射ケース10内に、LED素子30が実装されたボンディング部22が反射ケース10の各導光孔(A)〜(G)、(DP)の底部に位置した状態で配設されている。そして、各導光孔(A)〜(G)、(DP)を含む反射ケース10内に充填樹脂50が充填されてリード20のボンディング部22が充填樹脂50に埋設された状態となっている。
【0023】
上記構成の数字表示器1において、各導光孔(A)〜(G)、(DP)に充填された充填樹脂を除去した状態を上方視すると、
図6にあるように、各導光孔(A)〜(G)、(DP)の底部には、リードのボンディング部の2つの分割部21a、21bが所定の距離の隙間25を置いて位置しており、一方の分割部21aにはLED素子30が実装され、他方の分割部21bには、一端部をLED素子30の上部電極に接続されたボンディングワイヤ40の他端部が接続されている。
【0024】
また、分割部21a、21bの少なくとも一方には、各導光孔(A)〜(G)、(DP)の底部の内側面13に掛かる貫通孔24が位置している。
【0025】
貫通孔24は
図7にあるように、その一部が、反射ケース10の裏面14の、各導光孔(A)〜(G)、(DP)の底部の内側面13近傍の部分で塞がれると共に、その他の部分が各導光孔(A)〜(G)、(DP)の底部内に位置している。
【0026】
したがって、各導光孔(A)〜(G)、(DP)の底部における、リードの分割部21aと分割部21bの間の隙間25及び貫通孔24の部分貫通孔24aの夫々は充填樹脂50で埋められており、その埋められた充填樹脂50によって各導光孔(A)〜(G)、(DP)に充填された充填樹脂50と反射ケース10の開口12側に充填された充填樹脂50が反射ケース10内で連通している。
【0027】
ところで、上術したように、充填樹脂50とリード20とは熱膨張係数が大きく異なり、エポキシ樹脂等の熱硬化性の充填樹脂50の熱膨張係数はリード20の熱膨張係数の5倍以上となっている。そのため、数字表示器の製造工程における充填樹脂50の加熱硬化後や数字表示器の実装基板に対するはんだ実装後の冷却過程において充填樹脂50とリード20との界面に熱膨張係数差による熱応力が発生して残留応力として潜在化し、数字表示器として実使用状態におけるLED素子30の点灯・消灯の繰り返しによる温度変化により残留応力が顕在化して、充填樹脂50とリード20との間の界面剥離、LED素子30やボンディングワイヤ40のリード20からの剥離、あるいはボンディングワイヤ40の断線等の異常事態が発生し、光度低下や不点灯等の不具合の発生要因となる。
【0028】
特に、LED素子30を内包すると共に充填樹脂50が充填された各導光孔(A)〜(G)、(DP)においては、充填樹脂50がリード20の2つの分割部21a、21bと内側面13で囲まれるために、製造工程における充填樹脂50の加熱硬化後や数字表示器の実装基板に対するはんだ実装後の冷却過程における熱応力が外部に分散されることなく残留応力として内部に蓄積されやすく、残留応力の導光部内における応力分布が不均一となりやすく、局部的に大きな集中応力が生じる可能性がある。
【0029】
この場合、リードの2つの分割部21a、21b間に位置する隙間25は、従来の数字表示器等の表示器においても存在するものであり、各導光孔(A)〜(G)、(DP)に充填された充填樹脂50の加熱硬化後及び数字表示器のはんだ実装後の夫々の冷却過程における充填樹脂50の熱応力を、隙間25を介して開口12側に分散することにより応力を緩和させる働きを有するものである。
【0030】
本実施形態においては、更に、リードの分割部21a、21bの夫々に設けられた貫通孔24の、各導光孔(A)〜(G)、(DP)の底部の内側面13に掛かる部分(部分貫通孔)24aが位置している。
【0031】
この部分貫通孔24aは、リードの2つの分割部21a、21b間に位置する隙間25が、充填樹脂50の、各導光孔(A)〜(G)、(DP)の中央側に加わる熱応力を分散して応力緩和に寄与するに対し、充填樹脂50の、各導光孔(A)〜(G)、(DP)の内側面側に加わる熱応力を内側面に沿って該部分貫通孔24aを介して開口12側に分散することにより更なる応力緩和に寄与するものとなる。
【0032】
したがって、従来の表示器に対して、各導光孔(A)〜(G)、(DP)の内部において蓄積される充填樹脂50の残留応力を更に低減することができると共に応力分布の均一化も図ることができる。
【0033】
更に、各導光孔(A)〜(G)、(DP)に充填された充填樹脂50が部分貫通孔24aを介して反射ケース10の開口12側に充填された充填樹脂50側にくい込み、反射ケース10の開口12側に充填された充填樹脂50が部分貫通孔24aを介して各導光孔(A)〜(G)、(DP)に充填された充填樹脂50側にくい込んでいる。
【0034】
そのため、リードの2つの分割部21a、21bの少なくとも一方に設けた貫通孔24が、分割部21a、21bに対するアンカー効果の働きを担うものとなる。
【0035】
その結果、リードの2つの分割部21a、21bの少なくとも一方に設けられた貫通孔24による、各導光孔(A)〜(G)、(DP)に充填された充填樹脂50に対する残留応力の低減効果及びリードの2つの分割部21a、21bの夫々に対するアンカー効果によって、各導光孔(A)〜(G)、(DP)における充填樹脂50とリードの2つの分割部21a、21bの夫々との間の界面剥離、LED素子30の分割部21aからの剥離やボンディングワイヤ40の分割部21bからの剥離、あるいはボンディングワイヤ40の断線等の不具合の発生を従来以上に抑制することができる。なお、
図3、5では全てのリードフレームに貫通孔を設けているが、これに限定することはなく、少なくとも1つのリードフレームで貫通孔を有していれば良い。目標仕様や不具合の程度によって、貫通孔を設けるリードフレームの本数や貫通孔の数・サイズを任意に設計することができる。
【0036】
次に、本実施形態の数字表示器(実施例)と従来構造の数次表示器(比較例)について、剥離と光り漏れの状況を検証したので、以下に試験方法及びその結果を説明する。
【0037】
なお、光り漏れは、導光孔に内包されたLED素子からの光に対して、その該導光孔の底部に位置する部分貫通孔からの漏れ光の状況を調べたものである。
【0038】
試験試料は、実施例の数字表示器はリードの厚みを0.25mm、外形サイズを縦19mm×横12.5mm×厚み12mmとし、リード20の2つの分割部21a、21bの夫々に0.6mmφの貫通孔を設けると共に、この貫通孔の一部が、反射ケースの裏面の、各導光孔(A)〜(G)、(DP)の底部の内側面近傍の部分で塞がれている。一方、比較例の数字表示器は、貫通孔が設けられておらず、それ以外は全て実施例と同一である。
【0039】
剥離の試験方法は、熱衝撃試験を採用し、−40℃(15分)〜+85℃(15分)を1サイクルとし、これを288サイクル繰り返した。試料数は、実施例及び比較例とも4個ずつである。
【0040】
熱衝撃試験の結果は、比較例は22サイクル後に4個すべての試験試料についてセグメント(a)に剥離による不点灯が発生した。それに対し、実施例は288サイクルを経ても剥離及び不点灯は発生しなかった。
【0041】
これにより、導光孔構造を有する表示器において、リードに貫通孔を設けて該貫通孔を本実施形態で示したような位置に配置することにより、貫通孔が剥離防止機能を発揮することが証明された。
【0042】
光り漏れ試験は、試験試料に、実施例及び比較例ともに上記熱衝撃試験で用いたものと同一のものを用い、試料数を実施例及び比較例とも2個ずつとした。
【0043】
試験方法は、セグメント(a)及びセグメント(d)の光度が100mcdとなるようにLED素子の通電電流の電流値を設定し、セグメント(a)及びセグメント(d)の表面を遮光マスクで塞いでセグメント(a)及びセグメント(d)からの出射光を遮りながらセグメント(a)及びセグメント(d)が点灯(LED素子を前記電流値で駆動)したときの隣接するセグメントの光度を測定した。
【0044】
漏れ光の測定セグメントは、セグメント(a)が点灯したときのセグメント(b)、(f)であり、セグメント(d)が点灯したときのセグメント(c)、(e)である。
【0045】
光り漏れの試験結果は、
図8に示すように、セグメント(a)を点灯させたときのセグメント(b)、(f)の漏れ光の平均光度は、実施例が0.38mcdであり比較例が0.31mcdであり、その差が0.07mcdとわずかな差であった。また、セグメント(d)を点灯させたときのセグメント(c)、(e)の漏れ光の平均光度は、実施例が0.31mcdであり比較例が0.32mcdであり、その差が0.01mcdとわずかな差であった。
【0046】
部分貫通孔は貫通孔の一部が、反射ケースの裏面の、各導光孔(A)〜(G)、(DP)の底部の内側面近傍の部分で塞がれることにより形成されたものであり、貫通孔に対して部分貫通孔の断面面積が縮小されることにより実施例の光り漏れが比較例と大差ない程度に抑制された結果として現れたものである。
【0047】
したがって、本実施形態において、リードに形成された貫通孔が、光り漏れの増加を抑制して光学特性を維持しつつ、充填樹脂とリードとの間の界面剥離、LED素子やボンディングワイヤのリードからの剥離、あるいはボンディングワイヤ断線等の不具合の発生を防止して信頼性の向上に寄与するものである。
【0048】
なお、充填樹脂は、エポキシ樹脂あるいはシリコーン樹脂等の透光性樹脂や、透光性樹脂に蛍光体を分散した蛍光体分散樹脂が用いられる。