特許第5986965号(P5986965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5986965-テンショナ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986965
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】テンショナ
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/12 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   F16H7/12 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-166463(P2013-166463)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34615(P2015-34615A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2015年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115245
【氏名又は名称】ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】武田 義司
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−180288(JP,A)
【文献】 特開2003−120770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部をエンジンブロック側に向けた状態で前記エンジンブロックに固定されるテンショナカップと、
前記エンジンブロックと前記テンショナカップの間に配置されるとともに前記テンショナカップに揺動自在に支持され、前記開口部から外方へ向かって突出するテンショナアームと、
前記テンショナアームの揺動端に枢着され、前記テンショナアームに対して前記テンショナカップと同じ側に取付けられるテンショナプーリと
前記テンショナカップの軸心に設けられたピボット軸に嵌合され、前記テンショナアームを揺動自在に支持するブッシュと、
前記テンショナアームに取付けられ、前記テンショナプーリを回転自在に支持する軸受けとを備え、
前記ブッシュの軸方向の中心と前記軸受けの軸方向の中心とを結ぶ直線が前記テンショナアームに対して略平行であることを特徴とするテンショナ。
【請求項2】
前記テンショナプーリの外周面が前記テンショナカップの開口部の外周面に対向することを特徴とする請求項に記載のテンショナ。
【請求項3】
前記テンショナカップが、前記開口部の外周面から突出する取付け部を介して前記エンジンブロックに固定されることを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の多軸補機駆動ベルトシステムに設けられ、エンジンの補機を駆動する無端ベルトに張力を付与するためのテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
テンショナは一般的に、エンジンブロックに固定されるテンショナカップにテンショナアームを揺動自在に取り付け、テンショナアームの揺動端に、無端ベルトを付勢するためのプーリを枢着して構成される。テンショナアームは、その一端がテンショナカップの開口部を覆うとともにテンショナカップに設けられたピボット軸に揺動自在に支持される。テンショナカップの中には、テンショナアームにトルクを付与するためのコイルバネと減衰機構が収容される。
【0003】
テンショナアームに対して、テンショナカップが下側に設けられ、テンショナプーリが上側に設けられる、いわゆるZ型のテンショナの場合、ベルトによってテンショナプーリとテンショナアームに作用するモーメントにより、ピボット軸に嵌合されたピボットブッシュに偏摩耗が生じるという問題がある。そこで、このような問題を解消することができる構成として従来、テンショナカップとテンショナプーリをテンショナアームに対して同じ側に配置する構成が提案されている(特許文献1)。すなわちテンショナカップとテンショナプーリは、テンショナアームに対してエンジンブロック側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−519424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多軸補機駆動ベルトシステムにおいて、テンショナプーリの回転中心であるプーリ軸とピボット軸との間にベルトを通すように構成する場合、上述した従来の構成によると、テンショナプーリがテンショナアームに対してエンジンブロック側に設けられるために、テンショナアームが障害となって、ベルトをテンショナプーリに取り付けることが非常に困難である。
【0006】
本発明は、無端ベルトのベルトシステムへの取り付け作業が容易であり、かつテンショナブッシュの偏摩耗が生じにくいテンショナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るテンショナは、開口部をエンジンブロック側に向けた状態でエンジンブロックに固定されるテンショナカップと、エンジンブロックとテンショナカップの間に配置されるとともにテンショナカップに揺動自在に支持され、開口部から外方へ向かって突出するテンショナアームと、テンショナアームの揺動端に枢着され、テンショナアームに対してテンショナカップと同じ側に取付けられるテンショナプーリとを備え、テンショナカップは、テンショナアームの揺動に干渉しないように、テンショナアームを跨いでエンジンブロックに固定されることを特徴としている。
【0008】
好ましくはテンショナは、テンショナカップの軸心に設けられたピボット軸に嵌合され、テンショナアームを揺動自在に支持するブッシュと、テンショナアームに取付けられ、テンショナプーリを回転自在に支持する軸受けとをさらに備え、ブッシュの軸方向の中心と軸受けの軸方向の中心とを結ぶ直線がテンショナアームに対して略平行である。この構成において、テンショナプーリの外周面はテンショナカップの開口部の外周面に対向する。
【0009】
テンショナカップは、開口部の外周面から突出する取付け部を介してエンジンブロックに固定されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無端ベルトのベルトシステムへの取り付け作業が容易であり、かつテンショナアームの偏摩耗が生じにくいテンショナが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態であるテンショナを有する多軸補機駆動ベルトシステムの各補機のプーリのレイアウトを示す配置図である。
図2】本発明の一実施形態であるテンショナの平面図である。
図3】テンショナの底面図である。
図4】テンショナの一部を破断して示す側面図である。
図5図2のV−V線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示された実施形態を参照して本発明を説明する。
図1は自動車用エンジンに適用された多軸補機駆動ベルトシステムのレイアウトの一例を示している。無端ベルト10は、駆動源であるエンジンのクランクプーリ11と、被駆動装置である補機プーリ12、13、14に掛け回される。クランクプーリ11と補機プーリ12の間にはテンショナプーリ21が設けられる。
【0013】
テンショナプーリ21はクランクプーリ11と補機プーリ12の各軸心を結ぶ線よりも内側に配設され、ベルト10を補機プーリ13に近接する方向へ付勢して張力を付与する。テンショナプーリ21は、後述するようにテンショナカップの軸心に設けられるピボット軸22の周りに揺動自在である。テンショナプーリ21は、周知のようにコイルバネのバネ力によってベルト10を付勢し、ベルト10の張力が所定の大きさになるように調整する。
【0014】
図2図5を参照してテンショナの構成を説明する。
テンショナは有底筒状を呈するテンショナカップ23を有し、テンショナカップ23の底部24の中央部に形成されたボス部25にはピボット軸22が圧入される。またテンショナカップ23の開口部26の外周縁部から一対の取付け部27が突出する。これらの取付け部27はピボット軸22に対して垂直な方向に、相互に反対方向に突出し、各取付け部27には穴28が形成される。テンショナカップ23は開口部26をエンジンブロック(図示せず)側に向けた状態で、穴28にボルトを通してエンジンブロックに固定される。
【0015】
テンショナアーム31はテンショナカップ23とエンジンブロックの間に配置される。テンショナアーム31は、テンショナカップ23の開口部26を覆う蓋部32と、蓋部32の内面からボス部25に向かって延びる筒状支持部33とを有する。ピボット軸22はピボットブッシュ34が嵌合された状態で、蓋部32に形成された穴から筒状支持部33に挿入される。ピボット軸22の先端は筒状支持部33から突出し、ボス部25の穴に圧入されて固着される。
【0016】
テンショナアーム31の外面、すなわちエンジンブロックに対向する面(図4、5において下側の面)には凹部35が形成され、凹部35には、ピボット軸22の円板状頭部29が嵌め込まれ、ピボットブッシュ34のフランジ部36は凹部35と円板状頭部29によって挟まれる。ピボットブッシュ34は凹部35から筒状支持部33の先端まで延び、テンショナアーム31はピボットブッシュ34とピボット軸22を介してテンショナカップ23に揺動自在に支持される。
【0017】
テンショナアーム31は、蓋部32からテンショナカップ23の外方へ延びるアーム部37と、アーム部37とは反対方向に延びる脚部38とを有する。アーム部37の先端である揺動端には、テンショナカップ23と同じ方向(図4、5において上方)に突出する隆起部41が形成され、隆起部41には軸孔42が形成される。隆起部41には、テンショナプーリ21を回転自在に支持するボール軸受け43が取り付けられる。軸孔42には、ボール軸受け43側から支持ピン44が螺着される。ボール軸受け43のインナレースの上面にはダストシール45が設けられ、ダストシール45は支持ピン44の頭部46によってボール軸受け43のインナレースに固定される。
【0018】
このようにテンショナプーリ21は、テンショナアーム31に対してテンショナカップ23と同じ側に取り付けられ、テンショナアーム31の揺動端に枢着される。テンショナプーリ21とテンショナカップ23は、テンショナプーリ21の外周面21aがテンショナカップ23の開口部26の外周面26aに対向する位置関係にある。すなわちテンショナプーリ21はテンショナカップ23に対して、底部24側ではなく開口部26に近接した所に位置している。一方、ピボットブッシュ34とボール軸受け43は、ピボットブッシュ34の軸方向の中心とボール軸受け43の軸方向の中心とを結ぶ直線がテンショナアーム31に対して略平行となる位置関係にある。
【0019】
テンショナアーム31の脚部38には係合部47が形成される。係合部47は、テンショナカップ23と同じ方向に突出し、六角柱状を有する。係合部47は、テンショナをベルトシステムに取り付け作業において、後述するコイルバネのバネ力に抗してテンショナアーム31を回転変位させるときに、治具を係合させるために用いられる。
【0020】
コイルバネ51はテンショナアーム31を揺動方向に付勢するために設けられ、その一端はテンショナカップ23の底部24に係合し、他端はテンショナアーム31の蓋部32に設けられた減衰機構52の支持部材53に係合する。減衰機構52の摩擦部材54はテンショナカップ23の開口部26の内周壁面に摺接する。テンショナは、テンショナアーム31がコイルバネ51に抗して捩じられた状態で、テンショナプーリ21をベルト10に係合させてエンジンブロックに取付けられ、これによりベルト10は常時コイルバネ51のバネ力に応じた張力を付与される。エンジンの駆動時、ベルト10の張力が変動しようとすると、ベルトの振動に応じてテンショナアーム31が揺動し、ベルト10の張力の変動が抑えられる。テンショナアーム31の揺動の振幅は、減衰機構52において、摩擦部材54とテンショナカップ23の内周壁面との間の摩擦抵抗によって抑えられる。
【0021】
図4、5において、ベルト10はテンショナプーリ21に掛け回され、テンショナプーリ21の外周面21aとテンショナカップ23の外周面26aの間を通る。テンショナアーム31はベルト10の張力が変動すると揺動するが、一対の取付け部27は、テンショナアーム31の揺動に干渉しないように、テンショナアーム31を跨いでエンジンブロックに固定される。つまり、取付け部27の穴8にボルトが通されてエンジンブロックに固着されるが、テンショナアーム31はボルトの位置に干渉しない範囲で揺動する。
【0022】
以上のように本実施形態では、テンショナの構成部材は、エンジンブロック側からテンショナアーム31、テンショナカップ23の順に配置され、テンショナプーリ21はテンショナアーム31に対して、テンショナカップ23と同じ側に設けられている。すなわちテンショナプーリ21とテンショナカップ23の間の空間は、テンショナアーム31に対してエンジンブロックとは反対側に開放している。したがって、無端ベルト10をテンショナに取り付ける工程において、ベルト10はテンショナアーム31に干渉しないので、ベルト10をテンショナプーリ21とテンショナカップ23の間を通す作業は簡単である。
【0023】
またテンショナプーリ21とテンショナカップ23は、ピボットブッシュ34の軸方向の中心とボール軸受け43の軸方向の中心とを結ぶ直線がテンショナアーム31に対して略平行となるように設けられている。したがってテンションアーム31がベルト10から受ける力によるモーメントは極力小さく抑えられ、これによりピボットブッシュ34がピボット軸22に対して傾くことが防止されて、ピボットブッシュ34の偏摩耗が防止される。
【0024】
さらに、テンショナプーリ21とテンショナカップ23の間の軸間距離を必要最小限にすることにより、つまりベルト10を通すのに必要な分だけの間隔を空けることにより、テンショナアーム31のアーム部37の長さを短くすることができる。このような構成により、テンショナアーム31に与えるトルク、すなわちコイルバネ51のバネ力を小さくすることができる。またテンショナアーム31およびテンショナカップ23に要求される強度が低くなるので、テンショナアーム31およびテンショナカップ23の設計の条件が緩和される。
【符号の説明】
【0025】
21 テンショナプーリ
22 ピボット軸
23 テンショナカップ
26 開口部
27 取付け部
31 テンショナアーム
図1
図2
図3
図4
図5