(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂層と、該熱可塑性樹脂層の両面に積層され、該熱可塑性樹脂より融点が低い第1、第2の接着層とを含む一軸配向体を、配向軸が交差するように各々の前記第1または第2の接着層を介して経緯積層してなる網状の強化支持層と、前記強化支持層にスパンレース法により絡合された短繊維状のセルロース系繊維または合成繊維からなるウェブ層と、を備え、前記ウェブ層と前記強化支持層とが一体化された複合不織布であって、
前記強化支持層の目付が5〜13g/m2、前記一軸配向体における前記第1の接着層、前記熱可塑性樹脂層及び前記第2の接着層の層構成比が20/60/20〜30/40/30であり、前記強化支持層の長手方向及び幅方向のカンチレバー法による剛軟度の平均値を50mm以下にした、ことを特徴とする複合不織布。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係る複合不織布は、強化支持層に、短繊維状のセルロース系繊維または合成繊維からなるウェブ層をスパンレース法により絡合し、ウェブ層と強化支持層とを一体化したものである。本発明では、スパンレース法でウェブ層の繊維を水流絡合させる際に、割繊維不織布の剛性により噴射水流が跳ね返され、繊維を十分に絡合させることができないことに着目し、強化支持層に柔軟性やしなやかさを持たせることで、ウェブ層の繊維を絡み易くしている。そこで、まず、本実施形態の特徴の一つである強化支持層の構成及び製造方法について説明し、次に、この強化支持層にウェブ層を絡合する複合不織布の製造方法について説明する。
【0011】
[強化支持層の構成]
図1に示す強化支持層1は、スプリットウェブ2の配向軸2aとスリットウェブ3の配向軸3aとが互いに交差するように経緯積層された不織布で形成されている。そして、隣接するスプリットウェブ2とスリットウェブ3の接触部位同士が面接着で接合されている。
【0012】
図2及び
図3はそれぞれ、
図1に示した強化支持層1を構成するスプリットウェブ2とスリットウェブ3を示している。
図2(A)に示すスプリットウェブ2は、熱可塑性樹脂製のフィルムを縦方向(スプリットウェブ2の配向軸2aの軸方向)に一軸延伸させて、縦方向に割繊し、かつ拡幅させて形成される。スプリットウェブ2には、熱可塑性樹脂、例えば高密度ポリチレンと、この熱可塑性樹脂より融点が低い熱可塑性樹脂、例えば第1、第2の低密度ポリエチレンとを用いる。
【0013】
詳しくは、多層Tダイ法等の成形法により作製され、高密度ポリチレンの両面に第1、第2の低密度ポリエチレンを積層した多層フィルム(一軸配向体)を、縦方向(長手方向)に少なくとも3倍に延伸させた後、同方向に千鳥掛けにスプリッターを用いて割繊(スプリット処理)して網状のフィルムとし、更に所定幅に拡幅させて形成する。拡幅によって幹繊維4と枝繊維5が形成され、図示するような網状体となる。このスプリットウェブ2は、幅方向全体にわたって縦方向に比較的高い強度を有する。
【0014】
図2(B)は、
図2(A)の一点鎖線で囲んだ領域Bの拡大斜視図であり、スプリットウェブ2は、熱可塑性樹脂層6の両面に、この熱可塑性樹脂より融点が低い熱可塑性樹脂層7−1,7−2が積層された3層構造になっている。熱可塑性樹脂層7−1,7−2は、強化支持層1の形成時にスリットウェブ3と共に経緯積層される際のウェブ相互の接着層(第1、第2の接着層)として機能する。
【0015】
図3(A)に示すスリットウェブ3は、熱可塑性樹脂製のフィルムに、横方向(スリットウェブ3の配向軸3aの軸方向)に多数のスリットを入れた後に、横方向に一軸延伸させて形成される。詳しくは、スリットウェブ3は、上記多層フィルムの両耳部を除く部分に、横方向(幅方向)に、例えば熱刃などにより平行に千鳥掛け等の断続したスリットを形成した後、横方向に延伸させて形成される。このスリットウェブ3は、横方向に比較的高い強度を有する。
【0016】
図3(B)は、
図3(A)の一点鎖線で囲んだ領域Bの拡大斜視図であり、スリットウェブ3は、熱可塑性樹脂層6’の両面に、この熱可塑性樹脂より融点が低い熱可塑性樹脂の層7−1’,7−2’が積層された3層構造からなる。これらの熱可塑性樹脂層7−1’,7−2’は、強化支持層1の形成時にスプリットウェブ2と共に経緯積層される際のウェブ相互の接着層(第1、第2の接着層)として機能する。
【0017】
上記強化支持層1の目付は5〜13g/m
2、一軸配向体(スプリットウェブ2及びスリットウェブ3)における熱可塑性樹脂層7−1,7−1’(第1の接着層)、熱可塑性樹脂層6,6’及び熱可塑性樹脂層7−2,7−2’(第2の接着層)の層構成比は20/60/20〜30/40/30であり、長手方向(MD)及び幅方向(CD)のカンチレバー法による剛軟度の平均値が50mm以下になっている。
【0018】
[強化支持層の製造方法]
次に、
図1乃至
図3に示した強化支持層1の製造方法について、
図4及び
図5により説明する。
図4は、スプリットウェブ2の製造工程の概略を示している。また、
図5はスプリットウェブ2にスリットウェブ3を積層して強化支持層1を製造する工程の概略を示している。
【0019】
図4に示すように、スプリットウェブ2は、多層フィルムの製膜工程、多層フィルムの配向工程、配向多層フィルムを配向軸と平行にスプリットするスプリット工程、及びスプリットしたフィルムを巻き取る巻取工程等を経て製造される。
【0020】
多層フィルムの製膜工程は、本例では、押出機10に溶融樹脂、すなわち第1、第2の接着層として機能する融点が低い熱可塑性樹脂、例えば低密度ポリエチレン、及び熱可塑性樹脂層、例えば高密度ポリエチレンをそれぞれフラットダイ中の別々のマニホールドに送り込む。これらの樹脂を、ダイリップの直前で合流、接合して多層フィルム11を形成する。各溶融樹脂の流量調整や製品厚みの調整はダイ内のチョークバーやリップの調整によって行う。
【0021】
配向工程では、多層フィルム11を鏡面処理された冷却ローラ12a,12b間を介して、初期寸法に対して所定の配向倍率でロール配向を行う。
【0022】
スプリット(割繊)工程では、上記配向した多層フィルム11を、高速で回転するスプリッター(回転刃)13に摺動接触させて、多層フィルム11にスプリット処理(割繊化)を行う。
【0023】
割繊して形成されたスプリットウェブ2は、所定幅に拡幅された後、熱処理部14での熱処理を経て、巻取工程において所定の長さに巻き取られて、スプリットウェブ2の巻取体15になる。
【0024】
図5に示すように、上記のように形成した巻取体15から繰り出した縦ウェブ(スプリットウェブ2)に、横ウェブ(スリットウェブ3)を積層する。横ウェブの製造工程は、多層フィルムの製膜工程、多層フィルムの長手方向に対して直角にスリット処理を行うスリット工程、及び多層スリットフィルムの配向工程を含む。そして、横ウェブに縦ウェブを積層させて熱圧着する(圧着工程)。
【0025】
スリットウェブ3用の多層フィルムの製膜工程は、多層フィルム11と同様に、押出機20に溶融樹脂、すなわち第1、第2の接着層として機能する融点が低い熱可塑性樹脂、例えば低密度ポリエチレン、及び熱可塑性樹脂層、例えば高密度ポリエチレンをそれぞれフラットダイ中の別々のマニホールドに送り込む。これらの樹脂を、ダイリップの直前で合流、接合して多層のフィルム21を形成する。各溶融樹脂の流量調整や製品厚みの調整はダイ内のチョークバーやリップの調整によって行う。
【0026】
スリット工程では、上記製膜した多層フィルム21をピンチして扁平化し、次いで圧延により微配向し、横スリット工程22にて、走行方向に対して直角に、千鳥掛けに横スリットを入れる。
【0027】
配向工程では、上記スリット処理を行ったフィルム21に横配向工程23にて横配向を施す。このようにして得られたスリットウェブ3(横ウェブ)は、熱圧着工程24に搬送する。
【0028】
一方、縦ウェブ(スプリットウェブ2)を、原反繰出しロール25から繰出して、所定の供給速度で走行させて拡幅工程26に送り、拡幅機(図示せず)により数倍に拡幅し、必要により熱処理を行う。この後、縦ウェブを熱圧着工程24に送り、そこで縦ウェブと横ウェブとを各々の配向軸が交差するように積層させて熱圧着する。具体的には、外周面が鏡面である熱シリンダ24aと鏡面ロール24b,24cとの間に順次縦ウェブ2及び横ウェブ3を導いてこれらにニップ圧を加えることにより互いに熱圧着させて一体化させる。これにより、隣接する縦ウェブ2と横ウェブ3との接触部位同士が全面的に面接着する。このようにして一体化された縦ウェブ及び横ウェブは巻取工程に搬送されて巻き取られ、強化支持層1の巻取体27になる。
【0029】
[複合不織布の製造方法]
次に、上記強化支持層1にウェブ層をスパンレース法により絡合し、ウェブ層と強化支持層とを一体化して複合不織布を製造する方法について詳述する。この製造方法は、ウェブ層形成工程、ウェブ層と強化支持層とを供給する供給工程、水の噴射処理を行う高圧水流絡合工程、乾燥工程、及び製品巻取工程等を含んでいる。
【0030】
まず、ウェブ層形成工程においては、原料の種類及び最終用途によりウェブの配列や形成の方法として種々の形式が用いられる。ウェブの特性としては、その平面内において繊維の分布が均一であることが要求され、ウェブの繊維配列方式としては、(1)縦方向に二次元配列した機械式カードウェブ形成法によるカード・パラレル方式、(2)斜方向に交差配列した機械式クロスウェブ形成法によるカード・クロスレイヤー方式、(3)二次元と三次元の中間配列のセミランダム機によるセミランダム方式、(4)繊維をエアーブローに乗せて飛ばし、メッシュスクリーン上に集積してウェブを形成するエアーレイ式ウェブ形成法により三次元にアトランダムに配列するランダム方式等が挙げられる。
【0031】
また、原料の種類によりウェブ形成方法が異なり、再生繊維等を湿式紡糸したものまたは合成繊維を通常の方法により溶融紡糸したものなどをカットして原料とする場合には、カード機で繊維を引き揃えてウェブに形成する方法が用いられ、またメルトブロー法により紡糸したものの場合にはそのままウェブに形成する方法が用いられる。さらに天然繊維をカード機により引き揃えてウェブに形成する方法または叩解して抄紙する湿式ウェブ形成法等がある。
【0032】
上記ウェブ層の短繊維の一例を挙げると、短繊維状のセルロース系繊維(天然繊維)や、ポリエチレンテフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)等の合成繊維(芯鞘繊維を含む)がある。
【0033】
図6は、上記工程のうち、供給工程以降の工程の一例を示す概略図である。供給工程においては、供給ロール42aから繰り出される強化支持層1の上面に、供給ロール41aから繰り出されるウェブ層41を供給するか、または強化支持層1の両面に供給ロール41a、41a’からのウェブ層41、41’を供給する。あるいはウェブ層形成工程から直接供給されたウェブ層に、供給ロール42aから繰り出される強化支持層1を重ね合わせて、後続の高圧水流絡合工程に給送する。
【0034】
次の高圧水流絡合工程では、処理水透過性または不透過性の移送用支持体43としてのスクリーンまたはロールの上で、給送されたウェブ層と強化支持層の積層体44に、高圧水流インジェクター45から細い複数の水流45aを噴射する。なお、高圧水流を噴射する際に、高圧水流のエネルギーにより、重ねたウェブ層と強化支持層が相互にずれたり、あるいは両者の剥離が生じたりすると、絡合処理に安定性を欠き、また優れた物性を有する均一な複合不織布が得られない。よって、水流を噴射する前に、上記積層体を浸水装置46において予め水46aに浸すことが好ましい。また、水流噴射後には、乾燥効率を高めるために、減圧吸引手段などを設けた水分吸引装置47により水分を吸引除去することが好ましい。
【0035】
上記高圧水流絡合工程において、高圧水流処理をスクリーン上で行う場合、スクリーンは特に限定されないが、処理水の排出処理を容易にするために、目的や用途等に合わせて材質、目開き、線径等を選択することが好ましい。スクリーンの目開きは通常20〜200メッシュである。処理水透過性の移送用支持体を用いる方法においては、処理水が容易に排出されるため、水流の噴射によりウェブを飛散させて均一性を損なうことは避けられる。しかしながら、一旦ウェブを透過した処理水にはまだかなりのエネルギーが残存しており、エネルギーの利用効率が高くない。一方、処理水不透過性の移送用支持体を用いる方法においては、ウェブを透過した噴射水流は、移送用支持体に衝突して反発流となり再びウェブに作用するため、噴射流と反発流の相互作用により絡合が効率よく行われる。しかしながら、水中に浮遊しているウェブに高圧水流を噴射する状態となるため、絡合の安定性が低くなる。これらの内では、安定した処理を行うことが可能であり、かつ均一な複合不織布が得られる点において、処理水透過性の移送用支持体上で高圧水流の噴射処理を行う方法が好ましい。
【0036】
上記噴射水流の圧力は10〜300kg/cm
3であり、好ましくは60〜150kg/cm
3である。強化支持層1の剛軟度が低いことから比較的低圧でもウェブを絡合できるが、圧力が10kg/cm
3未満では絡合効果が不十分である。また、300kg/cm
3を超えると高圧水流を生成するコストが増大する上に、取扱いが困難であるため、いずれも好ましくない。噴射は1回以上行うが、3回の噴射により絡合を行うことが好ましい。すなわち、絡合を主目的とした高圧及び大水量の噴射、表面仕上げのための低圧及び小水量の噴射、並びにその中間の噴射等を使い分けて用いることが可能である。高圧流体の形状は特に限定しないが、エネルギー効率の点から柱状流が好ましい。柱状流の断面形状は、ノズルの断面形状あるいはノズルの噴出口の内部構造により決定されるが、ウェブの材質、目的、用途等に応じて自由に選択することができる。高圧水流噴射の処理速度は1〜150m/minであり、好ましくは20〜100m/minである。処理速度が1m/min未満では生産性が低く、また150m/minを超えると絡合効果が不十分であるため、いずれも好ましくない。
【0037】
上述した強化支持層1を基材に用いて、水流絡合するウェブ層の目付は、片面もしくは両面に絡合する際、10〜250g/m
2が好ましく、より好ましくは20〜100g/m
2である。これは、目付けが10g/m
2未満では高圧水流処理の際に繊維の密度にムラを生じ、また250g/m
2を超えると緻密すぎて成形性に劣り、経済的にもコストアップとなるため、いずれも好ましくない。補強材として用いる強化支持層1の目付が5〜13g/m
2において、水流絡合後の複合不織布の強度を向上できる。補強材の影響を顕著に発揮できるウェブ層の目付は、20〜100g/m
2が好ましい。
【0038】
高圧水流の噴射により絡合処理したウェブ層と強化支持層とからなる積層体は、次いで乾燥工程へ給送され、乾燥工程においては、例えばオーブン48、熱風炉または熱シリンダ等により乾燥される。なお、乾燥前に予め吸引などによって脱水してもよく、また乾燥工程においてはウェブをシュリンクさせても良い。このようにして乾燥された不織布は、製品巻取工程において複合不織布49として巻取られ、製品となる。
【0039】
上記乾燥工程では、温度を調整することによって基材である強化支持層1の熱収縮を利用して、表面に凹凸構造を付与することが可能であり、嵩高い複合不織布とすることができる。嵩高い複合不織布は、ワイパーとして利用した場合には、対人用では肌ざわりがよく、対物用では塵等を容易に捕捉することができる利点がある。
【0040】
[検証]
本発明者等は、スパンレース法でウェブ層の繊維を水流絡合させる際に、噴射水流が跳ね返されることに着目し、強化積層体1の目付、一軸配向体の層構成比、長手方向及び幅方向のカンチレバー法による剛軟度の平均値等を変えたサンプルを用意して検討を行なった。また、ウェブ層をスパンレース法により絡合してウェブ層と強化支持層とを一体化したときの柔軟性やしなやかさ、肌触り等について検証した。この結果、次のような知見を得た。
【0041】
図7において、サンプル番号S8には、比較例1としてJX日鉱日石エネルギー株式会社製のワリフ(登録商標)と呼ばれる割繊維不織布の製品番号3S(T)、サンプル番号S9には、比較例2として同製品番号S(F)EL、サンプル番号S10には、比較例3として同製品番号HS(T)を用いている。
【0042】
サンプル番号S8〜S10は、何れも目付が18〜35g/m
2と比較的重く、高密度ポリエチレンの割合が高く(74〜78%)、層構成比が13/74/13〜11/78/11となっている。このため、強度(引張強度)や耐久性が高くコシがある。しかし、柔軟性やしなやかさがなく、カンチレバー法による剛軟度の平均値は63〜78mmと高くなっている。
【0043】
これに対し、サンプル番号S1〜S7は、目付が4〜13g/m
2と軽量であり、かつカンチレバー法による剛軟度の平均値が6〜55mmとなった。これらサンプル番号S1〜S7は、柔軟でしなやかであり、肌触りも良かった。しかし、目付が4g/m
2のサンプル番号S1の場合には、長手方向(MD)の引張強度がMD=18(N/50mm)、幅方向(CD)の引張強度がCD=15(N/50mm)であり、共に20N/50mm以下となってしまい、強化支持層としての実用強度に満たなかった。
【0044】
また、サンプル番号S4〜S6では、目付を一定(10g/m
2)にして層構成比を変化させているが、サンプル番号S4,S5は柔軟性やしなやかさ、肌触りの点で満足できるものではなかった。これは、サンプル番号S4,S5では、高密度ポリエチレンの割合が高く、カンチレバー法による剛軟度の平均値がそれぞれ55mm、52mmとなっており、コシがあるためと考えられる。
【0045】
図8は、上記
図7の目付と、剛軟度の平均値を抽出してプロットしたものである。
図8から分かるように、目付が10数g/m
2程度に変曲点があり、柔軟性、しなやかさ、肌触り等が変化していることが推定される。
【0046】
この
図8及び
図7の測定結果から、強化支持層として、柔軟性、しなやかさ、肌触りが良く、実用強度(引張強度)を得るために好ましい目付は、5〜13g/m
2の範囲内であることが分かった。また、好ましい結果が得られた層構成比は26/48/26であるが、他のサンプル番号のデータや、市販されている種々の商品の層構成比等を考慮すると、数%程度の変化では急激な変化はなく、好ましい層構成比は20/60/20〜30/40/30であると考えられる。更に、カンチレバー法による剛軟度の平均値が50mm以下になっている。これらの条件を全て満たすサンプル番号S2,S3,S6,S7が、強化支持層として、所期の目的を十分に達成できる強化支持層となる。
【0047】
加えて、上記サンプル番号S2,S3,S6,S7の厚さは80μmより薄く、開口率は50%より高くなっている。このような数値範囲にあると、しなやかさ(剛軟度)と強度を両立できるとともに、厚さを薄くすることで、よりしなやかさを向上できることを確認した。また、上述した製造工程において、強化支持層1の引張強度を20N/50mm以上にするには、多層フィルム11,21の延伸倍率を3倍以上にするのが望ましい。
【0048】
上述した条件を全て満たす強化支持層は、
図9及び
図10に実施例として示すように、柔らかいことで繊維が絡み易く、一定の目付にするのであれば、軽量であることで水流絡合させるウェブの量を増やすことができる。
【0049】
図9は、強化支持層1の目付を10g/m
2としたときの、開口率、基材引張強度及び基材剛軟度と、完成した強化支持層1の評価を示している。比較例1,2はそれぞれ、JX日鉱日石エネルギー株式会社製のワリフ(登録商標)のうち、製品番号HS(T)と製品番号3S(T)である。ここでは、ウェブとして綿を用い、強化支持層1、製品番号HS(T)及び製品番号3S(T)の両面にそれぞれ絡合させた。綿の量は全てのサンプルで30gとした。
【0050】
図9に示すように、HS(T)では芯材である強化支持層1の表面が噴射水流を弾いてしまい、綿の絡みが少なくムラがあり実用に耐えるものではない。3S(T)でも芯材である強化支持層1の表面が噴射水流をある程度弾くため、綿の絡みが十分ではなく、ムラも発生し、十分ではなかった。これに対し、実施例の場合には、綿がムラなく綺麗に絡んでいた。このように、綿の絡みは目付が軽いほど良くなり、絡みムラは実施例が最も少なかった。
【0051】
図10は、強化支持層1とウェブ層の目付の和を55g/m
2としたときの、開口率、基材引張強度及び基材剛軟度と、完成した強化支持層1の評価を示している。比較例1,2にはそれぞれ、
図9と同様に製品番号HS(T)と製品番号3S(T)を用いた。ここでも、ウェブとして綿を用い、強化支持層1、製品番号HS(T)及び製品番号3S(T)の両面にそれぞれ絡合させている。
【0052】
図10に示すように、HS(T)では綿の量が少なく、芯材である強化支持層1の表面が噴射水流を弾いてしまい、綿の絡みが少なくムラがあり実用に耐えるものではない。3S(T)では芯材である強化支持層1の表面が噴射水流をある程度弾くため、綿の絡みが十分ではなく、ムラも発生し十分なものではない。実施例では綿がムラなく綺麗に絡んでいる。このように、強化支持層1に対してウェブ層の目付が多いほど綿の絡みが良く、絡みムラは実施例が最も少なかった。
【0053】
なお、
図9及び
図10に示すように、3S(T)及び実施例は、サンプルS1に比べてMD繊維が細くなっており、繊維が細いことからも噴射水流を弾き難いことが推定される。よって、強化支持層1の繊維の幅は、必要な引張強度を確保できる太さで、0.92mmより細くすると良い。
【0054】
上述したように、強化支持層の目付が5〜13g/m
2、一軸配向体における第1の接着層、熱可塑性樹脂層及び第2の接着層の層構成比が20/60/20〜30/40/30であり、カンチレバー法による剛軟度の平均値を50mm以下にし、この強化支持層にスパンレース法により短繊維状のセルロース系繊維または合成繊維からなるウェブ層を絡合せて複合不織布とすることで、柔軟性やしなやかさ、肌触りを向上でき、従来は使用できなかった用途への拡大が図れる。
【0055】
<変形例1>
図11は、上述した強化支持層の変形例について説明するためのもので、他の製造方法を示している。この強化支持層は、
図2に示したスプリットウェブ2を2枚積層するものである。
図4に示したようにして製造した縦ウェブ(スプリットウェブ2−1)を、原反繰出しロール30から繰出し、所定の供給速度で走行させて拡幅工程31に送り、拡幅機(図示せず)により数倍に拡幅し、必要により熱処理を行う。
【0056】
別のスプリットウェブ2−2(横ウェブ)を、縦ウェブと同様に原反繰出しロール32から繰出し、所定の供給速度で走行させて拡幅工程33に送り、拡幅機(図示せず)により数倍に拡幅し、必要により熱処理した後、縦ウェブの幅に等しい長さに切断し、縦ウェブの走行フィルムに対し直角の方向から供給して、積層工程34において各接着層を介して各ウェブの配向軸が互いに直交するように経緯積層させる。経緯積層した縦ウェブ及び横ウェブを、熱圧着工程35において、外周面が鏡面である熱シリンダ35aと鏡面ロール35b,35cとの間に順次導いてニップ圧を加える。これにより、縦ウェブと横ウェブとが互いに熱圧着されて一体化される。また、隣接する縦ウェブと横ウェブとの接触部位同士が全面的に面接着する。このようにして一体化された縦ウェブ及び横ウェブは巻取工程にて巻き取られて、経緯積層不織布の巻取体36になる。
【0057】
上記のようにして製造した強化支持層においても、第1の実施形態と同じ目付(5〜13g/m
2)、層構成比(20/60/20〜30/40/30)、カンチレバー法による剛軟度の平均値(50mm以下)の条件を全て満たすことで、同様な効果が得られる。この場合にも、厚さは80μmより薄く、開口率は50%より高くすると良い。
【0058】
<変形例2>
上記一軸配向体がスプリットウェブ2とスリットウェブ3を経緯積層する場合について説明したが、一軸配向テープを平行に並べたものを2組積層して形成しても良い。この場合には、一方の組の一軸配向テープの配向軸と他方の組の一軸配向テープの配向軸とが互いに直交するように経緯積層する。一軸配向テープは、スプリットウェブ2及びスリットウェブ3と同様に、熱可塑性樹脂層の両面に、この熱可塑性樹脂より融点が低い第1、第2の接着層(熱可塑性樹脂)を積層した3層のフィルムを、縦又は横方向に一軸配向させ、裁断して多層の延伸テープとしたものを用いる。
【0059】
このように、一軸配向テープを平行に並べたものを2組積層する場合にも、第1の実施形態と同じ目付、層構成比、カンチレバー法による剛軟度の平均値の条件を全て満たすことで、同様な効果が得られる。厚さは80μmより薄く、開口率は50%より高くすると良いのはもちろんである。
【0060】
上記のような構成の複合不織布によれば、メディカルディスポーザブル製品等の人体に触れる製品では、柔軟性やしなやかさ、肌触りを向上できる。また、例えば制汗シート、化粧落とし、汗拭き等の対人用ワイパーに用いる場合にも同様な効果が得られる。更に、工場の油拭き、フローリングワイパー、キッチンタオル等の対物用ワイパーに用いる場合には、塵や油等の付着物の捕捉性や拭き取り性を更に向上できる。