(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被験体の基質石灰化障害を約2.0mg/kg/日〜約3.0mg/kg/日の用量で治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物が(a)構造Z-sALP-Y-Fc-Xを含むポリペプチドおよび(b)製薬上許容される賦形剤を含み;ここで、前記医薬組成物は前記被験体への皮下投与用に製剤化されており;前記sALPはアルカリホスファターゼの細胞外ドメインであり;X、Y、およびZはそれぞれ不在であるかまたは少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;そして前記ポリペプチドは3個の連続アスパラギン酸またはグルタミン酸残基より長いポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸領域を含まないものであり;前記ポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号4と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;さらにここで、「約」は記述した値の±10%を意味する、前記医薬組成物。
(a)前記ポリペプチドがPEG化されているか、(b)前記ポリペプチドがグリコシル化されているか、(c)前記医薬組成物が前記ポリペプチドの二量体を含むか、(d)前記製薬上許容される賦形剤が生理食塩水を含むか、あるいは(e)前記医薬組成物が凍結乾燥されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
前記基質石灰化障害が低ホスファターゼ血症(HPP)であり、前記基質石灰化障害が乳児HPP、小児HPP、出生時HPP、成人HPP、または歯性低ホスファターゼ症であってもよい、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明において、ポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸領域を欠くアルカリホスファターゼ-Fc融合タンパク質は、驚くべきことに、HPPマウスモデルにおけるHPPの治療に有効であることを見出した。従って、本発明は、sALP-FcまたはFc-sALPポリペプチドを含む組成物およびsALP-FcまたはFc-sALPポリペプチドをコードする核酸を含む組成物を提供する。本発明はまた、基質石灰化障害、例えばHPPおよびそれに関連する表現型を治療するためにかかるポリペプチドおよび核酸を用いる方法およびキットも提供する。
【0005】
従って、一態様において、本発明の特徴は、被験体に治療上有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む被験体の基質石灰化障害を治療する方法であって、前記医薬組成物は(a)構造Z-sALP-Y-Fc-Xまたは構造Z-Fc-Y-sALP-Xを含むポリペプチドおよび(b)製薬上許容される賦形剤を含み;ここで、sALPはアルカリホスファターゼの細胞外ドメインであり;X、Y、およびZはそれぞれ不在であるかまたは少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;そして前記ポリペプチドは3個の連続アスパラギン酸またはグルタミン酸残基より長いポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸領域を含まないものである前記方法である。
【0006】
他の態様において、本発明の特徴は、(a)構造Z-sALP-Y-Fc-Xまたは構造Z-Fc-Y-sALP-Xを含むポリペプチドおよび(b)製薬上許容される賦形剤を含み;ここで、sALPはアルカリホスファターゼの細胞外ドメインであり;X、Y、およびZはそれぞれ不在であるかまたは少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;そして前記ポリペプチドは3個の連続アスパラギン酸またはグルタミン酸より長いポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸領域を含まないものである医薬組成物である。
【0007】
さらに他の一態様において、本発明の特徴は、被験体に治療上有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む被験体の基質石灰化障害を治療する方法であって、前記医薬組成物は(a)構造Z-sALP-Y-Fc-Xまたは構造Z-Fc-Y-sALP-Xを含むポリペプチドをコードする単離された核酸および(b)製薬上許容される賦形剤を含み;ここで、sALPはアルカリホスファターゼの細胞外ドメインであり;X、Y、およびZはそれぞれ不在であるかまたは少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;そして前記単離された核酸は3個の連続アスパラギン酸またはグルタミン酸より長いポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸領域を含むアミノ酸配列をコードしないものである前記方法である。
【0008】
他の態様において、本発明の特徴は被験体の基質石灰化障害を治療するための製剤化した医薬組成物であって、(a)構造Z-sALP-Y-Fc-Xまたは構造Z-Fc-Y-sALP-Xを含むポリペプチドをコードする単離された核酸および(b)製薬上許容される賦形剤を含み;ここで、sALPはアルカリホスファターゼの細胞外ドメインであり;X、Y、およびZはそれぞれ不在であるかまたは少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;そして前記単離された核酸は3個の連続アスパラギン酸またはグルタミン酸より長いポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸領域を含むアミノ酸配列をコードしない医薬組成物である。
【0009】
本発明のいずれかの実施形態において、ポリペプチドは任意に構造Z-sALP-Y-Fc-Xを含んでもよい。
【0010】
いずれかの実施形態において、ポリペプチドは任意に2個の連続アスパラギン酸またはグルタミン酸残基より長いポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸領域を含まない。
【0011】
いずれかの実施形態において、ポリペプチドは任意に骨標的化部分を含まない。
【0012】
いずれかの実施形態において、sALPのアミノ酸配列は任意に、配列番号15のアミノ酸残基23〜508を含むかまたはから成る。例えば、sALPのアミノ酸配列は任意に配列番号15のアミノ酸残基23〜512を含むかまたはから成る。
【0013】
いずれかの実施形態において、sALPのアミノ酸配列は任意に配列番号16のアミノ酸残基18-498を含むかまたはから成る。例えば、sALPのアミノ酸配列は任意に配列番号16のアミノ酸残基18-502を含むかまたはから成る。
【0014】
いずれかの実施形態において、sALPのアミノ酸配列は任意に配列番号5と少なくとも85%(例えば、少なくとも95%または99%)配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、sALPのアミノ酸配列は配列番号5を含むかまたは配列番号5から成る。
【0015】
いずれかの実施形態において、Fcは任意にC
H2ドメイン、C
H3ドメインおよびヒンジ領域を含みうる。例えば、 Fcは任意に、IgG-1、IgG-2、IgG-3、IgG-3およびIgG-4からなる群より選択される免疫グロブリンの定常ドメインである。特別な実施形態において、免疫グロブリンはIgG-1である。他の特別な実施形態において、Fcは配列番号3と少なくとも85%(例えば、少なくとも95%または99%)配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、Fcのアミノ酸配列は任意に配列番号3を含むかまたは配列番号3から成る。
【0016】
いずれかの実施形態において、Zは任意に不在である。
【0017】
いずれかの実施形態において、Yは任意に2つのアミノ酸残基(例えば、ロイシン-リシン)である。
【0018】
いずれかの実施形態において、Xは任意に不在である。
【0019】
いずれかの実施形態において、ZとXは両方共に不在であってもよく、そしてYは不在であるかまたは少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であってもよい。例えば、ポリペプチドは構造sALP-Y-Fcまたは構造Fc-Y-sALPから成ってもよい。構造sALP-Y-FcまたはFc-Y-sALPから成るポリペプチドのいくつかの実施形態において、Yは2つのアミノ酸残基、例えば、ロイシン-リシンから成ってもよい。例えば、ポリペプチドは構造sALP-Y-Fcから成ってもよい。任意に、sALPのアミノ酸配列は配列番号5のアミノ酸配列であり、Yのアミノ酸配列はロイシン-リシンであり、および/またはFcのアミノ酸配列は配列番号3のアミノ酸配列である。例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号4のアミノ酸配列から成ってもよい。
【0020】
いずれかの実施形態において、ポリペプチドのアミノ酸配列は任意に配列番号4と少なくとも85%(例えば、少なくとも95%または99%)配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列は任意に配列番号4を含むかまたは配列番号4から成ってもよい。
【0021】
いずれかの実施形態において、ポリペプチドは任意にPEG化またはグリコシル化されている。
【0022】
いずれかの実施形態において、医薬組成物は任意にポリペプチドの二量体を含む。
【0023】
いずれかの実施形態において、製薬上許容される賦形剤は任意に生理食塩水を含む。
【0024】
いずれかの実施形態において、医薬組成物は任意に凍結乾燥されている。
【0025】
本発明の方法のいずれかにおいて、医薬組成物は任意に皮下、静脈内、経口、経鼻、筋肉内、舌下、くも膜下腔内、または皮内に投与される。ある特定の実施形態において、医薬組成物は皮下に投与される。例えば、本発明の方法は任意に、本発明のポリペプチドを含む医薬組成物を、約0.5mg/kg/日〜約10mg/kg/日(例えば、約2mg/kg/日〜約3mg/kg/日)の用量で被験体に投与するステップを含みうる。他の例において、前記方法は医薬組成物を被験体に毎週1〜7回(例えば、毎週3回)投与するステップを含む。
【0026】
本発明の方法のいずれかにおいて、基質石灰化障害は任意に低ホスファターゼ血症(例えば、乳児HPP、小児HPP、出生時HPP、成人HPP、または歯性低ホスファターゼ症)である。
【0027】
本発明の方法のいずれかにおいて、医薬組成物は、HPPに関係する発作、乳歯の早期喪失、不完全な骨石灰化、無機ピロリン酸(PP
i)の血液および/または尿レベルの上昇、ホスホエタノールアミン(PEA)の血液および/または尿レベルの上昇、ピリドキサール5'-リン酸(PLP)の血液および/または尿レベルの上昇、不十分な体重取得、くる病、骨疼痛、ピロリン酸カルシウム二水和物結晶沈着、形成不全、発育不全、および歯セメント質の異形成からなる群より選択されるHPP表現型を治療するために治療上有効な量が任意に投与される。いくつかの実施形態において、不完全な骨石灰化は不完全な大腿骨石灰化、不完全な脛骨石灰化、不完全な中肢骨石灰化、または不完全な肋骨石灰化である。
【0028】
いずれかの実施形態において、被験体はヒトであってもよい。
【0029】
本発明の医薬組成物のいずれかを任意に被験体の基質石灰化障害を治療するために処方することができる。
【0030】
単離された核酸の投与を特徴とする本発明の方法のいずれかにおいて、単離された核酸を任意にレンチウイルスベクターに入れて被験体に投与する。いくつかの実施形態において、単離された核酸を任意に被験体に約0.1mg〜約10mの用量で投与する。
【0031】
単離された核酸の投与を特徴とする本発明の医薬組成物のいずれかは、任意に単離された核酸を含む組換え発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)を含んでもよい。
【0032】
本発明はまた、かかるベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトした単離された組換え宿主細胞を特徴とする。
【0033】
本発明はまた、本発明のいずれかのポリペプチドを産生する方法であって、かかる宿主細胞をポリペプチドの発現に影響を与えるのに好適な条件下で培地において培養するステップおよびそのポリペプチドを培地から回収するステップを含む前記方法を特徴とする。例えば、宿主細胞は任意にL細胞、C127細胞、3T3細胞、CHO細胞、BHK細胞、またはCOS-7細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞はCHO細胞(例えば、CHO-DG44細胞)である。
【0034】
例えば、本発明は(a)本発明の医薬組成物のいずれか、および(b)基質石灰化障害を治療するために医薬組成物を投与する取扱説明書を含むキットを特徴とする。
【0035】
「約」は記述した値の±10%を意味する。
【0036】
「骨標的化部分」は、骨基質と十分なアフィニティを有する長さ6〜20アミノ酸残基のアミノ酸配列であって、その骨標的化部分が骨基質と少なくとも10
-6 M以上(例えば、10
-7 M、10
-8 M、10
-9 Mまたはそれ以上)のin vivo結合アフィニティを有する前記アミノ酸配列を意味する。
【0037】
「Fc」は、免疫グロブリンの結晶可能領域フラグメント、例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3、IgG-3またはIgG-4を意味し、それには免疫グロブリン重鎖のC
H2およびC
H3ドメインが含まれる。Fcはまた、FabとFc領域を接続するヒンジ領域のいずれかの部分を含みうる。Fcはヒトを含むいずれかの哺乳動物のものであってもよく、翻訳後に(例えば、グリコシル化により)改変することができる。限定されるものでない例において、Fcは配列番号3のアミノ酸配列を有するヒトIgG-1の結晶可能領域フラグメントであってもよい。
【0038】
「基質石灰化障害」は骨基質の石灰化に影響を与える障害または前記障害に関連するいずれかの表現型を意味する。基質石灰化障害およびその関連する表現型には、例えば、くる病(成長軟骨板の欠陥)、骨軟化症、骨形成不全症、重症の骨粗鬆症、および低ホスファターゼ血症(HPP)(例えば、乳児HPP、小児HPP、出生時HPP、成人HPP、または歯性低ホスファターゼ症)、HPPに関係する発作、乳歯の早期喪失、不完全な骨石灰化、無機ピロリン酸(PP
i)の血液および/または尿レベルの上昇、ホスホエタノールアミン(PEA)の血液および/または尿レベルの上昇、ピリドキサール5'-リン酸(PLP)の血液および/または尿レベルの上昇、不十分な体重取得、くる病、骨疼痛、ピロリン酸カルシウム二水和物(CPPD)結晶沈着、形成不全、発育不全、および歯セメント質の異形成が含まれる。基質石灰化障害は、例えば長骨長(大腿骨、脛骨、上腕骨、橈骨、尺骨など)の減少、全骨の平均密度の減少および骨、例えば大腿骨、脛骨、肋骨と中肢骨、および指骨の骨石灰化の減少、歯石灰化の減少、乳歯の早期喪失(例えば、歯セメント質の形成不全、発育不全または異形成)を伴う発育遅延により診断することができる。限定されるものでないが、基質石灰化障害の治療は、長骨長の増加、骨および/または歯の石灰化の増加、脚の湾曲の改善、骨痛の減少ならびに関節中のCPPD結晶沈着症の減少の1以上により観察することができる。
【0039】
「医薬組成物」は本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸を含有し、製薬上許容される賦形剤を用いて製剤化され、そして哺乳動物の疾患を治療する治療レジメンの部分として政府規制当局の認可を得て製造または販売される組成物を意味する。医薬組成物は、例えば、単位投与剤形(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ジェルキャップ、または シロップ)の経口投与用に;局所投与用に(例えば、クリーム、ゲル、ローション、または軟膏として);静脈内投与用に(例えば、微粒子塞栓を含まない滅菌溶液としておよび静脈内使用に好適な溶媒系中で);皮下投与用に;または本明細書に記載のいずれか他の製剤で製剤化することができる。
【0040】
「製薬上許容される賦形剤」は、治療する被験体に生理学的に受け入れられる一方、それと共に投与される化合物の治療特性を保持する担体を意味する。製薬上許容される賦形剤の一例は生理食塩水である。他の生理学的に許容しうる賦形剤およびそれらの製剤は当業者に公知であり、例えば、“Remington: The Science and Practice of Pharmacy”(20th ed., ed. A.R. Gennaro, 2000, Lippincott Williams & Wilkins)に記載されている。
【0041】
「ポリペプチド」は長さが少なくとも2個のアミノ酸であるアミノ酸の天然または合成鎖を意味し、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)を有するものを含む。
【0042】
本明細書での使用において、ポリペプチドまたは核酸配列が参照配列と「少なくともX%配列同一性」を有するという場合、最適にアラインメントされるとその配列はポリペプチドまたは核酸中のアミノ酸またはヌクレオチド配列の少なくともX%が参照配列のそれらと同一であることを意味する。最適な配列のアラインメントは当業者に公知である様々なやり方で決定することができ、例えば、Smith Watermanアラインメントアルゴリズム(Smith et al., J. Mol. Biol. 147:195-7, 1981)およびBLAST(Basic Local Alignment Search Tool; Altschul et al. J. Mol. Biol. 215: 403-10, 1990)を参照されたい。これらおよび他のアラインメントアルゴリズムは公的に利用可能なコンピューターソフトウエア、例えば、GeneMatcher Plus(登録商標)(Schwarz and Dayhof, Atlas of Protein Sequence and Structure, Dayhoff, M.O., Ed pp 353-358, 1979)、BLAST、BLAST-2、BLAST-P、BLAST-N、BLAST-X、WU-BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、CLUSTAL、またはMegalign(DNASTAR)に組込まれた「Best Fit」(Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics, 482-489, 1981)を用いて入手可能である。さらに、当業者は比較する配列長全体にわたる最適なアラインメントを達成するのに必要ないずれかのアルゴリズムならびにアラインメントを測定するための適当なパラメーターを決定することができる。一般に、比較配列の長さは少なくとも5アミノ酸、好ましくは10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、250、300、400、500、600、700、またはそれ以上のポリペプチド全長までのアミノ酸である。核酸については、比較配列の長さは一般に少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、またはそれ以上の核酸分子全長までのヌクレオチドである。配列同一性を決定する目的でDNA配列をRNA配列と比較する場合、チミンヌクレオチドはウラシルヌクレオチドと同等であると解釈される。
【0043】
用語「sALP」、「可溶アルカリホスファターゼ」および「アルカリホスファターゼの細胞外ドメイン」は互換的に用いられ、可溶性の、膜結合してないアルカリホスファターゼまたはそのドメイン、生物学的活性断片、もしくは生物学的活性変異体を意味する。sALPは、例えば、C末端GPIシグナル配列を欠くアルカリホスファターゼ、例えば、ヒトTNALP(配列番号6)のアミノ酸18〜502を含むかまたはから成るポリペプチドを含む。sALPはさらに、例えば、ヒトTNALPの哺乳動物オーソログの可溶性の、非膜結合型(例えば、配列番号7のアミノ酸16〜502または18〜502、配列番号8のアミノ酸18〜502、配列番号9のアミノ酸18〜502、配列番号10のアミノ酸18〜502、または配列番号11のアミノ酸1〜480を含むかまたはから成るポリペプチド)、ヒトIALP、GCALP、およびPLALPの可溶性の非膜結合型(例えば、配列番号12のアミノ酸20〜503、配列番号13のアミノ酸20〜503、配列番号14のアミノ酸23〜506を含むかまたはから成るポリペプチド)、およびアルカリホスファターゼ活性、例えば、PP
iを加水分解する能力を保持するそれらのさらなる変異体および類似体を含む。
【0044】
「被験体」はいずれかの哺乳動物、例えば、ヒトを意味する。
【0045】
「治療上有効な量」は基質石灰化障害のいずれかの症候を実質的に治療、予防、遅延、抑制または停止するのに十分である本発明の核酸またはポリペプチドの量を意味する。本発明の化合物の治療上有効な量は基質石灰化障害の重症度および被験体の状態、体重および一般的状態に依存しうるのであって、当業者はかかる因子を考慮して決定することができる。本発明の化合物の治療上有効な量を哺乳動物に単一用量でまたはある期間にわたり投与する複数回用量で投与することができる。
【0046】
「処置」は、医薬組成物の予防および/または治療目的のための投与を意味する。「疾患の予防」は、まだ病気ではないが、ある特定の疾患に対して感受性があるか、そうではないが、リスクのある被験体の予防処置を意味する。「疾患の処置」または「治療処置」は既に疾患を患う被験体に治療を施して被験体の状態を改善または安定化することを意味する。従って、請求項および実施形態において、処置は治療または予防目的のための被験体への投与である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
Fcと融合した可溶アルカリホスファターゼ(sALP)、これらをコードする核酸、および基質石灰化障害、例えば低ホスファターゼ血症を治療するためのこれらの使用を特徴とする。本発明のさらなる詳細を以下に提供する。
【0049】
アルカリホスファターゼ
アルカリホスファターゼは様々な脈絡(例えば、ピロリン酸、PP
iの加水分解)のもとでリン酸を切断することができる特性を共有する酵素群を包含する。4種類の公知の哺乳動物のアルカリホスファターゼ(ALP)アイソザイム、すなわち、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNALPと以下記載する)、胎盤アルカリホスファターゼ(PLALP)(例えば、受託番号P05187、NP_112603、およびNP_001623)、生殖細胞アルカリホスファターゼ(GCALP)(例えば、受託番号P10696)、および腸アルカリホスファターゼ(IALP)(例えば、受託番号P09923およびNP_001622)が存在する。これらのアイソザイムは非常に類似した3次元構造を有する。これらの触媒部位はそれぞれ酵素活性に必要な金属イオン(2つの亜鉛イオンと1つのマグネシウムイオンを含む)と結合する4種類の金属結合ドメインを含有する。これらの酵素は、リン酸のモノエステルの加水分解を触媒し、また高濃度のリン酸受容体の存在のもとでリン酸転移反応を触媒する。PALPは、ホスホエタノールアミン(PEA)、無機ピロリン酸(PPi)およびピロドキサール5’−リン酸(PLP)に対して生理活性があり、3つの化合物は全てTNALPに対する既知の天然基質であることが示されている(Whyte, 1995)。これらのアイソザイム間のアラインメントを
図4(a)〜4(d)に示す。さらなるアルカリホスファターゼは、例えば、本明細書に参照により組み込まれるWO 2008/138131および米国特許公開2006/0014687に記載されている。
【0050】
組織非特異的ホスファターゼは、単一遺伝子によりコードされ、翻訳後修飾によりお互いに異なるタンパク質のファミリーである。TNAlPは主に肝臓、腎、および骨に存在するが、体内全体に存在しうる。哺乳動物中の公知のTNAlPは、本明細書に提供した他の例に加えて、例えば、ヒトTNALP(受託番号NP-000469、AAI10910、AAH90861、AAH66116、AAH21289、およびAAI26166); アカゲザルTNALP(受託番号XP-001109717);ラットTNALP(受託番号NP_037191);イヌTNALP(受託番号AAF64516);ブタTNALP(受託番号AAN64273)、マウス(受託番号NP_031457)、ウシTNALP(受託番号NP_789828、NP_776412、AAM8209、AAC33858)、およびネコTNALP(受託番号NP_001036028)を含む。
【0051】
可溶アルカリホスファターゼ
本発明の可溶アルカリホスファターゼ(sALP)は、例えば、本明細書に記載のアルカリホスファターゼのいずれかの可溶(例えば、細胞外または非膜結合)型を含む。本発明の可溶アルカリホスファターゼは例えば、ヒトTNALPの可溶型であってもよい。ヒトTNALP(hTNALP)のドメインの模式図を
図1に示す。TNALPは、そのC末端に結合される糖脂質を介してアンカリングされる膜結合タンパク質である(Swiss-Prot、P05186)。この糖脂質(GPI)アンカーは、翻訳後に疎水性C末端(一時的膜アンカーとしておよびGPIの付加に対するシグナルとして機能する)が除去された後に付加される。このGPIアンカーは細胞膜中に埋められ、タンパク質の残りの部分は細胞外にある。TNALPは、hTNALPを含めて、遺伝子操作によって疎水性C末端配列の最初のアミノ酸(アラニン)を停止コドンによって置換えることができる。このように遺伝子操作されたhTNALPは生来のアンカリングされるTNALPの型の全アミノ酸を含有するが、GPI膜アンカーを欠く。可溶であるhTNALPを本明細書では「hsTNALP」と呼ぶ。当業者は、GPI膜アンカーの位置が色々なアルカリホスファターゼにおいて変わりうることおよび、例えば、ポリペプチドのC末端の最後の10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、45、50、またはそれ以上のアミノ酸残基を含みうることを理解するであろう。例えば、配列番号6のhTNALPのGPI膜アンカーはアミノ酸503〜524である。Fcと融合したこのhsTNALP(2位に1つの変化がある)のアミノ酸配列を
図2に示す。このhsTNALP-Fc融合ポリペプチドをコードする核酸の配列を
図6に示す。
【0052】
C末端GPIアンカーに加えて、TNALPはまたN末端シグナルペプチド配列を有する。N末端シグナルペプチドは、最初、合成されるときにはタンパク質上に存在するが、ERへの移行後に切断される。従って、N末端シグナルペプチドはTNALPの分泌型には不在である。本発明のsALPは、分泌型(すなわち、N末端シグナルを欠くもの)および非分泌型(すなわち、N末端シグナルを有するもの)の両方を含む。当業者は、N末端シグナルペプチドの位置が色々なアルカリホスファターゼにおいて変わりうることおよび、例えば、ポリペプチドのN末端上の最初の5、8、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、27、30、またはそれ以上のアミノ酸残基を含みうることを理解するであろう。例えば、配列番号6のhTNALPのN末端シグナルペプチドは最初の17アミノ酸である。従って、分泌されるこのhTNALPの可溶型は配列番号6のアミノ酸18〜502(配列番号5)である。この分泌されるhsTNALPのアミノ酸配列を、Fcと融合したものとして
図3に示す。本発明のsALPは分泌型と非分泌型の両方を含む。当業者はシグナル配列切断部位の位置を適当なコンピューターアルゴリズムにより予測することができるのであり、前記アルゴリズムは、例えば、Bendtsen et al. (J. Mol. Biol. 340(4):783-795, 2004)に記載され、かつインターネットでhttp://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/にて利用可能である。
【0053】
本発明のsALPはまた、例えば、ヒトALPアイソザイムおよび哺乳動物TNALPオーソログ(ヒト、マウス、ラット、ウシ、ネコ、およびイヌ)ALP細胞外ドメイン由来のコンセンサス配列(配列番号15)、またはただヒトALPアイソザイムのALP細胞外ドメイン由来のコンセンサス配列(配列番号16)を満たすポリペプチド配列を含む。本発明のsALPはまた、これらのTNALPオーソログまたはヒトALPアイソザイムの様々な組み合わせ由来の類似したコンセンサス配列を満たすものも含む。かかるコンセンサス配列は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO 2008/138131に記載されている。
【0054】
さらに、元来のアミノ酸1〜501(分泌時18〜501)(Oda et al, J. Biochem 126: 694-699、1999)、アミノ酸1〜502(分泌時18〜502)(WO 2008/138131)、アミノ酸1〜504(分泌時18〜504)(参照により本明細書に組み込まれるUS 6,905,689)およびアミノ酸1〜505(分泌時18-505)(参照により本明細書に組み込まれるUS 2007/0081984)を保持する組換えhsTNALPは酵素活性があることが示されている。これは、ある特定のアミノ酸残基を、その酵素活性に影響することなく、可溶型hsTNALPポリペプチドのC末端から切詰めうることを示す。これはまた、GPI膜アンカー(存在する場合)のある特定のアミノ酸残基はポリペプチドの溶解度に有意に影響を与えないことを示す。従って、本発明のsALPはまた、例えば、5個以下(例えば1、2、3、4、または5個)のアミノ酸残基がそのC末端で切詰められているもの、および、例えば、GPI膜アンカーの5個以下(例えば1、2、3、4、または5個)のアミノ酸残基が存在するものを含む。例えば、本発明の非分泌型sALPは、配列番号6のアミノ酸残基1〜497、1〜498、1〜499、1〜500、1〜501、1〜502、1〜503、1〜504、1〜505、1〜506または1〜507を含有するものならびに2位のアミノ酸がバリンであるそれらの変異体を含み、そして本発明の分泌型sALPは、配列番号6のアミノ酸残基18〜497、18〜498、18〜499、18〜500、18〜501、18〜502、18〜503、18〜504、18〜505、18〜506または18〜507を含有するものを含む。
【0055】
当業者は酵素のアミノ酸配列中の多くの突然変異は酵素の触媒機能を有意に破壊しないであろうことを理解しうる。いくつかの事例において、ある特定の突然変異は、基質石灰化障害の治療法の脈絡において酵素の触媒機能を強化することすらできる。それ故に、本発明のsALPは、上記のアルカリホスファターゼの野生型配列だけを含むでなく、これらのアルカリホスファターゼと少なくとも50%(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)配列同一性を有するいずれかのポリペプチドも含む。しかし、TNALPにおける特定の突然変異がHPPを引き起すことは公知である。かかる病原性突然変異は本発明のsALPに存在しないことが好ましい。かかる突然変異の例を以下に掲げる。
【0056】
特に、本発明のsALPは、配列番号15のコンセンサス配列の番号付けを用いると、22位のアミノ酸はフェニルアラニン残基ではなく;33位(シグナルペプチドのない配列では11位)のアミノ酸はシステイン残基ではなく;38位(シグナルペプチドのない配列では16位)のアミノ酸はバリン残基ではなく;42位(シグナルペプチドのない配列では20位)のアミノ酸はプロリン残基ではなく;45位(シグナルペプチドのない配列では23位)のアミノ酸はバリン残基ではなく;56位(シグナルペプチドのない配列では34位)のアミノ酸残基はセリンまたはバリン残基ではなく;67位(シグナルペプチドのない配列では45位)のアミノ酸残基はロイシン、イソロイシンまたはバリン残基ではなく;68位(シグナルペプチドのない配列では46位)のアミノ酸残基はバリン残基ではなく;73位(シグナルペプチドのない配列では51位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;76位(シグナルペプチドのない配列では54位)のアミノ酸残基はシステイン、セリン、プロリンまたはヒスチジン残基ではなく;77位(シグナルペプチドのない配列では55位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;80位(シグナルペプチドのない配列では58位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;81位(シグナルペプチドのない配列では59位)のアミノ酸残基はアスパラギン残基ではなく;105位(シグナルペプチドのない配列では83位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;113位(シグナルペプチドのない配列では89位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;116位(シグナルペプチドのない配列では94位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;117位(シグナルペプチドのない配列では95位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;119位(シグナルペプチドのない配列では97位)のアミノ酸残基はグリシン残基ではなく;121位(シグナルペプチドのない配列では99位)のアミノ酸残基はセリンまたはスレオニン残基ではなく;125位(シグナルペプチドのない配列では103位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではなく;128位(シグナルペプチドのない配列では106位)のアミノ酸残基はアスパラギン酸残基ではなく;133位(シグナルペプチドのない配列では111位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;134位(シグナルペプチドのない配列では112位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではなく;137位(シグナルペプチドのない配列では115位)のアミノ酸残基はスレオニンまたはバリン残基ではなく;139位(シグナルペプチドのない配列では117位)のアミノ酸残基はヒスチジンまたはアスパラギン残基ではなく;141位(シグナルペプチドのない配列では119位)のアミノ酸残基はヒスチジン残基ではなく;153位(シグナルペプチドのない配列では131位)のアミノ酸残基はアラニンまたはイソロイシン残基ではなく;167位(シグナルペプチドのない配列では145位)のアミノ酸残基はセリンまたはバリン残基ではなく;172位(シグナルペプチドのない配列では150位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;175位(シグナルペプチドのない配列では153位)のアミノ酸残基はアスパラギン酸残基ではなく;176位(シグナルペプチドのない配列では154位)のアミノ酸残基はチロシンまたはアルギニン残基ではなく;181位(シグナルペプチドのない配列では159位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;182位(シグナルペプチドのない配列では160位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;184位(シグナルペプチドのない配列では162位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;186位(シグナルペプチドのない配列では164位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;189位(シグナルペプチドのない配列では167位)のアミノ酸残基はトリプトファン残基ではなく;194位(シグナルペプチドのない配列では172位)のアミノ酸残基はグルタミン酸残基ではなく;196位(シグナルペプチドのない配列では174位)のアミノ酸残基はリシンまたはグリシン残基ではなく;197位(シグナルペプチドのない配列では175位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;198位(シグナルペプチドのない配列では176位)のアミノ酸残基はアラニン残基ではなく;206位(シグナルペプチドのない配列では184位)のアミノ酸残基はチロシン残基ではなく;208位(シグナルペプチドのない配列では186位)のアミノ酸残基はグルタミン酸残基ではなく;207位(シグナルペプチドのない配列では190位)のアミノ酸残基はプロリン残基ではなく;216位(シグナルペプチドのない配列では194位)のアミノ酸残基はアスパラギン酸残基ではなく;217位(シグナルペプチドのない配列では195位)のアミノ酸残基はフェニルアラニン残基ではなく;223位(シグナルペプチドのない配列では201位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;225位(シグナルペプチドのない配列では203位)のアミノ酸残基はバリンまたはアラニン残基ではなく;226位(シグナルペプチドのない配列では204位)のアミノ酸残基はバリン残基ではなく;228位(シグナルペプチドのない配列では206位)のアミノ酸残基はトリプトファンまたはグルタミン残基ではなく;229位(シグナルペプチドのない配列では207位)のアミノ酸残基はグルタミン酸残基ではなく;231位(シグナルペプチドのない配列では209位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;240位(シグナルペプチドのない配列では218位)のアミノ酸残基はグリシン残基ではなく;251位(シグナルペプチドのない配列では229位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;254位(シグナルペプチドのない配列では232位)のアミノ酸残基はバリン残基ではなく;269位(シグナルペプチドのない配列では247位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではなく;277位(シグナルペプチドのない配列では255位)のアミノ酸残基はシステイン、ロイシンまたはヒスチジン残基ではなく;280位(シグナルペプチドのない配列では258位)のアミノ酸残基はプロリン残基ではなく;295位(シグナルペプチドのない配列では273位)のアミノ酸残基はフェニルアラニン残基ではなく;297位(シグナルペプチドのない配列では275位)のアミノ酸残基はリシン残基ではなく;298位(シグナルペプチドのない配列では276位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;300位(シグナルペプチドのない配列では278位)のアミノ酸残基はチロシンまたはアラニン残基ではなく;301位(シグナルペプチドのない配列では279位)のアミノ酸残基はバリン、スレオニンまたはイソロイシン残基ではなく;303位(シグナルペプチドのない配列では281位)のアミノ酸残基はアスパラギン酸残基ではなく;304位(シグナルペプチドのない配列では282位)のアミノ酸残基はリシン残基ではなく;305位(シグナルペプチドのない配列では283位)のアミノ酸残基はプロリン残基ではなく;312位(シグナルペプチドのない配列では290位)のアミノ酸残基はバリン残基ではなく;313位(シグナルペプチドのない配列では291位)のアミノ酸残基はセリンまたはロイシン残基ではなく;317位(シグナルペプチドのない配列では295位)のアミノ酸残基はリシン残基ではなく;332位(シグナルペプチドのない配列では310位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではなく;333位(シグナルペプチドのない配列では311位)のアミノ酸残基はシステイン、グリシンまたはロイシン残基ではなく;334位(シグナルペプチドのない配列では312位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;340位(シグナルペプチドのない配列では318位)のアミノ酸残基はアスパラギン酸残基ではなく;345位(シグナルペプチドのない配列では323位)のアミノ酸残基はアルギニンまたはグルタミン酸残基ではなく;354位(シグナルペプチドのない配列では332位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;360位(シグナルペプチドのない配列では338位)のアミノ酸残基はアスパラギン酸残基ではなく;361位(シグナルペプチドのない配列では339位)のアミノ酸残基はスレオニンまたはイソロイシン残基ではなく;377位(シグナルペプチドのない配列では355位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;380位(シグナルペプチドのない配列では358位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;383位(シグナルペプチドのない配列では361位)のアミノ酸残基はバリン残基ではなく;384位(シグナルペプチドのない配列では362位)のアミノ酸残基はバリン残基ではなく;387位(シグナルペプチドのない配列では365位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではなく;388位(シグナルペプチドのない配列では366位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;395位(シグナルペプチドのない配列では373位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;397位(シグナルペプチドのない配列では375位)のアミノ酸残基はシステインまたはヒスチジン残基ではなく;398位(シグナルペプチドのない配列では376位)のアミノ酸残基はアラニン残基ではなく;401位(シグナルペプチドのない配列では379位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;405位(シグナルペプチドのない配列では383位)のアミノ酸残基はセリンまたはバリン残基ではなく;406位(シグナルペプチドのない配列では384位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;412位(シグナルペプチドのない配列では390位)のアミノ酸残基はグリシン残基ではなく;416位(シグナルペプチドのない配列では394位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;417位(シグナルペプチドのない配列では395位)のアミノ酸残基はアラニン残基ではなく;420位(シグナルペプチドのない配列では398位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;423位(シグナルペプチドのない配列では401位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;426位(シグナルペプチドのない配列では404位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;429位(シグナルペプチドのない配列では407位)のアミノ酸残基はアラニン残基ではなく;430位(シグナルペプチドのない配列では408位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;432位(シグナルペプチドのない配列では410位)のアミノ酸残基はシステインまたはアスパラギン酸残基ではなく;434位(シグナルペプチドのない配列では412位)のアミノ酸残基はプロリン残基ではなく;435位(シグナルペプチドのない配列では413位)のアミノ酸残基はリシン残基ではなく;442位(シグナルペプチドのない配列では420位)のアミノ酸残基はヒスチジン残基ではなく;451位(シグナルペプチドのない配列では429位)のアミノ酸残基はプロリン残基ではなく;456位(シグナルペプチドのない配列では434位)のアミノ酸残基はヒスチジンまたはシステイン残基ではなく;458位(シグナルペプチドのない配列では436位)のアミノ酸残基はリシン残基ではなく;460位(シグナルペプチドのない配列では438位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではなく;461位(シグナルペプチドのない配列では439位)のアミノ酸残基はセリンまたはアスパラギン酸残基ではなく;462位(シグナルペプチドのない配列では440位)のアミノ酸残基はトリプトファンまたはアルギニン残基ではなく;465位(シグナルペプチドのない配列では443位)のアミノ酸残基はメチオニンまたはロイシン残基ではなく;472位(シグナルペプチドのない配列では450位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;473位(シグナルペプチドのない配列では451位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;474位(シグナルペプチドのない配列では452位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;479位(シグナルペプチドのない配列では457位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;482位(シグナルペプチドのない配列では460位)のアミノ酸残基はリシンまたはグリシン残基ではなく;484位(シグナルペプチドのない配列では462位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;495位(シグナルペプチドのない配列では473位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;496位(シグナルペプチドのない配列では474位)のアミノ酸残基はフェニルアラニン残基ではなく;および497位(シグナルペプチドのない配列では475位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではない。
【0057】
またさらに具体的に、sTNALPを本発明の骨標的化sALPにおいて使用する場合、ヒトTNALP配列の番号付けを用いて、17位のアミノ酸はフェニルアラニン残基ではなく;28位(シグナルペプチドのない配列では11位)のアミノ酸はシステイン残基ではなく;33位(シグナルペプチドのない配列では16位)のアミノ酸はバリン残基ではなく;37位(シグナルペプチドのない配列では20位)のアミノ酸はプロリン残基ではなく;40位(シグナルペプチドのない配列では23位)のアミノ酸はバリン残基ではなく;51位(シグナルペプチドのない配列では34位)のアミノ酸残基はセリンまたはバリン残基ではなく;62位(シグナルペプチドのない配列では45位)のアミノ酸残基はロイシン、イソロイシンまたはバリン残基ではなく;63位(シグナルペプチドのない配列では46位)のアミノ酸残基はバリン残基ではなく;68位(シグナルペプチドのない配列では51位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;71位(シグナルペプチドのない配列では54位)のアミノ酸残基はシステイン、セリン、プロリンまたはヒスチジン残基ではなく;72位(シグナルペプチドのない配列では55位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;75位(シグナルペプチドのない配列では58位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;76位(シグナルペプチドのない配列では59位)のアミノ酸残基はアスパラギン残基ではなく;100位(シグナルペプチドのない配列では83位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;108位(シグナルペプチドのない配列では89位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;111位(シグナルペプチドのない配列では94位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;112位(シグナルペプチドのない配列では95位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;114位(シグナルペプチドのない配列では97位)のアミノ酸残基はグリシン残基ではなく;116位(シグナルペプチドのない配列では99位)のアミノ酸残基はセリンまたはスレオニン残基ではなく;120位(シグナルペプチドのない配列では103位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではなく;123位(シグナルペプチドのない配列では106位)のアミノ酸残基はアスパラギン酸残基ではなく;128位(シグナルペプチドのない配列では111位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;129位(シグナルペプチドのない配列では112位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではなく;132位(シグナルペプチドのない配列では115位)のアミノ酸残基はスレオニンまたはバリン残基ではなく;134位(シグナルペプチドのない配列では117位)のアミノ酸残基はヒスチジンまたはアスパラギン残基ではなく;136位(シグナルペプチドのない配列では119位)のアミノ酸残基はヒスチジン残基ではなく;148位(シグナルペプチドのない配列では131位)のアミノ酸残基はアラニンまたはイソロイシン残基ではなく;162位(シグナルペプチドのない配列では145位)のアミノ酸残基はセリンまたはバリン残基ではなく;167位(シグナルペプチドのない配列では150位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;170位(シグナルペプチドのない配列では153位)のアミノ酸残基はアスパラギン酸残基ではなく;171位(シグナルペプチドのない配列では154位)のアミノ酸残基はチロシンまたはアルギニン残基ではなく;176位(シグナルペプチドのない配列では159位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;177位(シグナルペプチドのない配列では160位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;179位(シグナルペプチドのない配列では162位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;181位(シグナルペプチドのない配列では164位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;184位(シグナルペプチドのない配列では167位)のアミノ酸残基はトリプトファン残基ではなく;189位(シグナルペプチドのない配列では172位)のアミノ酸残基はグルタミン酸残基ではなく;191位(シグナルペプチドのない配列では174位)のアミノ酸残基はリシンまたはグリシン残基ではなく;192位(シグナルペプチドのない配列では175位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;193位(シグナルペプチドのない配列では176位)のアミノ酸残基はアラニン残基ではなく;201位(シグナルペプチドのない配列では184位)のアミノ酸残基はチロシン残基ではなく;203位(シグナルペプチドのない配列では186位)のアミノ酸残基はグルタミン酸残基ではなく;207位(シグナルペプチドのない配列では190位)のアミノ酸残基はプロリン残基ではなく;211位(シグナルペプチドのない配列では194位)のアミノ酸残基はアスパラギン酸残基ではなく;212位(シグナルペプチドのない配列では195位)のアミノ酸残基はフェニルアラニン残基ではなく;218位(シグナルペプチドのない配列では201位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;220位(シグナルペプチドのない配列では203位)のアミノ酸残基はバリンまたはアラニン残基ではなく;221位(シグナルペプチドのない配列では204位)のアミノ酸残基はバリン残基ではなく;223位(シグナルペプチドのない配列では206位)のアミノ酸残基はトリプトファンまたはグルタミン残基ではなく;224位(シグナルペプチドのない配列では207位)のアミノ酸残基はグルタミン酸残基ではなく;226位(シグナルペプチドのない配列では209位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;235位(シグナルペプチドのない配列では218位)のアミノ酸残基はグリシン残基ではなく;246位(シグナルペプチドのない配列では229位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;249位(シグナルペプチドのない配列では232位)のアミノ酸残基はバリン残基ではなく;264位(シグナルペプチドのない配列では247位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではなく;272位(シグナルペプチドのない配列では255位)のアミノ酸残基はシステイン、ロイシンまたはヒスチジン残基ではなく;275位(シグナルペプチドのない配列では258位)のアミノ酸残基はプロリン残基ではなく;289位(シグナルペプチドのない配列では272位)のアミノ酸残基はフェニルアラニン残基ではなく;291位(シグナルペプチドのない配列では274位)のアミノ酸残基はリシン残基ではなく;292位(シグナルペプチドのない配列では275位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;294位(シグナルペプチドのない配列では277位)のアミノ酸残基はチロシンまたはアラニン残基ではなく;295位(シグナルペプチドのない配列では278位)のアミノ酸残基はバリン、スレオニンまたはイソロイシン残基ではなく;297位(シグナルペプチドのない配列では280位)のアミノ酸残基はアスパラギン酸残基ではなく;298位(シグナルペプチドのない配列では281位)のアミノ酸残基はリシン残基ではなく;299位(シグナルペプチドのない配列では282位)のアミノ酸残基はプロリン残基ではなく;306位(シグナルペプチドのない配列では289位)のアミノ酸残基はバリン残基ではなく;307位(シグナルペプチドのない配列では290位)のアミノ酸残基はセリンまたはロイシン残基ではなく;311位(シグナルペプチドのない配列では294位)のアミノ酸残基はリシン残基ではなく;326位(シグナルペプチドのない配列では309位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではなく;327位(シグナルペプチドのない配列では310位)のアミノ酸残基はシステイン、グリシンまたはロイシン残基ではなく;328位(シグナルペプチドのない配列では311位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;334位(シグナルペプチドのない配列では317位)のアミノ酸残基はアスパラギン酸残基ではなく;339位(シグナルペプチドのない配列では322位)のアミノ酸残基はアルギニンまたはグルタミン酸残基ではなく;348位(シグナルペプチドのない配列では331位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;354位(シグナルペプチドのない配列では337位)のアミノ酸残基はアスパラギン酸残基ではなく;355位(シグナルペプチドのない配列では338位)のアミノ酸残基はスレオニンまたはイソロイシン残基ではなく;371位(シグナルペプチドのない配列では354位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;374位(シグナルペプチドのない配列では357位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;377位(シグナルペプチドのない配列では360位)のアミノ酸残基はバリン残基ではなく;378位(シグナルペプチドのない配列では361位)のアミノ酸残基はバリン残基ではなく;381位(シグナルペプチドのない配列では364位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではなく;382位(シグナルペプチドのない配列では365位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;389位(シグナルペプチドのない配列では372位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;391位(シグナルペプチドのない配列では374位)のアミノ酸残基はシステインまたはヒスチジン残基ではなく;392位(シグナルペプチドのない配列では375位)のアミノ酸残基はアラニン残基ではなく;395位(シグナルペプチドのない配列では378位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;399位(シグナルペプチドのない配列では382位)のアミノ酸残基はセリンまたはバリン残基ではなく;400位(シグナルペプチドのない配列では383位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;406位(シグナルペプチドのない配列では389位)のアミノ酸残基はグリシン残基ではなく;410位(シグナルペプチドのない配列では393位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;411位(シグナルペプチドのない配列では394位)のアミノ酸残基はアラニン残基ではなく;414位(シグナルペプチドのない配列では397位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;417位(シグナルペプチドのない配列では400位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;420位(シグナルペプチドのない配列では403位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;423位(シグナルペプチドのない配列では406位)のアミノ酸残基はアラニン残基ではなく;424位(シグナルペプチドのない配列では407位)のアミノ酸残基はメチオニン残基ではなく;426位(シグナルペプチドのない配列では409位)のアミノ酸残基はシステインまたはアスパラギン酸残基ではなく;428位(シグナルペプチドのない配列では411位)のアミノ酸残基はプロリン残基ではなく;429位(シグナルペプチドのない配列では412位)のアミノ酸残基はリシン残基ではなく;436位(シグナルペプチドのない配列では419位)のアミノ酸残基はヒスチジン残基ではなく;445位(シグナルペプチドのない配列では428位)のアミノ酸残基はプロリン残基ではなく;450位(シグナルペプチドのない配列では433位)のアミノ酸残基はヒスチジンまたはシステイン残基ではなく;452位(シグナルペプチドのない配列では435位)のアミノ酸残基はリシン残基ではなく;454位(シグナルペプチドのない配列では437位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではなく;455位(シグナルペプチドのない配列では438位)のアミノ酸残基はセリンまたはアスパラギン酸残基ではなく;456位(シグナルペプチドのない配列では439位)のアミノ酸残基はトリプトファンまたはアルギニン残基ではなく;459位(シグナルペプチドのない配列では442位)のアミノ酸残基はメチオニンまたはロイシン残基ではなく;466位(シグナルペプチドのない配列では449位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;467位(シグナルペプチドのない配列では450位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;468位(シグナルペプチドのない配列では451位)のアミノ酸残基はスレオニン残基ではなく;473位(シグナルペプチ
ドのない配列では456位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;476位(シグナルペプチドのない配列では459位)のアミノ酸残基はリシンまたはグリシン残基ではなく;478位(シグナルペプチドのない配列では461位)のアミノ酸残基はロイシン残基ではなく;489位(シグナルペプチドのない配列では472位)のアミノ酸残基はセリン残基ではなく;490位(シグナルペプチドのない配列では473位)のアミノ酸残基はフェニルアラニン残基ではなく;および491位(シグナルペプチドのない配列では474位)のアミノ酸残基はアルギニン残基ではない。他の特定の実施形態において、1つまたは複数のXは、アラインメントの配列中のその位置に見出されるアミノ酸のいずれか、またはこれらのアミノ酸のいずれかの保存若しくは半保存された置換を構成する残基であると定義される。他の特定の実施形態において、Xはアラインメントの配列中のその位置に見出されるアミノ酸のいずれかであると定義される。例えば、51位(シグナルペプチドのない配列では34位)のアミノ酸残基はアラニンまたはバリン残基であり;177位(シグナルペプチドのない配列では160位)のアミノ酸残基はアラニンまたはセリン残基であり;212位(シグナルペプチドのない配列では195位)のアミノ酸残基はイソロイシンまたはバリン残基であり;291位(シグナルペプチドのない配列では274位)のアミノ酸残基はグルタミン酸またはアスパラギン酸残基であり;そして374位(シグナルペプチドのない配列では357位)のアミノ酸残基はバリンまたはイソロイシン残基である。
【0058】
結晶可能領域フラグメント(Fc)
本発明の融合ポリペプチドはc末端ドメイン、例えば免疫グロブリンのFc、結晶可能領域フラグメントを含んでもよい。免疫グロブリン分子は当技術分野で周知の構造を有する。その構造は、鎖間ジスルフィド結合により接続された2つの軽鎖(それぞれほぼ23kD)と2つの重鎖(それぞれほぼ50〜70kD)を含む。免疫グロブリンは容易にタンパク分解により(例えば、パパイン切断により)Fab(軽鎖および重鎖のV
HおよびC
H1ドメインを含有する)およびFc(重鎖のC
H2およびC
H3ドメインを隣接配列と共に含有する)に切断される。切断は、典型的には、FabとFc領域を接続するフレキシブルなヒンジ領域に起こる。例えば、パパインはヒンジ領域を、2つの重鎖を接続するジスルフィド結合の直前で切断する。
【0059】
本発明の有用なFcフラグメントはいずれかの免疫グロブリン分子[いずれかの哺乳動物(例えば、ヒト)から取得されたIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE、およびそれらの様々なサブクラス(例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3、IgG-4、IgA-1、IgA-2)を含む]のFcフラグメントを含む。本発明のFcフラグメントは、例えば、重鎖のC
H2およびC
H3ドメイン、ならびにそのヒンジ領域のいずれかの部分を含む。さらに、Fc領域は当業者に公知の様々なアミノ酸残基がグリコシル化されていてもよい。いくつかの実施形態において、FcフラグメントはヒトIgG-1のものである。特別な実施形態において、融合ポリペプチドのFcフラグメントは配列番号3のアミノ酸配列を有するか、または配列番号3と少なくとも50%(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはmore)配列同一性を有する。
【0060】
さらなるポリペプチドの特徴
本発明のポリペプチドは任意に1以上のさらなるアミノ酸を、1)ポリペプチドのN-末端に、2)ポリペプチドのsALPとFc領域の間に、および3)ポリペプチドのC-末端に含む。従って、本発明はZ-sALP-Y-Fc-XまたはZ-Fc-Y-sALP-X[式中、ZはポリペプチドのN-末端の1以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、20、25、30、35、40、45、50、またはそれ以上)のさらなるアミノ酸であり、YはポリペプチドのsALPとFc領域の間の1以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、20、25、30、35、40、45、50、またはそれ以上)のさらなるアミノ酸(すなわち、リンカー)であり、そしてXはポリペプチドのC-末端の1以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、20、25、30、35、40、45、50、またはそれ以上)のさらなるアミノ酸である]を含む。特別な例において、Yはジペプチドのロイシン-リシンである。あるいは、X、Y、およびZのいずれかの組み合わせが存在または不在であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、ZとXの両方が不在であり、Yが不在であるかまたは少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列である。例えば、ポリペプチドは構造sALP-Y-Fcまたは構造Fc-Y-sALPから成ってもよい。構造sALP-Y-FcまたはFc-Y-sALPから成るポリペプチドのいくつかの実施形態において、Yは2つのアミノ酸残基、例えば、ロイシン-リシンから成ってもよい。例えば、ポリペプチドは構造sALP-Y-Fcから成ってもよい。任意に、sALPのアミノ酸配列は配列番号5のアミノ酸配列であり、Yのアミノ酸配列はロイシン-リシンであり、および/またはFcのアミノ酸配列は配列番号3のアミノ酸配列である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号4のアミノ酸配列から成る。
【0061】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドを産生するために用いられるクローニング計画に従って、追加のアミノ酸をポリペプチド中に導入することができる。いくつかの実施形態において、追加のアミノ酸は追加のGPIアンカーシグナルを提供することなく、ポリペプチドを可溶型で維持する。さらに、いくつかの実施形態において、いずれかのかかる追加のアミノ酸は、本発明のポリペプチド中に組込まれる場合、宿主細胞のエンドプロテアーゼに対する切断部位を提供しない。設計した配列が宿主細胞のエンドプロテアーゼにより切断される可能性は、例えば、Ikezawa(Biol.Pharm.Bull.25:409-417, 2002)が記載したように予測することができる。
【0062】
本発明のポリペプチドはまた、1以上の翻訳後の修飾、例えば、グリコシル化(例えば、マンノシル化および本明細書で考察した他の型のグリコシル化)、アセチル化、アミド化、ブロッキング(blockage)、ホルミル化、γ-カルボキシグルタミン酸ヒドロキシル化、メチル化、ユビキチン化、リン酸化、ピロリドンカルボン酸修飾、および硫酸化を有するいずれかのポリペプチドを含む。
【0063】
ある特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは二量体または四量体に結合される。例えば、2つのsALP-Fcモノマーを、Fcフラグメントのヒンジ領域に位置するジスルフィド結合を介して共有結合で連結することができる。
【0064】
核酸とポリペプチドの産生
本発明の核酸とポリペプチドはいずれかの当技術分野で公知の方法により産生することができる。典型的には、所望の融合タンパク質をコードする核酸を、分子クローニング法を用いて作製し、そして一般に、ベクター、例えばプラスミドまたはウイルス内に配置する。そのベクターを用いて核酸を、融合タンパク質の発現に適当な宿主細胞中に形質転換する。代表的な方法は、例えば、Maniatisら(Cold Springs Harbor Laboratory, 1989)に開示されている。哺乳動物細胞は適当な翻訳後修飾を与えることができるので好ましいが、多数の細胞型を適当な宿主細胞として用いることができる。例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が本発明の融合タンパク質を発現する宿主細胞として用いられており、下記実施例にさらに詳しく記載されている。本発明の融合タンパク質を発現するのに有用な他の宿主細胞には、例えば、L細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、またはCOS-7細胞が含まれる。本発明の融合タンパク質を発現するための興味深い具体的なCHO細胞には、CHO-DG44およびCHO/dhfr
-が含まれる。この後者の細胞株はthe American Type Culture Collection (ATCC number CRL-9096)を介して利用可能である。
【0065】
本発明のポリペプチドは、宿主細胞におけるポリペプチドの発現を果たすために好適ないずれかの条件下で産生することができる。かかる条件は諸成分で調製した適当な培地の選択を含み、前記諸成分は、例えば、バッファー、例えば炭酸水素塩および/またはHEPES、イオン、例えば塩素、リン酸、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、鉄など、単純糖類の様な炭素供給源、アミノ酸、潜在的脂質、ヌクレオチド、ビタミンおよびインスリン様の成長因子;定型的な市販培地、例えば2〜4mM L-グルタミンおよび5%ウシ胎児血清を補充したα-MEM、DMEM、Ham's-F12およびIMDM;定型的な市販の動物性タンパク質を含まない培地、例えば2〜4mM L-グルタミンを補充したHyclone(登録商標) SFM4CHO、Sigma CHO DHFR
-、Cambrex POWER(登録商標) CHO CDである。これらの培地は望ましくは、チミジン、ヒポキサンチンおよびL-グリシン無しで調製して、選択圧力を維持して安定なタンパク質産物発現を可能にする。
【0066】
本発明のポリペプチドおよび核酸の産生のさらなる詳細は実施例に記載されている。
【0067】
治療における応用
本発明の核酸およびポリペプチドは様々な、例えば、先天性の骨疾患、骨折修復、骨および歯インプラント、椎骨融合、およびその他の分野の治療に応用しうる。特に、本発明の核酸およびポリペプチドは本明細書に記載の基質石灰化障害、例えば、HPPの治療に有用である。
【0068】
低ホスファターゼ血症(HPP)
HPPは歴史的に診断時の年齢によって分類されていて、(最も重症のものから最も軽いものへの順で)出生時、乳児、小児、成人、および歯性低ホスファターゼ症型が含まれる。最も重症の型である出生時(致死性)HPPはin utero骨石灰化がほとんど完全に存在しないため、死産を引き起こしうる。出生時HPPを患ういくつかの新生児は数日間生存しうるが、胸部の形成不全およびくる病による呼吸器障害が進行する。6月齢前にHPPと診断された乳児では、生後発育は正常であると思われるが、その後、食欲不振の開始、不十分な体重増加、そしてくる病の発症に至る。乳児HPPは特徴のある放射線学的特性を有し、障害性骨格石灰化を示し、時折、肋骨骨折及び胸部奇形をもたらす進行性骨格脱石灰化を伴うことがある。小児HPPは非常に変化しやすい臨床的発現をする。小児HPPの一症候は乳歯の成熟前の喪失であって、歯根と歯周靭帯を繋ぐ歯セメント質の形成不全、発育不全または異形成から生じる。小児の他の症候はくる病であって、これは低身長および骨格奇形、例えば、発赤した骨幹端の結果としての湾曲脚、手関節、膝及び肢関節の拡張を引き起こす。成人期HPPは通常中年期に現れるが、くる病の病歴および/または歯の早期脱落が先行し、続いて青年期及び若年成人期は健康であることが多い。成人HPPにおいて、再発性の中肢骨ストレス骨折が通常起こり、そしてピロリン酸カルシウム二水和物沈着が関節炎およびピロリン酸関節症の発作を引き起こしうる。最後に、唯一の臨床異常が歯科疾患である場合、歯性低ホスファターゼ症と診断され、放射線学的研究および骨生検によっても、くる病または骨軟化症の徴候を示さない。
【0069】
重度の臨床型HPPは、通常、常染色体劣性遺伝形質として遺伝し、かかる患者の親は亜正常レベルの血清AP活性を示す。軽度の型のHPP、すなわち成人HPPおよび歯性低ホスファターゼ症については、常染色体優性遺伝形式も記載されている。
【0070】
健康な骨格において、TNALPは骨芽細胞及び軟骨細胞の細胞膜の表面上、ならびに脱落基質小胞(MV)の膜上に存在する表面酵素(ectoenzyme)であり、この酵素は特に脱落MV中に豊富である。骨石灰化におけるヒドロキシアパタイトの沈着は、通常、これらのMVの管腔内で開始する。電子顕微鏡は、重症HPP患者およびAkp2
-/-マウス(TNALPヌルマウスモデル、下記参照)由来のTNALP欠乏MVはヒドロキシアパタイト結晶を含有するが、小胞外の結晶成長は遅延すると思われることを示す。この遅延は、TNALP活性の不足に因るPPi(カルシウム沈着の強力な阻害剤)の細胞外蓄積に起因する。
【0071】
生理学的濃度(0.01〜0.1mM)において、PP
iは石灰化を刺激する能力を有する。これは、器官培養ニワトリ大腿骨および単離されたラットMVにおいて実証されている。しかし1mMを超える濃度で、PPiはヒドロキシアパタイト結晶をコーティングすることによりリン酸カルシウム石灰質形成を阻害し、したがって、石灰質結晶成長および増殖性自己核形成を阻止する。このように、PP
iは二重の生理学的役割を有する:すなわち、低濃度では石灰化の促進剤として機能するが、高濃度では石灰化の阻害剤として機能する。TNALPは、石灰化阻害剤PP
iを加水分解して石灰質沈降および成長を促進することが示されている。Akp2
-/-マウスを用いる最近の研究は、in vivoでのTNALPの主な役割は細胞外PP
iプールのサイズを限定して適当な骨格石灰化を可能にすることであるのを示している。
【0072】
低ホスファターゼ血症の重症度はTNALP突然変異の性質に依存する。酵素の活性部位近郊、ホモ二量体界面、クラウンドメイン、アミノ-末端アーム、およびカルシウム-結合部位を含む、TNALPの色々な位置におけるミスセンス突然変異は全てその触媒活性に影響を与えることが見出されている。さらに、ミスセンス、ノンセンス、フレーム-シフトおよびスプライス部位突然変異体も、異常な突然変異体タンパク質または細胞表面上のサブノーマル活性を生じる細胞内トラフィッキング欠陥を引き起こすことが示されている。HPPを引き起こす多数の突然変異および化合物ヘテロ接合性がHPPで共通して存在するという事実は、この疾患においてしばしば観察される可変性発現度および不完全な浸透度を説明する。
【0073】
ヒト型のHPPについての進歩は、HPPの動物モデルであるTNALPヌルマウス(Akp2
-/-)の存在による恩恵を大きく受けている。Akp2
-/-マウスは乳児HPPの表現型を著しく巧く複写する:前記マウスは正常に石灰化した骨格をもって生まれるが、約6日齢にX線写真で見られるくる病を発症し、そして12〜16日の間に、重症の骨格低石灰化ならびにPLP(ビタミンB
6)代謝の攪乱に起因する無呼吸の症状およびてんかん発作を患って死亡する。
【0074】
PP
iとPLPの両方は確証済みのTNALPの天然基質であり、いくつかのTNALP活性部位突然変異は酵素のPP
iおよびPLPを代謝する能力に色々な影響を与えることが示されている。PLP代謝の異常はAkp2
-/-マウスに観察されるてんかん発作を説明する一方、PP
i代謝の異常はこのHPPのマウスモデルの骨格表現型を説明する。
【0075】
製剤
製剤は投与経路、ならびに他の治療目的に依存しうる。本発明の核酸およびポリペプチドは当技術分野で公知のいずれかの経路、例えば、皮下(例えば、皮下注入により)、静脈内、経口、経鼻、筋肉内、皮下、舌下、髄腔内、又は皮内に投与することができる。例として挙げれば、本発明の医薬組成物は、液体、溶液、懸濁液、丸薬、カプセル、錠剤、ジェルキャップ、粉末、ゲル、軟膏、クリーム、ネビュラ(nebulae)、ミスト、微粒化蒸気、エアロゾル、又はフィトソーム(phytosome)の剤形であってもよい。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の組成物は皮下投与することができる。皮下投与は比較的非侵襲性でありかつ所望の薬物動態学プロファイルを与えるので有利である。好適な体積は当業者に公知であり、典型的には5mLまたはそれ以下(例えば、4mL、3.5mL、3mL、2.7mL、2.5mL、2.3mL、2.2mL、2.1mL、2.0mL、1.9mL、1.8mL、1.7mL、1.5mL、1.3mL、1.0mL、0.7mL、0.5mL、0.3mL、0.1mL、0.05mL、0.01mL、またはそれ以下)である。皮下投与に必要な体積は小さいので、投与する組成物は十分に高濃度である必要がある。従って、全ての組成物(例えば高濃度で凝集するポリペプチド)が皮下投与に好適というわけではない。本発明の組成物は皮下投与に好適な十分に高い濃度で製剤できることが見出されている。典型的には、本発明の組成物は、皮下投与用に、例えば、1mg/mL〜500mg/mL(例えば、10mg/mL〜300mg/mL、20mg/mL〜120mg/mL、40mg/mL〜200mg/mL、30mg/mL〜150mg/mL、40mg/mL〜100mg/mL、50mg/mL〜80mg/mL、または60mg/mL〜70mg/mL)の濃度で製剤化することができる。
【0077】
経口投与用に、錠剤またはカプセルを通常の手法により製薬上許容される賦形剤、例えば、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、または湿潤剤を用いて調製することができる。錠剤は当技術分野で公知の方法によりコーティングすることができる。経口投与用の液状調製物、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液の剤形であってもよく、またはこれらを乾燥産物として提示し、使用前に生理食塩水または他の好適な液体ビヒクルを用いて構成することができる。経口投与用の本発明の組成物はまた、製薬上許容される賦形剤、例えば懸濁化剤、乳濁化剤、非水性ビヒクル、保存剤、バッファー塩、香料、着色剤、および甘味剤を適宜含有してもよい。経口投与用の調製物はまた、活性成分の放出を制御するように好適に製剤化してもよい。
【0078】
本発明の錠剤に腸溶コーティングをさらに用いて、強酸性の胃液との長い接触に耐えるが弱酸性または中性の腸環境で溶解するようにしてもよい。限定されるものでなく、酢酸フタル酸セルロース、Eudragit(登録商標)およびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステル(HPMCP)を本発明の医薬組成物の腸溶コーティングに用いることができる。酢酸フタル酸セルロース濃度は一般にコア重量の0.5〜9.0%である。可塑剤を加えるとこのコーティング材料の耐水性は改善され、かかる可塑剤を用いる製剤は酢酸フタル酸セルロースを単独で用いるときより効果的である。酢酸フタル酸セルロースは多くの可塑剤と共存することができ、かかる可塑剤には、アセチル化モノグリセリド、ブチルフタリルブチルグリコレート、酒石酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、エチルフタリルエチルグリコーレート、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリアセチン、及びトリプロピオニンが含まれる。酢酸フタル酸セルロースはまた、他のコーティング剤、例えばエチルセルロースと組み合わせて、薬物制御放出調製物に用いることができる。
【0079】
本発明の化合物は、製薬上許容される無菌の水性もしくは非水溶媒、懸濁液または乳濁液と組み合わせて投与してもよい。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油、および注射用有機エステルである。水性担体には、水、水アルコール溶液、生理食塩水を含む乳濁液または懸濁液、および塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖溶液、ブドウ糖+塩化ナトリウム溶液、ラクトース含有リンゲル溶液または固定油を含む緩衝医療用非経口溶媒が挙げられる。静脈内ビヒクルは、液体および栄養補填剤、電解質補填剤、例えばリンゲルブドウ糖などに基づくものを含みうる。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、制御放出系で送達することができる。いくつかの実施形態において、ポリ乳酸、ポリオルトエステル、架橋両親媒性ブロック共重合体及びハイドロゲル、ポリヒドロキシ酪酸ならびにポリジヒドロピランを含む高分子材料を使うことができる(Smolen and Ball, Controlled Drug Bioavailability, Drug product design and performance, 1984, John Wiley & Sons;Ranade and Hollinger, Drug Delivery Systems, pharmacology and toxicology series, 2003, 2
nd edition, CRRC Pressも参照されたい)。他の実施形態においては、ポンプを用いることができる(Saudek et al., 1989, N. Engl. J. Med. 321 : 574)。
【0081】
本発明の組成物は、適当な賦形剤(例えば、スクロース)溶液を希釈剤として用いる凍結乾燥粉末の形態で製剤化してもよい。
【0082】
さらに、細胞(例えば、骨芽細胞)を基質石灰化障害を有する個体から単離し、本発明の核酸を用いて形質転換し、そして前記障害を有する個体に再導入(例えば、皮下または静脈内注射)してもよい。あるいは、前記核酸を前記障害を有する個体に直接、例えば、注射により投与してもよい。核酸はまた、特定の細胞型を標的化するように設計しうる、ビヒクル、例えばリポソームを介して送達し、色々な経路を介して投与するように遺伝子操作することができる。
【0083】
本発明の組成物はまた、少なくとも1つの骨石灰化欠陥またはHPPの他の有害な症候を矯正する他の活性成分と組み合わせて用いることもできる。例えば、本発明の組成物を、少なくとも1つのセメント質欠陥を矯正する他の活性成分と組み合わせて用いることもできる。
【0084】
遺伝子治療
本発明の融合タンパク質はまた、遺伝子治療を介して有利に送達することができ、この場合、前記タンパク質をコードする外因性核酸は目的の組織へ送達され、かつin vivoで発現される。遺伝子治療法は例えば、参照により本明細書に組み込まれるVermeら(Nature 389:239-242, 1997)およびYamamotoら(Molecular Therapy 17:S67-S68, 2009)に考察されている。ウイルスおよび非ウイルスベクター系の両方を用いることができる。ベクターは、例えば、プラスミド、人工染色体(例えば、細菌、哺乳動物、または酵母の人工染色体)、ウイルスまたはファージベクターであって、複製起点、および任意に、ウイルスのポリペプチドをコードする核酸の発現用のプロモーターおよび任意に、プロモーターのレギュレーターをもつものであってもよい。ベクターは1以上の選択マーカー遺伝子、例えば、細菌プラスミドの場合のアンピシリンまたはカナマイシン耐性遺伝子または]真菌ベクター用の耐性遺伝子を含有してもよい。ベクターを、例えばDNA、RNAまたはウイルスポリペプチドの産生のためにin vitroで用いてもよく、または例えば、ベクターがコードするウイルスポリペプチドの産生のために、宿主細胞、例えば、哺乳動物の宿主細胞をトランスフェクトまたは形質転換するために用いることもできる。ベクターはまた、in vivoで、例えば、ワクチン接種もしくは遺伝子治療の方法で用いるように適合させてもよい。
【0085】
好適なウイルスベクターの例には、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスの、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(ヘルペスシンプレックスウイルスを含む)、α-ウイルス、ポックスウイルス(カナリポックスなど)およびワクシニアウイルスに基づく系が含まれる。これらのウイルスを用いる遺伝子導入技法は当技術分野で公知である。レトロウイルスベクターは、例えば、本発明の核酸を宿主ゲノム中に安定して組み込むために用いることができる。複製欠陥アデノウイルスベクターは対照的にエピソームに残存し、それ故に一過性発現を可能にする。昆虫細胞(例えば、バキュロウイルスベクター)、ヒト細胞、酵母または細菌において発現を駆動できるベクターを、本発明の核酸がコードするウイルスポリペプチドを量産する目的で使用し、例えば、サブユニットワクチンでまたはイムノアッセイで利用することができる。有用な遺伝子治療法には、WO 06/060641、US 7,179,903およびWO 01/36620(それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたものが含まれ、これらの方法はアデノウイルスベクターを利用して目的の核酸をタンパク質産生細胞としての肝細胞に標的化する。
【0086】
さらなる例において、複製欠陥サルアデノウイルスベクターを生ベクターとして用いることができる。これらのウイルスはE1欠失を含有し、E1遺伝子によって形質転換した細胞株で増殖することができる。これらの複製欠陥サルアデノウイルスベクターの例は、米国特許第6,083,716号およびWO 03/046124(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。これらのベクターを遺伝子操作して本発明の核酸を挿入し、コードされたウイルスのポリペプチドを発現させることができる。
【0087】
プロモーターと他の発現制御シグナルを選択して、その発現を設計する宿主細胞と共存しうるようにすることができる。例えば、哺乳動物プロモーターには、重金属、例えばカドミウムに応答して誘導することができるメタロチオネインプロモーターおよびβ-アクチンプロモーターが含まれる。ウイルスプロモーター、例えば、SV40ラージT抗原プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期(1E)プロモーター、ラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルスプロモーター、またはHPVプロモーター、特にHPV上流調節領域(URR)も用いることができる。全てのこれらのプロモーター、ならびに追加のプロモーターは当技術分野においてよく記載されている。
【0088】
本発明の核酸はまた、非ウイルス投与系を用いて投与することができる。例えば、これらの投与系には、微粒子封入、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ナノ粒子、およびリポソームに基づく系が含まれる。非ウイルス系にはまた、「裸の」ポリヌクレオチドの送達を促進する技法(例えば、エレクトロポレーション、「遺伝子銃」送達ならびにポリヌクレオチドを導入する様々な他の技法)も含まれる。
【0089】
導入するポリヌクレオチドを安定してまたは一過的に宿主細胞に維持することができる。安定な維持は、典型的には、導入されたポリヌクレオチドが宿主細胞と共存しうる複製起点を含有するかまたは宿主細胞のレプリコン、例えば、染色体外レプリコン(例えば、プラスミド)または核もしくはミトコンドリアの染色体に組み込まれることが必要である。
【0090】
用量
本発明の医薬組成物のいずれかの量を被験体に投与することができる。投与量は、投与様式および被験体の年齢を含む多くの因子に依存しうる。典型的には、単用量に含有される本発明の組成物の量は有意な毒性を誘導することなく石灰化障害を治療するのに有効な量であろう。皮下投与には、本発明のポリペプチドを被験体に、0.01mg/kg〜100mg/kg(例えば、0.1mg/kg〜50mg/kg、0.5mg/kg〜25mg/kg、1.0mg/kg〜10mg/kg、1.5mg/kg〜5mg/kg、または2.0mg/kg〜3.0mg/kg)の範囲の個々の用量を投与することができる。この用量を、毎時、毎2時間、毎日、毎2日、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、毎週、毎2週、毎月、毎2月、または毎年投与することができる。投与の量および頻度は、臨床医が通常の因子、例えば、疾患の程度および被験体の色々なパラメーターに従って適合させるであろう。
【0091】
本発明の核酸を本明細書に記載の製剤に従って、遺伝子治療に好適な投与量で患者に投与することができる。投与する核酸の量は、当業者に公知のいくつもの因子にに依存しうるのであって、それらの因子には、核酸の長さおよび性質、用いるベクター(例えば、ウイルス性または非ウイルス性)、コードされたポリペプチドの活性、賦形剤の存在、投与の経路および方法、ならびに被験体の一般条件および適応度が含まれる。例示の投与量および投与経路は、例えば、Melmanら(Isr. Med. Assoc. J. 9:143-146, 2007;勃起不全を治療するためのプラスミドにおいてヒトcDNAの0.5mg〜7.5mgの陰茎内注射を記載する)、Powellら(Circulation 118:58-65, 2008;重篤な肢虚血を治療するための肝細胞成長因子プラスミドにおいて0.4mg〜4.0mgの筋肉内注射を記載する)、Waddillら(AJR Am. J. Roentgenol. 169:63-67, 1997;黒色腫を治療するMHC抗原をコードするプラスミドDNAの0.01mg〜0.25mgのCTガイドによる腫瘍内注射を記載する)、Kastrupら(J. Am. Coll. Cardiol. 45:982-988, 2005;重篤な狭心症を治療するVEGFプラスミドの0.5mgの心筋内注射を記載する)、Romeroら (Hum. Gene. Ther. 15:1065-1076, 2004;Duchenne/Becker(筋ジストロフィーを治療するプラスミドの0.2mg〜0.6mgの筋肉内注射を記載する)に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
ある特定の実施形態においては、本発明の核酸を被験体に、例えば、核酸の0.01mg〜100mg(例えば、0.05mg〜50mg、0.1mg〜10mg、0.3mg〜3mg、または約1mg)の範囲の用量で投与することができる。核酸を投与しうる全体積はその濃度に依存するであろう、例えば、1μL〜10mL(例えば、10μL〜1mL、50μL〜500μL、70μL〜200μL、90μL〜150μL、または100μL〜120μL)の範囲でありうる。核酸は単一または複数用量(毎時、毎2時間、毎日、毎2日、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、毎週、毎2週、毎月、毎2月、または毎年)で投与することができる。
【0093】
これらはガイドラインであり、実際の用量は臨床医師または栄養士により各被験体に特有の臨床因子に基づいて注意深く選択されかつ決定されなければならない。最適な毎日用量は、当技術分野で公知の方法により決定されかつ上記の通り、被験体の年齢などの因子および他の臨床上関係ある因子による影響を受けるであろう。さらに、被験体は他の疾患または症状のための投薬を受けているかも知れない。本発明のポリペプチドまたは核酸が被験体に投与されている期間、他の投薬を続行することはできるが、かかる事例では、低用量で開始して有害な副作用が起こらないかを確認することを勧める。
【実施例】
【0094】
下記の実施例は新規の可溶型組換えタンパク質を用いるAkp2
-/-マウスの治療の成功を記載し、前記タンパク質はそのカルボキシ末端がヒトlgG-1の結晶可能フラグメント(Fc)領域に融合されたヒト組織非特異的アルカリホスファターゼを含むものである。これらの実施例は本発明を説明することを意図し、本発明を限定するものではない。
【0095】
(実施例1)
sALP-Fcの発現と産生
sALP-Fc cDNAをPCR増幅によりpIRES-sALP-FcD10プラスミドから作製し、pSV(ハイグロマイシン)発現ベクター(Selexis Inc.)中にクローニングした。CHO-K1S細胞は4mML-グルタミン(Wisent)を補充したPower CHO2 CD培地(Lonza)中で増殖し、これをPvuI-線形化pSV-sALP-Fcプラスミドで製造業者プロトコルを用いてトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間に、培地を200μg/mLハイグロマイシンB(Invitrogen)を含有する培地と交換した。生存率をモニターし培地を毎96時間に置換えた。生存率が90%に達すると、培養物を高発現クローンについてClonepix FL技法プラットフォーム(Genetix Inc.)を用い、FITC-カップルした抗-sALP抗体を使ってスクリーニングした。最良のクローンを増幅し、培養上清についてsALP酵素のアッセイを用いて選択した。選択したクローンを増幅し、25L WAVEバイオリアクター中で増殖した。培養の終了時に、使用済み培地中のsALP-Fcの濃度はTNSALP酵素の活性により試験して135mg/Lであった。生存率が10%以下に低下した時、WAVEの運動を停止して細胞を沈降させ、上清をMillistak+ Pod(Millipore)と0.22μm 1L無菌フィルターユニット(Corning)の両方を介する濾過により収穫した。PBS中の培地の10倍濃縮とKvick Lab SCUユニット(GE Healthcare、30 kDa カットオフ)を介するタンジェンシャルフローを用いる2.5Lへの透析後に、培地を、予めEQバッファー(50mM NaPO
4、100mM NaCl、pH 7.5)と平衡化したMab Select Sureカラムに供給した。カラムを次いで3.5体積のEQバッファー、5.5体積の第2洗浄バッファー(50mM Tris-Cl、1.5M NaCl、pH8.0)、および3.5体積の第3洗浄バッファー(50mM Tris-Cl、pH8.0)を用いて洗浄した。sALPを次いで10体積の溶出バッファー(50mM Tris-Cl、pH 11.0)に溶出した。溶出したタンパク質をさらにブチル-セファロースカラム上で次の手順を用いて精製した:タンパク質を最初に等容積の2X平衡バッファー(eq)(40mM Hepes、2.5M硫酸アンモニウム、pH7.5)と混合し、次いで、予め6体積の1X平衡バッファーに平衡化したカラムに供給した。5体積のeqバッファーおよび3体積の第2洗浄バッファー(20mM Hepes、0.95硫酸アンモニウム、pH 7.5)で洗浄後、タンパク質を5体積の溶出バッファー(25mM NaPO
4、0.5M硫酸アンモニウム、pH 7.4)に溶出した。精製したsALP-Fcを濃縮し、リン酸バッファー(25mM NaPO
4、150mM NaCl、pH7.4)に対して30 kDaカットオフVivaspinユニット(Sartorius VS2022)を用いて透析した。精製操作の総収率は30%で、純度はSyproルビー染色4-12% SDS-PAGE(Invitrogen Inc.)およびサイズ排除HPLCにより試験して95%を超えた。精製sALP-:Fc調製物を4℃にて貯蔵し、数か月間安定であった。
【0096】
(実施例2)
パパイン消化によるsALPの作製
sALPをパパイン消化を用いて次の通り作製した:sALP-Fcを最初に消化バッファー(20mMリン酸ナトリウム、pH 7.0)に対してVivaspinユニット(Sartorius VS2022)を用いて透析し、10mg/mLに調節し、そして1チューブ当たり600μLにてエッペンドルフチューブに加えた。平行して、パパイン-アガロース(Sigma P4406)を洗浄バッファー(20mMリン酸ナトリウム、1mM EDTA、pH 6.9)1.5mL中に25ユニットにて懸濁した。1 nmolのsALPFcを消化するために、42mUのパパイン-アガロースをコニカルチューブに移し、5分間1000gにて遠心分離し、そして10体積の消化バッファーで洗浄した。もう1回スピンダウンした後、ビーズを消化バッファーに再懸濁し、そしてsALPFcと同じ総体積に調節した。次いで10mM DTTを最終濃度0.5mMとなるまで加えることによりパパインを活性化した。600μLのパパイン-アガロースを次いで、37℃に余熱したsALPFcを含有する各エッペンドルフに直接加え、そして穏やかに撹拌しながら37℃にて2時間インキュベートした。その混合物を次いで空のPD-10カラム(GE Healthcare 17-0435-01)に注いで流出物を回収した。ゲルを3体積の消化バッファーで漱ぎ、この体積を流出物と共にプールした。Fc領域を次いでAKTAfplc系に接続したHitrapプロテインA Mab Select SuReカラム(GE Healthcare 11-0034-9)上で精製してsALPから分離した。概略を説明すると、カラムを10体積のバッファーA(10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.4)で平衡化し、タンパク質を5mLカラムに1mL/分にて供給した。sALPを含有する流出物を1つの画分に回収した。カラムを次いでバッファーAを用いて280nm吸収が基線に戻るまで洗浄(1mL/分)した。この洗浄液を1画分に回収した。カラムを次いで少なくとも3カラム体積のバッファーB(50mM Tris-Cl、pH 8.0)で洗浄し、そしてバッファーC(50mM Tris-Cl、pH 11.0)を用いて280nm吸収が基線に戻るまで溶出した。流出物およびバッファーA洗浄画分をプールし、Vivaspinユニット(Sartorius VS2022)を用いて、貯蔵バッファー(25mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.4)に対して透析した。タンパク質濃度を280nm光学密度アッセイを用いて確認し、消化の効率および収率をSDS-PAGE分析、SEC-HPLC、およびsALP酵素の活性アッセイを用いて確認した。
【0097】
(実施例3)
sALPおよびsALP-Fcの薬物動態学分析
In vivo薬物動態学(PK)研究を精製sALPおよびsALP-Fcについて実施した(これらは5〜6週齢のC57BL/6雄性マウスに静脈内(IV)および皮下(SC)投与された)。
【0098】
実験設計
動物は表1に記載の単一IVまたはSC用量を受けた。
【0099】
表1:マウスにおけるsALPおよびsALP-Fcのin vivo PK研究の実験設計
【表1】
【0100】
試験物質用量製剤の投与
用量投与を7:00 am〜10:30 amに実施した。各マウスに試験物質を肩甲骨領域の皮下に注射するか、またはげっ歯類拘束器に固定して試験物質を静脈内ボーラスとして尾部静脈経由で注射した。用量体積は3.33〜4.0 mL/kgに設定した。動物はスケジュールに従う血液採集および犠牲の前にただ1用量を受けた。個々の体重をスケジュールに従う試験物質注入の前に測定し、投与する試験物質の体積はこの体重測定に基づいた。
【0101】
血液サンプリングと調整
血液サンプル(0.1〜0.12mL)をイソフルラン麻酔のもとで色々な時点に頸静脈を介して採集した。最後の時点には、血液サンプルをイソフルラン麻酔のもとで心臓穿刺により採集した。血液サンプルをMicrovette 200Z/ゲルチューブ(Sarstedt、血清/ゲル凝血アクチベーター、#20.1291)中に採取し、室温にて30〜60分間インキュベートし、10,000gで5分間、2〜8℃にて遠心分離した。血清を新しい0.5mLチューブ(Sarstedt、#72.699)に移して液体窒素中でスナップ凍結し、-80℃にて分析するまで保存した。
【0102】
血清中の試験物質濃度
血清サンプル中のsALPおよびsALP-Fcの存在を、処置の完了後に比色定量酵素試験を用いて評価した。酵素活性は、吸収の増加が生成物への基質転化に比例する発色性基質を用いて定量した。最終体積は200μLであった。最初に20μLの標準または20μLのPK血清サンプルを加えた。ブランクも二重に調製した。反応は、1mMの基質(pNPP:パラ-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム六水和物)を含有する180μLのバッファー(20mMビストリスプロパン(HCl)pH 9.0、50mM NaCl、0.5mM MgCl
2および50μM ZnCl
2)中で行った。後者を最後に加えて反応を開始した。吸収を405nmにて毎30秒に20分間にわたって分光光度計プレートリーダー上に記録した(Molecular Devices)。初期速度として表される酵素活性を、分光光度計プレートリーダーの20件にわたる隣接読取値の最も険しいスロープを求めることにより評価した。
【0103】
sALPまたはsALP-Fcの既知濃度の標準を調製し、酵素活性を上記の通り定量した。初期速度率の対数値を標準量の対数値の関数としてプロットすることにより、標準曲線を作製した。その標準曲線を用いて各試験結果を認定した。
【0104】
PK血清サンプルのsALPまたはsALP-Fc濃度(U/L)をそれぞれのVmaxの単位への変換により決定した。1単位は、1分間、37℃にて1μmolのp-ニトロフェニルリン酸をp-ニトロフェノールに加水分解するsALPまたはsALP-Fcの量として定義した。血清中のsALPまたはsALP-Fcの内因型が存在するので、測定濃度を予備動物で測定した基線値に対して補正した。
【0105】
ノンコンパートメント薬物動態分析
ノンコンパートメント分析(non-compartmental、NCA)を用いて試験化合物の薬物動態パラメーターを計算した。試験化合物の全ての測定血清濃度-対-時間プロファイルをWinNonlin(登録商標)Enterpriseバージョン5.2.1を用いて処理した。NCAモデル200をSC入力にまたはモデル201をIV-ボーラス入力に選択し、両モデルに低密度サンプリング分析モジュールを用いた。
【0106】
次のノンコンパートメントPKパラメーターを計算した:
・AUC
last+C
last/λ
z(ここでλ
z=血清濃度-対-時間曲線の末端相の傾斜)として計算した0〜∞の曲線下面積(AUC
∞);
・最大観察血清濃度(C
max)、最大血清濃度の時間(T
max);
・末端半減期(T
1/2、0.693/λ
zとして計算);
・静脈内投与(CL)および皮下投与(CL_F)後の全身クリアランスを用量/AUC
∞として計算した。
【0107】
経路間の絶対バイオアベイラビリティ(F%)は次式:
[AUC
∞(sc)/用量(sc)]/[AUC
∞(iv)/用量(iv)] x 100
を用いて計算した。
【0108】
名目上の時間を計算に用い、時間は投薬開始との関係で設定した。名目上の用量はCLおよびCL_Fの計算に用いた。
【0109】
結果
sALPおよびsALP-Fcの単一用量IVおよびSC投与後の血清中の平均(±SD)濃度プロファイルを、
図7(a)および7(b)にそれぞれ示す。計算したPKパラメーターを表2(a)および2(b)に示す。
【0110】
表2a:血清中のsALPおよびsALP-Fcの薬物動態パラメーター(単一用量IV投与)
【表2a】
【0111】
表2b:血清中のsALPおよびsALP-Fcの薬物動態パラメーター(単一用量SC投与)
【表2b】
【0112】
結論
データから、IgG1 FcドメインのsALPとの融合はそのSCバイオアベイラビリティを10を超えるファクターで増加すること、およびSC投与後のその全身暴露を50を超えるファクターで増加することを見ることができる。
【0113】
(実施例4)
Akp2-/-マウスにおけるsALP-Fcのボーラス皮下注射後43日の用量と応答間の関係の評価
Akp2-/-ノックアウトマウスの作製
乳児HPPのマウスモデルであるAkp2
-/-ノックアウトマウスを、相同組換えを介するNeoカセットのマウスTNSALP遺伝子(Akp2)のエキソン6中への挿入により作製し、Akp2遺伝子を機能的に不活化して検出可能なTNSALP mRNAまたはタンパク質を生じないようにした。これらは12.5% C57Bl/6 - 87.5% 129J Akp2
-/-として維持される。Akp2
-/-マウスの表現型は乳児HPPを密接に模倣する。Akp2
-/-マウスは、これらの患者のように、TNSALP活性の全体的欠如、ALP基質であるPP
i、PLP、およびホスホエタノールアミン(PEA)の細胞外蓄積を有し、出生後に骨格マトリックスの石灰化の後天性欠如を示し、X線的および組織学的に明白なくる病または骨軟化症をもたらす。これらは発育阻止を有し、また、てんかん発作および無呼吸を発症し、出生後10〜12日に死亡する。ピリドキシン補充は簡単にこれらの発作を抑制しこれらの寿命を延命するが、わずかに出生後18〜22日までである。それ故に、本研究の全動物(育種者、乳母およびそれらの子供、および離乳児)は増加レベル(325ppm)のピリドキシンを含有する改変した実験げっ歯類食餌5001を自由に摂取できるようにした。
【0114】
Akp2
-/-ホモ接合性マウスは、誕生時(第0日)にマウスTNSALP遺伝子のエキソンVIに対する特異的プライマー:GTCCGTGGGCATTGTGACTACCAC(配列番号18)およびTGCTGCTCCACTCACGTCG(配列番号19)を用いる組織生検のPCRにより同定した。
【0115】
実験設計
Akp2
-/-マウスを4つの処置グループに分割した:
・グループ1(ビヒクル):毎日ビヒクルSCで処置したAkp2
-/-マウス(n=18);
・グループ2(Tx-1):毎日sALP-Fcで1mg/kg SCにて処置したAkp2
-/-マウス(n=17);
・グループ3(Tx-3):毎日sALP-Fcで3mg/kg SCにて処置したAkp2
-/-マウス(n=19);
・グループ4(Tx-6):毎日sALP-Fcで6mg/kg SCにて処置したAkp2
-/-マウス(n=17);
・グループ5(WT):参照動物として、注射を受けなかったAkp2
-/-マウスの野生型同腹子(n=35)。
【0116】
注射を8:00〜11:00 amに投与し、用量体積を3.3mL/kg体重に設定した。与えた実体積は、注射前に測定したその日の体重に基づいて計算し調節した。ビヒクルまたはsALP-Fcを肩甲骨領域に皮下(SC)注射した。全ての処置は出生後の第1日に開始しそして第43日または剖検時まで毎日繰り返した。
【0117】
終末の手順
剖検は、実験プロトコルを完了した動物については第44日の最終注射の24時間後に、または病気が末期的と思われる動物についてはそれより早く実施した。全ての動物はイソフルラン麻酔のもとで両側性開胸術により安楽死させた。剖検は全体の病理学的確認から成り、耳の一片を採集してAkp2
-/-遺伝形質を再確認した。骨サンプルを清掃し、10%中性緩衝化ホルマリン中で3日間2〜8℃にて固定し、次いで70%エタノールに移して2〜8℃にて貯蔵した。大腿骨と脛骨の長さをカリパーを用いて測定した。
【0118】
X線撮影分析
X線撮影写真を、Faxitron MX-20 DC4 (Faxitron X-ray Corporation、Wheeling、IL)により、26kVのエネルギーと10秒間の曝露時間を用いて取得した。
【0119】
骨石灰化の欠損は習熟した放射線科医がブラインド方式で分類した。動物は、もし少なくとも1つの骨構造(二次骨形成中心を含む)が不在であれば「異常」とした。
【0120】
統計解析
全ての数値を平均値±標準偏差として表した。サンプルサイズが小さいので、全てのパラメーターについてノンパラメトリック分析が好ましかった。対数-格付け試験(Log-Rank test)を用いて生存曲線を比較した。χ二乗試験を用いて、処置間の正常X線像と異常X線像の分布を比較した。分散分析モデルを用いて、それぞれの日におけるグループ間の平均体重、および研究終了時の平均骨長さを比較した。
【0121】
用量-応答分析
表3に記載の概念的薬物動態学(PD)モデルを用いて用量-応答データを適合させた。
【0122】
表3:用量-応答データを適合させるために用いた薬物動態学モデル
【表3】
【0123】
E=効果、C=用量、S=傾斜、γ=S字性因子、C
max=最大用量、E
max=最大効果、E
0=基線効果(C=0における);ED
50=E
maxの50%を誘導した用量。
【0124】
Akaike情報量規準(AIC)およびSchwarz Bayesian判定規準(SBC)を各データセット用の最良モデルを選択する適合度の尺度として用いた。所与のデータセット用のいくつかのモデルを比較するとき、モデル弁別過程で最小AICおよびSBCに関連するモデルを選択した。相関係数(r
2)および適合の可視評価(VAF)、絶対剰余分布、PDパラメーターの変動係数もモデル弁別に用いた。
【0125】
適当なモデルが選択されると、その適合を予め規定したWinNonlin 5.2の重み付けスキーム(1/Y、1/Yhat、1/Y.Yおよび1/Yhat.Yhat)を用いて再実施した。モデルを選択するために用いたものと同じ判定基準を再び、各データセットに対する適当な重み付けを選択するために利用した。最終のPDパラメーターは最良の重み付けスキームを用いて選択したモデルから作製した。薬物動態学的(PD)分析はWinNonlin(登録商標)Enterprise v5.2を用いて実施した。表および図は、Microsoft Office(Excel)2003、およびSigmaPlot v9.0.1を用いて作製した。
【0126】
全ての解析は全精度(full precision)を用いて実施した。可能な限り、個々のデータは3桁の有効数字で報じた。PDパラメーターとそれらの95%信頼区間はWinNonlin 5.2を用いて決定した。
【0127】
結果
本研究の目的は、ボーラスSC注射量の増加と43日後の治療応答の間の用量応答関係を規定することにあった。指標は生存率、体重、脛骨および大腿骨の骨長、および肢の骨石灰化欠陥であった。
【0128】
各処置グループを代表するマウスの生存率は、ビヒクルと比較すると有意に改善された(p<0.0001)(
図8(a))。処置グループの生存曲線を比較すると、差異は統計的に有意であった(p<0.0001)。メジアン生存日数はビヒクル、Tx-1、およびTx-3グループでそれぞれ19、25、および41日であった(
図8(b))。Tx-6では本研究の完了前に17マウスのうちわずかに4マウスが死亡したので、メジアン生存日数はこのグループでは計算できなかった。しかし、sALP-Fcの日用量とAkp2
-/-マウスの生存の間に明白な関係があった。
【0129】
体重の変化を
図9に記した。処置開始時に、日体重(BW)平均は各処置グループの新生児Akp2
-/- マウスと新生児WTマウスの間に統計的有意差がなかった。研究終了時に、日BW平均は処置したAkp2
-/-マウスとWTマウスの間で類似したままであった。
【0130】
マウスの大腿骨/脛骨の長さの変化を
図10に記した。これらのデータは、研究終了時に、各処置グループのAkp2
-/-マウスとWTマウスの脛骨および大腿骨の平均長に統計的有意差が無いことを示す。ビヒクルマウスが死亡したので、年齢の整合した骨長分析はできなかった。
【0131】
「正常な」および「異常な」肢、胸郭、および下肢試料の代表的なX線写真を
図11に示す。各処置グループ、すなわち、ビヒクル単独-対-1、3、または6mg/kg/日のsALP-Fcを受けたAkp2
-/-を表4に総括した。ここで、正常および異常なX線撮影写真の分布を括弧内に記載のパーセントと共に示した。全処置グループの個々のX線撮影写真の分布を、ビヒクルグループに見られる正常石灰化の基線動物数に対して補正した。正常石灰化を有するビヒクルグループ中の動物数を基線値と考えた。この基線値を、対応する投薬グループに見られる正常および異常動物の数から差引いた。
【0132】
表4:ビヒクルまたは1、3、または6mg/kg/日のsALP-Fcを受けたAkp2
-/-マウスの肢の正常および異常なX線撮影写真間の分布
【表4】
【0133】
sALP-Fc処置に対する用量応答を、X線撮影写真分布(RID)薬物動態学的指標に与える様々な用量の効果を評価することにより試験した。数学的およびグラフ的判定基準によってS字型E
maxモデルが補正済みRID肢データセットに適合する最良モデルであることを確認した。均一誤差モデルをモデル適合過程を通して用いた。
【0134】
sALP-Fcの日用量と正常な肢の骨をもつマウスとの間には明白な関係が存在した。80%有効な用量は肢については3.0mg/kg/日であると評価した(
図12)。
【0135】
これらの実施例はsALP-Fcにより処置したHPPマウスはsALPによるものより有意に大きい治療便益を受けることを実証する。
【0136】
参考文献
次の文書が本明細書に参照により組み込まれる:
【0137】
他の実施形態
本明細書に記載した全ての刊行物、特許出願、および特許は本明細書に参照により組み込まれる。本発明は具体的な実施形態に関連して記載されているものの、本発明はさらなる改変が可能であることは理解されるであろう。それ故に、本出願は本発明のいずれかの変化、使用、または適合を包含することを意図し、当技術分野内での公知のまたは慣習的な実施から生じる本開示から逸脱するものを含む。