【文献】
昭和電工株式会社,SHOWA DENKO KarenzMT,2012年 3月 9日,[online], [retrieved on 2012.03.09],Retrieved from the Internet <URL: http://www.karenz.jp/en/mt/index.html>,URL,http://www.karenz.jp/en/mt/index.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記液晶シール剤100質量部に対して、(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーを1〜50質量部を含有する請求項1に記載の液晶シール剤。
分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂をさらに含み、前記エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂、およびトリスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の2官能または3官能のエポキシ樹脂である請求項1に記載の液晶シール剤。
環球法により測定される軟化点温度が50〜120℃の熱可塑性ポリマーを含み、かつ数平均粒子径が0.05〜5μmである熱可塑性ポリマー微粒子をさらに含有する、請求項1に記載の液晶シール剤。
前記シールパターンを形成する工程が、前記液晶シール剤を用いて、ダミーパターンを形成せずに前記シールパターンのみを形成する工程である請求項9に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.液晶シール剤
本発明の液晶シール剤には、(1)分子内にエポキシ基と(メタ)アクリル基とを含む(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂と、(2)硬化剤と、(3)光開始剤とが含まれる。液晶シール剤には、必要に応じてさらに(1−2)分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(4)(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマー、(5)熱可塑性ポリマー微粒子、(6)充填剤、(7)エポキシ樹脂の硬化触媒などが含まれてもよい。
【0018】
(1)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂
(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂のエポキシ基が(メタ)アクリル基で変性されている樹脂であればよい。好ましくはエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、例えば塩基性触媒の存在下で反応させて得られる(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂である。
【0019】
原料となるエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を2つ以上有する2官能以上のエポキシ樹脂であればよく、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、2,2’−ジアリルビスフェノールA型、ビスフェノールAD型、および水添ビスフェノール型等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、およびトリスフェノールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
原料となるエポキシ樹脂の官能基数は特に制限はないが、3官能や4官能の多官能エポキシ樹脂を(メタ)アクリル変性して得られる(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の硬化物は、架橋密度が高く、密着強度が低下し易い。したがって、原料となるエポキシ樹脂は、2官能エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
2官能エポキシ樹脂のなかでも特に、ビスフェノールA型およびビスフェノールF型等のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビフェニルエーテル型等のエポキシ樹脂と比べて結晶性が低く、塗工安定性に優れる。
【0021】
原料となるエポキシ樹脂を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂等の2官能のエポキシ樹脂とする場合、エポキシ基に対する(メタ)アクリル基の比率が1以上、好ましくは2以上となるように、(メタ)アクリル酸で変性することが好ましい。(メタ)アクリル変性率が低く、エポキシ基の含有率が高い(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂は、液晶に溶解しやすい傾向がある。一方で、(メタ)アクリル変性率が過剰に高く、エポキシ基の含有率が低すぎる(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂は、耐湿性が低い場合がある。
【0022】
(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の重量平均分子量は、約300〜約500であり得る。(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の重量平均分子量は、GPCにより測定する。
【0023】
(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基と(メタ)アクリル基とを有するため、それを含む液晶シール剤は、光硬化性と熱硬化性とを併せ持つ。
【0024】
(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂の配合量は、液晶シール剤100質量部に対して、5〜95質量部とすることが好ましく、10〜60質量部とすることがより好ましい。下限値未満では、シール部材中の樹脂成分が少なく、液晶のシール性が不十分となる可能性がある。また上限値より多い場合には、相対的に他の成分量が少なくなり、硬化性が不十分となる可能性がある。
【0025】
(1−2)分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
本発明の液晶シール剤には、必要に応じて分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が含まれてもよい。分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の例には、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂、およびトリスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の2官能または3官能のエポキシ樹脂が含まれる。上記エポキシ樹脂は、1種類のみ含まれてもよく、2種類以上が含まれてもよい。
【0026】
上記エポキシ樹脂は、軟化点が40℃以上150℃以下であることが好ましい。このような固形エポキシ樹脂は、液晶に対する溶解性、拡散性が低く、得られる液晶パネルの表示特性が良好となる。さらに、液晶シール剤を硬化して得られるシール部材の耐湿性が高まる。
【0027】
上記エポキシ樹脂は、重量平均分子量が1000〜10000、好ましくは500〜5000であることが好ましい。中でも上記重量平均分子量を有する芳香族エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、前述と同様に測定する。
【0028】
芳香族エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等で代表される芳香族ジオール類;およびそれらをエチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコール変性したジオール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られた芳香族多価グリシジルエーテル化合物;フェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとから誘導されたノボラック樹脂;ポリアルケニルフェノールやそのコポリマー等で代表されるポリフェノール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られたノボラック型多価グリシジルエーテル化合物;キシリレンフェノール樹脂のグリシジルエーテル化合物類等が含まれる。
【0029】
上記芳香族エポキシ樹脂は、中でもクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。これらは、1種類のみ含まれてもよく、2種類以上が含まれてもよい。
【0030】
分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の配合量は、液晶シール剤100質量部に対して、1〜30質量部とすることが好ましく、3〜20質量部とすることがより好ましい。
【0031】
(2)硬化剤
硬化剤は、軟化点が50〜90℃の多価フェノール硬化剤、融点が23℃以下の2級多価チオール硬化剤、及び融点が60〜180℃の1級多価アミン硬化剤からなる群から2種以上選択される。
【0032】
硬化剤の具体的な組み合わせには、上記多価フェノール硬化剤及び上記2級多価チオール硬化剤;上記多価フェノール硬化剤及び上記1級多価アミン硬化剤;上記2級多価チオール硬化剤及び上記1級多価アミン硬化剤;上記多価フェノール硬化剤、上記2級多価チオール硬化剤、及び上記1級多価アミン硬化剤;の4通りが含まれる。液晶シール剤には、これら以外の硬化剤が、本発明の効果及び目的を損なわない範囲で、含まれてもよい。
【0033】
上記2級多価チオール硬化剤は室温で液状であり、上記多価フェノール硬化剤は、液晶シール剤中に含有される他の成分に溶解可能である。したがって、上記多価フェノール硬化剤と上記2級多価チオール硬化剤とを組み合わせると、液晶シール剤に粉体の硬化剤が含まれず、粉体成分の量を大幅に低減できる。また、これらの硬化剤は、エポキシ樹脂に均質に溶解しやすいため、液晶シール剤を硬化して得られるシール部材に高い接着強度が発現する。
【0034】
上述したように、上記多価フェノール硬化剤は、液晶シール剤中に含有される他の成分に溶解可能である。そこで、上記多価フェノール硬化剤と上記1級多価アミン硬化剤とを組み合わせると、1級多価アミン硬化剤のみを添加する場合と比べて、液晶シール剤中の粉体成分量を低減できる。
【0035】
また、上記2級多価チオール硬化剤も室温で液状であるため、上記2級多価チオール硬化剤と上記1級多価アミン硬化剤とを組み合わせると、上記1級多価アミン硬化剤のみを添加する場合と比べて、粉体成分量を低減できる。
【0036】
上記1級多価アミン硬化剤と、上記2級多価チオール硬化剤と、上記1級多価アミン硬化剤とを組み合わせる場合には、上述した理由から、液晶シール剤中の粉体成分量を低減できる。
【0037】
液晶シール剤中の硬化剤全体の配合量は、液晶シール剤100質量部に対して、4〜30質量部であり、5〜20質量部であることがより好ましい。硬化剤の総量が上限を超えると、粘度安定性が低下する可能性がある。一方で、硬化剤の総量が下限を下回ると、樹脂の硬化が不十分となり、未硬化成分が液晶に溶出する等して、表示品質や、接着強度が低下する場合がある。
【0039】
(多価フェノール硬化剤)
本発明に使用する多価フェノール硬化剤は、1分子中に2以上の芳香族性水酸基を有する化合物であり、その軟化点は50〜90℃、好ましくは60℃〜80℃である。軟化点がこの範囲であると、液晶シール剤の熱硬化時に軟化し、(1)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂や(1−2)分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の硬化に寄与可能となる。一方、軟化点が下限未満であると、液晶シール剤の粘度安定性に影響を与える可能性がある。また、上限を超える場合には、上記樹脂を十分に硬化できない可能性がある。
【0040】
多価フェノール硬化剤の例には、フェノールノボラック樹脂やフェノールアラルキル樹脂などが含まれる。フェノールノボラック樹脂とは、フェノールまたはクレゾールとホルマリンとを縮合した縮合物であり得る。フェノールアラルキル樹脂とは、フェノールまたはクレゾールとp−キシレンジオールとを酸触媒あるいは塩基性触媒の存在下で縮合した縮合物であり得る。硬化剤は、上記縮合物を精製したものであってもよく、市販のフェノールノボラック樹脂やフェノールアラルキル樹脂などであってもよい。これらは1種単独で含まれてもよく、2種以上が含まれてもよい。
【0041】
多価フェノール硬化剤が過剰に含まれる場合、液晶シール剤の硬化物の接着強度が十分でなくなる可能性がある。また、硬化剤中の多価フェノール硬化剤の割合が多すぎると液晶シール剤の光硬化性を阻害する可能性がある。したがって、多価フェノール硬化剤の配合量は、液晶シール剤の硬化物の接着強度、及び液晶シール剤の光硬化性に基づいて設定することが好ましい。
【0042】
(2級多価チオール硬化剤)
多価チオール硬化剤は、1分子内に2級のチオール基を2個以上有する化合物であり、その融点は23℃以下である。
【0043】
上記2級多価チオール化合物の例には、2級メルカプト基を有するメルカプトカルボン酸と、多価アルコールとをエステル化反応させて得られたエステル系チオール化合物であるメルカプトエステル類;、脂肪族ポリチオール類;、芳香族ポリチオール類;、チオール変性反応性シリコンオイル類等が含まれる。これらのうち、1種のみが含まれてもよく、2種以上が含まれてもよい。
【0044】
2級多価チオール硬化剤は、2級メルカプト基を有するメルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル化反応によって得られるメルカプトエステル類が好適である。2級メルカプト基を有するメルカプトカルボン酸の例には、2−メルカプトプロピオン酸,3−メルカブタン酸,2−メルカプトブタン酸などが含まれる。多価アルコールの例には、エタンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが含まれる。メルカプトエステル類の具体例には、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等が含まれる。
【0045】
2級多価チオール硬化剤が過剰に含まれると、液晶シール剤の保存安定性が十分でなくなる可能性がある。したがって、2級多価チオール硬化剤の配合量は、液晶シール剤の粘度安定性に基づいて設定することが好ましい。
【0046】
(1級多価アミン硬化剤)
1級多価アミン硬化剤は、分子内に1級アミノ基(−NH
2)を2個以上有する化合物であり、融点は60〜180℃、好ましくは70〜140℃である。1級アミノ基には、ヒドラジニル基も含まれる。1級多価アミン硬化剤は、液晶シール剤の保存時に固体であり、通常粉体状である。
【0047】
1級多価アミン硬化剤の例には、有機酸ジヒドラジド化合物、アミン/尿素アダクト、ジシアンジアミド類、イミダゾール誘導体、芳香族アミン、エポキシ変性ポリアミンならびにポリアミノウレアが含まれる。これらのうち、1種のみが含まれてもよく、2種以上が含まれてもよい。
【0048】
有機酸ジヒドラジド化合物の例には、アジピン酸ジヒドラジド(融点180℃)、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(融点120℃)、7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド(融点160℃)などが含まれる。アミン/尿素アダクトの例には、フジキュアFXRシリーズとして市販されている硬化剤などが含まれる。
【0049】
上記1級多価アミン硬化剤が過剰に含まれると、液晶シール剤の粘度が上昇し、塗工安定性が低下する場合がある。1級多価アミン硬化剤の配合量は、液晶シール剤の硬化速度に基づいて設定することが好ましい。
【0050】
1級多価アミン硬化剤が粉体状である場合、その数平均粒子径が0.1〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜3μmである。上限値以下とすることにより、液晶シール剤の塗工安定性が良好となり、細い線幅でシール部材を形成可能となる。また下限値以上とすれば、液晶シール剤の保存時に、1級多価アミン硬化剤とエポキシ樹脂とが反応することを抑制できる。数平均粒子径は、乾式粒度分布計で特定可能である。
【0051】
(3)光開始剤
光開始剤は、(1)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂や、後述の(4)(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーなどを光硬化反応させるための開始剤である。液晶シール剤が光開始剤を含むと、液晶パネルを製造する際に光硬化によるシール剤の仮硬化が可能となり、作業が容易になる。
【0052】
光開始剤は公知のものであり得る。光開始剤の例には、アルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサトン系化合物、α−アシロキシムエステル系化合物、フェニルグリオキシレート系化合物、ベンジル系化合物、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、有機色素系化合物、鉄−フタロシアニン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、アントラキノン系化合物等が含まれる。
【0053】
アルキルフェノン系化合物の例には、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IRGACURE 651)等のベンジルジメチルケタール;2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン
(IRGACURE 907)等のα−アミノアルキルフェノン;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル-ケトン(IRGACURE 184)等のα−ヒドロキシアルキルフェノンなどが含まれる。アシルフォスフィンオキサイド系化合物の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が含まれる。チタノセン系化合物には、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等が含まれる。オキシムエステル化合物の例には、1.2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(0-ベンゾイルオキシム)](IRGACURE OXE 01)などが含まれる。
【0054】
光開始剤の配合量は、液晶シール剤100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3質量部である。下限値以上とすることにより、(1)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂や、後述の(4)(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーなどの硬化性が良好となる。また上限値以下とすることにより、液晶シール剤の塗布時の安定性が良好となる。
【0055】
(4)(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマー
本発明の液晶シール剤には、必要に応じて(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーが含まれてもよい。
液晶シール剤に(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーが含まれると、液晶シール剤の光硬化が良好となり、液晶パネル製造時の作業性が向上する。
【0056】
(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーの種類は、本発明の目的及び効果を損なわない限り特に制限はない。(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーの例には、下記の(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマーが含まれる。
【0057】
ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリアクリレートおよび/またはジまたはトリメタクリレート;ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート、またはそのオリゴマー;ペンタエリスリトールトリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート、またはそのオリゴマー;ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート;トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート;アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;エチレンオキサイド変性リン酸アクリレートおよび/またはジメタクリレート;エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸アクリレートおよび/またはジメタクリレート;ネオペンチルグルコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのオリゴアクリレートおよび/またはオリゴメタクリレート等が挙げられる。
【0058】
(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーの配合量は、液晶シール剤100質量部に対して1〜50質量部とすることが好ましく、より好ましくは5〜20質量部である。
【0059】
(5)熱可塑性ポリマー微粒子
本発明の液晶シール剤には、必要に応じて、環球法により測定される軟化点温度が50〜120℃、好ましくは70〜100℃の熱可塑性ポリマーを含み、かつ数平均粒子径が0.05〜5μm、好ましくは0.1〜3μmである熱可塑性ポリマー微粒子が含まれてもよい。液晶シール剤中に、熱可塑性ポリマー微粒子が含まれることにより、液晶シール剤の硬化物に発生する収縮応力を緩和できる。また、数平均粒子径を上限値以下とすることにより、線幅の細いシール部材を形成する際に、熱可塑性ポリマー微粒子によって、塗工安定性が低下することを防ぐことができる。数平均粒子径の測定方法は、上述した方法と同様とする。
【0060】
熱可塑性ポリマー微粒子の例には、エポキシ基と二重結合基とを含む樹脂を、ラジカル重合可能なモノマーと懸濁重合して得られる微粒子が含まれる。エポキシ基と二重結合基とを含む樹脂の例には、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とメタアクリル酸を三級アミン存在下で反応させた樹脂が含まれる。ラジカル重合可能なモノマーの例には、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびジビニルベンゼンが含まれる。
【0061】
熱可塑性ポリマー微粒子の配合量は、液晶シール剤100質量部に対して、5〜40質量部が好ましく、7〜30質量部がより好ましい。このような範囲とすることで、熱可塑性ポリマー微粒子が液晶シール剤の加熱硬化の際の収縮応力を緩和でき、目的とする線幅でシール部材を形成することができる。
【0062】
(6)充填剤
本発明の液晶シール剤には、さらに充填剤が含まれてもよい。充填剤により、液晶シール剤の粘度、液晶シール剤を硬化して得られるシール部材の強度、および線膨張性等が制御できる。
【0063】
充填剤は、特に制限されず、その例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機充填剤が含まれる。好ましくは二酸化ケイ素、タルクである。
【0064】
充填剤の形状は、特に限定されず、球状、板状、針状等の定形状あるいは非定形状のいずれであってもよい。充填剤は平均一次粒子径が1.5μm以下であることが好ましく、かつその比表面積が0.5m
2/g〜20m
2/gであることが好ましい。充填剤の平均一次粒子径は、JIS Z8825−1に記載のレーザー回折法で測定する。また、比表面積測定は、JIS Z8830に記載のBET法により測定する。
【0065】
充填剤の充填量は、液晶シール剤100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましい。上限を超えると、液晶シール剤中の粉体成分量が多くなり、塗工安定性の低下が生じる可能性がある。
【0066】
(7)エポキシ樹脂の硬化触媒
本発明の液晶シール剤には、必要に応じて、エポキシ樹脂の硬化触媒が含まれてもよい。液晶シール剤にエポキシ樹脂の硬化触媒が含まれると、液晶シール剤を硬化させて得られるシール部材の硬化性が良好となり、シール部材の接着強度も高まる。
エポキシ樹脂の硬化触媒は、本発明の目的及び効果を損なわないものであれば特に制限されず、例えば、イミダゾールおよびその誘導体等、アミンおよびその付加物等が挙げられる。
【0067】
硬化触媒の配合量は、液晶シール剤100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量部である。
【0068】
(8)その他の添加剤
本発明の液晶シール剤には、必要に応じてさらに、熱ラジカル重合開始剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤等の添加剤が含まれてもよい。また、液晶パネルのギャップを調整するためにスペーサー等が配合されていてもよい。
【0069】
本発明の液晶シール剤は、(1)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂、(2)硬化剤、および(3)光開始剤を含むことから、光硬化と熱硬化を併用することが多い液晶滴下工法用の液晶シール剤に好ましく用いられる。液晶滴下工法用の液晶シール剤は、好ましくは(1−2)分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂および(4)(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーをさらに含み、さらに好ましくは(5)熱可塑性ポリマー微粒子、及び(6)充填剤をさらに含む。
【0070】
本発明の液晶シール剤のE型粘度計による25℃、2.5rpmでの粘度は、30〜400Pa・sであることが好ましく、より好ましくは50〜350Pa・sである。粘度が上記範囲にある液晶シール剤は、塗工安定性に優れる。
【0071】
(9)液晶シール剤の製造方法
本発明の液晶シール剤は、(1)分子内にエポキシ基と(メタ)アクリル基とを含む(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂と、(2)硬化剤と、(3)光開始剤と、必要に応じて他の成分とを均一に混合し、製造する。均一に混合する方法は特に制限はないが、例えば3本ロールを用いて十分に混練を行うことが好ましい。又その際、液晶シール剤中に気泡が含まれないよう、十分に脱泡することが好ましい。
【0072】
2.液晶表示パネルの製造方法
本発明の液晶表示パネルは、表示基板と、それと対になる対向基板と、表示基板と対向基板との間に介在している枠状のシール部材と、表示基板と対向基板との間の、シール部材で囲まれた空間に充填された液晶層とを含む。本発明の液晶シール剤の硬化物を、シール部材とすることができる。
【0073】
表示基板及び対向基板は、いずれも透明基板である。透明基板の材質は、特に制限されず、例えばガラス、もしくはポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、及びPMMA等のプラスチックが挙げられる。
【0074】
表示基板または対向基板の表面には、マトリックス状のTFT、カラーフィルタ、ブラックマトリクスなどが配置されうる。表示基板または対向基板の表面には、さらに配向膜が形成される。配向膜には、公知の有機配向剤や無機配向剤などが含まれる。
【0075】
液晶滴下工法による液晶表示パネルの製造方法は、
a1)一方の基板に、本発明の液晶シール剤のシールパターンを形成する第1の工程と、
a2)シールパターンが未硬化の状態において、前記基板のシールパターンで囲まれた領域、または該シールパターンで囲まれた領域に対向する他方の基板の領域に、液晶を滴下する第2の工程と、
a3)一方の基板と、他方の基板とを、シールパターンを介して重ね合わせる第3の工程と、
a4)シールパターンを硬化させる第4の工程と、を含む。
【0076】
a2)の工程における、シールパターンが未硬化の状態とは、液晶シール剤の硬化反応がゲル化点までは進行していない状態を意味する。このため、a2)の工程では、液晶シール剤の液晶への溶解を抑制するために、シールパターンを光照射または加熱して半硬化させてもよい。一方の基板および他方の基板は、それぞれ表示基板または対向基板である。
【0077】
本発明の液晶シール剤は、硬化剤中の粉体量が少ないことから、シールパターンの細線化が可能である。本発明の液晶シール剤を用いたシールパターンの断面積は、1500〜3000μm
2程度であり得る。
【0078】
a4)の工程では、加熱による硬化のみを行ってもよいが、光照射による硬化(仮硬化)を行った後、加熱による硬化(本硬化)を行うことが好ましい。光照射による仮硬化で液晶シール剤を瞬時に硬化させることで、各成分が液晶へ溶解することを抑制できる。
【0079】
光硬化時間は、液晶シール剤の組成にもよるが、例えば10分程度である。光照射エネルギーは、(1)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂や(4)(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーなどを硬化できる程度のエネルギーであればよい。光は、好ましくは紫外線である。熱硬化温度は、液晶シール剤の組成にもよるが、例えば120℃であり、熱硬化時間は2時間程度である。
【0080】
ここで、液晶滴下工法により液晶表示パネルを製造する場合、a3)の工程は減圧状態で行われ、a4)の工程は大気圧開放して行われることが多い。具体的には、a3)の工程で2枚の基板を重ね合わせた後、この液晶表示パネルを大気圧に戻す。この際、2枚の基板及び液晶シール剤で囲まれた領域は密封されており、減圧状態が保たれる。したがって、液晶シール剤で囲まれた領域では、2枚の基板に、基板同士が相互に近接する方向に力が働く。一方、液晶シール剤の枠外は、大気圧開放されているため、2枚の基板に、基板同士が近接する方向に力が働かない。そのため、基板が撓み、液晶表示パネルの中心部から液晶シール剤の枠外方向に向かって、ギャップが広くなるという問題があった。液晶表示パネル内でギャップにムラが生じると、表示信頼性が低下する。
【0081】
このような問題を解決するため、従来、液晶シール剤による枠(メインシール)の外側に、さらに別の枠(ダミーシール)を設ける方法が、一般的に用いられている(例えば、特開2002−328382号公報参照)。この方法によれば、メインシールの枠外、すなわちメインシールとダミーシールとの間の領域も減圧状態となる。これにより、メインシールの外側でも2枚の基板に、基板同士が近接する方向に力が働き、基板が撓むことを抑制できる。したがって、この方法によれば、液晶表示パネル内でのギャップを均一なものとすることができる。
【0082】
しかし、液晶表示パネルの製造効率の向上のためには、ダミーシールを形成しないことが望ましい。そこで、ダミーシールを形成せずに、2枚の基板のギャップを均一にする方法として、例えば液晶シール剤の柔軟性を向上させることが考えられる。液晶充填後、液晶表示パネルを大気圧開放した際、メインシールの内側の基板の移動(基板同士が近接する方向への移動)に伴って、液晶シール剤が変形可能であれば、基板が撓むことを抑制でき、ダミーシールを形成する必要がなくなる。
【0083】
ただし、従来の液晶シール剤では、液晶シール剤中に粉体成分が多く含まれ、液晶シール剤が固く、上述したような変形が困難である。一方、本発明の液晶シール剤は、粉体成分の含有量が少なく、液晶シール剤の柔軟性が高い。そのため、ダミーシールパターンを形成することなく、液晶の封止に必要なシールパターンのみを形成し、液晶表示パネルを製造することが可能である。
【0084】
なお、本発明の液晶シール剤は、上述の液晶滴下工法による液晶表パネルの製造方法のみではなく、液晶注入工法による液晶表示パネルの製造方法にも用いることができる。
【0085】
液晶注入工法による液晶表示パネルの製造方法は、
b1)一方の基板に、本発明の液晶シール剤のシールパターンを形成する第1の工程と、
b2)一方の基板と、他方の基板とを、シールパターンを介して重ね合わせる第2の工程と、
b3)シールパターンを熱硬化させて、液晶を注入するための注入口を有する液晶注入用セルを得る第3の工程と、
b4)液晶を、注入口を介して液晶注入用セルに注入する第4の工程と、
b5)注入口を封止する第5の工程と、を含む。
【0086】
b1)〜b3)の工程では、液晶注入用セルを準備する。まず、2枚の透明な基板(例えば、ガラス板)を準備する。そして、一方の基板に液晶シール剤でシールパターンを形成する。基板のシールパターンが形成された面に、他方の基板を重ね合わせた後、シールパターンを硬化させればよい。この際、液晶注入用セルの一部に、液晶を注入するための注入口を設ける必要があるが、注入口はシールパターンを描画する際に、一部に開口部を設ければよい。また、シールパターンを形成した後に、所望の箇所のシールパターンを除去して注入口を設けてもよい。
【0087】
b3)の工程における熱硬化条件は、液晶シール剤の組成にもよるが、例えば150℃で2〜5時間程度である。
【0088】
b4)の工程は、b1)〜b3)の工程で得られた液晶注入用セルの内部を真空状態にして、液晶注入用セルの注入口から液晶を吸い込ませるという公知の方法に準じて行えばよい。b5)の工程では、液晶シール剤を、液晶注入用セルの注入口に封入した後、硬化させてもよい。
【0089】
本発明の液晶シール剤は、塗工性が良好であり、細いパターン状にシール部材を形成可能である。また、接着強度も良好であり、さらに保存時の粘度安定性にも優れる。
また、本発明の液晶シール剤を用いることにより、ダミーシールパターンを形成することなく、液晶の封止に必要なシールパターンのみを形成し、基板間のギャップ安定性に優れた液晶表示パネルを得ることも可能である。
【実施例】
【0090】
[合成例1]
メタアクリル酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂の合成(70%部分メタアクリル化物)
160gの液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポトートYDF-8170C 東都化成社製 エポキシ当量160g/eq)、重合禁止剤として0.1gのp−メトキシフェノール、触媒として0.2gのトリエタノールアミン、および70.0gのメタアクリル酸をフラスコ内に仕込み、乾燥空気を送り込んで90℃で還流攪拌しながら5時間反応させた。得られた化合物を、超純水にて20回洗浄し、メタアクリル酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂を得た。
【0091】
ここで、原料となるビスフェノールF型エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数は、1モルである。反応させるメタアクリル酸に含まれるメタアクリル基の数は、0.70モルである。よって、得られるメタアクリル酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、70%部分メタアクリル化物となる。
【0092】
[実施例1]
合成例1で得られたメタアクリル酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(70%部分メタアクリル化物)50質量部、多価フェノール硬化剤A(三井化学社製:ミレックス3L、軟化点71℃)4質量部、2級多価チオール硬化剤B(昭和電工社製:PE−1)8質量部、1級多価アミン硬化剤D(ADEKA社製;EH−5057、融点80℃)4質量部、光開始剤として光ラジカル重合開始剤(チバガイギー社製:イルガキュア651)1質量部、硬化触媒(四国化成社製:2MAOK)2質量部、熱可塑性ポリマー微粒子(ガンツ社製:F351)20質量部、充填剤(フィラー)SiO
2 10質量部、シランカップリング剤(信越シリコーン社製:KBM−403)1質量部からなる樹脂組成物を、三本ロールを用いて均一な液となるように十分に混合して、液晶シール剤を得た。後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、240Pa・sであった。
【0093】
[実施例2]
多価フェノール硬化剤Aを8質量部、1級多価アミン硬化剤Dを8質量部とし、2級多価チオール硬化剤を0質量部とした以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、320Pa・sであった。
【0094】
[実施例3]
多価フェノール硬化剤Aを8質量部、2級多価チオール硬化剤Bを8質量部とし、1級多価アミン硬化剤を0質量部とした以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、250Pa・sであった。
【0095】
[実施例4]
2級多価チオール硬化剤Bを8質量部、1級多価アミン硬化剤Dを8質量部とした以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、260Pa・sであった。
【0096】
[実施例5]
合成例1で得られたメタアクリル酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(70%部分メタアクリル化物)の量を40質量部とし、多価フェノール硬化剤Aの量を7質量部、2級多価チオール硬化剤Bの量を14質量部、1級多価アミン硬化剤Dの量を7質量部、熱可塑性ポリマー微粒子の量を19質量部とし、フィラーの量を9質量部とした以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、210Pa・sであった。
【0097】
[実施例6]
合成例1で得られたメタアクリル酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(70%部分メタアクリル化物)の量を56質量部とし、多価フェノール硬化剤Aの量を1質量部、2級多価チオール硬化剤Bの量を3質量部、1級多価アミン硬化剤Dの量を1質量部、熱可塑性ポリマー微粒子の量を23質量部、フィラーの質量を12質量部とした以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、300Pa・sであった。
【0098】
[実施例7]
多価フェノール硬化剤Aの代わりに多価フェノール硬化剤B(DIC社製:TD2131 軟化点80℃)を4質量部用い、2級多価チオール硬化剤Bの量を8質量部、1級多価アミン硬化剤Dの量を4質量部とした以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、250Pa・sであった。
【0099】
[実施例8]
多価フェノール硬化剤Aの代わりに多価フェノール硬化剤C(三菱化学社製:170 軟化点90℃)を4質量部用い、2級多価チオール硬化剤Bの量を8質量部、1級多価アミン硬化剤Dの量を4質量部とした以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、255Pa・sであった。
【0100】
[実施例9]
フェノール硬化剤Aの量を4質量部、2級多価チオール硬化剤Bの量を8質量部とし、1級多価アミン硬化剤として多価アミン硬化剤A(日本ヒドラジン社製:ADH、融点180℃)を4質量部、及び多価アミン硬化剤Dを4質量部用いた以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、270Pa・sであった。
【0101】
[実施例10]
フェノール硬化剤Aの量を4質量部、2級多価チオール硬化剤Bの量を8質量部とし、1級多価アミン硬化剤として多価アミン硬化剤B(富士化成工業製:フジキュアFXR−1020、融点125℃)を4質量部、及び多価アミン硬化剤Dを4質量部用いた以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、260Pa・sであった。
【0102】
[実施例11]
フェノール硬化剤Aの量を4質量部、2級多価チオール硬化剤Bの量を8質量部、1級多価アミン硬化剤として多価アミン硬化剤C(味の素ファインテクノ社製:VDH、融点120℃)を4質量部用いた以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、250Pa・sであった。
【0103】
[比較例1]
硬化剤としてフェノール硬化剤Aを16質量部とし、2級多価チオール硬化剤及び1級多価アミン硬化剤を0質量部とした以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、350Pa・sであった。
【0104】
[比較例2]
硬化剤として2級多価チオール硬化剤Bを16質量部とし、多価フェノール硬化剤及び1級多価アミン硬化剤を0質量部とした以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、210Pa・sであった。
【0105】
[比較例3]
硬化剤として1級多価アミン硬化剤Dを16質量部とし、多価フェノール硬化剤及び2級多価チオール硬化剤を0質量部とした以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、370Pa・sであった。
【0106】
[比較例4]
合成例1で得られたメタアクリル酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(70%部分メタアクリル化物)の量を38質量部とし、フェノール硬化剤Aの量を8質量部、2級多価チオール硬化剤Bの量を16質量部、多価アミン硬化剤Dの量を8質量部とし、フィラーの量を18重量部、熱可塑性ポリマー微粒子の量を8質量部とした以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、280Pa・sであった。
【0107】
[比較例5]
合成例1で得られたメタアクリル酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(70%部分メタアクリル化物)の量を58質量部とし、フェノール硬化剤Aの量を0.5質量部、2級多価チオール硬化剤Bの量を2質量部、多価アミン硬化剤Dの量を0.5質量部とし、熱可塑性ポリマー微粒子の量を23質量部、フィラーの量を12質量部とした以外は、実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、270Pa・sであった。
【0110】
[比較例8]
エポキシ樹脂(日本化薬株式会社社製:EOCN−1020−75)10質量部、(メタ)アクリレートモノマー及び/またはオリゴマー(大阪有機化学工業社製:ビスコート♯300)53質量部、1級多価チオール硬化剤A 5質量部、1級多価アミン化合物(味の素ファインテクノ社製社製:アミキュア VDH)5質量部、光ラジカル重合開始剤(チバガイギー社製:イルガキュア184)2質量部、熱可塑性ポリマー微粒子(ガンツ社製:F351)12質量部、SiO
2(フィラー)12質量部、シランカップリング剤(信越シリコーン社製:KBM−403)1質量部からなる硬化性樹脂組成物を、三本ロールを用いて均一な液となるように十分に混合して、液晶シール剤を得た。また後述する方法で粘度(初期粘度)を測定したところ、250Pa・sであった。
【0111】
[評価]
実施例1〜11、及び比較例1〜
5、8について粘度安定性、シール塗布性、接着強度、表示状態、高温高湿信頼性、ギャップ精度を測定した。各測定方法は以下の通りである。これらの結果を表1〜3に示す。
【0112】
1)粘度安定性
実施例および比較例で得られた液晶シール剤を、ディスペンス用シリンジ内の液晶シール剤の重量が10gになるように採取した後、脱泡処理をした。そのうち2gについて、E型粘度計にて、室温(25℃)、2.5rpmで初期粘度を測定した。次いで、このサンプルを、23℃50%RHで1週間保存した後、再度、同様の条件で粘度を測定した。このときの、初期粘度に対する1週間保存後の粘度の上昇率を求めた。
初期粘度に対する保存後粘度の上昇率が1.1倍以下であるものを◎(非常に優れる);1.1倍を超え1.2倍以下であるものを○(優れる);1.2倍を超え1.5倍以下であるものを△(やや劣る);1.5倍を超えるものを×(劣る);とした。
【0113】
2)シール塗布性
実施例および比較例で得られた液晶シール剤20gをシリンジに真空下で充填した。次いで、口径0.35mmの針先をつけたシリンジから1g吐出後、23℃で1日放置した。次いで、このシリンジをディスペンサー(日立プラントテクノロジー社製)にセットし、360mm×470mmの液晶表示パネル用ガラス基板(日本電気硝子社製)の上に35mm×40mmのシールパターンを50個形成した。このとき、吐出圧力を0.3MPa、断面積3000μm
2、塗布速度を100mm/sとした。得られたシールパターンの形状を、以下のように評価した。
シール切れ、シールかすれが全く発生していない枠型が50個:◎(非常に優れる)
シール切れ、シールかすれが全く発生していない枠型が48個〜49個:○(優れる)
シール切れ、シールかすれが全く発生していない枠型が48個未満:×(劣る)
【0114】
3)表示状態と高温高湿信頼性試験
上記実施例及び比較例で得られた液晶シール剤を、ディスペンサー(ショットマスター:武蔵エンジニアリング製)により、透明電極と配向膜が予め形成された40mm×45mmガラス基板(EHC社製、RT−DM88−PIN)上に、35mm×40mmの四角形のシールパターン(断面積3500μm
2)(メインシール)を形成した。続いて、その外周に四角形のシールパターン(38mm×43mmの四角形のシールパターン)を形成した。
次いで、貼り合せ後のパネル内容量に相当する液晶材料(MLC−119000−000:メルク社製)を、メインシールの枠内にディスペンサーにて精密に滴下した。次いで、対になるガラス基板を減圧下で貼り合せた後、大気開放して貼り合わせた。そして、貼り合わせた2枚のガラス基板を3分間遮光ボックス内で保持した後、2000mJ/cm
2の紫外線を照射し、さらに100℃で1時間加熱した。
【0115】
得られた液晶表示パネルを、70℃、95%RHで500時間、恒温槽で保存した。保存前後のシール部周辺の液晶に生じる色むらを目視で観察した。色むらが全く確認されなかったものを◎(非常に優れる);ほとんど確認されなかったものを○(優れる);確認されたものを△;著しく確認されたものを×(劣る)とした。
【0116】
さらに、恒温槽で保存後、取り出した液晶表示パネルを、直流電源装置により5Vの印加電圧で駆動させた。液晶シール剤近傍の液晶表示機能が、駆動初期から正常に機能するか否かによって、液晶表示パネルの表示特性を評価した。表示特性は、シール際まで液晶表示機能が正常に発揮できている場合を◎(優れる)、シール際の近傍0.1mm未満で液晶表示機能の異常が確認された場合を○(良い)、シール際の近傍0.1mmを超え0.3mm未満で液晶表示機能の異常が確認された場合を△(やや劣る)、シール際の近傍0.3mmを超えて表示機能の異常が確認された場合を×(劣る)とした。
【0117】
4)接着強度
前記3)において、恒温槽で保存した後の液晶表示パネルのサンプルについて、引張り試験装置(インテスコ製)を用いて、引張り速度2m/分で平面引張り強度を測定した。接着性は、以下のように評価した。
接着強度が20MPa以上:◎(優れる)
接着強度が15MPa以上20MPa未満:○(優れる)
接着強度が7MPa以上15MPa未満:△(やや劣る)
接着強度が7MPa未満:×(劣る)
【0118】
5)ギャップ精度
実施例及び比較例で得られた液晶シール剤を、ディスペンサー(ショットマスター:武蔵エンジニアリング製)により、透明電極と配向膜が予め形成された40mm×45mmガラス基板(EHC社製、RT−DM88−PIN)上に、35mm×40mmの四角形のシールパターン(断面積3000μm
2)(メインシール)を形成した。その後、外周のシールパターンは形成しなかった。対になる基板を貼り合せた後のシール剤の線幅を測定し、その値より、ギャップ精度を確認した。シール線幅が、1mm未満は、○(優れる)、1mm以上は×(劣る)とした。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
表1及び表2から軟化点が50〜90℃の多価フェノール硬化剤、融点が23℃以下の2級多価チオール硬化剤、融点が60〜180℃の1級多価アミン硬化剤からなる群から選択される2種類以上の硬化剤を用いた場合には、粘度安定性、シール塗布性、接着強度、表示状態、高温高湿信頼性、及びギャップ精度がいずれも優れることがわかる(実施例1〜11)。
【0123】
一方、軟化点が50〜90℃の多価フェノール硬化剤のみを用いた場合(比較例1)には、接着強度が低く、表示状態及び高温高湿信頼性が実施例1〜11と比較してやや劣る。また、融点が23℃以下の2級多価チオール硬化剤のみを用いた場合(比較例2)には、粘度安定性、接着強度、表示状態、高温高湿信頼性で、いずれも実施例1〜11より劣る。さらに、融点が60〜180℃の1級多価アミン硬化剤のみを用いた場合(比較例3)には、粘度安定性が低く、シール塗布性、ギャップ精度が低下する。
【0124】
また、軟化点が50〜90℃の多価フェノール硬化剤、融点が23℃以下の2級多価チオール硬化剤、融点が60〜180℃の1級多価アミン硬化剤からなる群から選択される2種類以上の硬化剤を用いた場合であっても、その量が、液晶シール剤100質量部に対して4質量部未満となる場合(比較例5)には、接着強度、表示状態、及び高温高湿信頼性が低下する。一方、上記硬化剤の量が液晶シール剤100質量部に対して30質量部超となる場合(比較例4)には、粘度安定性、接着強度、表示状態、高温高湿信頼性が低下し、ギャップ精度が劣る。
【0125】
さらに、2級多価チオール硬化剤の代わりに、1級多価チオール硬化剤を用いた場合
(比較例8)には、粘度安定性が低下し、接着強度、表示状態、高温高湿信頼性も低下する
。