特許第5987016号(P5987016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987016
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】画像読取装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20160823BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20160823BHJP
   G03B 27/50 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H04N1/04 D
   H04N1/00 C
   G03B27/50 Z
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-61657(P2014-61657)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-186086(P2015-186086A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年2月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128842
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 温
(74)【代理人】
【識別番号】100143476
【弁理士】
【氏名又は名称】西森 則夫
(72)【発明者】
【氏名】松井 信哉
【審査官】 花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−176688(JP,A)
【文献】 特開2010−130111(JP,A)
【文献】 特開2010−166318(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0165234(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 − 1/20
G03B 27/50
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーの画像データを生成するカラーモードおよびモノクロの画像データを生成するモノクロモードを搭載する画像読取装置であって、
読取対象に光を照射する光源と、
ラインセンサーを複数本含むイメージセンサーと、
前記イメージセンサーから出力されるアナログ信号を増幅する複数の増幅器と、
前記複数の増幅器のそれぞれに対して設けられ、対応する前記増幅器のゲイン調整を行う複数のゲイン調整回路と、
前記複数の増幅器のそれぞれに対して設けられ、対応する前記増幅器により増幅された前記アナログ信号をデジタルの画像データに変換する複数のA/D変換器と、
前記複数の増幅器のそれぞれのゲイン調整を対応する前記ゲイン調整回路に行わせる読取制御部と、
読取ジョブの実行指示を受け付けるとともに、ジョブ実行時のモードを前記カラーモードにするか前記モノクロモードにするかの選択を受け付ける受付部と、を備え、
前記複数の増幅器のうち少なくとも1つは、前記カラーモードおよび前記モノクロモードの両モードで共用される共用増幅器であり、
前記増幅器のゲイン設定値を求めるためのゲイン設定処理を開始する時点として予め定められた開始時点になったとき、前記読取制御部は、前記カラーモードおよび前記モノクロモードのうち一方モードでの前記共用増幅器のゲイン設定値を求める処理である一方モードゲイン設定処理を開始するとともに、前記一方モードゲイン設定処理が完了した後、前記カラーモードおよび前記モノクロモードのうち他方モードでの前記共用増幅器のゲイン設定値を求める処理である他方モードゲイン設定処理を行い、
前記他方モードゲイン設定処理を行っているときに、前記一方モードでの読取ジョブの実行指示を前記受付部が受け付けた場合、前記読取制御部は、前記他方モードゲイン設定処理を中断し、前記一方モードでの読取ジョブを実行し、
前記カラーモードおよび前記モノクロモードの各読取回数を記憶する記憶部をさらに備え、
前記開始時点になったとき、前記読取制御部は、前記カラーモードおよび前記モノクロモードの各読取回数の偏り度合を求め、前記偏り度合が所定条件を満たしていれば、前記カラーモードおよび前記モノクロモードのうち読取回数が多いモードを優先モードに設定し、前記偏り度合が前記所定条件を満たしていなければ、前記カラーモードおよび前記モノクロモードのうち前記ゲイン設定処理を最初に行うべきモードとして予め定められたモードを前記優先モードに設定し、前記優先モードで用いる前記増幅器の前記優先モードでのゲイン設定値を求める処理から開始することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記開始時点になったとき、前記読取制御部は、前記カラーモードおよび前記モノクロモードのうち読取回数が多いモードの読取回数の累計読取回数に対する比率を求め、前記比率が予め定められた閾値以上であれば、前記所定条件が満たされたとして、読取回数が多いモードを前記優先モードに設定する一方、前記比率が前記閾値を下回っていれば、前記所定条件が満たされていないとして、前記予め定められたモードを前記優先モードに設定することを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記読取制御部は、前記累計読取回数が所定回数を超えるまでは、前記予め定められたモードを前記優先モードに設定することを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記他方モードゲイン設定処理の中断があった場合、前記読取制御部は、前記一方モードでの読取ジョブが完了した後、前記他方モードゲイン設定処理を最初から再開することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記他方モードゲイン設定処理を行っているときに、前記他方モードでの読取ジョブの実行指示を前記受付部が受け付けた場合、前記読取制御部は、前記他方モードゲイン設定処理を完了させてから、前記他方モードでの読取ジョブを実行することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の画像読取装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機や複合機などの画像形成装置は、原稿を読み取って画像データを生成する画像読取装置を備える。そして、画像読取装置には、たとえば、光源、イメージセンサー、増幅器およびA/D変換器などが設けられる。
【0003】
光源は、読取対象の原稿に照射する光を生成する。イメージセンサーは、原稿で反射された反射光を受光し、その受光した反射光の光量に応じたアナログ信号を出力する。増幅器は、イメージセンサーからのアナログ信号に対して増幅処理を行う。A/D変換器は、増幅器により増幅されたアナログ信号に対してA/D変換処理を行う。
【0004】
このような画像読取装置では、主電源の投入時やスリープモードからの復帰時に、増幅器のゲイン設定値が求められる(以下、ゲイン設定処理と称する)。このゲイン設定処理では、シェーディング補正で用いる白基準板を読み取ったイメージセンサーのアナログ信号に増幅処理およびA/D変換処理を施す。そして、白基準板の読み取りによって得られた画像データ(A/D変換後のデータ)に基づき、増幅器のゲイン設定値を求める。そして、読取ジョブの実行時には、増幅器のゲインがゲイン設定処理により求められた値に調整される。
【0005】
ここで、特許文献1では、カラーの画像データを生成するカラーモードおよびモノクロの画像データを生成するモノクロモードの2つの読取モードが搭載される。そして、イメージセンサーとして、R,G,Bの各色に対応するカラーモード用の3本のラインセンサー(以下、カラーセンサーと称する)およびモノクロモード用のラインセンサー(以下、モノクロセンサーと称する)を含む4ラインイメージセンサーが使用される。
【0006】
また、特許文献1では、カラーモード用の画像データパスとモノクロモード用の画像データパスが共通とされる。具体的には、3本のカラーセンサーについては、それぞれに増幅器およびA/D変換器が1つずつ接続される。すなわち、3本のカラーセンサーの各アナログ信号は、別々の画像データパスに出力され、増幅処理およびA/D変換処理が施される。モノクロセンサーのアナログ信号については、カラーモード用の画像データパスのうち、1または複数の画像データパスに出力される。したがって、カラーモードで用いる増幅器(A/D変換器)のうち、1または複数の増幅器(A/D変換器)はモノクロモードでも使用されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−61433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
1または複数の増幅器をカラーモードおよびモノクロモードで共用する構成では、カラーセンサーおよびモノクロセンサーの各感度に差が有り、最適なゲイン設定値が異なるので、カラーモードのゲイン設定処理およびモノクロモードのゲイン設定処理をそれぞれ別個に行う必要がある。すなわち、カラーモードおよびモノクロモードのうち、まず、一方モードでの白基準板の読み取りによって得られた画像データに基づき一方モードで用いる増幅器のゲイン設定値を求め、その後、他方モードでの白基準板の読み取りによって得られた画像データに基づき他方モードで用いる増幅器のゲイン設定値を求めなければならない。このため、主電源の投入(スリープモードからの復帰)から読取可能な状態になるまでの時間(ユーザーの待ち時間)が長くなるので、ユーザーにとっては利便性が悪い。
【0009】
そこで、特許文献1では、カラーモードで用いる増幅器のカラーモードのゲイン設定値については、カラーセンサーにより白基準板を読み取り、それによって得られた画像データ(A/D変換後のデータ)に基づき求める(通常のゲイン設定処理を行う)。一方で、モノクロモードで用いる増幅器のモノクロモードのゲイン設定値については、モノクロセンサーによる白基準板の読み取りは行わず、カラーモードのゲイン設定値に基づき計算により求める。これにより、白基準板の読取回数が少なくなるので、ユーザーの待ち時間を減らすことができる。
【0010】
しかし、4ラインイメージセンサーでは、4本のラインセンサーは互いに間隔を隔てて配置される。すなわち、白基準板の読取面において、モノクロセンサーの読取位置はカラーセンサーの読取位置に対してずれる(同一画素を読み取る場合、各センサーの読取位置が副走査方向にずれる)。このため、カラーセンサーおよびモノクロセンサーのうち、一方のラインセンサーの読取位置が部分的に汚れたりする場合がある。この場合、モノクロモードで用いる増幅器のモノクロモードのゲイン設定値(カラーモードのゲイン設定値に基づき計算により求めた値)は、現在のモノクロモードの読取位置の状態(汚れ具合)を反映した値にはならない。すなわち、モノクロモードのゲイン設定値が不正確なものとなる。その結果、モノクロモードでの読取画質が低下するという不都合が生じる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、読取画質を低下させることなくユーザーの利便性を向上させる(ユーザーの待ち時間を減らす)ことが可能な画像読取装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の画像読取装置は、カラーの画像データを生成するカラーモードおよびモノクロの画像データを生成するモノクロモードを搭載する画像読取装置であって、読取対象に光を照射する光源と、ラインセンサーを複数本含むイメージセンサーと、イメージセンサーから出力されるアナログ信号を増幅する複数の増幅器と、複数の増幅器のそれぞれに対して設けられ、対応する増幅器のゲイン調整を行う複数のゲイン調整回路と、複数の増幅器のそれぞれに対して設けられ、対応する増幅器により増幅されたアナログ信号をデジタルの画像データに変換する複数のA/D変換器と、複数の増幅器のそれぞれのゲイン調整を対応するゲイン調整回路に行わせる読取制御部と、読取ジョブの実行指示を受け付けるとともに、ジョブ実行時のモードをカラーモードにするかモノクロモードにするかの選択を受け付ける受付部と、を備える。また、複数の増幅器のうち少なくとも1つは、カラーモードおよびモノクロモードの両モードで共用される共用増幅器である。そして、増幅器のゲイン設定値を求めるためのゲイン設定処理を開始する時点として予め定められた開始時点になったとき、読取制御部は、カラーモードおよびモノクロモードのうち一方モードでの共用増幅器のゲイン設定値を求める処理である一方モードゲイン設定処理を開始するとともに、一方モードゲイン設定処理が完了した後、カラーモードおよびモノクロモードのうち他方モードでの共用増幅器のゲイン設定値を求める処理である他方モードゲイン設定処理を行い、他方モードゲイン設定処理を行っているときに、一方モードでの読取ジョブの実行指示を受付部が受け付けた場合、読取制御部は、他方モードゲイン設定処理を中断し、一方モードでの読取ジョブを実行する。
【0013】
本発明の構成では、他方モードゲイン設定処理を行っているときに、一方モードでの読取ジョブの実行指示を受け付けた場合、他方モードゲイン設定処理を中断し、一方モードでの読取ジョブを実行する。これにより、一方モードでの読取ジョブの実行を所望するユーザーの待ち時間を減らすことができ、ユーザーの利便性が向上する。また、他方モードゲイン設定処理を行っているときに、一方モードでの読取ジョブの実行指示を受け付けると、他方モードゲイン設定処理を中断することによってユーザーの待ち時間を減らすので、ユーザーの待ち時間を減らすために、他方モードのゲイン設定値を一方モードのゲイン設定値に基づき計算により求める、といった方法をとらなくてもよい。これにより、他方モードでの読取画質が低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、読取画質を低下させることなく、ユーザーの利便性を向上させる(ユーザーの待ち時間を減らす)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による複合機の概略図
図2図1に示した複合機の装置全体のハードウェア構成を説明するためのブロック図
図3図1に示した複合機の画像読取部のハードウェア構成を説明するためのブロック図
図4図1に示した複合機の画像読取部のハードウェア構成を説明するためのブロック図
図5図1に示した複合機において行われるゲイン設定処理の開始タイミングを説明するための図
図6図1に示した複合機において行われるゲイン設定処理の開始タイミングを説明するための図
図7図1に示した複合機において行われるゲイン設定処理の制御の流れを説明するためのフローチャート
図8図1に示した複合機において行われるゲイン設定処理の制御の流れを説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態による画像読取装置(画像形成装置)について、スキャナー機能、コピー機能およびプリンター機能などを搭載する複合機を例にとって説明する。
【0017】
(複合機の全体構成)
図1に示すように、複合機100は、原稿搬送ユニット1が装着された画像読取部2を備える。画像読取部2は、読取対象である原稿Dを読み取って画像データを生成する。なお、複合機100はモノクロ機であるが、読取モードとして、カラーの画像データを生成するカラーモードおよびモノクロの画像データを生成するモノクロモードを搭載する。
【0018】
また、複合機100は、給紙部3、用紙搬送部4、画像形成部5および定着部6により構成される印刷部7を備える。印刷部7は、用紙搬送路70に沿って用紙Pを搬送するとともに、画像データに基づきトナー像を形成する。画像データは、画像読取部2による原稿Dの読み取りによって得られる場合もあるし、後述するコンピューター300(図2参照)から送信される場合もある。そして、印刷部7は、搬送中の用紙Pにトナー像を転写し、そのトナー像を定着させた後、トナー像が転写され定着された印刷済みの用紙Pを排出トレイ71に排出する。
【0019】
給紙部3は、ピックアップローラー31および給紙ローラー対32を含み、用紙カセット33に収容された用紙Pを用紙搬送路70に供給する。用紙搬送部4は、複数の搬送ローラー対41を含み、用紙搬送路70に沿って用紙Pを搬送する。
【0020】
画像形成部5は、感光体ドラム51、帯電装置52、露光装置53、現像装置54、転写ローラー55およびクリーニング装置56を含む。そして、画像形成部5は、画像データに基づきトナー像を形成し、そのトナー像を用紙Pに転写する。定着部6は、加熱ローラー61および加圧ローラー62を含み、用紙Pに転写されたトナー像を加熱および加圧して定着させる。
【0021】
また、複合機100は、操作パネル8を備える。この操作パネル8は、タッチパネル付きの液晶表示パネル81を含む。液晶表示パネル81は、各種設定を受け付けるためのソフトキーやメッセージなどを表示する。さらに、操作パネル8には、スタートキー82などのハードキーも設けられる。そして、操作パネル8は、スキャナージョブやコピージョブなど原稿Dの読み取りを伴うジョブ(以下、読取ジョブと称する)の実行指示を受け付けるとともに、ジョブ実行時の読取モードをカラーモードにするかモノクロモードにするかの選択を受け付ける。すなわち、操作パネル8は、本発明の「受付部」に相当する。
【0022】
(画像読取部の構成)
画像読取部2は、原稿搬送ユニット1が開閉可能に支持される読取フレーム20Fを有する。読取フレーム20Fには、コンタクトガラス20aおよび20bが嵌め込まれる。そして、画像読取部2は、載置読取および搬送読取を実行する。載置読取では、コンタクトガラス20a上に載置された原稿Dを読み取る。搬送読取では、原稿搬送ユニット1により原稿Dを搬送し、コンタクトガラス20b上を通過する原稿Dを読み取る。
【0023】
画像読取部2の原稿搬送ユニット1には、コンタクトガラス20b上を経由する原稿搬送路10が設けられる。原稿搬送路10の搬送方向上流側の端部には、読み取り前の原稿Dがセットされる原稿セットトレイ11が配置され、原稿搬送路10の搬送方向下流側の端部には、読み取り後の原稿Dが排出される排紙トレイ12が配置される。また、原稿搬送路10の上流側には給紙ローラー13が配置される。さらに、原稿搬送路10の上流側から下流側に渡って搬送ローラー対14が複数配置される。
【0024】
そして、搬送読取時には、給紙ローラー13により、原稿セットトレイ11にセットされた原稿Dを原稿搬送路10に供給する。その後、搬送ローラー対14により、原稿搬送路10に供給された原稿Dを原稿搬送路10に沿って搬送する。これにより、原稿Dがコンタクトガラス20b上を通過する。
【0025】
また、画像読取部2は、光源21、イメージセンサー22、ミラー23およびレンズ24などを備える。これら各部材は、読取フレーム20Fの内部に配置される。
【0026】
光源21は、複数のLED素子を含み、原稿Dに照射する光を生成する。複数のLED素子は、読取ライン方向である主走査方向(図2の紙面に対して垂直な方向)にライン状に配列される。なお、冷陰極管などを光源21として用いてもよい。そして、載置読取時には、光源21がコンタクトガラス20aに向けて光を出射する(コンタクトガラス20aを透過した光が原稿Dを照射する)。一方で、搬送読取時には、光源21がコンタクトガラス20bに向けて光を出射する(コンタクトガラス20bを透過した光が原稿Dを照射する)。原稿Dで反射された反射光は、ミラー23で反射され、レンズ24に導かれる。レンズ24は、反射光を集光する。
【0027】
イメージセンサー22は、原稿Dで反射された反射光(レンズ24で集光された光)を受光することにより原稿Dをライン単位で読み取る。具体的には、イメージセンサー22は、反射光を受光すると、ライン単位で画素毎に光電変換して電荷を蓄積し、蓄積電荷に応じたアナログ信号を出力する。すなわち、イメージセンサー22の画素毎のアナログ信号は、反射光の光量に応じて変動する。
【0028】
また、読取フレーム20Fの内部には、主走査方向と直交する副走査方向に移動可能な移動枠25が設置される。移動枠25には、巻取ドラム26に巻回されるワイヤー27が連結される。そして、移動枠25の副走査方向への移動は、巻取ドラム26が回転することによってなされる。なお、図1にはワイヤー27を1本のみ図示しているが、実際には装置正面から見て手前側と奥側に2本のワイヤー27が架け回される。
【0029】
この移動枠25は、互いに独立して移動する第1移動枠25aおよび第2移動枠25bを含む。第1移動枠25aには、光源21および1つのミラー23が取り付けられ、第2移動枠25bには、残りのミラー23が取り付けられる。これにより、光源21およびミラー23は、移動枠25が副走査方向に移動することにより、移動枠25と共に副走査方向に移動する。
【0030】
載置読取時には、移動枠25が副走査方向(正面から見て左から右に向かう方向)に移動する。そして、移動枠25が副走査方向に移動している最中に、コンタクトガラス20aに載置された原稿Dに対して光源21が光を照射し、原稿Dで反射された反射光の光電変換をイメージセンサー22が連続して繰り返し行う。これにより、原稿Dの読み取りがライン単位で行われる。なお、移動枠25を副走査方向に移動させても光源21からイメージセンサー22へ至る光路長を一定に維持するため、第1移動枠25aの移動速度は第2移動枠25bの移動速度の2倍とされる。
【0031】
一方で、搬送読取時には、移動枠25がコンタクトガラス20bの下方に移動して静止する。この後、原稿搬送ユニット1が原稿搬送路10に沿って原稿Dを搬送する。このとき、コンタクトガラス20b上を通過する原稿Dに対して光源21が光を照射し、原稿Dで反射された反射光の光電変換をイメージセンサー22が連続して繰り返し行う。これにより、原稿Dの読み取りがライン単位で行われる。
【0032】
また、画像読取装置2には、シェーディング補正で用いる白基準板28が設けられる。この白基準板28は、原稿搬送ユニット1に配置され、原稿搬送ユニット1が閉じられることによってコンタクトガラス20bと対面する。このため、原稿搬送ユニット1が閉じられた状態において、原稿Dを搬送せずにコンタクトガラス20bの下方で光源21を点灯させると、光源21からの光が白基準板28によって反射され、その反射光をイメージセンサー22が受光する。これにより、白基準板28の読み取りを行える。この場合には、白基準板28が読取対象となる。
【0033】
(装置全体のハードウェア構成)
図2に示すように、複合機100は、主制御部110を備える。主制御部110は、メインCPU111、画像処理部112および記憶部113を含む。画像処理部112は、画像処理専用のASICなどからなり、画像データに対して画像処理(拡大/縮小、濃度変換およびデータ形式変換など)を施す。記憶部113は、ROMおよびRAMなどからなり、プログラムおよびデータを記憶する。そして、主制御部110は、記憶部113に記憶されたプログラムおよびデータに基づいて、装置各部の動作を制御する。
【0034】
具体的には、主制御部110は、読取制御部120と接続される。そして、主制御部110は、読取制御部120に指示し、画像読取部2の読取動作および原稿搬送ユニット1の搬送動作を制御させる。なお、詳細は後述する。
【0035】
また、主制御部110は、印刷部7(給紙部3、用紙搬送部4、画像形成部5および定着部6)と接続され、印刷部7の印刷動作を制御する。
【0036】
また、主制御部110は、操作パネル8と接続され、操作パネル8の表示動作を制御したり、操作パネル8に対して行われた操作を検知したりする。たとえば、主制御部110は、原稿搬送ユニット1に原稿Dがセットされた状態でスタートキー82に対する押下操作を検知すると、読取ジョブの実行指示を受け付けたと判断する。また、主制御部110は、ジョブ実行時の読取モードの選択を受け付けるための画面(図示せず)を液晶表示パネル81に表示させ、液晶表示パネル81に対するタッチ操作を検知し、カラーモードおよびモノクロモードのうちいずれが選択されたかを判断する。
【0037】
また、主制御部110は、通信部130と接続される。通信部130は、外部のコンピューター300(ユーザー端末やサーバーなど)と通信可能に接続される。そして、主制御部110は、コンピューター300からの画像データを通信部130が受信すると、その画像データに基づく画像の印刷を印刷部7に行わせる。あるいは、主制御部110は、通信部130に指示し、画像読取部2による原稿Dの読み取りによって得られた画像データのコンピューター300への送信を行わせる。
【0038】
また、主制御部110は、電源部140と接続される。電源部140は、主制御部110から指示を受け、装置各部を動作させるのに必要な電圧を生成し、装置各部に電力を供給する。
【0039】
ここで、複合機100は、電力供給モードとして、通常電力モードとスリープモード(省電力モード)とを搭載する。通常電力モードというのは、装置各部に対して通常の電力供給を行うモードである。スリープモードというのは、装置各部に対する電力供給を通常電力モードよりも制限するモードである。
【0040】
主制御部110は、通常電力モードからスリープモードへの移行条件が満たされると、電源部140に指示し、通常電力モードからスリープモードに移行させる。たとえば、主制御部110は、複合機100が使用されないまま経過した時間である未使用時間を計時し、未使用時間が予め定められた閾値時間を超えたとき、移行条件が満たされたとして、通常電力モードからスリープモードに移行させる。あるいは、主制御部110は、通常電力モードからスリープモードに移行するための操作を操作パネル8が受け付けたときも、移行条件が満たされたとして、通常電力モードからスリープモードに移行させる。
【0041】
そして、電源部140は、スリープモードのとき、スリープモードから通常電力モードへの復帰条件が満たされたこと示す復帰信号を復帰条件検知部から受けると、スリープモードから通常電力モードに復帰させる。なお、電源部140は、復帰信号を復帰条件検知部から受けるため、スリープモードであっても、復帰条件検知部に対する電力供給は続ける。
【0042】
たとえば、復帰条件検知部に相当する部分としては、操作パネル8が挙げられる。操作パネル8は、スリープモードのときに何らかの操作を受けると、復帰信号を電源部140に送信する。また、通信部130も復帰条件検知部となる。通信部130は、スリープモードのときにコンピューター200から画像データを受信すると、復帰信号を電源部140に送信する。
【0043】
さらに、図示しないが、原稿搬送ユニット1が開閉されたことを検知するためのセンサー、原稿セットトレイ11に原稿Dがセットされたことを検知するためのセンサー、および、用紙カセット33の着脱を検知するためのセンサー、なども復帰条件検知部として機能する。すなわち、電源部140は、スリープモードのときに、原稿搬送ユニット1が開閉されたり、原稿セットトレイ11に原稿Dがセットされたり、用紙カセット33が着脱されたりすると、スリープモードから通常電力モードに復帰させる。
【0044】
(画像読取部のハードウェア構成)
図3に示すように、読取制御部120は、CPU121および記憶部122を含む。そして、読取制御部120は、主制御部110から指示を受け、画像読取部2の読取動作および原稿搬送ユニット1の搬送動作を制御する。
【0045】
具体的には、読取制御部120は、給紙ローラー13および搬送ローラー対14を回転させるための搬送モーターM1と接続され、給紙ローラー13および搬送ローラー対14を適切に回転させる。また、読取制御部120は、巻取ドラム26を回転させるための巻取モーターM2と接続され、巻取ドラム26を適切に回転させる。すなわち、読取制御部120は、光源21(移動枠25)を副走査方向に適切に移動させる。
【0046】
読取制御部120には、光源21およびイメージセンサー22も接続される。そして、読取制御部120は、光源21およびイメージセンサー22の各動作を制御する。また、読取制御部120は、イメージセンサー22から出力されるアナログ信号を処理するため、増幅器220、A/D変換器230、補正部240および画像メモリー250と接続される。増幅器220は、イメージセンサー22から出力されるアナログ信号を増幅する。A/D変換器230は、増幅器220により増幅されたアナログ信号をデジタルの画像データに変換する。補正部240は、シェーディング補正などの補正を行う。画像メモリー250は、画像データを蓄積し、その画像データを主制御部110(画像処理部112)に転送する。
【0047】
ここで、図4に示すように、イメージセンサー22は、列状に並べられた複数の光電変換素子をそれぞれ有する4本のラインセンサー210R、210G、210Bおよび210Bkを含む。ラインセンサー210R、210Gおよび210Bは、カラーモードでの原稿Dの読み取りに用いられ、R(赤),G(緑),B(青)の各色の画像データを生成するためのアナログ信号を出力する。ラインセンサー210Bkは、モノクロモードでの原稿Dの読み取りに用いられ、モノクロ(白黒)の画像データを生成するためのアナログ信号を出力する。なお、以下の説明では、ラインセンサー210R、210G、210Bおよび210Bkを単にラインセンサー210と称する場合がある。
【0048】
増幅器220の設置数は3つであり、ラインセンサー210R、210Gおよび210Bに1つずつ接続され、対応するラインセンサー210のアナログ信号を増幅する。また、A/D変換器230も3つ設けられており、各増幅器220に1つずつ接続され、対応する増幅器220により増幅されたアナログ信号をデジタルの画像データに変換する。すなわち、ラインセンサー210R、210Gおよび210Bの各アナログ信号は、別々の画像データパスに出力され、増幅処理およびA/D変換処理が施される。
【0049】
ラインセンサー210Bkからのアナログ信号については、カラーモード用の画像データパスのうち、1または複数の画像データパスに出力される。すなわち、モノクロモード用の画像データパスをカラーモード用のデータパスと共用する。たとえば、ラインセンサー210Bkは、ラインセンサー210Rおよび210Gにそれぞれ対応する2つの増幅器220に接続される。そして、ラインセンサー210Bkは、半分の画素のアナログ信号を一方の増幅器220に出力し、残りの半分の画素のアナログ信号を他方の増幅器220に出力する。このように、モノクロモード用の画像データパスをカラーモード用の画像データパスと共用することによって、回路規模を縮小することができ、コストダウンに繋がる。
【0050】
また、各増幅器220には、ゲイン調整回路260が接続される。各ゲイン調整回路260は、ジョブ実行時に、対応する増幅器220のゲインが設定済みのゲインとなるよう調整する。そして、各増幅器220は、対応するゲイン調整回路260により調整されたゲインでアナログ信号を増幅する。
【0051】
(ゲイン設定処理の概要)
読取制御部120は、増幅器220により増幅されたアナログ値がA/D変換器230の入力電圧範囲内に収まり、A/D変換器230の入力電圧範囲の上限値に近づくように、増幅器220のゲイン設定値を求める(以下、ゲイン設定処理と称する)。ゲイン設定処理を行うとき、読取制御部120は、白基準板28を読み取らせる。すなわち、光源21は、コンタクトガラス20bの下方で点灯することにより白基準板28に光を照射し、イメージセンサー22は、白基準板28で反射された反射光を受光してアナログ信号を出力する。また、増幅器220は、イメージセンサー22のアナログ信号を増幅し、A/D変換器230は、増幅器220により増幅されたアナログ信号をA/D変換する。このとき、ゲイン調整回路260は、たとえば、増幅器220のゲインを所定値に設定する(たとえば、ゲインを1に設定する)。そして、ゲイン調整回路260は、A/D変換器230の出力値を取得し、A/D変換器230の出力値と目標値との差に基づき、A/D変換器230の出力値が目標値となるよう増幅器220のゲインを設定する。
【0052】
ここで、図4に示したように、ラインセンサー210Rおよび210Gにそれぞれ接続される2つの増幅器220は、ラインセンサー210Bkにも接続され、カラーモードおよびモノクロモードの両モードで共用される。この構成では、ラインセンサー210Rおよび210Gにそれぞれ接続される2つの増幅器220が本発明の「共用増幅器」に相当する。なお、カラーモードおよびモノクロモードの両モードで共用する増幅器220の数は特に限定されず、複数でもよいし、1つでもよい。このように両モードで共用される増幅器220が存在する場合、両モードで共用される増幅器220については、カラーモードでのゲインおよびモノクロモードでのゲインを別個に設定しなければならない。なぜなら、カラーモード用およびモノクロモード用の各ラインセンサー210の感度には差が有り、最適なゲイン設定値が異なるためである。
【0053】
したがって、読取制御部120は、まず、カラーモードおよびモノクロモードのうち、一方モードで用いる増幅器220の一方モードでのゲイン設定値を求める。そして、その後、読取制御部120は、他方モードで用いる増幅器220の他方モードでのゲイン設定値を求める。
【0054】
(ゲイン設定処理の開始タイミング)
読取制御部120は、増幅器220のゲイン設定処理を開始すべき時点として予め定められた開始時点になったとき、ゲイン設定処理を開始する。たとえば、読取制御部120は、複合機100に主電源が投入されたときや、複合機100がスリープモードから通常電力モードに復帰したときに、ゲイン設定処理を開始する。
【0055】
また、読取制御部120は、開始時点になったとき、カラーモードおよびモノクロモードのうち一方を優先モードに設定する。そして、読取制御部120は、優先モードで用いる増幅器220の優先モードでのゲイン設定値を求める処理(以下、優先モードゲイン設定処理と称する)を開始する。その優先モードゲイン設定処理が完了した後、読取制御部120は、カラーモードおよびモノクロモードのうち優先モードに設定していないモードである非優先モードで用いる増幅器220の非優先モードでのゲイン設定値を求める処理(以下、非優先モードゲイン設定処理と称する)を行う。なお、優先モードの設定を行わず、カラーモードおよびモノクロモードのうち予め定められた一方モードで用いる増幅器220の一方モードでのゲイン設定値を求める処理から開始し、先に開始した処理が完了した後、カラーモードおよびモノクロモードのうち残りの他方モードで用いる増幅器220の他方モードでのゲイン設定値を求める処理を開始してもよい。
【0056】
ところで、操作パネル8は、非優先モードゲイン設定処理が行われているときであっても、読取ジョブの実行指示を受け付ける。非優先モードゲイン設定処理が行われているときに、優先モードでの読取ジョブの実行指示を操作パネル8が受け付けた場合、優先モードでの読取ジョブの実行指示を受け付けた時点では、非優先モードゲイン設定処理については完了していないが、優先モードゲイン設定処理については既に完了している。すなわち、優先モードで用いる増幅器220の優先モードでのゲインを適切な値に調整することができる。
【0057】
そこで、非優先モードゲイン設定処理を行っているときに、優先モードでの読取ジョブの実行指示を操作パネル8が受け付けた場合、読取制御部120は、図5に示すように、現在処理中の非優先モードゲイン設定処理を中断し、優先モードでの読取ジョブを実行する。そして、優先モードでの読取ジョブが完了した後、中断した非優先モードゲイン設定処理を最初から再開する。
【0058】
また、非優先モードゲイン設定処理が行われているときに、非優先モードでの読取ジョブの実行指示を操作パネル8が受け付ける場合もある。この場合、読取制御部120は、図6に示すように、非優先モードゲイン設定処理を中断せず、最後まで完了させる。そして、読取制御部120は、非優先モードゲイン設定処理を完了させてから、非優先モードでの読取ジョブを実行する。
【0059】
(優先モードの設定)
読取制御部120は、カラーモードおよびモノクロモードのうちいずれを優先モードに設定するかを判断するため、カラーモードおよびモノクロモードの各読取回数を記憶部122に記憶させる。
【0060】
そして、読取制御部120は、ゲイン設定処理を開始すべき開始時点になったとき、累計読取回数が所定回数以上になっていなければ、カラーモードおよびモノクロモードのうち最初にゲイン設定処理を開始すべきモードとして予め定められたデフォルトモードを優先モードに設定する。言い換えると、読取制御部120は、累計読取回数が所定回数を超えるまでは、デフォルトモードを優先モードに設定する。なお、複合機100はモノクロ機であるので、モノクロモードがデフォルトモードとされる。ただし、カラーモードがデフォルトモードとされてもよい。
【0061】
一方で、読取制御部120は、開始時点になったとき、累計読取回数が所定回数以上になっていれば、カラーモードおよびモノクロモードの各読取回数の偏り度合を求め、その偏り度合が所定条件を満たしているか否かを判断する。所定条件を満たしている場合、読取制御部120は、カラーモードおよびモノクロモードのうち読取回数が多いモードを優先モードに設定する。一方で、所定条件を満たしていない場合、読取制御部120は、デフォルトモードを優先モードに設定する。
【0062】
たとえば、読取制御部120は、開始時点になったとき、累計読取回数が所定回数以上になっていれば、カラーモードおよびモノクロモードのうち読取回数が多いモードの読取回数の累計読取回数に対する比率を偏り度合を示す値として求める。そして、読取制御部120は、求めた比率が予め定められた閾値以上であれば、所定条件が満たされたとして、読取回数が多いモードを優先モードに設定する。一方で、読取制御部120は、求めた比率が閾値を下回っていれば、所定条件が満たされていないとして、デフォルトモードを優先モードに設定する。
【0063】
具体的な例として、所定回数が1000回であり、閾値が70%であるものとして説明する。
【0064】
この例において、カラーモードの読取回数が300回であり、モノクロモードの読取回数が700回であった場合、累計読取回数は1000回であるので、所定回数に達している。このため、読取制御部120は、偏り度合としての比率を求める。ここでは、読取回数が多いモードの読取回数が700回であり、累計読取回数が1000回であるので、読取制御部120により求められる比率は70%となる。すなわち、読取制御部120により求められる比率は閾値以上となる。したがって、読取制御部120は、所定条件が満たされたと判断する。そして、カラーモードおよびモノクロモードのうち読取回数の多いモードはモノクロモードであるので、読取制御部120は、モノクロモードを優先モードに設定する。
【0065】
なお、カラーモードの読取回数が700回であり、モノクロモードの読取回数が300回であった場合には、カラーモードおよびモノクロモードのうち読取回数の多いモードはカラーモードであるので、カラーモードが優先モードに設定される。また、カラーモードの読取回数が400回であり、モノクロモードの読取回数が600回であった場合には、読取制御部120により求められる比率は60%となり、閾値を下回るので、デフォルトモードであるモノクロモードが優先モードに設定される。
【0066】
(ゲイン設定処理の制御の流れ)
以下に、図7および図8を参照して、ゲイン設定処理の制御の流れについて説明する。なお、図7および図8のフローチャートのスタートは、ゲイン設定処理を開始すべき開始時点になったとき(複合機100に主電源が投入されたとき、あるいは、複合機100がスリープモードから通常電力モードに復帰したとき)である。
【0067】
ステップS1において、読取制御部120は、累計読取回数が所定回数以上になっているか否かを判断する。その結果、累計読取回数が所定回数以上になっていれば、ステップS2に移行する。
【0068】
ステップS2に移行すると、読取制御部120は、カラーモードおよびモノクロモードのうち読取回数が多いモードの読取回数の累計読取回数に対する比率を偏り度合を示す値を求め、その偏り度合が所定条件を満たしているか否か(偏り度合としての比率が閾値以上であるか否か)を判断する。その結果、偏り度合が所定条件を満たしていれば、ステップS3に移行する。そして、ステップS3に移行すると、読取制御部120は、カラーモードおよびモノクロモードのうち、読取回数が多いモードを優先モードに設定する。
【0069】
一方で、ステップS2において、偏り度合が所定条件を満たしていない場合には、ステップS4に移行する。また、ステップS1において、累計読取回数が所定回数を下回っている場合にも、ステップS4に移行する。そして、ステップS4移行すると、読取制御部120は、カラーモードおよびモノクロモードのうち、デフォルトモードを優先モードに設定する。
【0070】
優先モードの設定後、ステップS5に移行し、読取制御部120は、優先モードゲイン設定処理(優先モードで用いる増幅器220の優先モードでのゲイン設定値を求める処理)を開始する。その後、ステップS6において、読取制御部120は、優先モードゲイン設定処理が完了したか否かを判断する。その結果、優先モードゲイン設定処理が完了していれば、ステップS7に移行する。なお、優先モードゲイン設定処理が完了していなければ、読取制御部120は、ステップS6の判断を繰り返す。
【0071】
ステップS7に移行すると、読取制御部120は、非優先モードゲイン設定処理(非優先モードで用いる増幅器220の非優先モードでのゲイン設定値を求める処理)を開始する。その後、ステップS8において、読取制御部120は、読取ジョブの実行指示が有ったか否かを判断する。その結果、読取ジョブの実行指示が有れば、ステップS9に移行する。
【0072】
ステップS9に移行すると、読取制御部120は、実行すべき読取ジョブのモードが優先モードであるか否かを判断する。その結果、実行すべき読取ジョブのモードが優先モードであれば、ステップS10に移行する。ステップS10に移行すると、読取制御部120は、現在処理中の非優先モードゲート設定処理を中断する。そして、ステップS11において、読取制御部120は、優先モードでの読取ジョブを開始する。
【0073】
その後、ステップS12において、読取制御部120は、読取ジョブが完了したか否かを判断する。その結果、読取ジョブが完了していれば、ステップS13に移行し、読取ジョブが完了していなければ、ステップS12の判断を繰り返す。ステップS13に移行すると、読取制御部120は、中断した非優先モードゲイン設定処理を再開する。
【0074】
非優先モードゲイン設定処理を再開すると、ステップS14に移行する。なお、ステップS8において、読取ジョブの実行指示が無い場合にも、ステップS14に移行する。そして、ステップS14において、読取制御部120は、非優先モードゲイン設定処理が完了したか否かを判断する。その結果、非優先モードゲイン設定処理が完了していれば、本制御を終了し、非優先モードゲイン設定処理が完了していなければ、ステップS8に移行する。
【0075】
また、ステップS9において、実行すべき読取ジョブのモードが優先モードではない場合(非優先モードである場合)には、ステップS15に移行する。ステップS15に移行すると、読取制御部120は、非優先モードでの読取ジョブの実行を保留し、非優先モードゲイン設定処理を中断せずに続行する。そして、ステップS16において、読取制御部120は、非優先モードゲイン設定処理が完了したか否かを判断する。その結果、非優先モードゲイン設定処理が完了していれば、ステップS17に移行し、非優先モードゲイン設定処理が完了していなければ、ステップS16の判断を繰り返す。ステップS17に移行すると、読取制御部120は、非優先モードでの読取ジョブ(実行を保留した読取ジョブ)を開始する。
【0076】
本実施形態の複合機100(画像読取装置および画像形成装置)は、上記のように、読取対象に光を照射する光源21と、ラインセンサー210を複数本含むイメージセンサー22と、イメージセンサー22から出力されるアナログ信号を増幅する複数の増幅器220と、複数の増幅器220のそれぞれに対して設けられ、対応する増幅器220のゲイン調整を行う複数のゲイン調整回路260と、複数の増幅器220のそれぞれに対して設けられ、対応する増幅器220により増幅されたアナログ信号をデジタルの画像データに変換する複数のA/D変換器230と、複数の増幅器220のそれぞれのゲイン調整を対応するゲイン調整回路260に行わせるわせる読取制御部120と、読取ジョブの実行指示を受け付けるとともに、ジョブ実行時のモードをカラーモードにするかモノクロモードにするかの選択を受け付ける操作パネル8(受付部)と、を備える。また、複数の増幅器220のうち少なくとも1つ(ラインセンサー210Rおよび210Gにそれぞれ接続される2つの増幅器220)は、カラーモードおよびモノクロモードの両モードで共用される共用増幅器220である。そして、増幅器220のゲイン設定値を求めるためのゲイン設定処理を開始する時点として予め定められた開始時点になったとき、読取制御部120は、カラーモードおよびモノクロモードのうち一方を優先モード(一方モード)に設定し、優先モードで用いる増幅器220の優先モードでのゲイン設定値を求める処理である優先モードゲイン設定処理(一方モードゲイン設定処理)を開始するとともに、優先モードゲイン設定処理が完了した後、カラーモードおよびモノクロモードのうち優先モードではない非優先モード(他方モード)で用いる増幅器220の非優先モードでのゲイン設定値を求める処理である非優先モードゲイン設定処理(他方モードゲイン設定処理)を行う。また、非優先モードゲイン設定処理を行っているときに、優先モードでの読取ジョブの実行指示を操作パネル8が受け付けた場合、読取制御部120は、非優先モードゲイン設定処理を中断し、優先モードでの読取ジョブを実行する。
【0077】
本実施形態の構成では、非優先モードゲイン設定処理を行っているときに、優先モードでの読取ジョブの実行指示を受け付けた場合、非優先モードゲイン設定処理を中断し、優先モードでの読取ジョブを実行する。これにより、優先モードでの読取ジョブの実行を所望するユーザーの待ち時間を減らすことができ、ユーザーの利便性が向上する。また、非優先モードゲイン設定処理を行っているときに、優先モードでの読取ジョブの実行指示を受け付けると、非優先モードゲイン設定処理を中断することによってユーザーの待ち時間を減らすので、ユーザーの待ち時間を減らすために、非優先モードのゲイン設定値を優先モードのゲイン設定値に基づき計算により求める、といった方法をとらなくてもよい。これにより、非優先モードでの読取画質が低下するのを抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、カラーモードおよびモノクロモードの各読取回数を記憶する記憶部122を備える。そして、開始時点になったとき、読取制御部120は、カラーモードおよびモノクロモードの各読取回数の偏り度合を求め、偏り度合が所定条件を満たしていれば、カラーモードおよびモノクロモードのうち読取回数が多いモードを優先モードに設定し、偏り度合が所定条件を満たしていなければ、カラーモードおよびモノクロモードのうちデフォルトモード(ゲイン設定処理を最初に行うべきモードとして予め定められたモード)を優先モードに設定する。ここで、読取回数が多いモードというのは、使用頻度が高いモードのことである。したがって、カラーモードおよびモノクロモードの各読取回数の偏り度合が所定条件を満たしている場合には、使用頻度の高いモードでの読取ジョブが速やかに実行可能な状態になるので、ユーザーの利便性が向上する。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、開始時点になったとき、読取制御部120は、カラーモードおよびモノクロモードのうち読取回数が多いモードの読取回数の累計読取回数に対する比率を求め、求めた比率が予め定められた閾値以上であれば、所定条件が満たされたとして、読取回数が多いモードを前記優先モードに設定する一方、求めた比率が閾値を下回っていれば、所定条件が満たされていないとして、デフォルトモードを優先モードに設定する。これにより、容易に、使用頻度の高いモードを優先モードに設定することができる。
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、読取制御部120は、累計読取回数が所定回数を超えるまでは、デフォルトモードを優先モードに設定する。言い換えると、読取制御部120は、累計読取回数が所定回数を超えてから、偏り度合に基づく優先モードの設定を行う。これにより、使用頻度の高いモードの判定を正確に行える。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、非優先モードゲイン設定処理の中断があった場合、読取制御部120は、優先モードでの読取ジョブが完了した後、非優先モードゲイン設定処理を最初から再開する。これにより、優先モードでの読取ジョブが完了した後、非優先モードで用いる増幅器220の非優先モードでのゲイン設定値を速やかに求めることができる。すなわち、非優先モードでの読取ジョブを速やかに実行可能な状態にすることができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、非優先モードゲイン設定処理を行っているときに、非優先モードでの読取ジョブの実行指示を操作パネル8が受け付けた場合、読取制御部120は、非優先モードゲイン設定処理を完了させてから、非優先モードでの読取ジョブを実行する。これにより、非優先モードでの読取ジョブを実行するときに、非優先モードで用いる増幅器220のゲイン設定値を現在の装置状態に適した値に調整することができる。
【0083】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0084】
8 操作パネル(受付部)
21 光源
22 イメージセンサー
120 読取制御部
122 記憶部
210 ラインセンサー
220 増幅器
230 A/D変換器
260 ゲイン調整回路
100 複合機(画像読取装置、画像形成装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8