(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0025】
図1は、実施例1に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置の概略図である。
図1に示すように、加工対象の部材は、母材101の表面に耐熱塗膜102が形成され、耐熱塗膜102の表面が高温に曝されて熱劣化した熱劣化層103となっている。本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Aは、耐熱塗膜102の表面に形成された熱劣化層103を剥離する耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置である。除去装置10Aは、高圧水ノズル12と、高圧水供給部14と、耐圧ホース15と、を有する。高圧水ノズル12は、熱劣化層103に高圧ジェット水(ウォータジェット:WJ)11を噴射する。高圧水供給部14は、高圧水ノズル12に高圧水13を供給する。耐圧ホース15は、耐圧が高いフレキシブルなチューブであり、高圧水供給部14と高圧水ノズル12とを接続し、高圧水供給部14から供給される高圧水13を高圧水ノズル12に供給する。除去装置10Aは、高圧水ノズル12を熱劣化層103に向けた状態で配置し、高圧水供給部14から耐圧ホース15を介して高圧水ノズル12に高圧水13を送る。高圧水ノズル12は、耐圧ホース15を介して供給された高圧水13を対面する熱劣化層103に向けて噴射する。除去装置10Aは、高圧ジェット水11の噴射圧力(MPa)をpとし、高圧ジェット水11の噴射流量(L/分)をQとした場合、Qとpが、下記式(1)、式(2)及び式(3)の条件を満足する高圧ジェット水を熱劣化層103に向けて噴射する。
50≦p≦300 ・・・(1)
Q≧0.5 ・・・(2)
p≦−13.9Q+439 ・・・(3)
【0026】
次に、
図2を用いて、除去装置10Aについてより詳細に説明する。
図2は、耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置のシステムの一例を示す全体図である。除去装置10Aは、
図2に示すように、上述した圧水ノズル12と、高圧水供給部14と、耐圧ホース15と、に加え、噴射ガン24を有する。噴射ガン24は、先端に高圧水ノズル12が設けられ、耐圧ホース15と接続されている。噴射ガン24は、耐圧ホース15から高圧水13が供給され、供給された高圧水13を高圧水ノズル12に供給する。また、噴射ガン24は、高圧ジェット水11を高圧水ノズル12の先端から噴射させるか否かを操作するためのトリガ24aと、使用者が噴射ガン24を保持する際に握るグリップ24bとを備えている。使用者は、グリップ24bを握りつつ噴射ガン24を移動させることで高圧水ノズル12の位置や向きを調整し、トリガ24aを操作することで、高圧水ノズル12から高圧ジェット水11を噴射するか否かを制御する。
【0027】
次に、高圧水供給部14は、耐圧ホース15及び噴射ガン24を介して高圧水ノズル12に高圧水13を供給する。高圧水供給部14は、作動水21を充満した水タンク22と、水タンク22からの作動水21を高圧水13として圧送するポンプ23と、トリガ24aの操作と連動してバルブ26を開いて高圧水13を噴射ガン24に圧送するバルブボックス27とを備えている。また、耐圧ホース15は、その一端がバルブボックス27に接続され、その他端が高圧水ノズル12を備えた噴射ガン24に接続されている。除去装置10Aは、高圧水供給部14の各部が例えば所定量の作動水21を保有するポンプ車等に車載することで、作業場所まで移動自在としている。
【0028】
本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Aは、次のように動作する。
除去装置10Aは、ポンプ23を駆動し、水タンク22からの作動水21を所定圧力とした高圧水13としてバルブボックス27に導入する。バルブボックス27は、バルブ26によって流路抵抗等が調整されている。バルブボックス27を通過した高圧水13は、所定流量に調整され、耐圧ホース15を介して噴射ガン24に供給される。除去装置10は、トリガ24aが操作されると、所定圧力、所定噴射流量の高圧ジェット水11を高圧水ノズル12の先端から噴射させる。除去装置10Aは、噴射された高圧ジェット水11が熱劣化層103に到達することで、熱劣化層103を剥離、除去する。
【0029】
以下、
図3を用いて、一例としてロケット発射台に塗布した耐熱塗膜の打ち上げ前後の変化と、熱劣化層の除去及び再塗装の処理について説明する。
図3は、ロケット発射台に塗布した耐熱塗膜の打ち上げ前後と、熱劣化層の除去及び再塗装を示す図である。なお、
図3はロケットの打ち上げ前後について説明したが、耐熱塗膜が高温に曝される動作であればよい。
【0030】
先ず、ロケット打上前は、ロケット発射台である金属母材101に耐熱塗膜が所定厚塗布された耐熱塗膜102が形成される。この塗布された耐熱塗膜102は、全層が健全層である。ここで健全層とは、耐熱塗膜の凝集力が所定以上の状態であり断熱性能と強度が耐熱塗膜としての機能を果たす層である。健全層の凝集力は、一例として3MPa以上である。これに対して、熱劣化層103は脆弱層となっているので、一例として凝集力が3MPa未満となる。
【0031】
ロケット打上後は、耐熱塗膜102の一部が高温に曝されて蒸発消失104し、蒸発消失した残りの耐熱塗膜102の一部の表層部分が熱により劣化され、熱劣化層(炭化層)103が例えば数ミリ程度形成される。この熱劣化層103は、炭化しているので、その表面は粉状となっていると共に、その凝集力は3MPa未満である。
【0032】
熱劣化層103の除去を行うことで、熱劣化層103を含む剥離層105が除去(ハツリ)される。つまり、剥離層105がハツリされる。その後、耐熱塗料を再塗装して、規定の一定厚みとなるように、耐熱塗膜102Aを形成し、次のロケットの打上に備える。
【0033】
従来のディスクグラインダによる熱劣化層の除去処理では、まだ使用できる耐熱塗膜102や、金属母材101まで研削してしまう場合がある。この結果、耐熱塗料を再塗装する場合には、耐熱塗膜102を規定厚さまで何層も塗布する必要があった。
【0034】
そこで、本発明では、高圧水ノズル12から吐出される高圧ジェット水11を
図4の範囲及び下記に示す範囲の条件とし、高圧ジェット水11により耐熱塗膜102の熱劣化層(炭化層)を選択的かつ効率的に除去するようにしている。
図4は、高圧ジェット水の噴射流量(L/分)と噴射圧力(MPa)との関係を示す図である。
図4に示す陰影部の適用範囲とすることで、健全な耐熱塗膜102の剥離や、健全な耐熱塗膜102へのクラック発生を回避することができる。
【0035】
ここで処理条件は、上述したように高圧ジェット水11の噴射圧力が、50≦p≦300・・・(1)、Q≧0.5・・・(2)、p≦−13.9Q+439 ・・・(3)を満足する。
【0036】
次に、
図4に示す陰影部の範囲において、塗膜の熱劣化層除去処理が好適であることについて表1を用いて説明する。
【0037】
【表1】
【0038】
図4に示すように、試験例1は圧力が300MPaで水量が10L/分の場合であり、試験例2は圧力が50MPaで水量が28L/分の場合であり、試験例3は圧力が150MPaで水量が0.5L/分の場合であり、試験例4は圧力が50MPaで水量が0.5L/分の場合であり、試験例5は圧力が150MPaで水量が5L/分の場合である(
図4中、○印)。
また、比較例1としては、従来のディスクグラインダを用いる場合であり、比較例2は圧力が250MPaで水量が20L/分の場合である(
図4中、※印)。
【0039】
表1に示すように、試験例1〜5においては、劣化層の除去速度が15〜29m
2/hであり、比較例1の場合(0.9m
2/h)よりも除去速度が格段に向上している。
また、健全層のハツリ量(除去した層の厚さ)も0.1mm以下と小さく、健全層へのクラック発生はなく、施工が良好であった。
【0040】
これに対し、比較例1では、除去速度が0.9m
2/hと遅く、しかも、健全層のハツリ量(除去した層の厚さ)も2mm以上と健全層の除去厚みが厚くなった。
【0041】
また、比較例2では、高圧ジェット水が式(3)を充足せず、熱劣化層103の除去性が強すぎであるので、健全層のハツリ量(除去した層の厚さ)も0.5mmと大きく、健全層へのクラックも発生し、施工が不良であった。
なお、圧力(p)が50MPa未満の場合には、熱劣化層103の除去が不可であった(
図4中、×印)。
【0042】
また、本条件を充足する場合においても、更には圧力が低く、噴射流量が小さい、試験例4、試験例3又は試験例5の範囲とするのが好ましい。なお、噴射条件は、熱劣化層103の劣化度合いによるが、試験例4の条件近傍とするのが、例えばポンプ容量等を小さくでき、装置構成をコンパクトにすることができるので、より好ましい。
【0043】
また、施工面である熱劣化層103の表面と高圧水ノズル12のノズル先端との施工距離(L)は、以下式(4)とすることが更に好ましい。
施工距離(L)/ノズルの開口径(d)≦100 ・・・(4)
これは、施工距離(L)/ノズルの開口径(d)が100以下の場合、熱劣化層103の除去性は良好であるが、施工距離(L)/ノズルの開口径(d)>100となると、施工距離(L)を離すほど、高圧ジェット水11による熱劣化層103の除去性が低下し、好ましくない。
【0044】
高圧水ノズル12のノズルの開口径(d)を例えば0.2mmとすると、施工距離(L)を20mm以下として、施工するのが好ましい。
【0045】
高圧水ジェット水11は、高圧水ノズル12の開口径(d)や噴射圧力(MPa)で噴射流量が決まるので、所望の流量になるようにポンプ能力から、適切なノズル開口径(d)を下記式(5)により選定する。
Q(理論流量L/分)=(d/η)
2×2.1×√P ・・・(5)
ここで、d=ノズル開口径(mm)、P=噴射圧力(MPa)、η=ノズル係数(ノズル固有の値:凡そ1.0〜1.4)である。
【0046】
高圧ジェット水11において、例えば150MPaの噴射圧力で、噴射流量0.8L/分が必要であれば、0.2mmの開口径の高圧水ノズル12を選定することとなる。なお、ノズル係数を1.13とした。
【0047】
以上のように、本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Aによれば、耐熱塗膜102が熱劣化した熱劣化層103を選択的に除去することができ、健全層の剥離やクラック発生が回避できる。この結果、耐熱塗膜102の再塗装に要する塗料及び作業工数を削減することができる。よって、低コストで、熱劣化層103の除去速度が速く、耐熱塗膜102の熱劣化層103のみを除去することが可能となる。
また、従来実施されているディスクグラインダ処理の場合と較べて、作業性及び作業環境性が大幅に向上するので、処理時間の大幅短縮に寄与する。
【0048】
また、高圧ジェット水11の噴射条件を所定条件とするので、比較例2のように、高圧ジェット水11の噴射が強くなって、健全層に対してクラック発生させて、耐熱性欠陥の要因となることを回避することができる。
【0049】
なお、作業において、水煙が発生するものの、粉塵発生量はディスクグラインダ処理よりも大幅に低減できる為、周辺機器への悪影響の懸念が低減できると共に、作業性が大幅に向上する。
【実施例2】
【0050】
次に、本発明の実施例2に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置について、
図5を参照して説明する。
図5は、実施例2に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置の概略図である。なお、実施例1と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図5に示すように、本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Bは、実施例1の除去装置10Aの各部に加え、高圧水ノズル12の先端の周囲を覆うと共に、熱劣化層103側に開口31aを有するカバー31を設けている。除去装置10Bは、カバー31に通路31bを介して高圧ジェット水11の噴射により発生した剥離物32を水と共に吸引する吸引部33を設けている。
【0051】
除去装置10Bは、カバー31を設置することで、噴射する高圧ジェット水11及び剥離物32が周辺に飛散することを抑制できる。また、除去装置10Bは、カバー31の開口部31aを熱劣化層103の表面に押し当て固定することで、高圧水ノズル12からの距離、高圧ジェット水11の噴射角度を調整することもできる。
さらに、除去装置10Bは、吸引部33を備えることで、カバー31内に滞留した水及び剥離物32を吸引回収し、作業場所への漏出を抑制することができる。
これにより、水及び剥離した熱劣化層103を回収しながら熱劣化層103を効率よく除去することとなる。
【0052】
本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Bは、次のように動作する。
カバー31で覆われた高圧水ノズル12の先端を、熱劣化層103の表面と対向させ、高圧水ノズル12のノズル先端と熱劣化層103との間を所定距離(L)に設定する。次いで、高圧水ノズル12の開口部から高圧ジェット水11を噴射し、熱劣化層103を高圧ジェット水11の噴射力により剥離する。高圧ジェット水11により熱劣化層103から剥がしとられ、発生した剥離物32は、水と共に吸引部33により吸引する。
【0053】
本実施例によれば、実施例1で示した作用・効果に加え、カバー31を設置することにより、粉塵も水煙も飛散を防止することができる。
また、清浄性を求められる屋内においても、剥離作業をすることが可能となる。
【0054】
また、カバー31と高圧水ノズル12の一体化により、処理対象面とノズル先端の施工距離(L)及び高圧ジェット水11の噴出角度を一定に保つことができ、作業者による処理のバラツキを排除することができる。
さらに、カバー31に付属した吸引部33の回収系統を接続することにより、作業後の周辺清掃が簡略化できる。
【実施例3】
【0055】
次に、本発明の実施例3に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置について、
図6及び7を参照して説明する。
図6は、実施例3に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置の概略図である。
図7は、実施例3に係る他の耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置の概略図である。なお、実施例1と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図6に示すように、本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Cは、実施例2の耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Bにおいて、さらにカバー31の開口部31aに沿って摺動可能な毛ブラシ、ローラ等の摺動部35を設けるようにしている。
この毛ブラシ等の摺動部35を設けることで、施工時における熱劣化層103の表面に摺動部35を当接しつつ移動するので、施工作業の移動を容易としている。
【0056】
また、
図7に示すように、本実施例に係る他の耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Dは、さらにカバー31の側面に高圧水ノズル12の高さ調整が可能な距離調整部36を設けている。
この距離調整部36を設けることにより、高圧水ノズル12の施工距離Lを調節可能とし、例えば熱劣化層103の脆化度合いに応じて、所定距離に調整することで、高圧ジェット水11の噴射の距離調整が可能となる。
【実施例4】
【0057】
次に、本発明の実施例4に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置について、
図8を参照して説明する。
図8は、実施例4に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置の概略図である。なお、実施例1乃至3と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図8に示すように、本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Eは、高圧水13が供給される噴射ガン41と、噴射ガン41の銃身42の先端側に設けられ、回動部43を介して回動自在に支持される一対のアーム44、44と、アーム44、44に各々設けられ、熱劣化層103に高圧ジェット水11を噴射する高圧水ノズル12、12と、これらのアーム12、12に各々設けられ、高圧水ノズル12の施工距離(L)を所定距離に調整する距離調整部45、45と、距離調整部45の前記熱劣化層103側に設けられ、熱劣化層103の表面を移動する移動部であるローラ46と、噴射ガン41のトリガ41aの操作と連動し、供給された高圧水13を高圧水ノズル12に銃身の一部から供給する耐圧ホース47と、を備えており、熱劣化層103が曲面の場合、回動部43の回動具合を調整し、その曲面に沿って高圧ジェット水11の噴射を高圧水ノズル12から行うものである。
【0058】
噴射ガン41の銃身42の先端に設けられる回動部43は、一対のアーム44、44を回動自在とするもので、金属母材101が曲面の場合、熱劣化層103も曲面となるので、この曲面に対しても高圧水ノズル12の先端からの距離が一定になるように調整することができる。
【0059】
また、アーム44、44に各々設置される高圧水ノズル12、12は、該アーム44の軸方向に沿って移動自在としており、高圧水ノズル12のアーム軸方向の位置調整を可能としている。このアーム軸方向の調整と回動部43の調整で、あらゆる曲面形状に対応した高圧水ノズル12の施工準備を可能としている。
【0060】
また、距離調整部45を設けるので、高圧水ノズル12と施工面との所定の施工距離Lを、任意に調整することができる。
【0061】
また、距離調整部45の熱劣化層103側に設けたローラ46により、熱劣化層103の表面での移動が容易となる。
【0062】
高圧ジェット水11を熱劣化層103に噴射して剥離する場合には、その噴射による反力がかかるので、所定距離を保って処理することに熟練を要する。
本実施例のように高圧水ノズル12、12を一対設けた噴射ガン41とすることで、熱劣化層103の表面に、グリップ41bで押し付けながら、所定距離を維持しつつ高圧ジェット水11の噴射が可能となる。この際、噴射ガン41を熱劣化層103側に押し当てて滑らせて作業出来るため、連続作業時の疲労が少なくなる。
【0063】
また、熱劣化層103の曲面に応じた専用ノズルを準備してこれを変更する場合には、その変更作業に時間を要するが、本実施例の場合とすることで、回動部43を調整するだけで良いので、作業効率の向上を図ることができる。
【0064】
本実施例では、高圧水ノズル12を2個設置しているが、本発明はこれに限定されず、必要に応じてその数を増加するようにしてもよい。
【0065】
本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Eは、次のように動作する。
熱劣化層103が平面の場合には、回動部43を調整し、熱劣化層103と平行となるようにアーム44、44を調整する。
次に、高圧水ノズル12の先端を、塗膜劣化層103の表面と対向させ、ノズル先端と熱劣化層との間を所定距離(L)となるように、距離調整部45により調整する。
次いで、トリガ41aを操作して高圧水ノズル12の開口部から高圧ジェット水11を噴射し、熱劣化層103を高圧ジェット水11の噴射力により剥離する。
この際、噴射ガン41のグリップ41bにより噴射ガン41を熱劣化層103側に押し当て、ローラ46により移動しつつ剥離することができるので、連続作業時の疲労が少なくなる。
【0066】
また、熱劣化層103が曲面の場合には、回動部43を調整し、熱劣化層103の曲面に併せてアーム44、44を回転調整する。
次に、高圧水ノズル12の先端を、熱劣化層103の表面と対向させ、ノズル先端と熱劣化層103との間を所定距離(L)となるように、距離調整部45により調整する。
次いで、トリガ41aを操作して高圧水ノズル12の開口部から高圧ジェット水11を噴射し、熱劣化層103を高圧ジェット水11の噴射力により剥離する。
【0067】
さらに、本実施例において、実施例2に示すような吸引部33を備えたカバー31を設置することにより、カバー31内に滞留した水及び剥離物32を吸引部33により回収し、作業場所への漏出を抑制することができる。これにより、水及び剥離した熱劣化層を回収しながら熱劣化層103を効率よく除去することとなる。
【実施例5】
【0068】
次に、本発明の実施例5に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置について、
図9を参照して説明する。
図9は、実施例5に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置の概略図である。なお、実施例1乃至4と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図9に示すように、本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Fは、実施例4の耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Eにおいて、さらに回動部43に設けた自在継手51と、この自在継手51に接続され、銃身42の先端側を伸縮自在とする銃身伸縮部52とを備えている。
【0069】
これにより高所での作業の際にも、自在継手51と銃身伸縮部52を操作することで、所望の調整が可能となり、実施例4で示した作用・効果に加え、熱劣化層103の除去可能範囲が広がり、高所作業の際の足場の設置箇所を低減でき、作業期間の短縮と経費削減が可能となる。
【実施例6】
【0070】
次に、本発明の実施例6に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置について、
図10を参照して説明する。
図10は、実施例6に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置の概略図である。なお、実施例1乃至5と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図10に示すように、本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Gは、実施例5に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Fの各部に加え、さらに回動部43の熱劣化層103側に設けられ、熱劣化層103の剥離面を監視する監視部61と、監視部61からの監視情報を表示する表示部62とを備えるものである。
【0071】
監視部61は、カメラ61aと、水除けカバー61bとを有する。監視部61は、さらにカメラ61aの視野を照明するライトを備えていてもよい。
カメラ61aは、回動部43の熱劣化層103側に設けられ、熱劣化層103の剥離面を監視している。また、カメラ61aの周囲を覆う水除けカバー61bがカメラ61aの周囲に設けられている。
【0072】
監視部61は、カメラ61aで施工領域を撮影することで、熱劣化層103の剥離面を監視する。また、監視部61として、水除けカバー61bでカメラ61aの周囲を覆うことで、カメラ61aと対面する熱劣化層103の剥離面との間が水滴や水で遮られることを抑制でき、作業中も表面をカメラ61aにより監視することができる。
【0073】
通常、高圧ジェット水11による熱劣化層の剥離作業中は水煙が発生するため、装置を止めたり、高圧水ノズル12の場所をずらしたりしないと塗膜の処理状況を判断することが困難である。
これに対して、本実施例の耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Fでは、水よけカバー61bを有するカメラ61aの監視部61を設けているので、高圧水吹付部の塗膜処理状況をリアルタイムで作業者が確認しながら作業することができ、その作業効率が向上する。
これにより、作業者による施工のバラツキを解消することできる。
【0074】
除去装置10Fは、監視部61で撮影した画像を表示部62にそのまま表示することで熱劣化層103の剥離面を監視することができるが、これに限定されない。除去装置10Fは、監視部61で撮影した画像を解析し、剥離層の色調を判断し、色調に基づいて、熱劣化層103の剥離面を監視してもよい。ここで、熱劣化層103は炭化しているので、例えば茶色から黒色であり、健全層まで剥離した剥離層は白色である。よって、除去装置10Fは、取得した画像の色調の差異により、剥離の状態を判断するようにしてもよい。
【0075】
図11は、耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置を制御する制御装置を備えた耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置の概略図である。
図11に示すように、本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Gに、カメラ61aの情報を解析する画像解析部を備えた制御装置65を設置している。
そして、熱劣化層103の除去中において、その作業表面をカメラ61aで監視し、その画像信号S
1を表示部62に送り、モニタ画面62aで表示するようにしている。
また、制御装置65の画像解析部に画像信号S
1を送って解析し、その解析により得られた濃淡信号S
2を、モニタ画面62aで表示できるようにしてもよい。
また、この得られた濃淡信号S
2を基にして、(1)水圧・流量の制御指示や、(2)高圧ジェット水11のON/OFFの制御指示等の制御信号S
3を制御装置65から高圧水供給部14に送って、実行するようにしてもよい。
【0076】
またカメラ61aの画像を制御装置65で処理し、熱劣化層除去状況を常時監視して、制御装置65で塗膜の除去程度の判断し、必要に応じて水量・水圧の自動調整をすることで、作業者に依存しない均一な仕上がりと、塗膜の削り過ぎ等とを防止をすることができる。
【実施例7】
【0077】
次に、本発明の実施例7に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置について、
図12を参照して説明する。
図12は、実施例7に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置の概略図である。なお、実施例1乃至6と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Hは、カバー31内に複数(本実施例では3個)の高圧水ノズル12を支持部71により支持されており、各高圧水ノズル12には高圧水供給部14から高圧水13が供給されている。
本実施例では、予め施工する範囲を移動自在な移動手段を備えた自動操縦装置(図示せず)により自動操縦を可能としている。
各高圧水ノズル12の間には監視部61が設けられ、その撮像情報は、情報解析部を備えた制御装置65に送られ、表示部62のモニタ62aで表示されている。
【0078】
本実施例では、高圧水ノズル12を3個設置しているが、本発明はこれに限定されず、必要に応じてその数を増減するようにしてもよい。
【0079】
本実施例に係る耐熱塗膜の熱劣化層の除去装置10Hは、次のように動作する。
高圧水供給部14からの所定圧力とした高圧水13は各高圧水ノズル12に導入される。
高圧水ノズル12と施工面との施工距離Lを、例えば熱劣化層103の脆化度合いに応じて、所定距離に調整して、高圧ジェット水11の噴射を所望条件として高圧ジェット水11を熱劣化層103に噴射し、自動操縦により一定範囲の剥離を、一定速度、一定水圧で自動操縦により開始する。
【0080】
剥離作業中は、監視部61により表面の画像情報を表示部62に表示する。
そして、熱劣化層103の除去中において、その作業表面を監視部61で監視し、その画像信号S
1を表示部62に送り、表示部62で表示するようにしてもよい。
また、画像信号S
1を制御装置65の画像解析部により送って解析し、その濃淡信号S
2を、表示部62で表示するようにしてもよい。
また、制御装置65は、濃淡信号S
2を基にして、水圧・流量の制御指示や、高圧ジェット水11のON/OFFの制御指示等を作成し、高圧水供給部14に指示するようにしてもよい。
また、必要に応じて、距離調整部36に指示を送り、高圧水ノズル12と熱劣化層103との施工距離(L)を調整するようにしてもよい。
【0081】
さらに、画像解析を行う際、作業状況の色度情報と位置情報とを随時表面の確認しておき、剥離の有無は色調変化により解析し、劣化度合いに応じて、処理が足りない場合には、色調を判断して、位置情報を基に、再度剥離処理を行うようにしてもよい。
【0082】
これにより、例えば船舶の甲板の表面に耐熱塗装を広範囲で施した場合、使用によって表面が熱劣化した際、この広範囲の熱劣化層を自動操縦により、剥離処理ができる。この結果、作業員による手作業での剥離作業が解消され、作業の大幅な効率化を図ることができる。