【0019】
図1にも、本発明の第1の水素化ポリマーのいくつかの態様例を示す。第1の水素化ポリマーは、水素化ブロックコポリマーの総重量に対して5wt%〜95wt%の水素化芳香族ビニルポリマー及び5wt%〜95wt%の水素化共役ジエンポリマーを含む。1つの実施態様において、芳香族ビニルモノマーはスチレンであり、共役ジエンモノマーはブタジエンまたはイソプレンである。また1つの実施態様において、水素化ポリブタジエンポリマーは、ポリブタジエンの水素化によって得られる。1つの実施態様において、水素
化共役ジエンポリマーは、水素化ポリイソプレンである。ただし、本発明のモノマーはスチレン、ブタジエン及びイソプレンに限られず、上述のあらゆる適切な誘導体はすべて本発明に用いることができることに注意すべきである。例えば、水素化芳香族ビニルブロックのモノマーは、スチレン(styrene)、メチルスチレン(methylstyrene)のあらゆる異性体、エチルスチレン(ethylstyrene)のあらゆる異性体、シクロヘキシルスチレン(cyclohexylstyrene)、ビニルビフェニル(vinyl biphenyl)、1−ビニル−5−ヘキシルナフタレン(1−vinyl−5−hexyl naphthalene)、ビニルナフタレン(vinyl
naphthalene)、ビニルアントラセン(vinyl anthracene
)及びこれらの任意の組み合わせから構成される群から独立して選択することができる。水素化共役ジエンブロックのモノマーは、1,3−ブタジエン(1,3−butadiene)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン (2,3−dimethyl−1,3−bu
tadiene)、3−ブチル−1,3−オクタジエン(3−butyl−1,3−octadiene)、イソプレン(isoprene)、1−メチルブタジエン (1−me
thylbutadiene)、 2−フェニル−1,3−ブタジエン(2−phenyl−1,3−butadiene)及びこれらの任意の組み合わせから構成される群から独
立して選択することができる。
【実施例】
【0029】
(実施例1:水素化トリブロックコポリマー)
A.重合
本実施例の重合プロセスはシクロヘキサンを溶媒として用い、その中に少量のテトラヒドロフラン(THF)を添加して極性を調節し、かつセカンダリ−ブチルリチウムを重合開始剤とする。反応性モノマーはスチレン、ブタジエンまたはイソプレンとする。溶媒、促進剤及びモノマーは、先に活性アルミナ(Activated Alumina)で精製することができる。反応は、撹拌器を備えたオートクレーブ中で行う。反応プロセスを概述すると、以下のような工程となる。
1.1 シクロヘキサン1100gとTHF4gを加える。
1.2 温度50℃まで加熱する。
1.3 スチレン22.3gを加える。
1.4 開始剤を5.5g加えて反応を開始させる。
1.5 反応を30分間持続させる。
1.6 ブタジエン93.3gを加える。
1.7 反応を60分間持続させる。
1.8 スチレン22.3gを加える。
1.9 反応を30分間持続させる。
1.10 メタノール0.2gを終止剤として加えて反応を終止させる。
【0030】
その後、重量平均分子量が22,000のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレ
ンのトリブロックコポリマーを含む1245gの溶液が得られる。この実施例において、スチレンモノマー及びブタジエンモノマーは異なるタイミングで分けて加えられる。その他実施例において、スチレンモノマー及びブタジエンモノマーを同時に加えてランダムコポリマー(random type copolymers)を取得することもできる。
【0031】
B.部分水素化
2.1 トリブロックコポリマー溶液200mlをオートクレーブ中に加える(総固形
分:12%)。
2.2 Ru−Al2O3触媒(Al2O3を担体とすし、10%のRuを含む)3.0gを加える。
2.3 5倍量の窒素ガス及び3倍量の水素ガスでパージする。
2.4 水素ガスの圧力を60kg/cm2とする。
2.5 加熱して温度を170℃に維持する。
2.6 反応を200分間持続させる。
【0032】
(実施例2:水素化ペンタブロックコポリマー)
A.重合
1.1 シクロヘキサン2320g及びTHF6.9gを加える。
1.2 温度50℃まで加熱する。
1.3 スチレン40.95gを加える。
1.4 開始剤を6.8g加えて反応を開始させる。
1.5 反応を30分間持続させる。
1.6 ブタジエン143.3gを加える。
1.7 反応を45分間持続させる。
1.8 スチレン40.95gを加える。
1.9 反応を30分間持続させる。
1.10 ブタジエン143.3gを加える。
1.11 反応を45分間持続させる。
1.12 スチレン40.95gを加える。
1.13 反応を30分間持続させる。
1.14 メタノール0.2gを終止剤として加え、反応を終止する。
【0033】
その後、重量平均分子量が65,000のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンのペンタブロックコポリマーを含む2736gの溶液が得られる。
【0034】
B.部分水素化
2.1 ペンタブロックコポリマー溶液2000 mlをオートクレーブ中に加える(総固形分:7%)。
2.2 Pd−C触媒(Pd−C:活性炭を担体とし、10%のパラジウムを含む)3.5gを加える。
2.3 5倍量の窒素ガス及び3倍量の水素ガスでパージする。
2.4 水素ガスの圧力を38kg/cm2とする。
2.5 加熱して温度を170℃に維持する。
2.6 反応を240分間持続させる。
【0035】
上述の水素化ブロックコポリマーは適切なサンプリングを行い、FT−IR及びH−NMR処理を行ってその細部構造を分析することができる。
【0036】
FT−IR分析(ペンタブロックSBSBSコポリマー)
図4に水素化ブロックコポリマー及びそのベースのポリマー(即ち、水素化を行っていないポリマー)のFT−IRスペクトル図を示す。ベースのポリマーと比較して、水素化ブロックコポリマーはトランス及びビニル構造の比較的はっきりしない吸収帯があり、これはポリブタジエンのC−C二重結合のほとんどが水素化されていることを表す。約1400cm−1の箇所に新しく特有の吸収ピークがあり、これはシクロヘキセンのCH2の変角を表すことができる。
【0037】
H−NMR分析(ペンタブロックSBSBSコポリマー)
図5に水素化ブロックコポリマーのH−NMRスペクトル図を示す。これは、SBSBSペンタブロックコポリマー上の大部分のポリブタジエンが水素化されていることを示す。
図5において、6.0〜7.5ppmの範囲の一定のNMRピークは、水素化工程中に水素化されなかったスチレン基の吸収ピークを表す。5.0〜5.5ppmの範囲の新しく特有のNMRピークは、水素化ブロックコポリマーの芳香族部分が部分的に水素化されていることを表す。5.0〜5.3ppmの範囲のピークは、水素化工程中に生じるビニルシクロヘキサジエン(vinyl−cyclohexadiene)基(即ち、2個の二重結合を有する)の吸収を表す。5.3〜5.5ppmの範囲のピークは、水素化工程中に生じるビニルシクロヘキセン(vinyl cyclohexene)基(即ち、1
個の二重結合を有する)の吸収を表すと考えられる。
【0038】
本明細書でいう水素化ポリマーのDB%は、核磁気共鳴装置(NMR)を使用して測定される。以下、
図5を参照し、実施例2で得られるペンタブロック水素化コポリマーについて、DB%の測定方法を説明する。まず、この実施例において、DB%
ビニルシクロヘキセンは、1個のみの二重結合を炭素環上に有する割合を表し、DB%
ビニルシクロヘキサジエンは2個の二重結合を炭素環上に有する割合を表すことを理解しておく必要がある。DB%は以下の式で得られ、ここで、Rは水素化される前のポリマーの総量に対するスチレンモノマーの割合を表し、Sは水素化されたポリマーの総量に対するスチレン基の割合を表す。Sは水素化されたポリマー中のスチレン基の未水素化率と見なすことができ、UV−VISにより測定された水素化率から得ることができる。
DB% =(DB%
ビニルシクロヘキセン+DB%
ビニルシクロヘキサジエン)×R、
DB%
ビニルシクロヘキセン=(5/2)×S×(H−NMRスペクトル中のビニルシクロヘキセン基のシグナルの積分面積/H−NMRスペクトル中の水素化工程中に水素化されなかったスチレン基のシグナルの積分面積)×(108/104)
DB%
ビニルシクロヘキサジエン=(5/4)×S×(H−NMRスペクトル中のビニルシクロヘキサジエン基のシグナルの積分面積/H−NMRスペクトル中の水素化工程中に水素化されなかったスチレン基のシグナルの積分面積)×(106/104)。
【0039】
水素化トリブロックコポリマーについてのDB%の測定方法は、上述と同様の方法により、得ることができる。
【0040】
NMR分析(トリブロックSBSコポリマー)
図7に、水素化トリブロックコポリマーのH−NMRスペクトル図を示す。
【0041】
NMR分析(トリブロックSBSコポリマー)
図8に、水素化トリブロックコポリマーの2D H−MBC(Heteronuclear multiple bond coherence)のスペクトル図を示す。
【0042】
NMR分析(トリブロックSBSコポリマー)
図9に、水素化トリブロックコポリマーの2D COSY(correlation spectroscopy)のスペクトル図を示す。
【0043】
実施例1〜2の詳細と類似しているため、実施例3〜7の詳細は省略する。表1に実施例1〜7の測定結果を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
以下に第2の水素化ポリマー製造の好ましい実施例である、実施例8〜13を説明する。
【0046】
(実施例8:水素化ポリスチレン)
A.重合
重合プロセスはシクロヘキサンを溶媒として使用し、その中に少量のテトラヒドロフラン(THF)を添加して極性を調節し、セカンダリ−ブチルリチウムを重合開始剤とする。反応性モノマーは、スチレンとする。溶媒、促進剤及びモノマーは活性アルミナ(Activated Alumina)で精製しておくことができる。反応は、撹拌器を備えたオートクレーブ中で行う。反応プロセスは、おおよそ以下の工程のようになる。
1.1 シクロヘキサン1100g及びTHF1gを加える。
1.2 温度45℃まで加熱する。
1.3 スチレン150gを加える。
1.4 開始剤4.61gを加えて反応を開始させる。
1.5 反応を30分間持続させる。
1.6 メタノール0.2gを加えて終止剤とし、反応を終止させる。
その後、重量平均分子量(Mw)15,400のポリスチレンを含む1250gの溶液が得られる。
【0047】
B.部分水素化
2.1 ポリスチレン溶液1100 mlをオートクレーブ中に加える(総固形分:12%)。
2.2 Ru/Al2O3触媒(Ru/Al2O3:Al2O3を担体とし、10%の
ルテニウムを含む)3.5gを加える。
2.3 5倍量の窒素ガスおよび3倍量の水素ガスでパージする。
2.4 水素ガスの圧力を60kg/cm2とする。
2.5 加熱して温度を170℃に維持する。
2.6 反応を160分間持続させる。
【0048】
図6に、実施例8で得た部分水素化ポリスチレンのH−NMRスペクトル図を示す。実施例8の詳細と類似しているため、実施例9〜13の詳細は省略する。下記表2に実施例8〜13の測定結果を示す。水素化ポリスチレンについての測定方法は上述と同様の方法により得ることができる。ポリスチレンにおいて、R(即ち、水素化される前のポリマーの総量に対するスチレンモノマーの割合)は1に等しいことに注意する。
【0049】
【表2】
【0050】
本発明はまた、前述の線形ブロックコポリマーから得られる星型ブロックコポリマーの部分水素化を含む。星型ブロックコポリマーはマルチコアを有することができ(即ち、ポリアルケニルカップリング剤)、及びポリマーアームとコアが連結される。ポリマーアームは共役ジエンまたは芳香族ビニルのホモポリマーまたはコポリマーを含む。星型ブロックコポリマーは、活性リチウム原子がポリマー鎖の1つの末端にある線形ブロックコポリマーを形成し、このポリマー鎖の両末端を多官能性化合物とカップリングし、このポリマー鎖を多官能性化合物の各官能基に加える、という工程で作製することができる。
【0051】
水素化コポリマーの応用
本発明の別の応用は、水素化ブロックコポリマーを官能性化合物と反応させることにより、官能化水素化ブロックコポリマーを提供する。適した官能性化合物には、酸無水物(acid anhydride)、酸ハロゲン化物(acid halides)、酸アミド(acid amide)、スルホン(sulfones)、オキサゾリン(oxazolines)、エポキシ化合物(epoxies)、イソシアネート(isocyanates)及びアミノ基(amino group)が含まれる。例えば、官能性化合物はカルボキシル基及びその誘導基を有することができ、例えばカルボキシル基及びその塩、またはエステル基、アミド基、及び酸無水物基等とすることができる。官能化反応はラジカル反応開始剤がある状況下で行うことができ、ラジカル反応開始剤は過酸化物やアゾ化合物等とすることができる。官能基は水素化ブロックコポリマーの環に結合することができる。官能性水素化ブロックコポリマーは改質剤として用いることができ、熱可塑性樹脂中の無機填料の分散性、極性、反応特性、耐熱性を改善できる。
【0052】
以上の詳細な説明は本発明の特定の好ましい実施例に基づくものであり、これらの記載は、本明細書に開示された特定の形態に、本発明を限定するものではない。
【0053】
即ち、これらの記載は限定ではなく、例示として認識すべきであり、本発明がそのように限定されるものではないことは、当業者には明白であろう。本発明の最も広い形態における精神及び範囲から逸脱せず、様々な変更、置き換え及び代替が可能であることを、当業者は理解すべきである。