特許第5987056号(P5987056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

特許5987056Flaviviridaeウイルスのインヒビターとして有用なチオフェン−2−カルボン酸誘導体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987056
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】Flaviviridaeウイルスのインヒビターとして有用なチオフェン−2−カルボン酸誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 333/40 20060101AFI20160823BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20160823BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 31/7056 20060101ALI20160823BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20160823BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20160823BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20160823BHJP
【FI】
   C07D333/40CSP
   A61P31/14
   A61P43/00 121
   A61K45/00
   A61K31/381
   A61K31/7056
   A61K37/66 G
   A61P1/16
   !C12N15/00 AZNA
【請求項の数】22
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2014-520381(P2014-520381)
(86)(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公表番号】特表2014-520862(P2014-520862A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】US2012046741
(87)【国際公開番号】WO2013010112
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年7月6日
(31)【優先権主張番号】61/507,544
(32)【優先日】2011年7月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500029420
【氏名又は名称】ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ワトキンス, ウィリアム ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】カネイルス, エダ
(72)【発明者】
【氏名】クラーク, マイケル オニール ハンラハン
(72)【発明者】
【氏名】レイザーウィズ, スコット エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ダーフラー, エドワード ミルトン ザ サード
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/031669(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/011303(WO,A1)
【文献】 特表2006−510636(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/068715(WO,A1)
【文献】 特表2008−540463(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/006055(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D327/00−347/00
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
A61K 38/21
A61K 45/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化34】

またはその薬学的に受容可能な塩あって、ここで:
は、Hもしくはメチルであり;そして
は、直鎖もしくは分枝鎖の(C)アルキルである、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩
【請求項2】
前記式(I)の化合物は、式(Ia)もしくは(Ib)の化合物
【化35】

である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩
【請求項3】
前記式(I)の化合物は、式(Ic)〜(If)の化合物
【化36】

である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩
【請求項4】
前記式(I)の化合物は、式(Ig)〜(Ip)の化合物
【化37-1】

【化37-2】

である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩
【請求項5】
はHである、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩
【請求項6】
はメチルである、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩
【請求項7】
式(Ic)の化合物
【化39】

である、請求項3に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩
【請求項8】
は、イソプロピルである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩
【請求項9】
以下の
【化42】

から選択される、化合物、ならびにその薬学的に受容可能な塩
【請求項10】
以下の
【化43】

から選択される、化合物、ならびにその薬学的に受容可能な塩
【請求項11】
治療上有効な量の、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩と、薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項12】
インターフェロン、リバビリンもしくはそのアナログ、HCV NS3プロテアーゼインヒビター、NS5Aインヒビター、α−グルコシダーゼ1インヒビター、肝保護剤、メバロネートデカルボキシラーゼアンタゴニスト、レニン−アンギオテンシン系のアンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、他の抗線維化剤、HCV NS5Bポリメラーゼのヌクレオシドもしくはヌクレオチドインヒビター、HCV NS5Bポリメラーゼの非ヌクレオシドインヒビター、HCV NS4Bインヒビター、ウイルス侵入および/もしくはアセンブリのインヒビター、TLR−7アゴニスト、シクロフィリンインヒビター、HCV IRESインヒビター、薬物動態増強剤ならびにHCVを処置するための他の薬物;またはこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のさらなる治療剤をさらに含む、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
Flaviviridaeウイルス感染を処置するための組成物であって請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは請求項11または12に記載の薬学的組成物を含み該組成物が、哺乳動物に投与されることを特徴とする、組成物
【請求項14】
前記ウイルス感染は、C型肝炎ウイルスによって引き起こされる、請求項13に記載の組成物
【請求項15】
インターフェロン、リバビリンもしくはそのアナログ、HCV NS3プロテアーゼインヒビター、NS5Aインヒビター、α−グルコシダーゼ1インヒビター、肝保護剤、メバロネートデカルボキシラーゼアンタゴニスト、レニン−アンジオテンシン系のアンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、他の抗線維化剤、HCV NS5Bポリメラーゼのヌクレオシドもしくはヌクレオチドインヒビター、HCV NS5Bポリメラーゼの非ヌクレオシドインヒビター、HCV NS4Bインヒビター、ウイルス侵入および/もしくはアセンブリのインヒビター、TLR−7アゴニスト、シクロフィリンインヒビター、HCV IRESインヒビター、薬物動態増強剤ならびにHCVを処置するための他の薬物;またはこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のさらなる治療剤と組み合わせて投与されることによって特徴づけられる、請求項13または14に記載の組成物
【請求項16】
Flaviviridaeウイルス感染の処置のための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む組成物
【請求項17】
C型肝炎ウイルス感染の処置のための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む組成物
【請求項18】
HCVの処置もしくは予防のための医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用。
【請求項19】
Flaviviridaeウイルス感染の処置もしくは予防のための医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用。
【請求項20】
医学療法における使用のための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む組成物
【請求項21】
HCVの処置もしくは予防のための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む組成物。
【請求項22】
Flaviviridaeウイルス感染の処置もしくは予防のための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の優先権)
本出願は、2011年7月13日に出願された米国仮特許出願第61/507,544号の優先権を主張する。本明細書では、この仮特許出願の全内容が、参考として本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本願は、Flaviviridaeウイルスの新規インヒビター、このような化合物を含む組成物、およびこのような化合物の投与を含む治療法を包含する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
C型肝炎ウイルス(HCV)は、全世界での慢性肝疾患の第1位の原因である(非特許文献1)ので、現在の抗ウイルス研究の重要な焦点は、ヒトにおける慢性HCV感染の処置の改善された方法の開発に向けられている(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。多くのHCV処置が、非特許文献5においてDymockらによって総説されている。慢性HCV感染を有する患者のウイルス学的治癒は、慢性感染した患者における毎日の驚異的な量のウイルス生成およびHCVウイルスの非常に自然発生的な変異性が原因で、達成が困難である(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)。
【0004】
主に2種の化合物、リバビリン(ヌクレオシドアナログ)およびインターフェロン−アルファ(α)(IFN)は、ヒトにおける慢性HCV感染を処置するために使用されてきた。リバビリンは、単独では、ウイルスRNAレベルを低下させることにおいて有効ではなく、有意な毒性を有し、貧血を誘導することが公知である。IFNおよびリバビリンの組み合わせは、慢性C型肝炎の管理において有効であると報告された(非特許文献10)が、この処置を与えた患者の半数未満しか、持続した利益を示さなかった。近年では、テラプレビルおよびボセプレビルの両方がまた、HCVの処置について米国で承認された。
【0005】
さらに、抗Flaviviridaeウイルス活性を有するアルキニル置換チオフェンは、Chanら、特許文献1;Wunbergら、特許文献2;およびChanら、特許文献3によって開示されてきた;しかし、これらのうちのいずれも、抗ウイルス治療剤として現在承認されていない。上記の報告にも拘わらず、Flaviviridaeウイルスファミリー(HCVを含む)からの感染は、全世界で顕著な死亡率、罹患率および経済的損失を引き起こし続けている。従って、Flaviviridaeウイルス感染(例えば、HCV)のための有効な処置を開発する必要性が未だにある。特に、現在利用可能な治療のうちの1つまたは複数に対して耐性を発生させたFlaviviridaeウイルス感染のための処置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/058393号
【特許文献2】国際公開第2006/072347号
【特許文献3】国際公開第2002/100851号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Boyer, N. et al. J Hepatol. 32:98−112, 2000
【非特許文献2】Di Besceglie, A.M. and Bacon, B. R., Scientific American, Oct.:80−85, (1999)
【非特許文献3】Gordon, C. P., et al., J. Med. Chem. 2005, 48, 1−20
【非特許文献4】Dymock et al.,Maradpour, D., et al., Nat. Rev. Micro. 2007, 5(6), 453−463
【非特許文献5】Antiviral Chemistry & Chemotherapy, 11 :2; 79−95(2000)
【非特許文献6】Neumann, et al., Science 1998, 282, 103−7
【非特許文献7】Fukimoto, et al., Hepatology, 1996, 24, 1351−4
【非特許文献8】Domingo, et al., Gene, 1985, 40, 1−8
【非特許文献9】Martell, et al., J. Virol. 1992, 66, 3225−9
【非特許文献10】Scott, L. J., et al. Drugs 2002, 62, 507−556
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、Flaviviridaeウイルス感染の有効な処置である化合物を提供する。さらに、本発明の特定の化合物は、耐性Flaviviridaeウイルス感染に対して有用な活性を有する。よって、一局面において、式Iの化合物
【0009】
【化1】
またはその薬学的に受容可能な塩もしくはエステルが提供され、ここで、
は、Hもしくはメチルであり;そして
は、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニル、アリール、複素環、ヘテロアラルキル、もしくはアラルキルである。
【0010】
別の局面において、Flaviviridaeウイルス感染を処置するための方法が提供され、上記方法は、治療上有効な量の式Iの化合物を、それを必要とする哺乳動物に投与する工程を包含する。上記式Iの化合物は、それを必要とするヒト被験体(例えば、Flaviviridae科のウイルスに感染しているヒト)に投与される。別の実施形態において、上記式Iの化合物は、それを必要とするヒト被験体(例えば、HCVウイルスに感染しているヒト)に投与される。一実施形態において、上記処置は、ウイルス負荷のうちの1つまたは複数の低下もしくは患者におけるウイルスRNAのクリアランスをもたらす。
【0011】
別の実施形態において、ウイルス感染によって引き起こされる疾患を、式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはエステルの治療上有効な量を、それを必要とする被験体に投与することによって、処置および/もしくは予防するための方法が提供され、ここで上記ウイルス感染は、デングウイルス、黄熱ウイルス、西ナイルウイルス、日本脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、クンジンウイルス(Junjin virus)、マリーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、ジカウイルスおよびC型肝炎ウイルスからなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0012】
別の局面において、Flaviviridaeウイルス感染の処置のための医薬の製造のための、式Iの化合物の使用が提供される。別の局面において、Flaviviridaeウイルス感染を処置することにおいて使用するための式Iの化合物が提供される。一実施形態において、上記Flaviviridaeウイルス感染は、急性もしくは慢性のHCV感染である。使用および化合物の各局面の一実施形態において、上記処置は、上記ウイルス負荷のうちの1つまたは複数の低下もしくは上記患者におけるRNAのクリアランスをもたらす。
【0013】
別の局面において、HCVを処置もしくは予防するための方法が提供され、上記方法は、有効量の式Iの化合物を、それを必要とする患者に投与する工程を包含する。別の局面において、HCVの処置もしくは予防のための医薬の製造のための、本発明の化合物の使用が提供される。
【0014】
別の局面において、Flaviviridaeウイルス感染もしくはC型肝炎ウイルス感染の処置のための式Iの化合物の使用が提供される。
【0015】
別の局面において、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくはエステル、および1種または複数種の薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤を含む薬学的組成物が提供される。式Iの薬学的組成物は、1種または複数種のさらなる治療剤をさらに含み得る。上記1種または複数種のさらなる治療剤は、インターフェロン、リバビリンもしくはそのアナログ、HCV NS3プロテアーゼインヒビター、NS5Aインヒビター、α−グルコシダーゼ1インヒビター、肝保護剤、メバロネートデカルボキシラーゼアンタゴニスト、レニン−アンジオテンシン系のアンタゴニスト、他の抗線維化剤(anti−fibrotic agent)、エンドセリンアンタゴニスト、HCV NS5Bポリメラーゼのヌクレオシドもしくはヌクレオチドインヒビター、HCV NS5Bポリメラーゼの非ヌクレオシドインヒビター、HCV NS4Bインヒビター、ウイルス侵入および/もしくはアセンブリのインヒビター、TLR−7アゴニスト、シクロフィリンインヒビター、HCV IRESインヒビター、薬物動態増強剤ならびにHCVを処置するための他の薬物;またはこれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない。
【0016】
別の局面において、感染動物におけるHCV感染の症状もしくは影響の処置もしくは予防のための方法が提供され、上記方法は、有効量の式Iの化合物、および抗HCV特性を有する第2の化合物を含む薬学的組み合わせ組成物もしくは処方物を、上記動物に投与する工程、すなわち、上記動物を処置する工程を包含する。
【0017】
別の実施形態において、式Iの化合物ならびにその薬学的に受容可能な塩およびエステル、ならびにその全てのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、多形、偽多形(pseudopolymorph)および無定形形態が提供される。
【0018】
別の局面において、式Iの化合物を調製するために有用である、本明細書で開示されるプロセスおよび新規中間体が提供される。
【0019】
他の局面において、式Iの化合物の合成、分析、分離、単離、精製、特徴付けおよび試験のための新規方法が、提供される。
【0020】
本発明は、本明細書全体を通して、本明細書で記載されるとおりの局面および実施形態の組み合わせ、ならびに好ましいものを包含する。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
式Iの化合物
【化34】

またはその薬学的に受容可能な塩もしくはエステルであって、ここで:
は、Hもしくはメチルであり;そして
は、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニル、アリール、複素環、ヘテロアラルキル、もしくはアラルキルであり;
ここで各アルキルは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドのうちの1つまたは複数によって必要に応じて置換され得る、直鎖、分枝鎖もしくは環式の炭化水素部分を表すか;
またはアルキルは、1個または複数の水素原子が酸素によって置換される、上で定義されるとおりのアルキルを表し;
各(C−C12)アルケニルは、少なくとも1個の二重結合を含むアルキルを表し;
各(C−C12)アルキニルは、少なくとも1個の三重結合を含み、必要に応じて1個または複数の二重結合を含むアルキルを表し;
各アリールは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドのうちの1つまたは複数によって必要に応じて置換され得る少なくとも1個のベンゼノイド型環を含む炭素環式部分を表し;
各アラルキルは、(アリール)C1−6アルキル−、(アリール)C1−6アルケニル−、もしくは(アリール)C1−6アルキニル−基を表し;
各複素環は、少なくとも1個のヘテロ原子によって割り込まれている飽和もしくは不飽和の環式部分を表し、該環式部分は、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノ、オキソ、もしくはグアニドによって必要に応じて置換され得;
各ヘテロアラルキルは、(複素環)C1−6アルキル−、(複素環l)C1−6アルケニル−、もしくは(複素環)C1−6アルキニル−基を表し;そして
R12、Rc、Rd、R13およびR14は各々独立して、H、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C6−14アリール、C3−12複素環、C3−18ヘテロアラルキル、C6−18アラルキルから選択されるか、またはRcおよびRdは、酸素と一緒になって、5〜10員の複素環を形成するか、またはR13およびR14は、窒素と一緒になって、3〜10員の複素環を形成する、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくはエステル。
(項目2)
前記式(I)の化合物は、式(Ia)もしくは(Ib)の化合物
【化35】

である、項目1に記載の化合物。
(項目3)
前記式(I)の化合物は、式(Ic)〜(If)の化合物
【化36】

である、項目1に記載の化合物。
(項目4)
前記式(I)の化合物は、式(Ig)〜(Ip)の化合物
【化37-1】

【化37-2】

である、項目1に記載の化合物。
(項目5)
前記式(I)の化合物は、式(Ir)〜(Iy)の化合物
【化38-1】

【化38-2】

であり、
ここで該環Aは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドのうちの1つまたは複数によって必要に応じて置換され;
ここでR12、Rc、Rd、R13およびR14は各々独立して、H、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C6−14アリール、C3−12複素環、C3−18ヘテロアラルキル、C6−18アラルキルから選択されるか、またはRcおよびRdは、酸素と一緒になって、5〜10員の複素環を形成するか、またはR13およびR14は、窒素と一緒になって、3〜10員の複素環を形成する、
項目1に記載の化合物。
(項目6)
はHである、項目1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
(項目7)
はメチルである、項目1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
(項目8)
はHである、項目1〜4または6〜7のいずれか1項に記載の化合物。
(項目9)
は、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニルであり、ここでRは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドのうちの1つまたは複数によって必要に応じて置換され;
ここでR12、Rc、Rd、R13およびR14は各々独立して、H、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C6−14アリール、C3−12複素環、C3−18ヘテロアラルキル、C6−18アラルキルから選択されるか、またはRcおよびRdは、酸素と一緒になって、5〜10員の複素環を形成するか、またはR13およびR14は、窒素と一緒になって、3〜10員の複素環を形成する、
項目1〜4または6〜7のいずれか1項に記載の化合物。
(項目10)
は、アリールもしくはアラルキルであり、ここでRは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドのうちの1つまたは複数によって必要に応じて置換され;
ここでR12、Rc、Rd、R13およびR14は各々独立して、H、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C6−14アリール、C3−12複素環、C3−18ヘテロアラルキル、C6−18アラルキルから選択されるか、またはRcおよびRdは、酸素と一緒になって、5〜10員の複素環を形成するか、またはR13およびR14は、窒素と一緒になって、3〜10員の複素環を形成する、
項目1〜4または6〜7のいずれか1項に記載の化合物。
(項目11)
は、複素環もしくはヘテロアラルキルであり、ここでRは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドのうちの1つまたは複数によって必要に応じて置換され;
ここでR12、Rc、Rd、R13およびR14は各々独立して、H、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C6−14アリール、C3−12複素環、C3−18ヘテロアラルキル、C6−18アラルキルから選択されるか、またはRcおよびRdは、酸素と一緒になって、5〜10員の複素環を形成するか、またはR13およびR14は、窒素と一緒になって、3〜10員の複素環を形成する、
項目1〜4または6〜7のいずれか1項に記載の化合物。
(項目12)
式(Ic)の化合物
【化39】

である、項目3に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくはエステル。
(項目13)
は、以下の
【化40】

から選択される、項目1〜4、6〜7、および12のいずれか1項に記載の化合物。
(項目14)
は、以下の
【化41】

である、項目1〜4、6〜7、および12のいずれか1項に記載の化合物。
(項目15)
は、イソプロピルである、項目1〜4、6〜7および12のいずれか1項に記載の化合物。
(項目16)
以下の
【化42】

から選択される、化合物、ならびにその薬学的に受容可能な塩およびエステル。
(項目17)
以下の
【化43】

から選択される、化合物、ならびにその薬学的に受容可能な塩およびエステル。
(項目18)
以下の
【化44】

から選択される、化合物、ならびにその薬学的に受容可能な塩およびエステル。
(項目19)
治療上有効な量の、項目1〜18のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤とを含む、薬学的組成物。
(項目20)
インターフェロン、リバビリンもしくはそのアナログ、HCV NS3プロテアーゼインヒビター、NS5Aインヒビター、α−グルコシダーゼ1インヒビター、肝保護剤、メバロネートデカルボキシラーゼアンタゴニスト、レニン−アンギオテンシン系のアンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、他の抗線維化剤、HCV NS5Bポリメラーゼのヌクレオシドもしくはヌクレオチドインヒビター、HCV NS5Bポリメラーゼの非ヌクレオシドインヒビター、HCV NS4Bインヒビター、ウイルス侵入および/もしくはアセンブリのインヒビター、TLR−7アゴニスト、シクロフィリンインヒビター、HCV IRESインヒビター、薬物動態増強剤ならびにHCVを処置するための他の薬物;またはこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のさらなる治療剤をさらに含む、項目19に記載の薬学的組成物。
(項目21)
Flaviviridaeウイルス感染を処置するための方法であって、上記方法は、項目1〜20のいずれか1項に記載の化合物もしくは薬学的組成物の治療上有効な量を、それを必要とする哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目22)
前記ウイルス感染は、C型肝炎ウイルスによって引き起こされる、項目21に記載の方法。
(項目23)
インターフェロン、リバビリンもしくはそのアナログ、HCV NS3プロテアーゼインヒビター、NS5Aインヒビター、α−グルコシダーゼ1インヒビター、肝保護剤、メバロネートデカルボキシラーゼアンタゴニスト、レニン−アンジオテンシン系のアンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、他の抗線維化剤、HCV NS5Bポリメラーゼのヌクレオシドもしくはヌクレオチドインヒビター、HCV NS5Bポリメラーゼの非ヌクレオシドインヒビター、HCV NS4Bインヒビター、ウイルス侵入および/もしくはアセンブリのインヒビター、TLR−7アゴニスト、シクロフィリンインヒビター、HCV IRESインヒビター、薬物動態増強剤ならびにHCVを処置するための他の薬物;またはこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のさらなる治療剤を投与する工程をさらに包含する、項目21または22に記載の方法。
(項目24)
Flaviviridaeウイルス感染の処置のための、項目1〜18のいずれか1項に記載の化合物。
(項目25)
C型肝炎ウイルス感染の処置のための、項目1〜18のいずれか1項に記載の化合物。
(項目26)
HCVの処置もしくは予防のための医薬の製造のための、項目1〜18のいずれか1項に記載の化合物の使用。
(項目27)
Flaviviridaeウイルス感染の処置もしくは予防のための医薬の製造のための、項目1〜18のいずれか1項に記載の化合物の使用。
(項目28)
医学療法における使用のための、項目1〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
今や、本発明の特定の実施形態に対して詳細に言及がなされ、それらの例は、添付の構造および式に図示される。本発明は、列挙される実施形態とともに記載されるものの、それらの例は、それら実施形態に本発明を限定することが意図されていないことが理解される。対照的に、本発明は、本明細書で定義されるとおり本発明の範囲内に含まれる全ての代替物、改変、および等価物を網羅することが意図される。
【0022】
本明細書で言及される各文書は、全ての目的でその全体が参考として援用される。
【0023】
(定義)
別段示されなければ、以下の用語および語句は、本明細書で使用される場合、以下の意味を有することが意図される。特定の用語もしくは語句が具体的に定義されていないという事実は、不明確さにも明瞭性を欠くことにも相互に関連しないはずであるが、むしろ本明細書中の用語は、それらの通常の意味内で使用される。商品名が本明細書で使用される場合、出願人らは、商品名の製品および上記商品名の製品の活性な薬学的成分を無関係に含むことを意図する。
【0024】
用語「処置する」、およびその文法的に同等の語句は、疾患を処置する状況において使用される場合、疾患の進行を遅らせることもしくは止めること、または疾患の少なくとも1つの症状を改善すること、より好ましくは、疾患の1つより多くの症状を改善することを意味する。例えば、C型肝炎ウイルス感染の処置は、HCV感染ヒトにおけるHCVウイルス負荷を低下させること、および/またはHCV感染ヒトに存在する黄疸の重篤度を軽減することを包含し得る。
【0025】
本願において使用される場合、用語「アルキル」とは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドのうちの1つまたは複数によって必要に応じて置換され得る、直鎖、分枝鎖もしくは環式の炭化水素部分を表し、ここでR12、Rc、Rd、R13およびR14は各々独立して、H、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C6−14アリール、C3−12複素環、C3−18ヘテロアラルキル、C6−18アラルキルから選択されるか、またはRcおよびRdは、酸素と一緒になって、5〜10員の複素環を形成するか、またはR13およびR14は、窒素と一緒になって、3〜10員の複素環を形成する。アルキルの有用な例としては、イソプロピル、エチル、フルオロヘキシルもしくはシクロプロピルが挙げられる。用語アルキルはまた、1個または複数の水素原子が酸素によって置き換えられている(例えば、ベンゾイル)かまたはハロゲンによって置換されているアルキルを含むことが意味され、より好ましくは、上記ハロゲンは、フルオロ(例えば、CF−もしくはCFCH−)である。本発明の一実施形態において、アルキルは、(C−C12)アルキルである。本発明の別の実施形態において、アルキルは、(C−C)アルキルである。
【0026】
用語「アルケニル」および「アルキニル」は、少なくとも1個の不飽和基を含むアルキル(例えば、アリル、アセチレン、エチレン)を表す。
【0027】
用語「アリール」とは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドのうちの1つまたは複数によって必要に応じて置換され得る、少なくとも1個のベンゼノイド型環を含む炭素環式部分を表し、ここでR12、Rc、Rd、R13およびR14は各々独立して、H、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C6−14アリール、C3−12複素環、C3−18ヘテロアラルキル、C6−18アラルキルから選択されるか、またはRcおよびRdは、酸素と一緒になって、5〜10員の複素環を形成するか、またはR13およびR14は、窒素と一緒になって、3〜10員の複素環を形成する。アリールの例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。本発明の一実施形態において、上記アリール炭素環式部分は、6〜14個の炭素原子を含む。本発明の別の実施形態において、上記アリール炭素環式部分は、6〜10個の炭素原子を含む。
【0028】
用語「アラルキル」とは、C1−6アルキル、C1−6アルケニル、もしくはC1−6アルキニルによって隣接する原子に結合されるアリール基を表す(例えば、ベンジル)。
【0029】
用語「複素環」とは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドによって必要に応じて置換され得る、少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄もしくは窒素)によって環式部分が割り込まれる、飽和もしくは不飽和の環式部分を表し、
ここでR12、Rc、Rd、R13およびR14は各々独立して、H、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C6−14アリール、C3−12複素環、C3−18ヘテロアラルキル、C6−18アラルキルから選択されるか、またはRcおよびRdは、酸素と一緒になって、5〜10員の複素環を形成するか、またはR13およびR14は、窒素と一緒になって、3〜10員の複素環を形成する。用語複素環式環は、単環式もしくは多環式(例えば、二環式)の環を表すことが理解される。複素環式環の例としては、エポキシド;フラン;ベンゾフラン;イソベンゾフラン;オキサチオラン;ジチオラン;ジオキソラン;ピロール;ピロリジン;イミダゾール;ピリジン;ピリミジン;インドール;ピペリジン;モルホリン;チオフェンおよびチオモルホリンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、上記複素環の環式部分は、3〜14個の原子を含む。本発明の別の実施形態において、上記複素環の環式部分は、5〜10個の原子を含む。
【0030】
用語「ヘテロアラルキル」とは、C1−6アルキル、C1−6アルケニル、もしくはC1−6アルキニルによって隣接する原子に結合される複素環を表す。
【0031】
硫黄原子が存在する場合、上記硫黄原子は、異なる酸化レベル(すなわち、S、SO、もしくはSO)であり得る。全てのこのような酸化レベルは、本発明の範囲内にある。
【0032】
本発明の一実施形態において、上記式(I)の化合物は、式(Ia)もしくは(Ib)の化合物
【0033】
【化2】
である。
【0034】
本発明の一実施形態において、上記式(I)の化合物は、式(Ic)〜(If)の化合物
【0035】
【化3】
である。
【0036】
本発明の一実施形態において、上記式(I)の化合物は、式(Ig)〜(Ip)の化合物
【0037】
【化4-1】
【0038】
【化4-2】
である。
【0039】
本発明の一実施形態において、上記式(I)の化合物は、式(Ir)−(Iy)の化合物
【0040】
【化5-1】
【0041】
【化5-2】
であり、
ここで上記環Aは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドのうちの1つまたは複数によって必要に応じて置換され;
ここでR12、Rc、Rd、R13およびR14は各々独立して、H、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C6−14アリール、C3−12複素環、C3−18ヘテロアラルキル、C6−18アラルキルから選択されるか、またはRcおよびRdは、酸素と一緒になって、5〜10員の複素環を形成するか、またはR13およびR14は、窒素と一緒になって、3〜10員の複素環を形成する。
【0042】
本発明の一実施形態において、Rは、Hである。
【0043】
本発明の一実施形態において、Rは、メチルである。
【0044】
本発明の一実施形態において、Rは、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニルであり、ここでRは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドのうちの1つまたは複数によって必要に応じて置換され、ここでR12、Rc、Rd、R13およびR14は各々独立して、H、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C6−14アリール、C3−12複素環、C3−18ヘテロアラルキル、C6−18アラルキルから選択されるか、またはRcおよびRdは、酸素と一緒になって、5〜10員の複素環を形成するか、またはR13およびR14は、窒素と一緒になって、3〜10員の複素環を形成する。
【0045】
本発明の一実施形態において、Rは、アリールもしくはアラルキルであり、ここでRは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドのうちの1つまたは複数によって必要に応じて置換され、ここでR12、Rc、Rd、R13およびR14は各々独立して、H、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C6−14アリール、C3−12複素環、C3−18ヘテロアラルキル、C6−18アラルキルから選択されるか、またはRcおよびRdは、酸素と一緒になって、5〜10員の複素環を形成するか、またはR13およびR14は、窒素と一緒になって、3〜10員の複素環を形成する。
【0046】
本発明の一実施形態において、Rは、複素環もしくはヘテロアラルキルであり、ここでRは、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、SOR12、PORcRd、CONR13R14、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−12アラルキル、C6−12アリール、C1−6アルキルオキシ、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C6−12アリールオキシ、C(O)C1−6アルキル、C(O)C2−6アルケニル、C(O)C2−6アルキニル、C(O)C6−12アリール、C(O)C6−12アラルキル、C3−10複素環、ヒドロキシル、NR13R14、C(O)OR12、シアノ、アジド、アミジノもしくはグアニドのうちの1つまたは複数によって必要に応じて置換され、ここでR12、Rc、Rd、R13およびR14は各々独立して、H、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C6−14アリール、C3−12複素環、C3−18ヘテロアラルキル、C6−18アラルキルから選択されるか、またはRcおよびRdは、酸素と一緒になって、5〜10員の複素環を形成するか、またはR13およびR14は、窒素と一緒になって、3〜10員の複素環を形成する。
本発明の一実施形態において、Rは、以下の
【0047】
【化6】
から選択される。
【0048】
本発明の一実施形態において、Rは、以下の
【0049】
【化7】
である。
【0050】
本発明の一実施形態において、Rは、イソプロピルである。
【0051】
当業者によって認識されるように、本発明の化合物は、溶媒和形態もしくは水和形態で存在し得る。本発明の範囲は、このような形態を包含する。繰り返すと、当業者によって認識されるように、上記化合物は、エステル化されることを受容する能力があり得る。本発明の範囲は、エステルおよび他の生理学的に機能的な誘導体を包含する。本発明の範囲は、本明細書に記載される化合物のプロドラッグ形態を包含する。
【0052】
「エステル」とは、上記分子の−COOH官能基のうちのいずれかが、−C(O)OR官能基によって置き換えられているか、または上記分子の−OH官能基のうちのいずれかが、−OC(O)R官能基で置き換えられている化合物の任意のエステルを意味し、ここで上記エステルのR部分は、安定なエステル部分を形成する任意の炭素含有基(上記炭素含有基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキルおよびこれらの置換された誘導体が挙げられるが、これらに限定されない)である。
【0053】
用語「プロドラッグ」とは、本明細書で使用される場合、生物学的系に投与される場合、自然発生的化学反応、酵素触媒化学反応、光分解、および/もしくは代謝的化学反応の結果として、上記薬物物質、すなわち、活性成分を生成する任意の化合物をいう。プロドラッグは、従って、治療上活性な化合物の共有結合的に改変されたアナログもしくは潜在的形態である。プロドラッグの非限定的例としては、エステル部分、四級アンモニウム部分、およびグリコール部分などが挙げられる。
【0054】
当業者は、上記式Iもしくは式IIの化合物の置換基および他の部分が、受容可能に安定な薬学的組成物へと製剤され得る薬学的に有用な化合物を提供するのに十分安定である化合物を提供するために選択されるべきであることを認識する。このような安定性を有する式Iもしくは式IIの化合物は、本発明の範囲内に入ると企図される。
【0055】
式Iの化合物およびその薬学的に受容可能な塩は、異なる多形もしくは偽多形として存在し得る。本明細書で使用される場合、結晶の多形性は、結晶性化合物が異なる結晶構造で存在できることを意味する。多形性は、一般に、温度もしくは圧力、またはその両方における変化に対する応答として起こり得る。多形性はまた、結晶化プロセスにおけるバリエーションから生じ得る。多形は、X線回折パターン、溶解度、および融点のような、当該分野で公知の種々の物理的特徴によって区別され得る。上記結晶の多形性は、結晶充填における差異から生じ得るか(充填多形性)、または同じ分子の異なる配座異性体(conformer)間での充填における差異から生じ得る(配座多形性)。本明細書で使用される場合、結晶の偽多形性とは、化合物の水和物もしくは溶媒和物が異なる結晶構造で存在することができることを意味する。本発明の偽多形は、結晶充填における差異に起因して存在し得る(充填偽多形性)か、もしくは同じ分子の異なる配座異性体間での充填における差異に起因して存在し得る(配座偽多形性)。本発明は、上記式Iの化合物の全ての多形および偽多形、ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩を包含する。
【0056】
式Iの化合物およびその薬学的に受容可能な塩はまた、無定形固体として存在し得る。本明細書で使用される場合、無定形固体は、固体において原子の位置の長距離秩序が存在しない固体である。この定義は、上記結晶サイズが2ナノメートル以下である場合にも適用される。添加物(溶媒を含む)は、本発明の無定形形態を作り出すために使用され得る。本発明は、式Iの化合物およびそれらの薬学的に受容可能な塩の全ての無定形形態を含む。
【0057】
本明細書に記載される特定の化合物は、1つまたは複数のキラル中心を含むか、またはそうでなければ、複数の立体異性体として存在し得る。本発明の範囲は、立体異性体の混合物ならびに精製されたエナンチオマーもしくはエナンチオマー/ジアステレオマーが富化された混合物を包含する。また、本発明の範囲内に包含されるのは、本発明の式によって表される化合物の個々の異性体、ならびにこれらの任意の完全にもしくは部分的に平衡に達した混合物である。本発明はまた、上記式によって表される化合物の個々の異性体を、1つまたは複数のキラル中心が逆であるそれらの異性体との混合物として含む。
【0058】
「ジアステレオマー」とは、キラル性の2つまたは2つより多くの中心を有し、その分子が互いの鏡像でない立体異性体をいう。ジアステレオマーは、異なる物理的特性、例えば、融点、沸点、スペクトル特性、および反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、高分解能の分析手順(例えば、電気泳動およびクロマトグラフィー)の下で分離し得る。
【0059】
「アトロプ異性体」は、回転の立体歪み障壁が個々の配座異性体の単離を可能にするほどに十分大きい単結合周りでの束縛回転(hindered rotation)から生じる化合物の立体異性体をいう。アトロプ異性体は、軸不斉を示す。アトロプ異性体は、熱的に平衡化され得、相互転換障壁は、動力学的に測定され得る。アトロプ異性は、キラル異性体の他の形態の存在とは別に起こり得る。従って、図示されるように、示される窒素原子は、平面にあり、式Iの化合物は、アトロプ異性体として存在し得る。
【0060】
【化8】
本発明の一実施形態において、上記化合物は、式Igの配座異性形態(conformeric form)
【0061】
【化9】
で存在する。
【0062】
本明細書において使用される立体化学の定義および慣例は、一般に、S. P. Parker, Ed., McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms (1984) McGraw−Hill Book Company, New York;およびEliel, E. and Wilen, S., Stereochemistry of Organic Compounds (1994) John Wiley & Sons, Inc., New Yorkに従う。
【0063】
本発明は、本明細書に記載される化合物の塩もしくは溶媒和物(塩の溶媒和物のようなこれらの組み合わせを含む)を包含する。本発明の化合物は、溶媒和(例えば、水和)形態、ならびに非溶媒和形態で存在し得、本発明は、全てのこのような形態を包含する。
【0064】
代表的には、しかし絶対ではなく、本発明の塩は、薬学的に受容可能な塩である。用語「薬学的に受容可能な塩」内に包含される塩とは、本発明の化合物の非毒性塩をいう。
【0065】
適切な薬学的に受容可能な塩の例としては、以下が挙げられる:クロリド、ブロミド、スルフェート、ホスフェート、およびニトレートのような無機酸付加塩;アセテート、ガラクタレート(galactarate)、プロピオネート、スクシネート、ラクテート、グリコレート、マレート、タートレート、シトレート、マレエート、フマレート、メタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、およびアスコルベートのような有機酸付加塩;アスパラギン酸及びグルタミン酸のような酸性アミノ酸との塩;ナトリウム塩およびカリウム塩のようなアルカリ金属塩;マグネシウム塩およびカルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、およびΝ,Ν’−ジベンジルエチレンジアミン塩のような有機塩基塩;ならびにリジン塩およびアルギニン塩のような塩基性アミノ酸との塩。上記塩は、いくつかの場合、水和物もしくはエタノール溶媒和物であり得る。
【0066】
本発明の化合物はまた、特定の場合において、互変異性体として存在する。非局在化共鳴構造が1つだけ示され得るが、全てのこのような形態は、本発明の範囲内であることが企図される。例えば、エン−アミン互変異性体は、プリン、ピリミジン、イミダゾール、グアニジン、アミジン、ならびにテトラゾール系に関して現れ得、全てのそれらの考えられる互変異性形態は、本発明の範囲内である。
【0067】
式Iの化合物を構成する選択された置換基は、再帰的な程度まで存在し得る。この状況において、「再帰的置換基(recursive substituent)」とは、置換基が、それ自体の別の事例を記載し得ることを意味する。複数の記載が、直接的であり得るか、または一連の他の置換基を介して間接的であり得る。このような置換基の再帰的性質が原因で、理論的には、非常に多くの化合物が、任意の所定の実施形態において存在し得る。医化学の当業者は、このような置換基の総数が、意図される化合物の所望の特性によって妥当に制限されることを理解する。このような特性としては、物理的特性(例えば、分子量、溶解度もしくはlogP)、適用特性(例えば、意図された目標に対する活性)および実践的特性(例えば、合成しやすさ)が例として挙げられるが、これらに限定されない。再帰的置換基は、本発明の意図される局面であり得る。医化学の当業者は、このような置換基の融通性を理解する。再帰的置換基が本発明の一実施形態において存在する程度まで、それらは、それら自体の別の実例を、0回、1回、2回、3回、もしくは4回記載し得る。
【0068】
式Iの化合物はまた、特定の分子において特定される原子の同位体を組み込む分子を含む。これら同位体の非限定的例としては、D、T、14C、13Cおよび15Nが挙げられる。
【0069】
(保護基)
本発明の状況において、保護基は、プロドラッグ部分および化学的保護基を含む。
【0070】
保護基は、利用可能であり、一般に公知であり、使用されており、合成手順(すなわち、本発明の化合物を調製するための経路もしくは方法)の間に保護された基との副反応を防止するために必要に応じて使用される。大部分に関して、どの基を保護するか、いつそのようにするかの決定、および化学的保護基「PG」の性質に関する決定は、保護されるべき反応(例えば、酸性、塩基性、酸化、還元もしくは他の条件)および合成の意図された方向の化学に依存する。上記PG基は、上記化合物が複数のPGで置換される場合に同じである必要はなく、一般に同じではない。一般に、PGは、カルボキシル、ヒドロキシル、チオ、もしくはアミノ基のような官能基を保護するために、よって、副反応を妨げるために、もしくはさもなければ合成効率を促進するために使用される。遊離の脱保護された基を生じさせるための脱保護の順序は、合成の意図された方向および遭遇する反応条件に依存し、当業者によって決定されるとおりの任意の順序で起こり得る。
【0071】
本発明の化合物の種々の官能基は、保護され得る。例えば、−OH基(ヒドロキシルであろうと、カルボン酸であろうと、リン酸であろうと、他の官能基であろうと)の保護基としては、「エーテル形成基もしくはエステル形成基」が挙げられる。エーテル形成基もしくはエステル形成基は、本明細書に示される合成スキームにおける化学的保護基として機能し得る。しかし、いくつかのヒドロキシル保護基およびチオ保護基は、当業者によって理解されるように、エーテル形成基でもエステル形成基でもなく、以下で考察されるアミドとともに含められる。
【0072】
非常に多数のヒドロキシル保護基及びアミド形成基および対応する化学切断反応は、Protective Groups in Organic Synthesis, Theodora W. Greene and Peter G. M. Wuts (John Wiley & Sons, Inc., New York, 1999, ISBN 0−471−16019−9) (「Greene」)に記載される。Kocienski, Philip J.; Protecting Groups (Georg Thieme Verlag Stuttgart, New York, 1994)(これは、その全体が本明細書に参考として援用される)もまた、参照のこと。特に、第1章,Protecting Groups:An Overview,1〜20頁、第2章,Hydroxyl Protecting Groups,21〜94頁、第3章, Diol Protecting Groups, 95〜117頁、第4章, Carboxyl Protecting Groups, 118〜154頁、第5章, Carbonyl Protecting Groups, 155〜184頁。カルボン酸、ホスホン酸、ホスホネート、スルホン酸の保護基および酸の他の保護基に関しては、以下に示されるとおり、Greeneを参照のこと。このような基は、エステル、アミド、およびヒドラジドなどが例として挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
(エーテル形成保護基およびエステル形成保護基)
エステル形成基としては、(1)ホスホネートエステル形成基(例えば、ホスホンアミデートエステル、ホスホロチオエートエステル、ホスホネートエステル、およびホスホン−ビス−アミデート);(2)カルボキシルエステル形成基、ならびに(3)硫黄エステル形成基(例えば、スルホネート、スルフェート、およびスルフィネート)が挙げられる。
【0074】
(本発明の化合物の代謝産物)
また、本発明の範囲内に入るのは、本明細書に記載される化合物のインビボ代謝生成物である。このような生成物は、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、およびエステル化などから、主に、酵素プロセスに起因して、生じ得る。よって、本発明は、本発明の化合物と哺乳動物とを、その代謝生成物を生じさせるのに十分な期間にわたって接触させる工程を包含するプロセスによって生成される化合物を包含する。このような生成物は、代表的には、本発明の放射性標識された(例えば、C14もしくはH3)化合物を調製すること、これを検出可能な用量(例えば、約0.5mg/kgより大きい用量)で、ラット、マウス、モルモット、サルのような動物へと、もしくはヒトへと非経口投与すること、代謝が起こる十分な時間を許容して(代表的には、約30秒〜30時間)、その変換生成物を、尿、血液もしくは他の生物学的サンプルから単離することによって、同定される。これら生成物は、標識されているので容易に単離される(他のものは、上記代謝産物において残っているエピトープと結合し得る抗体の使用によって単離される)。上記代謝産物構造は、従来の様式で、例えば、MSもしくはNMR分析によって決定される。一般に、代謝産物の分析は、当業者に周知の従来の薬物代謝研究と同じ方法で行われる。上記変換生成物は、別の方法でインビボで見いだされない限り、それらがそれら自体の抗感染活性を有していないとしても、本発明の化合物の治療的投与のための診断アッセイにおいて有用である。
【0075】
本発明の化合物の種々の属および亜属の定義および置換基は、本明細書に記載されかつ例示される。上記の定義および置換基の任意の組み合わせが、実行できない種もしくは化合物を生じるはずがないことは、当業者によって理解されるべきである。「実行できない種もしくは化合物」とは、関連する科学的原理に反する化合物構造(例えば、4個より多くの共有結合に繋がる炭素原子)、もしくは不安定すぎて、薬学的に受容可能な剤形への単離および製剤を可能にしない化合物を意味する。
【0076】
(薬学的処方物)
本発明の化合物は、通常の実務に従って選択される従来のキャリアおよび賦形剤とともに製剤される。錠剤は、賦形剤、滑剤、充填剤、および結合剤などを含む。水性処方物は、無菌形態で調製され、経口投与以外による送達が意図される場合、一般に等張性である。全ての処方物は、必要に応じて、Handbook of Pharmaceutical Excipients (1986)(これは、その全体が本明細書に参考として援用される)に示されるもののような賦形剤を含む。賦形剤としては、アスコルビン酸および他の抗酸化剤、キレート化剤(例えば、EDTA)、炭水化物(例えば、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、およびステアリン酸など)を含む。上記処方物のpHは、約3〜約11の範囲に及ぶが、通常は、約7〜10である。
【0077】
上記活性成分が単独で投与されることは可能性であるが、薬学的処方物としてそれらを与えることが好ましいことであり得る。本発明の処方物(獣医学的使用およびヒト使用の両方に関して)は、少なくとも1種の活性成分を、1種または複数種の受容可能なキャリアと、そして必要に応じて他の治療成分と一緒に含む。上記キャリアは、上記処方物の他の成分と適合し、そのレシピエントに対して生理学的に無害であるという意味において、「受容可能」でなければならない。
【0078】
上記処方物は、前述の投与経路に適切なものを含む。上記処方物は、便利なことには、単位剤形で与えられ得、薬学分野において周知の方法のうちのいずれかによって調製され得る。技術および処方は、一般には、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co., Easton, Pa.)(これは、その全体が本明細書に参考として援用される)において見いだされる。このような方法は、上記活性成分と、1種または複数種の補助成分を構成するキャリアとが会合した状態にする工程を包含する。一般に、上記処方物は、上記活性成分と、液体キャリアもしくは微細に分割した固体キャリアまたはその両方とを均一にかつ密に会合した状態にし、次いで、必要であれば、上記生成物を成形することによって、調製される。
【0079】
経口投与に適した本発明の処方物は、別個の単位(例えば、カプセル剤、カシェ剤もしくは錠剤(各々、所定の量の活性成分を含む)として;散剤もしくは顆粒剤として;水性もしくは非水性液体での液剤もしくは懸濁物として;または水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型液体エマルジョンとして与えられ得る。上記活性成分はまた、ボーラス、舐剤もしくはパスタ剤として投与され得る。
【0080】
錠剤は、必要に応じて、1種または複数種の補助成分とともに、圧縮もしくは成形することによって作製される。圧縮錠剤は、適切な機械において、自由流動形態(例えば、散剤もしくは顆粒剤)で上記活性成分(必要に応じて、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、界面活性剤もしくは分散剤と混合される)を圧縮することによって、調製され得る。成形された錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた上記粉末化活性成分の混合物を適切な機械中で成形することによって作製され得る。上記錠剤は、必要に応じて、被覆されても刻み目を付けられてもよく、そして、必要に応じて、上記活性成分のゆっくりとしたもしくは制御された放出を提供するように製剤される。
【0081】
眼もしくは他の外部組織(例えば、口および皮膚)への投与のために、上記処方物は、例えば、0.075〜20%w/w(0.1%w/w刻みで、0.1%〜20%の間の範囲(例えば、0.6%w/w、0.7%w/wなど)の活性成分を含む)、好ましくは、0.2〜15%w/w、最も好ましくは、0.5〜10%w/wの量において上記活性成分を含む局所軟膏もしくはクリーム剤として好ましくは適用される。軟膏に製剤される場合、上記活性成分は、パラフィン基剤もしくは水混和性軟膏基剤のいずれかとともに使用され得る。あるいは、上記活性成分は、水中油型クリーム基剤とともにクリーム剤に製剤され得る。
【0082】
望ましい場合、上記クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも30%w/wの多価アルコール(すなわち、2個または2個より多くのヒドロキシル基を有するアルコール(例えば、プロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコール(PEG400を含む)およびこれらの混合物)を含み得る。上記局所処方物は、望ましくは、皮膚もしくは他の罹患領域を介して上記活性成分の吸収もしくは浸透を増強する化合物を含み得る。このような皮膚透過増強剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連アナログが挙げられる。
【0083】
本発明のエマルジョンの油相は、公知の様式で公知の成分から構成され得る。上記相は、単に乳化剤(別名、エマルジェント(emulgent)としても公知)を含み得るが、それは、望ましくは、少なくとも1種の乳化剤と、脂肪もしくは油との、または脂肪および油の両方との混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤は、安定化剤として作用する親油性乳化剤と一緒に含まれる。油および脂肪の両方を含むこともまた、好ましい。まとめると、安定化剤ありまたはなしの乳化剤は、いわゆる乳化ワックスを作りだし、上記油および脂肪と一緒になったワックスは、上記クリーム剤処方物の油分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を作り出す。
【0084】
本発明の処方物における使用に適したエマルジェントおよびエマルジョン安定化剤としては、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミルスチルアルコール、グリセリルモノステアレートおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0085】
上記処方物に適した油もしくは脂肪の選択は、所望の美容特性を達成することに基づく。上記クリーム剤は、チューブもしくは他の容器からの漏出を回避するのに適切な粘稠性を有する、好ましくは、ベタベタしておらず、色がついておらず、かつ洗浄可能な生成物であるはずである。直鎖もしくは分枝鎖の、一塩基性もしくは二塩基性のアルキルエステル(例えば、ジ−イソアジペート、イソセチルステアレート、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、イソプロピルミリステート、デシルオレエート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、2−エチルヘキシルパルミテート、または分枝鎖エステルのブレンド(Crodamol CAPとして公知)が使用され得、最後の3つが好ましいエステルである。これらは、必要とされる特性に依存して、単独でもしくは組み合わせて使用され得る。あるいは、高融点脂質(例えば、白色ワセリンおよび/もしくは流動パラフィンまたは他の鉱油)が使用される。
【0086】
本発明に従う薬学的処方物は、1種または複数種の薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤と、そして必要に応じて他の治療剤と一緒に、本発明の1種または複数種の化合物を含む。上記活性成分を含む薬学的処方物は、意図される投与法に適した任意の形態であり得る。例えば、経口用途で使用される場合、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性の懸濁物、分散性の散剤もしくは顆粒剤、エマルジョン、硬質もしくは軟質のカプセル剤、シロップ剤もしくはエリキシル剤が調製され得る。経口用途が意図された組成物は、薬学的組成物の製造のための当該分野で公知の任意の方法に従って調製され得、このような組成物は、口に合う調製物を提供するために、1種または複数種の因子(甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤および保存剤を含む)を含み得る。錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に受容可能な賦形剤と混合した状態で上記活性成分を含む錠剤は、受容可能である。これら賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウムもしくは炭酸ナトリウム、ラクトース、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、リン酸カルシウムもしくはリン酸ナトリウム;造粒剤および崩壊剤(例えば、とうもろこしデンプン、もしくはアルギン酸);結合剤(例えば、セルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ゼラチンもしくはアカシア);および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸もしくはタルク)であり得る。錠剤は、被覆されていなくてよく、または、胃腸管での崩壊および吸収を遅らせ、それによって、長期間にわたって持続した作用を提供する、微小被包を含む公知の技術によって被覆されてもよい。例えば、時間遅延材料(time delay material)(例えば、グリセリルモノステアレートもしくはグリセリルジステアレート)は、単独もしくはワックスとともに、使用され得る。
【0087】
経口用途のための処方物はまた、上記活性成分が不活性固体希釈剤(例えば、リン酸カルシウムもしくはカオリン)と混合されている硬質ゼラチンカプセルとして、または上記活性成分が水もしくは油媒体(例えば、ラッカセイ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油)と混合されている軟質ゼラチンカプセルとして、与えられ得る。
【0088】
本発明の水性懸濁物は、水性懸濁物の製造に適した賦形剤と混合した状態で上記活性材料を含む。このような賦形剤としては、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガム)、分散剤もしくは湿潤剤(例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。上記水性懸濁物はまた、1種または複数種の保存剤(例えば、エチルp−ヒドロキシ−ベンゾエートもしくはn−プロピルp−ヒドロキシ−ベンゾエート)、1種または複数種の着色剤、1種または複数種の矯味矯臭剤および1種または複数種の甘味剤(例えば、スクロースもしくはサッカリン)を含み得る。
【0089】
油性懸濁物は、上記活性成分を植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、胡麻油もしくはココナツ油)中に、または鉱油(例えば、流動パラフィン)中に懸濁させることによって製剤され得る。上記経口懸濁物は、増粘剤(例えば、蜜蝋、固形パラフィンもしくはセチルアルコール)を含み得る。甘味剤(例えば、本明細書に記載されるもの)、および矯味矯臭剤は、口に合う経口調製物を提供するために添加され得る。これら組成物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤の添加によって保存され得る。
【0090】
水の添加によって水性懸濁物を調製するのに適した本発明の分散性の散剤および顆粒剤は、上記活性成分を、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁剤、および1種または複数種の保存剤と混合した状態で提供する。適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤は、上に開示されたものによって例示される。さらなる賦形剤、例えば、甘味剤、矯味矯臭剤および着色剤もまた、存在し得る。
【0091】
本発明の薬学的組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であり得る。上記油相は、植物油(例えば、オリーブ油もしくはラッカセイ油)、鉱油(例えば、流動パラフィン)、またはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤としては、天然に存在するガム(例えば、アカシアガムおよびトラガカントガム)、天然に存在するホスファチド(例えば、大豆レシチン)、脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来するエステルもしくは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)、およびエチレンオキシドとのこれら部分エステルの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。上記エマルジョンはまた、甘味剤および矯味矯臭剤を含み得る。シロップ剤もしくはエリキシル剤は、甘味剤(例えば、グリセロール、ソルビトールもしくはスクロース)とともに製剤され得る。このような処方物はまた、粘滑剤(demulcent)、保存剤、矯味矯臭剤もしくは着色剤を含み得る。
【0092】
本発明の薬学的組成物は、無菌注射用調製物(例えば、無菌注射用水性懸濁物もしくは油性懸濁物)の形態であり得る。この懸濁物は、本明細書で言及された適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤を使用して、公知の技術に従って製剤され得る。上記無菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤もしくは溶媒中の無菌注射用溶液もしくは懸濁物(例えば、1,3−ブタン−ジオールの溶液)であり得るか、または凍結乾燥粉末として調製され得る。使用され得る上記受容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌不揮発性油は、溶媒もしくは懸濁媒体として従来どおりに使用され得る。この目的で、任意の刺激の強くない不揮発性油は、合成のモノグリセリドもしくはジグリセリドを含め、使用され得る。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)は、注射物の調製において同様に使用され得る。
【0093】
単一剤形を生成するために上記キャリア材料と合わせられ得る活性成分の量は、処置される宿主および特定の投与様式に依存して変わる。例えば、ヒトへの経口投与が意図された時間放出(time−release)処方物は、上記合計組成物のうちの約5〜約95%(重量:重量)で変わり得る適切かつ都合のよい量のキャリア材料と配合された約1〜1000mgの活性材料を含み得る。上記薬学的組成物は、投与のために容易に測定可能な量を提供するために調製され得る。例えば、静脈注入が意図された水溶液は、約30mL/時間の速度で適切な容積の注入が起こり得るように、溶液1mLあたり約3〜500μgの上記活性成分を含み得る。
【0094】
眼への投与に適した処方物としては、上記活性成分が、適切なキャリア、特に、上記活性成分の水性溶媒中に溶解もしくは懸濁している点眼剤が挙げられる。上記活性成分は、好ましくは、0.5〜20%、有利なことには、0.5〜10%、特に、約1.5%w/wの濃度で、このような処方物中に存在する。
【0095】
口の中での局所投与に適した処方物としては、風味のついた基剤(通常は、スクロースおよびアカシアもしくはトラガカント)中に上記活性成分を含むロゼンジ剤;不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリン、もしくはスクロースおよびアカシア)中に上記活性成分を含む香錠;および適切な液体キャリア中に上記活性成分を含む洗口液が挙げられる。
【0096】
直腸投与のための処方物は、例えば、カカオ脂もしくはサリチレートを含む適切な基剤とともに坐剤として与えられ得る。
【0097】
肺内もしくは鼻投与に適した処方物は、鼻経路を通る迅速な吸入によって、もしくは口を通過する吸入によって、肺胞に達するように投与される、例えば、0.1〜500μmの範囲の粒度(0.5μm、1μm、30μm、35μmなどのように少しずつ増える0.1〜500μmの間の範囲の粒度を含む)を有する。適切な処方物は、上記活性成分の水性溶液もしくは油性溶液を含む。エアロゾルもしくは乾燥散剤投与に適した処方物は、従来の方法に従って調製され得、本明細書に記載されるように、感染の処置もしくは予防において使用されるこれまでの化合物のような他の治療剤とともに送達され得る。
【0098】
膣投与に適した処方物は、上記活性成分に加えて、適切であることが当該分野で公知であるようなキャリアを含む、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル、パスタ剤、泡沫物もしくはスプレー処方物として与えられ得る。
【0099】
非経口投与に適した処方物としては、抗酸化剤、緩衝化剤、静菌剤および上記処方物を意図されたレシピエントの血液と等張性にする溶質を含み得る水性および非水性の無菌注射用溶液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁物が挙げられる。
【0100】
上記処方物は、単位用量容器もしくは複数用量容器(例えば、密封されたアンプルおよびバイアル)において与えられ、使用直前に無菌液体キャリア(例えば、注射用水)の添加のみを要するフリーズドライ(freeze−dried)(凍結乾燥(lyophilized))条件で保存され得る。即座の注射溶液および懸濁物は、前に記載された種の滅菌散剤、顆粒剤および錠剤から調製される。好ましい単位投与処方物は、上に記載されるように、上記活性成分の1日用量もしくは1日の単位分割用量を含むものであるか、またはその適切な一部分である。
【0101】
上で特に言及される成分に加えて、本発明の処方物は、問題の処方物のタイプに関して、例えば、経口投与に適したものにする当該分野で従来どおりの他の薬剤を含み得る(矯味矯臭剤を含み得る)ことが理解されるべきである。
【0102】
本発明の化合物はまた、それほど頻繁でない投与を可能にするために、または上記活性成分の薬物動態もしくは毒性プロフィールを改善するために、上記活性成分の制御放出を提供するように製剤され得る。よって、本発明はまた、徐放もしくは制御された放出のために製剤された、本発明の1種または複数種の化合物を含む組成物を提供した。
【0103】
活性成分の有効用量は、処置されている状態の性質、毒性、上記化合物が予防的に(低用量)もしくは活動的なウイルス感染に対して使用されているかどうか、送達法、ならびに上記薬学的処方物に少なくとも依存し、従来の用量上昇研究を使用して、臨床医によって決定される。上記有効用量は、約0.0001〜約100mg/kg体重/日;代表的には、約0.01〜約10mg/kg体重/日;より代表的には、約0.01〜約5mg/kg体重/日;最も代表的には、約0.05〜約0.5mg/kg体重/日であると予測され得る。例えば、約70kg体重の成人についての1日候補用量は、1mg〜1000mg、好ましくは、5mg〜500mgの範囲に及び、単一用量もしくは複数用量の形態をとり得る。
【0104】
(投与経路)
本発明の1種または複数種の化合物(本明細書で上記活性成分といわれる)は、処置される状態に適切な任意の経路によって投与される。適切な経路としては、経口、直腸、鼻、局所(口内および舌下を含む)、膣および非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、鞘内および硬膜外を含む)などが挙げられる。好ましい経路は、例えば、上記レシピエントの状態に伴って変わり得ることが認識される。本発明の化合物の利点は、それらが経口的に生体利用可能であり、経口投与され得ることである。
【0105】
(HCV併用療法を含む、併用療法)
別の実施形態において、本発明の化合物は、1種または複数種の活性剤と組み合わせられ得る。適切な組み合わせの非限定的例としては、本発明の1種または複数種の化合物と、1種または複数種のインターフェロン、リバビリンもしくはそのアナログ、HCV NS3プロテアーゼインヒビター、NS5Aインヒビター、α−グルコシダーゼ1インヒビター、肝保護剤、メバロネートデカルボキシラーゼアンタゴニスト、レニン−アンジオテンシン系のアンタゴニスト、他の抗線維化剤、エンドセリンアンタゴニスト、HCV NS5Bポリメラーゼのヌクレオシドもしくはヌクレオチドインヒビター、HCV NS5Bポリメラーゼの非ヌクレオシドインヒビター、HCV NS4Bインヒビター、ウイルス侵入および/もしくはアセンブリのインヒビター、TLR−7アゴニスト、シクロフィリンインヒビター、HCV IRESインヒビター、薬物動態増強剤ならびにHCVを処置するための他の薬物;またはこれらの混合物との組み合わせを含む。
【0106】
より具体的には、本発明の1種または複数種の化合物は、
1)インターフェロン(例えば、ペグ化rIFN−α2b(PEG−Intron)、ペグ化rIFN−α2a(Pegasys)、rIFN−α2b(Intron A)、rIFN−α2a(Roferon−A)、インターフェロンα(MOR−22、OPC−18、Alfaferone、Alfanative、Multiferon、subalin)、インターフェロンalfacon−1(Infergen)、インターフェロンα−n1(Wellferon)、インターフェロンα−n3(Alferon)、インターフェロン−β(Avonex, DL−8234)、インターフェロン−ω(omega DUROS, Biomed 510)、アルブインターフェロンα−2b(Albuferon)、IFNα XL、BLX−883(Locteron)、DA−3021、グリコシル化インターフェロンα−2b(AVI−005)、PEG−Infergen、ペグ化インターフェロンλ(ペグ化IL−29)、およびベレロフォン(belerofon))、
2)リバビリンおよびそのアナログ(例えば、リバビリン(Rebetol、Copegus)、およびタリバビリン(Viramidine))、
3)HCV NS3プロテアーゼインヒビター(例えば、ボセプレビル(SCH−503034, SCH−7)、テラプレビル(VX−950)、VX−813、TMC−435(TMC435350)、ABT−450、BI−201335、BI−1230、MK−5172、MK−7009(バニプレビル)、SCH−900518、VBY−376、VX−500、GS−9256、GS−9451、BMS−790052、BMS−605339、PHX−1766、AS−101、YH−5258、YH5530、YH5531、およびITMN−191(R−7227))、
4)α−グルコシダーゼ1インヒビター(例えば、セルゴシビル(MX−3253)、ミグリトール(Miglitol)、およびUT−231B)、
5)肝保護剤(例えば、エムリカサン(IDN−6556)、ME−3738、GS−9450(LB−84451)、シリビニン(silibilin)、およびMitoQ)、
6)HCV NS5Bポリメラーゼのヌクレオシドもしくはヌクレオチドインヒビターおよびそのプロドラッグ(例えば、GS−6620、R1626、R7128(R4048)、IDX184、IDX−102、PSI−7851、PSI−938、PSI−7977、BCX−4678、バロピシタビン(NM−283)、およびMK−0608)、
7)HCV NS5Bポリメラーゼの非ヌクレオシドインヒビター(例えば、フィリブビル(PF−868554)、ABT−333、ABT−072、BI−207127、VCH−759、VCH−916、JTK−652、MK−3281、VBY−708、VX−222、A848837、ANA−598、GL60667、GL59728、A−63890、A−48773、A−48547、BC−2329、VCH−796(ネスブビル)、GSK625433、BILN−1941、XTL−2125、およびGS−9190(テゴブビル))、
8)HCV NS5Aインヒビター(例えば、GS−5885、AZD−2836(A−831)、AZD−7295(A−689)、およびBMS−790052)、
9)TLR−7アゴニスト(例えば、イミキモド、852A、GS−9524、GS−9620、ANA−773、ANA−975、AZD−8848(DSP−3025)、PF−04878691、およびSM−360320)、
10)シクロフィリンインヒビター(例えば、DEBIO−025、SCY−635、およびNIM811)、
11)HCV IRESインヒビター(例えば、MCI−067)、
12)薬物動態増強剤(例えば、BAS−100、SPI−452、PF−4194477、TMC−41629、GS−9350(コビシスタット)、GS−9585、およびロキシスロマイシン)、
13)HCVを処置するための他の薬物(例えば、サイモシンα1(Zadaxin)、ニタゾキサニド(Alinea, NTZ)、BIVN−401(ビロスタット)、PYN−17(アルチレクス(altirex))、KPE02003002、アクチロン(actilon)(CPG−10101)、GS−9525、KRN−7000、シバシル(civacir)、GI−5005、XTL−6865、BIT225、PTX−111、ITX2865、TT−033i、ANA 971、NOV−205、タルバシン(tarvacin)、EHC−18、VGX−410C、EMZ−702、AVI 4065、BMS−650032、BMS−791325、バビツキシマブ、MDX−1106(ONO−4538)、オグルファニド、FK−788、およびVX−497(メリメポジブ))、
14)メバロネートデカルボキシラーゼアンタゴニスト(例えば、スタチン、HMGCoAシンターゼインヒビター(例えば、ヒメグルシン)、スクアレン合成インヒビター(例えば、ザラゴジン酸));
15)アンギオテンシンIIレセプターアンタゴニスト(例えば、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、エプロサルタン);
16)アンギオテンシン変換酵素インヒビター(例えば、カプトプリル、ゾフェノプリル、エナラプリル、ラミプリル、キナプリル、ペリンドプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、フォシノプリル);
17)他の抗線維化剤(例えば、アミロリド);ならびに
18)エンドセリンアンタゴニスト(例えば、ボセンタンおよびアンブリセンタン)
からなる群より選択される1種または複数種の化合物と組み合わされ得る。
【0107】
なお別の実施形態において、本願は、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を、少なくとも1種のさらなる活性剤、および薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤と組み合わせて含む薬学的組成物を開示する。なお別の実施形態において、本願は、単位剤形において、2種または2種より多くの治療剤との組み合わせ薬剤を提供する。従って、本発明の任意の化合物と、1種または複数種の他の活性剤とを単位剤形の中で合わせることもまた、可能である。
【0108】
上記併用療法は、同時もしくは逐次的レジメンとして投与され得る。逐次的に投与される場合、上記組み合わせは、2回またはそれより多い回数の投与で投与され得る。
【0109】
本発明の化合物と1種または複数種の他の活性剤との共投与は、一般に、本発明の化合物および1種または複数種の他の活性剤の治療上有効な量がともに上記患者の体内に存在するように、本発明の化合物および1種または複数種の他の活性剤の同時もしくは逐次的投与をいう。
【0110】
共投与は、1種または複数種の他の活性剤の単位投与量の投与前もしくは投与後の、本発明の化合物の単位投与量の投与(例えば、1種または複数種の他の活性剤の投与の数秒、数分もしくは数時間以内の本発明の化合物の投与)を含む。例えば、本発明の化合物の単位用量は、最初に投与され得、その後、数秒もしくは数分以内に1種または複数種の他の活性剤の単位用量が投与される。あるいは、1種または複数種の他の活性剤の単位用量は、最初に投与され得、その後、本発明の化合物の単位用量が数秒もしくは数分以内に投与される。いくつかの場合において、本発明の化合物の単位用量を最初に投与し、続いて、数時間(例えば、1〜12時間)後に、1種または複数種の他の活性剤の単位用量を投与することは、望ましいことであり得る。他の場合において、1種または複数種の他の活性剤の単位用量を最初に投与し、続いて、数時間(例えば、1〜12時間)後に、本発明の化合物の単位用量を投与することは、望ましいことであり得る。
【0111】
上記併用療法は、「相乗効果(synergy)」および「相乗効果(synergistic effect)」(すなわち、一緒に使用される上記活性成分が、上記化合物を別個に使用する場合に生じる効果の合計より大きい場合に達成される効果)を提供し得る。相乗効果は、上記活性成分が、(1)組み合わされた処方物において同時に製剤されかつ投与されるかまたは同時に送達される場合、(2)別個の処方物として交互に送達されるかもしくは並行して送達される場合、または(3)いくつかの他のレジメンによる場合に達成され得る。交互治療(alternation therapy)において送達される場合、相乗効果は、上記化合物が逐次的に、例えば、別個の錠剤、丸剤もしくはカプセル剤においてまたは別個のシリンジにおいて異なる注射によって投与または送達される場合に達成され得る。一般に、交互治療の間に、各活性成分の有効投与量は、逐次的に、すなわち、連続して投与されるのに対して、併用療法において、2種または2種超の活性成分の有効投与量は、一緒に投与される。
【0112】
当業者によって認識されるように、ウイルス感染(例えば、HCV)を処置する場合、このような処置は、種々の方法において特徴付けられ得、種々のエンドポイントによって測定され得る。本発明の範囲は、全てのこのような特徴を包含することが意図される。
【0113】
(合成例)
特定の略語および頭字語が、実験の詳細を記載するにあたって使用される。これらのうちの大部分は、当業者によって理解されるが、表1は、これら略語および頭字語のうちの多くの列挙を含む。
【0114】
表1.略語および頭字語のリスト
略語 意味
DCM ジクロロメタン
deg 摂氏度
DMSO ジメチルスルホキシド
DMF ジメチルホルムアミド
EtOAc 酢酸エチル
hもしくはhr 時間
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LDA リチウムジイソプロピルアミド
MeOH メタノール
Min 分
m/z 質量対電荷比
MH 質量プラス1
MH 質量マイナス1
MSもしくはms 質量スペクトル
Ph フェニル
rtもしくはr.t. 室温
TFA トリフルオロ酢酸
TLCもしくはtlc 薄層クロマトグラフィー
δ テトラメチルシランからの低磁場の度合い(ppm)(parts per million down field from tetramethylsilane)。
【0115】
本発明の化合物は、WO2011031669およびUS20110020278において記載される方法に類似の方法によって合成され得る。
【0116】
本明細書の化合物の名称および立体化学帰属は、ChemBioDraw Ultra(商標) バージョン11.0を使用して作成した。
【0117】
別段特定されなければ、保持時間とは、Phenomenex Geminiカラム(5μ,80A, 50×4.6mm)で流速2mL/分で、5分間にわたる水(0.05%トリフルオロ酢酸を含む)中の2〜98%アセトニトリル(0.05%トリフルオロ酢酸を含む)の勾配を使用する分析HPLC法をいう。
【実施例】
【0118】
(具体的実施例)
(実施例1および実施例2 5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1S,6R)−N−イソプロピル−4,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸および5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1R,6R)−N−イソプロピル−4,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸)
【0119】
【化10】
1mLのピリジン中のメチル5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−(イソプロピルアミノ)チオフェン−2−カルボキシレート(140mg,0.5mmol)の溶液を、(1R,6R)−4,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボニルクロリド(172mg,1mmol)で処理し、16時間にわたって100℃において密封チューブ中で加熱した。反応混合物を室温へと冷却し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(4g プレパックカラム、0〜20%ヘキサン:酢酸エチルで溶出)によって精製して、得られたジアステレオマーの混合物を分離した。溶出する第1のピークであるメチル5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1S,6R)−N−イソプロピル−4,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボキシレートをLiOH(5当量,THF/水 1:1)で処理し、HPLCによって精製して、実施例1、5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1S,6R)−N−イソプロピル−4,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸を得た。MS (m/z):403.0 [M+H]+; HPLC保持時間 8.72分(0.05%トリフルオロ酢酸を含む2〜98%アセトニトリル:水)。溶出する第2のピークであるメチル5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1R,6R)−N−イソプロピル−4,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボキシレートをLiOH(5当量,THF/水 1:1)で処理し、HPLCによって精製して、実施例2、5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1R,6R)−N−イソプロピル−4,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸を得た。MS (m/z):403.0 [M+H]+; HPLC保持時間 8.62分(0.05%トリフルオロ酢酸を含む2〜98%アセトニトリル:水)。
【0120】
((1R,6R)−4,6−ジメチル−シクロヘキサ−3−エンカルボン酸クロリドの合成)
【0121】
【化11】
(S)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン(35g,0.2mol)を、THF(500mL)中に溶解させ、−78℃へと冷却した。この溶液に、ヘキサン中のnBuLiの溶液(80mL,0.2mol)を滴下した。この溶液を、この温度で30分間にわたって撹拌し、次いで、(E)−ブタ−2−エノイルクロリド(19mL,0.2mol)をゆっくりと添加した。冷たいバスを取り外し、この反応物を、室温において1時間撹拌した。反応の完了の際に、飽和NHCl溶液を添加して、反応をクエンチした。大部分のTHFを、真空蒸留下で除去し、混合物を、エーテルとブラインとの間で分配した。NaSOで乾燥させた後、有機層を濃縮して、粗生成物を得、これを、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中20%EtOAc)によって精製して、白色固体として生成物を得た(39g,79%収率)。
【0122】
【化12】
DCM中の(S,E)−4−ベンジル−3−ブタ−2−エノイルオキサゾリジン−2−オン(34.5g,0.14mol)およびイソプレン(250mL)の溶液を、−78℃に冷却した。この溶液に、トルエン中のEtAlClの溶液(100mL,0.18mol)を滴下した。この溶液を−40℃へと加温し、この温度で一晩撹拌した。反応の完了の際に、2N HCl溶液(150mL)を添加して、反応をクエンチした。大部分のDCMを、真空蒸留下で除去し、混合物を、エーテルで抽出した。NaSOで乾燥させた後、合わせた有機層を濃縮して、粗生成物を得、これを、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中0〜30%EtOAc)によって精製して、結晶性白色固体として生成物(39g,88%収率)を得た。所望の酸クロリドを生成するためのその後の工程を、(1S,6S)−4,6−ジメチル−シクロヘキサ−3−エンカルボン酸クロリドの合成のために記載されたものに類似の様式で行った(以下を参照のこと)。
【0123】
(実施例3および実施例4 5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル−3−((1S,6S)−N−イソプロピル−4,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸および5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1R,6S)−N−イソプロピル−4,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸)
【0124】
【化13】
これら化合物を、(1S,6S)−4,6−ジメチル−シクロヘキサ−3−エンカルボン酸クロリドから出発して、実施例1および実施例2に類似の様式で合成した。
【0125】
実施例3:
LC/MS=403(M+1)
保持時間:2.46分
LC:Thermo Electron Surveyor HPLC
MS:Finnigan LCQ Advantage MAX Mass Spectrometer
カラム:Phenomenex Polar RP 30mm×4.6mm
溶媒:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル、0.1%ギ酸を含む水
勾配:0分〜0.1分 5%ACN、0.1分〜1.95分 5%〜100%ACN、1.95分〜3.5分 100%ACN、3.5分〜3.55分 100%〜5%ACN、3.55分〜4分 5%ACN。
【0126】
実施例4:
LC/MS=403(M+1)
保持時間:2.54分
LC:Thermo Electron Surveyor HPLC
MS:Finnigan LCQ Advantage MAX Mass Spectrometer
カラム:Phenomenex Polar RP 30mm×4.6mm
溶媒:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル、0.1%ギ酸を含む水
勾配:0分〜0.1分 5%ACN、0.1分〜1.95分 5%〜100%ACN、1.95分〜3.5分 100%ACN、3.5分〜3.55分 100%〜5%ACN、3.55分〜4分 5%ACN。
【0127】
((1S,6S)−4,6−ジメチル−シクロヘキサ−3−エンカルボン酸クロリドの合成)
【0128】
【化14】
4S−ベンジル−3−(4,6S−ジメチル−シクロヘキサ−3−エン−1S−カルボニル)−オキサゾリジン−2−オン(J. Am. Chem. Soc. 110(4), 1988, 1238−1256に記載される方法に類似の方法において調製)を、THF(1000mL)およびHO(350mL)中に溶解させた。この溶液を氷浴中で冷却し、30%H(36mL,354mmol)をゆっくりと添加し、続いて、LiOH・HO(9.90g,263mmol)を一度に添加した。この反応物を、室温へとゆっくりと加温し、16時間にわたって撹拌した。次いで、この反応物を氷浴中で冷却した。NaSO(60g,472mmol)をHO(400mL)中に溶解させ、上記冷却した反応混合物に非常にゆっくりと添加した。この溶液を1時間にわたって撹拌し、その層を分離した。その有機物を、減圧下で除去した。その水性物を、その有機濃縮物に添加し戻し、混合物をCHClで抽出した(2×50mL)。水相のpHを、水性濃HClをゆっくりと添加することによって2へと調節した。水性物を、EtOAcで抽出し(4×300mL)、合わせた抽出物をNaSOで乾燥させた。減圧下での有機物の除去およびヘキサンでの同時エバポレーションから、(1S,6S)−4,6−ジメチル−シクロヘキサ−3−エンカルボン酸(14.14g,78%)を白色固体として得た。
【0129】
4,6−S−ジメチル−シクロヘキサ−3−エン−1S−カルボン酸(944mg,6.17mmol)を、CHCl(10mL)中に溶解させ、DMF(20μL)を添加した。この溶液を0℃へと冷却し、次いで、(COCl)(700μL,7.38mmol)をゆっくりと添加した。この反応物を氷浴中で1時間にわたって撹拌し、次いで、濃縮した。その残渣を、ヘキサン中に溶かし、濃縮した。このヘキサン同時エバポレーションをもう一度反復した。得られた酸クロリドを、さらに精製することなく使用した。
【0130】
(実施例5 (S)−5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−(N−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸
【0131】
【化15】
ジクロロメタン(20mL)およびヘキサン(3mL)中のアクリル酸4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル(R)(2.92g,15.9mmol)を−10℃へと冷却し、四塩化チタン(2.4mL,ジクロロメタン中2.4M,2.4mmol)で処理した。その赤い溶液を、15分間にわたって撹拌し、イソプレン(2.4mL,23.8mmol)を5分間にわたって滴下して処理した。1.5時間にわたって撹拌した後、さらなるイソプレン(2.4mL,23.8mmol)を添加し、反応混合物を−10〜0℃において2.5時間にわたって撹拌した。−10℃へと冷却した後、反応混合物を塩化アンモニウム(飽和水溶液)でクエンチした。水および酢酸エチル:ヘキサン(1:1)を添加した。有機層を分離し、水層を酢酸エチル:ヘキサン(1:1)で再び抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。その残渣をフラッシュクロマトグラフィー(10〜40%EtOAc:Hex, 80gカラム)によって精製して、3.35g(84%収率)の4−メチル−シクロヘキサ−3−(S)−エンカルボン酸4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルエステルを透明油状物として得た。
【0132】
THF(25mL)、水(2.5mL)およびメタノール(2.5mL)中の4−メチル−シクロヘキサ−3−(S)−エンカルボン酸4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル(3.34g,13.2mmol)を、水酸化リチウム一水和物(2.8g,66.2mmol)で処理し、撹拌しながら50℃へと加温した。1時間後、反応混合物を1M HCl(約25mL)で処理した。混合物をヘキサン:酢酸エチル(200mL:15mL)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、2.4gの白色半固体へと濃縮した。その残渣をヘキサン:ジクロロメタン(100mL,95:5)中に再度溶解させ、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、1.68g(91%収率)の4−メチル−シクロヘキサ−3−エンカルボン酸(S)を白色粉末へと濃縮した。
【0133】
【化16】
ジクロロメタン(150mL)中のメチル3−アミノ−5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)チオフェン−2−カルボキシレート(WO 2008058393を参照のこと)(12.0g,50.6mmol)を、冷水バス(12℃)の中に入れ、約6分間にわたって2−メトキシプロパ−1−エン(14.6mL,152mmol)を滴下して処理し、続いて、酢酸(8.7mL)を約5分間にわたって滴下して処理した。ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(16.1g,152mmol)を、約30分間にわたって少量ずつ加えた。反応混合物を周囲温度へと加温し、16時間にわたって撹拌した。得られた淡橙色溶液を冷炭酸水素ナトリウム(飽和水溶液,200mL)に注いだ。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回抽出した(各々150mL)。合わせた有機層を、炭酸水素ナトリウム(飽和水溶液)およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム(無水物)で乾燥させ、濾過し、橙色油状物へと濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(0〜15%EtOAc:Hex)により、13.0g(92%収率)の所望のメチル5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−(イソプロピルアミド)チオフェン−2−カルボキシレートを淡黄色油状物として得、これを、静置して固化したところワックス状の結晶性固体になり、その後の工程において使用した。
【0134】
【化17】
4−メチル−シクロヘキサ−3−エンカルボン酸(S)(100mg,0.71mmol)(トルエンからのエバポレーションによって共沸で乾燥)を、リン酸三カリウム(303mg,2.1mmol)で処理し、ジクロロメタン(2mL)中に懸濁させ、ジメチルホルムアミド(1滴)で処理した。反応混合物を0℃へと冷却し、塩化オキサリル(0.2mL,1.4mmol)を滴下して処理した。反応混合物を、2時間撹拌しながら周囲温度へと加温した。その固体を濾過した後、この溶液を濃縮し、ヘキサンで処理し、再び濃縮して、4−メチル−シクロヘキサ−3−エンカルボニルクロリド(S)を淡黄色油状物として得、これを、次の工程において直ぐに使用した。
【0135】
4−メチル−シクロヘキサ−3−エンカルボニルクロリド(S)(0.71mmol)、メチル5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−(イソプロピルアミノ)チオフェン−2−カルボキシレート(80mg,0.29mmol)およびリン酸三カリウム(152mg,0.71mmol)を、ジクロロエタン(0.75mL)中に懸濁し、ふたで密封し、90℃へと加熱した。16時間後、反応混合物を冷却し、酢酸エチルと水との間で分配した。有機層を分離し、水層を酢酸エチルで再び抽出した。合わせた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(10〜35%EtOAc:ヘキサン)により、59mg(51%収率)の所望の(S)−メチル5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−(N−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボキシレートを白色泡沫物として得た。
【0136】
(S)−メチル5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−(N−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボキシレート(123mg,0.31mmol)を、THF(2mL)中に溶解させた。水(0.5mL)、メタノール(0.5mL)および水酸化リチウム(129mg,3.1mmol)を添加した。混合物を密封し、45℃へと30分間加熱した。周囲温度でさらに1時間後、混合物を10%HClで(pHが3未満になるまで)処理し、水と酢酸エチルとの間で分配した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム(無水物)で乾燥させ、その残渣を逆相HPLCによって精製して、標題化合物41mg(35%収率)を得た。MS (m/z):388.0 [M+H]+;HPLC保持時間 4.59分(0.05%トリフルオロ酢酸を含む2〜98%アセトニトリル:水)。
【0137】
(実施例6 (R)−5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−(N−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸)
【0138】
【化18】
標題化合物を、アクリル酸4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル(R)の代わりに、アクリル酸4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル(S)を使用して、実施例5に類似の様式で調製した。MS (m/z):388.0 [M+H]+;HPLC保持時間 4.59分(0.05%トリフルオロ酢酸を含む2〜98%アセトニトリル:水)。
【0139】
アクリル酸4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル(R)を、以下の様式で調製した。ジクロロメタン(25mL)中の3−(S)−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−ジヒドロ−フラン−2−オン(2.60g,20mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(5.2mL,30mmol)の溶液を−10℃へと冷却し、アクリロイルクロリド(2.03mL,25mmol)を滴下して処理し、2時間にわたって撹拌した。1M HCl(20mL)を添加し、有機層を、炭酸水素ナトリウムおよび水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(10〜40%EtOAc,ヘキサン)により、2.09g(57%収率)の所望のアクリル酸4,4−ジメチル−2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル(R)を透明油状物として得た。
【0140】
(実施例7 5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1S,6S)−N−((1r,4S)−4−ヒドロキシシクロヘキシル)−4,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸)
【0141】
【化19】
(1S,6S)−4,6−ジメチル−シクロヘキサ−3−エン−カルボン酸(3.04g,19.7mmol)を、CHCl(30mL)中に溶解させ、DMF(20μL)を添加した。この溶液を0℃へと冷却し、次いで、(COCl)(3.7mL,39mmol)をゆっくりと添加した。この反応物を氷浴中で2時間にわたって撹拌し、次いで、濃縮した。その残渣をヘキサン中に溶かし、濃縮した。このヘキサン同時エバポレーションをもう一度反復した。その残渣に、[5−(3,3−ジメチル−ブタ−1−イニル)−チオフェン−3−イル]−(1,4−ジオキサ−スピロ[4.5]デカ−8−イル)−アミン(4.16g,13mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(4.5mL,26mmol)、および1,2−ジクロロエタン(40mL)を0℃において添加した。この溶液を室温へと加温し、一晩撹拌した。この反応物をCHClで希釈し、飽和NHCl(水溶液)で2回洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮し、0〜75%EtOAc/ヘキサンの混合物で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、(1S,6S)−4,6−ジメチル−シクロヘキサ−3−エン−カルボン酸[5−(3,3−ジメチル−ブタ−1−イニル)−チオフェン−3−イル]−(1,4−ジオキサ−スピロ[4.5]デカ−8−イル)−アミド(5.6g,12mmol)を単一異性体として得た。
【0142】
(1S,6S)−4,6−ジメチル−シクロヘキサ−3−エン−カルボン酸[5−(3,3−ジメチル−ブタ−1−イニル)−チオフェン−3−イル]−(1,4−ジオキサ−スピロ[4.5]デカ−8−イル)−アミド(5.6g,12mmol)を、THF(70mL)中に溶解させ、4M HCl(35mL)で処理した。反応混合物を、45℃へと加熱し、2.5時間にわたって撹拌した。THFを真空中で除去し、水層を酢酸エチルへと3回抽出した。合わせた有機層を、飽和NaHCO(水溶液)、水、およびブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、(1S,6S)−4,6−ジメチル−シクロヘキサ−3−エン−カルボン酸[5−(3,3−ジメチル−ブタ−1−イニル)−チオフェン−3−イル]−(4−オキソ−シクロヘキシル)−アミド(5.05g,12mmol)を得た。
【0143】
MeOH(100mL)中の(1S,6S)−4,6−ジメチル−シクロヘキサ−3−エン−カルボン酸[5−(3,3−ジメチル−ブタ−1−イニル)−チオフェン−3−イル]−(4−オキソ−シクロヘキシル)−アミド(2.0g,4.9mmol)を、0℃において水素化ホウ素ナトリウム(230mg,6.0mmol)で処理した。30分間撹拌した後、4M HCl(6mL)を添加し、反応混合物を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO(水溶液)、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(20〜60%酢酸エチル/ヘキサン)により、所望の(1S,6S)−4,6−ジメチル−シクロヘキサ−3−エン−カルボン酸[5−(3,3−ジメチル−ブタ−1−イニル)−チオフェン−3−イル]−(trans−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−アミド(1.74g,4.2mmol)を得た。
【0144】
THF(50mL)中の(1S,6S)−4,6−ジメチル−シクロヘキサ−3−エン−カルボン酸[5−(3,3−ジメチル−ブタ−1−イニル)−チオフェン−3−イル]−(trans−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−アミド(1.74g,4.2mmol)を、−78℃へと冷却し、リチウムジイソプロピルアミン(8.4mL,ヘプタン/THF/PhEt中2.0M,16.8mmol)で処理し、2時間をかけて0℃へと加温した。COを、この反応溶液に10分間にわたって激しく泡立てた。次いで、反応を、iPrOHを添加することによってクエンチし、酢酸エチルで希釈し、飽和NHCl(水溶液)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%酢酸エチル/ジクロロメタン)により、530mg(1.2mmol)の標題化合物を得た。MS (m/z):458.1 [M+H]+;HPLC保持時間(Geminiカラム) 4.35分(0.05%トリフルオロ酢酸を含む2〜98%アセトニトリル:水)。
【0145】
(実施例8 5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル−3−((R)−N−((1r,4R)−4−ヒドロキシシクロヘキシル)−4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸)
【0146】
【化20】
(R)−メチル5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−(4−メチル−N−(4−オキソシクロヘキシル)シクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボキシレート(US11/21335を参照のこと)(250mg,0.55mmol)を、テトラヒドロフラン(4mL)および水(0.4mL)の混合物中に溶解させ、0℃へと冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(21mg,0.55mmol)で処理した。30分間にわたって撹拌した後、混合物を、10%HCl水溶液(4mL)を滴下して処理し、さらに15分間撹拌した。水(10mL)を添加し、この混合物を、酢酸エチルで2回抽出し、乾燥させ、濃縮して、所望のメチル5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((R)−N−((1r,4R)−4−ヒドロキシシクロヘキシル)−4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボキシレートを得、これを、次の工程へと粗製のまま使用した。
【0147】
メチル5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((R)−N−((1r,4R)−4−ヒドロキシシクロヘキシル)−4−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボキシレート(0.55mmol)を、THF(4mL)中に溶解させた。水(1mL)、メタノール(1mL)および水酸化リチウム(234mg,5.6mmol)を添加した。混合物を密封し、45℃へと30分間にわたって加熱した。周囲温度でさらに1時間後、この混合物を、10%HClで(pHが3未満になるまで)処理し、水と酢酸エチルとの間で分配した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム(無水物)で乾燥させ、その残渣を、逆相HPLCによって精製して、標題化合物50mg(20%収率)を得た。MS (m/z):444.0 [M+H]+;HPLC保持時間 4.15分(0.05%トリフルオロ酢酸を含む2〜98%アセトニトリル:水)。
【0148】
(比較実施例)
(比較実施例1 5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1r,4r)−Ν−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸)
【0149】
【化21】
標題化合物の合成は、WO2006/072347(実施例1)に記載される。
【0150】
(比較実施例2 5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1r,4R)−N−((1r,4R)−4−ヒドロキシシクロヘキシル)−4−メチルシクロヘキサンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸)
【0151】
【化22】
標題化合物の合成は、WO08/58393(実施例1)に記載される。
【0152】
(比較実施例3 5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1S,2S,4S)−N−イソプロピル−2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸)
【0153】
【化23】
(1S,2S,4S)−2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸の合成
【0154】
【化24】
(S)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン(35g,0.2mol)をTHF(500mL)中に溶解させ、−78℃へと冷却した、ヘキサン中のnBuLiの溶液(80mL,0.2mol)を、滴下した。この溶液を、この温度で30分間にわたって撹拌し、次いで、(E)−ブタ−2−エノイルクロリド(19mL,0.2mol)をゆっくりと添加した。冷却浴を取り外し、この反応物を室温において1時間にわたって撹拌し、その際に、飽和NHCl溶液(200mL)を添加した。THFの大部分を真空下で除去し、この混合物を、エーテルとブラインとの間で分配した。NaSOで乾燥させた後、有機層を濃縮し、その残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中20%EtOAc)によって精製して、所望の生成物を白色固体として得た(39g,79%収率)。
【0155】
【化25】
DCM中の(S,E)−4−ベンジル−3−ブタ−2−エノイルオキサゾリジン−2−オン(34.5g,0.14mol)およびイソプレン(250mL)の溶液を、−78℃へと冷却した。この溶液に、トルエン中のEtAlClの溶液(100mL,0.18mol)を滴下した。この溶液を−40℃へと加温し、この温度で一晩撹拌した。2N HCl溶液(150mL)を添加した。DCMの大部分を真空下で除去し、混合物をエーテルで抽出した。NaSOで乾燥させた後、合わせた有機層を濃縮し、その残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中0〜30%EtOAc)によって精製して、所望の生成物(39g,88%収率)を結晶性白色固体として得た。
【0156】
【化26】
雰囲気(1atm)下でEtOH(50mL)中の(S)−4−ベンジル−3−((1S,6S)−4,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボニル)オキサゾリジン−2−オン(6g,19.1mmol)および10%Pd/C(500mg)の混合物を、室温で一晩撹拌した。反応混合物を珪藻土のパッドを通して濾過し、濃縮して、ジアステレオマーの3:1混合物を得、これを、分取用キラルカラムクロマトグラフィー(Chiralcel OD−H(20cm×250cm;半分取):保持時間:24分、33分(主要)(80:20 ヘプタン:エタノール))によって分離したところ、(S)−4−ベンジル−3−((1S,2S,4S)−2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボニル)オキサゾリジン−2−オン(2.3g,38%)を得た。
【0157】
【化27】
0℃において、THF(30mL)および水(10L)中の(S)−4−ベンジル−3−((1S,2S,4S)−2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボニル)オキサゾリジン−2−オン(1.5g,4.75mmol)の溶液に、30%H(3.7mL)を滴下し、続いて、水酸化リチウム一水和物(0.4g,9.5mmol)を一度に添加した。得られた溶液を室温において一晩撹拌した。水(20mL)中のNaSO(6g)を0℃においてゆっくりと添加し、続いて、飽和NaHCO(15mL)を添加した。THFを、真空中で除去した。その残渣を、DCMで抽出した(2×25mL)。合わせた抽出物を、飽和NaHCO(25mL)で抽出し戻した。合わせた水相のpHを、濃HClでpH=1へと調節した。次いで、その水性混合物をEtOAc(5×25mL)で抽出し、NaSOで乾燥させ、濃縮して、粗生成物(0.76g)を白色固体として得、これを、さらに精製することなく使用した。
【0158】
(5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1S,2S,4S)−N−イソプロピル−2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸の合成)
【0159】
【化28】
EtOAc(5mL)中のカルボン酸(200mg,1.3mmol)およびDMF(1滴)の溶液に、塩化オキサリル(0.3mL,3.45mmol)を室温において添加した。反応物を、2時間にわたって撹拌し、その揮発性物質を、真空中で除去した。次いで、DCE(1mL)中の5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−N−イソプロピルチオフェン−3−アミン(170mg,0.77mmol)およびDIEA(0.3mL)の溶液を添加した。この反応物を一晩撹拌した。この混合物をEtOAc(150mL)へと注ぎ、その有機物を、飽和NaHCO(2×50mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。NaSOで乾燥させた後、有機層を濃縮し、その残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中0〜20%EtOAc)によって精製して、所望の生成物(116mg,25%収率)を濃色油状物として得た。
【0160】
【化29】
前の工程のアミド(116mg,0.32mmol,1.0当量)を、50mL二口丸底フラスコの中でTHF(5mL)中に溶解させた。この溶液を、アセトン−ドライアイスバスの中で−78℃へと冷却した。この溶液に、LDA(0.5mL,0.96mmol,3.0当量)を、内部温度を−70℃より低く維持しながら、シリンジを介して滴下した。添加後、この溶液を−78℃において2時間にわたって撹拌した。COを3分間にわたって溶液の中へ通気した。1.0mL IPAを、反応物に添加し、続いて、30mL 10%クエン酸を添加した。
【0161】
この混合物を、EtOAc(100mL)へと注ぎ、有機物を、10%クエン酸(2×30mL)およびブライン(100mL)で洗浄した。NaSOで乾燥させ、真空中で乾燥するまで濃縮した後、その残渣を、逆相HPLCによって精製して、生成物(45mg,34%収率)を得た。MS (m/z):404.5 [M+H]+;HPLC保持時間 5.18分(0.05%トリフルオロ酢酸を含む2〜98%アセトニトリル:水)。
【0162】
(比較実施例4 5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1R,2R,4R)−N−イソプロピル−2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸)
【0163】
【化30】
(1R,2R,4R)−2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸を、(1S,2S,4S)−2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸の代わりに使用することを除いて、5−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−3−((1R,2R,4R)−N−イソプロピル−2,4−ジメチル−シクロヘキサンカルボキサミド)チオフェン−2−カルボン酸を、実施例27と類似の様式で調製した。MS (m/z):404.0 [M+H]+;HPLC保持時間 8.75分(0.05%トリフルオロ酢酸を含む2〜98%アセトニトリル:水)。
【0164】
((1R,2R,4R)−2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸の合成)
【0165】
【化31】
EtOH(24mL)中の(R)−4−ベンジル−3−((1R,6R)−4,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エン−カルボニル)オキサゾリジン−2−オン(1.5g,4.8mmol)(J. Am. Chem. Soc. 110(4), 1988, 1238−1256)および10%Pd/C(500mg)の混合物を、H雰囲気(1atm)下で室温において一晩撹拌した。反応混合物を、珪藻土のパッドを通して濾過し、濃縮して、ジアステレオマーの3:1混合物を得、これを、分取用キラルカラムクロマトグラフィー:Chiral−Pak AD−H(20cm×250cm; 半分取):保持時間:5.11分、6.25分(80:20 ヘプタン:エタノール)によって分離し、所望の化合物(R)−4−ベンジル−3−((1R,2R,4R)−2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボニル)オキサゾリジン−2−オン(0.65g)を得た。
【0166】
THF/水(3:1,20mL)中の(R)−4−ベンジル−3−((1R,2R,4R)−2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボニル)オキサゾリジン−2−オン(0.65g,2.0mmol)の溶液を、氷浴中で冷却し、30%H(1mL,16.5mmol)をゆっくりと添加し、続いて、LiOH・HO(s)(0.17g,4.0mmol)を一度に添加した。この反応物を室温へとゆっくりと加温し、16時間にわたって撹拌した。次いで、上記反応物を氷浴中で冷却した。NaSOの1M溶液を、上記冷却した反応混合物にゆっくりと添加した。この溶液を1時間にわたって撹拌し、その層を分離した。有機物を減圧下で除去した。水性物をその有機性濃縮物に添加し戻し、CHClで洗浄した(2×50mL)。水性溶液のpHを、濃塩酸をゆっくりと添加することで2へと調節した。得られた混合物をEtOAcで抽出し(1×50mL)、NaSOで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、ヘキサンと同時エバポレートして、0.300gの(1R,2R,4R)−2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸を白色固体として得た。
【0167】
(生物学的実施例)
(抗ウイルス活性)
本発明の別の局面は、ウイルス感染を阻害する方法に関し、上記方法は、サンプルもしくはこのような阻害が必要であると疑われる被験体を、本発明の組成物で処置する工程を包含する。
【0168】
本発明の状況内で、ウイルスを含むと疑われるサンプルは、天然のもしくは人工の材料(例えば、生きている生物;組織もしくは細胞培養物;生物学的サンプル(例えば、生物学的材料のサンプル(血液、血清、尿、脳脊髄液、涙液、喀痰、唾液、および組織サンプルなど);実験室サンプル;食品、水、もしくは空気サンプル;および生体生成物(bioproduct)サンプル(例えば、細胞、特に、所望の糖タンパク質を合成する組換え細胞の抽出物))などを含む。代表的には、上記サンプルは、ウイルス感染を誘導する生物、頻繁には、腫瘍ウイルスのような病原性生物を含むと疑われる。サンプルは、水および有機溶媒\水混合物を含む任意の媒体中に含まれ得る。サンプルは、生きている生物(例えば、ヒト)および人工材料(例えば、細胞培養物)を含む。
【0169】
所望であれば、組成物の適用後の本発明の化合物の抗ウイルス活性は、このような活性を検出する直接的および間接的な方法を含む任意の方法によって観察され得る。このような活性を決定するための定量的、定性的、および半定量的方法は、全て企図される。代表的には、上記のスクリーニング方法のうちの1つが適用されるが、任意の他の方法(例えば、生きている生物の生理学的特性の観察)もまた、適用可能である。
【0170】
本発明の化合物の抗ウイルス活性は、公知である標準的なスクリーニングプロトコルを使用して測定され得る。例えば、化合物の抗ウイルス活性は、以下の一般的プロトコルを使用して測定され得る。
【0171】
(細胞ベースのフラビウイルス免疫検出アッセイ)
BHK21細胞もしくはA549細胞をトリプシン処理し、計数し、Hams F−12培地(A549細胞)もしくはRPMI−1640培地(BHK21細胞)(2%ウシ胎仔血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充)の中で2×10細胞/mLへと希釈する。2×10細胞を、透明な96ウェル組織培養プレートの中で1ウェルあたり分与し、37℃、5%COにおいて一晩配置する。翌日に、上記細胞を、種々の濃度の試験化合物の存在下で、1時間にわたって37℃においておよび5%CO、さらに48時間にわたって感染多重度(MOI)0.3でウイルスに感染させる。上記細胞を、PBSで1回洗浄し、冷メタノールで10分間にわたって固定する。PBSで2回洗浄後、上記固定した細胞を、1%FBSおよび0.05%Tween−20を含むPBSで、1時間にわたって室温においてブロックする。次いで、一次抗体溶液(4G2)を、1%FBSおよび0.05%Tween−20を含むPBS中、1:20〜1:100の濃度で、3時間にわたって添加する。次いで、細胞をPBSで3回洗浄し、続いて、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化抗マウスIgG(Sigma, 1:2000希釈)で1時間インキュベートする。PBSで3回洗浄した後、50マイクロリットルの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液(Sigma)を、各ウェルに2分間にわたって添加する。上記反応を、0.5M 硫酸を添加することによって停止する。上記プレートを、ウイルス負荷定量のために、450nm吸光度で読み取る。測定後、上記細胞をPBSで3回洗浄し、続いて、ヨウ化プロピジウムで5分間にわたってインキュベートする。プレートを、Tecan Safire(商標)リーダー(励起537nm、発光617nm)において細胞数定量のために読み取る。用量応答曲線を、試験化合物の濃度のlogに対する平均吸光度からプロットする。そのEC50を、非線形回帰分析によって計算する。陽性コントロール(例えば、N−ノニル−デオキシノジリマイシン)が使用され得る。
【0172】
(細胞ベースのフラビウイルス細胞変性効果アッセイ)
西ナイルウイルスもしくは日本脳炎ウイルスに対して試験するために、BHK21細胞をトリプシン処理し、RPMI−1640培地(2%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充)中に4×10細胞/mLの濃度に希釈する。デングウイルスに対して試験するために、Huh7細胞をトリプシン処理し、DMEM培地(5%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充)中に4×10細胞/mLの濃度へと希釈する。50マイクロリットルの細胞懸濁物(2×10細胞)を、96ウェルオプティカルボトムPITポリマーベースのプレート(Nunc)において1ウェルあたり分与する。細胞を、培養培地中、37℃、5%COにおいて一晩増殖させ、次いで、異なる試験化合物濃度の存在下で、MOI=0.3において西ナイルウイルス(例えば、B956株)もしくは日本脳炎ウイルス(例えば、中山株)、もしくはMOI=1においてデングウイルス(例えば、DEN−2 NGC株)を感染させる。上記ウイルスおよび上記化合物を含むプレートを、37℃、5%COにおいて72時間にわたってさらにインキュベートする。インキュベーションの最後に、100マイクロリットルのCellTiter−Glo(商標)試薬を各ウェルに添加する。内容物を、2分間にわたって回転式振盪機(orbital shaker)上で混合して、細胞融解を誘導する。上記プレートを、室温において10分間にわたってインキュベートして、発光シグナルを安定化させる。発光読み取りを、プレートリーダーを使用して記録する。陽性コントロール(例えば、N−ノニル−デオキシノジリマイシン)が使用され得る。
【0173】
(デング感染のマウスモデルにおける抗ウイルス活性)
化合物を、デングウイルス感染のマウスモデル(Schul et al. J. Infectious Dis. 2007; 195:665−74)においてインビボで試験する。6〜10週齢AG129マウス(B&K Universal Ltd, Hll, UK)を、個々に換気したケージの中に収容する。マウスに、0.4mL TSV01デングウイルス2懸濁物を腹腔内注射する。血液サンプルを、眼窩穿刺(retro orbital puncture)によってイソフルラン麻酔下で採取する。血液サンプルを、終濃度 0.4%までクエン酸ナトリウムを含むチューブ中に集め、直ぐに3分間にわたって6000gで遠心分離にかけて、血漿を得る。血漿(20マイクロリットル)を、780マイクロリットルのRPMI−1640培地で希釈し、プラークアッセイ分析のために液体窒素中で急速凍結する。残りの血漿を、サイトカインおよびNS1タンパク質レベル決定のためにとっておく。マウスは、数日にわたって上昇するデングウイルス血症を発症させ、感染後3日目にピークに達する。
【0174】
抗ウイルス活性を試験するために、本発明の化合物を、ビヒクル流体、例えば、10%エタノール、30%PEG 300および60%D5W(水中5%デキストロース;もしくは6N HCl(1.5当量):1N NaOH(3.5にpH調節):100mM クエン酸緩衝液 pH3.5(0.9%v/v:2.5%v/v:96.6%v/v)中に溶解させる。36匹の6〜10週齢AG129マウスを、各々6匹のマウスの6群に分ける。全てのマウスに、上記のようにデングウイルスを感染させる(0日目)。群1には、0.2mg/kgの本発明の化合物を含む200mL/マウスの強制経口投与を0日目に(最初の投与は、デング感染の直前に)開始して、1日に2回(1回は早朝および1回は午後遅く)、3日間連続で行う。群2、3および4を、同じようにして1mg/kg、5mg/kgおよび25mg/kgの上記化合物をそれぞれ投与する。陽性コントロールが使用され得(例えば、(2R,3R,4R,5R)−2−(2−アミノ−6−ヒドロキシ−プリン−9−イル)−5−ヒドロキシメチル−3−メチル−テトラヒドロ−フラン−3,4−ジオール)、先の群と同じようにして、200マイクロリットル/マウスの強制経口投与が行われる。さらなる群を、ビヒクル流体のみで処置する。
【0175】
感染後3日目に、約100マイクロリットル血液サンプル(クエン酸ナトリウムで抗凝固処理)を、イソフルラン麻酔下で眼窩穿刺によってマウスから採取する。血漿を、プラグアッセイ分析のために、遠心分離および液体窒素中での急速凍結によって各血液サンプルから得る。集めた血漿サンプルを、Schulらに記載されるように、プラグアッセイによって分析する。サイトカインもまた、Schulによって記載されるように分析する。NS1タンパク質レベルを、Platelia(商標)キット(BioRad Laboratories)を使用して分析する。抗ウイルス効果は、サイトカインレベルおよび/もしくはNS1タンパク質レベルの低下によって示される。
【0176】
代表的には、約5〜100倍、より代表的には、10〜60倍、最も代表的には、20〜30倍のウイルス血症の低下は、本発明の化合物の5〜50mg/kg bid投与量で得られる。
【0177】
(HCVアッセイプロトコル)
本発明の化合物の抗HCV活性を、HCVレプリコンを有するヒト肝癌Huh−7細胞系において試験した。上記アッセイは、以下の工程を含んだ。
【0178】
(工程1:化合物調製および連続希釈)
384ウェルプレートの中で100%DMSO中で連続希釈を行った。出発の最終連続希釈濃度の225倍濃度で化合物を含む溶液を、100%DMSO中に調製し、15μLを、ポリプロピレン384ウェルプレートの3列目もしくは13列目の予め特定されたウェルに添加した。上記384ウェルプレートの残りには、100%DMSO中の500μM HCVプロテアーゼインヒビター(ITMN−191)10μLを添加した23列目および24列目を除いて、10μL 100%DMSOで満たした。上記HCVプロテアーゼインヒビターを、HCV複製の100%阻害のコントロールとして使用した。次いで、上記プレートを、Biomek FX Workstationに配置して、連続希釈を開始した。連続希釈を、3列目から12列目もしくは13列目から22列目まで、3倍希釈の10サイクルで行った。
【0179】
(工程2:細胞培養プレート調製および化合物添加)
黒色のポリプロピレン384ウェルプレートの各ウェルに、1600個の懸濁したHuh−7 HCVレプリコン細胞を含む細胞培養培地90μLを、Biotek uFlow Workstationを用いて添加した。上記化合物溶液の体積0.4μLを、上記連続希釈プレートから、Biomek FX Workstation上の細胞培養プレートへと移した。最終アッセイ条件でのDMSO濃度は、0.44%であった。上記プレートを、3日間にわたって37℃において、5%COおよび85%湿度でインキュベートした。
【0180】
(工程3:細胞傷害性およびウイルス複製の阻害の検出)
a)細胞傷害性の評価:上記384ウェル細胞培養プレート中の培地を、Biotek EL405プレート洗浄機で吸引した。100%PBS中に400nM カルセインAMを含む溶液の体積50μLを、Biotek uFlow Workstationを用いて上記プレートの各ウェルに添加した。上記プレートを30分間にわたって室温においてインキュベートし、その後、蛍光シグナル(発光490nm,励起520nm)をPerkin Elmer Envision Plate Readerで測定した。
【0181】
b)ウイルス複製の阻害の評価:384ウェル細胞培養プレート中の上記カルセイン−PBS溶液を、Biotek EL405プレート洗浄機で吸引した。Dual−Gloルシフェラーゼ緩衝液(Promega, Dual−Glo Luciferase Assay Reagent, cat. #E298B)の体積20μLを、Biotek uFlow Workstationを用いて上記プレートの各ウェルに添加した。上記プレートを、10分間にわたって室温においてインキュベートした。次いで、Dual−Glo Stop & Glo基質(Promega, Dual−Glo Luciferase Assay Reagent, cat. #E313B)およびDual−Glo Stop & Glo緩衝液(Promega, Dual−Glo Luciferase Assay Reagent, cat. #E314B)の1:100混合物を含む溶液の体積20μLを、Biotek uFlow Workstationを用いて上記プレートの各ウェルに添加した。上記プレートを室温において10分間にわたってインキュベートし、その後、上記発光シグナルを、Perkin Elmer Envision Plate Readerで測定した。
【0182】
(工程4:計算)
細胞傷害性%を、蛍光生成物へのカルセインAM変換によって決定した。上記DMSOコントロールウェルの平均蛍光シグナルを、100%非毒性として定義した。試験化合物処理ウェルの個々の蛍光シグナルを、DMSOコントロールウェルの平均シグナルで割り、次いで、100%をかけて、生存性%を得た。抗HCV複製活性%を、DMSOコントロールウェルと比較して、上記試験ウェルの発光シグナルによって決定した。バックグラウンドシグナルを、上記HCVプロテアーゼインヒビター処理ウェルの平均蛍光シグナルによって決定し、上記試験ウェルおよび上記DMSOコントロールウェルのシグナルから差し引いた。3倍連続希釈後に、そのEC50値およびCC50値を、各濃度における阻害%を以下の式にフィットさせることによって計算した。
【0183】
阻害%=100%/[(EC50/[l])+1]
ここでbは、ヒル係数である。例えば、Hill, A. V., The Possible Effects of the Aggregation of the Molecules of Haemoglobin on its Dissociation Curves, J.Physiol. 40:iv−vii. (1910)を参照のこと。
【0184】
特定の濃度(例えば、2μM)における阻害値%はまた、上の式から得ることができる。
【0185】
試験される場合、本発明の特定の化合物は、表1に列挙されるように、ウイルス複製を阻害することが分かった:
【0186】
【表1-2】
(HCV一過性トランスフェクションアッセイプロトコル)
細胞系。 Huh−lunet(HCV複製について非常に許容性のHuh−7クローン)を、ReBLikon GmbH(Mainz, Germany)から得た。Huh−lunet細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM; GIBCO, Carlsbad, CA)(10%ウシ胎仔血清(FBS; Hyclone, Logan, UT)を補充)において維持した。細胞を、37℃において、加湿インキュベーター(85%湿度)中、および5%CO雰囲気下で維持した。
【0187】
一過性トランスフェクションレプリコンアッセイを使用する薬物感受性決定。 PI−hRluc(ポリオIRESの下流にRenillaルシフェラーゼ遺伝子およびEMCV IRESの下流に遺伝子型1b(Con−1株)HCV非構造遺伝子(NS3−NS5B)をコードするバイシストロニックレプリコン)を、一過性トランスフェクション研究のために使用した。上記プラスミドpPI−hRlucを、プラスミドpFKI341 PI−Luc/NS3−3’/ET(これは、遺伝子型1b(Con−1株)サブゲノムレプリコンをコードする)から生成し、ReBLikon{11239}から得た。上記hRluc遺伝子を、pF9 CMV hRluc−neo Flexi(R)(Promega, Madison, WI)から、Accuprime Super Mix I (Invitrogen, Carlsbad, CA)ならびにプライマーPV_Rluc_Topおよび3’−Rluc(NotI)を使用するPCRによってPCR増幅した。これら2種のプライマーは、以下の配列を有し、その後のクローニングのために制限部位を有する。
【0188】
【化32】
上記T7プロモーター、5’UTRおよびポリオウイルスIRESを、プラスミドpFKI341 PI−Luc/NS3−3’/ETから、プライマー5’−P7(SbfI)およびPV_Rluc_Bottomを使用してPCR増幅した。これら2種のプライマ−は、以下の配列を有し、その後のクローニングのための制限部位を有する。
【0189】
【化33】
次いで、2つの上の反応からのその後のPCRフラグメントを、オーバーラッピングPCR(overlapping PCR)ならびにプライマー5’−P7(SbfI)および3’−Rluc(NotI)を使用して一つに結合した。完成したP7−5’UTR−ポリオウイルスIRES−hRluc増幅生成物を、pCR2.1−TOPOへとサブクローニングした。得られたプラスミドを、SbfIおよびNotIで消化し、切り出したフラグメント(P7−5’UTR−ポリオウイルスIRES−hRluc)を、T4 DNAリガーゼを使用して連結し、pFKI341 PI−Luc/NS3−3’/ETを同じ酵素で消化した。得られたベクターpPI−hRlucを配列決定して、正確な配向および上記プラスミドのP75’UTR−ポリオウイルスIRES−hRluc領域の配列を確認した。NS5B M423T変異を、上記PI−hRlucレプリコンをコードするプラスミドの中に、製造業者の使用説明書(Stratagene, La Jolla, CA)に従って、QuikChange II XL変異誘発キットを使用して導入した。上記変異をDNA配列決定によって確認した。レプリコンRNAを、インビトロで上記レプリコンコードプラスミドから、MEGAscriptキット(Ambion, Austin, TX)を使用して転写した。RNAを、Huh−lunet細胞へと、Lohmannらの方法を使用してトランスフェクトした。簡潔には、細胞をトリプシン処理し、PBSで2回洗浄した。400μLのPBS中の4×10細胞の懸濁物を、5μgのRNAと混合し、960μFおよび270Vの設定を使用してエレクトポレーションに供した。細胞を、40mLの予め温めておいた培養培地の中に移し、次いで、96ウェルプレートに播種した(100μL/ウェル)。化合物を100%DMSO中に3倍連続希釈し、1:200希釈において細胞に添加し、総体積200μL/ウェル中の最終DMSO濃度0.5%を達成した。細胞を3日間にわたって処理し、その後、培養培地を除去し、細胞を溶解させ、Renillaルシフェラーゼ活性を、市販のアッセイ(Promega)およびTop Count機器(Perkin Elmer, Waltham, MA)を使用して定量した。
【0190】
データ分析。 データを、未処理コントロール(100%として定義した)に対するパーセンテージへと変換し、EC50値を、2つの反復データセットの非線形回帰によって、XLfit 4ソフトウェア(IDBS, Emeryville, CA)を使用して計算した。耐性倍数変化を、変異体対野生型レプリコンのEC50の比として計算した。結果を表2に示す。
【0191】
【表2】
(結合親和性測定)
認識されるように、結合親和性の直接測定は、低分子薬物と、密接に関連するタンパク質の結合ポケットとの相互作用を決定するための感度の高い方法、よって、比較阻害効果に対して繊細な構造改変の効果を提供する。以下に記載される方法および表3に列挙される結果は、本発明の化合物が、野生型NS5Bへの類似もしくは増強された結合親和性を示すのみならず、式Iのシクロヘキセニル環における不飽和の存在が、付加されたメチル置換基と組み合わせて、M423T変異体に対する結合親和性の驚くべき保持を付与する(これは、慢性感染したHCV患者の、初期のNS5B親指サイト(thumb site)IIインヒビターでの処置の際に医院において生じる)(Wagner, F., Thompson, R. et al., Antiviral Activity of the Hepatitis C Virus Polymerase Inhibitor Filibuvir in Genotype 1 Infected Patients, Hepatology, 2011 ; Jiang, M., Ardzinski, A. et al, Characterization of HCV variants selected in genotype 1 patients who received 3 day monotherapy with VX−222, a non−nucleoside polymerase inhibitor, 17th international meeting on hepatitis C virus and related viruses, September 2010, Yokohama, Japan)こともまた、実証する。結合親和性における最小限の倍数差異を有する化合物は、特定の臨床的有用性を有し得る。
【0192】
NS5Bでのインビトロ研究は、NS5bタンパク質の可溶性の、21残基C末端短縮形態を使用した(アミノ酸1〜570;GT−1b;野生型および変異体M423T)。Hung, M., Wang, R., Liu, X.:’Preparation of HCV NS3 and NS5B to support small molecule drug discovery’, Current Protocols in Pharmacology, 2011(印刷中)を参照のこと。表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、タンパク質構築物への本明細書に記載される化合物の結合親和性を測定した。標準的なアミンカップリングを使用して、約2500RUの固定化レベルまで、10mM 酢酸ナトリウム pH 5.5緩衝液を使用して、Biacore CM5センサーチップの表面に上記タンパク質を連結した。泳動緩衝液(50mM Hepes pH 7.5、5mM MgCl、10mM KCl、1mM EDTA、1mM TCEP、0.01%P20, 5%DMSO)中で、25℃においてBiacore T100システムを使用して実験を行った。化合物を、100μl・分−1の流速で、60秒間の会合相および5分間の解離相を使用して、162nMで出発して8種の濃度の3倍濃度希釈シリーズにおいて試験した。各結合サイクルの終わりに、40μl・分−1での緩衝液(10mM 四ホウ酸ナトリウム、1M NaCl, pH8.5)の3秒間注入を、NS5B表面になお結合した化合物を除去するために再生工程として使用した。応答データを、以下の手順を使用して加工処理した:X方向およびY方向に並べた注入物。参照表面および緩衝液注入の両方を使用して二重参照し、排除体積効果に対するDMSO較正。加工処理したデータを、非線形最小二乗分析法と、物質輸送との1:1結合モデルのグローバルフィット(global fit)を使用して分析した。結果を、表3にまとめる。
【0193】
【表3】
観察される具体的薬理学的応答は、選択される上記特定の活性化合物もしくは薬学的キャリアが存在するかどうか、ならびに処方物のタイプおよび使用される投与様式に従っておよび依存して変わり得、結果におけるこのような予測されるバリエーションもしくは差異は、本発明の実施に従って企図される。
【0194】
本発明の具体的実施形態が本明細書で詳細に例示され記載されているものの、本発明は、これらに限定されない。上記の詳細な説明は、本発明の例示として提供され、本発明の何らかの限定を構成すると解釈されるべきではない。改変は、当業者に明らかであり、本発明の趣旨から逸脱しない全ての改変は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]