特許第5987062号(P5987062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5987062監視区間自動設定装置、工作機械、および監視区間自動設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987062
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】監視区間自動設定装置、工作機械、および監視区間自動設定方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20160823BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20160823BHJP
   G05B 19/409 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B23Q17/09 A
   G05B19/18 W
   G05B19/409 C
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-544075(P2014-544075)
(86)(22)【出願日】2012年10月29日
(86)【国際出願番号】JP2012077911
(87)【国際公開番号】WO2014068644
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】長戸 一義
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 信也
(72)【発明者】
【氏名】古川 和也
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−019939(JP,A)
【文献】 特開2004−102568(JP,A)
【文献】 特開2009−285792(JP,A)
【文献】 特開2011−118840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/09
G05B 19/18
G05B 19/409
G05B 19/418
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を用いてワークを加工する加工指令を含むプログラムが格納された記憶部と、
該プログラムを編集可能であって、該プログラムに対して、該加工指令の前方に、該工具に加わる負荷の監視を開始する監視開始指令を、該加工指令の後方に、該負荷の監視を終了する監視終了指令を、各々挿入する監視区間設定工程を実行する演算部と、
を有する制御装置を備え
前記演算部は、前記監視区間設定工程の後に、前記プログラムに挿入された前記監視開始指令および前記監視終了指令を検査する検査工程を実行する監視区間自動設定装置。
【請求項2】
連続する複数の前記加工指令を前記プログラムが含む場合、前記演算部は、前記監視区間設定工程において、該プログラムに対して、最初の該加工指令の前方に前記監視開始指令を、最後の該加工指令の後方に前記監視終了指令を、各々挿入する請求項1に記載の監視区間自動設定装置。
【請求項3】
前記プログラムに関するデータを表示可能な表示装置を備え、
前記演算部は、前記監視区間設定工程において、該プログラムに対して、該表示装置における前記負荷の表示を開始する表示開始指令と該負荷の表示を終了する表示終了指令とを、該表示開始指令と該表示終了指令との間に前記監視開始指令と前記監視終了指令とが入るように、各々挿入する請求項1または請求項2に記載の監視区間自動設定装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記監視区間設定工程の前に、複数の前記プログラムの中から、前記監視開始指令および前記監視終了指令を挿入する該プログラムを選択するプログラム選択工程を実行する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の監視区間自動設定装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記監視区間設定工程の前に、複数の前記工具の中から、前記監視開始指令および前記監視終了指令を挿入する該工具を選択する工具選択工程を実行する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の監視区間自動設定装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記監視区間設定工程の後に、前記監視開始指令および前記監視終了指令が挿入された前記プログラムを前記記憶部に格納する保存工程を実行する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の監視区間自動設定装置。
【請求項7】
前記加工指令はGコードであり、
前記監視開始指令および前記監視終了指令は、互いに異なるMコードである請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の監視区間自動設定装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の監視区間自動設定装置を備える工作機械。
【請求項9】
工具を用いてワークを加工する加工指令を含むプログラムに対して、該加工指令の前方に、該工具に加わる負荷の監視を開始する監視開始指令を、該加工指令の後方に、該負荷の監視を終了する監視終了指令を、各々挿入する監視区間設定工程を有し、
前記監視区間設定工程の後に、前記プログラムに挿入された前記監視開始指令および前記監視終了指令を検査する検査工程を有する監視区間自動設定方法。
【請求項10】
連続する複数の前記加工指令を前記プログラムが含む場合、前記監視区間設定工程において、該プログラムに対して、最初の該加工指令の前方に前記監視開始指令を、最後の該加工指令の後方に前記監視終了指令を、各々挿入する請求項9に記載の監視区間自動設定方法。
【請求項11】
前記監視区間設定工程において、前記プログラムに対して、該プログラムに関するデータを表示可能な表示装置における前記負荷の表示を開始する表示開始指令と該負荷の表示を終了する表示終了指令とを、該表示開始指令と該表示終了指令との間に前記監視開始指令と前記監視終了指令とが入るように、各々挿入する請求項9または請求項10に記載の監視区間自動設定方法。
【請求項12】
前記監視区間設定工程の前に、複数の前記プログラムの中から、前記監視開始指令および前記監視終了指令を挿入する該プログラムを選択するプログラム選択工程を有する請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の監視区間自動設定方法。
【請求項13】
前記監視区間設定工程の前に、複数の前記工具の中から、前記監視開始指令および前記監視終了指令を挿入する該工具を選択する工具選択工程を有する請求項9ないし請求項12のいずれかに記載の監視区間自動設定方法。
【請求項14】
前記監視区間設定工程の後に、前記監視開始指令および前記監視終了指令が挿入された前記プログラムを保存する保存工程を有する請求項9ないし請求項13のいずれかに記載の監視区間自動設定方法。
【請求項15】
前記加工指令はGコードであり、
前記監視開始指令および前記監視終了指令は、互いに異なるMコードである請求項9ないし請求項14のいずれかに記載の監視区間自動設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具に加わる負荷を監視するための監視区間を設定する際に用いられる監視区間自動設定装置、当該監視区間自動設定装置を備える工作機械、および監視区間自動設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤において、ワーク加工中に工具の刃がチッピングを起こすと、工具を動かすモータのトルクや、ワークを動かす主軸のモータのトルクが変動する。特許文献1に記載の加工負荷監視方式は、当該トルク変化を基に、工具の刃のチッピングを検出している。すなわち、同文献記載の加工負荷監視方式は、実際のトルク変化と異常判別用のしきい値とを比較し、実際のトルクがしきい値を超えた場合に、チッピングが発生したと判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−132440号公報
【特許文献2】特開2008−36804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、旋盤により円柱状のワークの外周面を切削加工する場合、まず、ワークを主軸の軸周りに回転させる(作業a)。次に、工具の刃を、ワークの外周面に当接させる(作業b)。続いて、工具をワークの軸方向に移動させることにより、ワークの外周面に切削加工を施す(作業c)。最後に、工具の刃を、ワークの外周面から離間させる(作業d)。
【0005】
これら一連の作業a〜dのうち、作業bや作業dの際には、工具を動かすモータのトルクや、ワークを動かす主軸のモータのトルクが大きく変動する。このため、トルクがしきい値を超えやすくなる。したがって、実際には工具の刃がチッピングしていないにもかかわらず、チッピングしていると、誤判別されるおそれがある。
【0006】
そこで、このような誤判別を回避するため、本発明者は、監視区間を設定することに想到した。すなわち、上記一連の作業a〜dのうち、トルクを監視する必要があるのは、作業c、つまりワークの外周面に切削加工を施している間だけである。このため、作業cだけが含まれるように、監視区間を設定すればよい。このように、監視区間を設定すると、誤判別を回避することができる。
【0007】
しかしながら、作業者の手動により監視区間の設定を行うのは、煩雑である。すなわち、作業者は、工作機械の画面にワーク加工用のプログラムを表示し、当該プログラムにおける切削作業(作業c)の前方に監視区間の始点を、後方に監視区間の終点を、挿入する必要がある。また、手動により監視区間の設定を行うと、監視区間の重複が発生しやすい。また、不完全な監視区間が設定されやすい。例えば、始点があるものの、終点がない監視区間が設定されるおそれがある。
【0008】
この点、特許文献2には、プログラムを読み込む際に、早送り動作を指令するGコードの前後に、自動的にMコードを挿入可能なNC装置が開示されている。しかし、特許文献2には、工具を動かすモータのトルクや、ワークを動かす主軸のモータのトルクを監視する技術は開示されていない。また、これらのトルクつまり工具に加わる負荷を監視する監視区間を設定する技術は開示されていない。
【0009】
そこで、本発明は、工具に加わる負荷を監視する監視区間を、自動的に設定可能な監視区間自動設定装置、当該監視区間自動設定装置を備える工作機械、および監視区間自動設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明の監視区間自動設定装置は、工具を用いてワークを加工する加工指令を含むプログラムが格納された記憶部と、該プログラムを編集可能であって、該プログラムに対して、該加工指令の前方に、該工具に加わる負荷の監視を開始する監視開始指令を、該加工指令の後方に、該負荷の監視を終了する監視終了指令を、各々挿入する監視区間設定工程を実行する演算部と、を有する制御装置を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の監視区間自動設定装置によると、プログラムの加工指令の前方に、監視開始指令を、自動的に挿入することができる。並びに、プログラムの加工指令の後方に、監視終了指令を、自動的に挿入することができる。すなわち、前後方向から加工指令を挟み込むように、自動的に、プログラムに監視区間(監視開始指令から監視終了指令までの区間)を設定することができる。このため、ワーク加工時に、工具に加わる負荷を監視することができる。したがって、例えば、負荷を基に工具の破損を検出することができる。
【0012】
また、本発明の監視区間自動設定装置によると、監視区間を手動で設定する場合と比較して、監視区間の重複や、不完全な監視区間の設定など、人為的なミスが発生しにくい。したがって、たとえ監視区間の設定数が多い場合であっても、正確に監視区間を設定することができる。
【0013】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、連続する複数の前記加工指令を前記プログラムが含む場合、前記演算部は、前記監視区間設定工程において、該プログラムに対して、最初の該加工指令の前方に前記監視開始指令を、最後の該加工指令の後方に前記監視終了指令を、各々挿入する構成とする方がよい。
【0014】
本構成によると、複数の加工指令に対して、包括的に監視区間を設定することができる。このため、複数の加工指令の各々に対して個別に監視区間を設定する場合と比較して、監視区間の設定作業が簡単になる。また、プログラムに対する、監視開始指令、監視終了指令の挿入数を削減することができる。したがって、プログラムが冗長になるのを抑制することができる。
【0015】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記プログラムに関するデータを表示可能な表示装置を備え、前記演算部は、前記監視区間設定工程において、該プログラムに対して、該表示装置における前記負荷の表示を開始する表示開始指令と該負荷の表示を終了する表示終了指令とを、該表示開始指令と該表示終了指令との間に前記監視開始指令と前記監視終了指令とが入るように、各々挿入する構成とする方がよい。本構成によると、表示装置に、監視区間における負荷を表示することができる。このため、作業者が負荷を確認することができる。
【0016】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記演算部は、前記監視区間設定工程の前に、複数の前記プログラムの中から、前記監視開始指令および前記監視終了指令を挿入する該プログラムを選択するプログラム選択工程を実行する構成とする方がよい。本構成によると、複数のプログラム中、所望のプログラムに対して、監視区間を設定することができる。つまり、所望のプログラムに対して、負荷の監視を行うことができる。
【0017】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記演算部は、前記監視区間設定工程の前に、複数の前記工具の中から、前記監視開始指令および前記監視終了指令を挿入する該工具を選択する工具選択工程を実行する構成とする方がよい。本構成によると、複数の工具中、所望の工具に対して、監視区間を設定することができる。つまり、所望の工具に対して、負荷の監視を行うことができる。
【0018】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記演算部は、前記監視区間設定工程の後に、前記プログラムに挿入された前記監視開始指令および前記監視終了指令を検査する検査工程を実行する構成とする方がよい。本構成によると、監視区間設定工程により設定された監視区間の、設定ミスを検出することができる。
【0019】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記演算部は、前記監視区間設定工程の後に、前記監視開始指令および前記監視終了指令が挿入された前記プログラムを前記記憶部に格納する保存工程を実行する構成とする方がよい。本構成によると、監視区間設定後のプログラムを、記憶部に保存することができる。
【0020】
(8)好ましくは、上記(1)ないし(7)のいずれかの構成において、前記加工指令はGコードであり、前記監視開始指令および前記監視終了指令は、互いに異なるMコードである構成とする方がよい。
【0021】
ここで、「Gコード」とは、軸(例えば、主軸、工具用のスライド軸など)の移動、座標系の設定などに関するコードをいう。また、「Mコード」とは、工作機械を動かす際に、スイッチやフラグの働きをするコードをいう。本構成によると、加工指令を表すGコードの前後両側に、互いに異なるMコードを挿入することにより、簡単に監視区間を設定することができる。
【0022】
(9)上記課題を解決するため、本発明の工作機械は、上記(1)ないし(8)のいずれかの監視区間自動設定装置を備えることを特徴とする。上記(1)の構成と同様に、本発明の工作機械によると、自動的に、プログラムに監視区間を設定することができる。また、監視区間設定時に、人為的なミスが発生しにくい。
【0023】
(10)上記課題を解決するため、本発明の監視区間自動設定方法は、工具を用いてワークを加工する加工指令を含むプログラムに対して、該加工指令の前方に、該工具に加わる負荷の監視を開始する監視開始指令を、該加工指令の後方に、該負荷の監視を終了する監視終了指令を、各々挿入する監視区間設定工程を有することを特徴とする。上記(1)の構成と同様に、本発明の監視区間自動設定方法によると、自動的に、プログラムに監視区間を設定することができる。また、監視区間設定時に、人為的なミスが発生しにくい。
【0024】
(11)好ましくは、上記(10)の構成において、連続する複数の前記加工指令を前記プログラムが含む場合、前記監視区間設定工程において、該プログラムに対して、最初の該加工指令の前方に前記監視開始指令を、最後の該加工指令の後方に前記監視終了指令を、各々挿入する構成とする方がよい。上記(2)の構成と同様に、本構成によると、複数の加工指令に対して、包括的に監視区間を設定することができる。
【0025】
(12)好ましくは、上記(10)または(11)の構成において、前記監視区間設定工程において、前記プログラムに対して、該プログラムに関するデータを表示可能な表示装置における前記負荷の表示を開始する表示開始指令と該負荷の表示を終了する表示終了指令とを、該表示開始指令と該表示終了指令との間に前記監視開始指令と前記監視終了指令とが入るように、各々挿入する構成とする方がよい。上記(3)の構成と同様に、本構成によると、表示装置に、監視区間における負荷を表示することができる。
【0026】
(13)好ましくは、上記(10)ないし(12)のいずれかの構成において、前記監視区間設定工程の前に、複数の前記プログラムの中から、前記監視開始指令および前記監視終了指令を挿入する該プログラムを選択するプログラム選択工程を有する構成とする方がよい。上記(4)の構成と同様に、本構成によると、複数のプログラム中、所望のプログラムに対して、監視区間を設定することができる。
【0027】
(14)好ましくは、上記(10)ないし(13)のいずれかの構成において、前記監視区間設定工程の前に、複数の前記工具の中から、前記監視開始指令および前記監視終了指令を挿入する該工具を選択する工具選択工程を有する構成とする方がよい。上記(5)の構成と同様に、本構成によると、複数の工具中、所望の工具に対して、監視区間を設定することができる。
【0028】
(15)好ましくは、上記(10)ないし(14)のいずれかの構成において、前記監視区間設定工程の後に、前記プログラムに挿入された前記監視開始指令および前記監視終了指令を検査する検査工程を有する構成とする方がよい。上記(6)の構成と同様に、本構成によると、監視区間の設定ミスを検出することができる。
【0029】
(16)好ましくは、上記(10)ないし(15)のいずれかの構成において、前記監視区間設定工程の後に、前記監視開始指令および前記監視終了指令が挿入された前記プログラムを保存する保存工程を有する構成とする方がよい。上記(7)の構成と同様に、本構成によると、監視区間設定後のプログラムを保存することができる。
【0030】
(17)好ましくは、上記(10)ないし(16)のいずれかの構成において、前記加工指令はGコードであり、前記監視開始指令および前記監視終了指令は、互いに異なるMコードである構成とする方がよい。上記(8)の構成と同様に、本構成によると、簡単に監視区間を設定することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、工具に加わる負荷を監視する監視区間を、自動的に設定可能な監視区間自動設定装置、当該監視区間自動設定装置を備える工作機械、および監視区間自動設定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、第一実施形態のCNC旋盤の内部斜視図である。
図2図2は、同CNC旋盤のブロック図である。
図3図3は、第一実施形態の監視区間自動設定方法における監視区間自動設定前後のプログラムの模式図である。
図4図4は、同監視区間自動設定方法のプログラム選択工程前段における画面の模式図である。
図5図5は、同工程後段における画面の模式図である。
図6図6は、同監視区間自動設定方法の工具選択工程前段における画面の模式図である。
図7図7は、同工程後段における画面の模式図である。
図8図8は、同監視区間自動設定方法の監視区間設定工程のフローチャートである。
図9図9は、同工程終了後における画面の模式図である。
図10図10は、同監視区間自動設定方法の検査−保存工程のフローチャートである。
図11図11は、同工程終了後における画面の模式図である。
図12図12は、主軸モータの負荷電流の時間変化を示すグラフである。
図13図13は、第二実施形態の監視区間自動設定方法における監視区間自動設定前後のプログラムの模式図である。
【符号の説明】
【0033】
1:CNC旋盤(工作機械)。
2:制御装置、20:記憶部、21:演算部、22:入出力インターフェイス。
3:監視区間自動設定装置。
4:工具台、40:刃物台、41:タレット装置、42:X軸下スライド、43:Z軸スライド、44:Z軸下スライド、45X:X軸モータ、45Z:Z軸モータ。
6:主軸台、60:本体、61:主軸、62:チャック、63C:主軸モータ。
7:ベッド、70:傾斜部。
8:表示装置、80:画面、800:Mコード自動設定ボタン、801:ポップアップブロック、801a:テンキー、801b:表示欄、801c:入力ボタン、802:ポップアップブロック、802a:表示欄、802b:OKボタン、802c:CANCELボタン、810:プログラム表示欄、811:自動挿入ボタン、812:工具選択ボタン、813:M130挿入ボタン、814:M131挿入ボタン、815:M132挿入ボタン、816:M133挿入ボタン、817:Mコード削除ボタン、818:上書き保存チェックボックス、819:番号指定保存チェックボックス、820:保存ボタン、821:カーソル移動ボタン、83:ポップアップブロック、830:工具チェックボックス、831:全チェックボタン、832:全消去ボタン、833:OKボタン、834:CANCELボタン、840:警告メッセージ、840a:OKボタン。
90a:プログラム、90b:プログラム、
ΔD:監視領域、D1:下限しきい値、D2:上限しきい値、ΔT:監視区間、T130〜T131:時刻、T1〜T10:工具、W:ワーク。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の工作機械をCNC旋盤として具現化した実施の形態について説明する。
【0035】
<第一実施形態>
[CNC旋盤の構成]
まず、本実施形態のCNC旋盤の構成について説明する。図1に、本実施形態のCNC旋盤の内部斜視図を示す。図2に、同CNC旋盤のブロック図を示す。図1図2に示すように、CNC旋盤1は、監視区間自動設定装置3と、工具台4と、主軸台6と、ベッド7と、を備えている。図1において、左右方向はZ軸方向(主軸方向)に、前下−後上方向はX軸方向に、各々対応している。
【0036】
ベッド7は、工場の床面に配置されている。ベッド7の上面後方には、傾斜部70が配置されている。主軸台6は、本体60と、主軸61と、チャック62と、を備えている。本体60は、ベッド7の上面前方に配置されている。主軸61は、本体60から右側に突設されている。主軸61は、自身の軸周りに回転可能である。チャック62は、主軸61の右端に配置されている。チャック62には、着脱可能にワークWが固定されている。
【0037】
工具台4は、刃物台40と、タレット装置41と、X軸下スライド42と、Z軸スライド43と、Z軸下スライド44と、を備えている。Z軸下スライド44は、ベッド7の上面の傾斜部70に配置されている。Z軸スライド43は、Z軸下スライド44に対して、左右方向に移動可能である。X軸下スライド42は、Z軸スライド43の上面に配置されている。タレット装置41は、X軸下スライド42に対して、前下−後上方向に移動可能である。刃物台40は、タレット装置41の左面に配置されている。刃物台40には、36°ずつ離間して、合計10個のホルダ(図略)が配置されている。刃物台40は、タレット装置41により、ホルダ単位で、36°ずつ回転可能である。刃物台40の10個のホルダには、10個の工具T1〜T10が割り当てられている。工具T1〜T10は、ワークWを切削加工可能である。
【0038】
監視区間自動設定装置3は、制御装置2と、表示装置8と、を備えている。制御装置2は、記憶部20と、演算部21と、入出力インターフェイス22と、を備えている。制御装置2は、表示装置8と、X軸モータ45Xと、Z軸モータ45Zと、主軸モータ63Cと、に電気的に接続されている。X軸モータ45Xは、タレット装置41を、前下−後上方向に駆動可能である。Z軸モータ45Zは、Z軸スライド43を、左右方向に駆動可能である。主軸モータ63Cは、主軸61を、軸回りに回転駆動可能である。
【0039】
表示装置8は、画面80を備えている。画面80には、CNC旋盤1のステータスなどを表示することができる。また、画面80には、タッチボタンを表示することができる。作業者は、タッチボタンを介して、CNC旋盤1に指示を入力する。
【0040】
[監視区間自動設定方法]
次に、本実施形態の監視区間自動設定装置3が実行する監視区間自動設定方法について説明する。図3に、本実施形態の監視区間自動設定方法における監視区間自動設定前後のプログラムの模式図を示す。図3の左側は、監視区間自動設定前のプログラム90aである。図3の右側は、監視区間自動設定後のプログラム90bである。
【0041】
図3に示すように、プログラム90a、90bには、G0、G1、G2というGコードが用いられている。G0は、工具T1〜T10の位置決めに関するGコードである。G0は、ワークWの任意の加工部分における加工を開始する際、別の位置から当該位置まで工具T1〜T10を移動させる際に、用いられる。また、G0は、ワークWの任意の加工部分における加工が終了した際、当該位置から別の位置まで工具T1〜T10を移動させる際に、用いられる。
【0042】
G1は、工具T1〜T10の直線方向移動に関するGコードである。G1は、ワークWの加工中に工具T1〜T10をX軸方向、Z軸方向に移動させる際に、用いられる。G2は、工具T1〜T10の円弧方向移動に関するGコードである。G2は、ワークWの加工中に工具T1〜T10を円弧方向に移動させる際に、用いられる。なお、これらのGコード以外にも、G3(工具T1〜T10の円弧方向(G2の場合と反対方向)移動に関するGコードなどが用いられる場合がある。このように、プログラム90a、90b中のG1〜G3は、ワークWの任意の加工部分の加工を意味している。G1〜G3は、各々、本発明の「加工指令」の概念に含まれる。
【0043】
以下に説明する監視区間自動設定方法においては、プログラム番号1に対応するプログラム90aの工具T3に関する箇所に、自動的にMコードを挿入し、プログラム90bを作成する。M130は、本発明の「監視開始指令」の概念に含まれる。M131は、本発明の「監視終了指令」の概念に含まれる。M132は、本発明の「表示開始指令」の概念に含まれる。M133は、本発明の「表示終了指令」の概念に含まれる。
【0044】
監視区間自動設定方法は、プログラム選択工程と、工具選択工程と、監視区間設定工程と、検査−保存工程と、を有している。検査−保存工程は、本発明の「検査工程」と「保存工程」とを兼ねている。
【0045】
(プログラム選択工程)
図4に、本実施形態の監視区間自動設定方法のプログラム選択工程前段における画面の模式図を示す。図5に、同工程後段における画面の模式図を示す。
【0046】
図2に示す記憶部20には、ワークWの種類ごとに、複数のプログラムが格納されている。本工程においては、作業者が、複数のプログラムの中から、監視区間を自動設定したいプログラム90a(図3参照)を選択する。
【0047】
図4に示すように、画面80には、Mコード自動設定ボタン800が表示されている。本工程においては、まず、作業者が、Mコード自動設定ボタン800にタッチする。図2に示す演算部21は、図5に示すように、画面80に、ポップアップブロック801、802を表示する。ポップアップブロック801には、「0」〜「9」のテンキー801a、表示欄801b、入力ボタン801cが配置されている。ポップアップブロック802には、表示欄802a、OKボタン802b、CANCELボタン802cが配置されている。
【0048】
次に、作業者は、テンキー801aを用いて、監視区間を自動設定したいプログラム90aを指定する。図2に示す演算部21は、表示欄801bに、作業者所望のプログラム90aの番号「1」を表示する。続いて、作業者は入力ボタン801cにタッチする。図2に示す演算部21は、ポップアップブロック802の表示欄802aに、プログラム90aの番号「1」を表示する。それから、作業者は、表示欄802aのプログラム90aの番号「1」が、所望のプログラム90aの番号と、一致しているか否かを確認する。双方の番号が一致している場合は、作業者はOKボタン802bにタッチする。一方、双方の番号が一致していない場合は、作業者はCANCELボタン802cにタッチする。
【0049】
(工具選択工程)
図6に、本実施形態の監視区間自動設定方法の工具選択工程前段における画面の模式図を示す。図7に、同工程後段における画面の模式図を示す。図5に示すOKボタン802bに作業者がタッチすると、図6に示すように画面80が切り替わる。本工程においては、作業者が、プログラム90aに用いられる複数の工具T3、T5の中から(図3参照)、監視区間を自動設定したい工具T3を選択する。
【0050】
図6に示すように、画面80には、プログラム表示欄810と、自動挿入ボタン811と、工具選択ボタン812と、M130挿入ボタン813と、M131挿入ボタン814と、M132挿入ボタン815と、M133挿入ボタン816と、Mコード削除ボタン817と、上書き保存チェックボックス818と、番号指定保存チェックボックス819と、保存ボタン820と、六つのカーソル移動ボタン821と、が配置されている。なお、プログラム表示欄810に表示されているプログラム90aは、図3の左側のプログラム90aの一部である。
【0051】
本工程においては、まず、作業者が、工具選択ボタン812にタッチする。図2に示す演算部21は、プログラム90aの中から、工具T1〜T10に関するTコードを検索する。そして、演算部21は、図7に示すように、画面80に、ポップアップブロック83を表示する。ポップアップブロック83には、二つの工具チェックボックス830、全チェックボタン831、全消去ボタン832、OKボタン833、CANCELボタン834が配置されている。二つの工具チェックボックス830は、プログラム90aに含まれている二種類の工具T3、T5に対応している。
【0052】
次に、作業者は、全チェックボタン831、全消去ボタン832、OKボタン833、CANCELボタン834を適宜操作することにより、所望の工具T3の工具チェックボックス830だけに、チェックマーク「@」を入力する。
【0053】
具体的には、作業者が全チェックボタン831にタッチすると、演算部21は、全ての工具チェックボックス830に、チェックマーク「@」を入力する。作業者が全消去ボタン832にタッチすると、演算部21は、全ての工具チェックボックス830から、チェックマーク「@」を外す。作業者がカーソル移動ボタン821にタッチすると、二つの工具チェックボックス830のいずれかに、カーソル(図略)を移動させることができる。例えば、工具T3の工具チェックボックス830にカーソルが移動した状態で、作業者がOKボタン833にタッチすると、演算部21は、工具T3の工具チェックボックス830に、チェックマーク「@」を入力する。例えば、工具T5の工具チェックボックス830にカーソルが移動した状態で、作業者がCANCELボタン834にタッチすると、演算部21は、工具T5の工具チェックボックス830から、チェックマーク「@」を外す。
【0054】
このように、全チェックボタン831、全消去ボタン832、OKボタン833、CANCELボタン834を適宜操作することにより、作業者は、監視区間を設定したい工具T3を選択する。
【0055】
(監視区間設定工程)
図8に、本実施形態の監視区間自動設定方法の監視区間設定工程のフローチャートを示す。図9に、同工程終了後における画面の模式図を示す。本工程においては、図2に示す演算部21が、自動的に、図3に示すプログラム90aに監視区間を設定する。つまり、自動的に図3に示すプログラム90bを作成する。
【0056】
作業者が図7に示す自動挿入ボタン811にタッチすると、演算部21は、本工程を開始する(図8のS1(ステップ1。以下同様。))。演算部21は、図3に示すプログラム90aの行を一つだけ進めて、M132を挿入する(図8のS2、S3)。演算部21は、図3に示すプログラム90aの行を一つだけ進めて、プログラム90aが終了するか否かを判別する(図8のS4、S5)。プログラム90aが終了する場合は、図3に示すように、プログラム終了を示すM30の一行前に、M133を挿入する(図8のS16)。そして、工程を終了する(図8のS17)。
【0057】
プログラム90aが終了しない場合は、演算部21は、現在の行に、監視対象となるTコード(つまりT3)が含まれているかいないかを判別する(図8のS6)。現在の行にT3が含まれていない場合は、S4に戻る。
【0058】
図8のS6において、現在の行にT3が含まれている場合は、図3に示すプログラム90aの行を一つだけ進めて、プログラム90aが終了するか否かを判別する(図8のS7、S8)。プログラム90aが終了する場合は、S16に進む。
【0059】
プログラム90aが終了しない場合は、演算部21は、現在の行に、監視対象となるGコード(つまりG1〜G3のいずれか)が含まれているかいないかを判別する(図8のS9)。現在の行にG1〜G3が含まれていない場合は、演算部21は、図3に示すプログラム90aの行を一つだけ進めて、当該行にTコード(つまりT3、T5)が含まれているかいないかを判別する(図8のS14、S15)。当該行にTコードが含まれている場合は、S6に戻る。当該行にTコードが含まれていない場合は、S8に戻る。
【0060】
図8のS9において、現在の行にG1〜G3のいずれかが含まれている場合は、演算部21は、現在の行(G1〜G3のいずれかが含まれている行)の一行前に、M130を挿入する(図8のS10)。そして、図3に示すプログラム90aの行を一つだけ進めて、当該行に監視対象外となるGコード(つまりG1〜G3以外のGコード。例えばG0)が含まれているかいないかを判別する(図8のS11、S12)。当該行にG1〜G3以外のGコードが含まれていない場合は、S11に戻る。
【0061】
図8のS12において、当該行にG1〜G3以外のGコードが含まれている場合は、演算部21は、G1〜G3のいずれかが含まれている行の一行後に、M131を挿入する(図8のS13)。そして、S14に進む。
【0062】
その後は、当該行にTコードがない場合であって、プログラム90aが終了する場合は、M30の一行前にM133を挿入し、工程を終了する(図8のS15、S8、S16、S17)。また、当該行にTコードがあるもののT3ではなく(つまりT5)、プログラム90aが終了する場合は、M30の一行前にM133を挿入し、工程を終了する(図8のS15、S6、S4、S5、S16、S17)。
【0063】
このように、本工程では、演算部21が、図3に示すプログラム90aに、Mコード(M130〜M133)を自動的に挿入する。そして、プログラム90bを作成する。図9に示すように、画面80のプログラム表示欄810には、プログラム90bの一部が表示されている。
【0064】
(検査−保存工程)
図10に、本実施形態の監視区間自動設定方法の検査−保存工程のフローチャートを示す。図11に、同工程終了後における画面の模式図を示す。本工程においては、図2に示す演算部21が、図3に示すプログラム90bを検査し、記憶部20に格納する。
【0065】
作業者がカーソル移動ボタン821にタッチすると、上書き保存チェックボックス818または番号指定保存チェックボックス819に、カーソルを移動させることができる。上書き保存チェックボックス818は、図2に示す記憶部20のプログラム90aに、プログラム90bを、上書きする際に用いられる。番号指定保存チェックボックス819は、プログラム90bに「1」以外の新しい番号を割り当てて、図2に示す記憶部20に保存する際に用いられる。
【0066】
例えば、上書き保存チェックボックス818にカーソルが移動した状態で、作業者が保存ボタン820にタッチすると、演算部21は、上書き保存チェックボックス818に、チェックマーク「@」を入力する。そして、プログラム90bを保存する前に、演算部21は、検査を実行する(図10のS21)。
【0067】
演算部は、図3に示すプログラム90bにおいて、M130とM131とのペアが成立しているかいないかを判別する(図10のS22)。M131はあるものの、G1〜G3のいずれかを挟んで、当該M131の前にM130がない場合や、M130はあるものの、G1〜G3のいずれかを挟んで、当該M130の後にM131がない場合は、演算部21は、ペア不成立と判別する。
【0068】
この場合、演算部21は、図11に示すように画面80に警告メッセージ840を表示する(図10のS25)。作業者は、OKボタン840aにタッチし、プログラム表示欄810のプログラム90bを目視により確認する。確認の結果、プログラム90b内にペア不成立部分を発見したら、作業者は、手動入力ボタン(M130挿入ボタン813、M131挿入ボタン814、M132挿入ボタン815、M133挿入ボタン816、Mコード削除ボタン817)を適宜操作して、ペアを成立させる。つまり、手動でプログラム90bを書き換える。そして、再び、保存ボタン820にタッチする。
【0069】
一方、ペア成立の場合は、演算部21は、「ペアの総数≦20組」か否かを検査する(図10のS23)。ペアの総数が20組を超過している場合は、S25に進む。ペアの総数が20組以下の場合は、演算部21は、記憶部20に、プログラム90bを格納する(図10のS24)。図11に示すように、上書き保存チェックボックス818には、チェックマーク「@」が入力されている。このため、図3に示すプログラム90aは、プログラム90bに更新される。
【0070】
なお、図11に示す警告メッセージ840の表示内容は、検査不合格の理由により異なる。M130があるもののM131がない場合は、警告メッセージ840として「M130あり、M131なしのブロックがあるため保存できません」が表示される。また、ペアの総数が20組を超過している場合は、警告メッセージ840として「M130/M131ペア数上限(20)を超えているため保存できません」が表示される。
【0071】
[ワーク加工時の工具に加わる負荷の変化]
次に、本実施形態のCNC旋盤1のワークW加工時の、工具T3に加わる負荷の変化について説明する。以下に示すのは、図3に示すプログラム90bの、工具T3の、「M130−G1−M131」連続区間における、負荷の変化である。
【0072】
図12に、主軸モータの負荷電流の時間変化をグラフで示す。主軸モータ63Cの負荷電流は、主軸モータ63Cのトルク、工具T3に加わる負荷に関連している。負荷電流が大きいほど、工具T3に加わる負荷は大きくなる。また、負荷電流が小さいほど、工具T3に加わる負荷は小さくくなる。また、横軸の時間は、ワークWの加工ポイント(位置)に対応している。
【0073】
図12に示すように、時刻T130は、プログラム90bにおいて監視開始指令(M130)が出される時刻である。時刻T131は、プログラム90bにおいて監視終了指令(M131)が出される時刻である。つまり、時刻T130〜T131間は、監視区間ΔTに対応している。G1は、監視区間ΔT内に含まれている。
【0074】
なお、図12には表示されていないが、図3の表示開始指令(M132)が出される時刻には、図2に示す演算部21が、画面80に、図12に示すグラフの描画を開始する。また、図3の表示終了指令(M133)が出される時刻には、図2に示す演算部21が、図12に示すグラフの描画を終了する。
【0075】
負荷電流の監視領域ΔDの下限しきい値D1、上限しきい値D2は、負荷電流の変化に応じて変化するように、予め設定されている。ここで、負荷電流が監視領域ΔDを超過しても、超過時刻が監視区間ΔTを超過している場合は、図2に示す演算部21は、当該負荷電流の変化を無視する。すなわち、監視区間ΔT以外の区間においては、主軸モータ63Cのトルクが大きく変化しやすい。このため、負荷電流が監視領域ΔDを超過しやすい。したがって、誤判別を回避するために、演算部21は、当該負荷電流の変化を無視する。
【0076】
一方、負荷電流の超過時刻が監視区間ΔT以内である場合は、図2に示す演算部21は、所定の処理(例えばCNC旋盤1の停止)を実行する。すなわち、監視区間ΔTにおいて、負荷電流が監視領域ΔDを超過した場合は、工具T3の刃がチッピングを起こした可能性が高い。したがって、演算部21は、チッピングを想定して、所定の処理を実行する。
【0077】
[作用効果]
次に、本実施形態のCNC旋盤1の作用効果について説明する。以下、CNC旋盤1、監視区間自動設定装置3、監視区間自動設定方法を、まとめて「CNC旋盤1等」と称する。
【0078】
本実施形態のCNC旋盤1等によると、図3に示すように、プログラム90aのG1、G2各々の前方に、M130を自動的に挿入することができる。並びに、プログラム90aのG1、G2各々の後方に、M131を自動的に挿入することができる。すなわち、前後方向からG1、G2各々を挟み込むように、自動的に、プログラム90aに監視区間(M130からM131までの区間)を設定することができる。このため、図12に示すように、ワークW加工時に、主軸モータ63Cの負荷電流、つまり工具T3に加わる負荷を監視することができる。したがって、例えば、負荷を基に工具T3の破損を検出することができる。
【0079】
また、本実施形態のCNC旋盤1等によると、監視区間を手動で設定する場合と比較して、監視区間の重複や、不完全な監視区間の設定など、人為的なミスが発生しにくい。したがって、たとえ監視区間の設定数が多い場合であっても、正確に監視区間を設定することができる。
【0080】
また、本実施形態のCNC旋盤1等によると、図3に示すように、演算部21は、監視区間設定工程において、プログラム90aに対して、表示装置8における負荷の表示(図12参照)を開始するM132と負荷の表示を終了するM133とを、M132とM133との間にM130とM131とが入るように、各々挿入している。このため、画面80を介して、作業者が負荷を確認することができる。また、工具T3に加わる負荷(主軸モータ63Cの負荷電流)は、画面80にグラフとして表示される。このため、作業者が負荷の変化を把握しやすい。
【0081】
また、本実施形態のCNC旋盤1等によると、図5に示すように、演算部21は、監視区間設定工程の前に、複数のプログラム90aの中から、M130、M131を挿入するプログラム90aを選択するプログラム選択工程を実行する。このため、複数のプログラム90a中、所望のプログラム90aに対して、監視区間を設定することができる。つまり、所望のプログラム90a(所望のワークW)に対して、負荷の監視を行うことができる。
【0082】
また、本実施形態のCNC旋盤1等によると、図7に示すように、演算部21は、プログラム選択工程と監視区間設定工程との間に、所望のプログラム90a中の複数の工具T3、T5の中から、M130、M131を挿入する工具T3を選択する工具選択工程を実行する。このため、複数の工具T3、T5中、所望の工具T3に対して、監視区間を設定することができる。つまり、所望の工具T3に対して、負荷の監視を行うことができる。
【0083】
また、本実施形態のCNC旋盤1等によると、図9に示すように、演算部21は、監視区間設定工程の後に、プログラム90bに挿入されたM130、M131を検査し、プログラム90bを保存する検査−保存工程を実行する。このため、監視区間設定工程により設定された監視区間の、設定ミスを検出することができる。また、検査後のプログラム90bを、図2に示す記憶部20に保存することができる。
【0084】
また、本実施形態のCNC旋盤1等によると、図10に示すように、M130/M131ペアの総数が20組以下になるように、プログラム90bが作成される。このため、図2に示す記憶部20の容量を節約することができる。
【0085】
また、本実施形態のCNC旋盤1等によると、図3に示すように、G1、G2の前後両側に、M130、M131を挿入することにより、簡単に監視区間を設定することができる。
【0086】
<第二実施形態>
本実施形態のCNC旋盤等と、第一実施形態のCNC旋盤等との相違点は、プログラムにおいて連続する複数のGコードに対して、一組のMコードが設定されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0087】
図13に、本実施形態の監視区間自動設定方法における監視区間自動設定前後のプログラムの模式図を示す。なお、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。図13の左側に示すように、監視区間自動設定前のプログラム90aにおいては、G1とG3とG0とが連続している。この場合、監視区間自動設定装置の演算部は、援用する図8のS9、S10に示すように、G1の一行前にM130を挿入する。また、演算部は、図8のS12、S13に示すように、G0を基に、G3の一行後にM131を挿入する。
【0088】
本実施形態のCNC旋盤等と、第一実施形態のCNC旋盤等とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。また、本実施形態のCNC旋盤等によると、図13に示すように、G1、G3に対して、包括的に監視区間を設定することができる。このため、G1、G3の各々に対して個別に監視区間を設定する場合と比較して、監視区間の設定作業が簡単になる。また、プログラム90aに対する、M130、M131の挿入数を削減することができる。したがって、プログラム90bが冗長になるのを抑制することができる。
【0089】
<その他>
以上、本発明の監視区間自動設定装置および工作機械の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0090】
上記実施形態においては、図8に示すように、図3に示すプログラム90aの任意の行に監視対象外となるGコード(つまりG0)がある場合に、図2に示す演算部21が、監視対象となるGコード(つまりG1〜G3のいずれか)の後にM131を挿入した。しかしながら、プログラム90aによっては、G1〜G3の後に、G0がない場合がある。この場合、演算部21は、任意の行に監視対象となるGコード(つまりG1〜G3のいずれか)があることを基に、当該行の前にM130を、当該行の後にM131を、各々挿入してもよい。つまり、演算部21は、監視対象外となるGコード(つまりG0)の有無を基に、M131の挿入、非挿入を判別しなくてもよい。
【0091】
上記実施形態においては、図3図13に示すように、プログラム終了を示すM30の一行前に、M133を挿入した。しかしながら、M02、M99の一行前にM133を挿入してもよい。M30同様に、M02、M99も、プログラム終了を示すMコードである。
【0092】
上記実施形態においては、図10に示すように、本発明の検査工程と保存工程とを、検査−保存工程として実行した。しかしながら、まず検査工程を実行してから、保存工程を実行してもよい。この場合、作業者は、図9に示す画面80に表示される検査実行ボタン(図略)にタッチする。演算部21は、図10に示すS22、S23を実行する。検査不合格の場合は、S25に進む。検査合格の場合は、図9に示す画面80の保存ボタン820がアクティブな(入力可能な)状態になる。作業者が保存ボタン820にタッチすると、演算部21は、プログラム90bを、記憶部20に格納する。このように、検査工程と保存工程とを別々に実行してもよい。
【0093】
図1図2に示すように、工具T3に加わる負荷は、主軸モータ63C、X軸モータ45X、Z軸モータ45Zのうち、少なくとも一つの、負荷電流、負荷電圧、トルクなどから検出してもよい。
【0094】
CNC旋盤1の主軸方向は特に限定しない。すなわち、横型旋盤、正面旋盤、立型旋盤として本発明の工作機械を具現化してもよい。また、フライス盤、ボール盤、ミーリングセルとして本発明の工作機械を具現化してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13