特許第5987070号(P5987070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987070
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】給紙装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/00 20060101AFI20160823BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20160823BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20160823BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B65H1/00 501A
   B65H7/02
   G03G21/00 370
   G03G15/00 107
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-17389(P2015-17389)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-141511(P2016-141511A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2016年6月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森上 斐斗
【審査官】 松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−208824(JP,A)
【文献】 特開2007−62855(JP,A)
【文献】 特開平5−342446(JP,A)
【文献】 特開平5−189622(JP,A)
【文献】 特開平8−119487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00− 3/68
B65H 7/00− 7/20
B65H 43/00−43/08
G03G 15/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙をセットする用紙トレイに設けられ、スライド移動させることができ、セットされた用紙をはさんで用紙の位置を規制するカーソルと、
可変抵抗を含み、前記カーソルの位置に応じた電圧を出力するセンサー部と、
検知対象とする定形用紙の幅の種類ごとに、前記センサー部の出力の大きさに応じた値であって前記センサー部の出力に基づき得られるセンサー値の範囲が定められた幅検知用データを記憶する記憶部と、
前記センサー部の出力電圧を処理して前記センサー値を求め、前記センサー値が属する前記範囲に対応する幅の用紙がセットされていると検知する幅検知処理を行い、前記幅検知処理のときの前記センサー値を前記記憶部に記憶させ、定形用紙の幅の種類のうち、検知回数が所定回数の整数倍となった用紙の種類に対応する前記範囲を補正対象範囲とし、実際の前記センサー値と前記補正対象範囲の中心値との差分を求め、前記差分に基づいて、前記補正対象範囲と他の範囲との境界となる値であって上限側又は下限側の境界値を補正する補正処理を行う制御部と、を含むことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記補正対象範囲に対応する幅の用紙セットを検知したときの直近の前記所定回数分の前記センサー値のそれぞれから前記補正対象範囲の現在の中心値を減じて差分を求め、求めた前記差分の全て又は一部の平均値を求め、
前記差分の平均値が正のとき、前記補正対象範囲の現在の中心値に前記差分の平均値を加算した値と、前記幅検知用データのうち前記補正対象範囲に隣接する範囲であって1段階センサー値が大きい側の範囲の中心値とを加算した値の1/2を前記補正対象範囲の境界値のうち上限側の境界値とする補正処理を行い、
前記差分の平均値が負のとき、前記補正対象範囲の現在の中心値から前記差分の平均値を減じた値と、前記幅検知用データのうち前記補正対象範囲に隣接する範囲であって1段階センサー値が小さい側の範囲の中心値とを加算した値の1/2を前記補正対象範囲の境界値のうち下限側の境界値とする補正処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記補正対象範囲に対応する幅の用紙セットを検知したときの現時点から遡った前記所定回数分の前記センサー値のそれぞれから前記補正対象範囲の現在の中心値を減じて差分を求め、
正の前記差分の個数を前記所定回数で除した第1比率が予め定められた基準比率を超えており、かつ、正の前記差分の平均値が予め定められた基準ずれ量以上のとき、前記補正対象範囲の現在の中心値に正の前記差分の平均値を加算した値と、前記幅検知用データのうち前記補正対象範囲に隣接する範囲であって1段階センサー値が大きい側の範囲の中心値とを加算した値の1/2を、前記補正対象範囲の境界値のうち上限側の境界値とする補正処理を行い、
負の前記差分の個数を前記所定回数で除した第2比率が前記基準比率を超えており、かつ、負の前記差分の平均値の絶対値が前記基準ずれ量以上のとき、前記補正対象範囲の現在の中心値から負の前記差分の平均値の絶対値を減じた値と、前記幅検知用データのうち、前記補正対象範囲に隣接する範囲であって1段階センサー値が小さい側の範囲の中心値とを加算した値の1/2を、前記補正対象範囲の境界値のうち下限側の境界値とする補正処理を行い、
前記第1比率が前記基準比率以上ではなく、かつ、前記第2比率が前記基準比率以上でもないとき、及び、正の前記差分の平均値、あるいは、負の前記差分の平均値の絶対値が前記基準ずれ量未満のとき、前記補正対象範囲の境界値の補正を行わないことを特徴とする請求項1又は2に記載の給紙装置
【請求項4】
前記補正対象範囲の中心値と、前記補正対象範囲に隣接する前記範囲であって、前記境界値を移動させる側で隣接する前記範囲の中心値との差の絶対値が予め定められた補正制限値以下のとき、前記制御部は前記補正処理を行わないことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の給紙装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の給紙装置を含むことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を給紙する給紙装置、及び、給紙装置を含む画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機、複写機、プリンター、ファクシミリ装置のような画像形成装置は、セットされた用紙を送り出す給紙装置を備える。そして、給紙装置には、規制板が設けられる。規制板は、スライド移動でき、用紙搬送方向と垂直な方向で用紙の側面をはさむ。そして、規制板の位置は、用紙幅に応じた位置となる。そこで、可変抵抗のボリュームと規制板を連動させ、セット用紙の幅を検知することがある。しかし、スライドが繰り返されると、可変抵抗内部の移動端子と、この端子に接する抵抗体が擦れて摩耗する。そのため、給紙装置の使用にともなって、可変抵抗の特性が変化してゆき、用紙幅を誤検知してしまう場合がある。
【0003】
このような、可変抵抗内の端子や抵抗体の摩耗による可変抵抗器の特性変化に対処するための技術が特許文献1に記載されている。具体的に、特許文献1には、サイドフェンスに連動する可変抵抗を用いて給紙手段で給紙される用紙幅を検出し、CISラインセンサーを用いて搬送経路で搬送される用紙幅を検出し、可変抵抗による検出結果と、CISラインセンサーによる検出結果とを比較し、用紙幅を検出すること印刷装置が記載されている。これにより、可変抵抗の摺動による摩耗によって発生する用紙検出精度の低下を検知しようとする(特許文献1:請求項1、段落[0007]、[0008]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−208824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷用の用紙供給のため、手差しトレイや用紙カセットのような給紙装置が画像形成装置に設けられる。また、複合機、複写機、ファクシミリ装置のようなスキャンを行う画像形成装置には、セット原稿を読み取り位置に送り出す原稿搬送装置が設けられることもある。原稿搬送装置も給紙装置の一種といえる。
【0006】
給紙装置には、セットされた用紙を整合し、位置を規制するカーソル(「規制板」、「ガイド部材」、「サイドフェンス」と称されることもある)が設けられる。カーソルはスライド可能であり、用紙を挟むようにカーソルを移動させる。これにより、用紙束の位置が規制され、セットされた用紙の位置は適切な位置となる。そして、用紙のジャム(詰まり)や、印刷される画像や原稿の読み取りで得られる画像の傾きを防ぐ。
【0007】
カーソルは、セット用紙のサイズに応じた位置にスライドされる。カーソルのスライド量にあわせて可変抵抗の内の移動可能な端子の位置を移動させて(ボリュームを変え)、可変抵抗の抵抗値を変化させる。可変抵抗の出力電圧値とカーソルの位置(用紙幅)とが対応しているので、可変抵抗の出力電圧値の大きさに基づいてセット用紙の幅(サイズ)を検知することができる。一方、カーソルの移動の繰り返しによって、可変抵抗内部の端子と抵抗体の摩耗が進み、経年変化により、可変抵抗の特性が変わる。そのため、給紙装置の使用時間が長くなるに従い、セットされた用紙幅の誤検知が発生しやすくなるという問題がある。
【0008】
特許文献1記載の技術では、可変抵抗を用いて用紙幅を検出するとともに、搬送経路に設けたラインセンサー(CISイメージセンサー)を用いて用紙幅を検出する。特許文献1記載の技術によれば、可変抵抗を用いて検出された用紙幅の誤検知を、ラインセンサーの検知結果を用いて正す。しかし、ラインセンサーが無い装置では適用できない(搬送経路にラインセンサーを設けることは実際にはほとんど無い)。また、ラインセンサーとラインセンサーの出力を処理する回路を設ける必要があり画像形成装置の製造コストが高くなる。また、可変抵抗による用紙幅の検知結果を適切に正せるほどの高い解像度のラインセンサーを用いる必要がある。このようなセンサーは一般に高価であり、画像形成装置の製造コストはますます高くつく。従って、特許文献1記載の技術は、現実的ではない。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、イメージセンサーのような高価な部材を設けること無く、長年使用されたために摩耗が進んだ可変抵抗を含む給紙装置での用紙幅の誤検知を防ぎ、正確な用紙幅を検知する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に係る給紙装置は、カーソル、センサー部、記憶部、制御部を含む。前記カーソルは、用紙をセットする用紙トレイに設けられ、スライド移動させることができ、セットされた用紙をはさんで用紙の位置を規制する。前記センサー部は、可変抵抗を含み、前記カーソルの位置に応じた電圧を出力する。前記記憶部は、検知対象とする定形用紙の幅の種類ごとに、前記センサー部の出力の大きさに応じた値であって前記センサー部の出力に基づき得られるセンサー値の範囲が定められた幅検知用データを記憶する。前記制御部は、前記センサー部の出力電圧を処理して前記センサー値を求め、前記センサー値が属する前記範囲に対応する幅の用紙がセットされていると検知する幅検知処理を行い、前記幅検知処理のときの前記センサー値を前記記憶部に記憶させ、定形用紙の幅の種類のうち、検知回数が所定回数の整数倍となった用紙の種類に対応する前記範囲を補正対象範囲とし、実際の前記センサー値と前記補正対象範囲の中心値との差分を求め、前記差分に基づいて、前記補正対象範囲と他の範囲との境界となる値であって上限側又は下限側の前記境界値を補正する補正処理を行う。
【発明の効果】
【0011】
可変抵抗を用いて用紙幅を検知する給紙装置において、給紙装置が長年使用されることにより可変抵抗内の部品の摩耗が進んでも、常に正確な用紙幅を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る複合機を示す図である。
図2】実施形態に係る複合機のハードウェア構成を示す図である。
図3】実施形態に給紙装置に関する部分を示す図である。
図4】用紙幅に応じたカーソル対の位置の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る幅検知用データの一例を示す図である。
図6】実施形態に係る手差し給紙装置のセンサー値保存データの一例を示す図である。
図7】実施形態に係る幅検知用データの補正の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】実施形態に係る境界値の移動の一例を示す図である。
図9】実施形態に係る境界値の移動の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図1図9を用いて説明する。そして、以下の説明では、給紙装置1を含む複合機100(画像形成装置に相当)を例に挙げて説明する。但し、各実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0014】
(画像形成装置の概要)
まず、図1を用いて、実施形態に係る複合機100の概要を説明する。図1は、実施形態に係る複合機100を示す図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の複合機100は、印刷部2として、給紙装置1(手差し給紙装置1a、カセット給紙装置1b)、搬送部2a、画像形成部2b、定着部2cを含む。また、複合機100は、上部に原稿搬送部1c(給紙装置1に相当)と画像読取部3を有する。又、複合機100は、操作パネル4を有する。
【0016】
原稿搬送部1cは、セットされた原稿を1枚ずつ読み取り位置に向けて連続的、自動的に搬送する。画像読取部3は、原稿搬送部1cにより搬送される原稿や、載置読取用コンタクトガラス(不図示)にセットされた原稿を読み取り、画像データを生成する。
【0017】
操作パネル4は、印刷や原稿読み取りに関する設定画面や各種メッセージ(注意、エラー、状態など)を表示する表示パネル41、表示パネル41に対して設けられたタッチパネル部42、スタートキー43のようなハードキーを含む。そして、操作パネル4は、印刷ジョブや送信ジョブでの条件や用いる機能のような設定を受け付ける。また、操作パネル4では、カセット給紙装置1b(給紙装置1に相当)や手差し給紙装置1a(給紙装置1に相当)のうち、どの給紙装置1から給紙を行うかの設定を行える。手差し給紙装置1aとカセット給紙装置1bには、複数枚の用紙をセットすることができる。印刷のとき、何れかの給紙装置1が用紙を送り出す。
【0018】
搬送部2aは、給紙装置1や手差し給紙装置1aから供給された用紙を画像形成部2bまで導く。画像形成部2bは、画像データに基づきトナー像を形成し、用紙に転写する。定着部2cは、トナー像が転写された用紙を加熱・加圧して、用紙にトナー像を定着させる。定着後の用紙は、排出トレイ101に排出される。
【0019】
(複合機100のハードウェア構成)
次に、図2を用いて、実施形態に係る複合機100のハードウェア構成を説明する。図2は、実施形態に係る複合機100のハードウェア構成を示す図である。
【0020】
図2に示すように、複合機100は、内部に制御部5を含む。制御部5は、装置の各部を制御する。制御部5は、CPU51や、印刷や送信に用いる画像データを生成する画像処理部52や、その他の回路、素子を含む。
【0021】
CPU51は、中央演算処理装置であり、演算や、記憶部6に格納される制御プログラムや制御用データに基づき複合機100の各部の制御を行う。記憶部6は、ROM、フラッシュROM、HDDのような不揮発性の記憶装置と、RAMのような揮発性の記憶装置の組み合わせである。
【0022】
そして、制御部5は、印刷部2(カセット給紙装置1b、手差し給紙装置1a、搬送部2a、画像形成部2b、定着部2c)の各部と通信可能に接続される。制御部5は、適切に画像形成が行われるように、給紙、用紙搬送、トナー像の形成、転写、定着を行う印刷部2の各部に指示を与える。なお、制御部5とは別に、印刷部2の制御を実際に行うエンジン制御部を設け、制御部5はエンジン制御部に指示を与えることにより印刷部2の動作を制御するようにしてもよい。そして、制御部5は、画像読取部3が原稿を読み取って得られた画像データに基づき、印刷部2に印刷を行わせることができる(コピー機能)。
【0023】
又、制御部5には、通信部53が接続される。通信部53は、パーソナルコンピューターやサーバーのようなコンピューター200やFAX装置300と、ネットワークやケーブルを介して通信を行うためのインターフェイスである。制御部5は、通信部53がコンピューター200から受信した印刷用データ(画像データや印刷設定)に基づき印刷部2に印刷を行わせる(プリンター機能)。又、通信部53は、画像データをコンピューター200やFAX装置300に送信できる(送信機能)。
【0024】
又、制御部5は、画像読取部3や原稿搬送部1cと通信可能に接続される。制御部5は、画像読取部3や原稿搬送部1cに動作指示を与え、画像読取部3や原稿搬送部1cは、指示に応じて動作する。制御部5の制御機能の一部を分割し、原稿搬送部1cや画像読取部3内に制御を行う部分(基板)を設けてもよい。
【0025】
又、制御部5は、操作パネル4の表示を制御する。制御部5は、タッチパネル部42やスタートキー43のようなハードキーに対して操作を行うことでなされた設定や使用者の指示を認識し、使用者の指示に合うように、印刷部2、画像読取部3、原稿搬送部1cを制御してジョブを実行させる。
【0026】
(給紙装置1)
次に、図3に基づき、実施形態に係る複合機100に含まれる給紙装置1を説明する。図3は、実施形態に給紙装置1に関する部分を示す図である。
【0027】
上述のように、実施形態に係る複合機100は、給紙装置1として、手差し給紙装置1aとカセット給紙装置1bを含む。また、セットされた原稿を読み取り位置に搬送する原稿搬送部1cも給紙装置1の一種である。このように、複合機100は、すくなくとも3つの給紙装置1を含む。
【0028】
各給紙装置1は、いずれも、用紙トレイ11、カーソル対12、給紙モーター13、給紙ローラー14、センサー部7、セットセンサー15を少なくとも含む。尚、各給紙装置1(手差し給紙装置1a、カセット給紙装置1b、原稿搬送部1c)に設けられる用紙トレイ11、カーソル対12、給紙モーター13、給紙ローラー14、センサー部7は、機能としては共通するので、以下の説明では、同じ符号を付す。
【0029】
用紙トレイ11は、箱状であって、上面側が用紙を置く載置面となっている(図1参照)。カセット給紙装置1bと、手差し給紙装置1aには、印刷に用いる用紙が用紙トレイ11に載置される。原稿搬送部1cの用紙トレイ11には、読み取りを行おうとする原稿(用紙)が載置される。各給紙装置1の用紙トレイ11内にセンサー部7が設けられる。
【0030】
カーソル対12は、用紙トレイ11に設けられる。カーソル対12は、一対の規制板12aを含み、用紙搬送方向と垂直な方向(用紙の幅方向)でスライド可能である。用紙トレイ11にセットされた用紙や原稿がはさまれるように規制板12aを移動させることにより、セットされた用紙の位置を規制する。言い換えると、カーソル対12は、セットされた用紙をはさんで用紙の位置を規制する。
【0031】
給紙ローラー14は、回転して用紙トレイ11にセットされた用紙を送り出す。給紙モーター13は、用紙を送り出す給紙ローラー14を回転させる。制御部5は、カセット給紙装置1bから給紙するとき、カセット給紙装置1bの給紙モーター13を回転させる。制御部5は、手差し給紙装置1aから給紙するとき、手差し給紙装置1aの給紙モーター13を回転させる。原稿搬送部1cに用紙(原稿)の搬送を行わせるとき、制御部5は、原稿搬送部1cの給紙モーター13を回転させる。
【0032】
センサー部7は、用紙トレイ11にセットされた用紙の幅を検知するためのセンサーである。センサー部7は、可変抵抗8を含み、カーソルの位置に応じた電圧を出力する。制御部5は、カセット給紙装置1bや手差し給紙装置1aのセンサー部7の出力に基づき、カセット給紙装置1bや手差し給紙装置1aにセットされた用紙の幅を検知する。また、制御部5は、原稿搬送部1cに設けられたセンサー部7の出力値に基づき、原稿搬送部1cの用紙トレイ11にセットされた用紙の幅を検知する。
【0033】
セットセンサー15は、用紙トレイ11に用紙がセットされているか否かを検知するためのセンサーである。セットセンサー15には、光センサーを用いることができ、用紙がセットされているか否かによって、出力電圧値の大きさが異なる。制御部5は、カセット給紙装置1bや手差し給紙装置1aのセットセンサー15の出力値に基づき、カセット給紙装置1bや手差し給紙装置1aに用紙がセットされているか否かを検知する。また、制御部5は、原稿搬送部1cに設けられたセットセンサー15の出力値に基づき、原稿搬送部1cの用紙トレイ11に原稿がセットされているか否かを検知する。
【0034】
(用紙幅検知)
次に、図4図5を用いて、実施形態に係る給紙装置1での用紙幅検知について説明する。図4は、用紙幅に応じたカーソル対12の位置の一例を示す図である。図5は、実施形態に係る幅検知用データD1の一例を示す図である。
【0035】
まず、実施形態に係る複合機100では、予め定められた検知タイミングでセットされた用紙の用紙幅の検知がなされる。
【0036】
コピージョブのような印刷を伴うジョブの場合、制御部5は、操作パネル4による設定によって手差し給紙装置1aが給紙元として選択されている状態で、操作パネル4でコピージョブの実行開始操作(スタートキー43を押す操作)がなされたとき、手差し給紙装置1aにセットされた用紙幅の検知を行う。また、制御部5は、操作パネル4による設定によってカセット給紙装置1bが給紙元として選択されている状態で、操作パネル4でコピージョブの実行開始操作がなされたとき、カセット給紙装置1bにセットされた用紙幅の検知を行う。また、原稿搬送部1cは、操作パネル4でコピージョブの実行開始操作(スタートキー43を押す操作)がなされたとき、原稿搬送部1cにセットされた用紙幅の検知を行う。また、スキャン送信ジョブのような印刷を伴わないジョブの場合、制御部5は、操作パネル4でスキャンのみ行うジョブの実行開始操作(スタートキー43を押す操作)がなされたとき、原稿搬送部1cにセットされた用紙の幅の検知を行う。
【0037】
なお、制御部5は、ジョブの実行開始操作(スタートキー43を押す操作)がなされたタイミングではなく、コピーやスキャン送信のような実行するジョブの種類(機能)の選択がなされたときにセットされた用紙の幅を検知するようにしてもよい。また、セットセンサー15の出力に基づき、新たに用紙トレイ11に用紙がセットされたことを検知したとき、制御部5は新たな用紙セットが確認できた給紙装置1の用紙幅を検知するようにしてもよい。
【0038】
図4は、用紙トレイ11を上方から見た図である。用紙トレイ11の上面にカーソル対12が設けられる。各カーソルのうち、用紙を規制する規制板12aは、用紙トレイ11上に設けられる。規制板12aは、用紙搬送方向に沿っていて、用紙トレイ11に対し垂直に立てられた板状の部材である。
【0039】
各カーソルは、用紙搬送方向と垂直な方向でスライド移動する。これにあわせて規制板12aもスライド移動する。規制板12aの内側面12b(互いの規制板12aが対向する面)が用紙トレイ11にセットされた用紙の側面(幅方向の縁)と接する。セットされた用紙のサイズ(幅)にあわせ、用紙が動かないように各カーソルを移動させることで、セットされた用紙の位置を規制することができる。図4の下の図は、上の図よりも広い幅の用紙がセットされた状態を示す。図4に示すように、セットされる用紙の幅に応じて各カーソルの位置(規制板12a同士の間隔)が異なる。これにより、斜行することなく用紙を送り出すことができる。
【0040】
各カーソルの下方には、用紙搬送方向と垂直な方向を長手方向とし、板状の部材である連動用部材12cが設けられる。例えば、連動用部材12cは、規制板12aに対して垂直に取り付けられる。連動用部材12cは、用紙トレイ11の内側に存在する。一方のカーソルの連動用部材12cと、他方のカーソルの連動用部材12cの用紙搬送方向の位置は、ずれている。図4において、左側のカーソルの連動用部材12cが設けられる位置は、右側のカーソルの連動用部材12cよりも用紙搬送方向上流側に位置する。
【0041】
各カーソルの規制板12aの内側の面の間の中央位置であって、各カーソルの連動用部材12cの間に回転部材12dが設けられる。回転部材12dは、用紙トレイ11の載置面に対し垂直な方向を回転軸とする。回転部材12dの周面には歯が設けられる。また、各カーソルの連動用部材12cの用紙搬送方向と垂直な方向の縁のうち、回転部材12d側の縁に歯面12eが設けられる。各カーソルの連動用部材12cの歯面12eと回転部材12dの歯とが噛み合うような位置に連動用部材12cが設けられる。
【0042】
各連動用部材12cの歯面12eと回転部材12dが噛み合うので、一方のカーソルを移動させると、他方のカーソルも連動して移動する。具体的には、一方のカーソルを内側に移動させると、他方のカーソルも内側に移動する。また、一方のカーソルを外側に移動させると、他方のカーソルも外側に移動する。どのようなサイズの用紙を用紙トレイ11にセットしても、用紙の幅の中央が用紙搬送経路の幅方向の中央と一致するように各カーソルが連動する(中央通紙)。
【0043】
ここで、用紙トレイ11内には、センサー部7が設けられる。センサー部7は可変抵抗8(いわゆるロータリーポジションセンサ)を含む。可変抵抗8には、ローター81、摺動部材82、抵抗体83が設けられる(図3参照)。摺動部材82は導電性であり、一端が抵抗体83と接する。可変抵抗8は3端子型のものである。3端子のうち1つは抵抗体83の一端に、もう1つは抵抗体83の他端に接続される。もう1つは摺動部材82の他端と接続され、この端子から出力電圧が取り出される。
【0044】
そして、ローター81は、回転部材12dと連結される。そのため、カーソル対12の移動にあわせて回転部材12dとともに、ローター81が回転し、ローター81の角度が変わる。つまり、カーソル対12のスライド移動に伴う回転部材12dの回転にあわせ、可変抵抗8のボリュームが変わる。そして、ローター81の回転角度に応じ抵抗体83のうち、摺動部材82の他端が接する位置が変わり、抵抗体83の分圧比が変わる。可変抵抗8の出力電圧値は、カーソル移動により変化する。また、可変抵抗8の出力電圧の大きさは、カーソルの位置に応じた大きさとなる。
【0045】
なお、各カーソルの規制板12aの高さは異なるものの、本実施形態の手差し給紙装置1a、カセット給紙装置1b、原稿搬送部1cでは、カーソル対12の各連動用部材12c、回転部材12d、センサー部7に、同じもの(同じ仕様のもの)を用いることができる。なお、各給紙装置1で各連動用部材12c、回転部材12d、センサー部7に異なるものを用いてもよい。
【0046】
カセット給紙装置1b、手差し給紙装置1a、原稿搬送部1cの可変抵抗8の出力値は、制御部5(のCPU51)に入力される。そして、制御部5のCPU51はAD変換回路を有し、制御部5は、各可変抵抗8の出力電圧値をA/D変換して、ディジタル値を得る。なお、CPU51の外にAD変換回路を設け、制御部5のCPU51は、AD変換回路により変換されたディジタル値の入力を受けることによって、各センサー部7(各可変抵抗8)の出力電圧値を認識してもよい。
【0047】
制御部5は、各給紙装置1の可変抵抗8の出力電圧値を処理して、各可変抵抗8の出力電圧値の大きさを示すセンサー値を給紙装置1ごとに求める。例えば、制御部5は、可変抵抗8の出力電圧値に手差し給紙装置1a用の係数を乗ずる演算を行って、手差し給紙装置1aのセンサー値を算出する。また、制御部5は、カセット給紙装置1bの可変抵抗8の出力電圧値にカセット給紙装置1b用の係数を乗ずる演算を行って、カセット給紙装置1bのセンサー値を算出する。また、制御部5は、原稿搬送部1cの可変抵抗8の出力電圧値に原稿搬送部1c用の係数を乗ずる演算を行って、原稿搬送部1cのセンサー値を算出する。
【0048】
このように、各給紙装置1に設けられた可変抵抗8の出力値に基づき、給紙装置1ごとにセンサー値が求められる。そして、記憶部6は、検知対象とする定形用紙の幅の種類ごとに、センサー部7の出力に基づき求められセンサー部7の出力の大きさを示すセンサー値の範囲が定められた幅検知用データD1を記憶する。
【0049】
図5は、手差し給紙装置1a用の幅検知用データD1の一例を記す。図5に示すように、幅検知用データD1では、定形用紙の幅の種類に対するセンサー値の範囲が定められる。図5に示す例では、A4(長辺)、A3(短辺)に対応する範囲は、100≦X<120とされる。A4(長辺)、A3(短辺)に対応する範囲の境界値は、上限側が120、下限側が100となる。
【0050】
幅検知用データD1の範囲は、複合機100の出荷時に調整される。例えば、幅検知用データD1で定める種類の定形用紙のセットを複数回行い、セットするごとにセンサー値を得る。可変抵抗8の摩耗は少ないので、同じ幅については、ほぼ同じセンサー値が得られる。そして、複数回のセンサー値の平均値を求める。平均値をある種類の用紙の幅に対応する範囲の中心値(中心値)と定めるようにして、範囲を定める。
【0051】
幅検知用データD1は、手差し給紙装置1a、カセット給紙装置1b、原稿搬送部1cのそれぞれに対し用意するようにしてもよい。また、可変抵抗8の出力電圧値に乗ずる係数を給紙装置1の種類ごとに調整することにより、各給紙装置1で共通の幅検知用データD1を用いるようにしてもよい。
【0052】
そして、制御部5は、手差し給紙装置1aの用紙幅を検知するとき、手差し給紙装置1aの可変抵抗8のセンサー値を認識し、センサー値が属する範囲を確認し、確認した範囲に対応する幅の用紙がセットされていると検知する(幅検知処理)。また、制御部5は、カセット給紙装置1bの用紙幅を検知するとき、カセット給紙装置1bの可変抵抗8のセンサー値を認識し、センサー値が属する範囲を確認し、確認した範囲に対応する幅の用紙がセットされていると検知する。また、原稿搬送制御部5は、原稿搬送部1cの用紙幅を検知するとき、原稿搬送部1cの可変抵抗8のセンサー値を認識し、センサー値が属する範囲を確認し、確認した範囲に対応する幅の用紙がセットされていると検知する。
【0053】
(幅検知用データD1の補正)
次に、図6図9を用いて、幅検知用データD1の補正を説明する。図6は、実施形態に係る手差し給紙装置1aのセンサー値保存データD2の一例を示す図である。図7は、実施形態に係る幅検知用データD1の補正の流れの一例を示すフローチャートである。図8図9は、実施形態に係る境界値の移動の一例を示す図である。
【0054】
幅検知用データD1の補正は、手差し給紙装置1a用の幅検知用データD1、カセット給紙装置1b用の幅検知用データD1、原稿搬送部1c用の幅検知用データD1のそれぞれに対し、同様に行うことができる。本説明では、手差し給紙装置1aの幅検知用データD1の補正の流れを説明する。他の給紙装置1でも、同様の手順で補正できる。
【0055】
まず、手差し給紙装置1aの幅検知用データD1の補正のため、制御部5は、手差し給紙装置1aの幅検知処理のときのセンサー値を記憶部6に記憶させる。図6は、手差し給紙装置1aのセンサー値保存データD2の一例を示す。制御部5は、予め定められた検知タイミングで実行された手差し給紙装置1aの用紙幅検知で得られたセンサー値をセンサー値保存データD2として記憶部6に記憶させる(図3参照)。また、制御部5は、センサー値に対応する用紙幅の検知結果(用紙種類、用紙幅)もセンサー値保存データD2に記憶させる。また、制御部5は、定形用紙の幅の種類ごとに、検知された回数の累計もセンサー値保存データD2に含める。
【0056】
そして、制御部5は、手差し給紙装置1aで検知された定形用紙の幅の種類のうち、検知回数が所定回数の整数倍となった用紙の種類に対応する範囲を補正対象範囲E1とする。所定回数は適宜定めることができる(例えば、10回)。
【0057】
図7のスタートは、補正対象範囲E1を定めた時点である。用紙幅検知をジョブの実行開始操作(スタートキー43を押す操作)がなされたときに行うとき、図7のスタートは、スタートキー43が押された時点となる。また、コピーやスキャン送信のような実行するジョブの種類(機能)の選択がなされたときに用紙幅検知を行うとき、図7のスタートは、実行するジョブの種類(機能)の選択がなされたときとなる。用紙セット時に用紙幅検知を行うとき、図7のスタートは、手差し給紙装置1aに用紙が新たにセットされたときとなる。
【0058】
なお、以下の説明では、図5にあわせ、セット用紙の幅が広いほど大きなセンサー値となる場合を説明する。
【0059】
まず、制御部5は、補正対象範囲E1に対応する幅の用紙セットを検知したときの直近の所定回数分のセンサー値ごとに、センサー値から中心値を減じて差分を複数個求める(ステップ♯1)。所定回数が10回ならば、制御部5は、現時点から遡って(直近の)10回分の補正対象範囲E1内の値が検知されたときのセンサー値を選び出し、選び出した各センサー値から中心値を減じて、差分を所定回数個(10個)求める。
【0060】
続いて、制御部5は、正の差分の個数を所定回数で除した第1比率が予め定められた基準比率F1を超えているか否かを確認する(ステップ♯2)。これにより、得られる出力値が中心値よりも大きい傾向が出ているかを確認し、傾向が現れているときに補正対象範囲E1の補正を行うようにする。なお基準比率F1は適宜定めることができる値である。例えば、50%よりも大きな値とすることができ、60%〜100%の間の何れかの値に定められる。
【0061】
基準比率F1を超えていないとき(ステップ♯2のNo)、制御部5は、負の差分の個数を所定回数で除した第2比率が予め定められた基準比率F1を超えているか否かを確認する(ステップ♯3)。もし、第2比率も基準比率F1をこえていないとき(ステップ♯3のNo)、制御部5は、補正対象範囲E1の補正を行わないで本フローを終了する(ステップ♯4→エンド)。センサー値の分布が中心値に対して偏っている傾向がないと認められるので、補正対象範囲E1の境界値を補正せずに(範囲変更をせずに)、本フローを終了する。
【0062】
そして、第1比率が基準比率F1を超えているとき(ステップ♯2のYes)、制御部5は、正の差分の平均値を求める(ステップ♯5)。そして、制御部5は、正の差分の平均値が予め定められた基準ずれ量F2以上か否かを確認する(ステップ♯6)。基準ずれ量F2未満のとき(ステップ♯6のNo)、制御部5は、補正対象範囲E1の補正を行わないで本フローを終了する(ステップ♯4→エンド)。基準ずれ量F2は、適宜定めることができ、補正対象範囲E1の境界値を補正するか否かを定めるための基準として用いる量である。基準を下回るほど中心値とのずれが少なければ、用紙幅の誤検知が生ずる可能性は少なく、範囲を補正する必要は無いためである。一方、正の差分の平均値が基準ずれ量F2以上のとき(ステップ♯6のYes)、制御部5は、補正対象範囲E1に隣接する範囲であって1段階センサー値が大きい側(上限側)の範囲との新たな境界値を求める(ステップ♯7)。
【0063】
更に、制御部5は、新たな境界値を適用したときの補正対象範囲E1の中心値と、補正対象範囲E1に隣接する範囲であって、境界値を移動させる側(上側)で隣接する範囲の中心値との差の絶対値が予め定められた補正制限値以下であるか否かを確認する(ステップ♯8)。補正対象範囲E1や補正対象範囲E1に隣接する範囲の幅が狭くなりすぎることを避けるためである。
【0064】
補正制限値以下とならないとき(ステップ♯8のNo)、制御部5は、補正対象範囲E1の上限側の境界値が新たな境界値となるように、幅検知用データD1内の境界値の変更を記憶部6に行わせる(ステップ♯9)。そして、本フローは終了する(エンド)。一方、補正制限値以下となるとき(ステップ♯8のYes)、制御部5は、補正対象範囲E1の補正を行わないで本フローを終了する(ステップ♯4→エンド)
【0065】
具体的に、制御部5は、補正対象範囲E1の現在の中心値に正の差分の平均値を加算した値と、幅検知用データD1のうち補正対象範囲E1に隣接する範囲であって1段階センサー値が大きい側の範囲の中心値とを加算した値の1/2を、補正対象範囲E1の上限側の新たな境界値として求める。
【0066】
図8を用いて説明する。図8の例では、補正対象範囲E1はB4(短辺)、B5(長辺)に対応する範囲である。補正対象範囲E1では、下限側の境界値はセンサー値80、上限側の境界値はセンサー値100、中心値90である。また、正の差分の平均値として求められた値は+4であるとする。まず、制御部5は、補正対象範囲E1の現在の中心値90に正の差分の平均値+4を加算した値である94を求める。続いて、制御部5は、求めた値94と、補正対象範囲E1に隣接する範囲であって1段階センサー値が大きい側の範囲(A3短辺、A4長辺)の中心値110とを加算した値である204を求める。そして、制御部5は、加算値を1/2した102を補正後の境界値として求める。そして、制御部5は、補正対象範囲E1の上限側の境界値が102となるように、記憶部6に幅検知用データD1内の境界値を変更させる。このように、センサー値が中央値より大きくなっている傾向にあわせ、補正対象範囲E1の上限側の境界値を大きくすることができる。
【0067】
一方、第2比率が基準比率F1を超えているとき(ステップ♯3のYes)、制御部5は、負の差分の平均値を求める(ステップ♯10)。そして、制御部5は、負の差分の平均値の絶対値が基準ずれ量F2以上か否かを確認する(ステップ♯11)。基準ずれ量F2未満のとき(ステップ♯11のNo)、制御部5は、補正対象範囲E1の補正を行わないで本フローを終了する(ステップ♯4→エンド)。基準を下回るほど中心値とのずれが少なければ、幅の誤検知が生ずる可能性は少なく、範囲を補正する必要は無いためである。負の差分の平均値の絶対値が基準ずれ量F2以上のとき(ステップ♯11のYes)、制御部5は、補正対象範囲E1に隣接する範囲であって1段階センサー値が小さい側(下限側)の範囲との新たな境界値を求める(ステップ♯12)。
【0068】
更に、制御部5は、新たな境界値を適用したときの補正対象範囲E1の中心値と、補正対象範囲E1に隣接する範囲であって、境界値を移動させる側(下側)で隣接する範囲の中心値との差の絶対値が予め定められた補正制限値以下であるか否かを確認する(ステップ♯13)。補正制限値以下となるとき(ステップ♯13のYes)、制御部5は、補正対象範囲E1の補正を行わないで本フローを終了する(ステップ♯4→エンド)。
【0069】
補正制限値以下とならないとき(ステップ♯13のNo)、制御部5は、補正対象範囲E1の下限側の境界値が新たな境界値となるように、幅検知用データD1内の境界値の変更を記憶部6に行わせる(ステップ♯14)。そして、本フローは終了する(エンド)。
【0070】
具体的に、制御部5は、補正対象範囲E1の現在の中心値から負の差分の平均値の絶対値を減じた値と、幅検知用データD1のうち、補正対象範囲E1に隣接する範囲であって1段階センサー値が小さい側の範囲の中心値とを加算した値の1/2を、補正対象範囲E1の境界値のうち下限側の新たな境界値として求める。
【0071】
図9を用いて説明する。図9の例では、補正対象範囲E1はB4(短辺)、B5(長辺)に対応する範囲である。補正対象範囲E1の下限側の境界値はセンサー値80、上限側の境界値はセンサー値100、中心値90である。また、負の差分の平均値として−4が求められた場合を説明する。まず、制御部5は、補正対象範囲E1の現在の中心値90から負の差分の平均値の絶対値4を減じた値である86を求める。続いて、制御部5は、求めた値86と、補正対象範囲E1に隣接する範囲であって1段階センサー値が小さい側の範囲(A4短辺、A5長辺)の中心値70とを加算した値である156を求める。そして、制御部5は、加算値を1/2した78を補正後の境界値として求める。そして、制御部5は、補正対象範囲E1の下限側の境界値が78となるように、記憶部6に幅検知用データD1内の境界値を変更させる。このように、センサー値が中央値より小さくなっている傾向にあわせ、補正対象範囲E1の下限側の境界値を小さくすることができる。
【0072】
なお、制御部5は、エンドに到ったとき、センサー値保存データD2のうち、補正対象範囲E1とした用紙の幅(検知回数が所定回数の整数倍となった用紙の種類)に対応するセンサー値を消去し、補正対象範囲E1が検知された用紙幅(用紙種)の累計回数をゼロにリセットするようにしてもよい。
【0073】
また、手差し給紙装置1aの幅検知用データD1の補正を例として上述した。本実施形態の複合機100(給紙装置1)では、センサー値保存データD2は、カセット給紙装置1b、原稿搬送部1cのそれぞれについても記憶部6に記憶される。そして、制御部5は、図7のフローチャートをカセット給紙装置1b、原稿搬送部1cのそれぞれについても行う。これにより、カセット給紙装置1b、原稿搬送部1cについても、可変抵抗8の摩耗に応じて、幅検知用データD1の補正が行われる。
【0074】
また、第1比率、第2比率と基準比率F1を求め、境界値の補正を行うか否かの判断を行う例を説明した。しかし、現時点から所定回数分遡ったそれぞれのセンサー値全ての平均値を求め、平均値が基準ずれ量F2以上かどうかに基づき、境界値の補正を行うか否かの判断を行うようにしてもよい(つまり、比率に関する演算、処理をスキップする)。
【0075】
この場合、所定回数分のセンサー値全ての平均値が正であって基準ずれ量F2以上のとき、制御部5は、補正対象範囲E1の現在の中心値に平均値を加算した値と、幅検知用データD1のうち、補正対象範囲E1に隣接する範囲であって1段階センサー値が大きい側の範囲の中心値とを加算した値の1/2を、補正対象範囲E1の境界値のうち上限側の新たな境界値として求める。また、制御部5は、所定回数分のセンサー値全ての平均値が負であって、平均値の絶対値が基準ずれ量F2以上のとき、補正対象範囲E1の現在の中心値から平均値の絶対値を減じた値と、幅検知用データD1のうち、補正対象範囲E1に隣接する範囲であって1段階センサー値が小さい側の範囲の中心値とを加算した値の1/2を、補正対象範囲E1の境界値のうち下限側の新たな境界値として求める。
【0076】
このようにして、実施形態に係る給紙装置1は、用紙をセットする用紙トレイ11に設けられ、スライド移動させることができ、セットされた用紙をはさんで用紙の位置を規制するカーソルと、可変抵抗8を含み、カーソルの位置に応じた電圧を出力するセンサー部7と、検知対象とする定形用紙の幅の種類ごとに、センサー部7の出力の大きさに応じた値であってセンサー部7の出力に基づき得られるセンサー値の範囲が定められた幅検知用データD1を記憶する記憶部6と、センサー部7の出力電圧を処理してセンサー値を求め、センサー値が属する範囲に対応する幅の用紙がセットされていると検知する幅検知処理を行い、幅検知処理のときのセンサー値を記憶部6に記憶させ、定形用紙の幅の種類のうち、検知回数が所定回数の整数倍となった用紙の種類に対応する範囲を補正対象範囲E1とし、実際のセンサー値と補正対象範囲E1の中心値との差分を求め、差分に基づいて、補正対象範囲E1と他の範囲との境界となる値であって上限側又は下限側の境界値を補正する補正処理を行う制御部5と、を含む。
【0077】
これにより、可変抵抗8内の部品の摩耗によるセンサー部7(可変抵抗8)の出力値変化に追従し、幅検知用データD1を補正することができる。何度もカーソルをスライドしているうちにセンサー部7(可変抵抗8)の出力電圧値が大きくなる、あるいは、小さくなるのにあわせて、各用紙種に対するセンサー値の範囲を、少しずつシフトさせることができる。このように、用紙幅を検知するための幅検知用データD1で定められた範囲の境界値を給紙装置1の使用期間にあわせて自動的に補正することができる。従って、使用期間が長くなっても、セット用紙の幅を正確に検知する給紙装置1を提供することができる。また、イメージセンサーのような用紙幅検知用のセンサーを別途設ける必要がなく、給紙装置1の製造コストの上昇を招くこと無く、正確な用紙幅を検知することができる。
【0078】
また、制御部5は、補正対象範囲E1に対応する幅の用紙セットを検知したときの直近の所定回数分のセンサー値のそれぞれから補正対象範囲E1の現在の中心値を減じて差分を求め、求めた差分の全て又は一部の平均値を求める。そして、制御部5は、差分の平均値が正のとき、補正対象範囲E1の現在の中心値に差分の平均値を加算した値と、幅検知用データD1のうち補正対象範囲E1に隣接する範囲であって1段階センサー値が大きい側の範囲の中心値とを加算した値の1/2を補正対象範囲E1の境界値のうち上限側の境界値とする補正処理を行う。また、制御部5は、差分の平均値が負のとき、補正対象範囲E1の現在の中心値から差分の平均値を減じた値と、幅検知用データD1のうち補正対象範囲E1に隣接する範囲であって1段階センサー値が小さい側の範囲の中心値とを加算した値の1/2を補正対象範囲E1の境界値のうち下限側の境界値とする補正処理を行う。
【0079】
これにより、補正対象範囲E1の境界値(上限値又は下限値)を、センサー部7(可変抵抗8)の実際の出力状態に応じてずらすことができる。従って、各用紙の幅に対応するセンサー値の範囲を、センサー部7の実際の出力変化に追随させてずらすことができ、幅検知用データD1を適切に補正することができる。
【0080】
同じサイズの用紙をセットするごとに、センサー値が中心値と一致するとは限らず、また、得られるセンサー値の大きさがばらつくことがある。しかし、中心値よりもセンサー値が大きい場合の回数と、小さい場合の回数に差が少なければ、平均的なセンサー値は中心値と近いといえ、幅検知用データD1で定義された範囲を補正する必要性は少ない。また、中心値よりもセンサー値が大きい場合が多い、又は、小さい場合が多いというように、範囲内でのセンサー値の分布に偏りがあっても、中心値との差が小さければ、範囲を直ちに補正する必要性は少ない。
【0081】
そこで、制御部5は、補正対象範囲E1に対応する幅の用紙セットを検知したときの現時点から遡った所定回数分のセンサー値のそれぞれから補正対象範囲E1の現在の中心値を減じて差分を求める。そして、制御部5は、正の差分の個数を所定回数で除した第1比率が予め定められた基準比率F1を超えており、かつ、正の差分の平均値が予め定められた基準ずれ量F2以上のとき、補正対象範囲E1の現在の中心値に正の差分の平均値を加算した値と、幅検知用データD1のうち補正対象範囲E1に隣接する範囲であって1段階センサー値が大きい側の範囲の中心値とを加算した値の1/2を、補正対象範囲E1の境界値のうち上限側の境界値とする補正処理を行う。また、制御部5は、負の差分の個数を所定回数で除した第2比率が基準比率F1を超えており、かつ、負の差分の平均値の絶対値が基準ずれ量F2以上のとき、補正対象範囲E1の現在の中心値から負の差分の平均値の絶対値を減じた値と、幅検知用データD1のうち、補正対象範囲E1に隣接する範囲であって1段階センサー値が小さい側の範囲の中心値とを加算した値の1/2を、補正対象範囲E1の境界値のうち下限側の境界値とする補正処理を行う。さらに、制御部5は、第1比率が基準比率F1以上ではなく、かつ、第2比率が基準比率F1以上でもないとき、及び、正の差分の平均値、あるいは、負の差分の平均値の絶対値が基準ずれ量F2未満のとき、補正対象範囲E1の境界値の補正を行わない。
【0082】
これにより、補正対象範囲E1内でセンサー値の分布に偏りが生じていて(中心値よりも大きくなる又は小さくなる傾向があると認められ)、かつ、実際のセンサー値が頻繁に中心値とずれていると認められる場合に限り、補正対象範囲E1の補正が行われるようにすることができる。従って、必要以上に幅検知用データD1の各範囲を補正しないようにすることができる。そして、緩やかな経年変化にあわせて、幅検知用データD1に定義された各種用紙幅に対応する各範囲を緩やかに変化させていくことができる。
【0083】
また、補正対象範囲E1の中心値と、補正対象範囲E1に隣接する範囲であって、境界値を移動させる側で隣接する範囲の中心値との差の絶対値が予め定められた補正制限値以下のとき、制御部5は補正処理を行わない。これにより、補正処理での境界値の移動によって、ある種類の用紙幅に対応するセンサー値の範囲が狭くなりすぎることを防ぐことができる。
【0084】
また、複合機100(画像形成装置)は実施形態に係る画像形成装置を含む。これにより、累計使用時間が長くなっても、セットされた用紙の正確な幅を検知する画像形成装置を提供することができる。また、検知された正確な用紙幅に基づいた適切なジョブを実行する画像形成装置を提供することができる。また、イメージセンサーのような用紙幅検知用のセンサーを別途設ける必要がなく画像形成装置の製造コストを抑えることができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、給紙装置と給紙装置を備えた画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
100 複合機(画像形成装置) 1 給紙装置
1a 手差し給紙装置(給紙装置) 1b カセット給紙装置(給紙装置)
1c 原稿搬送部(給紙装置) 11 用紙トレイ
12 カーソル対 5 制御部
6 記憶部 7 センサー部
8 可変抵抗 D1 幅検知用データ
E1 補正対象範囲 F1 基準比率
F2 基準ずれ量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9