(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987073
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】撮像部を用いたワークの位置決め装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/24 20060101AFI20160823BHJP
B23Q 15/22 20060101ALI20160823BHJP
B23Q 15/26 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
B23Q17/24 C
B23Q15/22
B23Q15/26
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-25488(P2015-25488)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-147346(P2016-147346A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2015年12月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】小川 賢一
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特公平07−004737(JP,B2)
【文献】
特開平06−312347(JP,A)
【文献】
実開昭60−113858(JP,U)
【文献】
特開2010−058239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/22−17/24,
B23Q 15/22−15/26,
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械(5)のテーブル(13)に固定されたワークを上方から撮像する撮像部(12)と、
前記テーブルに対して平行な面内において前記撮像部を前記テーブルに対して所望の相対位置に位置決めさせる移動部(21)と、
前記撮像部により撮像された前記ワークの画像を処理して前記画像における前記ワークの特徴点の位置を検出する画像処理部(22)と、
前記撮像部により基準ワークを撮像した際の前記撮像部の前記テーブルに対する相対位置を基準相対位置として記憶すると共に、前記撮像部により撮像された前記基準ワークの画像における前記基準ワークの特徴点の位置を基準点画像位置として記憶する記憶部(23)と、
前記撮像部により前記ワークを撮像する際の前記撮像部の前記テーブルに対する相対位置と前記基準相対位置とを比較すると共に、前記撮像部により撮像された前記ワークの画像における前記ワークの特徴点の位置と前記基準点画像位置とを比較することにより、前記基準ワークの特徴点の位置と前記ワークの特徴点との間のズレ量を算出する算出部(24)と、
該算出部により算出された前記ズレ量がゼロになるような補正量を作成して、前記工作機械のプログラムを変更するプログラム変更部(25)と、を具備し、
前記ワークおよび前記基準ワークは少なくとも二つの特徴点を含んでおり、
前記算出部が算出する前記ズレ量は、前記基準ワークの画像における二つの前記特徴点を結ぶ線分の方向と前記ワークの画像における対応する二つの前記特徴点を結ぶ線分の方向とを比較することにより、前記テーブルに対して平行な面内における前記ワークの回転ズレ量を含む、位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像部、例えばビジョンセンサを用いた工作機械におけるワークの位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークには、位置決めまたは位相合わせのための二つの特徴点、例えば穴、ボス、切欠などが形成されている場合がある。そして、これら特徴点を、工作機械のテーブルに設けられたピン、インロー、または突当てに係合させて、ワークを位置決めおよび位相合わせさせている。特許文献1には、特徴点としての基準穴がワークに形成されている。そして、撮像部、例えばカメラがテーブルに形成された穴を通して、ワークの基準穴を撮像している。
【0003】
より高精度な位置決め等を行なうためには、工作機械の主軸に取付けられたタッチプローブが用いられる。そして、タッチプローブによる電気的な接触感知手法と特徴点を用いた上記手法とを併用して、ワークを位置決めおよび位相合わせするのが望ましい。また、特許文献2には、ワークとセンサとの間の距離を非接触で測定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平07−004737号公報
【特許文献2】特許第4840144号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1において、撮像時には、テーブルが原点復帰したときに、テーブルの穴の中心が撮像部の正面に位置させる必要がある。つまり、特許文献1においては、撮像時におけるテーブルと撮像部との間の相対位置は常に固定位置関係になっている。
【0006】
また、特許文献2においては、センサとワークとが相対的に移動される。そして、ワークが所定範囲の測長エリアに入るとセンサの検出信号が出力される。このため、例えばワークの外形部にバリ等がある場合には、誤検出が発生する可能性がある。また、特徴点がワーク上に印刷されている場合には、そのような特徴点を検出することができない。さらに、ワークを検出するためにオーバーシュートが発生し、余分な移動距離のために多くの時間が必要とされる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ワークを簡単且つ短時間で位置決めすることのできる位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、工作機械のテーブルに固定されたワークを上方から撮像する撮像部と、前記テーブルに対して平行な面内において前記撮像部を前記テーブルに対して所望の相対位置に位置決めさせる移動部と、前記撮像部により撮像された前記ワークの画像を処理して前記画像における前記ワークの特徴点の位置を検出する画像処理部と、前記撮像部により基準ワークを撮像した際の前記撮像部の前記テーブルに対する相対位置を基準相対位置として記憶すると共に、前記撮像部により撮像された前記基準ワークの画像における前記基準ワークの特徴点の位置を基準点画像位置として記憶する記憶部と、前記撮像部により前記ワークを撮像する際の前記撮像部の前記テーブルに対する相対位置と前記基準相対位置とを比較すると共に、前記撮像部により撮像された前記ワークの画像における前記ワークの特徴点の位置と前記基準点画像位置とを比較することにより、前記基準ワークの特徴点の位置と前記ワークの特徴点との間のズレ量を算出する算出部と、該算出部により算出された前記ズレ量がゼロになるような補正量を作成して、前記工作機械のプログラムを変更するプログラム変更部と、を具備
し、前記ワークおよび前記基準ワークは少なくとも二つの特徴点を含んでおり、前記算出部が算出する前記ズレ量は、前記基準ワークの画像における二つの前記特徴点を結ぶ線分の方向と前記ワークの画像における対応する二つの前記特徴点を結ぶ線分の方向とを比較することにより、前記テーブルに対して平行な面内における前記ワークの回転ズレ量を含む、位置決め装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
1番目の発明においては、ズレ量を補正するようにプログラムを変更するので、ワークの位置決めを厳密に行う必要がなく、結果的にワークを短時間で位置決めすることができる。また、撮像部を相対的に移動させられるので、特徴点がワークに印刷された模様、文字などであっても、特徴点の位置を正確に求められ、また、特徴点を形成する場所の自由度を高められる。
さらに、ズレ量が回転ズレ量を含む場合であっても、前述したのと同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1に示される位置決め装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明に基づく位置決め装置の略図である。
図1に示されるように、工作機械5の主軸11に取付けられた工具(図示しない)は、テーブル13上に固定されたワークWを加工するようになっている。工作機械5の主軸11は鉛直方向、例えばZ方向に往復すると共に回転運動可能である。本発明の位置決め装置10は、工作機械5と、これを制御する制御装置20とを主に含んでいる。
【0012】
図1に示されるように、主軸11には撮像部12、例えばカメラが固定されている。従って、撮像部12と主軸11との間の位置関係は固定である。撮像部12の光軸は主軸11に対して平行であり、撮像部12の視野はワークW全体を含むのが好ましい。
【0013】
ワークWは、例えば平面状ワーク、曲面状ワークまたは凹凸部を含んだワークであり、少なくとも二つの特徴点を含んでいる。特徴点は例えば穴、ボス、切欠などである。また、ワークWの特徴点がワークに印刷された模様、文字などであってもよい。つまり、本発明におけるワークWの特徴点は、接触式センサで検出できないワークWの上面の平坦な一部分であってもよい。
【0014】
テーブル13は制御装置20の移動部21に接続されている。移動部21は、テーブル13をテーブル13の天板に対して平行な面内で互いに垂直な二つの方向、例えばX方向およびY方向に移動させる。工作機械5の主軸11はX方向およびY方向に移動しないので、移動部21はテーブル13に対して平行な面内において主軸11および撮像部12をテーブル13に対して所望の相対位置に位置決めさせられる。
【0015】
制御装置20は撮像部12により撮像されたワークの画像を処理して画像におけるワークの特徴点の位置を検出する画像処理部22と、撮像部12により基準ワークW0を撮像する際の撮像部12のテーブル13に対する相対位置を基準相対位置として記憶すると共に、撮像部12により撮像された基準ワークW0の画像における基準ワークの特徴点の位置を基準点画像位置として記憶する記憶部23とを含んでいる。
【0016】
さらに、制御装置20は、撮像部12によりワークWを撮像する際の撮像部のテーブル13に対する相対位置と基準相対位置とを比較すると共に、撮像部12により撮像されたワークWの画像におけるワークWの特徴点の位置と基準点画像位置とを比較することにより、基準ワークW0の特徴点の位置とワークWの特徴点との間のズレ量を算出する算出部24を含んでいる。さらに、制御装置20は、算出部24により算出されたズレ量がゼロになるような補正量を作成して、工作機械5のプログラムを変更するプログラム変更部25を含んでいる。
【0017】
図2は
図1に示される位置決め装置の動作を示すフローチャートである。以下、
図1および
図2を参照しつつ、本発明の位置決め装置の動作について説明する。はじめに、ステップS11において、基準ワークW0をテーブル13上に固定する。基準ワークW0はワークWと同様の寸法であり、少なくとも二つの特徴点が同様に備えられている。また、基準ワークW0およびワークWは適切な固定治具などによりテーブル13に固定されるものとする。
【0018】
次いで、ステップS12において、移動部21により撮像部12をテーブル13に対して所望位置まで相対的に移動させる。所望位置とは、基準ワークW0および後述するワークWを撮像する際に、特徴点を良好に撮像することが可能なテーブル13と撮像部12との間の相対位置である。次いで、記憶部23は、移動後における基準ワークW0の位置を基準相対位置として記憶する(ステップS13)。
【0019】
その後、ステップS14において、撮像部12が基準ワークW0を撮像する。そして、画像処理部22は撮像された画像を処理して、画像における基準ワークW0の特徴点の位置を検出する。そして、記憶部23は、画像における基準ワークW0の特徴点の位置を基準点画像位置として記憶する(ステップS15)。ステップS11〜ステップS15までの処理は、基準相対位置および基準点画像位置を求めるための前処理である。この前処理を予め行っていて基準相対位置および基準点画像位置が記憶部23に記憶されている場合には、ステップS11〜ステップS15の処理を省略してもよい。
【0020】
次いで、ステップS16において、基準ワークW0を取外して、ワークWをテーブル13上に固定する。次いで、ステップS17において、移動部21により撮像部12をテーブル13に対して前述した所望位置まで相対的に移動させる。移動後におけるワークWのテーブルに対する相対位置を記憶部23に記憶してもよい。
【0021】
そして、ステップS18において、撮像部12がワークを撮像し、画像処理部22が撮像された画像を処理して、画像におけるワークWの特徴点の位置を検出する。これら特徴点の位置を記憶部23に記憶してもよい。
【0022】
その後、ステップS19においては、算出部24は、ワークWの相対位置と基準ワークW0の基準相対位置とを比較する。そして、ステップS20において、算出部24は、ワークWの画像における特徴点の位置と、基準ワークW0の画像における基準点画像位置とを比較する。そして、算出部24は、これら比較結果を用いて基準ワークW0の特徴点の位置とワークWの特徴点との間のズレ量を算出する(ステップS21)。
【0023】
ここで、
図3はテーブルおよびワークの拡大図である。
図3にはテーブル13の基準原点Oと、基準ワークW0の基準点画像位置a0(x0、y0)と、ワークWの対応する特徴点の位置a1(x1、y1)とが示されている。このような場合には、ズレ量a1−a0が(x1−x0、y1−y0)として算出される。当然のことながら、他の特徴点についても、同様にズレ量を算出してもよい。その後、ステップS22において、プログラム変更部25はズレ量を補正する補正量を作成し、補正量を工作機械5のプログラムに追加するよう、プログラムを変更する。
【0024】
このように、本発明においては、ワークの位置決めを厳密に行う代わりに、ズレ量を補正するようにプログラムを変更している。このため、ワークの位置決めを厳密に行う必要がなく、結果的にワークを短時間で位置決めすることができる。また、前述した説明から分かるように、本発明においては、撮像時にテーブル13と撮像部12との間の相対位置が常に固定関係である必要はなく、ワークの位置決めを簡単に行うことが可能である。
【0025】
ここで、特徴点が穴、ボス、切欠などである場合には、良好な画像を得るために、撮像部12が特徴点のほぼ真上に位置させる必要がある。この点に関し、本発明では、特徴点を良好に撮像することのできる所望位置まで撮像部12を相対的に移動させている。このため、本発明では、特徴点が穴、ボス、切欠などである必要はなく、特徴点が例えばワークWに印刷された模様、文字などであっても、特徴点の位置を正確に求めることができる。従って、ワークWに追加で特徴点を作成する必要がない場合もありうる。
【0026】
また、穴、ボス、切欠などの特徴点をワークWに形成する必要がある場合であっても、撮像部12を移動させられるので、特徴点をワークWのいずれの場所に形成することができる。このため、本発明では、テーブルと撮像部との間の相対位置が常に固定関係である必要はなく、本発明においては、特徴点を形成する場所の自由度を高められる。
【0027】
さらに、
図4はワークおよび基準ワークの拡大図である。
図4に示されるようにワークWは基準ワークW0に対してテーブル13内で回転するように位置ズレする場合がある(回転ズレ)。
図4においては、回転中心C回りにおける、基準ワークW0に対するワークWの回転角度はθで示される。このような場合には、少なくとも二つの特徴点が使用される。
【0028】
図4に示される例においては、
図2のステップS18において画像におけるワークWの特徴点A1(x2、y2)、B1(x3、y3)がテーブル13の基準原点0に対して検出される。ワークWの特徴点A1、B1のそれぞれは、基準ワークW0の特徴点A0、B0に対応している。
図4から分かるように、特徴点A0、B0は画像におけるX座標に相当する。
【0029】
図4に示される回転角度θは、基準ワークW0の画像における二つの特徴点A0、B0を結ぶ線分の方向とワークWの画像における対応する二つの特徴点A1、B1を結ぶ線分の方向とがなす角度である。そして、回転角度θは以下の式(1)より算出される。
θ=tan
-1{(y3−y2)/(x3−x2)} (1)
【0030】
そして、回転中心Cの座標(xc、yc)は以下の式(2)より算出される。
xc=(x2+x3)/2、 yc=(y2+y3)/2 (2)
算出部24は、回転角度θおよび回転中心Cの座標としての回転ズレ量を算出する。そして、プログラム変更部25はこのようにして算出された回転角度θおよび回転中心Cに対する補正量を算出し、補正量を前述したように工作機械5のプログラムに反映させるようにする。この場合にも、前述したのと同様の効果が得られるのは明らかであろう。
【符号の説明】
【0031】
5 工作機械
10 位置決め装置
11 主軸
12 撮像部
13 テーブル
20 制御装置
21 移動部
22 画像処理部
23 記憶部
24 算出部
25 プログラム変更部