(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5987089
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ケーブル布設治具およびケーブル布設方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/08 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
H02G1/08 030
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-134426(P2015-134426)
(22)【出願日】2015年7月3日
【審査請求日】2015年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大矢 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】細矢 敏
【審査官】
北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−514244(JP,A)
【文献】
特表2011−525792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低摩擦繊維を主材とし、管状部材に通線させるケーブルを包み込むための帯状部材と、
前記帯状部材の長手方向の縁部に沿って設けられ、前記ケーブルを包み込んだ前記帯状部材の縁部どうしを着脱自在に接続する接続部材と、
前記帯状部材の一端に取り付けられ、前記管状部材よりも長く設けられた帯状部材抜き取り用のワイヤと
を具備するケーブル布設治具。
【請求項2】
ケーブルを包み込み、前記ケーブルを管状部材に挿通させるための帯状部材であって、
前記ケーブルを覆う第1の面と、前記管状部材の内面に接触、挿通され、前記第1の面以上に低摩擦の第2の面と、第1、第2の端部と、第1、第2の縁部と、を有する帯状部材と、
前記帯状部材の第1の面上に、前記第1、第2の縁部それぞれに沿って配置され、互いに着脱可能に接続される接続部材と、
前記帯状部材と共に前記管状部材に挿通されるワイヤであって、前記帯状部材の第1の端部に接続される一端と、前記帯状部材が前記管状部材に挿通されたときに前記管状部材の外に配置される他端とを有し、前記他端を引っ張ることで、前記接続部材の接続を順に解除して前記帯状部材を前記管状部材から抜き取るためのワイヤと
を具備するケーブル布設治具。
【請求項3】
前記帯状部材が、フッ素コート繊維を主材とする低摩擦シートである請求項1または請求項2いずれか記載のケーブル布設治具。
【請求項4】
前記管状部材が電線管である請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載のケーブル布設治具。
【請求項5】
前記接続部材が面ファスナーである請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載のケーブル布設治具。
【請求項6】
帯状部材抜き取り用の第1ワイヤを先端に取り付けた低摩擦繊維を主材とする帯状部材でケーブルを包み、前記帯状部材の両縁に設けた接続部材で前記両縁を着脱自在に接続する工程と、
管状部材に通したケーブル引き抜き用の第2ワイヤの一端を前記ケーブルの端部に結んで前記管状部材のケーブル引き抜き側から前記第2ワイヤを引っ張ることで前記ケーブルを前記帯状部材と共に前記管状部材に通線させる工程と、
前記管状部材から露出した前記ケーブルを包んだ前記帯状部材の前記先端を折り返す工程と、
折り返した前記帯状部材の前記先端に結ばれている前記第1ワイヤを前記管状部材のケーブル入線側から引っ張ることで、前記帯状部材の前記両縁の接続を順に解除しながら前記帯状部材を前記管状部材から抜き取る工程と
を有するケーブル布設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ケーブル布設治具およびケーブル布設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル布設工事では、例えば数十〜数百メートルといった比較的長い電線管へケーブルを通すことがあるが、このようなケーブル布設工事を行う上では、布設抵抗を軽減するために入線潤滑剤などを使用するのが一般的である。
【0003】
入線潤滑剤はケーブルと電線管の摩擦抵抗を軽減させるためのものであり、一般的にはシリコンオイルや高分子ポリマーなどを主成分とする液体や泡状のものである。
【0004】
このような潤滑剤は電線管への入線時にケーブルへ塗布し、ケーブル表面と電線管内面との摩擦を軽減させるものである。
【0005】
したがって、その性質上、作業場所の床などの周囲を汚す恐れがあり、汚れ防止のために床面を養生する、といった間接的な作業が必要になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−026339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ケーブル布設工事では、電線管などの管状部材にケーブルを通す際に、入線潤滑剤などを用いて互いの接触部分の摩擦抵抗を軽減する必要があり、ケーブルを通す管状部材が長い場合、ケーブルの布設が進むにつれて入線潤滑剤がすり落ちてしまうことから、摩擦抵抗が増えてしまいケーブルの布設が途中で困難になることもある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、管状部材とケーブルとの摩擦抵抗を機械的な仕組みにより低減しケーブル布設作業を省力化することができるケーブル布設治具およびケーブル布設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のケーブル布設治具は、低摩擦繊維を主材とし、管状部材に通線させるケーブルを包み込むための帯状部材と、前記帯状部材の長手方向の縁部に沿って設けられ、前記ケーブルを包み込んだ前記帯状部材の縁部どうしを着脱自在に接続する接続部材と、前記帯状部材の一端に取り付けられ、前記管状部材よりも長く設けられた帯状部材抜き取り用のワイヤとを備える。
【0010】
実施形態のケーブル布設方法は、帯状部材抜き取り用の第1ワイヤを先端に取り付けた低摩擦繊維を主材とする帯状部材でケーブルを包み、前記帯状部材の両縁に設けた接
続部材で前記両縁を着脱自在に接続する工程と、管状部材に通したケーブル引き抜き用の第2ワイヤの一端を前記ケーブル
の端部に結んで前記管状部材のケーブル引き抜き側から前記第2ワイヤを引っ張ることで前記ケーブルを前記帯状部材と共に前記管状部材に通線させる工程と、前記管状部材から露出した前記ケーブルを包んだ前記帯状部材の前記先端を折り返す工程と、折り返した前記帯状部材の前記先端に結ばれている前記第1ワイヤを前記管状部材のケーブル入線側から引っ張ることで、前記帯状部材の前記両縁の接続を順に解除しながら前記帯状部材を前記管状部材から抜き取る工程とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態のケーブル布設治具の構成を示す外観図である。
【
図2】ケーブル布設治具をケーブルの端に取り付けた状態を示す図である。
【
図3】管状部材に通した補助ワイヤをケーブル端に結び付けた状態を示す図である。
【
図4】管状部材にケーブルを貫通させた状態を示す図である。
【
図5】露出端を折り返した帯状部材を管状部材から抜き取る状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は一つの実施の形態の管状部材としての電線管用のケーブル布設治具を示す図である。
図1に示すように、この実施形態のケーブル布設治具は、帯状部材としての低摩擦シート1、帯状部材抜き取り用の第1ワイヤとしてのワイヤ3、複数の接続部材としての第1のファスナー2aおよび第2のファスナー2b、ケーブル引き抜き用の第2ワイヤとして補助ワイヤ9を備える。
【0014】
低摩擦シート1はケーブル5を包み込み、
管状部材としての電線管8にケーブル5と共に挿通させるためのシート状の部材である。低摩擦シート1は例えばフッ素コート繊維などを主材としている。
【0015】
ここで低摩擦シート1とは、電線管8の内面とケーブル5の外周面との接触での摩擦係数に比べて電線管8の内面と低摩擦シート1の表面との接触での摩擦係数が極めて低いシートをいう。低摩擦シート1は電線管8とケーブル5との摩擦抵抗を軽減するための摩擦軽減部材である。
【0016】
低摩擦シート1はケーブル5を覆う第1の面1aと、
管状部材としての電線管8の内面に接触、挿通され、第1の面1aと同等かそれよりも低摩擦の第2の面1bとを有する。ケーブル5は単線でも複数本まとめた線であってもよい。
【0017】
またこの低摩擦シート1は長手方向の一端である第1の端部1cと、この第1の端部1cとは反対側の他端である第2の端部1dと、長手方向の辺の部分の第1の縁部1eと、この第1の縁部1eと逆側の辺の部分の第2の縁部1fとを有する。
【0018】
低摩擦シート1の第1の面1a上には複数の接続部材としての第1のファスナー2aおよび第2のファスナー2bが縁部1e、1fそれぞれに沿って配設されている。
【0019】
第1のファスナー2aと第2のファスナー2bとは互いに一定の引き離し力で着脱可能に接着(接続)されるもの、例えば面ファスナーなどである。
【0020】
この他、一定の引き離し力で着脱自在な接続部材であれば、例えばスナップボタンや粘着テープ、その他のものであってもよい。
【0021】
ワイヤ3はケーブル5を覆ってファスナー2a、2bを接着した状態の低摩擦シート1と共に電線管8に挿通される。
【0022】
このワイヤ3は低摩擦シート1の第1の端部1cに接続された一端3aと、低摩擦シート1が電線管8に挿通されたときに電線管8のケーブル入線側8b(管状部)の外に配置される他端3bとを有する。
【0023】
ワイヤ3はケーブル5と共に低摩擦シート1が電線管8に挿通された状態で他端3bを引っ張ることで、ケーブル5の先端側から第1のファスナー2aと第2のファスナー2b間の接続を順に解除して低摩擦シート1を電線管8から抜き取る(引きずり出す)ためのワイヤである。
【0024】
以下、
図2乃至
図5を参照して上記ケーブル布設治具を用いたケーブル布設方法を説明する。
この場合、まず、
図2に示すように、抜き取り用のワイヤ3を先端に取り付けた低摩擦シート1でケーブル5を包み(覆い)、ケーブル5の先端5a(端部)に低摩擦シート1の上部を固着する。この際、先端が細くなるようにケーブル5の先端5a(端部)に低摩擦シート1を縛り付ける。そして低摩擦シート1の両縁1e、1fに設けたファスナー2a、2bで両縁1e、1fを接着する(
図3参照)。
【0025】
次に、
図3に示すように、電線管8に通した補助ワイヤ9の一端をケーブル5の先端5a(端部)に結んで電線管8のケーブル引き抜き側8aから補助ワイヤ9を引っ張ることで、ケーブル5を低摩擦シート1と共に電線管8に通線させ、
図4に示すように、電線管8のケーブル引き抜き側8aにケーブル5を露出させる。
【0026】
そして、
図5に示すように、電線管8から露出したケーブル5を包んだ低摩擦シート1の端部1cをケーブル入線側8bの側に向けて折り返す。この際、電線管8の中に入るように端部1cを折り返す。
【0027】
最後に、折り返した低摩擦シート1の端部1cに結ばれているワイヤ3を、電線管8のケーブル入線側8bから引っ張ることで、電線管8とケーブル5との隙間において、低摩擦シート1の両縁1e、1fの接着部分を引き剥がしながら(接続を順に解除しながら)低摩擦シート1を電線管8から抜き取る。
【0028】
このようにこの実施形態のケーブル布設治具によれば、ケーブル5を低摩擦シート1で覆って電線管8に挿通することで、電線管8とケーブル5との摩擦抵抗を機械的な仕組みにより低減してケーブル5を電線管8に通線することができる。
【0029】
また電線管8にケーブル5を通線した後、ワイヤ3をケーブル入線側8bから引っ張ることで、低摩擦シート1を電線管8から抜き取ることができるので、ケーブル布設治具の再利用が可能であり、ケーブル布設作業にかかるコストを低減することができる。
【0030】
さらに、従来のように、ケーブル5に入線潤滑剤を塗布する必要がなくなるので、作業場所の床などの周囲を汚す恐れがなくなり、養生などの作業も不要になる。この結果、ケーブル布設作業を省力化することができる。
【0031】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1…低摩擦シート、2a,2b…ファスナー、3…ワイヤ、5…ケーブル、8…電線管、9…補助ワイヤ。
【要約】
【課題】電線管とケーブルとの摩擦抵抗を機械的な仕組みにより低減しケーブル布設作業を省力化する。
【解決手段】実施形態のケーブル布設治具は、低摩擦繊維を主材とし、管状部材に通線させるケーブルを包み込むための帯状部材と、前記帯状部材の長手方向の縁部に沿って設けられ、前記ケーブルを包み込んだ前記帯状部材の縁部どうしを着脱自在に接続する接続部材と、前記帯状部材の一端に取り付けられ、前記管状部材よりも長く設けられた帯状部材抜き取り用のワイヤとを備える。
【選択図】
図1