(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る光干渉断層撮影装置を、
図1〜
図4を参照しながら説明する。
【0016】
(全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る光干渉断層撮影装置の全体構成を示す図である。
図1に示すように、光干渉断層撮影装置1(波長走査型光干渉断層撮影装置)は、波長走査光源ユニット10と、光カプラ110〜111と、光サーキュレータ120〜121と、レンズ130〜133と、可動ミラー14と、基準ミラー15と、差動光検出器16と、コンピュータ20と、を備えている。
【0017】
波長走査光源ユニット10は、波長走査光源100と、波数等間隔クロック出力部101と、を有してなる。
波長走査光源100は、波長が時間変化に応じて連続的に変化する(波長が走査されてなる)波長走査光Pを出力する。出力された波長走査光Pは、光ファイバを通じて光カプラ110に伝送される。波長走査光源100は、波長走査光Pを、“A−scan rate”と呼ばれる所定の繰り返しレート(例えば500kHz程度)で、繰り返し出力する。
波数等間隔クロック出力部101は、波長走査光Pの出力に応じたクロック信号であるk−clock信号Kを出力する。k−clock信号Kは、具体的には、波長の走査の過程において、波長走査光Pの波数kが所定の等しい変化量(波数変化量Δk)だけ変化したタイミングで立ち上り及び立ち下りを交互に繰り返してなるクロック信号である。
なお、波数等間隔クロック出力部101は、例えば、波長走査光源100から出力された波長走査光Pの一部を取り込んで、マッハツェンダー干渉計、光検出器等に入力することでk−clock信号Kを生成する(例えば、特許文献1等を参照)。
また、波長走査光源ユニット10は、波長走査光Pの波長走査が開始されるタイミングを示す開始信号T(トリガ信号)を出力する。
【0018】
光カプラ110及び光カプラ111は、入力された光を規定された比率で分配する素子である。波長走査光源ユニット10から光カプラ110に入力された波長走査光Pは、所定の比率で分配され、それぞれ、光サーキュレータ120、光サーキュレータ121に伝送される。
【0019】
光サーキュレータ120、121は、光の進路を一方向に規制して出力する素子である。光カプラ110から光サーキュレータ120に入力された波長走査光Pは、レンズ130、可動ミラー14及びレンズ131を介して撮影対象物X(例えば、人眼の角膜から水晶体後面付近)に照射される。可動ミラー14の角度が変化することで、撮影対象物Xのうち所望する位置に波長走査光Pが照射される。波長走査光Pが対象物Xで反射してなる対象物反射光P’は、光サーキュレータ120を介して、光カプラ111に伝送される。
一方、光カプラ110から光サーキュレータ121に入力された波長走査光Pは、レンズ132、133を介して基準ミラー15に照射されるとともに、当該基準ミラー15で反射して戻ってきた波長走査光Pが光サーキュレータ121を介して光カプラ111に伝送される。
基準ミラー15で反射して戻ってきた波長走査光Pと、対象物反射光P’と、が光カプラ111で合波されることで、当該波長走査光Pと対象物反射光P’との干渉光が生成される。
【0020】
差動光検出器16は、波長走査光Pと対象物反射光P’との干渉光を差動入力するとともに、同相ノイズが除去された干渉光の強度(振幅)を示す電気信号である干渉信号Cを出力する。干渉信号Cは、コンピュータ20に搭載されているA/D変換器21に入力される。
【0021】
コンピュータ20は、A/D変換器21と、CPU22と、操作部23と、を有してなる。
A/D変換器21は、干渉信号C(干渉光の強度)をサンプリングしてサンプリングデータ(デジタルデータ)に変換する。本実施形態に係るA/D変換器21の具体的態様については後述する。
【0022】
CPU22は、予め用意された専用のプログラムが読み込まれて動作することで、光干渉断層撮影装置1の動作全体を司る。特に、本実施形態に係るCPU22は、A/D変換器21を通じて取得されたサンプリングデータに基づいて、撮影対象物Xの断層状態を示す断層画像データを生成する断層画像生成部として機能する。
【0023】
操作部23は、例えば、キーボード、マウス、タッチセンサ等であって、光干渉断層撮影装置1のオペレータによる操作を受け付けるユーザーインターフェイスである。
【0024】
(A/D変換器の構成)
図2は、第1の実施形態に係るA/D変換器の構成を説明する図である。
図2に示すように、A/D変換器21は、第1サンプリング部210と、第2サンプリング部211と、を備えている。
第1サンプリング部211は、干渉信号C(干渉光の強度)を、k−clock信号Kの立ち上りのタイミングでサンプリングするとともに、得られたサンプリングデータをCPU22に出力する。
第2サンプリング部211は、干渉信号Cを、k−clock信号Kの立ち下りのタイミングでサンプリングするとともに、得られたサンプリングデータをCPU22に出力する。
【0025】
より具体的に説明すると、第1サンプリング部210は、クロック入力ポートCLKを通じて入力されたk−clock信号Kの立ち上がりのタイミングごとに、第1入力ポートCH1を通じて入力された干渉信号Cをサンプリングする。
また、第2サンプリング部211は、クロック入力ポートCLK及びインバータIを通じて入力されたk−clock信号Kの反転信号の立ち上がりのタイミングごとに、第2入力ポートCH2を通じて入力された干渉信号Cをサンプリングする。ここで、インバータIは、入力されたk−clock信号Kを反転させる回路素子である。
【0026】
また、抵抗素子Rは、差動光検出器16(
図1)から見たA/D変換器21の入力インピーダンスを調整するために設けられている。この場合、第1入力ポートCH1とグラウンドとの間、及び、第2入力ポートCH2とグラウンドとの間に100Ωの抵抗素子Rが接続される。これにより、第1入力ポートCH1及び第2入力ポートCH2全体としての入力インピーダンスが50Ωとなる。
【0027】
(CPUの処理フロー)
図3は、第1の実施形態に係るCPUの処理フローを示す図である。
図3に示す処理フローは、光干渉断層撮影装置1が撮影動作を開始してから、撮影対象物Xの断層画像データが取得されるまでの処理フローを示している。
【0028】
オペレータによる操作により波長走査光源ユニット10に電源が投入されると、当該波長走査光源ユニット10から波長走査の開始信号T(
図1)と、波長走査光P及びk−clock信号Kと、が自動で出力される。A/D変換器21は、開始信号Tを受け付けた段階から、k−clock信号Kに応じたタイミングで干渉信号Cのサンプリングを開始する(ステップS01)。
【0029】
次に、CPU22は、第1サンプリング部210から第1サンプリングデータ列D1の入力を受け付ける(ステップS02a)。また、CPU22は、ステップS02aの処理と並列して、第2サンプリング部211から第2サンプリングデータ列D2の入力を受け付ける(ステップS02b)。第1サンプリングデータ列D1及び第2サンプリングデータ列D2の具体的な内容については、
図4を用いて後に説明する。
【0030】
次に、CPU22は、一連の第1サンプリングデータ列D1と第2サンプリングデータ列D2とを取得すると、これらを統合して統合サンプリングデータDTを作成する(ステップS03)。ここで、CPU22は、第1サンプリング部210で取得された第1サンプリングデータ列D1(ステップS02a)と、第2サンプリング部211で取得された第2サンプリングデータ列D2(ステップS02b)と、を入れ子に並び替えることで統合サンプリングデータ列DTを作成する。統合サンプリングデータ列DTの具体的な内容についても、
図4を用いて後に説明する。
【0031】
次に、CPU22は、ステップS03で得られた統合サンプリングデータ列DTに対し、離散フーリエ変換処理を施して、断層画像データDGを生成する(ステップS04)。
なお、ステップS01〜S04までの1回の処理フローによって生成された断層画像データDGは、撮影対象物Xのうち波長走査光Pが照射された一つの位置における深さ方向の状態を示すものである。そこで、CPU22は、可動ミラー14(
図1)を動かして撮影対象物Xにおける波長走査光Pの照射位置を変えながら、上述のステップS01〜ステップS04の処理を複数回繰り返す。
このようにすることで、CPU22は、撮影対象物Xの複数箇所に渡る断層画像データDGを蓄積するとともに、これらを組み合わせて、撮影対象物Xのうち所望する範囲の断層状態が示された断層画像を生成する。
【0032】
(CPUの各処理の具体的な処理)
図4は、第1の実施形態に係るCPUの各処理の具体的な処理を説明する図である。
ステップS01(
図3)で波長走査光Pが出力されると、波数等間隔クロック出力部101は、
図4に示すように、当該波長走査光Pの波数が波数変化量Δkだけ増加するごとに立ち上がり及び立ち下りを交互に繰り返すk−clock信号Kを出力する。
ここで、波長走査光源100(
図1)から出力される波長走査光Pの波数k
0、k
1、k
2・・・の各々の間隔は、いずれも等しい波数変化量Δkとされている。ここで、波長走査光Pの波数の経時的変化は、通常、時間軸に対して一定とはならない。したがって、
図4に示すように、時間軸を横軸に取った場合におけるk−clock信号Kは、周期やDuty比等が不均一となっている。
【0033】
第1サンプリング部210は、k−clock信号Kの立ち上がりのタイミング、即ち、波長走査光源100から出力される波長走査光Pの波数が、k
0、k
2、k
4・・・に達したタイミングで干渉信号Cのサンプリングを行う。これにより、第1サンプリング部210は、波長走査光Pの波長の走査の過程において、上述の各タイミングで干渉信号Cを逐次サンプリングして取得したサンプリングデータa
1、a
2、a
3・・・からなる第1サンプリングデータ列D1を取得する。ここで、第1サンプリングデータ列D1は、サンプリングデータa
1、a
2、a
3、・・・の各々が取得された順番に並べられたデータ列である。
【0034】
同様に、第2サンプリング部211は、k−clock信号Kの立ち下がりのタイミング、即ち、波長走査光源100から出力される波長走査光Pの波数が、k
1、k
3、k
5・・・に達したタイミングで干渉信号Cのサンプリングを行う。これにより、第2サンプリング部211は、波長走査光Pの波長の走査の過程において、上述の各タイミングで干渉信号Cを逐次サンプリングして取得したサンプリングデータb
1、b
2、b
3・・・からなる第2サンプリングデータ列D2を取得する。ここで、第2サンプリングデータ列D2は、サンプリングデータb
1、b
2、b
3・・・が取得された順番に並べられたデータ列である。
【0035】
なお、第1サンプリング部210及び第2サンプリング部211は、それぞれ独立して干渉信号Cをサンプリングする。CPU22は、第1サンプリング部210、第2サンプリング部211の各々から送信される第1サンプリングデータ列D1、第2サンプリングデータ列D2をそれぞれ取得する(ステップS02a、S02b(
図3))。
【0036】
CPU22は、第1サンプリングデータ列D1、第2サンプリングデータ列D2の各々の取得を完了した後、ステップS03(
図3)において、第1サンプリングデータ列D1及び第2サンプリングデータ列D2を入れ子に並び替え、統合サンプリングデータ列DTを作成する。これにより、統合サンプリングデータDTは、
図4に示すように、各サンプリングデータa
1、b
1、a
2、b
2、a
3、b
3・・・が、取得順に並べられたデータ列となる。
【0037】
CPU22は、ステップS04(
図3)において、上述のようにして得られた統合サンプリングデータDTに対して、高速フーリエ変換(離散フーリエ変換)を実施して断層画像データDGを生成する。
【0038】
(作用効果)
以上の通り、第1の実施形態に係る光干渉断層撮影装置1は、波長が走査されてなる波長走査光Pを出力する波長走査光源100と、波長の走査の過程において、波長走査光Pの波数が波数変化量Δkだけ変化したタイミングで立ち上り及び立ち下りを交互に繰り返すk−clock信号Kを出力する波数等間隔クロック出力部101と、を備えている。
また、光干渉断層撮影装置1は、波長走査光Pと、当該波長走査光Pが撮影対象物Xにて反射してなる対象物反射光P’と、の干渉光の強度(干渉信号C)を、k−clock信号の立ち上りのタイミングでサンプリングする第1サンプリング部210と、干渉信号Cを、k−clock信号の立ち下がりのタイミングでサンプリングする第2サンプリング部211と、を備えている。
更に、光干渉断層撮影装置1は、第1サンプリング部210で取得された第1サンプリングデータ列D1と、第2サンプリング部211で取得された第2サンプリングデータ列D2と、の両方に基づいて一の断層画像データDTを生成する断層画像生成部(CPU22)を備えている。
【0039】
このような構成とすることで、k−clock信号のクロック周波数を上昇させることなく2倍のサンプリングデータを取得することができる。したがって、装置(波長走査光源ユニット10)の高性能化、又は、複雑なデバイスの付加を要することなく、オペレータがより所望する態様で断層画像を取得ことができる。
【0040】
例えば、第1の実施形態において、CPU22は、第1サンプリング部210で取得された第1サンプリングデータ列D1と、第2サンプリング部211で取得された第2サンプリングデータ列D2と、を入れ子に並べてなる統合サンプリングデータ列DTを作成する。そして、CPU22は、当該統合サンプリングデータ列DTに対する離散フーリエ変換処理を経て一の断層画像データDGを生成する。
【0041】
このようにすることで、従来(k−clock信号の立ち上がりのみでサンプリングする場合)に比べて、干渉光の強度(干渉信号C)を2倍の周波数でサンプリングすることができる。そうすると、CPU22は、ナイキストの定理に基づき、干渉信号Cの中に含まれるより高周波成分の信号を検出することができる。したがって、撮影対象物Xのうち撮影可能な深さ方向の幅を従来の2倍とすることができる。
即ち、第1の実施形態に係る光干渉断層撮影装置1によれば、サンプリング周波数の上昇や撮影時間の増加、複雑なデバイスの付加などを伴わずに、k−clockが内蔵された波長走査光源にて定められた計測可能距離を長くすることができる。
【0042】
また、オペレータが、撮影対象物Xの撮影可能な深さ方向の幅を従来のままとしても良いと判断した場合は、波長走査光源100の走査の繰り返しレート(A−scan rate)を2倍(例えば1MHz)とすることができる。これにより、断層画像撮影の高速化を図ることができる。
【0043】
例えば、従来販売されている、中心波長1060nmで計測可能距離6mm用のk−clock出力部(波数等間隔クロック出力部)が内蔵されている波長走査レーザを、第1の実施形態に係る波長走査光源ユニット10として適用した場合を実施例として説明する。
計測可能距離6mm用のk−clock信号Kの周波数は88MHz〜195MHzと幅を持っており、このk−clock信号Kを、例えば、特許文献2で示されている周波数逓倍器を用いて計測可能距離が2倍(12mm)のk−clock信号Kを生成したとする。このときのクロックの最大周波数は380MHz程度となり、分解能が14bitでサンプリングレートが400MS/sのA/D変換器でサンプリングすることは可能である。ただし、通常のA/D変換器ではサンプリング周波数が一定であるため、周波数可変クロックを許容するフラッシュADCやパイプラインADCを用いる必要がある。
しかし、第1の実施形態に係る光干渉断層撮影装置1を用いれば、A−scan rateを倍にすることができるため、複雑なデバイス(例えば、特許文献2で示されている周波数逓倍器等)を付加することなくより高速に断層画像を得ることができる。
【0044】
また、眼底OCT用として、A−scan rateが100kHzで計測可能距離が3.7mmのk−clock信号を出力する波長走査レーザも既に販売されている。このk−clock信号Kの最大周波数は340MHzであるため、A−scan rateを500kHzに上げた場合に必要なk−clock信号Kの最大周波数は1.7GHz(340MHz×5)となる。したがって、分解能が12bitでサンプリングレートが1GS/sのA/D変換器ではサンプリングすることはできない。
しかし、計測可能距離を1.85mmにしたk−clock信号Kに変更すれば、k−clock信号Kに必要な最大周波数は0.85GHzとなる。したがって、第1の実施形態に係る光干渉断層撮影装置1において、1GS/sでサンプリング可能な2チャンネルのA/D変換器(第1サンプリング部210、第2サンプリング部211、ただし、上述と同様、周波数可変クロックを許容する特定のA/D変換器)を用いることにより、例えば、128×128×512の大きさの3次元立体画像を毎秒30ボリュームのビデオレートで高感度に取得することが可能となる。
【0045】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態に係る光干渉断層撮影装置を、
図5及び
図6を参照しながら説明する。第2の実施形態に係る光干渉断層撮影装置は、第1の実施形態に係る光干渉断層撮影装置に加え、更に、以下に説明する機能を備えていることを特徴とする。
なお、第2の実施形態に係る光感想断層撮影装置の全体構成、及び、A/D変換器の構成は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0046】
(CPUの処理フロー)
図5は、第2の実施形態に係るCPUの処理フローを示す図である。
第2の実施形態に係るCPU22は、オペレータによって選択された撮影モードによっては、
図3に示した処理フローに替えて、
図5に示す処理フローを実行する。
【0047】
図5に示す処理フローは、光干渉断層撮影装置1が撮影動作を開始してから、撮影対象物Xの断層画像データが取得されるまでの処理フローを示している。
【0048】
オペレータによる操作により波長走査光源ユニット10に電源が投入されると、当該波長走査光源ユニット10から波長走査の開始信号T(
図1)と、波長走査光P及びk−clock信号Kと、が自動で出力される。A/D変換器21は、開始信号Tを受け付けた段階から、k−clock信号Kに応じたタイミングで干渉信号Cのサンプリングを開始する(ステップS11)。
【0049】
次に、CPU22は、第1サンプリング部210から第1サンプリングデータ列D1の入力を受け付ける(ステップS12a)。また、CPU22は、ステップS02aの処理と並列して、第2サンプリング部211から第2サンプリングデータ列D2の入力を受け付ける(ステップS12b)。第1サンプリングデータ列D1及び第2サンプリングデータ列D2の具体的態様は、第1の実施形態と同様である。
【0050】
次に、CPU22は、ステップS12aで得られた第1サンプリングデータ列D1に対し、離散フーリエ変換処理を施して、第1中間データDM1を生成する(ステップS13a)。ここで、第1中間データDM1は、第1サンプリングデータ列D1のみを基に生成された断層画像データに相当する。
また、CPU22は、ステップS12bで得られた第2サンプリングデータ列D2に対し、離散フーリエ変換処理を施して、第2中間データDM2を生成する(ステップS13b)。ここで、第2中間データDM2は、第2サンプリングデータ列D2のみを基に生成された断層画像データに相当する。
【0051】
そして、CPU22は、ステップS13a及びステップS13bで生成した第1中間データDM1と第2中間データ列DM2とを取得すると、これらを加算平均して一つの断層画像データDG’を作成する(ステップS14)。
なお、ステップS11〜S14までの1回の処理フローによって生成された断層画像データDG’は、撮影対象物Xのうち波長走査光Pが照射された一つの位置における深さ方向の状態を示すものである。そこで、CPU22は、第1の実施形態と同様に、可動ミラー14(
図1)を動かして撮影対象物Xにおける波長走査光Pの照射位置を変えながら、上述のステップS11〜ステップS14の処理を複数回繰り返す。
【0052】
(CPUの各処理の具体的な処理)
図6は、第2の実施形態に係るCPUの各処理の具体的な処理を説明する図である。
第1の実施形態と同様に、ステップS11(
図5)で波長走査光Pが出力されると、波数等間隔クロック出力部101は、
図6に示すように、当該波長走査光Pの波数が波数変化量Δkだけ増加するごとに立ち上がり及び立ち下りを交互に繰り返すk−clock信号Kを出力する。
【0053】
第1サンプリング部210は、k−clock信号Kの立ち上がりのタイミングで干渉信号Cのサンプリングを行う。これにより、第1サンプリング部210は、波長走査光Pの波長の走査の過程において、干渉信号Cを逐次サンプリングして取得したサンプリングデータa
1、a
2、a
3・・・からなる第1サンプリングデータ列D1を取得する。
同様に、第2サンプリング部211は、k−clock信号Kの立ち下がりのタイミングで干渉信号Cのサンプリングを行う。これにより、第2サンプリング部211は、波長走査光Pの波長の走査の過程において、干渉信号Cを逐次サンプリングして取得したサンプリングデータb
1、b
2、b
3・・・からなる第2サンプリングデータ列D2を取得する。
【0054】
CPU22は、ステップS13a(
図5)において、上述のようにして得られた第1サンプリングデータ列D1に対して、高速フーリエ変換(離散フーリエ変換)を実施して第1中間データDM1を生成する。
更に、CPU22は、ステップS13b(
図5)において、上述のようにして得られた第2サンプリングデータ列D2に対して、高速フーリエ変換(離散フーリエ変換)を実施して第2中間データDM2を生成する。
【0055】
CPU22は、ステップS14(
図5)において、上述のようにして得られた第1中間データDM1及び第2中間データDM2を加算平均して断層画像データDG’を生成する。
【0056】
(作用効果)
以上の通り、第2の実施形態に係るCPU22は、少なくとも、第1サンプリングデータ列D1に対する離散フーリエ変換処理を経て得た第1中間データDM1と、第2サンプリングデータ列D2に対する離散フーリエ変換処理を経て得た第2中間データDM2と、の両方に対して加算平均処理を行い、断層画像データDG’を生成する。
【0057】
ここで、従来技術では、同じ位置で撮影した複数枚の断層画像データを加算平均することでスペックルノイズと呼ばれている干渉ノイズを低減させてシステム感度を向上させる方法が一般に用いられている。このようなノイズ低減手法は、研究レベルだけでなく商用的にも広く使われているが、撮影に要する時間が大幅に増えるという問題があった。
しかし、第2の実施形態に係る光干渉断層撮影装置1によれば、2チャンネルのA/D変換器(第1サンプリング部210、第2サンプリング部211)を用いて同時に2つの断層画像データ(第1中間データDM1、第2中間データDM2)を生成するので、加算平均による高画質の断層画像を、従来の半分の撮影時間で得ることができる。
【0058】
また、スペックルノイズを効果的に低減するためには、撮影対象物Xの同一位置を異なる時刻(タイミング)で複数回撮影する必要があるところ、従来技術においては、当該同一位置に波長走査光Pを繰り返し照射して、当該照射の度に生成される断層画像データを逐次加算平均していく手法が一般的である。しかし、そうすると、例えば1回目の照射のタイミングと2回目の照射との時間間隔が開いてしまうため、その間に生じた撮影対象物Xの状態変化(撮影対象物Xの微小な位置ずれ等)により、加算平均の対象とする各断層画像データの整合性が低下し、かえって画質の低下を招くことも懸念される。
一方、第2の実施形態に係る光干渉断層撮影装置1によれば、第1中間データDM1の基礎となる第1サンプリングデータ列D1と、第2中間データDM2の基礎となる第2サンプリングデータ列D2とは、波長走査光Pの1回の照射中(1回の波長走査の過程中)において、異なるタイミングで(交互に)サンプリングされた2つのサンプリングデータ列である。そうすると、加算平均処理を伴う断層画像の撮影中に撮影対象物Xの状態変化が生じた場合であっても、第1中間データDM1と第2中間データDM2との整合性が維持される。したがって、断層画像の画質を一層向上させることができる。
【0059】
なお、第2の実施形態に係る光干渉断層撮影装置1は、
図5に示す処理フローを実行する場合は、
図3に示す処理フロー(第1の実施形態で説明した処理フロー)を実行する場合に比べ、撮影可能な深さ方向の幅が1/2となる。そこで、第2の実施形態に係る光干渉断層撮影装置1は、オペレータの選択に応じて、深さ方向の幅を重視して
図3に示す処理フローを実行するか、スペックルノイズ低減を重視して
図5に示す処理フローを実行するか、を選択することができる態様として説明した。
しかし、他の実施形態に係る光干渉断層撮影装置1は、上述の態様に限定されることはなく、単に、
図5に示す処理フローのみを実行する態様であってもよい。
また、第2の実施形態に係るCPU22は、波長走査光Pの1回の照射によって取得された第1中間データDM1及び第2サンプリングデータ列DM2に加え、更に、波長走査光Pの2回目以降の照射によって取得された第1中間データDM1、第2サンプリングデータ列DM2を逐次加算平均して、断層画像データDG’を生成してもよい。このようにすることで、より多くの断層画像データが加算平均されるため、スペックルノイズを一層低減させることができる。
【0060】
図7は、第1、第2の実施形態の変形例に係るA/D変換器の構成を説明する図である。
第1、第2の実施形態では、A/D変換器21の外部で分岐された2つの干渉信号Cが、A/D変換器21が有する2つの入力ポート(第1入力ポートCH1、第2入力ポートCH2(
図2))にそれぞれ入力されるものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、
図7に示すように、A/D変換器21は、何れか一方の入力ポート(例えば、第1入力ポートCH1)のみから干渉信号Cを入力し、A/D変換器21の内部で分岐される態様であってもよい。なお、
図7に示すA/D変換器21は、例えば、スイッチSの接続状態に応じて、単一の入力ポートから入力される信号を内部で分岐して2つのサンプリングでサンプリングする場合と、2つの入力ポートのそれぞれから別個の信号を入力してそれぞれをサンプリングする場合とを、使い分けることができる。
なお、この場合においては、抵抗素子R(
図2)の図示を省略しているが、分岐させたときにも入力インピーダンスが50Ωとなるように調整されるものとする。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【解決手段】波長走査型光干渉断層撮影装置は、波長が走査されてなる波長走査光を出力する波長走査光源と、波長の走査の過程において、波長走査光の波数が所定の変化量だけ変化したタイミングで立ち上り及び立ち下りを交互に繰り返すk−clock信号Kを出力する波数等間隔クロック出力部と、波長走査光と、当該波長走査光が撮影対象物にて反射してなる対象物反射光と、の干渉光の強度を示す干渉信号Cを、k−clock信号Kの立ち上りのタイミングでサンプリングする第1サンプリング部210と、干渉信号Cを、k−clock信号Kの立ち下りのタイミングでサンプリングする第2サンプリング部211と、を備える。