特許第5987208号(P5987208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5987208ワイヤハーネス用外装部材及びワイヤハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987208
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス用外装部材及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20160825BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160825BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   H02G3/04 068
   B60R16/02 620A
   B60R16/02 623U
   H01B7/00 301
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-181599(P2012-181599)
(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公開番号】特開2014-39436(P2014-39436A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】稲尾 伸一
(72)【発明者】
【氏名】足立 英臣
(72)【発明者】
【氏名】小久江 健
(72)【発明者】
【氏名】雄鹿 達也
(72)【発明者】
【氏名】勝呂 和晃
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 佳昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博之
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−187426(JP,A)
【文献】 特開2009−143326(JP,A)
【文献】 特開2007−185067(JP,A)
【文献】 特開2010−12868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数本の導電路を覆い車両床下に配置される樹脂製のワイヤハーネス用外装部材において、
管体形状に成型され、且つ管体長手方向に複数の範囲が設定されるとともに、この設定範囲に適応する特性の樹脂材料にて複数の樹脂特性部が成型されてなる
ことを特徴とするワイヤハーネス用外装部材。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネス用外装部材において、
前記複数の樹脂特性部同士は、水密状態で連続する
ことを特徴とするワイヤハーネス用外装部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のワイヤハーネス用外装部材において、
曲げ部分として成型される曲げ管部と、該曲げ管部に連続するとともに曲がらない部分として成型される非曲げ管部とを含み、該非曲げ管部、又は前記曲げ管部と前記非曲げ管部とに跨って前記複数の樹脂特性部が存する
ことを特徴とするワイヤハーネス用外装部材。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のワイヤハーネス用外装部材において、
蛇腹管部又は非蛇腹管部からなり、該蛇腹管部又は非蛇腹管部に前記複数の樹脂特性部が存する、或いは、蛇腹管部と非蛇腹管部との組み合わせからなり、該非蛇腹管部、又は前記蛇腹管部と非蛇腹管部とに跨って前記複数の樹脂特性部が存する
ことを特徴とするワイヤハーネス用外装部材。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4に記載のワイヤハーネス用外装部材と、該ワイヤハーネス用外装部材に覆われる一又は複数本の導電路とを含む
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス用の外装部材、及びこの外装部材を含むワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車の例えばバッテリーとインバータユニットとの間を電気的に接続する部材として、高圧のワイヤハーネスが用いられる。上記バッテリーとインバータユニットとの間を接続するワイヤハーネスは、複数本の高圧導電路と、これらを保護するための外装部材とを含んで構成される(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−12868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術にあっては、樹脂製の外装部材が採用される。ハイブリッド自動車や電気自動車用のワイヤハーネスは、この配索先に車両床下が一般的に含まれることから、ワイヤハーネスを構成する外装部材は外部環境に晒されてしまうことになる。また、外装部材の一部分は、エキゾーストパイプやエキゾーストマニホールドなどの発熱体の熱にも晒されてしまうことになる。従って、従来の外装部材は、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性などを全て兼ね備えた高価な樹脂材料を使用する必要があり、このため外装部材及びワイヤハーネスのコストが嵩んでしまうという問題点を有する。
【0005】
この他、例えば耐熱性に関し、上記の場合は一部分のみに必要になるが、高価な樹脂材料を使用することから、外装部材全体が耐熱性のあるものになってしまい、結果、必要のない部分にも耐熱性を持たせることになってしまう。従って、従来の外装部材にあっては、部位別に樹脂材料の特性を活かし切れてないという問題点を有する。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、コスト低減を図ることが可能な、また、部位別に樹脂材料の特性を活かすことが可能なワイヤハーネス用外装部材及びワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明は、一又は複数本の導電路を覆い車両床下に配置される樹脂製のワイヤハーネス用外装部材において、管体形状に成型され、且つ管体長手方向に複数の範囲が設定されるとともに、この設定範囲に適応する特性の樹脂材料にて複数の樹脂特性部が成型されてなることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のワイヤハーネス用外装部材において、前記複数の樹脂特性部同士は、水密状態で連続することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のワイヤハーネス用外装部材において、曲げ部分として成型される曲げ管部と、該曲げ管部に連続するとともに曲がらない部分として成型される非曲げ管部とを含み、該非曲げ管部、又は前記曲げ管部と前記非曲げ管部とに跨って前記複数の樹脂特性部が存することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のワイヤハーネス用外装部材において、蛇腹管部又は非蛇腹管部からなり、該蛇腹管部又は非蛇腹管部に前記複数の樹脂特性部が存する、或いは、蛇腹管部と非蛇腹管部との組み合わせからなり、該非蛇腹管部、又は前記蛇腹管部と非蛇腹管部とに跨って前記複数の樹脂特性部が存することを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するためになされた請求項5に記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1、2、3又は4に記載のワイヤハーネス用外装部材と、該ワイヤハーネス用外装部材に覆われる一又は複数本の導電路とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された本発明によれば、管体長手方向に複数の範囲を設定し、この設定範囲に適応する特性の樹脂材料にて複数の樹脂特性部を成型してなることから、数多くの特性を兼ね備えた高価な樹脂材料を用いて全体を成型しなくてもワイヤハーネス用外装部材を提供することができ、以て従来に比べコスト低減を図ることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、複数の樹脂特性部を成型してなるワイヤハーネス用外装部材であることから、部位別に樹脂材料の特性を活かすことができるという効果も奏する。
【0013】
請求項2に記載された本発明によれば、水密状態で樹脂特性部同士を連続させることから、水分や薬品等の浸入を防止することができるという効果を奏する。これにより、ワイヤハーネスの状態にあっては、ワイヤハーネス用外装部材に覆われる導電路まで影響を及ぼさないようにすることができる。
【0014】
請求項3に記載された本発明によれば、曲げ部分として成型される曲げ管部と、曲がらない部分として成型される非曲げ管部とを含む構成のワイヤハーネス用外装部材に適用することができるという効果を奏する。
【0015】
請求項4に記載された本発明によれば、蛇腹管部又は非蛇腹管部からなるワイヤハーネス用外装部材に、或いは、蛇腹管部と非蛇腹管部との組み合わせからなるワイヤハーネス用外装部材に適用することができるという効果を奏する。
【0016】
請求項5に記載された本発明によれば、請求項1、2、3又は4に記載のワイヤハーネス用外装部材を含むことから、コスト低減を図ることができるという効果を奏する。また、ワイヤハーネス用外装部材の部位別に必要な特性、すなわち耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性などを持たせることができ、以てより良いワイヤハーネスを提供することができるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るワイヤハーネスの配索状態を示す模式図である。
図2】ワイヤハーネスの構成図である。
図3】外装部材の構成図である。
図4】ワイヤハーネスの固定状態を示す図である。
図5】他の例となる外装部材の構成図である。
図6】更に他の例となる外装部材の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ワイヤハーネスは、一又は複数本の導電路と、この導電路を覆う外装部材とを含んで構成される。外装部材は、部位別に樹脂材料の特性を活かせるように複数の樹脂材料を用いて成型される。
【0019】
具体的には、例えば、耐薬品性のある樹脂材料を用いて成型される部位と、耐薬品性及び難燃性のある樹脂材料を用いて成型される部位と、耐摩耗性のある樹脂材料を用いて成型される部位とを連続させるようにして外装部材は成型される。
【0020】
また、例えば、可撓性を持たせることのできる樹脂材料を用いて成型される部位と、剛性を持たせることのできる樹脂材料を用いて成型される部位とを連続させるようにして外装部材は成型される。
【実施例1】
【0021】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。図1は本発明に係るワイヤハーネスの配索状態を示す模式図である。また、図2はワイヤハーネスの構成図、図3は外装部材の構成図、図4はワイヤハーネスの固定状態を示す図である。
【0022】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車や一般的な自動車であってもよいものとする)に配索されるワイヤハーネスに対し本発明を採用するものとする。
【0023】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示す。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給される。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載される。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載される(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0024】
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス8により接続される。また、バッテリー5とインバータユニット4も高圧のワイヤハーネス9により接続される。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車両床下11に配索される。また、車両床下11に沿って略平行に配索される。車両床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が形成される。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が挿通される。
【0025】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続される。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13が公知の方法で電気的に接続される。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4に対し公知の方法で電気的に接続される。
【0026】
モータユニット3は、モータ及びジェネレータを構成に含むものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含むものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0027】
先ず、ワイヤハーネス9の構成及び構造について説明をする。ワイヤハーネス9は、上記の如くインバータユニット4とバッテリー5とを電気的に接続するための高圧の部材であって、図2に示す如く、高圧同軸複合導電路15(導電路)と、外装部材16(ワイヤハーネス用外装部材)とを含んで構成される。このようなワイヤハーネス9は、外装部材16に対し後付けにて取り付けられるクランプ17(図4参照)を介して車両床下11等に固定される。
【0028】
高圧同軸複合導電路15は、この一本でプラス回路及びマイナス回路を有するように構成される。すなわち、二系統の回路を有するように構成される。具体的には、高圧同軸複合導電路15の中心に位置する断面円形状の第一導電路18と、この第一導電路18の外周を所定厚さで被覆する第一絶縁体19と、第一絶縁体19の外側に設けられる第二導電路20と、この第二導電路20の外周を所定厚さで被覆する第二絶縁体21と、第二絶縁体21の外面に密着する筒状の電磁シールド部材22とを含んで構成される(電磁シールド部材22の外周を所定厚さで被覆するシースを更に含んでもよいものとする)。
【0029】
電磁シールド部材22は、公知の編組や金属箔等からなり、上記の如く高圧同軸複合導電路15の構成に含まれる配置の他、次のような配置であってもよいものとする。すなわち、第二絶縁体21に対し、多少ブカブカの状態となるような配置であってもよいものとする。
【0030】
電磁シールド部材22は、筒状に形成された上で第二絶縁体21の外面に密着させてもよいし、テープ状又はシート状のものを巻き付けて密着させてもよいものとする。
【0031】
導電路に関し、上記高圧同軸複合導電路15以外としては、導体と絶縁体とを含む公知の高圧の電線や、シールド電線、キャブタイヤケーブル、バスバーに絶縁体を設けたもの等が挙げられるものとする。尚、本数は一又は複数本であるものとする。
【0032】
高圧同軸複合導電路15は、本実施例において二系統であるが、これに限らず三系統…、n系統であってもよいものとする(同軸で一本構成となるように外側へ回路を増やしていけばn系統になる)。
【0033】
図2及び図3において、外装部材16は、高圧同軸複合導電路15を収容保護するための(覆うための)管体であって、曲げ管部23と、非曲げ管部24とを有し、この全体が略直線状に出来上がるように樹脂成型される(曲げ管部23及び非曲げ管部24は、本実施例で示す図の場合、蛇腹管部及び直管部(非蛇腹管部)と読み替えてもよいものとする)。外装部材16は、管体形状に樹脂成型される。
【0034】
曲げ管部23は、ワイヤハーネス9の輸送時や経路配索時に曲げ部分となり、この曲げ管部23に非曲げ管部24が連続する。非曲げ管部24は、曲がらない部分として設けられる。曲げ管部23及び非曲げ管部24は、車両取付形状に合わせた位置及び長さにそれぞれ配置形成される。曲げ管部23及び非曲げ管部24は、これらの断面形状が合うように形成される。すなわち、曲げ管部23が断面円形なら非曲げ管部24も断面円形、略矩形なら略矩形というように形成される。
【0035】
曲げ管部23及び非曲げ管部24に関し、本実施例においてはそれぞれ複数有するが、数は特に限定されないものとする。すなわち、曲げ管部23を一つにするとともに、この両側に非曲げ管部24を一つずつ連続形成するような数であってもよいものとする。或いは、非曲げ管部24を一つにするとともに、この両側に曲げ管部23を一つずつ連続形成するような数であってもよいものとする。
【0036】
曲げ管部23は、周方向の凹部25及び凸部26を複数連続して有する蛇腹管形状に形成される。曲げ管部23は、曲げ範囲に応じてこの長さが設定される。曲げ管部23は、柔軟性(可撓性)を有して曲げ可能な部分に形成される。曲げ管部23は、本実施例において公知のコルゲートチューブと同様の部分に形成される。尚、曲げ管部23は、曲げ可能な形状であれば、上記蛇腹管形状に限定されないものとする。
【0037】
曲げ管部23は、後述するが、樹脂特性部27としても樹脂成型される(図3参照)。言い換えれば、樹脂特性部27は曲げ管部23に相当する部分として存する。
【0038】
曲げ管部23は、上記の如くコルゲートチューブと同様の形状部分を有することから、外装部材16は「コルチューブ」や「部分形成コルゲートチューブ」などと呼ぶことができるものとする。
【0039】
外装部材16は、この管軸方向に沿ってスリットを設けない(腹割きのない)形状に形成される。スリットを設けない理由としては、剛性や強度を確保する点が挙げられる。また、水分の浸入を防止して防水性の向上を図る点も挙げられる。さらには、例えば撓ませた部分において高圧同軸複合導電路15のはみ出しを生じさせない点も挙げられる。
【0040】
非曲げ管部24は、非曲げ管部本体28を有する。この非曲げ管部本体28は、上記の如く輸送時や経路配索時に曲がらない部分として形成される(曲がらない部分とは、可撓性を積極的に持たせない部分という意味である)。非曲げ管部本体28は、断面円形のストレートチューブ形状に形成される(断面円形に限らず、楕円形や長円形、略矩形等であってもよいものとする)。非曲げ管部24は、非曲げ管部本体28がストレートチューブ形状であることから、「直管部」や「ストレート部」とも呼ぶことができるものとする。
【0041】
非曲げ管部本体28は、この肉厚が必要最低限の強度を有する薄肉に設定される。非曲げ管部本体28には、放熱性や剛性を高める部分、さらには耐チッピング性能を確保する部分等を必要に応じて形成してもよいものとする。
【0042】
外装部材16は、非曲げ管部24として、車両床下11(図1参照)に配索される床下用非曲げ管部29を有する。この床下用非曲げ管部29は、車両床下11に配索されることから(例えばリーンホースに沿わせるように配索されることから)長尺に形成される。
【0043】
非曲げ管部24は、後述するが、樹脂特性部30、31、32としても樹脂成型される(図3参照)。言い換えれば、樹脂特性部30、31、32は非曲げ管部24に相当する部分として存する。
【0044】
以下、非曲げ管部24の樹脂特性部30、31、32や、曲げ管部23の樹脂特性部27について説明をする。
【0045】
図3において、外装部材16は、この管体長手方向に複数の範囲a〜iを設定した上で樹脂成型される。複数設定した範囲a〜iは、外装部材16において耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性などの樹脂材料の特性を持たせたい部位に相当する。また、複数設定した範囲a〜iは、可撓性を持たせたい部位や、剛性を持たせたい部位に相当する。
【0046】
本実施例において、範囲a、c、g、iは、曲げ管部23に相当する部位であり、樹脂特性部27として成型される。また、範囲b、d、e、f、hは、非曲げ管部24に相当する部位であり、樹脂特性部30、31、32として成型される。尚、範囲d、e、fは、非曲げ管部24のうち床下用非曲げ管部29に相当する部位であり、範囲d、fが樹脂特性部31として、範囲eが樹脂特性部32として成型される。このように範囲a〜iを設定し、そして、これに適応する特性の樹脂材料を選定することで、樹脂特性部27、30、31、32が成型される。
【0047】
本実施例において、範囲a〜iは、曲げ管部23及び非曲げ管部24に跨って設定される。尚、範囲設定は、例えば非曲げ管部24のみであってもよいものとする(床下用非曲げ管部29のみであってもよいものとする)。
【0048】
床下用非曲げ管部29において、樹脂特性部31、32は水密状態で連続するように成型される。水密状態で連続させるには、例えば2色成型が好適な例として挙げられる。また、図3(b)に示す如く連結部品33を後付けして連続させることも有効である。特に図示しないが、連続させた部分を補強部品等にて補強することも有効である。上記の他、それぞれの樹脂特性部31、32等を溶着、溶接、テープ巻きなどで連続させることも有効である。
【0049】
樹脂特性部27、30、31、32を成型するための樹脂材料に関し、樹脂材料とは熱可塑性プラスチックを指すものとする。熱可塑性プラスチックは、汎用樹脂とエンプラとスーパーエンプラとに分けられる。
【0050】
汎用樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられる。また、エンプラとしては、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられる。さらに、スーパーエンプラとしては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などが挙げられる。
【0051】
ポリエチレン(PE)は、耐薬品性、電気絶縁性、耐水性が良好な樹脂材料である。ポリプロピレン(PP)は、耐薬品性、機械的強度、耐熱性が良好な樹脂材料である。ABS樹脂は、耐熱性、耐摩耗性、寸法安定性、電気特性が良好な樹脂材料である。ポリエチレンテレフタレート(PET)は、摺動特性、機械特性、電気特性、耐薬品性が良好な樹脂材料である。
【0052】
ポリアミド(PA)は、機械的強度、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性が良好な樹脂材料である。ポリアセタール(POM)は、寸法安定性、剛性、耐摩耗性、電気絶縁性が良好な樹脂材料である。ポリカーボネート(PC)は、耐衝撃性、寸法安定性、電気特性、耐寒性が良好な樹脂材料である。ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、摺動特性、耐衝撃性、電気絶縁性が良好な樹脂材料である。
【0053】
ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、耐熱性、機械的強度、耐薬品性、難燃性、寸法安定性が良好な樹脂材料である。
【0054】
外装部材16は、複数の樹脂特性部27、30、31、32を成型してなることから、部位別に上記樹脂材料の特性を活かすことができる。
【0055】
図4において、クランプ17は、後付け部品であって、外装部材16(非曲げ管部24)の外形形状に合わせて形成される剛性取り付け部34と、この剛性取り付け部34に連続する片持ち形状の固定部35とを有する。剛性取り付け部34は、半割形状の管体取付部36、37と、これら管体取付部36、37を連結するヒンジ38とを有する。剛性取り付け部34は、剛性を有し曲がらない部分として形成される。管体取付部36、37には、これらを嵌合状態にする図示しない嵌合部が形成される。
【0056】
固定部35には、ボルト挿通孔39が貫通形成される。ワイヤハーネス9は、ボルト挿通孔39に挿通されたボルト40を介して車両床下11等の固定対象41に取り付け固定される(固定対象41の形状は一例であるものとする)。ワイヤハーネス9は、固定対象41に対し取り付け固定されると、図4に示す如く経路配索が完了する。
【0057】
尚、後付け部品に関し、上記クランプ17以外にクリップやグロメット、プロテクタ等が挙げられるものとする。
【0058】
図4において、ワイヤハーネス9は、外装部材16に高圧同軸複合導電路15を挿通し、この後に外装部材16の所定位置にクランプ17を取り付けることにより製造される。また、ワイヤハーネス9の両端末位置に公知のシールドコネクタ42をそれぞれ設けることにより製造される。
【0059】
一方のシールドコネクタ42はインバータ側のシールドコネクタであり、他方のシールドコネクタ42はバッテリー側のシールドコネクタである。シールドコネクタ42は、外装部材16から引き出された高圧同軸複合導電路15の端末43に接続固定される。
【0060】
以上、図1ないし図4を参照しながら説明してきたように、ワイヤハーネス9によれば、高圧同軸複合導電路15と、この高圧同軸複合導電路15を覆う外装部材16とを含んで構成される。外装部材16は、管体長手方向に複数の範囲a〜iを設定し、この設定範囲a〜iに適応する特性の樹脂材料にて複数の樹脂特性部27、30、31、32を成型してなることから、数多くの特性を兼ね備えた高価な樹脂材料を用いて全体を成型しなくても外装部材16を提供することができる。すなわち、従来に比べコスト低減を図ることができる。
【実施例2】
【0061】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。図5は他の例となる外装部材の構成図である。
【0062】
図5において、外装部材51は、この全体が蛇腹管形状に形成される。すなわち、全体が蛇腹管部52として成型される。また、外装部材51は、この管体長手方向に複数の範囲a〜iを設定した上で樹脂成型される。複数設定した範囲a〜iは、外装部材51において耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性などの樹脂材料の特性を持たせたい部位に相当する。外装部材51には、設定範囲a〜iに適応する特性の樹脂材料にて複数の樹脂特性部53a〜53iが成型される。
【0063】
実施例2の外装部材51によれば、数多くの特性を兼ね備えた高価な樹脂材料を用いて全体を成型したものでないことから、従来に比べコスト低減を図ることができる。
【0064】
また、外装部材51によれば、複数の樹脂特性部53a〜53iからなることから、部位別に樹脂材料の特性を活かすことができる。
【実施例3】
【0065】
以下、図面を参照しながら実施例3を説明する。図6は更に他の例となる外装部材の構成図である。
【0066】
図6において、外装部材61は、この全体がストレートチューブ形状(非蛇腹管形状)に形成される。すなわち、全体が非蛇腹管部62として成型される。また、外装部材61は、この管体長手方向に複数の範囲a〜iを設定した上で樹脂成型される。複数設定した範囲a〜iは、外装部材61において耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性などの樹脂材料の特性を持たせたい部位に相当する。また、複数設定した範囲a〜iは、曲げたい部位や、剛性を持たせたい部位にも相当する。
【0067】
尚、曲げたい部位の範囲a、c、g、iは、加熱により経路配索に応じた曲げを行う部位として設定されるものとする。外装部材61には、設定範囲a〜iに適応する特性の樹脂材料にて複数の樹脂特性部63a〜63iが成型される。
【0068】
実施例3の外装部材61によれば、数多くの特性を兼ね備えた高価な樹脂材料を用いて全体を成型したものでないことから、従来に比べコスト低減を図ることができる。
【0069】
また、外装部材61によれば、複数の樹脂特性部63a〜63iからなることから、部位別に樹脂材料の特性を活かすことができる。
【0070】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0071】
1…ハイブリッド自動車、 2…エンジン、 3…モータユニット、 4…インバータユニット、 5…バッテリー、 6…エンジンルーム、 7…自動車後部、 8、9…ワイヤハーネス、 10…中間部、 11…車両床下、 12…ジャンクションブロック、 13…後端、 14…前端、 15…高圧同軸複合導電路(導電路)、 16…外装部材(ワイヤハーネス用外装部材)、 17…クランプ、 18…第一導電路、 19…第一絶縁体、 20…第二導電路、 21…第二絶縁体、 22…電磁シールド部材、 23…曲げ管部、 24…非曲げ管部、 25…凹部、 26…凸部、 27、30、31、32…樹脂特性部、 28…非曲げ管部本体、 29…床下用非曲げ管部、 33…連結部品、 34…剛性取り付け部、 35…固定部、 36、37…管体取付部、 38…ヒンジ、 39…ボルト挿通孔、 40…ボルト、 41…固定対象、 42…シールドコネクタ、 43…端末、 51…外装部材(ワイヤハーネス用外装部材)、 52…蛇腹管部、 53a〜i…樹脂特性部、 61…外装部材(ワイヤハーネス用外装部材)、 62…非蛇腹管部、 63a〜i…樹脂特性部、 a〜i…範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6