特許第5987224号(P5987224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987224
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20160825BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   F15B15/10 H
   B25J19/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-159670(P2012-159670)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-20462(P2014-20462A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月26日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔発行者名〕 一般社団法人日本機械学会 〔刊行物名〕 No.12−3 ロボティクス・メカトロニクス講演会2012講演概要集 〔発行年月日〕 平成24年 5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】西岡 靖貴
(72)【発明者】
【氏名】川村 貞夫
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第1579183(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0066810(US,A1)
【文献】 特開2005−155764(JP,A)
【文献】 実開昭48−087444(JP,U)
【文献】 特表2015−509578(JP,A)
【文献】 特表2013−527041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/10
B25J 19/00
F16J 3/00− 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜状のプラスティック材料により形成される第1シート部材と、薄膜状のプラスティック材料により形成され、且つ前記第1シート部材より長さ方向及び幅方向の寸法が長い第2シート部材とを用いて、内部に作動流体を収納可能な流体室を形成した袋状構造の流体圧アクチュエータであって、
前記流体室へ作動流体を給排するための給排孔を備え、
前記第2シート部材は、外側に位置する外側プリーツ部と内側に折り込まれてなる内側プリーツ部とから構成されるプリーツ部が前記長さ方向に複数形成されており、
前記外側プリーツ部の前記長さ方向の寸法は、前記内側プリーツ部の前記長さ方向の寸法よりも長く形成されていることを特徴とする流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1シート部材及び前記第2シート部材は、低密度ポリエチレン(LDPE)又はポリプロピレン(PP)により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記プリーツ部を形成するためのプリーツ折り線は、前記幅方向に対して所定角度傾いた方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧によって屈曲、伸展する流体圧アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、駆動エネルギーとして気体や液体等の流体を用いて作動させる流体圧式のアクチュエータが様々提案されている。
【0003】
このようなアクチュエータの素材としては、例えば、金属材料やゴム等の弾性材料等を用いたもの等がある。しかしながら、金属材料を用いた場合には、屈曲動作等がなされると、塑性変形が起こってしまうため、耐久性が低下する。また、硬い材料で且つ質量も重くなるため、人と直接触れるような部分に用いる場合には、安全性を保証するために運動速度等の厳密な制御が必要となる。
【0004】
一方、ゴム材料は、柔らかいため、人と直接触れるような生活機器やリハビリ機器等の分野において多く利用されている。ゴム材料を用いたアクチュエータとしては、例えば、片側を蛇腹形状に形成した袋状構造のアクチュエータの内部チャンバーに流体圧を印加することによって、伸長量の差を利用して屈曲動作を実現させるものがある(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、一定圧の流体を封入して形成した構造骨格の接続部分に、内圧が低く折れ曲がった状態から加圧することにより、形状回復力に起因する折れ曲がり部のトルクを駆動力として利用するアクチュエータを複数配置した機械システムが開示されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
また、折り紙を用いて形成した立体構造の内部に流体圧を印加することによって、折り目に沿うように伸長させるアクチュエータも開示されている(例えば、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Shuichi Wakimoto, Keiko Ogura, Koichi Suzumori, Yasutaka Nishioka,“Miniature Soft Hand with Curling Rubber Pneumatic Actuators”, 2009 IEEEInternational Conference on Robotics and Automation, pp.556-561, 2009.
【非特許文献2】丸山大輔、木村仁、小関道彦、伊能教夫、「水力学的骨格を利用した柔軟な機械システム(非線形有限要素解析に基づいた応力集中の回避と駆動力特性の比較)」、日本フルードパワーシステム学会論文集、Vol.41、no.3、pp.1-9、2010.
【非特許文献3】Ramses V. Martinez, Carina R. Fish, Xin Chen, andGeorge M. Whitesides, “Elastomeric Origami: Programmable Paper-ElastomerComposites as Pneumatic Actuators", Advanced Functional Materials, Vol.22,Issue 7, pp.1376-1384, 2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1のようなゴム材料からなるアクチュエータでは、ゴム材料を伸長させることによって変位を発生させるため、その圧力に耐えるだけの耐久性を持たせる必要がある。そのため、アクチュエータを作製する場合には、アクチュエータの大きさに応じてゴム材料の厚みを増やす必要があるため、自重だけで重くなる。また、ゴム材料の場合には弾性が高いため、低圧での駆動が難しく、比較的大きな流体圧を印加するためのポンプ等が必要となる。また、非特許文献2では、屈曲動作を実現するために、多数の袋状構造のアクチュエータが必要となるので、構造が複雑になるとともに製造コストも高くなる。また、非特許文献3では、折り紙を用いてアクチュエータを作製しているため、そのままでは、流体が外部に漏れないようシールすることが困難であり、ゴム材料等のシール材を別途用いる必要がある。また、折り紙で形成されているため、比較的大きなアクチュエータを構成することが困難である。
【0009】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みてなされたものであって、軽量且つ簡易な構成であるとともに、低圧で駆動させることができる流体圧アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の流体圧アクチュエータは、薄膜状のプラスティック材料により形成される第1シート部材と、薄膜状のプラスティック材料により形成され、且つ前記第1シート部材より長さ方向及び幅方向の寸法が長い第2シート部材とを用いて、内部に作動流体を収納可能な流体室を形成した袋状構造の流体圧アクチュエータであって、前記流体室へ作動流体を給排するための給排孔を備え、前記第2シート部材は、外側に位置する外側プリーツ部と内側に折り込まれてなる内側プリーツ部とから構成されるプリーツ部が前記長さ方向に複数形成されており、前記外側プリーツ部の前記長さ方向の寸法は、前記内側プリーツ部の前記長さ方向の寸法よりも長く形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の流体圧アクチュエータは、前記第1シート部材及び前記第2シート部材が、低密度ポリエチレン(LDPE)又はポリプロピレン(PP)により形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の流体圧アクチュエータは、前記プリーツ部を形成するためのプリーツ折り線が、前記幅方向に対して所定角度傾いた方向に沿って設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のアクチュエータは、第1シート部材と、該第1シート部材より長さ方向及び幅方向の寸法が長く、且つプリーツ部が前記長さ方向に複数形成されている第2シート部材とを用いて、内部に流体室が設けられるように袋状構造に形成されているので、給排孔から作動流体を流体室へと供給して加圧すれば、各プリーツ部が広がって第2シート部材が膨らむことにより、容易に屈曲動作を実現することができる。このように請求項1記載のアクチュエータによれば、簡易な形状設計で屈曲動作を実現することができるので、製造コストを軽減することができる。また、プリーツ部を構成する外側プリーツと内側プリーツの長さ方向の寸法をそれぞれ調整することで、容易に様々な屈曲動作を実現することができるので、様々な用途に対応することができる。また、薄膜状のプラスティック材料により第1シート部材及び第2シート部材は、形成されているので、軽量化を図ることができるとともに、流体室に供給される作動流体の圧力に対しても十分な強度を持たせることができる。従って、比較的大きなアクチュエータを作製する際にも重量を抑えることができる。また、プラスティック材料は、ゴム材料のような弾性を示さないため、比較的低い流体圧で屈曲動作を行わせることができるので、省エネルギー化及び小型化を図ることができる。
【0014】
請求項2記載の流体圧アクチュエータによれば、第1シート部材及び第2シート部材は、ヤング率がゴム材料程は低くなく、ゴム材料のような弾性を示さない低密度ポリエチレン又はポリプロピレンにより形成されているので、より効率的に軽量化を図ることができるとともに、流体室に供給される作動流体の圧力に対しても十分な強度を持たせることができる。
【0015】
請求項3記載の流体圧アクチュエータによれば、プリーツ部を形成するためのプリーツ折り線は、幅方向に対して所定角度傾いた方向に沿って設けられているので、給排孔から作動流体を流体室へと供給して加圧した際に、傾き角度に応じて螺旋状に屈曲させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る流体圧アクチュエータの一例を示す概略側面図である。
図2】第1シート部材及びプリーツ部形成前の第2シート部材の一例について説明するための概略平面図である。
図3】第1シート部材及びプリーツ部形成後の第2シート部材の一例について説明するための概略斜視図である。
図4図1のA−A線断面図である。
図5】流体圧アクチュエータの加圧時におけるプリーツ部の動作の一例について説明するための概略説明図である。
図6】流体圧アクチュエータの屈曲動作の一例を示す概略側面図である。
図7】第2シート部材の他の一例について説明するための概略平面図である。
図8】流体圧アクチュエータによる物体の把持動作の一例を示す図である。
図9】第2シート部材の更に他の一例について説明するための概略平面図である。
図10図9の第2シート部材を用いた場合の流体圧アクチュエータの屈曲動作の一例を示す概略側面図である。
図11】本発明の実施形態に係る流体圧アクチュエータを用いた拮抗駆動アームの一例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る流体圧アクチュエータ1について、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る流体圧アクチュエータ1は、図1から図4に示すように、第1シート部材2と第2シート部材3とを用いて、内部に作動流体を収納可能な流体室4が設けられるように袋状構造に形成されたものである。この流体圧アクチュエータ1には、流体室4に作動流体を給排できるよう給排孔5が設けられている。
【0018】
作動流体としては、例えば、空気等の気体を用いることができるが、これに限定されるものではなく、水等の液体を用いることも可能である。作動流体は、詳しくは図示しないが、作動流体の供給源である流体ポンプ等から給排孔5に接続されているチューブ6を介して流体室4へと適宜供給及び流体室4から排出できるように制御されている。
【0019】
第1シート部材2及び第2シート部材3は、それぞれ薄膜状のプラスティック材料によって形成されている。第1シート部材2及び第2シート部材3に用いられるプラスティック材料としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)又はポリプロピレン(PP)を用いることが好適である。低密度ポリエチレン及びポリプロピレンは、従来用いられていたゴム材料に比べてヤング率が若干高く、またゴム材料のような弾性を示さないので、流体室4に供給される作動流体の圧力に対しても十分な強度を持たせつつ、低い流体圧で屈曲動作を実現させることができる。
【0020】
第1シート部材2及び第2シート部材3は、図2及び図3に示すように、x−y平面視において略長方形状をなすシート部材からなるものであって、第2シート部材3の長さ方向(x軸方向)の寸法lは、第1シート部材2の長さ方向の寸法lより長く、第2シート部材3の幅方向(y軸方向)の寸法wは、第1シート部材の幅方向の寸法wより長く形成されている。尚、ここでは、第1シート部材2及び第2シート部材3の長さ方向をx軸方向、幅方向をy軸方向、厚み方向をz軸方向に対応させている。
【0021】
第2シート部材3は、図1及び図3に示すように、長さ方向に複数のプリーツ部7が形成されている。このプリーツ部7は、外側に位置する外側プリーツ部71と内側に折り込まれている内側プリーツ部72とにより構成されている。外側プリーツ部71及び内側プリーツ部72は、図2及び図3に示すように、プリーツ部7の山部となるプリーツ折り線L1と谷部となるプリーツ折り線L2で折り返されることにより形成される。プリーツ折り線L1及びプリーツ折り線L2は、プリーツ部7が形成される際に、外側プリーツ部71の長さ方向の寸法aが内側プリーツ部72の長さ方向の寸法bよりも長くなるように設けられている。
【0022】
第2シート部材3がn個のプリーツ部7で構成されているような場合には、図3に示すように、第2シート部材3の長さ方向の寸法lは、l=(a+b)nで表わされ、第1シート部材2の長さ方向の寸法lは、l=(a−b)(n−1)+aで表わされる。但し、l>lである。尚、外側プリーツ部71の長さ方向の寸法aと内側プリーツ部72の長さ方向の寸法bは、各プリーツ部7において全て同じ寸法である必要はなく、図7に示す第2シート部材3aのように、プリーツ部7aを構成する外側プリーツ部71aの長さ方向の寸法aと内側プリーツ部72aの長さ方向の寸法bが、それぞれ他のプリーツ部7b、7cを構成する外側プリーツ部71b、71cの長さ方向の寸法a、aと内側プリーツ部72b、72cの長さ方向の寸法b、bと異なっていても良い。但し、それぞれのプリーツ部7a、7b、7cにおいては、a>b、a>b、a>bである必要がある。このような外側プリーツ部71の長さ方向の寸法a、内側プリーツ部72の長さ方向の寸法b、及びプリーツ部7の数nという各パラメータを調整することで、様々な屈曲動作を容易に実現することができる。
【0023】
また、このような表面積がそれぞれ異なる第1シート部材2と第2シート部材3を用いて袋状構造を形成する場合には、内部に作動流体を収納するための空間(流体室4)ができるように、図2及び図3に斜線で示している第1シート部材2の隅部(溶着部)21に第2シート部材3の隅を合わせた状態で熱溶着させる。この際、第1シート部材2の溶着部21に合わせられた第2シート部材3の外側プリーツ部71の長さ方向の寸法aと内側プリーツ部72aの長さ方向の寸法bが重なる部分も熱溶着される。これにより、作動流体を流体室4から外部に漏れないようにすることができる。尚、図2及び図3では、給排孔5を設けるために、第1シート部材2と第2シート部材3とを熱溶着しない非溶着部22を設けているが、第1シート部材2又は第2シート部材3の一部を貫通させて予め給排孔5を設けておき、第1シート部材2の隅と第2シート部材3の隅を全て熱溶着するようにしても良い。また、第1シート部材2と第2シート部材3を用いて袋状構造を形成するための方法は、熱溶着に限定されるものではなく、作動流体が内部に設けられる流体室4から外部に漏れないように第1シート部材2と第2シート部材3とを密着できる方法であれば良い。
【0024】
本実施形態では、図1に示すように、給排孔5の位置が流体圧アクチュエータ1の端部側に設けられているが、給排孔5の位置は特に限定されるものではなく、流体室4内に作動流体が供給できるように設けられていれば良く、この給排孔5の位置を変えることで流体圧アクチュエータ1の屈曲動作の仕方を調整することができる。また、給排孔5の数も1つに限定されるものではなく、複数箇所に設けられていても良い。また、本実施形態では、チューブ6は給排孔5と接続されている例を示しているが、チューブ6を給排孔5から流体室4内へと通して設けるようにしても良い。
【0025】
以下、図1に示す流体圧アクチュエータ1の屈曲動作の一例について、図5及び図6を参照しつつ説明する。通常、流体室内4に作動流体が供給されていない場合には、図1に示すように流体圧アクチュエータ1は、各プリーツ部7が広がっておらず伸展している状態である。
【0026】
このような状態において、流体ポンプ(不図示)からチューブ6及び給排孔5を介して流体室4に作動流体が供給されて加圧されると、第1シート部材2と第2シート部材3は、表面積が異なるため、2枚のシート部材2,3に発生する力に差が生じる。そして、第1シート部材2より表面積が大きい第2シート部材3の長さ方向に複数形成されている各プリーツ7がそれぞれ広がることにより、流体圧アクチュエータ1は、図6に示すように、内側に第1シート部材2が位置し、外側に第2シート部材3が位置するような状態で屈曲する。尚、図6に示す屈曲状態の流体圧アクチュエータ1の流体室4から作動流体を給排孔5を介して排出することにより、流体圧アクチュエータ1を図1に示すような伸展状態に戻すことができる。
【0027】
図5は、図6に示すように流体圧アクチュエータ1を屈曲させるために流体室4に作動流体を供給して加圧させた際のプリーツ部7の動作の一例を示すものである。図5に示すように、プリーツ部7のA,B,C,Dは、熱溶着によって拘束される点であり、A,B,C,Dは幅方向中央部の拘束されていない点である。Bは、プリーツ部7のプリーツ折り線L1(山部)上の点であり、このBと重なる点がDである。また、Cは、プリーツ部7のプリーツ折り線L2(谷部)上の点であり、このCと重なる点がAである。作動流体が流体室4に供給されていない加圧前の状態では、BとD、及び、CとAもそれぞれ重なっている。
【0028】
このような状態から流体室4に作動流体が供給されて加圧されると、図5に示すように、A,B,C,Dの各点は移動する。この際、各点A,B,C,Dは、A,B,C,Dが溶着されていることによりy軸方向に距離の拘束があるため、x−z平面においては円弧軌道上を移動する。このように、1つのプリーツ部7の広がりによって、dθ分屈曲することが可能となるので、複数のプリーツ部7が形成されることで、図6に示すように、大きな屈曲動作を実現することができる。
【0029】
流体圧アクチュエータ1は、このような屈曲動作によって、例えば、図8に示すように、円筒形状の物体8や円盤形状の物体9等を把持することも可能である。尚、図8に示す流体圧アクチュエータ1は、第1シート部材2及び第2シート部材3の材料として低密度ポリエチレンを使用したものであって、長さ方向の寸法lが300mm、幅方向の寸法wが50mm、チューブを含む質量が13.2gのものである。図8では、この流体圧アクチュエータ1に作動流体として空気を用いて約0.1気圧(10kPa)の圧力を印加した際の様子を示している。
【0030】
以上のように、流体圧アクチュエータ1では、簡易な形状設計で屈曲動作を実現することができるので、製造コストを軽減することができる。また、流体圧アクチュエータ1を構成する第1シート部材2及び第2シート部材3は、金属材料よりも比重が小さく、ゴム材料と同程度であり、軽量且つ柔軟な材料であって、比較的高い出力/重量比を実現することができるので、人が使用又は装着するような生活器具や健康機器等にも有効に利用することができる。また、このような流体圧アクチュエータ1では、比較的低い圧力(1気圧以下)で屈曲動作を実現することができるので、作動流体の供給源として小型のポンプ等を用いて全体のシステムを小型化することができる。また、このような軽量な第1シート部材2及び第2シート部材3を用いて流体圧アクチュエータ1を構成しているので、水中下で流体圧アクチュエータ1を用いるような場合に、水を作動流体として用いることにより、水中重量をほぼ中性浮力とすることができる。
【0031】
図9は、図10に示すように流体圧アクチュエータ1aを螺旋状に屈曲させるための第2シート部材3bの構成を示すものである。流体圧アクチュエータ1aを螺旋状に屈曲させる場合には、図9に示すように、幅方向(y軸方向)に対して所定角度α傾いた方向に沿って、プリーツ部7が形成された際に山部となるプリーツ折り線L3と谷部となるプリーツ折り線L4とを設けるようにすれば良い。このように設けられたプリーツ折り線L3及びプリーツ折り線L4を折り返して形成された第2シート部材3bを用いた流体圧アクチュエータ1aの流体室4に作動流体を供給して加圧することで、図10に示すような螺旋状の屈曲動作を実現することができる。
【0032】
図11は、本発明に係る流体圧アクチュエータ1を拮抗駆動アーム10に用いた応用例の一例である。図11に示すように、2つの流体圧アクチュエータ1の第1シート部材2同士が対向する状態で貼り合わせ構成されるものである。図11に示すように、拮抗駆動アーム10では、どちらか一方の流体圧アクチュエータ1に作動流体を供給することによって、矢印で示す方向の2方向に屈曲動作を行わせることができる。図11では、2つの流体圧アクチュエータ1を利用した例を示しているが、このように複数の流体圧アクチュエータ1を組み合わせることで、様々な動作を実現することができる。
【0033】
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0034】
1、1a 流体圧アクチュエータ
2 第1シート部材
3、3a、3b 第2シート部材
4 流体室
5 給排孔
6 チューブ
7、7a〜7d プリーツ部
71 外側プリーツ部
72 内側プリーツ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11