特許第5987232号(P5987232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987232
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】パーフルオロエーテルシール剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/336 20060101AFI20160825BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20160825BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20160825BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   C08G65/336
   C08L71/02
   C08K3/00
   C09K3/10 G
【請求項の数】15
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2015-525471(P2015-525471)
(86)(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公表番号】特表2015-529718(P2015-529718A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】US2013052180
(87)【国際公開番号】WO2014022207
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2015年3月25日
(31)【優先権主張番号】13/561,202
(32)【優先日】2012年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502328466
【氏名又は名称】ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カイ、ユエシャオ
(72)【発明者】
【氏名】リン、レネー
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、シャンドラ ビー.
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−178835(JP,A)
【文献】 特開平09−263639(JP,A)
【文献】 特開2005−113004(JP,A)
【文献】 特開2012−072272(JP,A)
【文献】 特開平11−116685(JP,A)
【文献】 特開2002−322362(JP,A)
【文献】 特開2001−038740(JP,A)
【文献】 特開平08−245652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00−65/48
C08L 1/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(3)の構造を有する、アルコキシシラン末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテルを含む、湿気硬化性組成物
D−CH−CH−PFE−CH−CH−A’−CH−CH−PFE−CH−CH−D (3)
式中、−A’−は、式(2b):
【化1】

(式中、
各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、
nは1から6の整数である)
で表される部分であり、
各−CH−CH−PFE−CH−CH−は、アルケニル末端パーフルオロエーテルCH=CH−PFE−CH=CHからの誘導基であり、−PFE−はパーフルオロエーテル基を含み、
各−Dは、独立して、−Si(−R(−OR3−pの構造を有する部分であり、
式中、pは、独立して0、1及び2から選択され、
各Rは、独立してC〜Cアルキルから選択される
【請求項2】
アルコキシシラン末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテルが、
(a)式(1)の化合物を含む、アルケニル末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテル
CH=CH−PFE−CH−CH−A’−CH−CH−PFE−CH=CH (1)
[式中、−A’−は、式(2b):
【化2】

(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、
nは1から6の整数である。)
で表される部分を含み、
各CH=CH−PFE−CH−CH−は、アルケニル末端パーフルオロエーテルCH=CH−PFE−CH=CHからの誘導基であり、−PFE−はパーフルオロエーテル基を含む。]、及び
(b)式(4)のアルコキシシラン
H−Si(−R(−OR3−p (4)
(式中、pは0、1及び2から選択され、
各Rは、独立してC〜Cアルキルから選択される。)
を含む反応物質の反応生成物を含む、請求項1に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項3】
式(5):
(RO−)3−p(R−)Si−CH−CH−PFE−CH−CH−Si(−R(−OR3−p (5)
(式中、各pは、独立して、0、1及び2から選択され、
各Rは、独立してC〜Cアルキルから選択され、
−CH−CH−PFE−CH−CH−は、アルケニル末端パーフルオロエーテルCH=CH−PFE−CH=CHに由来し、−PFE−はパーフルオロエーテル基を含む。)
のアルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルを含む、請求項1に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項4】
(a)アルケニル末端パーフルオロエーテル、及び
(b)式(9)の構造を有する化合物を含む、ヒドロシラン末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテル
A−CH−CH−PFE−CH−CH−A’−CH−CH−PFE−CH−CH−A (9)
[式中、各A−は、独立して、式(2c):
【化3】

(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(R3−m(H)から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、mは、0、1及び2から選択され、
nは、1から6の整数である。)
で表される部分から選択され、
−A’−は、式(2b):
【化4】

(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(R3−m(H)から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、mは、0、1及び2から選択され、
nは、1から6の整数である。)
で表される部分を含み、
−CH−CH−PFE−CH−CH−は、アルケニル末端パーフルオロエーテルCH=CH−PFE−CH=CHからの誘導基であり、−PFE−はパーフルオロエーテル基を含む。]
を含む付加硬化性組成物。
【請求項5】
アルケニル末端パーフルオロエーテルが、−[−CF−CF−CF−O−]−、−CF−O−[−CF−CF−O−]−[−CF−O−]−CF−、−[−CF(CF)−CF−O−]−、−[−CF−CF(CF)−O−]−、及び前記のもののいずれかの組み合わせ(式中、各kは、独立して2から100の整数である。)から選択されるパーフルオロエーテル基を含む、請求項4に記載の付加硬化性組成物。
【請求項6】
アルケニル末端パーフルオロエーテルが二官能性である、請求項4に記載の付加硬化性組成物。
【請求項7】
ヒドロシラン末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテルが、3から6の平均ヒドロシラン官能価を有する、請求項4に記載の付加硬化性組成物。
【請求項8】
ヒドロシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルを含む、請求項4に記載の付加硬化性組成物。
【請求項9】
ヒドロシラン末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテルが、
(a)アルケニル末端パーフルオロエーテル、及び
(b)ヒドロシラン末端シロキサン
を含む反応物質の反応生成物を含む、請求項4に記載の付加硬化性組成物。
【請求項10】
シール剤として配合された、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物で封止された隙間。
【請求項12】
(a)隙間を画定する1つ又は複数の表面に、請求項10に記載の組成物を塗布すること、
(b)隙間を画定する表面を組み合わせること、及び
(c)組成物を硬化させて、隙間を封止すること
を含む、隙間を封止する方法。
【請求項13】
シール剤として配合された、請求項4に記載の組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物で封止された隙間。
【請求項15】
(a)隙間を画定する1つ又は複数の表面に、請求項13に記載の組成物を塗布すること、
(b)隙間を画定する表面を組み合わせること、及び
(c)組成物を硬化させて、隙間を封止すること
を含む、隙間を封止する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、高温での航空宇宙用シール剤用途に有用な、パーフルオロエーテル及びパーフルオロエーテル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性シール剤は、航空宇宙産業において、導電性が要求される2つのパネル間の間隙を封止するために広く用いられている。しかしながら、高温、例えば500°Fに24時間曝露した後に導電性を維持することは、未だ満たされていないニーズとして残っている。高温安定性を呈するパーフルオロエーテル等のフルオロポリマーが開発されてきた。パーフルオロエーテルは、高温用途に有用であり、末端基は、様々な硬化化学反応に適合させ得る。しかしながら、航空宇宙産業、とりわけ、高い導電性が要求される用途における厳しい性能要求を満たすため、パーフルオロエーテル組成物は、注意深く調製しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
航空宇宙用途の厳しい環境的、熱的、化学的及び電気的要求を満たすシール剤を提供すべく、変性ポリマーパーフルオロエーテルを含有する付加及び湿気硬化性シール剤組成物を開示する。本開示によって提供されるパーフルオロエーテルは、パーフルオロエーテルの分子量を増加させるため、シロキサンを用いて伸長されたものである。末端基もまた、付加硬化で用いるのに相応しいヒドロシラン基又は湿気硬化に有用なアルコキシシラン基を含むべく、変性されている。伸長されたパーフルオロエーテルを含めたパーフルオロエーテルの組み合わせを有する付加硬化性及び湿気硬化性組成物を提供する。斯かる組成物は、導電性シール剤において特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第一の態様において、アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルを含む、湿気硬化性組成物を開示する。
【0005】
第二の態様において、(a)アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテル、(b)ヒドロシラン末端シロキサン及び(c)アルコキシシランを含む反応物質の反応生成物を含む、湿気硬化性組成物を開示する。
【0006】
第三の態様において、(a)アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルとヒドロシラン末端シロキサンとを反応させて、アルケニル末端である伸長パーフルオロエーテルとアルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルとの混合物を提供すること、及び(b)混合物をアルコキシシランと反応させて、アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルとアルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルとの混合物を提供することを含む工程によって調製される、湿気硬化性組成物を開示する。
【0007】
第四の態様において、(a)アルケニル末端パーフルオロエーテル及び(b)ヒドロシラン末端である伸長パーフルオロエーテルを含む、付加硬化性組成物を開示する。
【0008】
第五の態様において、(a)アルケニル末端パーフルオロエーテル、(b)第一のヒドロシラン末端シロキサン及び(c)第二のヒドロシラン末端シロキサンを含む反応物質の反応生成物を含む、付加硬化性組成物を開示する。
【0009】
第六の態様において、(a)アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルと第一のヒドロシラン末端シロキサンとを反応させて、アルケニル末端である伸長パーフルオロエーテルとアルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルとの混合物を提供すること、及び(b)混合物を第二のヒドロシラン末端シロキサンと反応させて、ヒドロシラン末端である伸長パーフルオロエーテルとヒドロシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルとの混合物を提供することを含む工程によって調製される、付加硬化性組成物が開示される。
【0010】
第七の態様において、本開示によって提供される組成物を含む、硬化したシール剤を開示する。
【0011】
第八の態様において、本開示によって提供される組成物で封止された隙間(apertures)を開示する。
【0012】
第九の態様において、(a)隙間を画定する1つ又は複数の表面に、本開示によって提供される組成物を適用すること、(b)隙間を画定する表面を組み合わせること、及び(c)組成物を硬化させて、隙間を封止することを含む、隙間を封止する方法を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
以下の説明に関し、本開示によって提供される実施形態は、反対のことが明確に特定されている場合を除き、多様な代替のバリエーション及び工程順序をとってもよいことを理解されたい。さらに、実施例において以外又は示されていない限り、例えば、明細書及び特許請求の範囲において用いられる成分の量を表す全ての数字は、用語「約」によって修飾されているものとして、全ての場合において理解されるべきである。したがって、反対のことが示されていない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、得ようとする所望の特性に応じて変動してもよい目安である。少なくとも、また特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではないが、各数値パラメータは、少なくとも、報告される有効数字の桁数を考慮し且つ通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0014】
発明の広い範囲を明らかにする数値範囲及びパラメータは目安であるが、具体的な実施例に記載される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定において見られる標準的な変動から必然的に生じる、ある種の誤差を本質的に含んでいる。
【0015】
また、本明細書に記載の任意の数値範囲は、それらに包含される全ての部分範囲を含むことが意図されていることを理解されたい。例えば、「1から10」の範囲は、記載されている最小値である約1と記載されている最大値である約10との間(を含む)全ての部分範囲、即ち、約1に等しい又はそれより大きい最小値及び約10に等しい又はそれより小さい最大値を有する全ての部分範囲を含むことが意図されている。また、この出願において、「及び/又は」が、ある事例において明白に用いられることがあるが、「又は」の使用は、そうでないことが具体的に述べられていない限り、「及び/又は」を意味する。
【0016】
2つの文字又は記号の間ではないダッシュ(「−」)は、置換基又は2つの原子間のための結合点を示すために用いられる。例えば、−CONHは、炭素原子を介して他の化学的部分へ結合する。
【0017】
「アルケニル」は、−CH=CH基を指す。
【0018】
「アルコキシシラン」は、式(4)の化合物又は式(4a)の基を指し、
H−Si(−R(−OR3−p (4)
−Si(−R(−OR3−p (4a)
式中、pは0、1及び2から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルから選択される。式(4)の化合物及び式(4a)の基のある実施形態において、pは0であり、pは1であり、ある実施形態において、pは2である。式(4)の化合物及び式(4a)の基のある実施形態において、各Rは、独立して、エチル及びメチルから選択される。式(4)の化合物又は式(4a)の基のある実施形態において、各Rはエチルであり、ある実施形態において、各Rはメチルである。
【0019】
「アルキル」は、例えば、炭素原子数1から20、炭素原子数1から10、炭素原子数1から6、炭素原子数1から4又は炭素原子数1から3の、飽和で分岐又は直鎖の非環式一価炭化水素基を指す。ある実施形態において、アルキル基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルキルであり、ある実施形態において、C〜Cアルキルである。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−デシル、テトラデシル等が挙げられる。ある実施形態において、アルキル基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルキル、C〜Cアルキルであり、ある実施形態において、C〜Cアルキルである。
【0020】
「シロキサン」は、交互になったケイ素及び酸素原子、例えば−Si(R)−O−Si(R)−を有する化合物又は部分を指し、式中、各Rは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アルコキシシラン、アリール及びその他であり得る。ある実施形態において、シロキサンは、式(2a)、式(2b)又は式(2c)の構造を含み、
【化1】

式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、Cシクロアルキル、フェニル、−O−Si(R3−m(H)又は−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、mは0、1及び2から選択され、nは1から6の整数である。式(2a)及び式(2c)のシロキサン並びに少なくとも1つのRが−O−Si(R3−m(H)でありmが1又は2である式(2b)のシロキサンは、ヒドロシラン末端シロキサンと呼ばれる。式(2a)及び式(2b)のシロキサンのある実施形態において、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、nは1から6の整数である。
【0021】
シロキサンは、環式であってもよく、例えば、
【化2】

の構造を有してもよく、式中、各Rは、例えば、水素、アルキル、シクロアルキル、−O−Si(R3−m(H)、アリール及びその他であることができ、nは1、2、3、4、又は4より大きい整数であることができる。環式シロキサンの例は、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)である。少なくとも1つのヒドロシラン基を有する環式シロキサンは、ヒドロシラン末端シロキサンと呼ぶ。
【0022】
理解できるように、シロキサンは、直鎖及び環式シロキサン構造の両方を有する脂環式シロキサンも含む。
【0023】
シロキサンは、脂肪族シロキサン、例えば、各Rが水素及びC〜Cアルキルから選択される式(2a)、式(2b)及び式(2c)のシロキサンも含む。脂肪族シロキサンのある実施形態において、各Rは、水素、C〜Cアルキル、Cシクロアルキル及びフェニルから選択される。
【0024】
「ヒドロシラン」は、ケイ素原子に結合した少なくとも1つの水素を有する基、例えば、−SiH、−Si(−R)H及び−Si(−R)H等を指し、各Rは、水素以外の基、例えば、C〜Cアルキル、Cシクロアルキル、フェニル又は−O−Si(R3−m(H)等であり、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、mは、0、1及び2から選択される。ある実施形態において、ヒドロシラン基は、−Si(−R)H基を指す。ある実施形態において、ヒドロシラン基は、−Si(−R)H基であり、式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(R3−m(H)から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、mは、0、1及び2から選択される。ヒドロシラン末端である化合物、部分又は基は、ヒドロシラン基を有する化合物、部分又は基を指す。ヒドロシラン末端シロキサンは、1つ又は複数のヒドロシラン基を有するシロキサン、例えば、式(2a)及び式(2c)のシロキサン、並びに少なくとも1つのRが−O−Si(R3−m(H)であり、mが1又は2である式(2b)の化合物等を指す。
【0025】
化合物、ポリマー、組成物及び方法の、ある実施形態について以下に言及する。開示される実施形態は、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。逆に、特許請求の範囲は、あらゆる選択肢、改変及び均等物をカバーすることを意図している。
【0026】
パーフルオロエーテル
パーフルオロエーテルは、高温安定性が要求される用途において有用であることが知られている。パーフルオロエーテルポリマーは、例えば、ダイキン工業(Demnum(登録商標))、Solvay(Fomblin(登録商標))及び信越化学工業(Sifel(登録商標))等の供給業者から入手可能である。一般に、あるパーフルオロエーテルポリマーは、複数のパーフルオロエーテル−CF−O−単位を含有する骨格、例えば、−(CF−CF−CF−O)−(Demnum(登録商標))、−(CF−CF−O)−(CF−O)−(Fomblin(登録商標))及び−(CF(CF)−CF−O)−又は−CF−CF(CF)−O)−(Sifel(登録商標))等のパーフルオロエーテル基を特徴とする。ある実施形態において、パーフルオロエーテルは、−[−CF−O−]−;−[−CF(CF)−O−]−;−[−CF−CF−O−]−;−[−CF(CF)−CF−O−]−;−[−CF−CF(CF)−O−]−;−[−CF−CF−CF−O−]−;−[−CF(CF)−CF−CF−O−]−;−[−CF−CF(CF)−CF−O−]−;−[−CF−CF−CF(CF)−O−]−;−CF−O−[−CF−CF−O−]−[−CF−O−]−CF−;−CF−O−[−CF(CF)−CF−O−]−[−CF−O−]−CF−;−CF−O−[−CF−CF(CF)−O−]−[−CF−O−]−CF−、及び前記のものの任意の組み合わせから選択されるパーフルオロエーテル基を含む。ある実施形態において、kは2から100、5から80、10から60の整数であり、ある実施形態において、15から60の整数である。ある実施形態において、本明細書に記載の任意のものを含めたパーフルオロエーテル基の総数は、個別に又は組み合わせにおいてのいずれについても、2から100、5から80、10から60であってよく、ある実施形態において、15から60であってよい。ある実施形態において、パーフルオロエーテルは、500ダルトンから15,000ダルトン、1,000ダルトンから12,000ダルトン、1,500ダルトンから10,000ダルトンの数平均分子量を有し、ある実施形態において、2,000ダルトンから8,000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0027】
本開示によって提供される伸長パーフルオロエーテルは、対応する非伸長パーフルオロエーテルの約2倍の数、例えば、2から300、10から250、30から200、50から150のパーフルオロエーテル基を含み、ある実施形態において100から150のパーフルオロエーテル基を含む。ある実施形態において、伸長パーフルオロエーテルは、1,000ダルトンから40,000ダルトン、2,000ダルトンから30,000ダルトン、5,000ダルトンから25,000ダルトンの数平均分子量を有し、ある実施形態において10,000ダルトンから25,000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0028】
ある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、−[−CF−CF−CF−O−]−、−CF−O−[−CF−CF−O−]−[−CF−O−]−CF−、−[−CF(CF)−CF−O−]−、−[−CF−CF(CF)−O−]−、及び前記のものの任意の組み合わせから選択されるパーフルオロエーテル基を含み、ある実施形態において、各kは、独立して2から100の整数である。
【0029】
ある実施形態において、パーフルオロエーテルは、構造−[−CF(CF)−CF−O−]−を有するパーフルオロエーテル基を含み、kは、2から200、10から180、20から160、50から150の整数であり、ある実施形態において、100から150の整数である。
【0030】
ある実施形態において、パーフルオロエーテルは、構造−[−CF−CF(CF)−O−]−を有するパーフルオロエーテル基を含み、kは、2から200、10から180、20から160、50から150の整数であり、ある実施形態において、100から150の整数である。
【0031】
ある実施形態において、パーフルオロエーテルは、アルケニル末端パーフルオロエーテルを含む。ある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、2から6の平均アルケニル官能価を有し、ある実施形態において、2から3の平均アルケニル官能価を有する。ある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、二官能性である。ある実施形態において、多官能性アルケニル末端パーフルオロエーテルは、二官能性アルケニル末端パーフルオロエーテルを多官能性ヒドロシランと反応させることによって調製してもよい。多官能性ヒドロシランの例としては、エチルシラン等のアルキルシラン、及びフェニルトリス(ジメチルシリル)シラン等のその他のものが挙げられる。例えば、二官能性アルケニル末端パーフルオロエーテルと多官能性アルキルシランR−SiH(式中、Rはアルキルである)とを3:1の当量比で反応させると、三官能性アルキル末端パーフルオロエーテルを提供することができる。様々なアルケニル官能価、官能価の範囲及び/又は平均アルケニル官能価を有するアルケニル末端パーフルオロエーテルが調製され得ることが理解できる。
【0032】
ある実施形態において、パーフルオロエーテルは、本明細書に開示される任意のパーフルオロエーテル基を含めたパーフルオロエーテル−CF−O−単位に加えて、セグメントを含む。追加のセグメントは、例えば、複数のパーフルオロエーテル基を含有するセグメントを分離するような骨格構造内の任意の場所、又はパーフルオロエーテル骨格と終端基若しくは末端基との間に、位置してもよい。例としてパーフルオロエーテルセグメントの1つを用いると、1つ又は複数の追加のセグメントを有するパーフルオロエーテルは、構造−L−[−CF−O−]−、−L−[−CF−O−]−L−、−L−[−CF−O−]−L−[−CF−O−]−及び/又はその他(式中、Lは追加のセグメントを表す)を有する骨格領域を含んでもよい。1つ又は複数の追加のセグメントは、例えば、アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、アレーン−ジイル基、アミン−ジイル、シラン−ジイル、及び前記のものの任意の組み合わせを含んでもよく、これらは非置換であっても又は置換であってもよく、置換基は、例えば、アルキル、アミン、ヒドロキシ、=O又はアルコキシであってよい。
【0033】
したがって、本明細書において用いるとき、−PFE−は、パーフルオロエーテルのコアを指し、少なくとも1つのパーフルオロエーテルセグメント又は複数のパーフルオロエーテルセグメント−PFE−を含み、各パーフルオロエーテルセグメントは、パーフルオロエーテル基及び任意の追加の非パーフルオロエーテルセグメント−L−を含み、例えば−L−PFE−L−等である。パーフルオロエーテルコア−PFE−は、アルケニル基又はその他の官能基等の官能基を末端としてもよい。
【0034】
ある実施形態において、パーフルオロエーテルは、二官能性パーフルオロエーテルである。ある実施形態において、二官能性アルケニル末端パーフルオロエーテルは、構造CH=CH−PFE−CH=CHを有し、式中、−PFE−は、複数のパーフルオロエーテル基及び任意の非パーフルオロエーテルセグメントを含む。ある実施形態において、二官能性アルケニル末端パーフルオロエーテルは、構造CH=CH−L−PFE−L−CH=CHを有し、式中、Lは、本明細書に定義される。
【0035】
伸長パーフルオロエーテル
本開示によって提供される組成物のある実施形態において、組成物は、伸長パーフルオロエーテルを含む。
【0036】
伸長パーフルオロエーテルは、低分子量パーフルオロエーテルを伸長基と反応させた結果として生じるパーフルオロエーテルを指す。高分子量ポリマーを形成するためのプレポリマーの伸長は、周知であり、反応物質の官能基の比を選択することによって、少なくともある程度制御することができる。ある実施形態において、伸長パーフルオロエーテルは、2つの前駆体パーフルオロエーテル、3つの前駆体パーフルオロエーテル、4つの前駆体パーフルオロエーテルを含み、ある実施形態において、4つより多い前駆体パーフルオロエーテルを含む。ある実施形態において、伸長基はシロキサンである。伸長基としてのある種のシロキサンの使用は、付加硬化(ヒドロシリル化)反応に有用な追加のヒドロシラン官能基を付与するためにも有用である場合がある。
【0037】
ある実施形態において、伸長パーフルオロエーテルは、アルケニル基、ヒドロシラン基、ヒドロシラン末端シロキサン基及びアルコキシシラン基から選択される末端基を含む。ある実施形態において、伸長パーフルオロエーテルは、末端アルケニル基を含み、ある実施形態において、末端シロキサン基、末端ヒドロシラン末端シロキサン基を含み、ある実施形態において、末端アルコキシシラン基を含む。
【0038】
ある実施形態において、アルケニル末端である伸長パーフルオロエーテルは、式(1)の構造
CH=CH−PFE−CH−CH−A’−CH−CH−PFE−CH=CH (1)
を有し、式中、A’は、
【化3】

(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、及び−O−Si(R3−m(H)又は−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、mは0、1及び2から選択され、nは1から6の整数である)
の構造を有し、各−CH−CH−PFE−CH−CH−は、アルケニル末端パーフルオロエーテルCH=CH−PFE−CH=CHに由来し、−PFE−はパーフルオロエーテル基を含む。
【0039】
式(2b)のある実施形態において、nは1であり、nは2であり、nは3であり、nは4であり、nは5であり、ある実施形態において、nは6である。
【0040】
式(2b)のある実施形態において、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、フェニル及び−O−Si(Rから選択される。式(2b)のある実施形態において、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、フェニル及び−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルから選択される。式(2b)のある実施形態において、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、フェニル及び−OSi(CHから選択される。式(2b)のある実施形態において、nは1及び2から選択され、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、フェニル及び−OSi(CHから選択される。
【0041】
式(2b)のある実施形態において、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、フェニル、−OSi(CHH及び−OSi(CHから選択される。式(2b)のある実施形態において、nは1及び2から選択され、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、フェニル、−OSi(CHH及び−OSi(CHから選択される。ある実施形態において、nは1及び2から選択され、各Rは、独立して、−CH及び−OSi(CHHから選択される
【0042】
式(2b)のある実施形態において、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、nは1から6の整数である。
【0043】
式(2b)のヒドロシラン末端シロキサンのある実施形態において、各Rは同一であり、ある実施形態において、少なくとも1つのRは異なる。ある実施形態において、各Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びtert−ブチルから選択される。ある実施形態において、各Rは、メチル及びエチルから選択される。ある実施形態において、各Rはメチルである。
【0044】
湿気硬化性組成物に適した伸長パーフルオロエーテルは、Rが−O−Si(Rであるもののような、末端ヒドロシラン基を含まないものである。
【0045】
ある実施形態において、アルケニル末端である伸長パーフルオロエーテルは、(a)アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテル及び(b)ヒドロシラン末端シロキサンを含む反応物質の反応生成物を含む。
【0046】
アルケニル末端パーフルオロエーテルは、本明細書に開示される任意のパーフルオロエーテル基を含んでよく、ある実施形態において、アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルは、−[−CF−CF−CF−O−]−、−CF−O−[−CF−CF−O−]−[−CF−O−]−CF−、−[−CF(CF)−CF−O−]−、−[−CF−CF(CF)−O−]−、及び前記のものの任意の組み合わせから選択されるパーフルオロエーテル基を含む。
【0047】
式CH=CH−PFE−CH=CHのアルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテル等のアルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルは、ダイキン工業、Solvay、信越化学工業及びその他から入手可能なパーフルオロエーテル等の市販のパーフルオロエーテルであってよく、又は末端アルケニル基を有していない市販のパーフルオロエーテルに由来するものであってもよい。
【0048】
ある実施形態において、アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルは、2,000ダルトンから15,000ダルトン、4,000ダルトンから13,000ダルトン、5,000ダルトンから12,000ダルトン、6,000ダルトンから11,000ダルトン、7,000ダルトンから10,000ダルトンの数平均分子量を有し、ある実施形態において、8,000ダルトンから9,000ダルトンの数平均分子量を有する。ある実施形態において、アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルは、室温にて液状である。ある実施形態において、アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルは、25℃にて、80ポアズから400ポアズ、90ポアズから300ポアズ、100ポアズから200ポアズの粘度を有し、ある実施形態において、110ポアズから150ポアズの粘度を有する。ある実施形態において、アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルは、25℃にて、0.2ポアズから400ポアズ、0.5ポアズから300ポアズ、1ポアズから200ポアズの粘度を有し、ある実施形態において、1ポアズから150ポアズの粘度を有する。ある実施形態において、アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルは、二官能性である。
【0049】
ある実施形態において、ヒドロシラン末端シロキサンは、式(2a)の構造を有し、
【化4】

式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、及び−O−Si(R3−m(H)又は−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、mは、0、1及び2から選択され、nは1から6の整数である。
【0050】
式(2a)のある実施形態において、nは1であり、nは2であり、nは3であり、nは4であり、nは5であり、ある実施形態において、nは6である。
【0051】
式(2a)のある実施形態において、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、フェニル及び−O−Si(R3−m(H)から選択される。式(2a)のある実施形態において、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、フェニル及び−O−Si(R3−m(H)から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルから選択され、mは、0及び1から選択される。式(2a)のある実施形態において、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、フェニル及び−OSi(CHから選択される。式(2a)のある実施形態において、nは1及び2から選択され、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、フェニル及び−OSi(CHから選択される。
【0052】
式(2a)のある実施形態において、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、フェニル及び−OSi(CHH及び−OSi(CHから選択される。式(2a)のある実施形態において、nは1及び2から選択され、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、フェニル並びに−OSi(CHH及び−OSi(CHから選択される。ある実施形態において、nは1及び2から選択され、各Rは、独立して、−CH及び−OSi(CHHから選択される。
【0053】
式(2a)のヒドロシラン末端シロキサンのある実施形態において、各Rは同一であり、ある実施形態において、少なくとも1つのRは異なる。ある実施形態において、各Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びtert−ブチルから選択される。ある実施形態において、各Rは、メチル及びエチルから選択される。ある実施形態において、各Rはメチルである。
【0054】
式(2a)のある実施形態において、Rが−O−Si(R3−m(H)であるとき、mは0である。式(2a)のある実施形態において、Rが−O−Si(R3−m(H)であるとき、mは1である。式(2a)のある実施形態において、Rが−O−Si(R3−m(H)であるとき、mは2である。
【0055】
式(2a)のある実施形態において、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、nは、1から6の整数である。
【0056】
ある実施形態において、ヒドロシラン末端シロキサンは、ビス(トリメチルシロキシ)−ジメチルジシロキサン (ビス(1,3,3,3−テトラメチルジシロキサニル)メタン) フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン (3−((ジメチルシリル)メチル)−1,1,1,5,5−ペンタメチル−3−フェニルトリシロキサン)及びテトラキス(ジメチルシロキシ)シランから選択される。
【0057】
ある実施形態において、ヒドロシラン末端シロキサンは、ビス(トリメチルシロキシ)−ジメチルジシロキサン、(ビス(1,3,3,3−テトラメチルジシロキサニル)メタン)、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シランであり、ある実施形態においてテトラキス(ジメチルシロキシ)シラン(Si(−OSi(CHH)))である。
【0058】
式(1)のある実施形態において、−A’−は、ビス(トリメチルシロキシ)−ジメチルジシロキサンに由来し、構造−Si(−CH)(−OSi(CH)−O−Si(−CH)(−OSi(CH)−を有する。
【0059】
式(1)のある実施形態において、−A’−は、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シランに由来し、構造−Si(−CH−O−Si(−フェニル)(−OSi(−H)(−CH−O−Si(−CH−を有する。
【0060】
ある実施形態において、アルケニル末端である伸長パーフルオロエーテルは、アルケニル末端パーフルオロエーテルをヒドロシラン末端シロキサンと反応させることによって調製される。ある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルが二官能性である場合、二官能性アルケニル末端パーフルオロエーテルは、式(1)のアルケニル末端である伸長パーフルオロエーテルを提供するため、二官能性ヒドロシラン末端シロキサンと約2:1の当量比で反応させてもよい。
【0061】
湿気硬化性組成物
アルコキシシラン末端ポリマーの湿気硬化反応は、周囲条件下で速やかであり、したがって、航空宇宙用シール剤用途において有用である。したがって、アルコキシシラン末端である伸長及び/又は非伸長パーフルオロエーテルを提供するためのパーフルオロエーテルの修飾は、高温の航空宇宙用シール剤用途において有用なポリマーを提供することができる。
【0062】
ある実施形態において、湿気硬化性組成物は、アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルを含む。ある実施形態において、アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルは、アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルの組み合わせを含む。ある実施形態において、湿気硬化性組成物は、1種又は複数種のアルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテル及び1種又は複数種のアルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルを含む。
【0063】
ある実施形態において、アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルは、式(3)の化合物を含む。
D−CH−CH−PFE−CH−CH−A’−CH−CH−PFE−CH−CH−D (3)
式中、各−Dは、独立して、−Si(−R(−OR3−pであり、pは、独立して0、1及び2から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルから選択され、−A’−は、式(2b):
【化5】

(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、nは1から6の整数である)
の構造部分を含み、各−CH−CH−PFE−CH−CH−は、アルケニル末端パーフルオロエーテルCH=CH−PFE−CH=CHに由来し、−PFE−はパーフルオロエーテル基を含む。
【0064】
式(3)のある実施形態において、−A’−は、式(2a)のシロキサンに由来する。湿気硬化性組成物において用いるためには、−A’−は、ヒドロシラン基を含まず、例えばヒドロシラン末端ではない。
【0065】
本開示によって提供される湿気硬化性組成物のある実施形態において、アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルは、(a)アルケニル末端である伸長パーフルオロエーテル及び(b)アルコキシシランを含む反応物質の反応生成物を含む。ある実施形態において、反応物質は、金属触媒等の触媒をさらに含む。湿気硬化性組成物に適した金属触媒の例としては、ジブチルスズジオキサイド、ジブチルスズジラウラート、オクタン酸亜鉛及びオクタン酸スズ等の、亜鉛、スズ及びチタン触媒が挙げられる。
【0066】
アルケニル末端パーフルオロエーテルが二官能性、例えば2つの末端アルケニル基である反応の実施形態において、式(3)のアルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテル等の、2つの末端アルコキシシラン基を優勢に有する生成物を提供するために、反応物質は、約1:1のアルケニル基とアルコキシシラン基との比で組み合わせてもよい。
【0067】
反応のある実施形態において、アルコキシシランは、式(4)の化合物を含む。
H−Si(−R(−OR3−p (4)
式中、pは0、1及び2から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルから選択される。
【0068】
式(4)の化合物のある実施形態において、pは0であり、pは1であり、ある実施形態において、pは2である。式(4)の化合物のある実施形態において、各Rは同一であり、ある実施形態において、少なくとも1つのRが異なる。ある実施形態において、各Rは、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びtert−ブチルから選択される。ある実施形態において、各Rは、独立して、メチル及びエチルから選択される。ある実施形態において、各Rはメチルである。
【0069】
式(4)のアルコキシシランのある実施形態において、アルコキシシランは、H−Si(−OCHCH、H−Si(−OCH、H−Si(−CH)(−OCH、H−Si(−CH(−OCH)、H−Si(−CH)(−OCHCH、H−Si(−CH(−OCHCH)、H−Si(−CHCH)(−OCH)及びH−Si(−CHCH(−OCH)から選択される。
【0070】
式(3)のアルコキシシランのある実施形態において、各−Si(−R(−OR3−pは、−Si(−OCHCH、−Si(−OCH、−Si(−CH)(−OCH、−Si(−CH(−OCH)、−Si(−CH)(−OCHCH、−Si(−CH(−OCHCH)、−Si(−CHCH)(−OCH)、及び−Si(−CHCH(−OCH)から選択される。ある実施形態において、各−Si(−R(−OR3−p部分は、−Si(−OCHCH、−Si(−OCHであり、ある実施形態において、−Si(−CH)(−OCHである。
【0071】
反応のある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、単一のタイプのアルケニル末端パーフルオロエーテルを含み、ある実施形態において、異なるタイプのアルケニル末端パーフルオロエーテルの混合物を含み、この場合、パーフルオロエーテルは、例えば、分子量、パーフルオロエーテル骨格、及び/又は骨格を構成するその他の基において異なる。
【0072】
アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルを提供するための反応において用いるのに適したアルケニル末端パーフルオロエーテルの例として、本明細書に開示された任意のもの、例えば式(1)のアルケニル末端パーフルオロエーテル等が挙げられる。
【0073】
アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルに加えて、本開示によって提供される湿気硬化性組成物は、1種又は複数種のアルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルを含めたアルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルを含んでもよい。アルコキシシラン末端である非伸長及び/又は伸長パーフルオロエーテルは、2から6、例えば、2から4、2から3、ある実施形態においては2から2.5の平均官能価を有するアルコキシシラン末端パーフルオロエーテルの組み合わせを含んでもよい。
【0074】
ある実施形態において、アルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルは、二官能性であり、ある実施形態において、式(5)の構造を有するアルコキシシラン末端である二官能性非伸長パーフルオロエーテルを含む。
D−CH−CH−PFE−CH−CH−D (5)
式中、各Dは、独立して−Si(−R(−OR3−pであり、各pは、独立して、0、1及び2から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルから選択され、−CH−CH−PFE−CH−CH−は、アルケニル末端パーフルオロエーテルCH=CH−PFE−CH=CHに由来し、−PFE−はポリチオエーテル基を含む。
【0075】
ある実施形態において、アルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルは、アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテル及びアルコキシシランを含む反応物質の反応生成物を含む。
【0076】
反応のある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、−[−CF−CF−CF−O−]−、−CF−O−[−CF−CF−O−]−[−CF−O−]−CF−、−[−CF(CF)−CF−O−]−、−[−CF−CF(CF)−O−]−、及び前記のものの任意の組み合わせから選択されるパーフルオロエーテル基を含み、ある実施形態において、各kは2から100である。
【0077】
式(5)のアルコキシシラン末端である二官能性非伸長パーフルオロエーテルのある実施形態において、各pは0であり、各pは1であり、ある実施形態において、各pは2である。式(5)の化合物のある実施形態において、各Rは、エチル及びメチルから選択され、ある実施形態において、各Rはエチルであり、ある実施形態において、各Rはメチルである。
【0078】
ある実施形態において、湿気硬化性組成物は、(a)アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテル、(b)ヒドロシラン末端シロキサン及び(c)アルコキシシランを含む反応物質の反応生成物を含む。
【0079】
反応のある実施形態において、アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテル(a)は、−[−CF−CF−CF−O−]−、−CF−O−[−CF−CF−O−]−[−CF−O−]−CF−、−[−CF(CF)−CF−O−]−、−[−CF−CF(CF)−O−]−、及び前記のものの任意の組み合わせから選択されるパーフルオロエーテル基を含み、各kは、独立して2から100の整数である。
【0080】
反応のある実施形態において、ヒドロシラン末端シロキサン(b)は、式(2a)の化合物を含む。
【化6】

式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、nは1から6の整数である。
【0081】
ある実施形態において、湿気硬化性組成物は、
(a)−[−CF−CF−CF−O−]−、−CF−O−[−CF−CF−O−]−[−CF−O−]−CF−、−[−CF(CF)−CF−O−]−、−[−CF−CF(CF)−O−]−、及び前記のものの任意の組み合わせから選択され且つある実施形態においてkが2から100であるパーフルオロエーテル基を含む、アルケニル末端パーフルオロエーテル
(b)式(2a)のヒドロシラン末端シロキサン
【化7】

(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、nは1から6の整数である)
並びに
(c)式(4)のアルコキシシラン
H−Si(−R(−OR3−p (4)
(式中、pは0、1及び2から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルから選択される)
を含む反応物質の反応生成物を含む。
【0082】
ある実施形態において、湿気硬化性組成物は、(a)アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルとヒドロシラン末端シロキサンとを反応させて、アルケニル末端である伸長パーフルオロエーテルとアルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルとの混合物を提供すること、及び(b)この混合物をアルコキシシランと反応させて、アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルとアルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルとの混合物を提供することを含む工程によって調製されてもよい。
【0083】
ある実施形態において、アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルとヒドロシラン末端シロキサンとは、8:1から2:1、6:1から2.5:1、5:1から3:1の当量比、ある実施形態において4:1の当量比で反応させる。
【0084】
ある実施形態において、湿気硬化性組成物は、第一に、アルケニル末端である二官能性パーフルオロエーテルとヒドロシラン末端である二官能性シロキサンとを4:1の当量比で反応させて、部分的に伸長されたパーフルオロエーテルを提供することによって調製されてもよく、この部分的に伸長されたパーフルオロエーテルは、得られたパーフルオロエーテルが、アルケニル末端である二官能性パーフルオロエーテルとアルケニル末端である二官能性伸長パーフルオロエーテルとの混合物、例えば1:1の混合物を含むことを意味する。第二の工程において、アルケニル末端である伸長及び非伸長パーフルオロエーテルの混合物を、例えば白金触媒の存在下で、アルコキシシランと反応させて、アルコキシシラン末端である伸長及び非伸長パーフルオロエーテルの混合物を提供してもよい。ある実施形態において、アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルは、(a)アルケニル末端パーフルオロエーテル及び(b)ヒドロシラン末端シロキサンを含む反応物質の反応生成物を含む。
【0085】
前記の反応のある実施形態において、反応生成物は、アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルを含み、ある実施形態において、アルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルとアルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルとの混合物を含む。
【0086】
湿気硬化性組成物については、アルケニル末端である伸長パーフルオロエーテルが反応性ヒドロシラン基を全く又は実質的に全く含有しないことが望ましい。これは、適切な当量比のアルケニル及びヒドロシラン基を反応させることによって達成し得る。
【0087】
湿気硬化性組成物のある実施形態において、ヒドロシラン末端シロキサンは、式(2a)の構造を有する。
【化8】

式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、nは1から6の整数である。
【0088】
式(2a)のある実施形態において、nは1であり、nは2であり、nは3であり、nは4であり、nは5であり、ある実施形態において、nは6である。
【0089】
式(2a)のある実施形態において、各Rは、独立して、メチル、エチル、フェニル及び−Si(Rから選択される。ある実施形態において、各Rは、独立して、メチル、エチル及びフェニルから選択される。ある実施形態において、各Rは、独立して、メチル及びフェニルから選択される。ある実施形態において、各Rは、独立して、メチル、フェニル及び−Si(Rから選択される。ある実施形態において、各Rは、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びtert−ブチルから選択される。ある実施形態において、各Rはメチルである。
【0090】
−Si(Rのある実施形態において、各Rは、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、及びtert−ブチルから選択される。ある実施形態において、各Rは、独立して、メチル及びエチルから選択され、ある実施形態において各Rはエチルであり、ある実施形態において各Rはメチルである。
【0091】
ある実施形態において、部分的に伸長されたパーフルオロエーテルが調製されてもよく、ここで、部分的な伸長とは、アルケニル末端パーフルオロエーテルとヒドロシラン末端シロキサンとの反応生成物であって、伸長パーフルオロエーテルと非伸長パーフルオロエーテルとの組み合わせを含むものを指す。例えば、二官能性アルケニル末端パーフルオロエーテルを二官能性ヒドロシラン末端シロキサンと当量比2:<1、例えば、2:0.8、2:0.6、2:0.5、2:0.4又は2:0.2で反応させると、伸長及び非伸長アルケニル末端パーフルオロエーテルの混合物が優位に提供される。
【0092】
アルケニル末端パーフルオロエーテルは、その後、例えばトリメトキシシラン又はトリエトキシシランを含めた−O−Si(R等のアルコキシシランによってキャップ又は末端処理されて、アルコキシシラン末端パーフルオロエーテルを提供してもよく、ある実施形態において、このアルコキシシラン末端パーフルオロエーテルは、アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルとアルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルとの組み合わせであってもよい。
【0093】
ある実施形態において、アルコキシシラン末端パーフルオロエーテルは、式(3)のパーフルオロエーテル、式(5)のパーフルオロエーテルを含み、ある実施形態において、式(3)のアルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルと式(5)のアルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルとの混合物を含む。
【0094】
アルコキシシラン末端である伸長パーフルオロエーテルとアルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルとの組み合わせ、例えば、部分的に伸長されたアルコキシシラン末端パーフルオロエーテルを含む未硬化組成物は、室温において粘性のあるペーストであってよく、湿気硬化すると、航空宇宙用シール剤用途において有用な高い耐熱性及び他の特性を呈する。
【0095】
付加硬化組成物(addition−curable compositions)
本開示のある実施形態においては、付加硬化性組成物が提供される。本開示によって提供される付加硬化性組成物は、金属触媒の存在下、末端アルケニル基−CH=CHを有するパーフルオロエーテル(アルケニル末端パーフルオロエーテル)と、末端ヒドロシラン基−Si(R)Hを有するパーフルオロエーテル(ヒドロシラン末端パーフルオロエーテル)との反応によって硬化してもよい。
【0096】
一般に、付加硬化性組成物は、アルケニル末端パーフルオロエーテル又はアルケニル末端パーフルオロエーテルの混合物と、ヒドロシラン末端パーフルオロエーテル又はヒドロシラン末端パーフルオロエーテルの混合物とを含む。アルケニル末端パーフルオロエーテルは、本明細書に開示されている任意のものを含んでもよい。ヒドロシラン末端パーフルオロエーテルは、本明細書に開示されているアルコキシシラン末端パーフルオロエーテルと類似のものであってよいが、パーフルオロエーテルが1つ又は複数のヒドロシラン基を末端とするものは除く。
【0097】
付加硬化性組成物のある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、伸長されていても及び/又は非伸長でもよく、ヒドロシラン末端パーフルオロエーテルは、伸長されていても及び/又は非伸長でもよい。
【0098】
ある実施形態において、付加硬化性組成物は、1種又は複数種のアルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルと、平均官能価2から6、3から6、4から6、3から5、ある実施形態においては4から5のヒドロシラン末端である伸長及び非伸長パーフルオロエーテルの組み合わせとを含む。
【0099】
付加硬化性組成物のある実施形態において、末端アルケニル基と末端ヒドロシラン基との当量比は、0.5:1から1.5:1、0.75:1から1.25:1、0.8:1から1.2:1、0.9:1から1.1:1、0.95:1から1.05:1であり、ある実施形態において1:1である。
【0100】
ある実施形態において、付加硬化性組成物は、(a)アルケニル末端パーフルオロエーテル及び(b)ヒドロシラン末端である伸長パーフルオロエーテルを含む。
【0101】
ある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、単一のタイプのアルケニル末端パーフルオロエーテル、又はアルケニル末端パーフルオロエーテルの混合物を含む。アルケニル末端パーフルオロエーテルは、本明細書に開示されるアルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルのうちの任意のもの、例えば、式CH=CH−PFE−CH=CHのアルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテル又はその混合物等を含んでもよい。ある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、アルケニル末端である二官能性非伸長パーフルオロエーテルであってもよい。ある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、例えば式(1)のアルケニル末端である伸長パーフルオロエーテル等の本明細書に開示されるもののうちの任意のものを含めた、アルケニル末端である伸長パーフルオロエーテル、又はアルケニル末端である伸長パーフルオロエーテルの組み合わせを含む。ある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、アルケニル末端である二官能性伸長パーフルオロエーテルであってよい。ある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、アルケニル末端である非伸長パーフルオロエーテルとアルケニル末端である伸長パーフルオロエーテルとの組み合わせを含む。ある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、アルケニル末端である二官能性非伸長パーフルオロエーテルとアルケニル末端である二官能性伸長パーフルオロエーテルとの組み合わせを含む。
【0102】
付加硬化性組成物において有用なヒドロシラン末端パーフルオロエーテルとして、ヒドロシラン末端である二官能性パーフルオロエーテル、ヒドロシラン末端であり官能価が2より大きいパーフルオロエーテル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ヒドロシラン末端パーフルオロエーテルは、ヒドロシラン末端である非伸長パーフルオロエーテル、ヒドロシラン末端である伸長パーフルオロエーテル又はそれらの組み合わせであってよい。
【0103】
ある実施形態において、付加硬化性組成物は、式(8)の構造を有するヒドロシラン末端パーフルオロエーテルを含む。
A−CH−CH−PFE−CH−CH−A (8)
式中、各−Aは、独立して、式(2c)及び式(10b):
【化9】

(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(R3−m(H)から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、mは0、1及び2から選択され、nは1から6の整数である)
の部分から選択され、−CH−CH−PFE−CH−CH−は、式CH=CH−PFE−CH=CHのジアルケニル末端パーフルオロエーテルに由来し、−PFE−はパーフルオロエーテル基を含む。
【0104】
ある実施形態において、付加硬化性組成物は、式(9)の構造を有するヒドロシラン末端である伸長パーフルオロエーテルを含む。
A−CH−CH−PFE−CH−CH−A’−CH−CH−PFE−CH−CH−A (9)
式中、各−Aは、独立して式(2c):
【化10】

(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(R3−m(H)から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、mは0、1及び2から選択され、nは1から6の整数である)
の基であり、各−A’−は、式(2c):
【化11】

(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(R3−m(H)から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、mは0、1及び2から選択され、nは1から6の整数である)
の基であり、−CH−CH−PFE−CH−CH−は、ジアルケニル末端パーフルオロエーテルCH=CH−PFE−CH=CHに由来し、−PFE−はパーフルオロエーテル基を含む。
【0105】
式(8)及び式(9)のパーフルオロエーテルにおいて、部分−CH−CH−PFE−CH−CH−は、構造CH=CH−PFE−CH=CHを有するアルケニル末端である二官能性パーフルオロエーテルに由来してもよく、各−A−及び−A’−は、ヒドロシラン末端シロキサンに由来する。
【0106】
式(8)及び式(9)のある実施形態において、−PFE−は、−[−CF−CF−CF−O−]−、−CF−O−[−CF−CF−O−]−[−CF−O−]−CF−、−[−CF(CF)−CF−O−]−、−[−CF−CF(CF)−O−]−、及び前記のものの任意の組み合わせ(各kは、独立して2から100の整数である)から選択されるパーフルオロエーテル基を含む。
【0107】
本開示によって提供されるヒドロシラン末端パーフルオロエーテルは、アルケニル末端である二官能性パーフルオロエーテル等のアルケニル末端パーフルオロエーテルを、ヒドロシラン末端シロキサンと反応させることによって調製してもよい。アルケニル末端パーフルオロエーテル及びヒドロシラン末端シロキサンは、本明細書に開示されるもののうちの任意のものであってよい。ある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、構造CH=CH−PFE−CH=CHを有し、ヒドロシラン末端シロキサンは、式(2a)の構造を有する。
【0108】
ある実施形態において、付加硬化性組成物は、式(8)及び式(9)のヒドロシラン末端パーフルオロエーテルの組み合わせを含む。ある実施形態において、付加硬化性組成物は、式(1)のアルケニル末端である伸長パーフルオロエーテルの組み合わせを含み、ある実施形態において、式CH=CH−PFE−CH=CHのアルケニル末端である伸長パーフルオロエーテルの組み合わせを含む。
【0109】
ある実施形態において、伸長基としてではなく末端基として用いられる場合、ヒドロシラン末端シロキサンは、ビス(トリメチルシロキシ)−ジメチルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、テトラメチルシクロテトラシロキサン(ビス(トリメチルシロキシ)−ジメチルシロキサン(1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、TMCTS)及びテトラキス(ジメチルシロキシ)シラン(Si−(OSiMeH))から選択されてもよい。
【0110】
式(8)及び式(9)のある実施形態において、各−Aは、ビス(トリメチルシロキシ)−ジメチルシロキサン(1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン)に由来し、各−Aは、
【化12】

の構造を有し、式(8)及び/又は式(9)の対応する化合物は、少なくとも2つの反応性ヒドロシラン官能基を有するヒドロシラン末端パーフルオロエーテルである。伸長基として用いられるシロキサンがヒドロシラン基を含むか否かに依って、式(8)及び/又は式(9)の対応する化合物は、2つより多い反応性ヒドロシラン官能基を有してもよい。
【0111】
式(8)及び式(9)の化合物のある実施形態において、各−Aは、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン(3−((ジメチルシリル)オキシ)−1,2,5,5−テトラメチル−3−フェニルトリスシロキサン)に由来し、各−Aは、
【化13】

の構造を有し、式(8)及び/又は式(9)の対応する化合物は、少なくとも4つの反応性ヒドロシラン官能基を有するヒドロシラン末端パーフルオロエーテルである。伸長基として用いられるシロキサンがヒドロシラン基を含むか否かに依って、式(8)及び/又は式(9)の対応する化合物は、4つより多い反応性ヒドロシラン官能基を有してもよい。
【0112】
ある実施形態において、各−Aは、テトラメチルシクロテトラシロキサン(2,4,6,8−テトラメチル−1,3,5,7,2,4,6,8−テトラオキサテトラシロキサン)(TMCTS)に由来し、各−Aは、
【化14】

の構造を有し、式(8)及び/又は式(9)の対応する化合物は、少なくとも6つの反応性ヒドロシラン官能基を有するヒドロシラン末端パーフルオロエーテルである。伸長基として用いられるシロキサンがヒドロシラン基を含むか否かに依って、式(8)及び/又は式(9)の対応する化合物は、6つより多い反応性ヒドロシラン官能基を有してもよい。
【0113】
ある実施形態において、−Aはテトラキス(ジメチルシロキシ)シランに由来し、各−Aは、
【化15】

の構造を有し、式(8)及び/又は式(9)の対応する化合物は、少なくとも6つの反応性ヒドロシラン官能基を有するヒドロシラン末端パーフルオロエーテルである。伸長基として用いられるシロキサンがヒドロシラン基を含むか否かに依って、式(8)及び/又は式(9)の対応する化合物は、6つより多い反応性ヒドロシラン官能基を有してもよい。式(8)及び式(9)のある実施形態において、各−Aは、Si(CHH−O−Si(−O−Si(CHH)−O−Si(CH−である。
【0114】
示した通り、ヒドロシラン末端である多官能性パーフルオロエーテルは、伸長剤としてヒドロシラン末端シロキサンを用いて伸長し、続いてヒドロシラン末端シロキサンでキャップすることによって、調製されてもよい。これは、伸長とそれに続くキャッピング若しくは末端処理とを含む二段階プロセスにおいて、又は、単一の反応工程において達成し得る。斯かる反応は、反応物質の当量比によって決定される優位な又は平均の官能価を伴う様々なヒドロシラン官能基を有するヒドロシラン末端パーフルオロエーテルを生成することができる。
【0115】
例えば、スキーム1に示すように、アルケニル末端である二官能性パーフルオロエーテルとビス(トリメチルシロキシ)−ジメチルシロキサンとを白金触媒等の触媒の存在下で反応させてヒドロシラン末端である二官能性非伸長パーフルオロエーテルを提供することによって、ヒドロシラン末端である二官能性パーフルオロエーテルを調製してもよい。
【化16】
【0116】
スキーム2に示すように、アルケニル末端である二官能性パーフルオロエーテルとフェニルトリス(ジメチルシロキシ)シランとを白金触媒等の触媒の存在下で反応させてヒドロシラン末端である四官能性非伸長パーフルオロエーテルを提供することによって、ヒドロシラン末端である四官能性パーフルオロエーテルを調製してもよい。
【化17】
【0117】
スキーム3に示すように、アルケニル末端である二官能性パーフルオロエーテルとフェニルトリス(ジメチルシロキシ)シランとを白金触媒等の触媒の存在下で反応させて、伸長基がただ1つのヒドロシラン基と複数のフェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン末端基とを有するヒドロシラン末端である五官能性伸長パーフルオロエーテルを提供することによって、ヒドロシラン末端である五官能性パーフルオロエーテルを調製してもよい。
【化18】
【0118】
ある実施形態において、アルケニル末端パーフルオロエーテルは、アルケニル末端である二官能性パーフルオロエーテルであり、これは、非伸長でも、伸長されていても、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0119】
ある実施形態において、ヒドロシラン末端である伸長及び/又は非伸長パーフルオロエーテルは、2つのヒドロシラン官能基を含み、ある実施形態においては、3つのヒドロシラン官能基、4つのヒドロシラン官能基、5つのヒドロシラン官能基、6つのヒドロシラン官能基を含み、ある実施形態において6より多いヒドロシラン官能基を含む。本開示によって提供される付加硬化性組成物は、2つのヒドロシラン末端基、3つの、4つの、5つの、6つの、6つより多いヒドロシラン末端基を有するヒドロシラン末端である伸長及び/若しくは非伸長パーフルオロエーテルの組み合わせ又は前記のものの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0120】
例えば、本開示によって提供されるシール剤は、アルケニル末端である二官能性パーフルオロエーテル、式(9)のヒドロシラン末端である四官能性パーフルオロエーテル及び式(9)のヒドロシラン末端である五官能性パーフルオロエーテルを、それぞれ1:0.5:0.5の当量比で含んでもよい。
【0121】
別の例として、本開示によって提供されるシール剤は、アルケニル末端である二官能性パーフルオロエーテル、ヒドロシラン末端である二官能性パーフルオロエーテル、式(9)のヒドロシラン末端である四官能性パーフルオロエーテル及び式(9)のヒドロシラン末端である六官能性パーフルオロエーテルを、それぞれ1:0.15:0.7:0.15の当量比で含んでもよい。
【0122】
アルケニル末端であるパーフルオロエーテルとヒドロシラン末端シロキサンとの反応において用いるのに適した触媒としては、Speier触媒(ヘキサクロロ白金酸HPtCl)及びKarstedt触媒(白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体)が挙げられる。
【0123】
シール剤
本開示によって提供されるアルコキシシラン末端パーフルオロエーテルは、航空宇宙用シール剤及び燃料タンク用ライニングとして用いられ得るものを含めたコーティング及びシール剤組成物等の湿気硬化性組成物において有用である。結果的に、本開示によって提供されるある実施形態は、アルコキシシラン末端パーフルオロエーテルと硬化剤とを含む、1液型組成物等の組成物を対象とする。これらの1液型組成物において、アルコキシシラン末端パーフルオロエーテル及び硬化剤は、任意選択で他の組成物構成成分と共に、防湿密封された、例えば真空密封された又は不活性ガスと共に密封された単一の容器に組み合わせて入れられて、使用前の硬化が実質的に防止される。本組成物は、実質的に湿気がない条件下で、周囲温度にて安定である。湿気がない及び実質的に湿気がないとは、組成物がいくらかの湿気を含有している場合はあるが、湿気の量が、組成物の硬化を実質的に達成するには十分ではないことを意味する。組成物が十分な湿気に曝されると、組成物の硬化が促進され、例えば航空宇宙及び類似の用途を含めた多くの用途において有用なシール剤を形成する。
【0124】
本開示によって提供されるヒドロシラン末端パーフルオロエーテルを含む付加硬化性組成物は、典型的には2液系である。ある実施形態において、シール剤を含めたこのような組成物は、2液型組成物等の多液型組成物として提供されてよく、斯かる組成物においては、1液が、本開示によって提供されるヒドロシラン末端パーフルオロエーテルの1種又は複数種を含み、第2液が、本開示によって提供されるアルケニル末端パーフルオロエーテルの1種又は複数種を含む。所望により又は必要に応じて、いずれの液にも添加剤及び/又はその他の材料を添加してもよい。2つの液は、使用に先立って組み合わされ混合されてよい。ある実施形態において、混合された組成物のポットライフは、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも2時間であり、ある実施形態において2時間より長く、ここで、ポットライフとは、混合された組成物が混合後にシール剤として適用するのに適した状態に留まっている時間を指す。白金触媒等のヒドロシリル化触媒が、いずれかの液に含まれてもよく、又は第3液に含まれて適用に先立って組み合わされてもよい。
【0125】
ある実施形態において、本開示によって提供されるアルコキシシラン末端パーフルオロエーテル及びヒドロシラン末端パーフルオロエーテルは、組成物中に30重量%から90重量%、例えば40重量%から80重量%の量で存在してもよく、ある実施形態において45重量%から75重量%の量で存在してもよく、ここで、重量%は、組成物の非揮発性構成成分の総重量に基づく。
【0126】
ある実施形態において、組成物は、1種又は複数種の接着促進剤を含んでもよい。接着促進剤は、組成物の0.1重量%から15重量%、5重量%未満、2重量%未満の量で存在してもよく、ある実施形態において、組成物の総乾燥重量に基づいて1重量%未満の量で存在してもよい。接着促進剤の例としては、Methylon(登録商標)フェノール樹脂等のフェノール類、並びにSilquest(登録商標)A−187及びSilquest(登録商標)A−1100等のエポキシ、メルカプト又はアミノ末端シラン等の有機シランが挙げられる。他にも有用な接着促進剤が、本技術分野において公知である。組成物は、2012年6月21日出願の米国出願番号13/529,183に開示されているような硫黄含有接着促進剤を含んでもよい。
【0127】
本開示によって提供される組成物は、1種又は複数種の異なるタイプの充填剤を含んでもよい。適した充填剤としては、本技術分野において一般に公知のものが挙げられ、無機充填剤、例えばカーボンブラック及び炭酸カルシウム(CaCO)、シリカ、金属酸化物、ポリマー粉末並びに軽量充填剤等が挙げられる。適した軽量充填剤としては、例えば米国特許第6,525,168号に記載のものが挙げられる。ある実施形態において、組成物は、組成物の総乾燥重量に基づいて、5重量%から60重量%、10重量%から50重量%、ある実施形態においては20重量%から40重量%の充填剤又は充填剤の組み合わせを含む。本開示によって提供される組成物は、1種若しくは複数種の着色剤、顔料、可塑剤、界面活性剤、チキソトロピー付与剤、1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタンを含めたアミン等の促進剤、難燃剤、接着促進剤、溶剤、マスキング剤、又は前記のものの任意の組み合わせをさらに含んでもよい。本開示によって提供される組成物のある実施形態においては、塩基性酸化物が、組成物の総重量に基づいて、0.1重量%から10重量%、例えば1重量%から10重量%、又はある実施形態においては5重量%から10重量%の量で存在する。理解できるように、組成物において採用される充填剤及び添加剤は、ポリマー構成成分、硬化剤及び/又は触媒とだけでなく、互いにも親和性があるように選択され得る。
【0128】
ある実施形態において、本開示によって提供される組成物は、塩基性酸化物を含む。塩基性酸化物は、湿気硬化性組成物において特に有用な場合があり、湿気硬化性組成物においては、それらは脱水剤として作用し、そうすることによって組成物の早計な硬化を防ぎ得るが、硬化が望まれるときには、発生した塩基が硬化触媒として作用する。その結果、湿気硬化性組成物において用いるアミン等の硬化促進剤を少なくすることができ、これによって、組成物の有効保存期間をさらに延長し得る。本開示によって提供される組成物において用いるのに適した塩基性酸化物の例としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、又は前記のものの任意の組み合わせが挙げられる。本開示によって提供される組成物のある実施形態において、塩基性酸化物は、組成物の総重量に基づいて、0.1重量%から10重量%、例えば1重量%から10重量%、又はある実施形態においては5重量%から10重量%の量で存在する。
【0129】
ある実施形態において、湿気硬化性組成物は、スズ触媒を含む。適したスズ触媒の例としては、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)、ジブチルスズジラウラート、ジブチルスズジアセタート、テトラブチルチタナート及びテトラエチルチタナートを含めた脂肪族チタナート等の有機スズ化合物が挙げられる。
【0130】
ある実施形態において、本開示によって提供される付加硬化性組成物は、白金触媒を含む。適した白金触媒の例としては、Speier触媒及びKarstedt触媒が挙げられる。
【0131】
ある実施形態において、本開示によって提供される組成物は、導電性充填剤を含む。導電性及びEMI/RFI遮蔽効果は、伝導性材料を配合することによって組成物に付与することができる。伝導性材料としては、例えば、金属、又は金属めっき粒子、織物、メッシュ、繊維、及び前記のものの任意の組み合わせを挙げることができる。金属は、例えば、フィラメント、粒子、フレーク又は球体の形態であってよい。金属の例としては、銅、ニッケル、銀、アルミニウム、スズ及び鋼鉄が挙げられる。ポリマー組成物にEMI/RFI遮蔽効果を付与するために用いることができるその他の伝導性材料としては、炭素又はグラファイトを含む伝導性粒子又は繊維が挙げられる。ある実施形態において、組成物は、少なくとも約20重量%、ある実施形態においては少なくとも約30重量%の導電性充填剤を含有する。
【0132】
ポリマー組成物に導電性及びEMI/RFI遮蔽効果を付与するために用いられる充填剤は、本技術分野において周知である。導電性充填剤の例としては、純銀等の導電性貴金属系充填剤;銀めっき金等の貴金属めっきされた貴金属;銀めっきされた銅、ニッケル又はアルミニウム等の貴金属めっきされた非貴金属、例えば、銀めっきされたアルミニウムコア粒子又は白金めっきされた銅粒子;銀めっきされたガラス微小球、貴金属めっきされたアルミニウム微小球又は貴金属めっきされたプラスチック微小球等の、貴金属めっきされたガラス、プラスチック又はセラミック;貴金属めっきされたマイカ;及びその他のそのような貴金属伝導性充填剤が挙げられる。非貴金属系材料もまた使用することができ、例えば、銅コートされた鉄粒子又はニッケルめっきされた銅等の非貴金属めっきされた非貴金属;非貴金属、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト;非貴金属めっきされた非金属、例えば、ニッケルめっきされたグラファイト、並びにカーボンブラック及びグラファイト等の非金属材料が挙げられる。所望の伝導性、EMI/RFI遮蔽効果、硬度及び特定の用途に適したその他の特性を満たすために、導電性充填剤の組み合わせもまた用いることができる。
【0133】
本開示によって提供される組成物において用いられる導電性充填剤の形及びサイズは、硬化した組成物にEMI/RFI遮蔽効果を付与するための任意の適した形及びサイズであってよい。例えば、充填剤は、導電性充填剤の製造において一般に用いられる任意の形のものであってよく、球、フレーク、小板、粒子、粉体、不定形、繊維等が挙げられる。本開示によって提供されるある実施形態において、ベース組成物は、粒子、粉体又はフレークとしての、Niコートされたグラファイトを含むことができる。ある実施形態において、ベース組成物中におけるNiコートされたグラファイトの量は、ベース組成物の総重量に基づいて、40重量%から80重量%の範囲であり得、ある実施形態において50重量%から70重量%の範囲であり得る。ある実施形態において、導電性充填剤は、ニッケル繊維を含むことができる。ニッケル繊維は、10μmから50μmの範囲の直径を有することができ、250μmから750μmの範囲の長さを有することができる。ベース組成物は、例えば、ベース組成物の総重量に基づいて、2重量%から10重量%の範囲、ある実施形態において4重量%から8重量%の範囲の量のニッケル繊維を含むことができる。
【0134】
炭素繊維、特にグラファイト化された炭素繊維もまた、本開示によって提供される組成物に導電性を付与するために用いてもよい。気相熱分解法によって形成され且つ熱処理によってグラファイト化され、0.1ミクロンから数ミクロンの範囲の繊維径を有する中空又は中実の炭素繊維は、高い導電性を有する。米国特許第6,184,280号に開示されているように、0.1ミクロン未満で数十ナノメートルまでの外径を有する炭素ミクロ繊維、ナノチューブ又は炭素フィブリルは、導電性充填剤として用いることができる。
【0135】
導電性充填剤の平均粒径は、組成物に導電性を付与するために有用な範囲内であればよい。例えば、ある実施形態において、1種又は複数種の充填剤の粒径は、0.25μmから250μmの範囲であってよく、ある実施形態において0.25μmから75μmの範囲であってよく、ある実施形態において0.25μmから60μmの範囲であってよい。
【0136】
ある実施形態において、本開示によって提供される組成物の導電性を付与又は改変するために、導電性ポリマーを用いてもよい。芳香族基に組み込まれた又は二重結合に隣り合う硫黄原子を有するポリマー、例えば、ポリフェニレンスルフィド及びポリチオフェンは、導電性があることが知られている。その他の導電性ポリマーとしては、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)ビニレン及びポリアセチレンが挙げられる。本開示によって提供される組成物は、1種より多い導電性充填剤を含むことができ、1種より多い導電性充填剤は、同一の又は異なる材料及び/又は形のものであり得る。例えば、シール剤組成物は、導電性Ni繊維と、粉体、粒子又はフレークの形態の導電性のNiコートされたグラファイトとを含んでもよい。導電性充填剤の量及びタイプは、硬化したときに、0.50Ω/cmの未満のシート抵抗(4点抵抗)、ある実施形態において0.15Ω/cm未満のシート抵抗を呈するシール剤組成物を製造するように選択することができる。充填剤の量及びタイプは、本開示によって提供されるシール剤組成物を用いて封止される隙間に、1MHzから18GHzの範囲の周波数に対して効果的なEMI/RFI遮蔽を提供するように選択することもできる。
【0137】
異種金属表面及び本開示の伝導性組成物のガルバニック腐食は、腐食防止剤を組成物に添加することによって及び/又は適切な伝電性充填剤を選択することによって、最小限にする又は防ぐことができる。ある実施形態において、腐食防止剤としては、クロム酸ストロンチウム、クロム酸カルシウム、クロム酸マグネシウム及びそれらの組み合わせが挙げられる。米国特許第5,284,888号及び米国特許第5,270,364号は、芳香族チアゾールを用いてアルミニウム及び鋼鉄表面の腐食を防止することを開示している。ある実施形態において、Zn等の犠牲酸素捕捉剤は、腐食防止剤として用いることができる。ある実施形態において、腐食防止剤は、導電性組成物の総重量の10重量%未満を構成することができる。ある実施形態において、腐食防止剤は、導電性組成物の総重量の2重量%から8重量%の範囲の量を構成することができる。異種金属表面間の腐食は、組成物を構成する伝導性充填剤のタイプ、量及び特性を選択することによっても、最小にする又は防ぐことができる。
【0138】
使用
本開示によって提供される組成物は、例えば、シール剤、コーティング、カプセル化材料及びポッティング(potting)組成物において用いてもよい。シール剤としては、湿気及び温度等の使用時の条件に耐え、且つ、水、燃料並びにその他の液体及び気体等の材料の透過を少なくとも部分的にブロックする能力を有するフィルムを生成することができる組成物が挙げられる。コーティング組成物としては、例えば、見た目、接着性、濡れ性、耐腐食性、耐水性、耐燃料性及び/又は耐摩耗性等の基材の特性を改善するために、基材の表面に適用することができる被覆が挙げられる。ポッティング組成物としては、衝撃及び振動に対する耐性をもたらし、且つ、湿気及び腐食要因を排除するための、電子アセンブリにおいて有用な材料が挙げられる。ある実施形態において、本開示によって提供されるシール剤組成物は、例えば、航空宇宙用シール剤及び燃料タンク用ライニングとして有用である。
【0139】
本開示によって提供されるシール剤を含めた組成物は、任意の様々な基材に適用してもよい。組成物が適用されてもよい基材の例としては、陽極酸化、下塗り、有機コーティング又はクロム酸塩コーティングされていてもよい、チタン、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属;エポキシ;ウレタン;グラファイト;繊維ガラス複合体;Kevlar(登録商標);アクリル;及びポリカーボネートが挙げられる。ある実施形態において、本開示によって提供される組成物は、基材上のポリウレタンコーティング等のコーティングに適用されてもよい。
【0140】
本開示によって提供される組成物は、基材の表面上に直接適用してもよく、又は当業者に公知の任意の適したコーティングプロセスによる下層上に適用してもよい。
【0141】
本開示によって提供される組成物は、基材の表面上に直接適用してもよく、又は当業者に公知の任意の適したコーティングプロセスによる下層若しくはコーティング上に適用してもよい。
【0142】
さらに、本開示によって提供される組成物を利用した隙間の封止方法が提供される。これらの方法は、例えば、本開示によって提供される組成物を表面に適用して、隙間を封止すること、及び組成物を硬化させることを含む。ある実施形態において、組成物は、周囲条件下で硬化させてもよく、ここで、周囲条件は、20℃から25℃の温度及び雰囲気中の湿度を指す。ある実施形態において、組成物は、0℃から100℃の温度及び0%RHから100%RHの湿度(又は湿気硬化性組成物の場合、0%RHより高い湿度)を包含する条件下で硬化させてもよい。ある実施形態において、組成物は、少なくとも30℃、少なくとも40℃、ある実施形態において少なくとも50℃等の高められた温度で、硬化させてもよい。ある実施形態において、組成物は、室温、例えば25℃で硬化させてもよい。ある実施形態において、組成物は、紫外線照射等の化学線照射に曝露して硬化させてもよい。本方法は、航空機及び航空宇宙機を含めた航空宇宙機上の隙間を封止するために用いてもよいこともまた、理解される通りである。
【0143】
ある実施形態において、貯蔵及び輸送のため、アルコキシシラン末端パーフルオロエーテル及び硬化剤を含めた組成物の構成成分は、容器内で組み合わされ、湿気から密封される。容器内で湿気から密封されている間、湿気硬化性組成物は、安定であり、長期間にわたって実質的に未硬化の状態を保つ。
【0144】
付加硬化性組成物については、2液は、使用に先立って混合され、混合された構成成分が使用可能な状態を保っている限り、基材に適用されてよい。付加硬化性組成物は、オレフィン含有液、シリル含有液中に白金触媒等のヒドロシリル化触媒を含み、又は第3液に含まれ、適用に先立って第1及び第2液と組み合わされてもよい。
【0145】
空気中の湿気に曝されると、本開示によって提供される湿気硬化性組成物の構成成分は、反応して、シール剤組成物を含めた硬化組成物を提供する。
【0146】
ある実施形態において、本開示によって提供される組成物は、約200°F未満の温度で、約2時間未満、約4時間未満、約7時間未満、ある実施形態において約10時間未満で、タックフリー硬化(tack−free cure)を達成する。
【0147】
硬化シール剤等の硬化した組成物は、航空宇宙用途での使用において許容可能な特性を呈する。一般に、航空機及び航空宇宙用途において用いられるシール剤は、以下の特性を呈することが望ましい:Aerospace Material Specification(AMS)3265B試験仕様書に従って、AMS3265B基材上で、JRF中に7日間浸漬後及び3%NaCl溶液中に浸漬後に、乾燥条件下で測定して、20ポンド/リニアインチ(pli)より大きい剥離強度;300ポンド/平方インチ(psi)から400psiの間の引張強度;50ポンド/リニアインチ(pli)より大きい引裂き強度;250%から300%の間の伸び;並びにデュロメータAで40より大きい硬度。航空機及び航空宇宙用途に適切なこれらの及びその他の硬化シール剤特性は、AMS3265Bに開示されており、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。航空機及び飛行機用途に用いられる本開示の硬化性組成物は、硬化したときに、Jet Reference Fuel Type I(JRF Type I)中に60℃(140°F)にて周囲圧力で1週間浸漬された後に、25%を超えないパーセント体積の膨れを呈することもまた望ましい。その他の特性、範囲及び/又は閾値は、他のシール剤用途に適切である可能性がある。
【0148】
ある実施形態において、本開示によって提供される組成物は、燃料耐性がある。本明細書において用いられる場合、用語「燃料耐性」とは、組成物が基材に適用され硬化したときに、ASTM D792(American Society for Testing and Materials)又はAMS3269(Aerospace Material Specification)に記載されているものと同様の方法に従って、JRF Type I中に140°F(60℃)にて周囲圧力で1週間浸漬された後に、40%を超えない、いくつかの場合には25%を超えない、いくつかの場合には20%を超えない、さらに別の場合では10%を超えないパーセント体積の膨れを呈するシール剤等の硬化生成物を提供することができることを意味する。燃料耐性の決定のために採用されるJet Reference Fluid JRF Type Iは、以下の組成を有する:トルエン:28±1体積%;シクロヘキサン(工業用):34±1体積%;イソオクタン:38±1体積%;及び三級ジブチルジスルフィド:1±0.005体積%(SAE(Society of Automotive Engineers)より入手可能なAMS2629、1989年7月1日発行、§3.1.1等を参照のこと)。
【0149】
ある実施形態において、組成物は、AMS3279、§3.3.17.1、試験手順AS5127/1、§7.7に記載の手順に従って測定したときに少なくとも100%の引張伸び及び少なくとも400psiの引張強度を呈する、シール剤等の硬化組成物を提供する。
【0150】
ある実施形態において、組成物は、SAE AS 5127/1、段落7.8に記載の手順に従って測定したときに200psiより大きい、いくつかの場合には少なくとも400psiのラップせん断強度を呈する、シール剤等の硬化組成物を提供する。
【0151】
ある実施形態において、本開示によって提供される組成物を構成する硬化シール剤は、AMS3277に記載の航空宇宙用シール剤の要件を満たす又は超える。
【0152】
さらに、本開示によって提供される組成物を利用した隙間の封止方法が提供される。これらの方法は、例えば、本開示によって提供される組成物を表面に適用して隙間を封止すること、及び組成物を硬化させることを含む。ある実施形態において、隙間の封止方法は、(a)本開示によって提供されるシール剤組成物を、隙間を画定する1つ又は複数の表面に適用すること、(b)隙間を画定する表面を組み合わせること、及び(c)シール剤を硬化させて、封止された隙間を提供することを含む。
【0153】
本開示によって提供される組成物で封止された航空宇宙機の隙間を含む隙間も開示される。
【0154】
ある実施形態において、本開示によって提供される導電性シール剤組成物は、500°Fに24時間曝露した後に室温で測定して以下の特性を呈する:MIL−C−27725に従って測定して、表面抵抗率1オーム/スクエア未満、引張強度200psi超、伸び100%超、及び凝集破壊100%。
【0155】
ある実施形態において、本開示によって提供される付加硬化性組成物を構成する硬化シール剤は、室温で2日、140°Fで1日及び200°Fで1日硬化させたときに、以下の特性を呈する:乾燥硬度49、引張強度428psi、及び伸び266%;JRF Type I中で7日後に、硬度36、引張強度312psi、及び伸び247%。
【実施例】
【0156】
あるパーフルオロエーテル及び斯かるパーフルオロエーテルを含む組成物の合成、特性及び使用について説明する以下の例を参照することによって、本開示によって提供される実施形態をさらに例証する。当業者には、本開示の範囲を逸脱しない材料及び方法の両方についての多くの改変が実践されてもよいことは明らかである。
【0157】
(例1)
Fluorolink(登録商標)−Dのジアリルエーテル
パーフルオロエーテルジオールFluorolink(登録商標)−D(Solvay)を、等しい重量のイソプロパノールで5回抽出した。ポリマー部分から溶媒を除去すると、高分子量のジオール画分が生成した。Wuら、Ind.Eng.Chem.Res.、1995、34(5)、1536〜1538に記載されたフェノールのアリル化の手順の改変版に従って、ジオールのアリル化を達成した。ジアリルエーテルは、複数ロットに基づいて約3500から約4200の分子量を有すると概算された。
【0158】
(例2)
オレフィン中間体の合成
例1のジアリルエーテル(150g、0.0357モル)を250mLの3つ口丸底フラスコに仕込んだ。フラスコに、攪拌機、温度プローブ、及びガスアダプターを取り付けた。ポリマーを66℃/7〜8mmHgで1時間脱気し、室温に冷却した。真空を窒素下で開放し、白金触媒(0.1g、PC075、United Chemical Technologies)のα,α,α−トリフルオロトルエン(0.5mL)中溶液を加え、内容物を室温で1時間撹拌した。1,3−ビス(トリメチルシロキシ)−1,3−ジメチルジシロキサン(5.727g、0.0202モル、Gelest)をα,α,α−トリフルオロトルエン0.5mLと共に加え、反応混合物を室温で9.5時間撹拌した。反応混合物の粘度は、1.84ポアズであった。1,3−ビス(トリメチルシロキシ)−1,3−ジメチルジシロキサンのさらなるポーション(0.2g)(合計量:1.927g、0.0209モル)をα,α,α−トリフルオロトルエン(0.5mL)と共に加え、反応混合物を38〜39℃で3時間加熱した。粘度は、1.94ポアズに微増した。フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン(1.571g、0.0048モル、Gelest)をα,α,α−トリフルオロトルエン0.5mLと共に導入した。反応混合物を38〜39℃で13.5時間加熱し、1時間脱気して(真空度:7〜8mmHg)、粘度7.32ポアズ、理論オレフィン当量9438及び理論官能価約2.8のオレフィン中間体を生成した。
【0159】
(例3)
湿気硬化性ポリマーIの合成
新たに調製した例2のオレフィン中間体サンプル(40g;0.0015モル)を100mLの3つ口丸底フラスコに仕込んだ。フラスコに、攪拌機、温度プローブ及びガスアダプターを取り付けた。白金を含有し追加の触媒を含有しない新たに調製したオレフィン中間体のサンプルを、ヒドロシラン化反応の間に添加した。撹拌しながら、メチルジメトキシシラン(1.4g;0.0132モル)を添加し、混合物をさらに1時間撹拌した。反応混合物を74℃で5時間加熱し、室温に冷却した。メチルジメトキシシランのさらなるポーション(0.4g、0.0038モル)を添加し、加熱を74℃で8時間継続した。反応混合物をその後60℃まで冷却し、1時間脱気して(真空度:7〜8mmHg)、粘度20.6ポアズの湿気硬化性ポリマーIを生成した。
【0160】
(例4)
四官能性ポリマーシランの合成
例1のジアリルエーテル(20g、0.0055モル)を100mLの3つ口丸底フラスコに仕込んだ。フラスコに、攪拌機、温度プローブ及びガスアダプターを取り付けた。フラスコを乾燥窒素でフラッシングした。白金触媒(PC075)(0.015g)のα,α,α−トリフルオロトルエン(1mL)中溶液を添加し、内容物を室温で45分間撹拌した。フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン(4g、0.0121モル)を導入し、混合物を10時間撹拌した。白金触媒PC075のさらなるポーション(0.15gをα,α,α−トリフルオロトルエン1mLに溶解)を添加し、室温で8時間撹拌した。反応混合物を20mLのトルエンのポーション2つで洗浄して、触媒及び未消費のシランを除去した。真空下(室温/7〜8mmHgで1時間)で残存溶媒を除去すると、粘度4.43ポアズの透明なポリマーが生成した。
【0161】
(例5)
付加硬化用オレフィンの合成
例1のジアリルエーテル(80g、0.0219モル)を100mLの3つ口丸底フラスコに仕込んだ。フラスコに、攪拌機、温度プローブ及びガスアダプターを取り付けた。フラスコを乾燥窒素でフラッシングした。白金触媒(PC075)(0.015g)のα,α,α−トリフルオロトルエン(1mL)中溶液を添加し、内容物を室温で1時間撹拌した。1,3−ビス(トリメチルシロキシ)−1,3−ジメチルジシロキサン(3.515g、0.124モル)をα,α,α−トリフルオロトルエン1mLと共に添加した。反応混合物を室温で1.5時間及び43〜48℃で5時間撹拌した。この段階で、反応混合物の粘度は2.44ポアズであった。フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン(0.964g、0.0029モル)をα,α,α−トリフルオロトルエン0.5mLと共に導入し、反応混合物を室温で1時間、その後47〜48℃で7時間撹拌した。真空下(室温/7〜8mmHgで1時間)で溶媒を除去すると、粘度が19ポアズであり理論官能価が2.8である液体ポリマーが生成した。
【0162】
(例6)
湿気硬化シール剤用スズ触媒
ジブチルスズジオキシド(34.72g)、湿潤分散剤Dysperbyk(登録商標)110(16.67g)及び1−ブタノール(6.94g)の混合物を、高速混合ブレードを用いて、適切な分散体が形成されるまで摩砕した。パーフルオロポリエーテル油であるDemnum(商標)S−200(27.78g、ダイキン工業)及び蒸留水(13.89g)を順に添加し、各添加の後にさらに摩砕した。
【0163】
(例7)
湿気硬化シール剤I
例3の湿気硬化性ポリマーI(37.1g)をDemnum(商標)S−200(3.71g)と混合することによって、ポリマー混合物を調製した。これとは別に、炭酸カルシウム(7.42g)、赤色酸化鉄(1.484g)、酸化亜鉛(1.484g)及びトリフェニルイミダゾール(熱安定剤、0.371g)の混合物を粉砕し、その後カーボンブラック(6.678g)と混合することによって、充填剤混合物を調製した。ポリマー混合物を充填剤混合物の少量のポーションと共にベンチミルで摩砕することによって、ベースを調製した。その後、ベースを例6の触媒(0.6g)と共にベンチミルで摩砕し、流延物を作製した。流延物を室温で3日間、その後140°Fで4日間硬化させた。硬化組成物の特性は以下の通りであった:硬度25(ショアA);伸び(325%);及び引張強度:200psi。熱特性の定性評価のため、硬化試験体の小片を177℃に維持した。試験体は、3,652時間後に元の重量の7%を失っていた。
【0164】
(例8)
湿気硬化性ポリマーII
例1のジアリルエーテル(40g、0.0095モル)を100mLの3つ口丸底フラスコに仕込んだ。フラスコに、攪拌機、温度プローブ及びガスアダプターを取り付けた。フラスコを窒素でフラッシングした。撹拌しながら、白金触媒(0.04g、PC075)のα,α,α−トリフルオロトルエン(0.5mL)中溶液を添加し、内容物を室温で1時間撹拌した。1,3−ビス(トリメチルシロキシ)−1,3−ジメチルジシロキサン(1.553g、0.0055モル、Gelest)を、α,α,α−トリフルオロトルエン0.5mLと共に添加した。反応混合物を、室温で1時間、その後49〜50℃で2.5時間撹拌した。フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン(0.426g、0.0013モル)をα,α,α−トリフルオロトルエン1mLと共に導入し、反応混合物を49〜50℃に7時間加熱した。反応混合物を脱気すると(室温から50℃/40分、真空度:7〜8mmHg)、オレフィン中間体が生成した。メチルジメトキシシラン(1.5g;0.0132モル)をα,α,α−トリフルオロトルエン1mLと共に50℃で添加した。加熱を50℃で4時間、その後79℃で2.5時間継続した。反応混合物を脱気すると、湿気硬化性ポリマーIIが生成した。
【0165】
(例9)
湿気硬化シール剤II
例8の湿気硬化性ポリマーII(38g)を、トリフェニルイミダゾール(熱安定剤、0.38g)及び炭酸カルシウム(7.6g)と共にベンチミルで摩砕した。カーボンブラック(6.84g)、赤色酸化鉄(1.52g)、酸化亜鉛(1.52g)及びDemnum(商標)S−200(3.8g)を順に添加し、各添加の後にベンチミルで摩砕した。その後、混合物と共に例6のスズ触媒(0.6g)をベンチミルで摩砕し、流延物を作製した。流延物を高湿度/室温の雰囲気中で4日間硬化させた。硬化組成物の特性は以下の通りである:硬度33(ショアA);伸び:287%;引張強度:221psi。硬化試験体を用いて、177℃に曝露したとき並びにJRF Type I及びSkydrol作動液(Skydrol LD−4)中に浸漬したときの物性変化を決定した。結果を表1及び表2に示す。
【表1】

【表2】
【0166】
(例10)
付加硬化性シール剤
炭酸カルシウム(2.30g)、赤色酸化鉄(1.33g)及び酸化亜鉛(1.66g)の3種の充填剤の混合物を摩砕して微粉末にした。セパラブルカップに、例5のオレフィン中間体(10.0g)、例4のシランポリマー(2.1g)及びパーフルオロエーテル流体Demnum(商標)S−200(1.21g)を仕込み混合した。充填剤を3つのポーションにしてポリマー部分と混合した。白金触媒(α,α,α−トリフルオロトルエン中の3.28%PC075溶液0.025g)を添加した。内容物を混合し、プラスチック蓋(直径:2.5インチ)に展開した。展開物を室温で4日間、その後70℃で24時間硬化すると、エラストマー試験体が生成した。硬化試験体は、135℃に2ヶ月曝露後に、元の重量の1.17%を失っていた。
【0167】
尚、最後に、本明細書に開示した実施形態を実施する代替方法があることに留意されたい。したがって、本実施形態は、例証としてとらえられるべきものであり、制限的なものではない。さらに、特許請求の範囲は、本明細書に提示した詳細に限定されるものではなく、それらの最大範囲及びその均等物を対象とする。
本発明に包含され得る諸態様は、以下のとおり要約される。
[態様1]
アルコキシシラン末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテルを含む、湿気硬化性組成物。
[態様2]
アルコキシシラン末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテルが、
(a)アルケニル末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテル、及び
(b)アルコキシシラン
を含む反応物質の反応生成物を含む、上記態様1に記載の湿気硬化性組成物。
[態様3]
アルケニル末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテルが、
式(1):
CH=CH−PFE−CH−CH−A’−CH−CH−PFE−CH=CH
(1)
[式中、−A’−は、式(2b):
[化1]

(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(Rから選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、
nは1から6の整数である。)
の部分を含み、
各CH=CH−PFE−CH−CH−は、アルケニル末端パーフルオロエーテルCH=CH−PFE−CH=CHに由来し、−PFE−はパーフルオロエーテル基を含む。]
の化合物を含む、上記態様2に記載の湿気硬化性組成物。
[態様4]
アルコキシシランが、式(4):
H−Si(−R(−OR3−p(4)
(式中、pは0、1及び2から選択され、
各Rは、独立してC〜Cアルキルから選択される。)
の化合物を含む、上記態様2に記載の湿気硬化性組成物。
[態様5]
式(5):
(RO−)3−p(R−)Si−CH−CH−PFE−CH−CH−Si(−R(−OR3−p (5)
(式中、各pは、独立して、0、1及び2から選択され、
各Rは、独立してC〜Cアルキルから選択され、
−CH−CH−PFE−CH−CH−は、アルケニル末端パーフルオロエーテルCH=CH−PFE−CH=CHに由来し、−PFE−はパーフルオロエーテル基を含む。)
のアルコキシシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルを含む、上記態様1に記載の湿気硬化性組成物。
[態様6]
(a)アルケニル末端パーフルオロエーテル、及び
(b)ヒドロシラン末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテル
を含む付加硬化性組成物。
[態様7]
アルケニル末端パーフルオロエーテルが、−[−CF−CF−CF−O−]−、−CF−O−[−CF−CF−O−]−[−CF−O−]−CF−、−[−CF(CF)−CF−O−]−、−[−CF−CF(CF)−O−]−、及び前記のもののいずれかの組み合わせ(式中、各kは、独立して2から100の整数である。)から選択されるパーフルオロエーテル基を含む、上記態様6に記載の付加硬化性組成物。
[態様8]
アルケニル末端パーフルオロエーテルが二官能性である、上記態様6に記載の付加硬化性組成物。
[態様9]
ヒドロシラン末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテルが、3から6の平均ヒドロシラン官能価を有する、上記態様6に記載の付加硬化性組成物。
[態様10]
ヒドロシラン末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテルが、式(9):
A−CH−CH−PFE−CH−CH−A’−CH−CH−PFE−CH−CH−A (9)
[式中、各A−は、独立して、式(2c):
[化2]

(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(R3−m(H)から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、mは、0、1及び2から選択され、
nは、1から6の整数である。)
の部分から選択され、
−A’−は、式(2b):
[化3]

(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル及び−O−Si(R3−m(H)から選択され、各Rは、独立してC〜Cアルキルであり、mは、0、1及び2から選択され、
nは、1から6の整数である。)
の部分を含み、
−CH−CH−PFE−CH−CH−は、アルケニル末端パーフルオロエーテルCH=CH−PFE−CH=CHに由来し、−PFE−はパーフルオロエーテル基を含む。]
の構造を有する化合物を含む、上記態様6に記載の付加硬化性組成物。
[態様11]
ヒドロシラン末端である非伸長パーフルオロエーテルを含む、上記態様6に記載の付加硬化性組成物。
[態様12]
ヒドロシラン末端であるシロキサン伸長パーフルオロエーテルが、
(a)アルケニル末端パーフルオロエーテル、及び
(b)ヒドロシラン末端シロキサン
を含む反応物質の反応生成物を含む、上記態様6に記載の付加硬化性組成物。
[態様13]
シール剤として配合された、上記態様1に記載の組成物。
[態様14]
上記態様13に記載の組成物で封止された隙間。
[態様15]
(a)隙間を画定する1つ又は複数の表面に、上記態様13に記載の組成物を塗布すること、
(b)隙間を画定する表面を組み合わせること、及び
(c)組成物を硬化させて、隙間を封止すること
を含む、隙間を封止する方法。
[態様16]
シール剤として配合された、上記態様6に記載の組成物。
[態様17]
上記態様16に記載の組成物で封止された隙間。
[態様18]
(a)隙間を画定する1つ又は複数の表面に、上記態様16に記載の組成物を塗布すること、
(b)隙間を画定する表面を組み合わせること、及び
(c)組成物を硬化させて、隙間を封止すること
を含む、隙間を封止する方法。