(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
半導体レーザー100は、基板10上に、狭幅光導波路及び多モード光干渉導波路が配設され、内部のPN接合間に順バイアスを加えて、正孔と電子が活性層に閉じ込められ、再結合して発光した光を外部に出射する。
【0016】
本実施形態に係る半導体レーザー100は、
図1(a)に示すように、基板10上に、後方狭幅導波路1と、前方狭幅導波路2と、多モード光干渉導波路3とが集積され、基板10の一端面10aと他端面10bとの間で、後方狭幅導波路1、多モード光干渉導波路3及び前方狭幅導波路2により、共振器が構成されている。
【0017】
後方狭幅導波路1、前方狭幅導波路2及び多モード光干渉導波路3は、層構造が同一であり、ハイメサ導波路である。
【0018】
また、これらの断面構造は、
図1(b)及び
図1(c)に示すように、n−InP基板を基材とする基板層10上に、n型半導体であるn−InPからなるバッファ層11、長波長帯(1.55μm帯)の半導体レーザーを実現する活性層となるInGaAsP/InGaAsPからなる発光層12、真性半導体であるi−InPからなる第1のクラッド層13、p型半導体であるp−InPからなる第2のクラッド層14、p型半導体であるp−InGaAsからなるコンタクト層15が、それぞれ積層されたハイメサ構造である。また、ハイメサ構造に対しては、低誘電率有機膜であるBCB(benzocyclobutene:ベンゾシクロブテン)を非導波領域に埋め込み、埋め込み層16が形成される。
【0019】
このハイメサ構造は、
図1(b)及び
図1(c)に示すように、非導波領域(BCBを埋め込む領域)において、コンタクト層15、第2のクラッド層14、第1のクラッド層13、発光層12及びバッファ層11と共に、基板層10の一部がエッチングにより除去された構造である。
【0020】
なお、発光層12は、SCH(Separate Confinement Hetero-structure:分離閉じ込めヘテロ構造)と多重量子井戸(Multi-Quantum Well:MQW)とからなる通常の発光層である。
【0021】
特に、本実施形態においては、バッファ層11の膜厚は100nm程度であり、発光層12の膜厚は100nm程度であり、第1のクラッド層13の膜厚は100nm程度であり、第2のクラッド層14の膜厚は900nm程度であり、コンタクト層15の膜厚は150nm程度である。
【0022】
多モード光干渉導波路3は、一又は複数の後方ポート3a(光出射を想定しない一端面10a側のポート)及び一の前方ポート3b(光を出射させる他端面10b側のポート)が配設され、
図1(a)に示す平面視における全領域に活性層(発光層12)を有する、M×1型多モード光干渉導波路(Mは1以上の整数)である。
【0023】
また、多モード光干渉導波路3の前方ポート3bは、多モード光干渉導波路3の導波方向に対して垂直な活性層(発光層12)における基本(0次)モード光が結像する結像点4aに対応し(
図2(a)参照)、
図1(a)に示す平面視における多モード光干渉導波路3の導波方向に沿う中心線X
0から中心線X
2を偏心して配設される。
【0024】
なお、本実施形態においては、Mを1とする1×1型多モード光干渉導波路3を例に挙げて説明するが、この1×1型多モード光干渉導波路3に限られるものではない。特に、本実施形態に係る1×1型多モード光干渉導波路3は、光の導波方向に沿った導波路の長さ(以下、「導波路長」と称す)が158μm程度であり、導波路幅が7.4μm程度である、略矩形状の干渉領域を有する。
【0025】
また、1×1型多モード光干渉導波路3の後方ポート3aは、
図1(a)に示す平面視における1×1型多モード光干渉導波路3の導波方向に沿う中心線X
0から中心線X
1を偏心して配設され、
図1(a)に示す平面視における前方ポート3bの中心線X
2から中心線X
1を偏心して配設される。特に、1×1型多モード光干渉導波路3の後方ポート3aと前方ポート3bとは、
図1(a)に示す平面視において、1×1型多モード光干渉導波路3の中心に対して点対称の位置に配設される。
【0026】
なお、多モード光干渉導波路3は、公知の技術を用いて設計できるのであるが、例えば、MMI(Multimode Interference:多モード干渉)理論に基づいて、以下のように設計することができる。
【0027】
MMI理論によって導かれるビート長(L
π)の式は、下記数1のように示すことができる。ただし、数1の式に示す、W
1は多モード干渉領域の導波路幅を表し、W
eは多モード干渉領域の実効導波路幅を表し、n
rは導波路(コア)の実効屈折率を表し、n
cはクラッドの実効屈折率を表し、λ
0は入射光波長(中心波長)を表す。また、σはTEモードのときσ=0を表し、TMモードのときσ=1を表す。
【0028】
[数1]
W
e=W
1+(λ
0/π)(n
c/n
r)
2σ(n
r2−n
c2)
-1/2
L
π=4n
rW
e2/3λ
0 ・・・(1)
【0029】
また、多モード光干渉導波路3は、下記数2の式で表されるとき、1×N型の光導波路として動作することができる。また、多モード光干渉導波路3は、下記数3の式で表されるとき、M×N型の光導波路として動作することができる。なお、M及びNは正の整数であり、入力側のMは1であってもよく、出力側のNは2以上とすることができる。ただし、数2及び数3の式に示すL
MMIは、多モード光干渉導波路3の導波路長を表す。
【0030】
〔数2〕
L
MMI=(3/4N)L
π(Nは正の整数) ・・・(2)
【0031】
〔数3〕
L
MMI=(3/N)L
π(Nは正の整数) ・・・(3)
【0032】
ここで、数2のNを1とし、前方狭幅導波路2の中心線X
2を多モード光干渉導波路3の中心線X
0及び後方狭幅導波路1の中心線X
1から偏心した、
図1に示す1×1型多モード光干渉導波路3(以下、必要に応じて「非対称MMI3」と称す)において、例えば、主干渉光波長λが1550nmの基本モード光の光強度をシミュレーションした場合には、
図2(b)に示す光フィールドが得られる。
【0033】
図2(b)に示すように、非対称MMI3の導波路長L
MMIが(3/4)×L
π(ビート長)の場合には、基本モード光が非対称MMI3の前方ポート3b側の端面で2箇所に分散されており、一の前方ポート3bから射出される基本モード光の透過率が低くなる。
【0034】
そこで、本願発明者は、非対称MMI3の導波路長L
MMIを変化させて、一の前方ポート3bから射出される基本モード光の透過率を算出し、非対称MMI3を備える半導体レーザー100の透過特性を検証することで(
図3(a)参照)、非対称MMI3の最適な導波路長L
MMIの理論式を導出した(下記数4参照)。
【0035】
〔数4〕
L
MMI=L
π ・・・(4)
【0036】
そして、数4に基づき、導波路長L
MMIをビート長L
πに一致させた非対称MMI3においては、例えば、主干渉光波長λが1550nmの基本モード光の光強度をシミュレーションした場合に、
図2(a)に示す光フィールドが得られた。すなわち、
図2(a)に示すように、非対称MMI3の導波路長L
MMIが1×L
π(ビート長)の場合には、基本モード光が非対称MMI3の前方ポート3b側の端面で1箇所(前方ポート3b)に結像し、一の前方ポート3bから射出される基本モード光の透過率を高くすることができる。
【0037】
後方狭幅導波路1は、多モード光干渉導波路3の各後方ポート3aに一端がそれぞれ接続されるM本の光導波路からなり、後方狭幅導波路1の各光導波路は、高次モード光を遮断するシングルモード導波路である。また、後方狭幅導波路1は、各光導波路の他端を反射面とする。なお、後方狭幅導波路1は、2次モード光を遮断する2次モードカットオフ導波路であってもよい。この場合には、半導体レーザー100が1×1型多モード光干渉導波路3を備える構成において、基本(0次)モード光と2次モード光とが同時に発振することなく、良好な単一モード動作を実現することができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、1×1型多モード光干渉導波路3を例に挙げて説明するために、後方狭幅導波路1は、1本の光導波路からなる。特に、本実施形態に係る後方狭幅導波路1は、導波路長が50μm程度であり、導波路幅が2.7μm程度である、直線領域のみからなる直線導波路である。また、後方狭幅導波路1の中心線X
1は、
図1(a)に示す平面視における後方ポート3aの中心線X
1に一致しており、後方狭幅導波路1は、
図1(a)に示す平面視における1×1型多モード光干渉導波路3の導波方向に沿う中心線X
0から中心線X
1を偏心して配設される。
【0039】
前方狭幅導波路2は、多モード光干渉導波路3の前方ポート3bに一端が接続される1本の光導波路からなり、高次モード光を遮断するシングルモード導波路である。また、前方狭幅導波路2は、他端を出射面とする。なお、前方狭幅導波路2は、2次モード光を遮断する2次モードカットオフ導波路であってもよい。この場合には、半導体レーザー100が1×1型多モード光干渉導波路3を備える構成において、基本(0次)モード光と2次モード光とが同時に発振することなく、良好な単一モード動作を実現することができる。特に、本実施形態に係る前方狭幅導波路2は、導波路長が50μm程度であり、導波路幅が2.7μm程度である、直線領域のみからなる直線導波路である。また、前方狭幅導波路2の中心線X
2は、
図1(a)に示す平面視における前方ポート3bの中心線X
2に一致しており、前方狭幅導波路2は、
図1(a)に示す平面視における1×1型多モード光干渉導波路3の導波方向に沿う中心線X
0から中心線X
2を偏心して配設され、
図1(a)に示す平面視における後方狭幅導波路1の中心線X
1から中心線X
2を偏心して配設される。
【0040】
つぎに、
図1、
図4及び
図5を参照して、本実施形態に係る半導体レーザー100の製造方法を説明する。
まず、通常のn−InP基板10上に、MOVPE(Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy:有機金属気相成長)法を用いて、n−InP膜21、InGaAsP/InGaAsP−1.55μm帯膜22、i−InP膜23、p−InP膜24、p−InGaAs膜25を順番に堆積し、積層を形成する(
図4(a))。
【0041】
そして、ステッパ(縮小投影露光装置)による通常のフォトリソグラフィ法を用いて、
図1(a)に示す、後方狭幅導波路1、多モード光干渉導波路3、前方狭幅導波路2の平面形状に合わせて、p−InGaAs膜25上にエッチング用のマスク26を形成する(
図4(b))。
【0042】
このマスク26を用いて、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)法によりドライエッチングを施して、コンタクト層15となるp−InGaAs膜25、第2のクラッド層14となるp−InP膜24、第1のクラッド層13となるi−InP膜23、発光層12となるInGaAsP/InGaAsP−1.55μm帯膜22、バッファ層11となるn−InP膜21における不要な部分を部分的(マスクが形成されていない部分のみ)に除去し、断面形状としてハイメサ構造を形成する(
図5(a))。なお、
図5(a)においては、エッチングの進行が、基板10の表面まで達して一部が除去されており、基板10にエッチング底面10cを図示している。
【0043】
この後、エッチングで除去した部分をBCBで埋め込んで埋め込み層16を形成し(
図5(b))、コンタクト層15の直上にあるマスク26を、有機溶剤及びアッシング法により除去する(
図1(b)、
図1(c))。
【0044】
そして、PN接合間に順バイアスを加えるための外部電極となる図示しないTi/Pt/Au層を、コンタクト層15上に電子ビーム蒸着法で形成する。なお、Ti/Pt/Au層は、コンタクト層15上のみに選択的に形成してもよいし、コンタクト層15及び埋め込み層16上の基板10全面に形成してもよい。しかしながら、コンタクト層15上のみに選択的にTi/Pt/Au層を形成する場合には、パターニングを行なう製造工程が増加するために、コンタクト層15及び埋め込み層16上の基板10全面にTi/Pt/Au層を形成するのが好ましい。
【0045】
その後、光導波路が形成されていない基板10の裏面を研磨して、PN接合間に順バイアスを加えるための外部電極となる図示しないTi/Pt/Au層を、基板10の裏面全面に電子ビーム蒸着法で形成する。
【0046】
そして、複数の半導体レーザー100素子が形成された基板10に対して、半導体レーザー100素子間の境界に沿って劈開することで、
図1に示す構造を有する半導体レーザー100素子を得ることができる。この劈開により、半導体レーザー100素子の後方端面(基板10の一端面10a、後方狭幅導波路1の反射面)及び前方端面(基板10の他端面10b、前方狭幅導波路2の出射面)がそれぞれ形成される。
【0047】
最後に、前方端面に低反射防止膜を形成し、後方端面に高反射膜を形成して、半導体レーザー100素子の製造を終了する。
【0048】
なお、本実施形態に係る製造方法においては、結晶成長方法としてMOVPE法を用いているが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシー)法であっても適用可能である。
【0049】
また、本実施形態に係る製造方法においては、エッチング方法としてRIE法を用いているが、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)法やウェットエッチング法であっても適用可能である。
また、本実施形態に係る製造方法においては、フォトリソグラフィ法にステッパを用いているが、必ずしもこれに限られるわけではなく、例えば、電子ビーム露光装置であっても適用可能である。
【0050】
つぎに、本実施形態に係る半導体レーザー100において、多モード光干渉導波路3の前方ポート3b(前方狭幅導波路2)の中心線X
2を多モード光干渉導波路3の中心線X
0から偏心させて、多モード光干渉導波路3に前方ポート3b(前方狭幅導波路2)を配設させることによる作用効果について説明する。
【0051】
なお、本実施形態に係る半導体レーザー100に対する比較例1として、
図6(a)に示すように、3×1型多モード光干渉導波路3の前方ポート3b(前方狭幅導波路2)の中心線X
2が、3×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0に一致する、リッジ構造の半導体レーザーを例に挙げて説明する。
【0052】
比較例1では、全長Lが1400μmである半導体レーザー100素子の端面を劈開により形成し、−10℃の条件下で、注入電流Iを125mAとし、主干渉光(基本モード光)の波長λを1550nmに設定して、連続波(CW:Continuous Wave)を発振し、発光スペクトルを測定したところ、
図7(a)に示すように、副モード抑圧比(SMSR)が12dBであった。
【0053】
これに対し、本実施形態に係る半導体レーザー100では、
図7(b)に示すように、副モード抑圧比(SMSR)が33dBであり、良好な単一モード動作を実現することができるという作用効果を奏する。
【0054】
なお、
図6(b)に示すように、ハイメサ構造のシングルモード導波路のみからなる半導体レーザーであれば、
図7(c)に示すように、副モード抑圧比(SMSR)が12dBである。特に、シングルモード導波路のみからなる半導体レーザーは、多モード光干渉導波路3の導波路幅W
1と比較してシングルモード導波路の導波路幅が狭く、高い電流を注入することができないため、半導体レーザーの高出力化が実現できない。
【0055】
これに対し、本実施形態に係る半導体レーザー100では、全領域に活性層を有する非対称MMI3を備えることにより、非対称MMI3を発光領域として機能させて半導体レーザー100の高出力化を実現できると共に、副モード抑圧比(SMSR)が30dB以上であり、通信用単一波長特性を満足することができるという作用効果を奏する。
なお、本実施形態に係る半導体レーザー100においては、半導体レーザーの効率の指標である量子効率で評価すると、通常の半導体レーザーと同等の量子効率が得られていた。
【0056】
つぎに、多モード光干渉導波路3の中心線X
0に対する前方ポート3bの中心線X
2による偏心量dの許容範囲を検証する。
【0057】
まず、下記表1に示す多モード光干渉導波路3の導波路幅W
1が7.4μm、10μm又は15μmの場合において、偏心量dを変化させて、半導体レーザー100の最大透過率をそれぞれ算出した(下記表2参照)。
【0060】
そして、本願発明者は、表2に示す結果に基づき、偏心量dと多モード光干渉導波路3の実効導波路幅W
eとの関係に着目し、最大透過率が最も高くなる最適な偏心量d(以下、「基準偏心量d
0」と称す)の理論式を導出した(下記数5参照)。
【0061】
〔数5〕
d
0=W
e/6 ・・・(5)
【0062】
また、数5に基づき、表2に示す多モード光干渉導波路3の導波路幅W
1が7.4μm、10μm又は15μmの場合の各表を一の表にまとめ(下記表3参照)、
図3(b)に示すように、基準偏心量d
0との差及び半導体レーザーの透過率の関係を図示した。
【0064】
ここで、理論上の波長透過率が0.7以上の場合に通信用単一波長特性を満足する副モード抑圧比(SMSR)が30dB以上になるため、表3及び
図3(b)に基づき、偏心量dの最適な範囲(許容範囲)は、多モード光干渉導波路3の実効導波路幅W
eの1/6を基準として、±0.3μm以内であることがわかる。
【0065】
また、偏心量dが1.26μm、1.7μm又は2.53μmの場合において、半導体レーザー100の波長透過特性を検証したところ、
図8(a)に示すように、偏心量dを増加させると、波長依存性が強くなることがわかる。すなわち、多モード光干渉導波路3の大きさに制約がなければ、通信用単一波長特性を満足する波長安定性を得るうえで、偏心量dを増加させることが好ましいことがわかる。
【0066】
なお、
図6(c)に示すように、多モード光干渉導波路3の中心線X
0と後方ポート3aの中心線X
1及び前方ポート3bの中心線X
2とが一致する多モード光干渉導波路(以下、「対称MMI」と称す)ではあるが、ハイメサ構造の対称MMI又はリッジ構造の対称MMIの場合において、半導体レーザーの波長透過特性を検証したところ、
図8(b)に示すように、ハイメサ構造の対称MMIが、リッジ構造の対称MMIと比較して、半導体レーザーの透過率が僅かに高いことがわかる。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る半導体レーザー100においては、グレーティングを有していないにも関わらず、単一波長を選択する機構を内包することになり、単一波長による発振が得られるという作用効果を奏する。特に、本実施形態に係る半導体レーザー100においては、グレーティングを利用したDFB−LD(distributed-feedback laser diode:分布帰還型半導体レーザー)等の従来の半導体レーザーと比較して、製造工程が簡素化でき、低コストの光源を実現することができるという作用効果を奏する。
【0068】
また、本実施形態に係る半導体レーザー100においては、1×1型の非対称MMI3を備えることより、通信用単一波長特性を満足する副モード抑圧比(SMSR)が30dB以上である33dBを達成し、良好な単一モード動作を実現することができるという作用効果を奏する。
【0069】
なお、本実施形態に係る基準偏心量d
0(最大透過率が最も高くなる最適な偏心量d)及び偏心量dの最適な範囲(許容範囲)は、主干渉光(基本モード光)の波長λが1550nmである場合について説明したが、主干渉光(基本モード光)の波長λに依存しない。
すなわち、基準偏心量d
0は、多モード光干渉導波路3の実効導波路幅W
eの1/6倍であり、偏心量dの最適な範囲(許容範囲)は、多モード光干渉導波路3の実効導波路幅W
eの1/6を基準として、±0.3μm以内である。
なお、多モード光干渉導波路3の導波路長L
MMIは、例えば、主干渉光(基本モード光)の波長λを850nmとした場合に、主干渉光(基本モード光)の波長λが1550nmである場合の導波路長L
MMIの約1.82(=1550nm/850nm)倍になる。
【0070】
(本発明の第2の実施形態)
図9(a)は第2の実施形態に係る半導体レーザーの概略構成の一例を示す平面図であり、
図9(b)は
図9(a)に示す半導体レーザーの矢視C−C’線の断面図であり、
図9(c)は
図9(a)に示す半導体レーザーの矢視C−C’線の他の断面図である。
図9において、
図1乃至
図8と同じ符号は、同一または相当部分を示し、その説明を省略する。
【0071】
本実施形態に係る多モード光干渉導波路3は、
図9(b)に示すように、導波方向に対して垂直な仮想面4(基本モード光又は信号光が結像する結像点4aを含む活性層(発光層12))のうち結像点4aを除く非結像領域4bに、高次モード光又は迷光を吸収する光吸収部5を備える。なお、仮想面4とは、例えば、
図2(a)に示すように、光干渉の結果、入射光と同じ光フィールドが周期的に現れる結像位置(結像点4a)を与える、導波方向に対して垂直な面をいう。
【0072】
光吸収部5は、例えば、多モード光干渉導波路3が、非結像領域4bに対応して、上面から活性層(発光層12)の下層(バッファ層11又は基板層10)まで達する凹部5aを有し、シリコーン樹脂を母材としてカーボンブラックを混合した光吸収体を凹部5a内に配設することで構成することができる。この構成により、光吸収部5は、高次モード光(迷光)を吸収して、多モード光干渉導波路3の前方ポート3bから高次モード光(迷光)を射出させる割合を低減させることができる。
【0073】
ここで、光吸収部5を有さない、第1の実施形態に係る1×1型多モード光干渉導波路3において、例えば、主干渉光波長λが1550nmの基本モード光の光強度をシミュレーションした光フィールドは、
図2(a)に示すように、1×1型多モード光干渉導波路3の後方ポート3a側の端面から所定の距離毎に結像点4a及び非結像領域4bが表れる。
【0074】
そこで、本実施形態においては、
図2(a)に示す光フィールドに基づき、
図9(a)に示すように、1×1型多モード光干渉導波路3の後方ポート3a及び前方ポート3b近傍にある非結像領域4bに対応させて、当該非結像領域4bの領域に収まる平面形状で光吸収部5を配設した。
【0075】
なお、光吸収部5を配設する位置は、有効な光吸収部5を形成することができ、非結像領域4bに配設することができるのであれば、1×1型多モード光干渉導波路3の後方ポート3a及び前方ポート3b近傍にある非結像領域4bに限られるものではない。
【0076】
また、前述したように、シリコーン樹脂を母材としてカーボンブラックを混合した光吸収体を凹部5a内に配設して光吸収部5を構成する場合について説明したが、非結像領域4bに対応するコンタクト層15を除去(電気的分離溝5bを形成)して、非結像領域4bに対応するPN接合間に順バイアスを加えることができない構成にし、多モード光干渉導波路3における非結像領域4bに対応する領域を光吸収体(可飽和吸収領域)として機能させることも考えられる。
【0077】
ここで、
図9(c)を参照して、電気的分離溝5bを有する多モード光干渉導波路3を備えた半導体レーザー100の製造方法を説明する。
なお、この半導体レーザー100の製造方法は、埋め込み層16を形成し(
図5(b))、コンタクト層15の直上にあるマスク26を、有機溶剤及びアッシング法により除去する(
図1(b)、
図1(c))までは、第1の実施形態に係る半導体レーザー100の製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0078】
マスク26を除去して露出したコンタクト層15における、電気的分離溝5bとなる領域を、ウェットエッチング法により除去し、電気的分離溝5bを形成する(
図9(c))。
そして、PN接合間に順バイアスを加えるための外部電極となる図示しないTi/Pt/Au層を、コンタクト層15上に電子ビーム蒸着法で形成する。
【0079】
その後、光導波路が形成されていない基板10の裏面を研磨して、PN接合間に順バイアスを加えるための外部電極となる図示しないTi/Pt/Au層を、基板10の裏面全面に電子ビーム蒸着法で形成する。
【0080】
そして、複数の半導体レーザー100素子が形成された基板10に対して、半導体レーザー100素子間の境界に沿って劈開することで、
図9(a)及び
図9(c)に示す構造を有する半導体レーザー100素子を得ることができる。
最後に、前方端面に低反射防止膜を形成し、後方端面に高反射膜を形成して、半導体レーザー100素子の製造を終了する。
【0081】
なお、この第2の実施形態においては、多モード光干渉導波路3に光吸収部5を新たに配設するところのみが第1の実施形態と異なるところであり、後述する光吸収部5による作用効果以外は、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0082】
光吸収部5は、高次モード光を吸収して、多モード光干渉導波路3の前方ポート3bから高次モード光を射出させる割合を低減させ、副モード抑圧比(SMSR)をさらに高くすることができるという作用効果を奏する。
【0083】
(本発明の第3の実施形態)
図10(a)は第3の実施形態に係る3×1型多モード光干渉導波路を備える半導体レーザーの概略構成の一例を示す平面図であり、
図10(b)は第3の実施形態に係る3×1型多モード光干渉導波路を備える半導体レーザーの概略構成の他の例を示す平面図である。
図11(a)は第3の実施形態に係る4×1型多モード光干渉導波路を備える半導体レーザーの概略構成の一例を示す平面図であり、
図11(b)は第3の実施形態に係る4×1型多モード光干渉導波路を備える半導体レーザーの概略構成の他の例を示す平面図である。
図12(a)は
図10(b)及び
図11(b)に示す半導体レーザーの矢視D−D’線の断面図であり、
図12(b)は
図10(b)及び
図11(b)に示す半導体レーザーの矢視E−E’線の断面図であり、
図12(c)は
図10(b)及び
図11(b)に示す半導体レーザーの矢視F−F’線の断面図である。
図13(a)は
図10(a)に示す3×1型多モード光干渉導波路の導波路長をビート長の1/3倍にした場合における主干渉光波長λが1550nmの基本モード光の光強度をシミュレーションした光フィールドを示す説明図であり、
図13(b)は
図11(a)に示す4×1型多モード光干渉導波路の導波路長をビート長の1/4倍にした場合における主干渉光波長λが1550nmの基本モード光の光強度をシミュレーションした光フィールドを示す説明図である。
図14は第3の実施形態に係る半導体レーザーの製造方法を説明するための
図12(c)に対応する断面図である。
図15は
図14に示す半導体レーザーの製造方法の続きを説明するための断面図である。
図10乃至
図15において、
図1乃至
図9と同じ符号は、同一または相当部分を示し、その説明を省略する。なお、
図12(c)、
図14及び
図15に示す断面図は、後方狭幅導波路1における導波方向に沿った断面図であり、
図12(a)及び
図12(b)に示す断面図は、前方狭幅導波路2及び多モード光干渉導波路3における導波方向に垂直な断面図であり、矢視線の方向が異なる。
【0084】
前述した第1の実施形態に係る半導体レーザー100においては、Mを1とする1×1型多モード光干渉導波路3を例に挙げて説明したが、この1×1型多モード光干渉導波路3に限られるものではない。
例えば、
図10に示すように、Mを3とする3×1型多モード光干渉導波路3であってもよいし、
図11に示すように、Mを4とする4×1型多モード光干渉導波路3であってもよい。
【0085】
まず、3×1型多モード光干渉導波路3について、
図10を用いて説明する。
3×1型多モード光干渉導波路3の前方ポート3bは、第1の実施形態において前述したように、中心線X
2と3×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0との間隔がW
e/6となるように偏心して配設される。
【0086】
また、3×1型多モード光干渉導波路3の後方ポート3aは、3×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0を基準にして、前方ポート3bと同じ(対向)側にある2つのポート(第1の後方ポート101a、第2の後方ポート102a)と、前方ポート3bと異なる(対角)側にある1つのポート(第3の後方ポート103a)とからなる。
【0087】
第1の後方ポート101aの中心線(第1の中心線X
1a)及び第2の後方ポート102aの中心線(第2の中心線X
1b)間の中間に位置する基準線(第1の基準線X
3)は、3×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0からW
e/6だけ偏心する。
また、第1の後方ポート101a及び第2の後方ポート102aは、第1の中心線X
1a及び第2の中心線X
1bが第1の基準線X
3に対してW
e/(3M)(但し、M=3)だけそれぞれ偏心し、第1の中心線X
1a及び第2の中心線X
1b間の間隔が2W
e/(3M)(但し、M=3)となるように偏心して、それぞれ配設される。
【0088】
また、第3の後方ポート103aは、中心線(第3の中心線X
1c)と3×1型多モード光干渉導波路3における第3の後方ポート103aに最も近い側面との間隔がW
e/9となるように偏心して配設される。
【0089】
ここで、第1の実施形態において前述した1×1型多モード光干渉導波路3に対応する数4は、M×1型多モード光干渉導波路3に対応するように次式(6)により拡張することができる。
【0090】
〔数6〕
L
MMI=L
π/M(Mは正の整数) ・・・(6)
【0091】
なお、本実施形態に係る3×1型多モード光干渉導波路3の設計例としては、3×1型多モード光干渉導波路3の導波路幅W
MMIが10μmであり、3×1型多モード光干渉導波路3の導波路長L
MMIが94μmであり、後方狭幅導波路1及び前方狭幅導波路2の導波路幅W
aが1μmである。
【0092】
また、導波路長L
MMIをビート長L
πの1/3倍にした3×1型の非対称MMI3においては、例えば、主干渉光波長λが1550nmの基本モード光の光強度をシミュレーションした場合に、
図13(a)に示す光フィールドが得られた。すなわち、
図13(a)に示すように、3×1型の非対称MMI3の導波路長L
MMIがL
π(ビート長)/M(但し、M=3)の場合には、基本モード光が非対称MMI3の前方ポート3b側の端面で1箇所(前方ポート3b)に結像し、一の前方ポート3bから射出される基本モード光の透過率を高くすることができる。
【0093】
なお、3×1型多モード光干渉導波路3は、後方ポート3a(第1の後方ポート101a、第2の後方ポート102a、第3の後方ポート103a)に入射する光の位相(端面位相)を整合させなければ、半導体レーザー100として発振することができない(大きな閾値になってしまう)。
このため、3×1型多モード光干渉導波路3を備える半導体レーザー100は、第2の後方ポート102aに入射される光の位相を基準(0[rad])として、第1の後方ポート101aに入射される光の位相をπ/3[rad]ずらし、第3の後方ポート103aに入射される光の位相を−π/3[rad]ずらすように、後方狭幅導波路1を位相整合導波路として機能させる。
【0094】
なお、位相整合導波路の一例としては、
図10(a)に示すように、第2の後方ポート102aに接続する後方狭幅導波路1(第2の後方狭幅導波路1b)を直線導波路にし、第1の後方ポート101aに接続する後方狭幅導波路1(第1の後方狭幅導波路1a)及び第3の後方ポート103aに接続する後方狭幅導波路1(第3の後方狭幅導波路1c)を湾曲部分を含む曲線導波路にして、第1の後方ポート101a、第2の後方ポート102a及び第3の後方ポート103aに入射される光の位相を整合する。
【0095】
また、位相整合導波路の他の例としては、
図10(b)及び
図12(c)に示すように、後方狭幅導波路1の長さ方向を横断するように、コンタクト層15の一部を除去して後方狭幅導波路1を2つの領域(位相調整領域6a、導波路領域6b)に分割し、この位相調整領域6a及び導波路領域6bに異なる電流を注入して発光層12の屈折率を変化させることにより、第1の後方ポート101a、第2の後方ポート102a及び第3の後方ポート103aに入射される光の位相を整合する。
【0096】
ここで、位相整合導波路の他の例である位相調整領域6a及び導波路領域6bを備えた半導体レーザー100の製造方法について、
図14及び
図15を用いて説明する。
なお、この半導体レーザー100の製造方法は、埋め込み層16を形成し(
図5(b))、コンタクト層15の直上にあるマスク26を、有機溶剤及びアッシング法により除去する(
図1(b)、
図1(c))までは、第1の実施形態に係る半導体レーザー100の製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0097】
マスク26を除去して露出したコンタクト層15及び埋め込み層16上にフォトレジストを塗布し、ステッパによるフォトリソグラフィ法を用いて、
図10(b)に示す、位相調整領域6a及び導波路領域6bの境界(幅4μm〜10μm程度)を除く領域の平面形状に合わせて、コンタクト層15及び埋め込み層16上にエッチング用のマスク27を形成する(
図14(a))。
【0098】
このマスク27を用い、硫酸系薬品を用いたウェットエッチング法により、位相調整領域6a及び導波路領域6bの境界となるコンタクト層15における不要な部分を部分的に除去する(
図14(b))。
【0099】
その後、コンタクト層15上にあるマスク27を、有機溶剤及びアッシング法により除去し、熱CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法を用いて、露出した第2のクラッド層14及びコンタクト層15上にSiO
2膜17を堆積させて、絶縁層を形成する(
図14(c))。
【0100】
そして、SiO
2膜17上にフォトレジストを塗布し、ステッパによるフォトリソグラフィ法を用いて、コンタクト層15及び第1の外部電極7a間を接続するコンタクトホールを形成するために当該コンタクトホールを除く領域の平面形状に合わせて、SiO
2膜17上にエッチング用のマスク28を形成する(
図14(d))。
【0101】
このマスク28を用いて、ウェットエッチング法により、SiO
2膜17におけるコンタクトホールとなる部分を部分的に除去し、SiO
2膜17の窓明けを行なう(
図15(a))。
【0102】
その後、SiO
2膜17上にあるマスク28を、有機溶剤及びアッシング法により除去し、電子ビーム蒸着法を用いて、PN接合間に順バイアスを加えるための第1の外部電極7aとなる金属(Ti/Pt/Au)をコンタクトホール内及びSiO
2膜17上に堆積させて、第1のTi/Pt/Au層18aを形成する(
図15(b))。
【0103】
その後、第1のTi/Pt/Au層18a上にフォトレジストを塗布し、ステッパによるフォトリソグラフィ法を用いて、
図10(b)に示す、後方狭幅導波路1(位相調整領域6a及び導波路領域6bの境界を除く)、前方狭幅導波路2及び多モード光干渉導波路3の領域の平面形状に合わせて、第1のTi/Pt/Au層18a上にエッチング用のマスク29を形成する(
図15(c))。
【0104】
このマスク29を用いて、イオンミリング法によりドライエッチングを施して、後方狭幅導波路1、前方狭幅導波路2及び多モード光干渉導波路3を除く領域(位相調整領域6a及び導波路領域6bの境界を含む)にある第1のTi/Pt/Au層18aを除去し(
図15(d))、第1のTi/Pt/Au層18a上にあるマスク29を有機溶剤及びアッシング法により除去して、第1の外部電極7aを形成する。
【0105】
その後、光導波路が形成されていない基板10の裏面を研磨して、PN接合間に順バイアスを加えるための第2の外部電極7bとなる第2のTi/Pt/Au層18bを、基板10の裏面全面に電子ビーム蒸着法で形成する(
図12)。
【0106】
そして、複数の半導体レーザー100素子が形成された基板10に対して、半導体レーザー100素子間の境界に沿って劈開することで、
図10(b)及び
図12に示す構造を有する半導体レーザー100素子を得ることができる。
最後に、前方端面に低反射防止膜を形成し、後方端面に高反射膜を形成して、半導体レーザー100素子の製造を終了する。
【0107】
つぎに、4×1型多モード光干渉導波路3について、
図11を用いて説明する。
4×1型多モード光干渉導波路3の前方ポート3bは、第1の実施形態において前述したように、中心線X
2と4×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0との間隔がW
e/6となるように偏心して配設される。
【0108】
また、4×1型多モード光干渉導波路3の後方ポート3aは、4×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0を基準にして、前方ポート3bと同じ(対向)側にある2つのポート(第1の後方ポート101a、第2の後方ポート102a)と、前方ポート3bと異なる(対角)側にある2つのポート(第3の後方ポート103a、第4の後方ポート104a)とからなる。
【0109】
第1の後方ポート101aの中心線(第1の中心線X
1a)及び第2の後方ポート102aの中心線(第2の中心線X
1b)間の中間に位置する基準線(第1の基準線X
3)は、4×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0からW
e/6だけ偏心する。
また、第1の後方ポート101a及び第2の後方ポート102aは、第1の中心線X
1a及び第2の中心線X
1bが第1の基準線X
3に対してW
e/(3M)(但し、M=4)だけそれぞれ偏心し、第1の中心線X
1a及び第2の中心線X
1b間の間隔が2W
e/(3M)(但し、M=4)となるように偏心して、それぞれ配設される。
【0110】
第3の後方ポート103aの中心線(第3の中心線X
1c)及び第4の後方ポート104aの中心線(第4の中心線X
1d)間の中間に位置する基準線(第2の基準線X
4)は、4×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0からW
e/6だけ偏心する。
また、第3の後方ポート103a及び第4の後方ポート104aは、第3の中心線X
1c及び第4の中心線X
1dが第2の基準線X
4に対してW
e/(3M)(但し、M=4)だけそれぞれ偏心し、第3の中心線X
1c及び第4の中心線X
1d間の間隔が2W
e/(3M)(但し、M=4)となるように偏心して、それぞれ配設される。
【0111】
なお、本実施形態に係る4×1型多モード光干渉導波路3の設計例としては、4×1型多モード光干渉導波路3の導波路幅W
MMIが15μmであり、4×1型多モード光干渉導波路3の導波路長L
MMIが159μmであり、後方狭幅導波路1及び前方狭幅導波路2の導波路幅W
aが1μmである。
【0112】
また、導波路長L
MMIをビート長L
πの1/4倍にした4×1型の非対称MMI3においては、例えば、主干渉光波長λが1550nmの基本モード光の光強度をシミュレーションした場合に、
図13(b)に示す光フィールドが得られた。すなわち、
図13(b)に示すように、4×1型の非対称MMI3の導波路長L
MMIがL
π(ビート長)/M(但し、M=4)の場合には、基本モード光が非対称MMI3の前方ポート3b側の端面で1箇所(前方ポート3b)に結像し、一の前方ポート3bから射出される基本モード光の透過率を高くすることができる。
【0113】
なお、4×1型多モード光干渉導波路3は、後方ポート3a(第1の後方ポート101a、第2の後方ポート102a、第3の後方ポート103a、第4の後方ポート104a)に入射する光の位相(端面位相)を整合させなければ、半導体レーザー100として発振することができない(大きな閾値になってしまう)。
このため、4×1型多モード光干渉導波路3を備える半導体レーザー100は、第2の後方ポート102a及び第3の後方ポート103aに入射される光の位相を基準(0[rad])として、第1の後方ポート101aに入射される光の位相をπ/4[rad]ずらし、第4の後方ポート104aに入射される光の位相を−π/4[rad]ずらすように、後方狭幅導波路1を位相整合導波路として機能させる。
【0114】
なお、位相整合導波路の一例としては、
図11(a)に示すように、第2の後方ポート102a及び第3の後方ポート103aに接続する後方狭幅導波路1(第2の後方狭幅導波路1b、第3の後方狭幅導波路1c)を直線導波路にし、第1の後方ポート101aに接続する後方狭幅導波路1(第1の後方狭幅導波路1a)及び第4の後方ポート104aに接続する後方狭幅導波路1(第4の後方狭幅導波路1d)を湾曲部分を含む曲線導波路にして、第1の後方ポート101a、第2の後方ポート102a、第3の後方ポート103a及び第4の後方ポート104aに入射される光の位相を整合する。
【0115】
また、位相整合導波路の他の例としては、
図11(b)及び
図12(c)に示すように、後方狭幅導波路1の長さ方向を横断するように、コンタクト層15の一部を除去して後方狭幅導波路1を2つの領域(位相調整領域6a、導波路領域6b)に分割し、位相調整領域6a及び導波路領域6bに異なる電流を注入して発光層12の屈折率を変化させることにより、第1の後方ポート101a、第2の後方ポート102a、第3の後方ポート103a及び第4の後方ポート104aに入射される光の位相を整合する。
【0116】
(本発明の第4の実施形態)
図16(a)は第4の実施形態に係る3×1型多モード光干渉導波路を備える半導体レーザーの概略構成の一例を示す平面図であり、
図16(b)は第4の実施形態に係る4×1型多モード光干渉導波路を備える半導体レーザーの概略構成の一例を示す平面図である。
図17(a)は
図16(a)に示す3×1型多モード光干渉導波路の導波路長をビート長に一致させた場合における主干渉光波長λが1550nmの基本モード光の光強度をシミュレーションした光フィールドを示す説明図であり、
図17(b)は
図16(b)に示す4×1型多モード光干渉導波路の導波路長をビート長の3/4倍にした場合における主干渉光波長λが1550nmの基本モード光の光強度をシミュレーションした光フィールドを示す説明図である。
図16及び
図17において、
図1乃至
図15と同じ符号は、同一または相当部分を示し、その説明を省略する。
【0117】
前述した第3の実施形態に係る3×1型多モード光干渉導波路3及び4×1型多モード光干渉導波路3においては、多モード光干渉導波路3の中心線X
0を基準にして後方ポート3aの各中心線が非対称(不均等)に配設されている場合について説明したが、
図16に示すように、多モード光干渉導波路3の中心線X
0を基準にして後方ポート3aの各中心線が対称(均等)に配設されてもよい。
【0118】
まず、3×1型多モード光干渉導波路3について、
図16(a)を用いて説明する。
3×1型多モード光干渉導波路3の前方ポート3bは、中心線X
2と3×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0との間隔がW
e/3となるように偏心して配設される。
【0119】
また、3×1型多モード光干渉導波路3の後方ポート3aは、3×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0と一致する中心線(第2の中心線X
1b)を有する第2の後方ポート102aと、3×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0を基準にして中心線(第1の中心線X
1a、第3の中心線X
1c)が等間隔であり、前方ポート3bと同じ(対向)側にある第1の後方ポート101aと、前方ポート3bと異なる(対角)側にある第3の後方ポート103aとからなる。
また、第1の後方ポート101a及び第3の後方ポート103aは、第1の中心線X
1a及び第3の中心線X
1cが3×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0に対してW
e/3だけそれぞれ偏心して配設される。特に、第1の後方ポート101aの第1の中心線X
1aは、前方ポート3bの中心線X
2と一致する。
【0120】
ここで、第1の実施形態において前述した1×1型多モード光干渉導波路3に対応する数4は、複数の後方ポート3aが対称(均等)に配設されたM×1型多モード光干渉導波路3に対応するように次式(7)により拡張することができる。
【0121】
〔数7〕
L
MMI=3×L
π/M(Mは正の整数) ・・・(7)
【0122】
なお、本実施形態に係る3×1型多モード光干渉導波路3の設計例としては、3×1型多モード光干渉導波路3の導波路幅W
MMIが10μmであり、3×1型多モード光干渉導波路3の実効導波路幅W
eが約10.2μmであり、3×1型多モード光干渉導波路3の導波路長L
MMIが約285μmであり、後方狭幅導波路1及び前方狭幅導波路2の導波路幅W
aが1μmである。
【0123】
また、導波路長L
MMIをビート長L
πに一致させた(ビート長L
πの3/3倍にした)3×1型の非対称MMI3においては、例えば、主干渉光波長λが1550nmの基本モード光の光強度をシミュレーションした場合に、
図17(a)に示す光フィールドが得られた。すなわち、
図17(a)に示すように、3×1型の非対称MMI3の導波路長L
MMIが3×L
π(ビート長)/M(但し、M=3)の場合には、基本モード光が非対称MMI3の前方ポート3b側の端面で1箇所(前方ポート3b)に結像し、一の前方ポート3bから射出される基本モード光の透過率を高くすることができる。
【0124】
なお、3×1型多モード光干渉導波路3を備える半導体レーザー100は、第2の後方ポート101aに入射される光の位相を基準(0[rad])として、第2の後方ポート102aに入射される光の位相をπ/3[rad]ずらし、第3の後方ポート103aに入射される光の位相を2π/3[rad]ずらすように、後方狭幅導波路1を位相整合導波路として機能させる。
【0125】
また、位相整合導波路としては、図示は省略するが、第1の後方狭幅導波路1aを直線導波路にし、第2の後方狭幅導波路1b及び第3の後方狭幅導波路1cを湾曲部分を含む曲線導波路にして、第1の後方ポート101a、第2の後方ポート102a及び第3の後方ポート103aに入射される光の位相を整合してもよい。
【0126】
つぎに、4×1型多モード光干渉導波路3について、
図16(b)を用いて説明する。
4×1型多モード光干渉導波路3の前方ポート3bは、中心線X
2と4×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0との間隔が3W
e/8となるように偏心して配設される。
【0127】
また、4×1型多モード光干渉導波路3の後方ポート3aは、4×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0を基準にして、前方ポート3bと同じ(対向)側にある2つのポート(第1の後方ポート101a、第2の後方ポート102a)と、前方ポート3bと異なる(対角)側にある2つのポート(第3の後方ポート103a、第4の後方ポート104a)とからなる。
【0128】
また、第2の後方ポート102a及び第3の後方ポート103aは、第2の中心線X
1b及び第3の中心線X
1cが4×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0に対してW
e/8だけそれぞれ偏心して配設される。
【0129】
また、第1の後方ポート101a及び第4の後方ポート104aは、第1の中心線X
1a及び第4の中心線X
1dが4×1型多モード光干渉導波路3の中心線X
0に対して3W
e/8だけ偏心してそれぞれ配設される。特に、第1の後方ポート101aの第1の中心線X
1aは、前方ポート3bの中心線X
2と一致する。
【0130】
なお、本実施形態に係る4×1型多モード光干渉導波路3の設計例としては、4×1型多モード光干渉導波路3の導波路幅W
MMIが10μmであり、4×1型多モード光干渉導波路3の実効導波路幅W
eが約10.2μmであり、4×1型多モード光干渉導波路3の導波路長L
MMIが214μmであり、後方狭幅導波路1及び前方狭幅導波路2の導波路幅W
aが1μmである。
【0131】
また、導波路長L
MMIをビート長L
πの3/4倍にした4×1型の非対称MMI3においては、例えば、主干渉光波長λが1550nmの基本モード光の光強度をシミュレーションした場合に、
図17(b)に示す光フィールドが得られた。すなわち、
図17(b)に示すように、4×1型の非対称MMI3の導波路長L
MMIが3×L
π(ビート長)/M(但し、M=4)の場合には、基本モード光が非対称MMI3の前方ポート3b側の端面で1箇所(前方ポート3b)に結像し、一の前方ポート3bから射出される基本モード光の透過率を高くすることができる。
【0132】
なお、4×1型多モード光干渉導波路3を備える半導体レーザー100は、第1の後方ポート101a及び第4の後方ポート104aに入射される光の位相を基準(0[rad])として、第2の後方ポート102aに入射される光の位相を5π/4[rad]ずらし、第3の後方ポート103aに入射される光の位相をπ/4[rad]ずらすように、後方狭幅導波路1を位相整合導波路として機能させる。
【0133】
また、位相整合導波路としては、図示は省略するが、第1の後方狭幅導波路1a及び第4の後方狭幅導波路1dを直線導波路にし、第2の後方狭幅導波路1b及び第3の後方狭幅導波路1cを湾曲部分を含む曲線導波路にして、第1の後方ポート101a、第2の後方ポート102a、第3の後方ポート103a及び第4の後方ポート104aに入射される光の位相を整合してもよい。
【0134】
なお、第3の実施形態並びに第4の実施形態に係る3×1型多モード光干渉導波路3及び4×1型多モード光干渉導波路3においても、前述した第2の実施形態と同様に、光吸収部5を非結像領域4bに備えてもよい。
【0135】
この場合に、3×1型多モード光干渉導波路3においては、
図13(a)又は
図17(a)に示す光フィールドに基づき、4×1型多モード光干渉導波路3においては、
図13(b)又は
図17(b)に示す光フィールドに基づいて、多モード光干渉導波路3の前方ポート3b近傍にある非結像領域4bに対応させて、当該非結像領域4bの領域に収まる平面形状で光吸収部5を配設することになる。
【0136】
なお、光吸収部5を配設する位置は、有効な光吸収部5を形成することができ、非結像領域4bに配設することができるのであれば、多モード光干渉導波路3の前方ポート3b近傍にある非結像領域4bに限られるものではない。
【0137】
なお、複数の後方ポート3aが対称(均等)に配設された本実施形態に係るM×1型多モード光干渉導波路3では、前述した数7から分かるように、複数の後方ポート3aが非対称(不均等)に配設されたM×1型多モード光干渉導波路3の導波路長L
MMIと比較して、導波路長L
MMIが3倍になる。
このため、半導体レーザー100としては、素子の小型化を図るうえで、複数の後方ポート3aが非対称(不均等)に配設されたM×1型多モード光干渉導波路3であることが好ましい。