特許第5987316号(P5987316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987316
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】人型ロボットの足
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
   B25J5/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-512148(P2011-512148)
(86)(22)【出願日】2009年6月5日
(65)【公表番号】特表2011-521799(P2011-521799A)
(43)【公表日】2011年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2009056965
(87)【国際公開番号】WO2009147243
(87)【国際公開日】20091210
【審査請求日】2012年5月21日
【審判番号】不服2014-14999(P2014-14999/J1)
【審判請求日】2014年7月31日
(31)【優先権主張番号】0853713
(32)【優先日】2008年6月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510256872
【氏名又は名称】ベイア
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】アルファイド、サメール
(72)【発明者】
【氏名】ベン オーエズドウ、ファティ
(72)【発明者】
【氏名】ナムオウン、ファイサル
【合議体】
【審判長】 平岩 正一
【審判官】 西村 泰英
【審判官】 渡邊 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−293776(JP,A)
【文献】 特開2005−271110(JP,A)
【文献】 特開2004−167666(JP,A)
【文献】 Koichi NISHIWAKI et al、「Toe Joints that Enhance Bipedal and Fullbody Motion of Humanoid Robots」、Proceedings of the 2002 IEEE international Conference on Robotics & Automation Washington、DC、May 2002
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
くるぶしを用いて脚部につながれ得る人型ロボットの足であって、
足の裏(11)と、
つま先(12)と、
くるぶしから独立した、前記足の裏(11)と前記つま先(12)との間の回転における動力化された連結部(13)であって、前記つま先(12)が前記連結部(13)の軸(14)周りの角度位置の変化に従って動くことができる連結部と、
前記連結部(13)の動力化を可能にするアクチュエータ(19)と、
前記くるぶしの動きから独立して前記連結部(13)が動くように、前記アクチュエータ(19)を制御する手段と、
を備えることを特徴とする足であって、
前記アクチュエータ(19)は、前記つま先の角速度に依存するトルクを当該つま先に加えるダンパー(減衰)の機能および前記連結部に駆動トルクを加えるためのモータの機能とを組み合わせた機能を有し、
前記アクチュエータは、前記足の矢状面内に含まれる軸(23)に沿って伸縮可能の直線状のジャッキ(19)で構成され、前記ジャッキ(19)の一方の端部は、前記足の裏(11)に固定された縦材(22)上に連結され、前記ジャッキ(19)の他方の端部は、前記つま先(12)上に連結され、かつ、
前記つま先(12)が前記足の裏(11)と一列に並ぶとき、前記つま先(12)が前記足の裏11の底面よりも下方に下げられることを可能にするように、前記ジャッキの軸(23)が前記足の裏(11)の底面と平行な面(17)に対して傾いており、
前記アクチュエータは、前記つま先(12)を前記足の裏(11)の平面に対して上昇させることを可能にするとともに、前記つま先(12)を前記足の裏(11)の平面の下方に下げることを可能にするように構成されており、
前記アクチュエータ(19)を制御する手段が、
少なくとも
前記連結部(13)の回転を減衰させる制御または前記連結部(13)の回転中に、前記ジャッキ(19)に、前記つま先(12)を下降させる方向に動力を加える制御を選択的に行うことを特徴とする、足。
【請求項2】
前記連結部(13)が、前記足(10)の矢状面内で、前記足の裏(11)に対する前記つま先(12)の回転を可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の足。
【請求項3】
縦材(22)上の前記ジャッキ(19)の支持面が、前記ジャッキ(19)の前記軸(23)及び、前記連結部(13)と前記つま先(12)における前記ジャッキ(19)の支持面とをつないでいる軸(18)が一点に集中するのを保つように、前記足の裏(11)の底面と平行な平面であって、前記連結部(13)と前記つま先(12)における前記ジャッキ(19)の支持面とをつないでいる軸(18)を通る平面(17)の上部に位置することを特徴とする、請求項1あるいはのいずれか一項に記載の足。
【請求項4】
前記ジャッキ(19)が電気式又は油圧式であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の足。
【請求項5】
前記ジャッキ(19)が、前記つま先(12)を下降又は上昇させることを可能にする複動式ジャッキであることを特徴とする、請求項1〜いずれか一項に記載の足。
【請求項6】
ジャッキ(19)が、前記つま先(12)を下降させるため、前記つま先(12)を押すように設計された単動式ジャッキであることを特徴とする、請求項1〜いずれか一項に記載の足。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の、少なくとも1つの足(10)を備えることを特徴とする、人型ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は足及び、足を使用する人型ロボットに関する。本発明は人の形態学に出来る限り近付いている人型ロボットの製作において、特別な有用性を見出す。
【背景技術】
【0002】
この形態学について説明する数学的モデルは、オハイオ州デイトンにある航空宇宙医学研究所(Aerospace Medical Research Laboratories in Dayton, Ohio)により、アメリカにおいて1960年代に開発された。Hanavan(ハナバン)モデルとしてよく知られているこのモデルは、与えられた人間の身長及び体重、体のあらゆる部分の寸法に関してパラメータ的に記述する。足は通常、足の矢状面において回転の自由度を有する継手を用いて共に接続される、足の裏とつま先を持つものとして表現される。
【0003】
例えば、身長1.6mで体重50kgである14歳の若者に対して、足は長方形の平行六面体の集合から成る。足の全長は243mm、幅は80mm、かかとの高さは62mmで、足の後側とつま先の連結部との間の距離は207mmである。
【0004】
現今、多くの人型ロボットが開発されて来ているが、それらのいずれもHavananモデルに適合していない。さらに、既知のロボットはつま先の可動性又は受動的な可動性を持たない、広くて一体物の足を有する。そのような足はロボットの歩行の滑らかさを損ない、それを人類の歩き方から大幅に遠ざける。
【0005】
動的計算は、同じく1.6mと50kgのロボットに対して1.2m/sの速度における歩行を達成するには、足の裏とつま先間の連結が、30Wの出力を伴う20N・mのオーダートルク、及び0°〜+60°の範囲の動きを必要とすることを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、例えばHavananモデルでモデル化された、ロボットの製作と人間の生体構造との間の合致を改善することである。本発明のさらなる目的は人間の足の複雑なモデル化を再現することなく、ロボットが歩くときの運動の滑らかさを改善することである。
【0007】
これらの目的を達成するため、本発明はつま先が足の裏に対して動ける足を実現することを提案する。本発明は又、つま先と足の裏間の連結部に、つま先の回転運動におけるその角度行程に依存しないトルクを加えることを提案する。確かに、つま先と足の裏間の連結部にそのようなトルクを加えることは、ロボットの歩行の滑らかさを改善するため、人間の足が確保するものに近づくように、ロボットの足の推進局面の改善を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の主題は、くるぶしを用いて脚部につながれ得る人型ロボットの足であり、
足の裏(11)と、
つま先(12)と、
くるぶしから独立した、足の裏(11)とつま先(12)との間の回転における動力化された連結部(13)であって、つま先(12)が連結部(13)の軸(14)周りの角度行程に従って動くことができる連結部と、
連結部(13)の動力化を可能にするアクチュエータ(19)と、
独立式にアクチュエータ(19)を制御する手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のさらなる主題は、それが本発明による少なくとも一つの足を備えることを特徴とする人型ロボットである。
【0010】
つま先の角度行程に応じたトルクを、つま先に加える試みがなされている。このトルクは、例えばつま先と足の裏間の連結部に置かれる、ねじりばねのようなばねを用いて加えられる。そのようなトルクは足の推進局面の改善に関して、有意義な結果を与えなかったことが見出されている。
【0011】
本発明は、例として与えられている実施形態の、添付図により説明されている詳細記述を読むことによって、より良く理解され、その他の利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による足を透視図法で表わす。
図2】矢状面における断面による足を表わす。
図3】上面図における足10を表わす。
図4】足の裏に対するジャッキの継手を表わす。
図5】足の裏に対するつま先の継手を表わす。
図6】ジャッキに対するつま先の継手を表わす。
【0013】
明確化のため、同じ要素は各種の図において同じ参照番号を持つであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、足10の矢状面における、足の裏11及び、軸14周りの回転の自由度を有する連結部13を用いて、足の裏11に対して関節で接合されたつま先12を備える、足10を表わす。示された例において、複数のつま先12は共に固定され、一体物の機械部品で作られている。つま先は2つの端部15及び16を有する。端部15は軸14の上に位置し、端部16は足10の先端を形成する。連結部13はつま先が、軸14周りに約60°の運動の角度範囲で動くことを可能にする。図1は軸14周りの、それらの回転運動における第1の端部位置でのつま先12を示す。この位置において、つま先12は足の裏11と一直線になる。言い換えれば、足の裏は主として平面17上を延び、2つの端部15及び16を通過している軸18は、足の裏11の平面17内にある。図2は平面17に直角な矢状面内の断面における足10を示し、図3は上面図における足10を示す。
【0015】
つま先12の第2の端部位置は、つま先12が最高に上げられたとき、言い換えれば2つの端部15及び16を含む軸18が足の裏11の平面17と60°の角度をなすときに達せられる。
【0016】
関節で接合されたつま先12を含む足10を備えたロボットの歩行の際、アクチュエータとしてダンパーを用いることが可能である。そのようなアクチュエータは、つま先12の角度行程に依存せず、それらの角速度に依存するトルクをつま先12に対して加える。通常、角速度がより大きくなれば、ダンパーによって加えられるトルクはさらに大きくなる。ダンパーの使用は、ロボットの歩行時に移動する速度の関数として、連結部13に加えられるトルクを変えることを可能にする。ロボットが走るとき、それが歩くときよりも、ダンパーは連結部により大きいトルクを加えることを可能にする。勿論、行程に純粋に比例するトルクにより、ダンパーで与えられるトルクを補うことが可能である。
【0017】
アクチュエータはまた連結部13に駆動トルクを加えるためのモーターになり得る。このトルクは、つま先12を第2の端部位置から第1の端部位置へ動かすことを可能にする。つま先12に加えられるこのトルクは、足10により生み出されるロボットの推進を改善し、歩行に必要なエネルギーを約30%低減する。
【0018】
より一般的に、足はアクチュエータ19を独立式に、すなわちロボットのその他のあらゆる継手と無関係に制御するための手段を備える。例えば、連結部13の運動はロボットのくるぶしの動き、又はロボットの歩行局面とは無関係である。アクチュエータ19を制御する手段は、連結部13の完全な固定と、連結部13の角度行程の関数である復元トルクと、連結部13の回転の減衰と、連結部13の回転中に動力を加えることとから状態を選択することを可能にする。
【0019】
連結部13において足の裏11とつま先12との間に作用する回転モーターを用いて、この動力化を達成することができる。このタイプのモーターは、Havananモデルにより定義されるスペースの要求事項から離反し得る。別の代替手段は、その1つの端部20がつま先12の端部16上に置かれ、その別の端部21が足の裏11に固定された縦材22の上に置かれている、直線状のジャッキ19を用いてこの動力化を実現することにある。縦材22は足の裏11の平面17に対して直角に立つ。
【0020】
縦材22上のジャッキ19の支持面は、ジャッキ19の軸23及び、連結部13とつま先12におけるジャッキ19の支持面とをつないでいる軸18が一点に集中するのを保つように、その中に足の裏11が主として延びる平面17の上部に位置する。言い換えれば、軸18がジャッキの軸23と一直線になるのを防ぐため、ジャッキ19の端部21は、平面17の上部の縦材22の最頂部において縦材22と連結され、軸23はつま先12が動くとき、その位置と関わりなく端部20と21をつないでいる。そのような配列は連結部13に対してトルクが加わることを防ぐであろう。それにも拘わらず、縦材22の高さは足10の体積を減らすために制限されなければならない。
【0021】
足の裏11の平面に対するジャッキ19の傾きは、足の裏11の平面のいずれかの側に延び得る、つま先12の運動の或る角度範囲を可能にする。より正確には、運動の角度範囲は、主としてつま先12を足の裏11の平面に対して上昇させることを可能にする。ジャッキ19の傾きはまた、つま先12を僅かに足の裏11の平面の下方に下げることを可能にする。つま先12を下げない場合でも、ジャッキ19のこの傾きは、ジャッキ19によりつま先12に加えられるトルクの増加を可能にする。この運動範囲は、ロボットの歩行の推進局面を改善することを可能にする。
【0022】
足の裏11は、かかと24から足の裏11の前部に位置する連結部13へと延びる。縦材22は足の裏11の前の方へ取り付けられ、従って足の裏11の後部を解放して、示されていないロボットのくるぶしを、そこに取り付けることを可能にする。
【0023】
ジャッキ19は電気式であっても良く、それはまた油圧作動油により作動しても良い。従って、ジャッキ19は軸23上でシリンダ31内を動くことができる、ピストン30を備える。ピストン30は、ジャッキ19の端部20を形成するヨーク33に取り付けられたロッド32に固定されている。シリンダ31内部においてピストン30は2つの部屋34と35を画定し、油圧作動油がそれぞれ36と37のコネクタを介して、圧力下でそこに入ることができる。部屋34と35との間の圧力差は、つま先12を動かすためにロッド32の移動を可能にする。部屋34と35をシーリングするためにシールが用いられる。つま先12は、部屋34と35との間の圧力差の記号に応じて上昇又は下降する。2つの部屋34と35に供給する油圧作動油は、ロボット上にあるポンプにより供給され得る。ロボットがとりわけその二足のために幾つかのアクチュエータを備えるとき、各々のアクチュエータに専用のポンプを用意することが可能である。
【0024】
アクチュエータがダンパーに帰着する変形において、外部の油圧供給なしに、ジャッキ19に類似のダンパーを用いることが可能である。そのとき2つの部屋34と35は、作動油が1つの部屋からもう1つの部屋へ通ることを可能にする、較正された導管を介して接続される。つま先12を足の裏11と一直線にするために、部屋34又は35の一方にばねを置くことができる。減衰機能はまた、1つの部屋から他方へとポンプを介して通る作動油の流量を較正することにより、達成され得る。この場合、ポンプの制御は必要に応じてジャッキ19をモーター又はダンパーとして用いることを可能にする。従って、例えばロボットが歩行中に減衰パラメータを変えることが、有利にも可能であろう。より一般的なやり方で、同じアクチュエータは減衰機能又はモーターの機能を有し、これら2つの機能が組み合わされ得る。
【0025】
擬人化された歩行を確実にするため、伸びにおけるジャッキ19の圧力は最も重要である。部屋34だけに圧力油が供給され得る、単動式のジャッキの助けにより動力化が達成可能である。ジャッキの戻り動作を確実にするため、大気圧に保たれている部屋35に、ばねがそのとき設置される。
【0026】
ジャッキ19の端部20及び21は、それぞれつま先12に対して、及び縦材22に対して関節で接合される。各々の継手は軸14に対して平行な軸周りの、回転の自由度を有する。
【0027】
図4は縦材22との関連でジャッキ19の継手を表わす。この継手はジャッキ19のフォーク41に固定されたシャフト40を含む。フォーク41はジャッキ19の端部21を形成する。シャフト40は軸42上を、軸14と平行に延びる。シャフト40は例えばネジ43を用いてフォーク41に取り付けられる。シャフト40は縦材22内部に作られた軸42の内径44の内側で旋回可能である。シャフト40が内径44の中で回転するとき摩擦を低減するため、軸受45及び46を内径44とシャフト40との間に配置することができる。フォーク41は、軸42上の縦材11に対する、ジャッキ19のあらゆる並進運動を防止する。
【0028】
図5は足の裏11に対するつま先12の継手を表わす。連結部13を形成するこの継手は、縦材22上のジャッキ19の継手と同様に作られ得る。足の裏11はフォーク50を含む。軸14のシャフト51はネジ53を用いて、つま先12に属するヨーク52に取り付けられる。シャフト51はフォーク50の内径54及び55の中を滑ることができる。軸受56及び57はシャフト51とそれぞれ54及び55の内径との間に挿入され得る。
【0029】
軸14周りのつま先12の角度位置を測定するため、足の裏11に対する、つま先12に固定されたシャフト51の角度位置の関数としての、電気的情報の項目を配信するポテンショメーター58を、軸受57の脇に配置することができる。この情報はジャッキ19の制御を確定するために用いられ得る。
【0030】
図6はジャッキ19に対するつま先12の継手を示す。この継手もまた前の2つの継手と同様に製作され得る。つま先12の端部16は、その中に軸61のシャフト60がネジ62及び63を用いて取り付けられている、フォークの形状を持つ。シャフト60は、ヨーク33の内径64の中で旋回可能である。シャフト60が内径64の中で回転するときの摩擦を低減するため、軸受65及び66を内径64とシャフト60との間に配置することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6