(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3ブリッジは、前記ロータコアの中心軸に対して垂直な径方向に延びる直線であって、かつ、前記複数の永久磁石のうち1極分の永久磁石の重心を通る直線と平行な方向に延びて形成されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の永久磁石式電動機のロータ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1は、本実施形態に係る永久磁石式電動機のステータ及びロータの断面図を示す。本例の永久磁石式電動機(以下、モータと称す。)は、インナーロータ型のモータであり、固定子であるステータ1と、回転子であるロータ2とを備えている。
図1では、図示を省略しているが、本例のモータは、ステータ1及びロータ2の他に、ロータ2の回転軸となるシャフトやハウジングなどの他の部品を備えている。
【0010】
ステータ1は、内部にロータ2を回転可能に配置する円筒状の組立体である。ステータ1の中心軸は、ロータ2の回転軸と同軸となる。ステータ1は、円環状の鋼板であるステータコア11を複数積層させることで構成されている。ステータコア11には、ステータコア11の中心点から放射状に配置されたティース111と、ティース111に対して外側に配置された円環状のコアバック112を有している。ティース111は、コア本体部112から中心点に向かって延在させることで形成されている。そして、複数のティース間に巻線を巻き付けることで、ロータ2に回転磁界を発生させるコイル(図示しない)が形成されている。
【0011】
ロータ2は、薄型の円環状の、例えば珪素鋼板等の磁性体鋼板を絶縁材を間に挟みつつ複数積層させた円筒状の積層体のロータコア21と、該ロータコア21の他に、永久磁石22を備えている。ロータコア21は、中心軸を、モータの回転軸と同軸状になるよう構成されている。ロータコア21の中央には、中心点を中心とする円環状の中心孔22が形成されている。そして、この中心孔22に、ロータ2の回転軸となるシャフト(図示しない)が挿入されている。
【0012】
永久磁石23は、磁極の数を8極として、1極あたり2個の計16個設けられている。永久磁石23は、ロータ2の中心軸(ロータの回転軸中心)に対して垂直な方向に沿う断面において、長方形の形状をし、中心軸Oの軸方向に沿う棒状の磁石である。永久磁石23は、ロータコア21の円周方向に沿って、所定の間隔毎で、ロータコア21の外周部分に配置されている。また、永久磁石23は、2個を1組とした隣り合う磁石をV字状に配置して1極を形成し、当該V字状の磁石がロータコア21の外側に向かって拡がるように、配置されている。
【0013】
V字状に配置された永久磁石23a、23bのうちV字の付け根部分を通り、かつ、中心軸に対して垂直な径方向へ伸びる直線がd軸に相当する。また、V字状に配置された永久磁石23aと永久磁石23bとの間で、ロータコア21の外縁側の先端部分と通る直線であって、かつ、中心軸に対して垂直な径方向へ伸びる直線がq軸に相当する。言い換えると、永久磁石23a、23bの両端部のうち、ロータコア21の中心軸側(ロータコア21の内縁側)で、互いに接近する部分と、
図1の中心点Oとを結ぶ線がd軸になる。また、ロータコア21の外縁側(外径側)で、V字状に配置された永久磁石23a、23bと、当該永久磁石23a、23bと隣接してV字状に配置された永久磁石23c、23dとの間(すなわち隣接する2極間)で、互いに接近する部分(磁石23bと磁石23cとが互いに接近する端部)と、ロータコア21の中心点(
図1の中心点O)とを結ぶ線がq軸になる。
【0014】
なお、本実施例において、以下ではロータコア21の中心軸に垂直な方向(ロータ2の回転軸中心に対して垂直な方向)を径方向と言い、径方向でロータコア21の中心軸から離れる方向の側を外径側あるいは外縁側、径方向ロータコア21の中心軸に近接する方向の側を内径側あるいは内縁側、ロータ2回転時の回転方向を周方向と言う。
【0015】
次に、
図2を用いて、永久磁石23b、23cが埋め込まれた部分について説明する。
図2は、
図1のロータのうち、永久磁石23b、23cが埋め込まれた部分の拡大図である。
【0016】
ロータコア21は、永久磁石23b、23cを保持するための貫通孔24b、24cと、フラックスバリア25、26とで形成された極間フラックスバリア29、短絡防止フラックスバリア27、28とを有している。貫通孔24b、24cは、ロータコア21の中心軸の軸方向に貫通し、かつ、ロータコア21の積層面と平行な面においてロータコア21の円周方向に沿って所定の間隔毎に貫通された孔である。貫通孔24bは、ロータコア21の中心軸に対して垂直な断面で長方形の形状に形成されている。貫通孔24cも貫通孔24bと同様に、長方形の形状に形成されている。貫通孔24b、24cの両端のうち、ロータコア21の外縁側の端部はq軸に接近して配置され、ロータコア21の内縁側(ロータコア21の中心点O側)の端部は、このq軸の隣のd軸に接近して配置されている。また、ロータコア21の中心点Oから貫通孔24b、24cのd軸に接近した端部(ロータコア21の内縁側の端部)までの半径は、ロータコア21の中心点Oから貫通孔24b、24cのq軸に接近した端部(ロータコア21の外縁側の端部)までの半径より短くなっている。
【0017】
フラックスバリア25、26及び短絡防止フラックスバリア27、28は、ロータコア21の中心軸の軸方向に貫通し、かつ、ロータコア21の積層面と平行な面においてロータコア21の円周方向に沿って、後述する所定の規則性をもって配置され、貫通された孔である。フラックスバリア25、26及び短絡防止フラックスバリア27、28は、磁束がq軸側に回り込みステータ1と鎖交しない漏れ磁束の発生を防ぐために設けられている。また短絡防止フラックスバリア27、28は、例えば永久磁石25bの先端部から出た磁力線が当該永久磁石25bの先端部付近のロータコア21を通って同じ永久磁石25bに戻ってくる磁気短絡を防ぐために設けられている。
【0018】
極間フラックスバリア29は、ロータコア21の中心軸に対して垂直な方向の面(ロータコア21の積層面と平行な面)において、q軸上に形成され、隣り合う二極間に形成されている。この極間フラックスバリア29はフラックスバリア25と、該フラックスバリア25のロータコア21の周方向で両側に設けられたフラックスバリア26で構成されている。フラックスバリア25は、ロータコア21の積層面で、略五角形の形状をした孔である。なお、略五角形とは五角形の頂点部分を曲線状にした形状を含む。略五角形状のフラックスバリア25のうち、最も辺の長さが長い底辺が、ロータコア21の外縁側であって、外周に沿うように形成されている。また、フラックスバリア25はq軸に対して線対称な形状であって、フラックスバリア25の空間内にq軸を含んでいる。言い換えると、フラックスバリア25は孔によりq軸を跨ぐような形状である。
【0019】
フラックスバリア26は、フラックスバリア25に対してロータコア21の周方向で隣接する、ロータコア21に形成された孔である。フラックスバリア26は、ロータコア21の積層面で、略三角形の形状をした孔である。なお、略三角形とは三角形の頂点部分を曲線状にした形状を含む。略三角形状のフラックスバリア26の三辺のうちロータコア21の外縁側の一辺は、ロータコア21の外周に沿うように形成されている。そして、フラックスバリア26の当該三辺のうちロータコア21の円周方向の一辺は、フラックスバリア25の五辺の内の一辺と間で、ロータコア21の外周方向に所定の間隔を空けて、対向している。
【0020】
フラックスバリア26は、フラックスバリア25に対してロータコア21の周方向両側において隣接する、二つのフラックスバリア26が対になるように形成されている。またこれらのフラックスバリア26は、q軸に対して線対称な形状であるが、極間フラックスバリア26の空間内にq軸を含んでいない。これにより、フラックスバリア26とフラックスバリア25、25とによって、ロータコア21の外径方向を底辺とした、q軸に対して線対称な略三角形状の極間フラックスバリア29を形成している。
【0021】
短絡防止フラックスバリア27は、永久磁石23bの両端のうち、ロータコア21の外縁側の端部(永久磁石23bの側面)から極間フラックスバリア29に近接する方向へ延びる、貫通孔24cに連通した孔である。また、短絡防止フラックスバリア27は、永久磁石23bの端部と、後述するブリッジ212との間に形成されている。短絡防止フラックスバリア27は、ロータコア21の積層面で、永久磁石26bの端部を臨む辺を含んだ略四角形の形状に形成されている。なお、略四角形とは四角形の頂点部分を曲線状にした形状を含む。
【0022】
短絡防止フラックスバリア28は、永久磁石23bの両端のうち、ロータコア21の内縁側の端部(永久磁石23bの側面)から延びる、貫通孔24cに連通した孔である。
【0023】
ブリッジ211は、ロータコア21の円周方向に沿って、フラックスバリア25、26よりロータコア21の外縁側でコアにより形成されている。言い換えると、ブリッジ211は、ロータコア21の外縁側の側面と、フラックスバリア25、26の(極間フラックスバリア29の)外縁側の側面との間に形成されている。ブリッジ211は、磁気抵抗を大きくするために、ロータコア21の径方向における幅(
図2のw
1に相当)を小さくすることで、当該中心軸に垂直な平面において、ロータコア21の円周方向に沿って帯状に形成されている。
【0024】
ブリッジ212は、短絡防止フラックスバリア27と極間フラックスバリア29との間(
図2においてはフラックスバリア25との間)に、コアにより形成されている。ロータコア21の中心軸に垂直な平面において、フラックスバリア25の内縁側の側面と短絡防止フラックスバリア27の外縁側の側面との間である、ブリッジ212の幅(
図2のw
2に相当)は、上記のブリッジ211の幅よりも大きくなるよう、形成されている。
【0025】
ブリッジ213は、フラックスバリア25とフラックスバリア26との間で、ブリッジ211とブリッジ212とをコアで結ぶように形成されている。すなわちブリッジ213は、極間フラックスバリア29のロータ外径側に位置するブリッジ211とロータ内径側に位置するブリッジ212とを接続して、極間フラックスバリア29をフラックスバリア25とフラックスバリア26とに分断するように形成されている。
【0026】
言い換えると、ブリッジ213は、ブリッジ212からロータコア21の外縁側に向かって延在して、ブリッジ211のロータコア21の内縁側の側面に繋がるように形成されている。以上により、極間フラックスバリア29と、該極間フラックスバリア29のロータ内径側に位置する短絡防止フラックスバリア27、27との間にはブリッジ212、212が形成され、極間フラックスバリア29とロータコア21の外周縁との間にはブリッジ211が形成され、且つブリッジ212、212とブリッジ211とを結ぶブリッジ213によって極間フラックスバリア29がフラックスバリア25とフラックスバリア26とに分断されている。
【0027】
ロータコア21の中心軸に対して垂直方向の平面において、フラックスバリア25とフラックスバリア26との間であるブリッジ213の幅(
図2のw
3に相当))は、ロータコア21の外縁側の側面とフラックスバリア25、26の外縁側の側面との間であるブリッジ211の幅(w
1)より小さく、フラックスバリア25の内縁側の側面と短絡防止フラックスバリア27の外縁側の側面との間であるブリッジ212の幅(w
2)よりも小さい。また、ブリッジ213の幅(w
3)は、ロータコア21を形成する磁性体鋼板の板厚(ロータコア21の中心軸の軸方向における磁性体鋼板の厚さ)の約2倍である。
【0028】
これにより、フラックスバリア25とフラックスバリア26とで形成される略三角形状の極間フラックスバリア29がブリッジ213で複数に分割され、フラックスバリア25及びフラックスバリア26がブリッジ213を境に独立した孔になるように、フラックスバリア25、26及びブリッジ213が形成されている。
【0029】
ここで、ブリッジ213の幅(w
3)とq軸からの漏れ磁束との関係について説明する。
図3は、ブリッジ213の幅(w
3)に対する、q軸からの漏れ磁束の割合いの特性を示すグラフである。横軸は、ブリッジ213の幅(w
3)に対応し、縦軸は、ブリッジ213を設けない場合(極間フラックスバリア29を、ブリッジ213でフラックスバリア25とフラックスバリア26とに分割せずに、単一の孔で形成した場合)におけるd軸からステータ1に鎖交する磁束を100パーセントとした時に、ブリッジ213を設けることによる鎖交磁束の変化量(減少量)を割合(鎖交磁束割合)で示している。すなわち、当該割合が少ないほど、d軸からステータ1に鎖交する磁束が少なくなり、q軸からの漏れ磁束が増加することとなる。
【0030】
図3に示すように、ブリッジ213の幅(w
3)がブリッジ213の幅(w
1)以下である場合には、鎖交磁束割合は100パーセントを維持しており、ブリッジ213の幅(w
3)がブリッジ213の幅(w
2)と同じ大きさにした場合には、鎖交磁束割合が100パーセントより低くなっていることが分かる。すなわち、本例は、ブリッジ213の幅(w
1)より小さいブリッジ213の幅(w
3)を設けたことで、鎖交磁束割合が減少することなく、漏れ磁束が増加することもない。
【0031】
上記のように、本例のロータ21は、フラックスバリア25、26のロータコア21の外縁側のブリッジ211と、短絡防止フラックスバリア27とフラックスバリア25との間に形成されたブリッジ212とを、ブリッジ213で結合するように、形成されている。
【0032】
ところで、ブリッジ212は、磁気抵抗を大きくするために、幅を狭くして、細長くすることが好ましいが、ロータ2の回転時に生じる遠心力(遠心力)に対して強度を確保する必要がある。本例では、ブリッジ212を、ブリッジ213を介してブリッジ211に結合させることで、ブリッジ213がブリッジ212を補強するよう機能するため、ブリッジ212の幅を小さくすることができ、フラックスバリア25、26を小さくしなくてもよい。
【0033】
ゆえに本例は、ブリッジ213を有していない場合(極間フラックスバリア29を、ブリッジ213でフラックスバリア25とフラックスバリア26とに分割せずに、単一の孔で形成した場合)と比較して、ロータ21の回転時の遠心力に対する強度を高めることができ、当該場合と比較して、ブリッジ212の幅をより狭くすることができ、ブリッジ212の磁気抵抗も高めることができる。さらに、極間フラックスバリア29の大きさを十分に確保して、q軸方向への漏れ磁束を防ぎ、かつ、ロータ2の強度を高めることできる。その結果として、本例は、高速回転領域で回転することができるロータ2の量産性を高めることができる。
【0034】
なお、上記のフラックスバリア25が本発明の「第1フラックスバリア」に相当し、フラックスバリア26が本発明の「第2フラックスバリア」に、ブリッジ211が本発明の「第1ブリッジ」に、ブリッジ212が本発明の「第2ブリッジ」に、ブリッジ213が本発明の「第3ブリッジ」に相当する。
【0035】
《第2実施形態》
図4は、発明の他の実施形態に係るモータのロータの断面の拡大図である。本例では上述した第1実施形態に対して、短絡防止フラックスバリア27の形状が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであるため、その記載を適宜、援用する。
【0036】
図4に示すように、短絡防止フラックスバリア27は、永久磁石23cの端部である側面の一部から極間フラックスバリア29に近接する方向へ延びる、貫通孔24cに連通して形成された孔である。短絡防止フラックスバリア27の外縁側の側面は、フラックスバリア25の内縁側の側面と平行になっていない。ロータ21の中心軸に対して垂直な平面において、短絡防止フラックスバリア27の外周は曲線になっており、短絡防止フラックスバリア27の外縁側とフラックスバリア25の内縁側との間の距離が連続的に変化することになる。ここで、当該距離が最小になる(
図4のw
4に相当)、短絡防止フラックスバリア27の外縁上の点を点aとする。また短絡防止フラックスバリア27の外周が頂点を有さないような曲線により、Rをもたせた形状にしている。
【0037】
ブリッジ212は、フラックスバリア25及びフラックスバリア26とで形成された極間フラックスバリア29と、短絡防止フラックスバリア27との間の、コアで形成されている。ロータコア21の中心軸に対して垂直な平面において、短絡防止フラックスバリア27の外周方向縁は
図4中の点aでフラックスバリア25に最も近接している。すなわち、ブリッジ212の幅は、フラックスバリア25と短絡防止フラックスバリア27との間では、点aを通る直線で最短距離(W
4)になっており、q軸に対して当該平面の外周方向に沿うように大きくなっている。言い換えると、ロータコア21の中心軸に対して垂直な平面において、ブリッジ212の幅は、点aを通る最小幅(W
4)の直線を基準に、d軸方向に近づくにつれて徐々に大きくなり、かつ、q軸方向に近づくにつれて徐々に大きくなっている。これにより、本例は、短絡防止フラックスバリア27を上記のような形状にすることで、ロータ2の回転時に生じる応力をできるだけ分散させて、ブリッジ212の幅を小さくして、q軸への磁束漏れを防いでいる。
【0038】
ブリッジ213は、ロータコア21の中心軸に対して垂直な径方向に延びる直線であって、かつ、点aを通る直線(直線A)を含む位置に形成されている。ここで、
図4において、直線Aはロータコア21の中心点(
図1、
図4の点O)から点aを通る直線に相当する。言い換えると、フラックスバリア25の内縁側の側面とフラックスバリア26の内縁側の側面との間で、ブリッジ212に臨むブリッジ213の側面(
図4の点線で示す線分Bに相当)が、直線Aと交差するように、ブリッジ213を形成する。
【0039】
ロータ2の回転時に発生する応力は、短絡防止フラックスバリア27の外縁側の側面のうち、点aの部分に最も大きく加わり、その応力の方向は直線Aに向かう方向となる。ブリッジ212において、遠心力に対する強度は、フラックスバリア25、26を設けた部分よりも、ブリッジ213を設けた部分の方が大きくなる。そのため本例では、短絡防止フラックスバリア27の外縁側の側面のうち、最も遠心力が大きくなる部分に、ブリッジ213を設けることで、当該遠心力に対する強度を高めている。
【0040】
図5を用いて、ブリッジ213を形成する位置と遠心力との関係について、説明する。
図5は、q軸からブリッジ213の中心の位置までの距離に対する最大応力割合の特性を示すグラフである。q軸からブリッジ213の中心の位置までの距離は、
図4の紙面上(ロータコア21の中心軸に対して垂直な平面上)において、q軸に対して鉛直方向で、q軸から、ブリッジ213の周方向両側面(フラックスバリア25、26の、それぞれブリッジ213を形成する側面)間の中点までの距離に相当する。また、最大応力割合は、ブリッジ213を設けない場合に加わる応力を100パーセントとしている。また、
図5に示す領域Cが、直線Aがブリッジ213上にある場合、言い換えると、直線Aが線分Bと交差する場合に相当する。
【0041】
図5に示すように、直線Aの位置に対して、ブリッジ213をずらした位置に(直線Aを含まない位置に)ブリッジ213を設けたとしても、最大応力割合は減少している。そして、直線Aがブリッジ213上にある場合には、応力は小さくなり、ブリッジ213の中点が直線A上にある場合には、短絡防止フラックスバリア27の外縁上で集中していた応力が最も分散されて、最大応力割合を93パーセント以下に減少させることができる。これにより、ブリッジ213が直線Aを含む位置に形成されることで、短絡防止フラックスバリア27の外縁上(ブリッジ212)における遠心力の集中を緩和することができる。
【0042】
上記のように、本例は、ロータコア21の中心軸に対して垂直な径方向に延びる直線であって、かつ、極間フラックスバリア29と短絡防止フラックスバリア27との間の距離が最も短くなる、短絡防止フラックスバリア27の外縁上の点aを通る直線Aを含む位置に、ブリッジ213を形成する。これにより、短絡防止フラックスバリア27の外縁上における遠心力の集中を緩和し、当該外縁上における最大応力を小さくすることができる。その結果として、ロータ2の回転時に生じる遠心力に対する強度を高めることができる。
【0043】
なお、ロータ2の回転時に発生する応力は、短絡防止フラックスバリア27の外縁上で、ロータコア21の中心軸から最も離れた部分に、最も大きく加わるが、本例では、短絡防止フラックスバリア27の外縁部分の長さはロータコア21の大きさに対して十分に短い。そのため、本例では、短絡防止フラックスバリア27の外縁に加わる遠心力が、点aの部分で最も大きくなるとしている。しかしながら、短絡防止フラックスバリア27の外縁の曲線形状により、ロータの遠心力が最も加わる点が、点a以外の場所である場合には、ロータコア21の中心軸に対して垂直な径方向で、かつ、ロータ2の遠心力が最も加わる、短絡防止フラックスバリア27の外縁上の点を通る直線を含む位置にブリッジ213を形成すればよい。
【0044】
なお、本例において、ブリッジ213は直線Aを含む位置に形成されているが、ブリッジ213が当該直線Aに沿うよう形成されていればよい。言い換えると、仮想直線である直線Aがブリッジ213上(ロータコア21の中心軸に対して垂直な平面に沿う、ブリッジ213の表面上)に引かれるように、ブリッジ213が形成されていればよい。
【0045】
《第3実施形態》
図6は、発明の他の実施形態に係るモータのロータの断面の拡大図である。本例では上述した第1実施形態に対して、短絡防止フラックスバリア27の外縁の形状に対応して、ブリッジ213の位置を規定している点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1実施形態及び第2実施形態の記載を適宜、援用する。
【0046】
図6に示すように、短絡防止フラックスバリア27は、磁石23cの端部である側面の一部から極間フラックスバリア29に近接する方向へ延びる、貫通孔24cに連通して形成された孔である。短絡防止フラックスバリア27は、略四角形の形状に形成され、略四角形のうちの一辺はブリッジ212を介してフラックスバリア25の内縁側と対向し、当該一辺に対して反対側の辺は磁石23cの表面に沿うよう形成されている。また、短絡防止フラックスバリア27の外縁側の側面は、極間フラックスバリア29(
図6中ではフラックスバリア25)の内縁側の側面と平行になっている。すなわち、フラックスバリア25と短絡防止フラックスバリア27との対向する互いの辺が平行になるように、フラックスバリア25、短絡防止フラックスバリア27及びブリッジ212が形成されている。
【0047】
第2実施形態に係る短絡防止フラックスバリア27と異なり、本例の短絡防止フラックスバリア27の外縁は、ロータ2の遠心力を分散させるような形状になっていない。本例の短絡防止フラックスバリア27では、ロータ2の遠心力は、ロータ2の中心軸からの距離が最も長い、フラックスバリア27の外縁上の点(
図6の点eに相当)に集中する。
【0048】
ブリッジ213は、ロータコア21の中心軸に対して垂直な径方向で、かつ、点eを通る直線Eを含む位置に形成されている。ここで、
図6において、直線Eはロータコア21の中心点(
図1、
図6の点O)から点eを通る直線に相当する。言い換えると、フラックスバリア25の内縁側の側面とフラックスバリア26の内縁側の側面との間で、ブリッジ212に臨むブリッジ213の側面(
図3の点線で示す線分Fに相当)が、直線Eと交差するように、ブリッジ213を形成する。
【0049】
上記のように、本例は、ロータコア21の中心軸に対して垂直な径方向で、かつ、ロータ2の遠心力が最も加わる、短絡防止フラックスバリア27の外縁上の点を通る直線を含む位置に、ブリッジ213を形成する。これにより、短絡防止フラックスバリア27の外縁上における遠心力の集中を緩和し、当該外縁上における最大応力を小さくすることができる。その結果として、ロータ2の回転時に生じる遠心力に対する強度を高めることができる。
【0050】
なお、本例において、ブリッジ213は直線Eを含む位置に形成されているが、ブリッジ213が当該直線Eに沿うよう形成されていればよい。言い換えると、仮想直線である直線Eがブリッジ213上(ロータコア21の中心軸に対して垂直な平面に沿う、ブリッジ213の表面上)に引かれるように、ブリッジ213が形成されていればよい。
【0051】
《第4実施形態》
図7は、発明の他の実施形態に係るモータのロータの断面の拡大図である。本例では上述した第2実施形態に対して、ブリッジ213の位置が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第2実施形態の記載を適宜、援用する。
【0052】
図1及び
図7に示すように、本例の複数の永久磁石23のうち、V字状に配置された永久磁石23a及び永久磁石23bが1極分の磁石であり、V字状に配置された永久磁石23c及び永久磁石23dが1極分の磁石である。1極分の磁石23c、23d(永久磁石23c、23dを合せた1極分の磁石)に対するロータ2の回転時の遠心力の合力の方向(すなわち、1極分の磁石各部位に付与される遠心力のベクトルを合成した合成ベクトルの方向)は、ロータ回転中心Oと1極分の永久磁石23c、23dの重心とを通る直線上の方向となる。そして、1極分の永久磁石23c、23dの重心はd軸上に配置されている。そのため、1極分の磁石23c、23dに対する遠心力の合力の方向は、ロータコア21の中心軸に対して垂直な径方向で、1極分の永久磁石23c、23dの重心を通る直線の方向となり、d軸と同じ方向になる。
【0053】
ブリッジ213は、d軸と平行な直線G上に沿うよう形成されている。すなわち、ブリッジ213の周方向両側面から、それぞれ等距離になる直線(フラックスバリア25とフラックスバリア26とからそれぞれ等距離になる直線)を、ブリッジ213の中心線とすると、当該中心線がd軸と平行になるよう、ブリッジ213が形成されている。
【0054】
永久磁石23に加わる遠心力は、永久磁石23より外縁側に配置された極間フラックスバリア29(フラックスバリア25、26)及びブリッジ211に対して、永久磁石23からロータコア21の外縁に向かって加わり、その合力の方向は1極分の磁石23(永久磁石23c、23dとを合せた1極分の磁石)の重心とロータコア21の中心点を結ぶ直線の方向となる。本例では、ブリッジ213の中心線と、1極分の磁石23の重心とロータコア21の中心点を結ぶ直線とが平行になるように、ブリッジ213が形成されている。これにより、ブリッジ211のうち、遠心力の加わる方向に合せた方向に延びるブリッジ213を形成することで、遠心力に対する強度を高めることができる。
【0055】
次に、ブリッジ213の中心線の傾きと遠心力との関係について、
図8を用いて、説明する。
図8は、q軸に対するブリッジ213の中心線の電気角と、最大応力割合との特性を示すグラフである。最大応力割合は、ブリッジ213を設けない場合に加わる応力を100パーセントとしている。
【0056】
図8に示すように、ブリッジ213の中心線をq軸に平行な角度からd軸に平行な角度に向けて傾けるにつれて、最大応力割合が徐々に低減し、ブリッジ213の中心線がd軸と平行になったところで、最大応力割合が最も小さくなる。また、
図8に示すように、q軸に対するブリッジ213の中心線の電気角を、60度から120度の範囲内にした場合に、ロータコア21の遠心力に対する強度を高めることができる。なお、電気角60度から120度の範囲は、6極以上の極をもつロータ2に限られる。
【0057】
上記のように、本例は、ロータコア21の中心軸に対して垂直な径方向に延びる直線であって、かつ、複数の永久磁石23のうち1極分の永久磁石23の重心を通る直線と平行になるよう、ブリッジ213を形成する。これにより、d軸に対して対称に配置された1極分の磁石23c、23d、及び、磁石23c、23dより外縁側に配置された、ブリッジ211〜213部分及びフラックスバリア25、26、27に加わる応力に対して、強度を高めることができる。
【0058】
また本例は、q軸に対するブリッジ213の中心を通る線分の角度を、電気角で60度から120度の間になるよう、ブリッジ213を形成する。これにより、ブリッジ213とd軸とが平行若しくは平行に近づけるよう、ブリッジ213を形成することでき、その結果として、ロータ2の遠心力に対する強度を高めることができる。
【0059】
なお、本例は、ロータコア21の中心軸に対して垂直な径方向で、一極分の永久磁石の重心を通る直線と、d軸を示す直線とが同一の直線であるが、それぞれの直線が異なる直線になる場合には、ブリッジ213の中心線を、ロータコア21の中心軸に対して垂直な径方向で、一極分の永久磁石の重心を通る直線と平行にしてもよい。また、本例においては二つの永久磁石(永久磁石23c、23d)で一極分の永久磁石を構成する例を挙げたがこれに限定されず、一つあるいは三つの永久磁石で一極分の永久磁石を構成してもよく、一極分の永久磁石を構成する永久磁石の個数に限定されない。