(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記第2ギヤにおける各歯の間であって当該各歯の頂部と上記基準円との間には、上記第2ギヤと噛合した上記遊星ギヤの歯の頂部が上記第2ギヤの径方向の内側に進入することを制止する制止部材が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。複合機10は、
図1に示す状態に設置されて使用される。本実施形態において、
図1に矢印を付して示す3つの方向が、上下方向7、前後方向8、及び左右方向9である。また、以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口13が形成された側を手前側(正面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側から見て左右方向9が定義される。なお、
図1に示す3つの方向は、他の図面においても同様に表示される。更に、以下の説明では、「向き」とは、一方の点から他方の離れた点に向く状態を意味し、「方向」とは、2つの離れた点の間で向く状態である。つまり、「方向」とは、一方の点から他方の離れた点に向く状態と、他方の離れた点から一方の点に向く状態とを含む意味である。
【0026】
[複合機10の全体構造]
図1に示されるように、複合機10(本発明の画像記録装置の一例)は、下部にプリンタ部11を備えている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。本実施形態において、複合機10は、プリント機能として、記録用紙12(本発明のシートの一例、
図2参照)の両面に画像を記録する両面画像記録機能を有しているが、片面画像記録機能のみを有していてもよい。プリンタ部11は、正面に開口13が形成されている。記録用紙12を載置可能な給送トレイ20(
図2参照)及び排出トレイ21(
図2参照)が、開口13から前後方向8に挿抜可能である。なお、複合機10によって画像記録されるのは記録用紙12に限らず、例えば、複合機10はCDやDVDのレーベル面に画像記録してもよい。この場合、CDやDVDは、薄板状のメディアトレイに載置されて、開口13などから複合機10内に挿入される。
【0027】
図2に示されるように、給送トレイ20の上側に給送ローラ25が設けられている。給送ローラ25は、給送トレイ20に載置された記録用紙12と、当該記録用紙12が載置される載置部と対向する側から当接可能である。給送ローラ25は、搬送用モータ71(本発明の駆動源の一例、
図3〜
図5参照)から逆転の駆動力を付与されて第2回転向きに回転される。これにより、給送トレイ20に載置された記録用紙12が、第1搬送路65(本発明の搬送路の一例)を通って第1搬送ローラ60に給送される。なお、給送ローラ25が第2回転向きに回転されると、記録用紙12は第1向き15に搬送される。第1搬送ローラ60、及び搬送用モータ71から給送ローラ25への駆動伝達については、後述される。
【0028】
給送トレイ20の後端部から第1搬送路65が延出されている。第1搬送路65は、湾曲部と直線部とを備える。第1搬送路65は、所定間隔を隔てて互いに対向する外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とによって区画されている。給送トレイ20に収容された記録用紙12は、湾曲部を下方から上方へUターンするように搬送された後、直線部を搬送されて記録部24に搬送される。記録部24により画像記録が行われた記録用紙12は、直線部を搬送されて排出トレイ21に排出される。つまり、記録用紙12は、
図2に一点鎖線の矢印で示される第1向き15(本発明の搬送向きの一例)に搬送される。なお、記録部24については、後述される。
【0029】
また、複合機10は、内部に搬送装置を備えている。搬送装置は、それぞれ後述される以下のものを備えている。つまり、搬送装置は、搬送用モータ71(
図3及び
図4参照)、第1搬送ローラ60、第2搬送ローラ62、第1駆動伝達部26(
図3〜
図5参照)、第2駆動伝達部27(
図3〜
図5参照)、及び板ばね135(
図3及び
図4参照)を備えている。
【0030】
[第1搬送ローラ60、第2搬送ローラ62、及び第3搬送ローラ45]
図2に示されるように、第1搬送路65には、記録部24よりも第1向き15の上流側に第1搬送ローラ60(本発明の第1ローラの一例)及びピンチローラ61を備えるローラ対が設けられ、記録部24よりも第1向き15の下流側に第2搬送ローラ62及び拍車63を備えるローラ対が設けられ、第2搬送ローラ62よりも第1向き15の下流側に第3搬送ローラ45(本発明の第2ローラの一例)及び拍車46よりなるローラ対が設けられている。各ローラ対は、記録用紙12を挟持した状態で回転することによって、記録用紙12を搬送する。
【0031】
第1搬送ローラ60は、搬送用モータ71から駆動力が付与されて回転する。搬送用モータ71は、正転駆動及び逆転駆動する。正転駆動する搬送用モータ71から駆動力を付与された第1搬送ローラ60は、第1回転向きに回転する。ここで、第1回転向きは、記録用紙12を第1向き15に搬送させる回転向きである。逆転駆動する搬送用モータ71から駆動力を付与された第1搬送ローラ60は、第1回転向きとは逆向きの第2回転向きに回転する。ここで、第2回転向きは、記録用紙12を第1向き15とは逆向きに搬送させる回転向きである。第1搬送ローラ60は、後述する駆動伝達機構50(
図3〜
図6参照)を介して第2搬送ローラ62及び第3搬送ローラへ駆動伝達する。
【0032】
なお、本実施形態においては、第1搬送ローラ60は、第1搬送路65を搬送されるシートの記録面(つまり後述する記録部24によって画像が記録される面)より当接し、第2搬送ローラ62及び第3搬送ローラ45は、シートの記録面の裏側より当接する。つまり、第1搬送ローラ60が第1回転向きに回転して記録用紙12を第1向き15に搬送させる場合、第2搬送ローラ62及び第3搬送ローラ45は、第2回転向きに回転する。一方で、第1搬送ローラ60が、第2回転向きに回転する場合、第2搬送ローラ62及び第3搬送ローラ45は、第1回転向きに回転する。
【0033】
第1搬送路65における第2搬送ローラ62と第3搬送ローラ45との間に、第1位置36が存在する。両面画像記録の際、第1搬送路65を搬送される記録用紙12は、第1位置36の下流側でスイッチバックされ、後述する第2搬送路67へ向けて搬送される。
【0034】
[記録部24]
図2に示されるように、第1搬送ローラ60の第1向き15の下流側であって、第2搬送ローラ62の第1向き15の上流側には、記録部24が設けられている。記録部24の下側且つ記録部24と対向する位置には、プラテン42が設けられている。プラテン42は、第1搬送路65を搬送される記録用紙12を支持する。記録部24は、プラテン42に支持された記録用紙12に公知のインクジェット方式で画像を記録する。そして記録部24は、記録用紙12にインク滴を吐出する複数のノズルが形成された記録ヘッド38と、記録ヘッド38を搭載するキャリッジ40とを備えている。
【0035】
キャリッジ40は、プリンタ部11のフレームなどによって、前後方向8と直交する左右方向9(本発明の主走査方向の一例)へ往復動可能に支持されている。キャリッジ40は、公知のベルト機構を介してキャリッジ駆動用モータ(不図示)と連結されている。キャリッジ40は、キャリッジ駆動用モータから駆動力が伝達されることによって左右方向9に往復動される。プラテン42に記録用紙12が支持されている状態で、キャリッジ40が往復動される。キャリッジ40が往復動されているときに、記録ヘッド38からインク滴が吐出される。これにより、プラテン42に支持された記録用紙12に画像が記録される。なお、記録部24は、インクジェット方式以外、例えば電子写真方式によって、記録用紙12に画像を記録するものであってもよい。
【0036】
[経路切替部材41及び第2搬送路67]
図2に示されるように、経路切替部材41が、第1搬送路65における第2搬送ローラ62と第3搬送ローラ45との間、つまり第1位置36に設けられている。経路切替部材41は、補助ローラ47、48、フラップ49、及び軸87を備えている。フラップ49は、軸87から概ね第1向き15に延出されており、軸87に回動可能に軸支されている。拍車状の補助ローラ47、48が、フラップ49に軸支されている。
【0037】
フラップ49は、内側ガイド部材19よりも第1位置36の上方に位置する排出姿勢(
図2に破線で示される姿勢)と、延出端部49Aが第1位置36の下方に位置する反転姿勢(
図2に実線で示される姿勢)との間で回動する。
【0038】
フラップ49は、通常状態において自重によって反転姿勢であるが、第1搬送路65を搬送される記録用紙12に持ち上げられると排出姿勢に回動する。以後、フラップ49(詳細には補助ローラ47、48)は、記録用紙12と当接して記録用紙12をガイドする。記録用紙12の第1向き15の上流端が補助ローラ47を通過すると、フラップ49は、自重によって排出姿勢から反転姿勢に回動する。これにより、記録用紙12の第1向き15の上流端が、下側に移動する。その結果、記録用紙12の第1向き15の上流端は、後述する第2搬送路67へ向く。この状態において、第3搬送ローラ45の第2回転向きの回転が継続されると、記録用紙12は第1向き15に搬送されて排出トレイ21に排出される。一方、第3搬送ローラ45の回転向きが第1回転向きに切り換えられると、記録用紙12は、第1向き15と逆向きに搬送されて第2搬送路67に導かれる。
【0039】
第2搬送路67は、第1位置36で第1搬送路65から分岐され、第1搬送ローラ65よりも第1向き15の上流側の第2位置37で第1搬送路65と合流するように延びた経路である。つまり、第2搬送路67は、第1位置36及び第2位置37において第1搬送路65と接続されている。第2搬送路67は、ガイド部材31、32によって区画されている。
【0040】
[第4搬送ローラ68]
図2に示されるように、第4搬送ローラ68及び従動ローラ69が、第2搬送路67に設けられている。第4搬送ローラ68は、第2搬送路67において、従動ローラ69の下方且つ対向する位置に配置されている。
【0041】
第4搬送ローラ68は、搬送用モータ71から後述する駆動伝達機構50の第3駆動伝達部28を介して駆動力が付与される。すると第4搬送ローラ68は、記録用紙12を第2搬送路67に沿って第2向き16に搬送する向きに回転する。具体的には、第4搬送ローラ68は、第1回転向きのみに回転する。ここで、第2向き16は、第2搬送路67に沿って第1位置36から第2位置37へ向かう向きである。また第2向き16は、
図2において二点鎖線の矢印で示される向きである。
【0042】
以上より、第3搬送ローラ45によって第2搬送路67に搬送されてきた記録用紙12が第4搬送ローラ68と従動ローラ69との間に挟持されると、記録用紙12は、第4搬送ローラ68によって第2向き16に搬送される。これにより、当該記録用紙12は、第1搬送ローラ60よりも第1向き15の上流側へ搬送される。搬送用モータ71から第4搬送ローラ68への駆動伝達については、後述される。
【0043】
[駆動伝達機構50]
図3〜
図5に示されるように、プリンタ部11には、駆動伝達機構50が設けられている。駆動伝達機構50は、ローラプーリ76、モータプーリ58、第1ベルト77、第1駆動伝達部26、第2駆動伝達部27、第3駆動伝達部33、第4駆動伝達部28、給送駆動伝達部29、及び切替部30を備えている。なお、本実施形態では、第2駆動伝達部27及び第3駆動伝達部33が、本発明の第2駆動伝達部の一例である。
【0044】
駆動伝達機構50は、
図8に示されるように、各ローラ60、62、45、68、25を、記録用紙12を
図8に示された向きに搬送させるように回転させる。つまり、切替部30の切替ギヤ51の位置と、搬送用モータ71の正転及び逆転とに応じて、各ローラ60、62、45、68、25を回転させる。各ローラ60、62、45、68、25は、第1駆動伝達部26、第2駆動伝達部27、第3駆動伝達部33、第4駆動伝達部28、または給送駆動伝達部29のいずれかを介して搬送用モータ71から駆動伝達されて回転する。なお、
図8において、各ローラ60、62、45、68、25は、括弧内に記された駆動伝達部によって搬送用モータ71の回転駆動力を駆動伝達される。
【0045】
図5に示されるように、ローラプーリ76が、第1搬送路65よりも左側において、第1搬送ローラ60の軸34に取り付けられている。
図3〜
図5に示されるように、搬送用モータ71には、当該搬送用モータ71の回転軸にモータプーリ58が取り付けられている。ローラプーリ76とモータプーリ58とに、無端環状の第1ベルト77が架け渡されている。これにより、搬送用モータ71の回転駆動力は、第1搬送ローラ60に伝達される。具体的には、搬送用モータ71が正転されると、第1搬送ローラ60は第1回転向きに回転し、搬送用モータ71が逆転されると、第1搬送ローラ60は第2回転向きに回転する。
【0046】
[第1駆動伝達部26]
図3〜
図6に示されるように、第1駆動伝達部26は、左ギヤ52、下ギヤ80、第1プーリ81、第2プーリ82、及び第2ベルト83(本発明のベルトの一例)を備えている。左ギヤ52は、第1搬送ローラ60の軸34において搬送路65よりも左側に設けられている。下ギヤ80は、左ギヤ52の下側に設けられており、左ギヤ52と噛合されている。第1プーリ81は、下ギヤ80の右側に取り付けられており、下ギヤ80と同軸且つ一体に回転する。これにより、第1プーリ81は、第1搬送ローラ60の回転に連動して回転する。第2プーリ82は、第2搬送ローラ62の軸64に取り付けられている。第1プーリ81と第2プーリ82とに、無端環状の第2ベルト83が架け渡されている。これにより、第1搬送ローラ60が回転すると、第2ベルト83は周運動する。その結果、第1搬送ローラ60の回転駆動力は、第2搬送ローラ62に伝達される。
【0047】
[第3駆動伝達部33]
図3〜
図6に示されるように、第3駆動伝達部33は、第3プーリ83、第4プーリ85、及び第3ベルト86を備えている。第3プーリ83は、軸64における第2プーリ82の左側に取り付けられており、第2プーリ82と同軸且つ一体に回転する。第4プーリ85は、第3搬送ローラ45の軸44に取り付けられている。第3プーリ84と第4プーリ85とに、無端環状の第3ベルト86が架け渡されている。これにより、第2搬送ローラ62の回転駆動力は、第3搬送ローラ45に伝達される。つまり、第3搬送ローラ45は、第2搬送ローラ62から回転駆動力が伝達されて従動する。
【0048】
以下の説明において、時計回り(つまり第2回転向き)及び反時計回り(つまり第1回転向き)は、
図6における各ローラ及び各ギヤの回転向きのことである。つまり、各ローラ及び各ギヤを左側から見た場合の各ローラ及び各ギヤの回転向きのことである。よって、例えば、各ローラ及び各ギヤを右側から見た場合、時計回りが第1回転向きとなり、反時計回りが第2回転向きとなることは言うまでもない。第2プーリ82の内側には、公知のワンウェイクラッチ(具体的にはニードルクラッチ)が設けられている。つまり、第2プーリ82は、ワンウェイクラッチを介して軸64に取り付けられている。これにより、
図6に示されるように、本実施形態において、軸64は、搬送用モータ71が正転するときに時計回り(つまり第2回転向き)に回転されるが、搬送用モータ71が逆転するときに回転されない。その結果、搬送用モータ71が正転すると、各搬送ローラ60、62、45に正転の回転駆動力が伝達され、各搬送ローラ60、62、45は記録用紙12を第1向き15に搬送するように回転する。本実施形態においては具体的に、第1搬送ローラ60は反時計回り(つまり第1回転向き)に回転され、第2搬送ローラ62及び第3搬送ローラ45は時計回り(つまり第2回転向き)に回転される。一方、搬送用モータ71が逆転すると、第1搬送ローラ60に逆転の回転駆動量が伝達されるが、ワンウェイクラッチの作用によって第2プーリ82が軸64に対して空転する。これにより、第2搬送ローラ62には逆転の回転駆動量が伝達されない。その結果、第1搬送ローラ60のみが時計回り(つまり第2回転向き)に回転、つまり記録用紙12を第1向き15とは逆向きに搬送するように回転され、第2搬送ローラ62及び第3搬送ローラ45は回転されない。
【0049】
[第2駆動伝達部27]
図3〜
図6に示されるように、第2駆動伝達部27は、第1ギヤ78、第2ギヤ101、第1出力ギヤ75、相互に噛合された複数の第1中間ギヤ95、及び第1遊星ギヤ機構96で構成される。第1遊星ギヤ機構96は、第1中間ギヤ95と噛合する太陽ギヤ97(本発明の太陽ギヤの一例)と、太陽ギヤ97の周囲を公転且つ自転する遊星ギヤ98(本発明の遊星ギヤの一例)と、アーム102(本発明のアームの一例)とを備えている。第1ギヤ78、第1出力ギヤ75、及び複数の第1中間ギヤ95は、本発明の第1伝達部の一例である。また、第2ギヤ101は、本発明の第2伝達部の一例であって且つ本発明の第2ギヤの一例でもある。
【0050】
第1ギヤ78は、第1搬送ローラ60の軸34における第1搬送路65よりも右側に設けられている。第1搬送ローラ60が回転すると、第1ギヤ78も回転する。つまり、第1ギヤ78は、第1搬送ローラ60と同軸に設けられており、第1搬送ローラ60と一体に回転する。これにより、第1ギヤ78から後述する切替部30の切替ギヤ51を介して第1出力ギヤ75に、回転駆動力が付与される。
【0051】
第1出力ギヤ75は、切替ギヤ51、第1中間ギヤ95の最も後側に設けられたギヤ、及び後述する第4駆動伝達部28の第2遊星ギヤ機構103の太陽ギヤ109と噛合されている。なお、第1出力ギヤ75は、後述するように切替ギヤ51が第2駆動伝達位置に位置しているときに、当該切替ギヤ51と噛合されて、第1ギヤ78から回転駆動力が伝達される(
図7(B)参照)。
【0052】
第1中間ギヤ95は、相互に噛合された状態で、概ね前後方向8に並べられて配置されている。本実施形態では、第1中間ギヤ95は偶数個配置されている。なお、
図6では第1中間ギヤ95が便宜上4個描かれているが、4個に限らないのは言うまでもない。最も前側に配置された第1中間ギヤ95は、第1遊星ギヤ機構96の太陽ギヤ97と噛合される。以上より、第1ギヤ78の回転駆動力は、第1出力ギヤ75及び第1中間ギヤ95を介して、太陽ギヤ97に伝達される。
【0053】
太陽ギヤ97は、プリンタ部11のフレームなどによって回転可能に支持されている。太陽ギヤ97のスラスト面には、アーム102の一端が取り付けられている。これにより、アーム102は、太陽ギヤ97と同軸で回転する。アーム102の他端には、遊星ギヤ98が回転可能に支持されている。遊星ギヤ98は、太陽ギヤ97と噛合されている。よって、遊星ギヤ98は、アーム102に支持されて回転し且つ太陽ギヤ97と噛合しながら太陽ギヤ97の外周を太陽ギヤ97の回転向きに公転する。
【0054】
第2ギヤ101は、遊星ギヤ98と噛合可能である。なお、太陽ギヤ97、遊星ギヤ98、及び第2ギヤ101の位置関係については、後述される。
【0055】
以下、
図6を参照しながら、第2駆動伝達部27による駆動伝達が説明される。搬送用モータ71(
図3〜
図5参照)が逆転されると、第1搬送ローラ60及び第1ギヤ78は時計回り(つまり第2回転向き)に回転する。ここで、第1ギヤ78と太陽ギヤ97との間には、切替ギヤ51と第1出力ギヤ75と偶数個の第1中間ギヤ95、つまり偶数個のギヤが互いに噛合された状態で一列に連結されている。このため、第1ギヤ78が時計回りに回転した場合、太陽ギヤ97は反時計回り、つまり矢印99の向き(本発明の第3回転向きの一例)に回転する。つまり、太陽ギヤ97は、第1ギヤ78の回転駆動力を付与されて回転する。
【0056】
太陽ギヤ97が反時計回りに回転すると、遊星ギヤ98は、太陽ギヤ97の周囲を矢印99の向きに公転する。これにより、遊星ギヤ98は、第2ギヤ101に連結して互いに噛合する。つまり、本発明の第3回転向きは、遊星ギヤ98が第2ギヤ101に噛合する向き、つまり矢印99の向きである。
【0057】
第2ギヤ101は、第2搬送ローラ62の軸64の右端部に設けられており(
図3〜
図5参照)、第2搬送ローラ62と一体に回転する。遊星ギヤ98と第2ギヤ101とが連結して噛合すると、遊星ギヤ98の公転が停止すると共に、遊星ギヤ98の自転(回転)が開始される。遊星ギヤ98の自転の向きは、時計回りである。よって、遊星ギヤ98が自転すると、遊星ギヤ98と連結して噛合されている第2ギヤ101、つまり第2搬送ローラ62は、反時計回り(つまり第1回転向き)に回転し、つまり記録用紙12を第1向き15とは逆向きに搬送させる向きに回転する。
【0058】
第2搬送ローラ62の反時計回り(つまり第1回転向き)の回転駆動力は、第3プーリ84、第3ベルト86、及び第4プーリ85を介して、第3搬送ローラ45に伝達される。その結果、第3搬送ローラ45も反時計回り(つまり第1回転向き)、つまり記録用紙12を第1向き15とは逆向きに搬送させる向きに回転する。
【0059】
一方、搬送用モータ71が正転した場合、上記とは逆に、第1ギヤ78は時計回りに回転し、第1ギヤ78から回転駆動力が伝達された太陽ギヤ97も、時計回り、つまり矢印100の向き(本発明の第4回転向きの一例)に回転する。これにより、遊星ギヤ98は、太陽ギヤ97の周囲を矢印100の向きに公転する。その結果、遊星ギヤ98は、第2ギヤ101から離間される。そのため、第2駆動伝達部27によって第2搬送ローラ62及び第3搬送ローラ45は回転されない。
【0060】
以上より、第2駆動伝達部27は、第1搬送ローラ60の第2回転向きの回転駆動力(本発明の第2回転駆動力の一例)を第2搬送ローラ62に伝達させる。一方で、第2駆動伝達部27は、第1搬送ローラ60の第1回転向きの回転駆動力(本発明の第1回転駆動力の一例)を第2搬送ローラ62に伝達させない。
【0061】
なお、搬送用モータ71が正転した場合、上述したように、搬送用モータ71の正転の駆動力は、第1駆動伝達部26によって第2搬送ローラ62及び第3駆動伝達部33によって第3搬送ローラ45に伝達される。その結果、搬送用モータ71が正転した場合、各搬送ローラ60、62、45は記録用紙12を第1向き15に搬送するように回転する。つまり、第1搬送ローラ60は反時計回り(つまり第1回転向き)に回転され、第2搬送ローラ62及び第3搬送ローラ45は時計回り(つまり第2回転向き)に回転される。
【0062】
[第4駆動伝達部28]
図3〜
図6に示されるように、第4駆動伝達部28は、第2遊星ギヤ機構103、正転噛合ギヤ104、逆転噛合ギヤ105、相互に噛合された複数の第2中間ギヤ106、第3中間ギヤ107、及び第3ギヤ108で構成される。第2遊星ギヤ機構103は、第1出力ギヤ75と噛合する太陽ギヤ109と、太陽ギヤ109の周囲を公転且つ自転する2つの遊星ギヤ110、111と、2つのアーム112、113とを備えている。
【0063】
太陽ギヤ109は、プリンタ部11のフレームなどによって回転可能に支持されている。太陽ギヤ109は、第2駆動伝達部26の第1出力ギヤ75から駆動伝達されて回転する。つまり、第3駆動伝達部28は、第2駆動伝達部27と同様に、切替ギヤ51が第2駆動伝達位置に位置しているときに、第1ギヤ78から駆動伝達される(
図7(B)参照)。
【0064】
太陽ギヤ109のスラスト面には、アーム112、113の一端が取り付けられている。これにより、アーム112、113は、太陽ギヤ97と同軸で回転する。アーム112の他端には、遊星ギヤ110が回転可能に支持されている。アーム113の他端には、遊星ギヤ111が回転可能に支持されている。遊星ギヤ110、111は、太陽ギヤ109と噛合されている。以上のように構成されることにより、遊星ギヤ110は、アーム112に支持されて回転し且つ太陽ギヤ109と噛合しながら太陽ギヤ109の回転向きに公転する。また、以上のように構成されることにより、遊星ギヤ111は、アーム113に支持されて回転し且つ太陽ギヤ109と噛合しながら太陽ギヤ109の回転向きに公転する。
【0065】
遊星ギヤ110は、正転噛合ギヤ104と噛合可能である。遊星ギヤ111は、逆転噛合ギヤ105と噛合可能である。逆転噛合ギヤ105は、正転噛合ギヤ104と噛合されている。正転噛合ギヤ104は、逆転噛合ギヤ105の他に、最も後側に配置された第2中間ギヤ106とも噛合されている。
【0066】
第2中間ギヤ106は、相互に噛合された状態で、概ね前後方向8に並べられて配置されている。本実施形態では、第2中間ギヤ106は偶数個配置されている。なお、
図7では第2中間ギヤ106が便宜上4個描かれているが、4個に限らないのは言うまでもない。最も前側に配置された第2中間ギヤ106と同軸に第3中間ギヤ107が設けられている。第3中間ギヤ107は第2中間ギヤ106と同軸の軸79を中心として当該第2中間ギヤ106と一体に回転する。第3中間ギヤ107は、第3ギヤ108と噛合されている。第3ギヤ108は、第4搬送ローラ68と同軸に配置されており、第4搬送ローラ68と一体に回転可能である。
【0067】
以下、
図6を参照しながら、第3駆動伝達部28による駆動伝達が説明される。搬送用モータ71が正転されると、第1搬送ローラ60及び第1ギヤ78は反時計回り(つまり第1回転向き)に回転し、切替ギヤ51は時計回りに回転し、第1出力ギヤ75は反時計回りに回転する。すると、太陽ギヤ109は、時計回り、つまり矢印114の向きに回転する。これにより、アーム112、113も矢印114の向きに回転するため、遊星ギヤ110が正転噛合ギヤ104と噛合し、遊星ギヤ111が逆転噛合ギヤ105から離間する。そして、正転噛合ギヤ104と噛合した遊星ギヤ111は反時計回りに回転する。これにより、正転噛合ギヤ104は時計回りに回転する。
【0068】
ここで、正転噛合ギヤ104と第3ギヤ108との間には、偶数個の第2中間ギヤ106が互いに噛合された状態で一列に連結されている。なお、第3中間ギヤ107は、第2中間ギヤ106と同軸で一体に回転するため、上記の個数には含まれない。以上より、正転噛合ギヤ104が時計回りに回転した場合、第3ギヤ108及び第4搬送ローラ68は、反時計回りに回転する。つまり、搬送用モータ71が正転されると、第4搬送ローラ68は反時計回り(つまり第1回転向き)に回転する。
【0069】
一方、搬送用モータ71が逆転されると、第1搬送ローラ60及び第1ギヤ78は時計回り(つまり第2回転向き)に回転し、切替ギヤ51は反時計回りに回転し、第1出力ギヤ75は時計回りに回転する。すると、太陽ギヤ109は、反時計回り、つまり矢印115の向きに回転する。これにより、アーム112、113も矢印115の向きに回転するため、遊星ギヤ110が正転噛合ギヤ104から離間し、遊星ギヤ111が逆転噛合ギヤ105と噛合する。そして、逆転噛合ギヤ105と噛合した遊星ギヤ111は時計回りに回転し、それによって逆転噛合ギヤ105は反時計回りに回転する。
【0070】
ここで、逆転噛合ギヤ105と第3ギヤ108との間には、正転噛合ギヤ104と偶数個の第2中間ギヤ106、つまり奇数個のギヤが互いに噛合された状態で一列に連結されている。以上より、逆転噛合ギヤ105が反時計回りに回転した場合、第3ギヤ108及び第4搬送ローラ68も、反時計回りに回転する。つまり、搬送用モータ71が逆転されても、第4搬送ローラ68は反時計回り(つまり第1回転向き)に回転する。
【0071】
以上より、第3駆動伝達部28は、第1搬送ローラ60の正転及び逆転の駆動力、つまり反時計回りの回転駆動力及び時計回りの第2回転向きの回転駆動力の双方を、記録用紙12を第2向き16に搬送する向き、つまり第1回転向きの回転駆動力として第4搬送ローラ68に伝達する。
【0072】
[給送駆動伝達部29]
図3〜
図6に示されるように、給送駆動伝達部29は、第2出力ギヤ88、第4中間ギヤ89、第4ベルト90、2つの第5中間ギヤ91、軸93に取り付けられた第6中間ギヤ92、第3遊星ギヤ機構120、第6中間ギヤ121、第7中間ギヤ122、第5ベルト94、及び給送ローラ25と同軸の給送プーリ123で構成される。第3遊星ギヤ機構120は、軸93を中心として軸93と一体に回転される太陽ギヤ124と、太陽ギヤ124の周囲を公転且つ自転する遊星ギヤ125と、アーム126とを備えている。
【0073】
第2出力ギヤ88は、第4中間ギヤ89と噛合されている。また、第2出力ギヤ88は、後述するように切替ギヤ51が第4駆動伝達位置に位置しているときに、当該切替ギヤ51と噛合されて、第1ギヤ78から回転駆動力が伝達される(
図7(C)参照)。第4中間ギヤ89は、本実施形態では偶数個(具体的には2個)用意されている。そして、前側の中間ギヤ89は、2つの第5中間ギヤ91のうち、後側の第5中間ギヤ91と同軸に配置されている。
【0074】
2つの第5中間ギヤ91には、無端環状の第4ベルト90が架け渡されている。なお、詳細には、第4ベルト90は、2つの第5中間ギヤ91の各々と隣接されて配置されて第5中間ギヤ91と同軸且つ一体に回転される2つのプーリに、架け渡されている。
【0075】
2つの第5中間ギヤ91のうちの前側に配置された第5中間ギヤ91は、第6中間ギヤ92と噛合されている。第3遊星ギヤ機構120の太陽ギヤ124と第5中間ギヤ91とは、共に軸93を中心として軸93と一体に回転する。太陽ギヤ124のスラスト面には、アーム126の一端が取り付けられている。これにより、アーム126は、軸93を中心として回転する。アーム126の他端には、遊星ギヤ125が回転可能に支持されている。遊星ギヤ125は、太陽ギヤ124と噛合されている。以上のように構成されることにより、遊星ギヤ125は、アーム126に支持されて回転し且つ太陽ギヤ124と噛合しながら太陽ギヤ124の外周を太陽ギヤ124の回転向きに公転する。
【0076】
第7中間ギヤ121は、遊星ギヤ125と噛合可能な位置に配置されている。第8中間ギヤ122は、第7中間ギヤ121と噛合されている。第8中間ギヤ122(詳細には第8中間ギヤ122と隣接されて配置されて第8中間ギヤ122と同軸且つ一体に回転されるプーリ)と給送プーリ123とに、無端環状の第5ベルト94が架け渡されている。なお、給送ローラ25と給送プーリ123とは、同軸で一体に回転する。
【0077】
以下、
図6を参照しながら、給送駆動伝達部29による駆動伝達が説明される。搬送用モータ71が逆転されると、第1搬送ローラ60及び第1ギヤ78は時計回り(つまり第2回転向き)に回転する。第1ギヤ78が時計回りに回転されると、切替ギヤ51が反時計回りに回転され、第2出力ギヤ88が時計回りに回転され、第4中間ギヤ89が反時計回りに回転され、2つの第5中間ギヤ91が時計回りに回転される。
【0078】
第5中間ギヤ91が時計回りに回転されると、第6中間ギヤ92及び第6中間ギヤ92と同軸である太陽ギヤ124は、反時計回りに回転される。太陽ギヤ124が反時計回り、つまり矢印127の向きに回転されると、遊星ギヤ125は、太陽ギヤ124の周囲を矢印127の向きに公転する。これにより、遊星ギヤ125は、第7中間ギヤ121に連結して噛合する。遊星ギヤ125と第6中間ギヤ121とが連結して噛合すると、遊星ギヤ125のい公転が停止すると共に、遊星ギヤ125の自転(回転)が開始される。遊星ギヤ125の自転の向きは、時計回りである。よって、遊星ギヤ125が自転すると、遊星ギヤ125と噛合されている第7中間ギヤ121は、反時計回りに回転する。
【0079】
第7中間ギヤ121が反時計回りに回転すると、第7中間ギヤ122及び給送プーリ123は時計回りに回転する。給送プーリ123が時計回りに回転されると、給送ローラ25も時計回り(つまり第2回転向き)に回転される。そして、給送ローラ25が時計回り(つまり第2回転向き)に回転されると、給送トレイ20に載置されており且つ給送ローラ25と当接している記録用紙12、つまり最も上側に載置されている記録用紙12が、第1搬送ローラ60へ向けて給送される。
【0080】
一方、搬送用モータ71が正転されると、搬送用モータ71が逆転されたときは逆に、太陽ギヤ124が時計回り、つまり矢印128の向きに回転される。これにより、遊星ギヤ125は、太陽ギヤ124の周囲を矢印128の向きに公転する。その結果、遊星ギヤ125は、第6中間ギヤ121から離間する。以上より、搬送用モータ71が正転された場合、搬送用モータ71から給送ローラ25へ回転駆動力は伝達されず、給送ローラ25は回転しない。
【0081】
[切替部30]
図3〜
図7に示されるように、切替部30は、切替ギヤ51と、コイルばね56、57と、切替レバー55とを備えている。
【0082】
図7に示されるように、切替ギヤ51は、第1ギヤ78と噛合されている。これにより、切替ギヤ51は、搬送用モータ71から駆動力を付与されて回転する。また、切替ギヤ51は、第1ギヤ78との噛合を維持した状態で左右方向9に沿って、少なくとも、
図7(A)に示される位置である第1駆動伝達位置、及び
図7(B)に示される位置である第2駆動伝達位置に移動可能である。第1駆動伝達位置は第2駆動伝達位置よりも左側に位置している。第1駆動伝達位置及び第2駆動伝達位置のいずれも、第1搬送路65よりも右側に位置している。
【0083】
図7(A)に示されるように、切替ギヤ51が第1駆動伝達位置に位置している場合、切替ギヤ51は第1ギヤ78と第4中間ギヤ88と連結、つまり噛合される。なお、このとき、切替ギヤ51は第1出力ギヤ75とは噛合されていない。これにより、搬送用モータ71から第1ギヤ78を介して切替ギヤ51に伝達された回転駆動力は、給送駆動伝達部29に伝達される。
【0084】
図7(B)に示されるように、切替ギヤ51が第2駆動伝達位置に位置している場合、切替ギヤ51は第1ギヤ78と第1出力ギヤ75と連結、つまり噛合される。なお、このとき、切替ギヤ51は第4中間ギヤ78とは噛合されていない。これにより、搬送用モータ71から第1ギヤ78を介して切替ギヤ51に伝達された回転駆動力は、第2駆動伝達部27及び第3駆動伝達部28に伝達される。
【0085】
図7に示されるように、切替ギヤ51の右側は、切替レバー55と当接可能である。そして切替レバー55には、記録部24のキャリッジ40が左側から当接可能である。さらに、切替レバー55には、コイルばね56が取り付けられている。切替レバー55及びコイルばね56は、切替ギヤ51の軸方向に沿って配置されている。コイルばね56は、一端が切替レバー55の右側に取り付けられており、他端がプリンタ部11のフレーム(不図示)などに取り付けられている。これにより、切替レバー55は、コイルばね56によって第2駆動伝達位置側から第1駆動伝達位置側、つまり左側付勢される。また、切替ギヤ51には、コイルばね56とは反対の位置に、コイルばね57が取り付けられている。これにより、この切替ギヤ51は、コイルばね57によって第1駆動伝達位置側から第2駆動伝達位置側、つまり右側に付勢される。なお、コイルばね56の付勢力は、コイルばね57の付勢力よりも大きい。したがって、切替ギヤ51及び切替レバー55は、第2駆動伝達位置側から第1駆動伝達位置側に向けて、つまり左側に付勢される。
【0086】
第1駆動伝達位置に位置する切替ギヤ51は、不図示のストッパによって、第2駆動伝達位置から第1駆動伝達位置側へ(つまり、左側へ)のコイルばね56の付勢力による移動を制止される。これにより、切替ギヤ51は第2駆動伝達位置に留まることができる。切替ギヤ51が第2駆動伝達位置に位置している状態で、切替レバー55がキャリッジ40に押されて第1駆動伝達位置よりも右側へ移動されると、切替ギヤ51はストッパによる制止から解放され、第1駆動伝達位置(
図7(A)参照)から第2駆動伝達位置(
図7(B)参照)へ移動する。なお、上記のストッパは、右向きへ移動する切替ギヤ51の移動を第1駆動伝達位置及び第2駆動伝達位置において制止するが、左向きへ移動する切替ギヤ51の移動を第1駆動伝達位置及び第2駆動伝達位置において制止しないように構成されている。
【0087】
第2駆動伝達位置へ移動した切替ギヤ51は、第1駆動伝達位置に位置しているときと同様、不図示のストッパ(第2駆動伝達位置に設けられたストッパと同様の構成である。)によって、第4駆動伝達位置から第1駆動伝達位置側へ(つまり、左側へ)のコイルばね56の付勢力による移動を制止される。これにより、切替ギヤ51は第2駆動伝達位置に留まることができる。
【0088】
切替ギヤ51が第4駆動伝達位置に位置しているときに、切替レバー55がキャリッジ40に押されて第2駆動伝達位置よりも更に右側へ移動されると、切替ギヤ51はストッパによる制止から解放される。この状態において、キャリッジ40が左側へ移動すると、切替ギヤ51は、コイルばね56の付勢力によって第2駆動伝達位置から第1駆動伝達位置へ移動される。
【0089】
以上より、切替部30は、第1搬送ローラ60から第2駆動伝達部27及び第4駆動伝達部28、または給送駆動伝達部29への駆動力を伝達するか否かを切り替える。具体的には、切替部30は、切替ギヤ51が第2駆動伝達位置に位置しているとき、第1搬送ローラ60から第2駆動伝達部27及び第3駆動伝達部28へ駆動伝達させる。一方、切替部30は、切替ギヤ51が第1駆動伝達位置に位置しているとき、第1搬送ローラ60から第2駆動伝達部27へ駆動伝達させない。なお、切替部30は、切替ギヤ51が第4駆動伝達位置に位置しているとき、第1搬送ローラ60から給送駆動伝達部29へ駆動伝達させる。
【0090】
[太陽ギヤ97、遊星ギヤ98、及び第2ギヤ101の位置関係]
本実施形態において、太陽ギヤ97、遊星ギヤ98、及び第2ギヤ101は、以下に説明するような位置関係を満たすように配置されている。つまり、
図9(B)に示されるように、太陽ギヤ97の回転中心116は、共通法線119に対して、遊星ギヤ98の回転中心130の反対側に位置している。ここで、共通法線119とは、遊星ギヤ98と第2ギヤ101とが噛合した状態における、遊星ギヤ98の歯面117(
図10参照)と第2ギヤ101の歯面118(
図10参照)との共通法線である。具体的には、第1駆動伝達部26を介して駆動伝達された第2ギヤ101が回転した場合における遊星ギヤ98の歯面117(
図10参照)と第2ギヤ101の歯面118(
図10参照)との共通法線のことである。
【0091】
共通法線119について、以下に詳述する。
図6に示されるように、搬送用モータ71が逆転されると、第2駆動伝達部27から駆動伝達された太陽ギヤ97が反時計回り、つまり矢印99の向きに回転して、遊星ギヤ98が第2ギヤ101に噛合する。そして、
図9(B)に示されるように、遊星ギヤ98は、時計回り、つまり矢印131の向きに回転する。すると、矢印131の向きに回転する遊星ギヤ98の歯面117が、
図10に示されるように、回転が停止されている第2ギヤ101の歯面118に当接する。
【0092】
一方、
図6に示されるように、搬送用モータ71が正転されると、第2駆動伝達部27から駆動伝達された太陽ギヤ97が時計回り、つまり矢印100の向きに回転する。しかし、太陽ギヤ97が矢印100の向きに回転する前に、第1駆動伝達部26から駆動伝達された第2ギヤ101が時計回り、つまり矢印134(
図9(B)参照)の向きに回転する場合がある。すると、
図10に示されるように、第2ギヤ101の歯面118が、遊星ギヤ98の歯面117に当接する。
【0093】
これは、第1駆動伝達部26が伝達のタイミングのロスが比較的少ない、第2ベルト83を用いているのに対して、第2駆動伝達部27が伝達のタイミングのロスが比較的多い複数のギヤから構成されているためである。ギヤが複数存在すると、複数あるギヤの分だけ、バックラッシュが生じる。例えば、第1ギヤ78から遊星ギヤ98まで駆動力が伝達される際に、当該第1ギヤ78から遊星ギヤ98までの間に配置されるギヤ間でバックラッシュが生じる。つまり、第1ギヤ78が駆動されたタイミングでは、遊星ギヤ98が駆動されていない可能性が存在するのである。そして、搬送用モータ71が正転すると、第1駆動伝達部26によって第2ギヤ101が先に回転してから、遊星ギヤ98が回転を始める。
【0094】
以上より、搬送用モータ71の正逆転にかかわらず、遊星ギヤ98の歯面117と第2ギヤ101の歯面118とは、
図10に示された状態で当接する。そして、このときの歯面117の法線と歯面118の法線とは同一の線となる。この同一の線が、共通法線119である。
【0095】
なお、
図10には、共通接線137が示されている。具体的には、共通接線137は、遊星ギヤ98及び第2ギヤ101の各々の基準円138、139の共通の接線である。この共通接線137と、共通法線119との角度θ1は、遊星ギヤ98及び第2ギヤ101の圧力角の角度θ2と同一の大きさである。そして、本実施形態においては、遊星ギヤ98及び第2ギヤ101は、圧力角の角度θ2が20度となるように、つまり共通法線119と共通接線137とがなす角度θ1が20度となるように構成されている。もちろん、角度θ1(角度θ2)は、20度以外であってもよい。
【0096】
そして、上述したように、太陽ギヤ97の回転中心116が、共通法線119に対して、遊星ギヤ98の回転中心130の反対側に位置している場合、搬送用モータ71の正逆転にかかわらず、遊星ギヤ98には、常に第2ギヤ101から離間しようとする力133が作用する。以下、
図9(B)及び
図10を参照して詳述する。
【0097】
搬送用モータ71が逆転されると、上述したように、矢印131の向きに回転した遊星ギヤ98の歯面117が、回転が停止されている第2ギヤ101の歯面118に当接する。つまり、遊星ギヤ98の歯面117が、回転が停止されている第2ギヤ101の歯面118を押す。このとき、第2ギヤ101には、遊星ギヤ98から作用の力132(
図10参照)が加えられ、遊星ギヤ98には、第2ギヤ101から反作用の力133が加えられる。一方、搬送用モータ71が正転されると、上述したように、矢印134の向きに回転した第2ギヤ101の歯面118が、遊星ギヤ98の歯面117に当接する。つまり、第2ギヤ101の歯面118が遊星ギヤ98の歯面117を押す。このとき、遊星ギヤ98には、第2ギヤ101から、上述した反作用の力133と同じ力が作用の力として加えられる。以上より、搬送用モータ71の正逆転にかかわらず、遊星ギヤ98には力133が作用する。
【0098】
図9(B)に示されるように、力133の延長線である共通法線119は、太陽ギヤ97の回転中心116と遊星ギヤ98の回転中心130との間を通過している。この力133によって、遊星ギヤ98は太陽ギヤ97を矢印100の向きに回転させようとする。よって、力133が加えられた遊星ギヤ98は、太陽ギヤ97の周囲を矢印100の向きに公転しようとする。つまり、太陽ギヤ97の回転中心116が、共通法線119に対して、遊星ギヤ98の回転中心130の反対側に位置している場合、力133が加えられた遊星ギヤ98は、第2ギヤ101から離間する向きに移動しようとする。
【0099】
以上より、
図9(B)の構成では、搬送用モータ71が正転されたとき、つまり遊星ギヤ98が第2ギヤ101から離間すべきときに、遊星ギヤ98は第2ギヤ101から確実に離間することができる。
【0100】
一方、本実施形態とは異なり、太陽ギヤ97の回転中心116が、共通法線119に対して、遊星ギヤ98の回転中心130と同じ側に位置している場合について説明する。
図9(A)に示されるように、力133の延長線である共通法線119は、太陽ギヤ97の回転中心116と遊星ギヤ98の回転中心130との間を通過していない。この力133によって、遊星ギヤ98は太陽ギヤ97を矢印99の向きに回転させようとする。よって、力133が加えられた遊星ギヤ98は、太陽ギヤ97の周囲を矢印99の向きに公転しようとする。つまり、太陽ギヤ97の回転中心116が、共通法線119に対して、遊星ギヤ98の回転中心130と同じ側に位置している場合、力133が加えられた遊星ギヤ98は、第2ギヤ101と噛合する向きに移動しようとする。
【0101】
以上より、
図9(A)の構成では、搬送用モータ71が正転されたとき、つまり遊星ギヤ98が第2ギヤ101から離間すべきときであっても、遊星ギヤ98が第2ギヤ101から離間しないおそれがある。その理由は、以下の通りである。搬送用モータ71が正転されたとき、太陽ギヤ97は、矢印100の向きに回転する。これにより、遊星ギヤ98には、太陽ギヤ97から第2ギヤ101から離間させようとする向きの力が加えられる。しかし、当該力よりも上記の力133の方が大きい場合、遊星ギヤ98は第2ギヤ101から離間しないおそれがあるのである。一方、上述したように、本実施形態の場合は、搬送用モータ71が逆転されたときに、遊星ギヤ98は第2ギヤ101から確実に離間することができるのである。
【0102】
なお、以上の説明では、第1遊星ギヤ機構96の太陽ギヤ97及び遊星ギヤ98と第2ギヤ101とが、
図9(B)に示されるような位置関係を満たすように配置されていた。しかし、当該位置関係を満たすように各ギヤが配置されるのは、第1遊星ギヤ機構96に限らない。例えば、第3遊星ギヤ機構120の太陽ギヤ124及び遊星ギヤ125と第6中間ギヤ121とが、上記の位置関係を満たすように配置されていてもよい。つまり、太陽ギヤ124の回転中心が、共通法線に対して、遊星ギヤ125の回転中心の反対側に位置していてもよい。ここで、当該共通法線は、遊星ギヤ125と第6中間ギヤ121とが噛合したときにおいて相互に当接した両ギヤの歯面の法線である。
【0103】
[板ばね135]
図9(B)に示されるように、太陽ギヤ97の回転中心116が共通法線119に対して遊星ギヤ98の回転中心130の反対側に位置している場合において、搬送用モータ71が逆転されると、太陽ギヤ97は矢印99の向きに回転する。これにより、遊星ギヤ98には、太陽ギヤ97から第2ギヤ101へ噛合させようとする向きの力136が加えられる。しかし、力136よりも上記の力133の方が大きい場合、遊星ギヤ98は第2ギヤ101から離間してしまうおそれがある。
【0104】
そこで、本実施形態では、
図3及び
図4に示されるように、板ばね135(本発明の摩擦抵抗部材の一例)が設けられている。板ばね135は、2箇所で屈曲された概ねU字状に構成されている。板ばね135は、遊星ギヤ98の両スラスト面の外側から遊星ギヤ98を挟み込んでいる。これにより、遊星ギヤ98には、スラスト面の外側から遊星ギヤ98の中心に向けての付勢力が作用する。その結果、遊星ギヤ98の回転に対する摩擦抵抗力が発生する。
【0105】
例えば、遊星ギヤ98を矢印131と逆向きに回転させようとする力として、力133が遊星ギヤ98に作用した場合、上記摩擦抵抗力は、力133に対する抵抗力となる。つまり、上記摩擦抵抗力は、遊星ギヤ98を第2ギヤ101から離間させようとする力133に対する抵抗力となる。その結果、上述した遊星ギヤ98の第2ギヤ101からの離間、つまり力136よりも力133の方が大きいことに起因する遊星ギヤ98の第2ギヤ101からの離間を防止することができる。
【0106】
[実施形態の効果]
太陽ギヤ97、遊星ギヤ98、及び第2ギヤ101が本実施形態のような位置関係で配置されている場合、当該遊星ギヤ98に対して第2ギヤ101から離間しようとする力133が作用する。つまり、当該遊星ギヤ98に対して第2ギヤ101と噛合しようとする向きの力は作用しない。よって、遊星ギヤ98と第2ギヤ101とが噛合された状態で太陽ギヤ97が第4回転向き、つまり矢印100の向きに回転した場合、遊星ギヤ98は第2ギヤ101から容易に離間する。
【0107】
したがって、本実施形態によれば、遊星ギヤ98が第2ギヤ101から離間するべき状態、つまり第2ギヤ101が第1駆動伝達部26を介して駆動力が伝達されて回転するべきであって第2駆動伝達部27を介して駆動力が伝達されて回転するべきでない状態において、当該第2ギヤ101が誤って第2駆動伝達部27を介して駆動力が伝達されてしまって回転してしまうことを防止することができる。つまり、本実施形態では、遊星ギヤ98と第2ギヤ101との噛合状態を適切に解除することができる。
【0108】
また、本実施形態では、第1駆動伝達部26は、第1回転向きの回転駆動力を第1搬送ローラ60から第2ベルト83を介して第2搬送ローラ62に伝達させる一方、ワンウェイクラッチの存在のために第2回転向きの回転駆動力を第2搬送ローラ62に伝達させない。以上より、本実施形態は、第1駆動伝達部26の機能を実現するための好適な構成である。
【0109】
第1搬送ローラ60が第2回転向きに回転することによって太陽ギヤ97が第3回転向き、つまり矢印99の向きに回転した場合、遊星ギヤ98は当該矢印99の向きに公転して第2ギヤ101と噛合する。その後、遊星ギヤ98は太陽ギヤ97の回転に連動して回転する。これにより、第2ギヤ101は回転する。しかし、太陽ギヤ97、遊星ギヤ98、及び第2ギヤ101が
図9(B)のような位置関係で配置されている場合、上記のように遊星ギヤ98が回転したときに、当該遊星ギヤ98には第2ギヤ101から離間する向きに力133が作用してしまう。当該力133の作用によって遊星ギヤ98が第2ギヤ101から離間してしまうと、第1搬送ローラ60が第2回転向きに回転した場合において回転すべき第2ギヤ101が回転することができない。
【0110】
そこで、本実施形態では、板ばね135を備えている。これにより、遊星ギヤ98には、回転時に生じる摩擦抵抗力によって遊星ギヤ98から第2ギヤ101の向きの力、つまり第2ギヤ101から離間しようとする力に対する力が作用する。そして、遊星ギヤ98から第2ギヤ101の向きの力が、第2ギヤ101から遊星ギヤ98の向きの力よりも大きい場合、遊星ギヤ98が第2ギヤ101から誤って離間してしまうことを防止できる。
【0111】
[変形例1]
上述の実施形態では、
図10に示されるように、遊星ギヤ98と第2ギヤ101とが噛合した状態、つまり遊星ギヤ98の歯面117が第2ギヤ101の歯面118に当接している状態において、遊星ギヤ98の歯の頂部142は、第2ギヤ101の基準円139よりも第2ギヤ101の軸64(
図9参照)側、つまり第2ギヤ101の径方向の内側に位置していた。
【0112】
これに対して、変形例1では、
図12に示されるように、遊星ギヤ98と第2ギヤ101とが噛合した状態において、遊星ギヤ98の歯の頂部142は、第2ギヤ101の基準円139よりも第2ギヤ101の軸64(
図9参照)と反対側、つまり第2ギヤ101の径方向の外側に位置している。
【0113】
変形例1では、遊星ギヤ98と第2ギヤ101とが噛合した状態において、遊星ギヤ98の歯の頂部142を第2ギヤ101の基準円139よりも第2ギヤ101の径方向の外側とするために、第2ギヤ101に制止部材140が設けられている。制止部材140は、第2ギヤ101の各歯の間の底部の空間146を埋めるように形成されている。また、本実施形態において、制止部材140の遊星ギヤ98との当接面は、第2ギヤ101の基準円139に沿った面である。なお、制止部材140の上記当接面は、第2ギヤ101の基準円139よりも第2ギヤ101の歯の頂部145側であってもよい。以上より、制止部材140は、第2ギヤ101における各歯の間であって当該各歯の頂部145と基準円139との間に設けられており、第2ギヤ101と噛合した遊星ギヤ98の歯の頂部142が第2ギヤ101の径方向の内側に進入することを制止する。
【0114】
なお、変形例1では、制止部材140は第2ギヤ101に設けられていたが、制止部材140は遊星ギヤ98に設けられていてもよい。また、変形例1では、第2ギヤ101と噛合した遊星ギヤ98の歯の頂部141が第2ギヤ101の径方向の内側に進入することを制止する目的で、制止部材140が設けられたが、制止部材140の配置以外、例えば後述する変形例2の構成によって、上記目的が達成されてもよい。
【0115】
変形例1によれば、遊星ギヤ98は第2ギヤ101から容易に離間することができる。
【0116】
また、変形例1によれば、例えば、第2ギヤ101の回転中心である軸64を支持するもの、または、太陽ギヤ97の回転中心116である軸を支持するもの(例えば複合機10のフレーム)の少なくとも一方が変形すると、第2ギヤ101の回転中心と太陽ギヤ97の回転中心116とが接近する場合がある。しかし、制止部材140が形成されていることで、遊星ギヤ98と第2ギヤ101との当接する位置は、第2ギヤ101の基準円139よりも径方向の外側となる。よって、変形例1によれば、第2ギヤ101の回転中心と太陽ギヤ97の回転中心とが接近してしまった場合でも、遊星ギヤ98は第2ギヤ101から容易に離間することができる。
【0117】
[変形例2]
図13に示されるように、変形例2では、アーム102に被当接部143が形成されている。被当接部143は、アーム102において、太陽ギヤ97に対して遊星ギヤ98と反対側に凸部として形成されている。一方、被当接部143と対向する位置における複合機10のフレームには、被当接部143と当接する当接部144が形成されている。
【0118】
図13(A)に示されるように、被当接部143は、遊星ギヤ98と第2ギヤ101とが噛合した状態において当接部144と当接する。被当接部143が当接部144と当接することによって、遊星ギヤ98が
図13(A)の状態から更に矢印99の向きに公転することが防止される。
【0119】
一方、
図13(B)に示されるように、遊星ギヤ98が矢印100の向きに公転すると、遊星ギヤ98と第2ギヤ101とが離間した状態となる。当該状態において、被当接部143は、当接部144から離間する。
【0120】
変形例2によれば、被当接部143と当接部144とが互いに当接することによって、遊星ギヤ98の第2ギヤ101に対する当接位置が、基準円139よりも第2ギヤ101の径方向の外側に、確実に維持される。よって、遊星ギヤ98は第2ギヤ101から容易に離間することができる。
【0121】
[変形例3]
本発明は、
図11に示されるような実施形態に適用されてもよい。変形例3では、主として上述の実施形態の第3搬送ローラ45、拍車46、第3駆動伝達部33が省略される。そして、第2搬送路67は、記録部24と第2搬送ローラ62との間から第1搬送ローラ60の第1向き15の上流側まで至る経路である。変形例3の場合、第2搬送ローラ62が、本発明の第2ローラの一例である。また、変形例3の場合、第2駆動伝達部27が、本発明の第2駆動伝達部の一例である。