(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁層の一方の面に回路層が形成されるとともに前記絶縁層の他方の面に金属層が形成されたパワーモジュール用基板と、このパワーモジュール用基板の前記金属層側に接合されるヒートシンクと、を備えた、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記絶縁層の一方の面に、前記回路層を形成する回路層形成工程と、
前記絶縁層の他方の面に、前記回路層とは異なる金属からなる金属層を形成する金属層形成工程と、
前記金属層側に前記ヒートシンクを接合するヒートシンク接合工程と、
を備えており、
前記ヒートシンク接合工程では、前記回路層と前記絶縁層と前記金属層と前記ヒートシンクとを積層し、積層方向に加圧した状態で加熱して接合した後に、積層方向に加圧した状態で常温よりも低い温度にまで冷却し、冷却後に常温まで戻して加圧を除去することを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
前記ヒートシンク接合工程においては、積層方向に加圧した状態で−70℃以上−5℃以下の範囲内に冷却することを特徴とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
前記金属層形成工程と、前記ヒートシンク接合工程と、が同時に実施されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
前記回路層は銅又は銅合金で構成され、前記金属層はアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
前記金属層が、純度99.99質量%以上のアルミニウムで構成され、前記回路層が、前記金属層よりもアルミニウムの純度が低いアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のヒートシンクパワーモジュール用基板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のように、パワーモジュール用基板にヒートシンクを接合した場合、接合後のヒートシンク付パワーモジュール用基板においても反りが生じることになる。ここで、ヒートシンクを接合する際に、特許文献3,4に記載された方法を適用することにより反りを低減することが考えられる。
しかしながら、特許文献3に示す方法では、パワーモジュール用基板を−20℃以下に保持する時間が長すぎるために、生産性が悪化する問題があった。
また、特許文献4に示す方法では、パワーモジュール用基板の冷却温度が−110℃とされており、冷却温度が低すぎるために、冷却に必要なコストが過剰に大きくなる問題があった。
【0007】
さらに、ヒートシンクを接合したヒートシンク付パワーモジュール用基板においては、パワーモジュール用基板に比べて構造が複雑で大型化するため、特許文献3,4に記載された方法のように、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を単純に冷却しても、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の反りを十分に低減することはできなかった。
【0008】
また、回路層及び金属層においては、それぞれの要求特性に応じて、種々の金属が選択的に使用され、回路層及び金属層が互いに異なる金属材料で構成されることがある。
例えば、回路層を、純度99.0質量%以上99.5質量%未満のアルミニウム(2Nアルミニウム)で構成し、金属層を純度99.99質量%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)で構成したパワーモジュール用基板や、回路層を銅又は銅合金で構成し、金属層をアルミニウム又はアルミニウム合金で構成したパワーモジュール用基板が提案されている。
【0009】
上述のように回路層及び金属層を互いに異なる金属で構成した場合、回路層及び金属層の剛性や熱膨張係数が互いに異なるために、ヒートシンクを接合したヒートシンク付パワーモジュール用基板において、さらに反りが発生しやすくなるといった問題がある。
ヒートシンク付パワーモジュール用基板に反りが生じた場合、冷熱サイクルが負荷された際に、セラミックス基板(絶縁層)に大きな曲げ応力が作用し、セラミックス基板(絶縁層)に亀裂等が生じるおそれがあった。
【0010】
また、ヒートシンクに冷却器を接合する場合に、ヒートシンク付パワーモジュール用基板に反りが生じていると、ヒートシンクと冷却器との間に隙間が生じ、パワーモジュール用基板を十分に冷却できなくなるおそれがあった。
さらに、ヒートシンク自体に冷却フィンや流路を形成して冷却媒体を流通させる構造とした場合には、ヒートシンク付パワーモジュール用基板に反りが生じることで、冷却媒体の漏れ等が生じるおそれがあった。
このため、回路層及び金属層を、互いに異なる金属で構成した場合であっても、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の反りを十分に低減することができるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法が望まれていた。
【0011】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、絶縁層の一方の面及び他方の面に互いに異なる金属で構成された回路層及び金属層を形成したパワーモジュール用基板とヒートシンクとを備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板の反りを、比較的短時間かつ低コストで低減することができるヒートシンクパワーモジュール用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決するために、本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法は、絶縁層の一方の面に回路層が形成されるとともに前記絶縁層の他方の面に金属層が形成されたパワーモジュール用基板と、このパワーモジュール用基板の前記金属層側に接合されるヒートシンクと、を備えた、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、前記絶縁層の一方の面に、前記回路層を形成する回路層形成工程と、前記絶縁層の他方の面に、前記回路層とは異なる金属からなる金属層を形成する金属層形成工程と、前記金属層側に前記ヒートシンクを接合するヒートシンク接合工程と、を備えており、前記ヒートシンク接合工程では、前記回路層と前記絶縁層と前記金属層と前記ヒートシンクとを積層し、積層方向に加圧した状態で加熱して接合した後に、積層方向に加圧した状態で常温よりも低い温度にまで冷却
し、冷却後に常温まで戻して加圧を除去することを特徴としている。
なお、本発明において、ヒートシンクとは、パワーモジュール用基板の熱を放散する作用を有する部材であって、放熱板、冷却フィンを備えた冷却フィン付放熱板、あるいは、冷却媒体の流路を備えた冷却器、を含むものとする。
【0013】
本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法によれば、前記金属層側に前記ヒートシンクを接合するヒートシンク接合工程において、前記回路層と前記絶縁層と前記金属層と前記ヒートシンクとを積層し、積層方向に加圧した状態で加熱して接合した後に、積層方向に加圧した状態で常温より低い温度にまで冷却する構成とされているので、加熱接合後の冷却過程においてヒートシンク付パワーモジュール用基板は反るように変形できず、さらに常温よりも低い温度にまで冷却されることで前記ヒートシンクに塑性変形が生じることになる。この塑性変形は、反りとは逆方向の変形であり、その塑性変形領域まで冷却した後、常温に戻すと、塑性変形した分だけ、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の反りが相殺されることになる。
【0014】
また、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を積層方向に加圧した状態で冷却しているので、冷却過程においてヒートシンク付パワーモジュール用基板が強く拘束されることになり、比較的短時間かつ高温の条件で、ヒートシンクを塑性変形させることができ、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の反りを低減することができる。よって、高価な冷却装置を必要とせず、低コストで効率よく、反りが低減されたヒートシンク付パワーモジュール用基板を製造することができる。
【0015】
ここで、前記ヒートシンク接合工程においては、積層方向に9.8×10
4Pa以上343×10
4Pa以下で加圧した状態で冷却することが好ましい。
この場合、加圧した状態で加熱接合されたヒートシンク付パワーモジュール用基板を、確実に拘束した状態で常温よりも低い温度にまで冷却することができ、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の反りを確実に低減できると。また、ヒートシンク付パワーモジュール用基板に必要以上の荷重が負荷されず、絶縁層の割れ等のトラブルを抑制することができる。
【0016】
また、前記ヒートシンク接合工程においては、積層方向に加圧した状態で−70℃以上−5℃以下の範囲内に冷却することが好ましい。
この場合、積層方向に加圧した状態で−70℃以上−5℃以下の範囲内に冷却する構成とされていることから、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を必要以上に冷却する必要がなく、冷却時間及び常温に戻す時間を短縮することができ、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の生産効率を向上させることができる。また、ヒートシンクを確実に塑性変形させて、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の反りを低減することができる。
【0017】
さらに、前記金属層形成工程と、前記ヒートシンク接合工程と、が同時に実施される構成としてもよい。
この場合、前記金属層形成工程と前記ヒートシンク接合工程とを同時に行うことによって、接合に掛かるコストを大幅に削減することができる。また、繰り返し加熱、冷却を行う必要がなく、絶縁層に不要な負荷が作用せず、絶縁層に亀裂等が生じることを抑制することができる。
【0018】
また、前記回路層は銅又は銅合金で構成され、前記金属層はアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていてもよい。
回路層を銅又は銅合金で構成し、金属層をアルミニウム又はアルミニウム合金で構成したヒートシンク付パワーモジュール用基板においては、回路層が熱伝導性に優れているので、半導体素子からの熱を回路層の面方向に拡げ、効率的に熱を放散することができる。また、金属層の変形抵抗が比較的小さくなり、ヒートシンクと絶縁層との熱膨張係数の差に起因する歪みを金属層で吸収でき、絶縁層の割れを抑制することができる。
そして、本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法によれば、前記回路層が銅又は銅合金で構成され、前記金属層がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成された場合であっても、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の反りを十分に低減することができる。
【0019】
また、前記金属層が、純度99.99質量%以上のアルミニウムで構成され、前記回路層が、前記金属層よりもアルミニウムの純度が低いアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていても良い。
この場合、金属層が、純度99.99質量%以上のアルミニウムで構成され、変形抵抗が小さいため、ヒートシンクと絶縁層との熱膨張係数の差に起因する歪みを金属層で吸収でき、絶縁層の割れを抑制することができる。また、回路層が記金属層よりもアルミニウムの純度が低いアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されているので、回路層の変形が抑制され、半導体素子と回路層との間に介在するはんだ層にクラックが発生することを抑制できる
そして、本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法によれば、前記金属層が、純度99.99質量%以上のアルミニウムで構成され、前記回路層が、前記金属層よりもアルミニウムの純度が低いアルミニウム又はアルミニウム合金で構成された場合であっても、ヒートシンク付パワーモジュール用基板の反りを十分に低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、絶縁層の一方の面及び他方の面に互いに異なる金属で構成された回路層及び金属層を形成したパワーモジュール用基板とヒートシンクとを備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板の反りを、比較的短時間かつ低コストで低減することができるヒートシンクパワーモジュール用基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について、添付した図面を参照して説明する。
図1に、本発明の第一の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュールの製造方法によって製造されたヒートシンク付パワーモジュール用基板30、及び、このヒートシンク付パワーモジュール用基板30を用いたパワーモジュール1を示す。
このパワーモジュール1は、ヒートシンク付パワーモジュール用基板30と、このヒートシンク付パワーモジュール用基板30の一方側(
図1において上側)にはんだ層2を介して接合された半導体素子3と、を備えている。
【0023】
はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材(いわゆる鉛フリーはんだ材)とされている。
半導体素子3は、半導体を備えた電子部品であり、必要とされる機能に応じて種々の半導体素子が選択される。
【0024】
ヒートシンク付パワーモジュール用基板30は、パワーモジュール用基板10と、パワーモジュール用基板10の他方側(
図1において下側)に接合されたヒートシンク31とを備えている。
【0025】
パワーモジュール用基板10は、
図1に示すように、セラミックス基板11(絶縁層)と、このセラミックス基板11の一方の面(
図1において上面)に形成された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面(
図1において下面)に形成された金属層13と、を備えている。
【0026】
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、0.2mm以上1.5mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0027】
回路層12は、セラミックス基板11の一方の面(
図1において上面)に、導電性を有する金属板が接合されることにより形成されている。この回路層12の厚さt1は、0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されている。本実施形態においては、回路層12は、無酸素銅の圧延板からなる銅板22がセラミックス基板11の一方の面に接合されることにより形成されており、この銅板22の厚さt1が0.3mmとされている。
【0028】
金属層13は、セラミックス基板11の他方の面(
図1において下面)に、金属板が接合されることにより形成されている。この金属層13の厚さt2は、0.6mm以上6.0mm以下の範囲内に設定されている。本実施形態においては、金属層13は、純度が99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなるアルミニウム板23がセラミックス基板11の他方の面に接合されることにより形成されており、このアルミニウム板23の厚さt2が1.6mmとされている。
なお、回路層12と金属層13の厚さの比t1/t2は、0.01≦t1/t2≦0.9の範囲内とされている。
【0029】
ヒートシンク31は、パワーモジュール用基板10側の熱を放散する作用を有する部材であって、本実施形態では、熱伝導性に優れた金属からなる放熱板とされている。具体的には、A6063等のアルミニウム合金からなる放熱板とされており、このヒートシンク31の厚さは、1mm以上10mm以下の範囲内に設定されている。
なお、このヒートシンク31(放熱板)には、冷却媒体(例えば水)が流通する流路36を備えた冷却器35が積層配置されることになる。ここで、ヒートシンク31と冷却器35とは、固定ネジ37によって連結される構造とされている。
【0030】
次に、本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板30の製造方法について、
図2から
図4を用いて説明する。
まず、
図3で示すように、銅板22とセラミックス基板11とを接合し、回路層12を形成する(回路層形成工程S01)。セラミックス基板11の一方の面に、活性ろう材25を介して銅板22を積層し、いわゆる活性金属法によって、銅板22とセラミックス基板11とを接合する。本実施形態では、Ag−27.4質量%Cu−2.0質量%Tiからなる活性ろう材25を用いて、10
−3Paの真空中にて、積層方向に9.8×10
4Pa(1kgf/cm
2)以上343×10
4Pa(35kgf/cm
2)以下の範囲で加圧し、850℃で10分加熱することによって、セラミックス基板11と銅板22とを接合している。
【0031】
次に、セラミックス基板11の他方の面側に金属層13となるアルミニウム板23を接合する(金属層形成工程S02)とともに、アルミニウム板23とヒートシンク31とを接合する(ヒートシンク接合工程S03)。本実施形態では、これら金属層形成工程S02と、ヒートシンク接合工程S03と、を同時に実施することになる。
【0032】
アルミニウム板23のセラミックス基板11との接合面にスパッタリングによって、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を固着して第1固着層26を形成するとともに、アルミニウム板23のヒートシンク31との接合面にスパッタリングによって、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を固着して第2固着層27を形成する(固着層形成工程S11)。ここで、第1固着層26及び第2固着層27における添加元素量は0.01mg/cm
2以上10mg/cm
2以下の範囲内とされている。本実施形態では、添加元素としてCuを用いており、第1固着層26及び第2固着層27におけるCu量が0.08mg/cm
2以上2.7mg/cm
2以下に設定されている。
【0033】
次に、
図3に示すように、アルミニウム板23をセラミックス基板11の他方の面側に積層する。さらに、アルミニウム板23の他方の面側にヒートシンク31を積層し、積層体Sとする(積層工程S12)。
このとき、
図3に示すように、アルミニウム板23とセラミックス基板11との間に第1固着層26(添加元素:Cu)を介在させ、アルミニウム板23とヒートシンク31との間に第2固着層27(添加元素:Cu)を介在させる。
【0034】
次に、上述の積層体Sを積層方向に加圧した状態で真空加熱炉内に装入して加熱する(加圧加熱工程S13)。ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力を10
−3〜10
−6Paの範囲内に設定し、加熱温度を550℃以上650℃以下の範囲内に設定している。また、積層方向の加圧の圧力を9.8×10
4Pa(1kgf/cm
2)以上343×10
4Pa(35kgf/cm
2)以下の範囲内に設定している。
【0035】
ここで、本実施形態では、銅板22が接合されたセラミックス基板11、アルミニウム板23、ヒートシンク31は、
図4に示す加圧装置40を用いて積層方向に加圧され、真空加熱炉内に装入されることになる。
この加圧装置40は、ベース板41と、このベース板41の上面の四隅に垂直に取り付けられたガイドポスト42と、これらガイドポスト42の上端部に配置された固定板43と、これらベース板41と固定板43との間で上下移動自在にガイドポスト42に支持された押圧板44と、固定板43と押圧板44との間に設けられて押圧板44を下方に付勢するばね等の付勢手段45と、固定板43を上下させる調整ネジ46と、を備えている。
【0036】
固定板43及び押圧板44は、ベース板41に対して平行に配置されており、ベース板41と押圧板44との間に、前述の積層体Sが配置される。ここで、積層体Sとベース板41及び押圧板44との間には、それぞれカーボンシート47が介装される。
そして、調整ネジ46の位置を調節することによって固定板43を上下させて、付勢手段45により押圧板44をベース板41側に押し込むことにより、積層体Sが積層方向に加圧される構成とされている。
【0037】
このように、加圧装置40によって積層方向に加圧された状態で、真空加熱炉内に装入され、上述のように加熱されることにより、セラミックス基板11とアルミニウム板23(金属層13)とが接合され、かつ、アルミニウム板23(金属層13)とヒートシンク31とが接合され、ヒートシンク付パワーモジュール用基板30が製造される。
なお、セラミックス基板11とアルミニウム板23(金属層13)、及び、アルミニウム板23(金属層13)とヒートシンク31は、第1固着層26及び第2固着層27の添加元素(本実施形態ではCu)のアルミニウム中への拡散による過渡液相接合法(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)によって接合される。
【0038】
そして、加圧加熱工程S13によって接合されたヒートシンク付パワーモジュール用基板30は、加圧装置40によって加圧した状態で、常温よりも低い温度まで冷却される(加圧冷却工程S14)。
具体的には、9.8×10
4Pa(1kgf/cm
2)以上343×10
4Pa(35kgf/cm
2)以下の範囲で加圧したままの状態で、加圧装置40ごと冷却装置50内に装入し、−70℃以上−5℃以下の範囲まで冷却する。なお、加圧状態のヒートシンク付パワーモジュール用基板30を冷却する場合、
図4に示す加圧装置40ごと冷却装置50に装入すると、通常、5分程度でヒートシンク付パワーモジュール用基板30が雰囲気温度に到達することから、保持時間としては5分以上とすることが好ましい。
より好ましくは、−20℃以上―10℃以下の温度範囲で、保持時間を10分以上とするとよい。
【0039】
そして、冷却したヒートシンク付パワーモジュール用基板30及び加圧装置40を常温にまで戻して、加圧装置40から取り外すことにより、反りが低減されたヒートシンク付パワーモジュール用基板30が製造されることになる。
【0040】
以上のような構成とされた本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法によれば、金属層13となるアルミニウム板23とヒートシンク31とを接合するヒートシンク接合工程S03において、銅板22が接合されたセラミックス基板11、アルミニウム板23、ヒートシンク31を積層して積層体Sとし、この積層体Sを積層方向に加圧した状態で真空加熱炉内に装入して加熱する加圧加熱工程S13と、加圧加熱工程S13により接合されたヒートシンク付パワーモジュール用基板30を、加圧装置40によって加圧した状態で、常温よりも低い温度まで冷却を行う加圧冷却工程S14と、を備えているので、加圧加熱工程S13後の冷却過程においてヒートシンク付パワーモジュール用基板30が反るように変形できずに拘束され、さらに常温よりも低い温度にまで冷却されることでヒートシンク31には、反りとは逆方向に塑性変形が生じることになる。このようにヒートシンク31を塑性変形された後に、常温に戻すと、塑性変形した分だけヒートシンク付パワーモジュール用基板30の反りが相殺され、反りの低減されたヒートシンク付パワーモジュール用基板30が製造されることになる。
【0041】
よって、このヒートシンク付パワーモジュール用基板30に半導体素子3を搭載し、冷熱サイクルが負荷された場合であっても、セラミックス基板11に作用する曲げ応力を低減でき、セラミックス基板11に亀裂等が生じることを抑制できる。
また、このヒートシンク付パワーモジュール用基板30を、固定ネジ37によって冷却器35に連結する場合に、ヒートシンク31と冷却器35との間に隙間が生じず、冷却器35によって、半導体素子3及びパワーモジュール用基板10を効率よく冷却することが可能となる。
【0042】
また、上述のように、ヒートシンク付パワーモジュール用基板30を積層方向に加圧した状態で冷却しているので、ヒートシンク付パワーモジュール用基板30が強く拘束されることになり、比較的短時間かつ高温の条件で、ヒートシンク31を塑性変形させることができ、ヒートシンク付パワーモジュール用基板30の反りを確実に低減することができる。よって、高価な冷却装置を必要とせず、低コストで効率よく、反りが低減されたヒートシンク付パワーモジュール用基板30を製造することができる。
【0043】
本実施形態では、ヒートシンク接合工程S03の加圧冷却工程S14においては、積層方向に9.8×10
4Pa以上343×10
4Pa以下で加圧した状態で冷却する構成としている。
加圧冷却工程S14における加圧圧力が9.8×10
4Pa未満の場合は、ヒートシンク付パワーモジュール用基板30を十分に拘束することができず、ヒートシンク31に塑性変形が生じ難くなり、冷却温度をさらに低温にする必要がある。
一方、加圧冷却工程S14における加圧圧力が343×10
4Paを超える場合は、加圧が高すぎるためセラミックス基板11に割れが発生することがある。
よって、本実施形態では、加圧冷却工程S14における加圧圧力を9.8×10
4Pa以上343×10
4Pa以下に設定している。
【0044】
本実施形態では、ヒートシンク接合工程S03の加圧冷却工程S14においては、積層方向に加圧した状態で−70℃以上−5℃以下の範囲内に冷却する構成としている。
加圧冷却工程S14における冷却温度が−70℃未満の場合には、冷却温度が低いので高価な冷却装置が必要となり、冷却を実施するためのコストが増加する。
一方、冷却温度が−5℃以上の場合は、冷却が不十分なためにヒートシンク31に塑性変形が十分に生じ難くなり、加圧圧力を高く設定する必要がある。
よって、本実施形態では、加圧冷却工程S14における冷却温度を−70℃以上−5℃以下に設定している。
【0045】
さらに、本実施形態では、金属層形成工程S02と、ヒートシンク接合工程S03と、を同時に実施する構成としているので、ヒートシンク付パワーモジュール用基板30の製造コストを大幅に削減することができる。また、繰り返し加熱、冷却を行う必要がなくなるので、セラミックス基板11に不要な負荷が作用せず、セラミックス基板11に亀裂等が生じることを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、回路層12が無酸素銅の圧延板からなる銅板22を接合することによって構成されているので、回路層12が熱伝導性に優れており、半導体素子3からの熱を回路層12の面方向に拡げ、効率的に熱を放散することができる。また、金属層13が純度99.99質量%以上の4Nアルミニウムの圧延板を接合することで構成されているので、金属層13の変形抵抗が比較的小さくなり、ヒートシンク31とセラミックス基板11との熱膨張係数の差に起因する歪みを金属層13で吸収でき、セラミックス基板11の割れを抑制することができる。
このように、回路層12が銅で構成され、金属層13がアルミニウムで構成されたパワーモジュール用基板10を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板30であっても、反りを十分に低減することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、セラミックス基板11とアルミニウム板23(金属層13)、及び、アルミニウム板23(金属層13)とヒートシンク31を、第1固着層26及び第2固着層27の添加元素(本実施形態ではCu)のアルミニウム中への拡散による過渡液相接合法(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)によって接合しているので、比較的低温条件でこれらを強固に接合することができ、接合信頼性に優れたヒートシンク付パワーモジュール用基板30を製造することができる。
【0048】
次に、本発明の第二の実施形態について、
図5から
図8を用いて説明する。
図5に、本発明の第二の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュールの製造方法によって製造されたヒートシンク付パワーモジュール用基板130、及び、このヒートシンク付パワーモジュール用基板130を用いたパワーモジュール101を示す。
このパワーモジュール101は、ヒートシンク付パワーモジュール用基板130と、このヒートシンク付パワーモジュール用基板130の一方側(
図5において上側)にはんだ層2を介して接合された半導体素子3と、を備えている。
【0049】
ヒートシンク付パワーモジュール用基板130は、パワーモジュール用基板110と、パワーモジュール用基板110の他方側(
図5において下側)に接合されたヒートシンク131とを備えている。
【0050】
パワーモジュール用基板110は、
図5に示すように、セラミックス基板111(絶縁層)と、このセラミックス基板111の一方の面(
図5において上面)に形成された回路層112と、セラミックス基板111の他方の面(
図5において下面)に形成された金属層113と、を備えている。
【0051】
セラミックス基板111は、回路層12と金属層13との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)で構成されている。また、セラミックス基板111の厚さは、0.2mm以上1.5mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0052】
回路層112は、セラミックス基板111の一方の面(
図5において上面)に、導電性を有する金属板が接合されることにより形成されている。この回路層112の厚さt1は、0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されている。本実施形態においては、回路層112は、純度99.00質量%以上99.50質量%未満のアルミニウム(以下、2Nアルミニウム)の圧延板からなるアルミニウム板122がセラミックス基板111の一方の面に接合されることにより形成されており、このアルミニウム板122の厚さt1が0.6mmとされている。
【0053】
金属層113は、セラミックス基板111の他方の面(
図5において下面)に、金属板が接合されることにより形成されている。この金属層113の厚さt2は、0.6mm以上6.0mm以下の範囲内に設定されている。本実施形態においては、金属層113は、純度が純度99.99質量%以上のアルミニウム(以下、4Nアルミニウム)の圧延板からなるアルミニウム板123がセラミックス基板111の他方の面に接合されることにより形成されており、このアルミニウム板123の厚さt2が1.6mmとされている。
ここで、回路層112と金属層113の厚さの比t1/t2は、0.01≦t1/t2≦0.9の範囲内とされている。
なお、これら2Nアルミニウム及び4Nアルミニウムの主な不純物としては、Fe,Si、Cuが挙げられる。
【0054】
ヒートシンク131は、パワーモジュール用基板110側の熱を放散する作用を有する部材であって、本実施形態では、冷却媒体が流通する流路132を備えた冷却器とされている。具体的には、A6063等のアルミニウム合金からなる冷却器とされており、このヒートシンク131(冷却器)の天板部の厚さは、1mm以上10mm以下の範囲内に設定されている。
【0055】
次に、本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板130の製造方法について、
図6から
図8を用いて説明する。
まず、
図7で示すように、セラミックス基板111の一方の面にアルミニウム板122を接合して回路層112を形成するとともに、セラミックス基板111の他方の面にアルミニウム板123を接合して金属層113を形成する(回路層及び金属層形成工程S101)。
【0056】
本実施形態では、アルミニウム板122、Al−Si系のろう材箔125、セラミックス基板111、Al−Si系のろう材箔126、アルミニウム板123を積層し、これらを、
図4に示す加圧装置40によって積層方向に加圧した状態で真空加熱炉に装入する。本実施形態では、10
−3Paの真空中にて、積層方向に9.8×10
4Pa(1kgf/cm
2)以上343×10
4Pa(35kgf/cm
2)以下の範囲で加圧し、650℃で90分加熱することによって、アルミニウム板122とセラミックス基板111、セラミックス基板111とアルミニウム板123を接合し、パワーモジュール用基板110が製造される。
そして、パワーモジュール用基板110は、上述した加圧装置40によって加圧した状態で、常温よりも低い温度まで冷却を行う。具体的には、9.8×10
4Pa(1kgf/cm
2)以上343×10
4Pa(35kgf/cm
2)以下の範囲で加圧したままの状態で、加圧装置40ごと冷却装置50内に装入し、−70℃以上−5℃以下の範囲まで冷却する。
【0057】
加圧装置40ごと冷却されたパワーモジュール用基板110を常温に戻し、加圧装置40から取り外すことにより、反りが低減されたパワーモジュール用基板110が製造される。
【0058】
次に、このパワーモジュール用基板110の他方の面側にヒートシンク131を接合する(ヒートシンク接合工程S103)。
まず、パワーモジュール用基板110、Al−Si系のろう材箔127、ヒートシンク131を積層し、積層体Sとする(積層工程S112)。なお、このろう材箔127は、上述のろう材箔125、126よりもSiの含有量が高く、融点が低いものとされている。
【0059】
次に、この積層体Sを上述した加圧装置40によって積層方向に加圧した状態で真空加熱炉に装入して加熱する(加圧加熱工程S113)。ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力を10
−3〜10
−6Paの範囲内に設定し、積層方向に9.8×10
4Pa(1kgf/cm
2)以上343×10
4Pa(35kgf/cm
2)以下の範囲で加圧し、610℃で90分加熱することにより、パワーモジュール用基板110とヒートシンク131とを接合する。これにより、ヒートシンク付パワーモジュール用基板130が製造される。
そして、加圧加熱工程S113により接合されたヒートシンク付パワーモジュール用基板130は、加圧装置40によって加圧した状態で、常温よりも低い温度まで冷却を行う(加圧冷却工程S114)。
具体的には、9.8×10
4Pa(1kgf/cm
2)以上343×10
4Pa(35kgf/cm
2)以下の範囲で加圧したままの状態で、加圧装置40ごと冷却装置50内に装入し、−70℃以上−5℃以下の範囲まで冷却する。
【0060】
そして、冷却したヒートシンク付パワーモジュール用基板130及び加圧装置40を常温にまで戻して、加圧装置40から取り外すことにより、反りが低減されたヒートシンク付パワーモジュール用基板130が製造されることになる。
【0061】
以上のような構成とされた本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法によれば、第一の実施形態と同様に、加圧加熱工程S113により接合されたヒートシンク付パワーモジュール用基板130を、加圧装置40によって加圧した状態で、常温よりも低い温度まで冷却を行う加圧冷却工程S114を備えているので、高価な冷却装置を必要とせず、低コストで効率よく、反りの低減されたヒートシンク付パワーモジュール用基板130を製造することができる。
【0062】
また、本実施形態では、回路層112が2Nアルミニウムの圧延板からなるアルミニウム板122を接合することによって構成されているので、冷熱サイクルによって回路層112が容易に変形せず、半導体素子3と回路層112との間に介在するはんだ層2にクラックが発生することを抑制できる。また、金属層113が4Nアルミニウムの圧延板からなるアルミニウム板123を接合することで構成されているので、金属層113の変形抵抗が比較的小さくなり、ヒートシンク131とセラミックス基板111との熱膨張係数の差に起因する歪みを金属層113で吸収でき、セラミックス基板111の割れを抑制することができる。
このように、回路層112が2Nアルミニウムで構成され、金属層113が4Nアルミニウムで構成されたパワーモジュール用基板110を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板130であっても、ヒートシンク付パワーモジュール用基板130の反りを十分に低減することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態においては、絶縁層としてAlNからなるセラミックス基板を用いたものとして説明したが、これに限定されることはなく、Si
3N
4やAl
2O
3等からなるセラミックス基板を用いてもよいし、絶縁樹脂によって絶縁層を構成してもよい。
また、
図4に示す加圧装置を用いて加圧するものとして説明下が、これに限定されることはなく、他の構成の加圧装置を用いてもよい。
【0064】
第一の実施形態においては、回路層が無酸素銅の圧延板で構成され、金属層が4Nアルミニウムの圧延板で構成されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば回路層が他の銅又は銅合金で構成され、金属層が他のアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていてもよい。
また、第二の実施形態においては、回路層が2Nアルミニウムの圧延板で構成され、金属層が4Nアルミニウムの圧延板で構成されているものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば回路層が他のアルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、金属層が他のアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていてもよく、回路層と金属層とが異なる金属で構成されていればよい。
【0065】
また、第一の実施形態においては、銅板とセラミックス基板とをAg−Cu−Ti系の活性ろう材を用いて接合するものとして説明したが、これに限定されることはなく、Ag−Ti系の接合材を用いて、Ag,Tiを銅板側に拡散させることによって、銅板とセラミックス基板とを接合してもよい。また、銅板とセラミックス基板とを銅と酸素の共晶反応を利用したDBC法で接合してもよい。
【0066】
また、本実施形態では、加圧加熱工程の後、加圧装置で加圧したまま加圧冷却工程を実施する構成として説明したが、これに限定されることはなく、加圧加熱工程の後、加圧装置から取り外し、その後、加圧装置によってヒートシンク付パワーモジュール用基板を加圧して加圧冷却を実施してもよい。また、加圧加熱工程と加圧冷却工程とで、異なる加圧装置を用いてもよい。
【実施例】
【0067】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
(実施例1)
実施例1では、第一の実施形態に例示したように、回路層を無酸素銅の圧延板で構成し、金属層を4Nアルミニウムの圧延板で構成したパワーモジュール用基板と、ヒートシンクとしてA6063合金からなる放熱板と、を接合した、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を用いて評価した。
まず、AlNで構成された厚さ0.635mmのセラミックス基板の一方の面に活性ろう材であるAg−Cu−Tiを塗布し、セラミックス基板の一方の面側に、28mm×28mm、厚さ0.6mmの無酸素銅の圧延板を積層した。そして、53.9×10
4Pa(5.5kgf/cm
2)で加圧し、850℃で加熱後、常温まで冷却し、セラミックス基板の一方の面に無酸素銅で構成された回路層を接合した。
【0068】
次に、金属層となるアルミニウム板の両面に、スパッタリングによってCuを固着し、回路層が形成されたセラミックス基板、金属層となるアルミニウム板、ヒートシンクを積層した。そして、
図4に示す加圧装置を用いて積層方向に加圧した状態で、真空加熱炉内に装入し、10
−3Paの真空中にて、積層方向に53.9×10
4Pa(5.5kgf/cm
2)で加圧し、610℃で60分加熱した。これにより、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を製造した。そして、このヒートシンク付パワーモジュール用基板に対して、後述する平面度改善処理を実施した。
【0069】
本発明例1〜5においては、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を加圧装置によって積層方向に53.9×10
4Paで加圧し、−40℃まで冷却し、−40℃で20分間保持した後に、常温まで戻し、加圧を除去した。
比較例1〜5においては、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を加圧装置によって積層方向に53.9×10
4Paで加圧し、常温で20分間保持した後に、加圧を除去した。
比較例6〜10においては、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を加圧装置から取り出して加圧を除去した状態で、−40℃まで冷却し、−40℃で20分間保持した後に、常温まで戻した。
【0070】
上述のようにして作製したヒートシンク付パワーモジュール用基板について、ヒートシンクを接合後の回路層の平面度と、平面度改善処理を実施した後の平面度を評価した。
なお、平面度は、パワーモジュール用基板を定盤上に載置し、レーザー変位計を用いて一方側(上方側)から測定した。また、平面度変化率は、接合後の平面度をXとし、平面度改善処理を実施した後の平面度をYとした場合に、Z=(X−Y)/X×100(%)により算出される値である。
【0071】
また、上述のヒートシンク付パワーモジュール用基板を用いて、冷熱サイクル試験を実施した。なお、絶縁基板の割れは、サイクル数500回毎に評価装置から取り出して、絶縁基板の割れが確認された時点でのサイクル数で評価した。測定条件を以下に示す。
評価装置:エスペック株式会社製TSB−51
液相:フロリナート
温度条件:−40℃×5分 ←→ 125℃×5分
平面度及び冷熱サイクル試験の評価結果を、表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
比較例1〜5においては、平面度の改善効果が小さかった。ヒートシンク付パワーモジュール用基板を単に加圧しただけでは、平面度を改善できないことが確認された。
また、比較例6〜10においては、比較例1〜5よりは平面度が改善されているが、まだ不十分であった。ヒートシンク付パワーモジュール用基板を単に冷却しただけでは、平面度を十分に改善できないことが確認された。
これに対して、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を加圧しながら冷却した本発明例1〜5においては、平面度が大幅に改善されることが確認された。
【0074】
また、平面度が十分に改善されていない比較例1〜10では、少ないサイクル回数でセラミックスの割れが確認された。
これに対して、平面度が十分に改善された本発明例1〜5においては、サイクル数が3500回の段階でもセラミックス基板の割れは確認されなかった。
以上のように、本発明によれば、回路層を銅で構成し、金属層をアルミニウムで構成したパワーモジュール用基板とヒートシンクとを備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板であっても、反りを十分に低減することができることが確認された。
【0075】
(実施例2)
実施例2では、回路層を2Nアルミニウムの圧延板で構成し、金属層を4Nアルミニウムの圧延板で構成したパワーモジュール用基板と、ヒートシンクとしてA6063合金からなる放熱板と、を接合した、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を用いた。
まず、AlNで構成された厚さ0.635mmのセラミックス基板の一方の面に、Al−7.5質量%Siのろう材箔を介して2Nアルミニウムの圧延板を積層し、セラミックス基板の他方の面に、Al−7.5質量%Siのろう材箔を介して4Nアルミニウムの圧延板を積層し、
図4に示す加圧装置を用いて積層方向に加圧した状態で、真空加熱炉内に装入し、10
−3Paの真空中にて、積層方向に53.9×10
4Pa(5.5kgf/cm
2)で加圧し、650℃で60分加熱し、パワーモジュール用基板を製造した。
【0076】
次に、このパワーモジュール用基板の他方の面側に、Al−10質量%Siのろう材箔を介してヒートシンクを積層した。そして、
図4に示す加圧装置を用いて積層方向に加圧した状態で、真空加熱炉内に装入し、10
−3Paの真空中にて、積層方向に53.9×10
4Pa(5.5kgf/cm
2)で加圧し、610℃で60分加熱した。これにより、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を製造した。そして、このヒートシンク付パワーモジュール用基板に対して、後述する平面度改善処理を実施した。
【0077】
本発明例11〜15においては、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を加圧装置によって積層方向に53.9×10
4Paで加圧し、−40℃まで冷却し、−40℃で20分間保持した後に、常温まで戻し、加圧を除去した。
比較例11〜15においては、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を加圧装置によって積層方向に53.9×10
4Paで加圧し、常温で20分間保持した後に、加圧を除去した。
比較例16〜20においては、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を加圧装置から取り出して加圧を除去した状態で、−40℃まで冷却し、−40℃で20分間保持した後に、常温まで戻した。
【0078】
上述のようにして作製したヒートシンク付パワーモジュール用基板について、実施例1と同様に、平面度及びセラミックス基板の割れを評価した。評価結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
比較例11〜20においては、平面度の改善効果が小さかった。また、平面度が十分に改善されていないことから、少ないサイクル回数でセラミックスの割れが確認された。
これに対して、発明例11〜15においては、ヒートシンク付パワーモジュール用基板を加圧した状態で冷却しているので、平面度が大幅に改善されており、サイクル数が4000回の段階でもセラミックス基板の割れは確認されなかった。
以上のように、本発明によれば、回路層を2Nアルミニウムで構成し、金属層を4Nアルミニウムで構成したパワーモジュール用基板と、ヒートシンクと、を備えたヒートシンク付パワーモジュール用基板であっても、反りを十分に低減することができることが確認された。