特許第5987430号(P5987430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987430
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】耐火レンガ保護材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/66 20060101AFI20160825BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20160825BHJP
   C04B 35/628 20060101ALI20160825BHJP
   C04B 35/043 20060101ALI20160825BHJP
   C21C 5/44 20060101ALN20160825BHJP
【FI】
   C04B35/66 U
   F27D1/00 K
   C04B35/00 B
   C04B35/04 C
   !C21C5/44 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-91419(P2012-91419)
(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-220952(P2013-220952A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095603
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 一郎
(72)【発明者】
【氏名】平嶋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】切敷 幸一
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 亮太
(72)【発明者】
【氏名】二宮 耕造
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀明
(72)【発明者】
【氏名】壁村 幸治
(72)【発明者】
【氏名】元 振利
【審査官】 佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−106031(JP,A)
【文献】 特開平05−024911(JP,A)
【文献】 特開平08−325623(JP,A)
【文献】 特開2002−302712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/66
C04B 35/043
C04B 35/628
F27D 1/00
C21C 5/44
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径5〜30mmの基材と、前記基材の表面を覆う融点が1700℃以上のコーティング材と、を有し、前記基材がマグネシウムの無機塩又はオキソ酸塩、鉱物の内いずれか1以上であり、前記コーティング材の割合は総量に対して2〜8mass%であり、前記コーティング材は目開き3mmのふるいを通過したものであることを特徴とする耐火レンガ保護材。
【請求項2】
前記基材が水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載の耐火レンガ保護材。
【請求項3】
前記水酸化マグネシウムがブルーサイト、蛇紋岩、タルク、バーミキュライト、セピオライトの内いずれか1以上であることを特徴とする請求項2に記載の耐火レンガ保護材。
【請求項4】
前記コーティング材が目開きmmのふるいを通過した炭酸カルシウム、酸化カルシウム、ドロマイト、マグネサイトの内いずれか1以上であることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1に記載の耐火レンガ保護材。
【請求項5】
マグネシウムの無機塩又はオキソ酸塩、鉱物の内いずれか1以上である基材を5〜30mmに破砕する破砕工程と、前記破砕工程で破砕された前記基材の表面の汚れを落とす水洗工程と、目開き3mmのふるいを通過した炭酸カルシウム及び/又は酸化カルシウムを含むコーティング材と前記基材を混合し前記基材の表面に、総量に対して2〜8mass%のコーティング材を付着させる混合付着工程と、を備えることを特徴とする耐火レンガ保護材の製造方法。
【請求項6】
前記基材がブルーサイトであることを特徴とする請求項に記載の耐火レンガ保護材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉等の内壁の耐火レンガの劣化を防止する耐火レンガ保護材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉等の内張りに使用される耐火レンガは、1300〜1700℃の溶鋼と接するため、その熱によりマグネシウム分が溶融し、耐火レンガのひび割れや劣化を起こしていた。この問題を解決するために、従来から酸化マグネシウムや炭酸マグネシウムをスラグに添加し、マグネシウム濃度を高めることで、耐火レンガからのマグネシウム分が溶融することを防いでいた。例えば(特許文献1)には「スラグにMgOを主成分とするレンガ破砕物及び/又はアルミニウムを添加することでマグネシウム濃度と塩基度を高める耐火物の保護方法」が記載されている。また、(特許文献2)には「MgO、CaO、SiO2 、Al2O3 、生石灰、生ドロマイト、軽焼ドロマイト、軽焼マグネシア、重焼マグネシア、脱炭滓の1種又は2種以上の混合物からなる副材をスラグに投入することを特徴とする金属精錬・溶解用窯炉の内張り耐火物保護方法」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−257519号公報
【特許文献2】特開平11−229020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に開示の技術は、融点の高い酸化マグネシウムを用いるのでマグネシウムが溶融し難く、マグネシウム濃度が上昇し難いという課題を有していた。
(2)(特許文献2)に開示の技術は、SiO2を含有する可能性があり、スラグの塩基度が低下し、内張り耐火物中のMgOの溶出が促され易くなるとともに、スラグの量が増えるという課題を有していた。
【0005】
5〜30mmの水酸化マグネシウム等の基材の表面を融点が1700℃以上の石灰系等のコーティング材で覆うことにより、転炉内に投入された基材が熱や炭酸ガス、水分と緩やかに反応を起こすので、保有水分による基材の急激な膨張を大幅に抑制し、転炉精錬の初期段階で基材中のマグネシウム分の分解を促進して、転炉内のマグネシウム分を高めることができる。したがって、転炉内壁に形成される耐火レンガからのマグネシウム分の溶融を防ぎ、耐火レンガの劣化を抑制することができる耐火レンガ保護材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために、本発明の耐火レンガ保護材及びその製造方法は以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の耐火レンガ保護材は、粒径5〜30mmの基材と、前記基材の表面を覆う融点が1700℃以上のコーティング材と、を有し、前記基材がマグネシウムの無機塩又はオキソ酸塩、鉱物の内いずれか1以上であり、前記コーティング材の割合は総量に対して2〜8mass%であり、前記コーティング材は目開き3mmのふるいを通過したものである構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)基材がマグネシウムの無機塩やオキソ酸塩等であるので、転炉内でマグネシウム分が分解することで、転炉内のマグネシウム分を高めることができ、耐火レンガの劣化を抑制することができる。
(2)基材が融点1700℃以上のコーティング材で覆われているので、基材中のマグネシウム分が転炉の熱と緩やかに反応するので、保有水分による基材の急激な膨張を大幅に抑制でき、これによって耐火レンガの劣化(損耗)が抑制できる。
(3)粒径が5〜30mmであるため転炉内に供給し易く、吹き上げ等による耐火レンガの消費の無駄も無いので、省コストでありハンドリング性に優れる。
【0007】
基材としては、マグネシウムの無機塩又はオキソ酸塩、これらを含む鉱物であれば特に限定されず、工業的に製造されたものでも良い。鉱石としては、ブルーサイトやタルク,蛇紋岩,バーミキュライト,セピオライト,ハイドロマグネサイト,ハイドロタルサイト,スメクタイト,ベスブ石,金雲母,海緑石,緑泥石,ウィゼル石,アルチニ石,硬緑泥石,単斜ヒューム石等の水酸化マグネシウム含有鉱物、ドロマイトやマグネサイト等の炭酸マグネシウム含有鉱物等を用いることができる。但し、蛇紋岩やタルクには石綿が含まれる場合があり、使用する際には石綿に対する対策を取ることが望ましい。
これらの中でも鉱石を用いることが望ましい。鉱石を用いる場合、所定の粒径に鉱石を破砕すれば良く、コーティング材で表面を覆うだけで良く、取扱性に優れるからである。また、鉱物を用いる場合はシリカやアルミナ、硫黄等が含まれないものを用いることが望ましい。
【0008】
基材の粒径は5〜30mm、より好ましくは10〜30mmのものが選択される。粒径が10mmより小さくなるにつれ、表面積が大きくなりコーティング材の量が増えるとともに、単位重量におけるマグネシウムの量が少なくなり、処理に必要な量が増え、5mmよりも小さくなると、吹き上げられ易く、無駄な消費が増加し、使用効率が悪くなる傾向にあり好ましくない。粒径が30mmより大きくなるにつれ単位重量における表面積が小さくなり、コーティング材と混ざり難くなる傾向にあり好ましくない。
また、基材の形状としては特に限定はしないが、凹凸の多い異形であることが好ましい。コーティング材が粉体等の固形物である場合、水酸化マグネシウム表面の凹凸に付着しやすいからである。
【0009】
コーティング材としては転炉内の温度が1300〜1700℃であるので、1700℃以上の融点を持つものや転炉内の熱で反応し、1700℃以上の融点になる物質に変わるものであれば特に限定はしないが、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、ドロマイト、マグネサイト(炭酸マグネシウム)等を用いることができる。
この中でも酸化カルシウムや炭酸マグネシウムを用いた場合、転炉に投入しても不純物として作用しないので、品質を下げることがなく、また、カルシウムイオンになる際に発生した酸素が不純物を酸化し除去を促すので好ましい。
【0010】
請求項2に記載の耐火レンガ保護材は、前記基材が水酸化マグネシウムである構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え以下のような作用が得られる。
(1)転炉内に投入された際に、水酸化マグネシウムが分解され転炉内のマグネシウム分の濃度が高まるので、転炉内壁に形成される耐火レンガからのマグネシウムイオンの溶融を防ぎ、耐火レンガの劣化を抑えることができる。
(2)水酸化マグネシウムの粒子表面を融点が1700℃以上のコーティング材で覆われているので、水酸化マグネシウムと炭酸ガスや水分との反応を緩やかにでき、転炉精錬の初期段階で水酸化マグネシウムの分解を促進させることができるので、水酸化マグネシウムを効率的に使用することができる。
(3)水酸化マグネシウムと炭酸ガスや水分との反応が緩やかなので、保有水分による基材の急激な膨張を大幅に抑制できる。
(4)水酸化マグネシウムの粒子表面にコーティング材を備えているので、大気中の炭酸ガスや水分と反応を抑制し、水酸化マグネシウム粒子の崩壊を防ぐ。
(5)水酸化マグネシウムは融点が低いので、酸化マグネシウムを直接投入するよりも効率よく転炉内のマグネシウム分を高めることができる。
【0011】
水酸化マグネシウムは、耐火レンガの成分である酸化マグネシウムよりも融点が低く、転炉内に投入されたときの熱で水酸化マグネシウムが分解されることで酸化マグネシウムとなる。そのため、コーティング材で覆うことで、転炉内に投入された基材が熱や炭酸ガス、水分と緩やかに反応を起こさせることができ、融点が2800〜2900℃ある酸化マグネシウムを転炉に直に投入れるよりも、効率的に転炉内のマグネシウム分濃度を高めることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の耐火レンガ保護材であって、前記水酸化マグネシウムがブルーサイト、蛇紋岩、タルク、バーミキュライト、セピオライトの内いずれか1以上である構成を有している。
この構成により、請求項2の作用に加え以下のような作用が得られる。
(1)ブルーサイト等の鉱石を用いるので、鉱物を所定の大きさに破砕するだけで用いることができるとともに、原価を抑えることができ生産性に優れる。
(2)ブルーサイトを用いた場合、シリカや硫黄等の不純物が少なく、転炉スラグの発生量を減らすことができるとともに、水酸化マグネシウム含有量から換算した酸化マグネシウム相当量が他の鉱石と比べても高いので、耐火レンガ保護材の使用量を少なくすることができる。
(3)ブルーサイト等の鉱石を破砕して形成するので表面に凹凸があり、コーティング材として粉体等の固形物を用いた場合は、双方を混合するだけで表面にコーティング材を付着させることができ、取扱性に優れる。
【0013】
本発明において、水酸化マグネシウムとしてブルーサイト、蛇紋岩、タルク、バーミキュライト、セピオライトを用いることが望ましい。中でも、転炉投入時のブルーサイトは含有する酸化マグネシウムの量が90%弱であり、50%程度のマグネサイトや20%程度のドロマイト等と比べて高いため、他の鉱石を用いる場合よりも投入量を低減させることができる。
また、ブルーサイトは溶鋼中の不純物の1つであるシリカの含有量が少ないので、転炉スラグの発生量が少なく、転炉スラグの発生による環境負荷も小さくすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の耐火レンガ保護材であって、前記コーティング材が目開きmmのふるいを通過した炭酸カルシウム、酸化カルシウム、ドロマイト、マグネサイトの内いずれか1以上である構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1の作用に加え以下の作用を有している。
(1)コーティング材が炭酸カルシウム、酸化カルシウム、ドロマイト、マグネサイトであるので、転炉に投入した際にコーティング材が不純物とならないので、精錬される溶鋼の品質を落とさず、また、スラグの塩基度を高めるので、耐火レンガからのマグネシウム分が溶出することを防止できる。
(2)粒径がmm未満であるため、水酸化マグネシウムの表面の凹凸に付着しやすく、混合・撹拌するだけで容易に表面をコーティングすることができる。
【0015】
コーティング材の粒径としては目開きmmのふるいを通過したものが選択される。3mmより大きくなるにつれ、基材にコーティング材が付着し難くなる傾向があり好ましくない。
また、コーティング材としては炭酸カルシウム、酸化カルシウム、ドロマイト、マグネサイトが好ましく用いられる。これらは、金属の精製時に不純物にならず、ハンドリング性に優れ、また、スラグの塩基度を高めるので、耐火レンガからのマグネシウム分の溶出を抑えることができる。
【0017】
コーティング材の割合は、耐火レンガ保護材の総量に対して2〜8mass%であることが好ましい。コーティング材の割合が2mass%より低くなるにつれ、水酸化マグネシウム基材の表面全体に付着できず、コーティング斑が発生しやすくなる傾向にあり好ましくない。また、8mass%より高くなるにつれ、基材に付着できずに余るコーティング材が増え、ハンドリング性が悪くなり、酸化マグネシウムの品位が低下する傾向にあり好ましくない。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至の内いずれか1に記載の耐火レンガ保護材の製造方法であって、マグネシウムの無機塩又はオキソ酸塩、鉱物の内いずれか1以上である基材を5〜30mmに破砕する破砕工程と、前記破砕工程で破砕された前記基材の表面の汚れを落とす水洗工程と、コーティング材である目開きmmのふるいを通過した炭酸カルシウム及び/又は酸化カルシウムを含むコーティング材と前記基材を混合し前記基材の表面に、総量に対して2〜8mass%の前記コーティング材を付着させる混合付着工程と、を備える構成を有している。
この構成により、以下の作用を有している。
(1)マグネシウムの無機塩又はオキソ酸塩、鉱物の内いずれか1以上である基材を破砕してコーティング材と混合するだけで、基材の表面に炭酸カルシウムや酸化カルシウムの微粒子をコーティングすることができるので、生産性に優れる。
(2)炭酸カルシウムや酸化カルシウムを付着させるので、基材が空気中の炭酸ガスや水分によって崩壊することを防ぐことができるので、ハンドリング性に優れる耐火レンガ保護材を得ることができる。
【0019】
ここで、基材及びコーティング材としては、請求項1で説明したものと同様なので、説明を省略する。
【0020】
破砕工程において、基材を所定の粒径に破砕できればどのような方法を用いても良く、ジョークラッシャー、ジャイレトリクラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー等のクラッシャー等を用いることができる。
また、破砕されたブルーサイトは篩分け、30mm以上のものは再び破砕工程で破砕される。
【0021】
水洗工程において、破砕工程で得られた基材の表面の汚れ等を落とすことができればどのような方法を用いても良く、シャワーリング等の方法を用いることができる。
水洗工程後、基材の表面は水分が残っているので、自然乾燥等により表面の水分を簡単に除去しておくことで、水分による崩壊を防ぐことができる。
【0022】
混合付着工程において、基材と炭酸カルシウムや酸化カルシウムの微粒子であるコーティング材は混合するだけで、基材の表面にコーティング材が容易に付着するため、該工程の混合方法としては、基材とコーティング材を混合することができればどのような方法でも良い。
【0023】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の耐火レンガ保護材の製造方法であって、前記基材がブルーサイトである構成を有している。
この構成により、請求項6の作用に加え以下の作用を有している。
(1)ブルーサイト等の鉱石を用いるので、鉱物を所定の大きさに破砕するだけで用いることができるとともに、原価を抑えることができ生産性に優れる。
(2)ブルーサイトはシリカや硫黄等の不純物が少なく、転炉スラグの発生量を少なく環境負荷を低減させことができるとともに、水酸化マグネシウム含有量から換算した酸化マグネシウム相当量が他の鉱石と比べて高く、単位量辺りの使用量が少ない耐火物レンガ保護材を得ることができる。
【0024】
ブルーサイトについては、請求項3で説明したとおり、含有する水酸化マグネシウム量から換算した酸化マグネシウム相当量が他の鉱石と比べて高く、使用量を低減させることができ、シリカ等の不純物も少ないのでスラグの発生量も少なく、従来の耐火レンガ保護材や鉱石と比べても環境負荷を低減することができると考えられる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の耐火レンガ保護材及びその製造方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)転炉内のマグネシウム分を高め耐火レンガの劣化を抑えることができるとともに、保有水分による基材の急激な膨張を大幅に抑制することができる耐火レンガ保護材を提供することができる。
【0026】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)保有水分による基材の急激な膨張を大幅に抑制でき、これによっても耐火レンガの劣化(損耗)が抑制できるとともに、転炉内のマグネシウム濃度を高めることができ、耐火レンガからのマグネシウムイオンの溶出を効率的に抑えることができる。
【0027】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)生産性が高く、使用量が少なくて良く、転炉スラグの発生量も少ない耐火レンガ保護材を提供することができる。
【0028】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1の効果に加え、
(1)精錬される溶鋼の品質を落とさず、耐火レンガからのマグネシウム分の溶出を防止することができる耐火レンガ保護材を提供することができる。
【0030】
請求項に記載の発明によれば、
(1)製造が容易で生産性に優れるとともに、ハンドリング性に優れる耐火レンガ保護材を得ることができる耐火レンガ保護材の製造方法を提供することができる。
【0031】
請求項に記載の発明によれば、請求項の効果に加え、
(1)原価が安く生産性に優れ、環境負荷が小さく、単位量辺りの使用量が少ない耐火レンガ保護材を得ることができる耐火レンガ保護材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、実施の形態により本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
まず、粉砕工程において、採掘されたブルーサイトをクラッシャーで破砕し、トロンメル分級機等を用いて粒径が10mm以下のものと30mm以上のものを篩い分けして、粒径が10〜30mmのブルーサイト粒子を得る。
次に、水洗工程において、10〜30mmのブルーサイト粒子は、シャワーリングされ、表面の汚れ等が除去される。
水洗したブルーサイト粒子はバラ積みにされ、自然乾燥させた後、混合付着工程において、粒径が3mm以下の炭酸カルシウムと酸化カルシウムの微粒子の割合が約5mass%となるように混合され、表面に石灰系微粒子がコーティングされ耐火レンガ保護材となる。この際、蛍光X線を用いて成分分析される。
【0033】
本願の実施の形態1は以上の構成からなるので、次のような優れた効果を示す。
(1)ブルーサイト粒子の表面に酸化カルシウムや炭酸カルシウムからなるコーティング材が付着しているので、ブルーサイトが徐々に分解され、投入される転炉等の内部におけるマグネシウムの濃度が高まるので、転炉等の内壁に張られた耐火レンガからマグネシウム分が溶出することを防ぎ、耐火レンガの劣化を抑えることができる。
(2)融点の高い酸化カルシウムと加熱により酸化カルシウムとなる炭酸カルシウムの微粒子によって表面がコーティングされているので、水酸化マグネシウムと炭酸ガスや水分との反応を緩やかにでき、転炉精錬の初期段階で水酸化マグネシウムの分解を促進させることで、転炉内のマグネシウム分を高めることができるので、転炉内壁に形成される耐火レンガの劣化を抑制することができる。
(3)ブルーサイト粒子が直接大気と触れないので、炭酸ガスや水分と反応し難く、ブルーサイト粒子が崩壊することを防ぐことができる。
(4)酸化マグネシウム相当量が高く、シリカや硫黄等の不純物の少ないブルーサイトを用いるので、単位量辺りの使用量が少なくて良く、精錬における品質の低下が起き難く、スラグの発生量も少ない。
(5)ブルーサイトを破砕するため、表面に凹凸が形成され易く、その凹凸にコーティング材である酸化カルシウムや炭酸カルシウムの微粒子が付着し易いので、製造が容易で生産性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本願に記載の発明により、5〜30mmの水酸化マグネシウム粒子等の基材の表面を融点が1700℃以上の石灰系等のコーティング材で覆うことにより、転炉内に投入された基材が熱や炭酸ガス、水分と緩やかに反応を起こすので、保有水分による基材の急激な膨張を大幅に抑制でき、転炉精錬の初期段階で基材中のマグネシウム分の分解を促進して、転炉内のマグネシウム分を高めることができる。したがって、転炉内壁に形成される耐火レンガからのマグネシウム分の溶出を防ぎ、耐火レンガの劣化を抑制することができる耐火レンガ保護材及びその製造方法を提供することができる。