特許第5987436号(P5987436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987436
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】自動車用侵入検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/524 20060101AFI20160825BHJP
   G01S 7/52 20060101ALI20160825BHJP
   G08B 13/00 20060101ALI20160825BHJP
   G08B 13/16 20060101ALI20160825BHJP
   B60R 25/31 20130101ALI20160825BHJP
【FI】
   G01S7/524 R
   G01S7/52 D
   G08B13/00 B
   G08B13/16 C
   B60R25/31
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-95143(P2012-95143)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-221901(P2013-221901A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(72)【発明者】
【氏名】稲田 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 雅章
(72)【発明者】
【氏名】古澤 明洋
(72)【発明者】
【氏名】橘高 徳昭
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−155975(JP,A)
【文献】 特開2003−185734(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0113696(US,A1)
【文献】 特開昭59−151076(JP,A)
【文献】 実開平04−046963(JP,U)
【文献】 実開昭61−084884(JP,U)
【文献】 特開2003−237540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72− 1/82
G01S 3/80− 3/86
G01S 5/18− 5/30
G01S 7/00− 7/42
G01S 7/52− 7/64
G01S 13/00−13/95
G01S 15/00−15/96
B60R 25/00−99/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波発信手段から車室内空間に向けて発信された超音波を超音波受信手段で受信して車室内への侵入を検出するようにした自動車用侵入検知装置において、
車室内空間を画成する開閉体の開度を検出する開度検出手段と、
前記開度検出手段で検出される前記開閉体の異なる開度についてそれぞれ、前記超音波受信手段での受信強度を検出する受信強度検出手段と、
前記受信強度検出手段で検出される前記開閉体の異なる開度での受信強度の差に基づいて、前記超音波発信手段での超音波発信状態を補正する補正手段と、
を備え,
前記超音波発信手段は、メインビームを発信する他に、該メインビームによる検知領域を補うようにサイドロブを発信するように設定され、
前記開閉体が、サイドロブが反射する位置にある開閉体とされている、
ことを特徴とする自動車用侵入検知装置。
【請求項2】
請求項において、
前記超音波発信手段および前記超音波受信手段がそれぞれ、車室内の略前端部における高所に配設され、
メインビームが斜め下方を向くように設定され、
前記サイドロブがサイドドア方向を向くように設定され、
前記開閉体が、前記サイドドアとされている、
ことを特徴とする自動車用侵入検知装置。
【請求項3】
請求項において、
前記高所が、ルーフ部とされている、ことを特徴とする自動車用侵入検知装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項のいずれか1項において、
前記超音波発信手段により発信されるメインビームが、車両後端部に位置されるリアゲートを向くように設定され、
前記開閉体が、前記リアゲートとされている、
ことを特徴とする自動車用侵入検知装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれか1項において、
前記補正手段が、前記超音波発信手段で発信される超音波の周波数を補正する、ことを特徴とする自動車用侵入検知装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して車室内への侵入を検出するようにした自動車用侵入検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車室内への侵入を検出(検知)するため、超音波発信手段から車室内に超音波を発信すると共に、車室内に発信された超音波を超音波受信手段で受信することが行われている。特に、受信状態の変化によって、車室内に動く物が存在することが検出できる。すなわち、例えば窃盗者が車室内に手を差し入れたり体ごと侵入した際に、少なからず車室内に動きが生じることとなって受信手段による超音波の受信状態が変化され、窃盗の危険があるということを検出することができる。
【0003】
特許文献1には、ルーフ部の前端側に、超音波発信手段と超音波受信手段とを有するセンサユニットを配設したものが開示されている。また、超音波発信手段や超音波受信手段は、車室内からの見栄え向上のために、カバー部材によって車室内から覆われることが多く、この場合、カバー部材には超音波が通過される開口部が形成されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−237540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、超音波発信手段により発信される超音波は、例えば超音波発信素子の個体差、温度変化、経年変化等によって、その出力状態特に周波数が変化されることが多い。発信される超音波の出力状態が変化すると、侵入検知の精度悪化につながるので、この点において何らかの対策が望まれることになる。
【0006】
特に、超音波発信手段から、メインビームの他に、メインビームとは異なる方向に向かうサイドロブを発信する場合がある。この場合、サイドロブは、反射、回折、干渉等の複雑な要因が絡み合って所定強度でもって所定方向へ向かうように設定される一方、周波数変化はこのサイドロブの強度や方向を大きく変化させる要因となる。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、超音波発信手段の出力状態の変化に対応して、侵入検知を常に精度よく行えるようにしたに自動車用侵入検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明にあっては、基本的に、車室内空間を画成するサイドドア等の開閉体が開いているときと閉じているときとで、超音波受信手段による受信強度が変化することに着目して、この受信強度の変化に応じて超音波発信手段の出力状態、特に周波数を補正するようにしてある。
【0009】
具体的には、本発明にあっては、次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
超音波発信手段から車室内空間に向けて発信された超音波を超音波受信手段で受信して車室内への侵入を検出するようにした自動車用侵入検知装置において、
車室内空間を画成する開閉体の開度を検出する開度検出手段と、
前記開度検出手段で検出される前記開閉体の異なる開度についてそれぞれ、前記超音波受信手段での受信強度を検出する受信強度検出手段と、
前記受信強度検出手段で検出される前記開閉体の異なる開度での受信強度の差に基づいて、前記超音波発信手段での超音波発信状態を補正する補正手段と、
を備え,
前記超音波発信手段は、メインビームを発信する他に、該メインビームによる検知領域を補うようにサイドロブを発信するように設定され、
前記開閉体が、サイドロブが反射する位置にある開閉体とされている、
ようにしてある。
【0010】
上記解決手法によれば、超音波発信手段の個体差、温度変化、経年変化等種々の要因に対応して、超音波発信手段の出力状態を常に適切なものとして、侵入検知を常に精度よく行うことができる。また、開閉体の開度の相違に応じたサイドロブに起因する受信強度の変化をみて、超音波発信手段の出力状態を常に適切なものとすることができる。
【0011】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
【0012】
前記超音波発信手段および前記超音波受信手段がそれぞれ、車室内の略前端部における高所に配設され、
メインビームが斜め下方を向くように設定され、
前記サイドロブがサイドドア方向を向くように設定され、
前記開閉体が、前記サイドドアとされている、
ようにしてある(請求項対応)。この場合、請求項に対応した効果を得つつ、実施化の上で好ましいものが提供される。特に、超音波発信手段および超音波受信手段を車室内の上方空間を有効に利用して配設することができる。
【0013】
前記高所が、ルーフ部とされている、ようにしてある(請求項対応)。この場合、ルー部を利用して、超音波発信手段およち超音波受信手段を配設することができる。
【0014】
前記超音波発信手段により発信されるメインビームが、車両後端部に位置されるリアゲートを向くように設定され、
前記開閉体が、前記リアゲートとされている、
ようにしてある(請求項対応)。この場合、メインビームおよびリアゲートを有効に利用して、請求項1に対応した効果を得ることができる。
【0015】
前記補正手段が、前記超音波発信手段で発信される超音波の周波数を補正する、ようにしてある(請求項対応)。この場合、検知精度に大きな影響を与える超音波発信手段から発信される超音波の周波数を常に適切なものとして、侵入精度を常に精度よく行う上で極めて好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、侵入検知を常に精度よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が適用された車両の一例を示す簡略側面図。
図2】ルーフ部前端部に設けた超音波発信手段と超音波受信手段とのユニット体とそのカバー部材を後下方から見た要部斜視図。
図3図2のユニット体とカバー部材との分解斜視図。
図4】超音波センサー装置を用いた盗難防止用の制御系統例を示すブロック図。
図5】検知エリアの設定例を示す簡略平面図。
図6図5の検知エリアを得るための一例を示す簡略平面断面図。
図7】検知エリアの別の設定例を示す簡略平面図。
図8図7の検知エリアを得るための一例を示す簡略平面断面図。
図9図7の検知エリアを得るための別の例を示す簡略平面断面図。
図10図7の検知エリアを得るためのさらに別の例を示す簡略平面断面図。
図11】サイドドアの開閉を利用して検知精度を向上させる例を示す簡略平面図。
図12】リアゲートの開閉を利用して検知精度を向上させる例を示す簡略平面図。
図13】本発明の制御例を示すフローチャート。
図14】コーンを設けた例を示す側面図。
図15】コーンの別の例を示すもので、コーンの開口端部側から見た正面図。
図16図15の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、Vは、本発明が適用された車両である、車両Vは、実施形態ではワゴン型の自動車とされているが、セダン型、2ドア型、1ボックス型、バス、トラック等、車両Vの形式は特に問わないものである。
【0019】
車両Vの車室内の前端部高所(実施形態ではルーフ部)のうち左右方向(車幅方向)中間部には、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとが互いに近接して配設されている。超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとによる検知エリアAがハッチングを付して示される。この検知エリアAは、メインビームMに対応したもので、車室内の前後方向ほぼ全範囲とされている。そして、検知エリアAは、上方から見た平面視においては、図5に示すように、メインビームMに対して左方に向かう左サイドロブSLと、右方に向かう右サイドロブSRとによって、左右方向にも広がるように設定されている。
【0020】
図3に示すように、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとは、車室内前端部のルーフ部に固定されるユニット体Uに組み込まれ、車体への組込み状態が図2に示される。このユニット体Uは、センサユニット1と、取付部材2と、カバー部材3とを有する。取付部材2の前面側に対して、センサユニット1が固定される。また、取付部材2の後面側に、カバー部材3が固定される。
【0021】
取付部材2は、左右一対の取付孔部4,5を有する。取付孔部4に、センサユニット1に接続された超音波発信手段T(の超音波振動子)が嵌合,保持される。また、取付孔部5に、センサユニット1に接続された超音波受信手段R(の超音波振動子)が嵌合、保持される。なお、超音波発信手段T(超音波振動子)は、センサユニット1から駆動電圧を受けて振動されて、超音波を発信する。また、超音波受信手段R(超音波振動子)は、超音波を受けると電圧を発生し、発生された電圧はセンサユニット1によってA/D変換されて、後述する盗難防止の制御のための信号として用いられる。
【0022】
取付部材2の後面側に固定されたカバー部材3は、取付孔部4,5に対応した位置において、超音波通過用のスリット状の開口部10,11を有する。また、カバー部材3は、左右一対の車室照明ランプ12が組み込まれており、この照明ランプ12は、例えばプッシュ式のスイッチを兼用していて、押圧操作される毎に、ON、OFF(点灯、消灯)が繰り返される他、切換スイッチ13によって、常時消灯、常時点灯、ドアを開いたときにのみ点灯の3つものモードが切換えられる。
【0023】
図4は、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとが組み込まれた盗難防止用の制御系統例が示される。この図4において、Cはマイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)、20は警報器である。超音波発信手段Tから車室内に発信された超音波が超音波受信手段Rによって受信されるが、この受信状態は、車室内に動くものが存在しない定常状態と、動くものが存在する異常状態とで相違される。すなわち、車室内に動くものが存在すると、定常状態に比してドップラー効果が変化されるので、盗難の危険がある異常状態であると判断可能である。上記定常状態であるか異常状態であるかの判断は、コントローラCで行われる。
【0024】
コントローラCによって異常状態であると判断されると、警報器20が作動される。警報器20の作動としては、周囲に異常を伝達する手法であれば適宜のものを採択することができ、例えば大音量での警報音を発生させたり(警報器20としてスピーカを利用)、スモールランプを点滅させる等(警報器20として車幅灯を利用)、これらを組み合わせて作動させることもできる。なお、警報器20の作動条件として、車両Vのドアが全てロックされている状態であることが前提とされる。
【0025】
コントローラUにはさらに、外気温度を検出する外気温センサ21からの信号と、ドア開度センサ22からの信号が入力される。ドア開度センサ22は、後述するように、例えば、車室内空間を画成するサイドドアとしての運転席ドアの開度を検出するものである。ドア開度センサ22は、運転席ドアの全開と全閉のみを検出するものであってもよい。上記各センサ21、22は、後述する超音波発信手段Tの出力状態補正のために用いられる。なお、センサユニットUにコントローラCの機能を持たせて、センサユニットUによって直接的に警報器20の作動を制御するようにしてもよく、超音波発信手段Tの出力状態補正制御を行うようにしてもよい。
【0026】
カバー部材3に形成された開口部10,11について、図6を参照しつつ説明する。なお、図6では、説明の都合上、超音波発信手段Tとこれに対応したカバー部材3の開口部10を示してあるが、超音波受信手段Rについても同様に設定されている(このことは以下の実施形態において、超音波発信手段Tに着目して説明した場合についても同様である)。まず、超音波発信手段T(の軸線で、発信される超音波の中心線)に対して、開口部10がほぼ直交するように配設される。開口部10には、左右方向に間隔をあけて複数のフィン部(リブ部)30が配設されている。図6の例では、各フィン部30は、断面矩形状とされている。なお、フィン部30は、例えば合成樹脂によってカバー部材3と一体に形成されている(例えば射出成形)。
【0027】
上記複数のフィン部30は、略前後方向に伸びて、互いに平行配置とされている。フィン部30の上下方向長さ(図6紙面直角方向の長さ)は、超音波発信手段Tから発信される超音波の波長λよりも十分に長くされている(例えば20mm〜40mm)。超音波の周波数は、例えば20KHZ〜60KHZの範囲から選択され、実施形態では40KHZとされている)。また、フィン部30の幅(図6左右方向長さ)自体は、超音波の波長λの1/2(λ/2)未満とされている。
【0028】
超音波発信手段Tは、開口部10(フィン部30)に対して、近接配置されている。これにより、複数のフィン部30のうち左右方向(車幅方向)中央部に位置する複数のフィン部30は、超音波発信手段Tから見たときに、その投影幅がλ/2未満となり、超音波通過の妨げとならないものとなっている。つまり、超音波発信手段Tから発信された超音波は、開口部10の左右方向中間部を通してそのまま後方へと伝達されることになり、これがメインビームMとなる。
【0029】
一方、複数のフィン部30のうち、左右方向端部に位置する特定のフィン部30Lおよび30Rは、超音波発信手段Tとの距離が近いために、超音波発信手段Tから見たときの投影幅が、λ/2以上の幅を有するようにされている。これにより、超音波発信手段Tから発信された超音波は、特定のフィン部30Lで反射されて、右サイドロブSRを形成することになる。同様に、超音波発信手段Tから発信された超音波は、特定のフィン部30Rで反射されて、左サイドロブSLを形成することになる。このようにして、図5に示すような1つのメインビームMと、所望方向となる左右2つのサイドロブSL、SRとからなる検知エリアA(側面視では図1に示すように後下向きである)が形成されることになる。
【0030】
上記右サイドロブSLは運転席ドアに向かい(実施形態では右ハンドル車)、左サイドロブSLは助手席ドアに向かうようにされている。なお、サイドロブSL、SRは、超音波の反射を主としつつ回折、干渉も加わった結果として形成され、特に超音波発信手段Tから発信される周波数変化によって、その強度や方向が変化され易いものである。
【0031】
超音波受信手段Rおよびこれに対応したカバー部材3の開口部11についても、超音波発信手段T用と同様に設定されている。すなわち、図6に示す場合と同様に、開口部11が複数のフィン部30を有して、左右方向端部のフィン部のみが特定フィン部30L、30Rとされている。つまり、メインビームMの方向から開口部11へ入射される超音波は、そのまま前方へ伝達されて、超音波受信手段Rに入射(受信)されることになる。また、右サイドロブSR方向からの超音波が、左側の特定のフィン部30Lで反射されて、超音波受信手段Rに入射されることになる。さらに、左サイドロブSL方向からの超音波が、右側の特定のフィン部30Rで反射されて、超音波受信手段Rに入射されることになる。このように、超音波受信手段Rについても、超音波の入射方向が、メインビームMと左右一対のサイドロブSL、SRに対応したものとなるようにされるので、受信感度向上の上で好ましいものとなる。
【0032】
図7は、検知エリアを、平面視において、メインビームMについては図6の場合よりも若干左方を向くように設定され、これに対応して、メインビームMではカバーしにくい右方向については右サイドロブSRを設定すると共に、メインビームMでカバーされる左方向については左サイドロブSLを設定しないようにしてある。右サイドロブSRは、運転席ドアを向かうようになっている。
【0033】
図7のような検知エリアを設定する一例が、図8に示される。図8は、図6の場合と同様に、超音波発信手段Tに着目して示してある。まず、超音波発信手段Tは、その軸線が開口部10に対して傾斜するように設定されている(超音波発信手段Tからの超音波発信方向が、左後方を向くように設定されている。なお、開口部10に設定されたフィン部30は、図6の場合と同じである。
【0034】
図8の例では、超音波発信手段Tの軸線を開口部10(の面)に対して傾斜設定したことにより、複数のフィン部30のうち左側端部にあるフィン部が、特定のフィン部30Lとされる。すなわち、特定のフィン部30L以外のフィン部30は、超音波発信手段Tから見た投影幅がλ/2未満とされて、超音波発信手段Tの軸線方向にそのまま超音波が伝達されることになって、メインビームMを形成することになる。一方、特定のフィン部30Lにおいては、超音波発信手段Tから見たときの投影幅がλ/2以上とされて、この特定のフィン部30Lで反射されることになる。すなわち、超音波発信手段Tから発信された超音波は、特定のフィン部30Lで反射されて、右サイドロブSRを形成することになる。なお、超音波受信手段Rに対応したカバー部材3の開口部11のフィン部についても、上記の場合と同様にされている(右サイドロブSR方向からの超音波が特定のフィン部30Lで反射されて、超音波受信手段Rに入射(受信)される)。
【0035】
図9は、ほぼ図7のような検知エリアを設定する別の例を示す。図9の例では、超音波発信手段Tの軸線を開口部10(の面)と直交させてある(図6の場合と同じ)。また、フィン部30の断面形状が、略前後方向を長径とする略楕円形状とされている。すなわち、各フィン部30の厚さ(図9上下方向長さで、長径方向)は互いに等しくされる一方、左方側に向かうにつれて、その短径が大きくされて、左方側の2つのフィン部がほぼ円形に近い特定のフィン部30Lとされている。すなわち、超音波発信手段Tから見たときの投影幅が、特定のフィン部30Lにおいてはλ/2以上となるようにされ、これ以外のフィン部30の投影幅は、λ/2未満となるように設定されている。
【0036】
図10は、ほぼ図7のような検知エリアを設定する場合の別の例を示すものである。すなわち、開口部10に設定されたフィン部30の断面形状は、図6図8の場合と同様に、略矩形状とされている。複数のフィン部30のうち、左方側端に位置する特定のフィン部33Lを除いて、その指向方向は、超音波発信手段Tから発信される超音波の広がり方向と略同じとなるように設定され、しかも超音波発信手段Tからみた投影幅がλ/2未満となるように設定されている(メインビームMの形成)。
【0037】
一方、左方側端に位置する特定のフィン部33Lは、その指向方向が超音波発信手段Tから発信される超音波の広がり方向と交差するように傾斜されて、超音波発信手段Tからみた投影幅がλ/2以上となるようにされている。これにより、超音波発信手段Tから発信された超音波は、特定のフィン部30Lで反射されて、右サイドロブSRを形成することになる。
【0038】
図11は、平面視において、メインビームMが後方に向かう一方、右サイドロブSRが運転席ドアに向かうようにされた場合を示す(図5において左サイドロブSLが存在しない状態、あるいはほぼ図7のような状態)。また、図11では運転席ドア25が開いている状態が示される。
【0039】
右サイドロブSRは、運転席ドア25が閉じているときは、運転席ドア25で反射されて、超音波受信手段Rでの受信強度が十分に強いものとなる。この一方、運転席ドア25が開いているとき(特に全開時のように大きく開いているとき)は、右サイドロブ2Rは、運転席ドア25で全くあるいは殆ど反射されることがなく、このため超音波受信手段Rでの受信強度が弱くなる。
【0040】
運転席ドア25が閉じているときと開いているときとの間での超音波受信手段Rでの受信強度の差分は、侵入検知が要求される運転席ドア25が閉じているときのサイドロブSRの強度を示すことになる。つまり、上記差分があらかじめ設定された所定値よりも小さいときは、サイドロブSRの強度が弱まっているときである。サイドロブSRの強度が弱まっているときは、強度を強めるべく、超音波発信手段Tの出力状態、特に周波数が変更される。この周波数変更制御は、上記差分が大きくなるように行われる。
【0041】
超音波発信手段Tから発信される超音波の周波数変更に際しては、例えば、パルス信号で所望周波数を得る場合は、パルス信号のパルス数を変更すればよい。また、超音波発信手段Rが、電圧に応じて周波数が変更される形式のものであれば、駆動電圧を変更すればよい。
【0042】
図12は、開閉体として、車体後部を開閉するリアゲートドア26を利用したものである。すなわち、メインビームMが、車体後部にあるリアゲートドアに向かうように設定されていることから、リアゲートドア26が開いているときは、リアゲートドア26でのメインビームMの反射が全くあるいは殆ど生じないため、超音波受信手段Rでの受信強度が弱くなる。リアゲートドア26が閉じているときと開いているときとの間での超音波受信手段Rでの受信強度の差分は、侵入検知が要求されるリアゲートドア26が閉じいるときのメインビームMの強度を示すことになる。つまり、上記差分があらかじめ設定された所定値よりも小さいときは、メインビームMの強度が弱まっているときである。メインビームMの強度が弱まっているときは、強度を強めるべく、超音波発信手段Tの出力状態、特に周波数が変更される。この周波数変更制御は、上記差分が大きくなるように行われる。
【0043】
図13は、前述した周波数補正の制御例を示すフローチャートであり、以下このフローチャートについて説明する。なお、以下の説明でQはステップを示し、またフローチャートは図11に示すように運転席ドア25の開閉に基づいて超音波発信手段Tの出力状態を補正する場合を示してある。
【0044】
まず、Q1において、外気温センサ21で検出された外気温度が読み込まれる。この後、Q2において、あらかじめ作成された外気温度と温度補正値との関係を示すデータベース(コントローラUの記憶媒体に記憶されている)に基づいて、検出された外気温度に応じて超音波発信手段Tでの出力状態(出力される超音波の周波数)が補正される。
【0045】
Q2の後、Q3において、運転席ドア25が閉じているか否かが判別される(例えばドアスイッチによる検出)。このQ3の判別でYESのときは、Q4において、超音波受信手段Rでの受信強度が検出されて、その検出値が記憶(更新)される。
【0046】
Q4の後、あるいはQ3の判別でNOのときは、それぞれ、Q5において、運転席ドア25が開いているか否かが判別される(特に全開、あるいは右サイドロブSRが殆ど反射しない開度以上の検出)。このQ5の判別でYESのときは、Q6において、超音波受信手段Rでの受信強度が検出されて、その検出値が記憶(更新)される。
【0047】
Q6の後、あるいはQ5の判別でNOのときは、それぞれ、Q7において、運転席ドア25が閉じているときと開いているときとの両方について、受信強度の記憶値が存在するか否かが判別される。このQ7の判別でYESのときは、Q8において、運転席ドア25が閉じているときの受信強度と運転席ドア25が開いているときの受信強度との差分(右サイドロブSRの強度に対応)が算出される。
【0048】
Q8の後、Q9において、右サイドロブSRの強度が低下しているか否か(前記差分があらかじめ設定された所定値以下であるか否か)が判別される。このQ9の判別でYESのときは、Q10において、上記差分が大きくなる方向に、超音波発信手段Tの出力状態(実施形態では発信される超音波の周波数)が補正される。
【0049】
前記Q7の判別でNOのとき、あるいはQ9の判別でNOのときは、それぞれ、Q1に戻る。なお、図12の場合は、リアゲートドア26の開閉に基づいて、メインビームMの強度変化に基づく周波数補正を行えばよい。
【0050】
図14は、超音波発信手段T、超音波受信手段Rにコーン(アンテナ)6あるいは7を設けた例を示し、このコーン6,7は、図4において破線で示される。なお、図3では、各コーン6,7を、末広がり状の円錐形状に形成されると共に、取付部材2を利用して構成するようにしてある。すなわち、取付部材2には、取付孔部4(つまり超音波発信手段T)に連なると共に後方が車室内に開口された発信用のコーン形成用凹部6が形成されている。同様に、取付部材2には、取付孔部5(つまり超音波受信手段R)に連なると共に後方が車室内に開口された受信用のコーン形成用凹部7が形成されている。このように、取付部材2は、超音波発信手段Tおよび超音波受信手段Rのコーンを兼用している。
【0051】
コーン6、7を用いることにより、超音波ビームを所望方向に指向させる上で好ましいものとなる。なお、コーン6,7は、前述した開口部10,11(に設定されたフィン部30、41,42)と離間させてもよいが、近接(当接を含む)させるのが好ましいものである。
【0052】
コーン6(コーン7についても同じ)の形状設定に際しては、次のような条件を満足するようにされている。すなわち、超音波発信手段Tの直径をD、コーン6の開口直径をL、コーン6の指向角度(広がり角度)をθ、超音波の波長をλとすると、次の(1)式を満足するようにされている。
【0053】
θ≦70×(λ/D)かつL≧2λ ・・・(1)
図15図16は、コーン6(コーン7についても同じ)、の変形例を示すものであり、断面を扁平な楕円形としてある。本例では、超音波の発信方向を、扁平な短径方向には狭めると共に、大きく広がる長径方向には広げることができ、またコーン6の長さを短くすることが可能となる。コーン6は、次のような条件を満足するように設定するのが好ましい。なお、Lは長径方向の開口幅であり、Hはコーン6の軸線方向長さであり、nは整数(1,2,3・・・・)である。
【0054】
θ≧70×(λ/D)かつL≧2λかつH=n×λ/2・・・(1)
サイドロブを形成する場合、コーン6(7についても同じ)の形状を工夫することにより行うことができる。すなわち、図14の一点鎖線αあるいはβで示すように、コーン6のうち、サイドロブを形成する方向の周壁部をカットすればよい(図14では、右斜め上方を向かうサイドロブの形成となる)。
【0055】
ここで、前述した超音波発信手段Tの出力状態の補正は、主として自動車製造工場の出荷後を想定しているが、自動車工場出荷前の検査段階で行うようにしてもよい。すなわち、工場出荷前の検査工程において、検査員が例えば運転席ドア25を開閉して、ドア開時と閉時との間での超音波受信手段Rでの受信強度の差分が所定値以上であることが確認されたときに、検査合格とすることもできる。
【0056】
超音波発信手段Tから発信される超音波の周波数を例えばマイクによってモニタして、周波数変化があった場合に、その補正を行うことも可能である。超音波の車室内での反射量を、ドア等の開閉体の動きによって生じるドップラー信号を利用して、車室内での超音波の反射量を直接的に検出することも可能である。すなわち、開閉体の動きによって生じるドップラー信号の周波数とその大きさをモニタして、周波数が所定範囲内にあるときに、そのドップラー信号の大きさだけで超音波の車室内での反射量を検出することができる。
【0057】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。超音波発信手段Tを複数設けてもよく、超音波受信手段Rを複数設けてもよい。また、超音波発信手段Tの数と超音波受信手段Rの数とが相違していてもよいものである。超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとの設置位置は適宜選択できるものであり、例えば、フロントウインドガラスの上部位置、リアウインドガラスの上部位置、車室内後端部のルーフ部、リアパッケージトレイ上、インストルメントパネル上面等々、適宜選択でき、また超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとを離れた場所に設置するようにしてもよい(例えば、超音波発信手段Tを車室内前端部におけるルーフ部に設置し、超音波受信手段Rを車室内後端部のルーフ部に設置する等)。超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとは、互いに近接配置しておくことが、超音波発信方向と超音波受信方向とを一致させる上で好ましく、また制御系を含めて関連部品を集中配置する等の上で好ましいものとなる。また、メインビームと所望方向のサイドロブとの向きが、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとで互いに同一方向となるように設定することにより、発信された超音波を効率的に受信する上で好ましいものとなる。
【0058】
コーンは、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとのいずれか一方のみに設けるようにしてもよい。超音波発信手段Tの出力状態の補正に用いる開閉体としては、助手席用サイドドア、後席用サイドドア、開閉式のサンルーフ等適宜選択できる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば自動車の盗難防止装置用として適用して好適である。
【符号の説明】
【0060】
V:車両
T:超音波発信手段
R:超音波受信手段
A:検知エリア
U:ユニット体
C:コントローラ
M:メインビーム
SR:右サイドロブ
SL:左サイドロブ
1:センサユニット
2:取付部材
3:カバー部材
4、5:取付孔部
10,11:開口部
20:警報器
25:運転席ドア(開閉体)
26:リアゲートドア(開閉体)
30:フィン部
30L、30R:特定のフィン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16