(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の色調補正フィルムは、透明基材フィルムの両面にそれぞれハードコート層、色調補正層がこの順に積層された構成である。すなわち、色調補正フィルムは、上から色調補正層(1)、ハードコート層(1)、透明基材フィルム、ハードコート層(2)、色調補正層(2)が順に積層した構成である。そのうえで、透明導電性フィルムでは、両色調補正フィルムの最表面、すなわち色調補正層上に、透明導電層として錫ドープ酸化インジウム層が積層される。
【0013】
以下に、色調補正フィルムの構成要素について順に説明する。
<透明基材フィルム>
透明基材フィルムはポリエステルフィルムからなり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂などを使用できる。透明基材フィルムの膜厚は通常25〜400μm程度、好ましくは25〜190μm程度である。なお、透明基材フィルムがPET樹脂で形成された場合、透明基材フィルムの屈折率は1.67である。
【0014】
<ハードコート層>
ハードコート層は、色調補正フィルム(及びこれを用いた透明導電性フィルム)の表面硬度を向上すると共に、所定の屈折率(詳細は後述する)に調整することで透過色の着色を抑え、且つ全光線透過率を向上することができる層である。なお、従来の透明導電性フィルムをタッチパネル用の電極として用いた場合、互いに貼り合わされる2枚の透明導電性フィルムがそれぞれ透明基材フィルムを有しているため、2枚の透明基材フィルムにより十分な強度が保証されていた。これに対し、本発明の透明導電性フィルムを透明電極として用いた場合、透明導電性フィルムは1枚しか用いられないため、透明基材フィルムは1枚になる。そのため、透明基材フィルムが2枚から1枚に減少することにより透明電極の強度が低下することが危惧されるが、本発明の透明導電性フィルムはハードコート層を有することによって十分な強度を保つことができる。
【0015】
ハードコート層は、金属酸化物微粒子と、活性エネルギー線硬化型樹脂と、光重合開始剤とを含むハードコート層用塗液を、活性エネルギー線(例えば紫外線、電子線)により硬化させた硬化物からなる。
【0016】
金属酸化物微粒子は、ハードコート層の屈折率を調整するために配合されるものである。このような金属酸化物微粒子としては、酸化チタンや酸化ジルコニウムが好ましい。酸化チタンや酸化ジルコニウムの屈折率は製法によって異なるが、1.9〜3.0であることが好ましい。金属酸化物微粒子は、ハードコート層中に45〜85wt%含まれる。金属酸化物微粒子の含有量が45wt%未満では、ハードコート層の屈折率が所定の範囲外となるため好ましくない。一方、金属酸化物微粒子の含有量が85wt%を超えると、塗膜に対する金属酸化物微粒子の相対量が多くなり、塗膜がもろくなるため好ましくない。
【0017】
また、金属酸化物微粒子の平均粒子径は、0.1μm以下であることが好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒子径が0.1μmよりも大きい場合、光の散乱が生じ白化する傾向にあり好ましくない。なお、本明細書において「金属酸化物微粒子の平均粒子径」とは、粒子径分布測定装置〔大塚電子(株)製、PAR−III〕を使用し、動的光散乱法により平均粒子径を測定することで求めた値である。
【0018】
活性エネルギー線硬化型樹脂は、ハードコート層のバインダーとなる。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、(メタ)アクリレートの単官能単量体、多官能単量体の中から1種又は2種以上が選択して用いられる。単官能単量体として具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール基含有(メタ)アクリル酸エステル等が好ましい。多官能単量体としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン変性アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」や、「(メタ)アクリロイル基」、「(メタ)アクリル系樹脂」も同様である。活性エネルギー線硬化型樹脂は、屈折率が1.4〜1.7であることが好ましい。
【0019】
活性エネルギー線硬化型樹脂は、ハードコート層中に10〜50wt%含まれる。活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量が10wt%未満では、塗膜に対する活性エネルギー線硬化型樹脂の相対量が少なく塗膜がもろくなるため好ましくない。一方、活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量が50wt%を超えると、ハードコート層の屈折率が所定の範囲外となるため好ましくない。
【0020】
光重合開始剤は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線によりハードコート層用塗液を硬化させて塗膜を形成する際の重合開始剤として用いられる。光重合開始剤としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。
【0021】
光重合開始剤は、ハードコート層中に1〜10wt%含まれる。光重合開始剤の含有量が1wt%未満では、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化が不十分となる。一方、光重合開始剤の含有量が10wt%を超えると、光重合開始剤が不必要に多くなり好ましくない。
【0022】
金属酸化物微粒子、活性エネルギー線硬化型樹脂、及び光重合開始剤の総和は、99〜100wt%である。これらの総和が99wt%以上100wt%未満の場合、塗面の均一性を向上するためにその他の添加物としてフッ素系やシリコン系のレベリング剤や、滑り性を付与する目的で、有機微粒子を1wt%以下添加することもできる。
【0023】
ハードコート層用塗液の溶媒は、この種の色調補正フィルム等において各層形成用の塗液に従来から使用されている公知のものであれば特に制限は無く、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系の溶媒が適時選択できる。
【0024】
ハードコート層は、金属酸化物微粒子及び活性エネルギー線硬化型樹脂をそれぞれ上記範囲で含むことによって、屈折率が1.63〜1.74になるように形成される。ハードコート層の屈折率がこの範囲外では、JIS Z 8729に規定されているL*a*b表色系における透過色のb*の値が大きくなってしまい、透明導電性フィルムの透過色の黄色味が明瞭に認識されるようになる。また、ハードコート層の乾燥硬化後の膜厚は0.4〜1.5μmであることが必要である。ハードコート層の膜厚が0.4μm未満では、表面硬度が不足する。一方、ハードコート層の膜厚が1.5μmより大きい場合は、熱処理後の反りを調整することが難しくなるとともに、不必要に厚くなり、生産性や作業性が低下するため好ましくない。
【0025】
本実施形態の色調補正フィルムは、2つのハードコート層、すなわちハードコート層(1)及びハードコート層(2)を有しているが、これら2つのハードコート層の膜厚及び屈折率は、上記範囲内にある限り相互に同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0026】
<色調補正層>
色調補正層は、ハードコート層の屈折率との相対関係によって、色調補正フィルムないし透明導電性フィルムの色調を補正(透過色の着色を抑制)し、更に、全光線透過率を調整する層である。色調補正層は、シリカ微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを混合してなる色調補正層用塗液を活性エネルギー線(例えば紫外線、電子線)により硬化させた硬化物からなる。
【0027】
シリカ微粒子は、色調補正層の屈折率を積極的に低減させるために配合されるものである。このようなシリカ微粒子としては、コロイダルシリカや中空シリカ微粒子が好ましい。コロイダルシリカ及び中空シリカ微粒子の屈折率は製法によって異なるが、1.25〜1.50であることが好ましい。シリカ微粒子は、色調補正層中に20〜90wt%含まれることが好ましい。シリカ微粒子の含有量が20wt%未満では、色調補正層の屈折率を所定の範囲(詳細は後述する)とすることが出来ない。一方、シリカ微粒子の含有量が90wt%より多いと、塗膜強度が弱くなる。
【0028】
また、シリカ微粒子の平均粒子径は、0.1μm以下であることが好ましい。シリカ微粒子の平均粒子径が0.1μmよりも大きい場合、光の散乱が生じ白化する傾向にあり好ましくない。なお、本明細書において「シリカ微粒子の平均粒子径」とは、粒子径分布測定装置〔大塚電子(株)製、PAR−III〕を使用し、動的光散乱法により平均粒子径を測定することで求めた値である。
【0029】
バインダーとして用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂は、屈折率が1.4〜1.7であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、ハードコート層で使用する活性エネルギー線硬化型樹脂と同種のものを使用することができる。色調補正層中の活性エネルギー線硬化型樹脂は5〜80wt%程度である。
【0030】
さらに、色調補正層は光重合開始剤も含む。当該光重合開始剤も、ハードコート層で使用する光重合開始剤と同種のものを使用すればよい。光重合開始剤は、ハードコート層中に1〜10wt%含まれることが好ましい。色調補正層における光重合開始剤の含有量が1wt%未満では活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化が不十分となり、10wt%を超えると不必要に多くなり好ましくない。色調補正層用塗液の溶媒も、ハードコート層で使用する溶媒と同種のものを使用すればよい。
【0031】
色調補正層は、シリカ微粒子及び活性エネルギー線硬化型樹脂をそれぞれ屈折率が1.32〜1.52となるように配合されることで形成される。色調補正層の屈折率が1.32未満の場合は、塗膜中の粒子の割合が多くなり、ヘイズ値が上昇してしまうため全光線透過率が低下する。また、色調補正層の屈折率が1.52より大きい場合は、JIS Z 8729に規定されているL*a*b表色系における透過色のb*の値が大きくなってしまい、透明導電性フィルムの透過色の黄色味が明瞭に認識されるようになる。また、色調補正層の乾燥硬化後の膜厚は10〜55nmであることが必要である。色調補正層の膜厚がこの範囲外では、b*の値が大きくなってしまい、透明導電性フィルムの透過色の黄色味の着色が明瞭に認識されるようになる。
【0032】
本実施形態の色調補正フィルムは、2つの色調補正層、すなわち色調補正層(1)及び色調補正層(2)を有しているが、これら2つの色調補正層の膜厚及び屈折率は、上記範囲内にある限り相互に同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0033】
<ハードコート層、色調補正層の形成>
ハードコート層は、透明基材フィルムにハードコート層用塗液を塗布した後に、活性エネルギー線照射により硬化することで形成される。色調補正層は、形成されたハードコート層上に色調補正層用塗液を塗布した後に、活性エネルギー線照射により硬化することで形成される。
【0034】
ハードコート層用塗液、色調補正層用塗液の塗布方法は特に制限されず、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法等公知のいかなる方法も採用できる。また、活性エネルギー線の種類は特に制限されないが、利便性等の観点から紫外線を用いることが好ましい。尚、各ハードコート層の密着性を向上させるために、予め透明基材フィルム表面にコロナ放電処理等の前処理を施すことも可能である。
【0035】
<透明導電性フィルム>
透明導電性フィルムは、色調補正フィルムの色調補正層上に錫ドープ酸化インジウム層を積層した構成である。すなわち、透明導電性フィルムは、上(表側)から錫ドープ酸化インジウム層(1)、色調補正層(1)、ハードコート層(1)、透明基材フィルム、ハードコート層(2)、色調補正層(2)、錫ドープ酸化インジウム層(2)が順に積層した構成である。
【0036】
<錫ドープ酸化インジウム層>
色調補正層の上に積層される錫ドープ酸化インジウム層(以下、ITO層と略すことがある)は透明導電層であり、ITO層の屈折率は色調補正層の屈折率よりも大きいことが好ましい。具体的には、屈折率が1.80〜2.20とする。屈折率がこの範囲を外れると、色調補正層との光学干渉が適切に作用しなくなるため、透明導電性フィルムの透過色が着色を呈し、全光線透過率も低下する。また、ITO層の膜厚は、5〜50nmとする。膜厚が5nmより薄い場合は、均一に成膜することが難しく、安定した抵抗が得られないため好ましくない。また、膜厚が50nmより厚い場合は、ITO層自身による光の吸収が強くなり、透過色の着色低減効果が薄れると共に、全光線透過率が小さくなる傾向があるため好ましくない。
【0037】
<錫ドープ酸化インジウム層の形成>
錫ドープ酸化インジウム層の製膜方法は特に限定されず、例えば蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法を採用できる。これらの中では、層の厚み制御の観点より蒸着法及びスパッタリング法が特に好ましい。なお、錫ドープ酸化インジウム層を形成した後、必要に応じて100〜200℃の範囲内でアニール処理を施して結晶化することができる。具体的には、高い温度で結晶化すると錫ドープ酸化インジウム層の屈折率は小さくなる傾向を示す。従って、錫ドープ酸化インジウム層の屈折率は、アニール処理の温度と時間を制御することで調整可能である。
【0038】
このような錫ドープ酸化インジウム層を備える透明導電性フィルムの透過光の着色は、JIS Z8729に規定されるLab表色系のb*で評価でき、好ましくは−2≦b*≦2、より好ましくは−1≦b*≦1である。b*>2の場合、透明導電性フィルムが黄色に着色して見えるため好ましくない。一方、b*<−2の場合、透明導電性フィルムが青色に着色して見えるため好ましくない。
【0039】
透明導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは86%以上である。全光線透過率が85%未満の場合、視認性が悪化するため好ましくない。また、透明導電性フィルムの表面硬度は、JIS K5600で規定される鉛筆硬度で、H以上であることが好ましい。鉛筆硬度がH未満の場合、透明導電性フィルムへ傷が入りやすいため好ましくない。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
〔ハードコート層用塗液の調製〕
ハードコート層用塗液として次の原料を使用し、各原料を下記表1に記載した組成で混合してハードコート層用塗液HC1−1〜HC1−5を調整した。なお、表1において屈折率以外の数値はwt%である。各原料としては、活性エネルギー線硬化型樹脂としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを使用した。光重合開始剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製 IRGACURE184(I−184)を使用した。金属酸化物微粒子として酸化ジルコニウム微粒子分散液(シーアイ化成(株)製 ZRMEK25%−F47)または酸化チタン微粒子分散液(シーアイ化成(株)製 RTTMIBK15WT%−N24)を使用した。溶媒としてイソプロピルアルコールを使用した。本試験では、ハードコート層を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤、及び金属酸化物微粒子を、これらの合計重量換算で重量比1:1の割合で溶媒と混合した。
【0042】
続いて、得られたハードコート層用塗液HC1−1〜HC1−5を用いて形成されるハードコート層の屈折率を測定した。その結果も表1に示す。なお、屈折率は下記に示す方法により測定した。
【0043】
<屈折率>
(1)屈折率が1.67のPETフィルム(商品名「A4100」、東洋紡績(株)製)上に、ディップコーター(杉山元理化学機器(株)製)により、各層用塗液をそれぞれ乾燥硬化後の膜厚で100〜500nm程度になるように層の厚さを調整して塗布した。
(2)乾燥後、紫外線照射装置(岩崎電気(株)製)により窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯を用いて、400mJの紫外線を照射して硬化した。硬化後のPETフィルム裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計(「FE-3000」、大塚電子(株)製)により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、下記に示すn-Cauchyの波長分散式(式1)の定数を求め、光の波長589nmにおける屈折率を求めた。
N(λ)=a/λ
4+b/λ
2+c (式1)
(N:屈折率、λ:波長、a、b、c:波長分散定数)
【0044】
【表1】
【0045】
〔色調補正層用塗液の調製〕
色調補正層用塗液として次の原料を使用し、各原料を下記表2に記載した組成で混合して、色調補正層用塗液C1−1〜C1−5を調製した。なお、表2において屈折率以外の数値はwt%である。各原料としては、シリカ微粒子として、日揮触媒化成(株)製 アクリル修飾中空シリカ微粒子 スルーリアNAU(屈折率1.26)、または扶桑化学工業(株)製 PL−1(屈折率1.46)を使用した。シリカ微粒子に対する比較例として、屈折率2.20の酸化ジルコニウム微粒子分散液(シーアイ化成(株)製 ZRMEK25%−F47)を使用した。活性エネルギー線硬化型樹脂として、日本化薬(株)製 DPHA(硬化後の屈折率1.52)、または日本合成化学工業(株)製 紫光UV−7600B(硬化後の屈折率1.51)を使用した。光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製IRGACURE907(I−907)を使用した。溶媒として、イソプロピルアルコールを使用した。本試験では、色調補正層を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤、及び微粒子成分(シリカ微粒子又は金属酸化物微粒子)を、これらの合計重量換算で重量比100:4000の割合で溶媒と混合した。
【0046】
得られた色調補正層用塗液C1−1〜C1−5を用いて形成される色調補正層の屈折率を、ハードコート層の屈折率測と同様の方法で定した。その結果も表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
(実施例1−1)
厚さ125μmのPETフィルムの一面に、ハードコート層用塗液(HC1−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層(1)を形成した。続いて、PETフィルムの他面にハードコート層用塗液(HC1−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層(2)を形成した。
【0049】
上記ハードコート層(1)上に、色調補正層用塗液(C1−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより色調補正層(1)を形成した。続いて、上記ハードコート層(2)上に、色調補正層用塗液(C1−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより色調補正層(2)を形成し、色調補正フィルム(S1−1)を作製した(下記表3を参照)。
【0050】
(実施例1−2〜実施例1−10)
ハードコート層、色調補正層をそれぞれ下記表3に記載した材料及び膜厚とした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S1−2〜S1−10)を作製した。
【0051】
【表3】
【0052】
(実施例2−1)
上記色調補正フィルム(S1−1)の色調補正層(1)上にインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、膜厚が20nmの錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)(1)を形成し、ついで、色調補正層(2)上にインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、膜厚が20nmの錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)(2)を形成し透明導電性フィルムを作製した。
【0053】
(実施例2−2〜実施例2−12)
下記表4に示す色調補正フィルムを用いて、錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を表4に記載した膜厚とした以外は、実施例2−1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。
【0054】
得られた各実施例2−1〜実施例2−12の透明導電性フィルムについて、ITO層の屈折率と、透明導電性フィルムの透過色b*、全光線透過率、及び鉛筆硬度を測定した。その結果も表4に示す。なお、これらの物性は、下記に示す方法により測定した。
<屈折率(ITO層)>
(1)屈折率が1.67のPETフィルム(商品名「A4100」、東洋紡績(株)製)上にインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行い、実膜厚20nmの透明導電層としての錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を形成し、下記実施例および比較例のそれぞれの条件でアニーリングを施し、透明導電性フィルムを作製した。
(2)上記透明導電性フィルム裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計(「FE-3000」、大塚電子(株)製)により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、上記(式1)を用いて、光の波長589nmにおける屈折率を求めた。
なお、各表(後述)に記載の各層の屈折率は、上記屈折率測定用サンプルから求めた屈折率である。
<透過色>
色差計(「SQ−2000」、日本電色工業(株)製)を用いて透明導電性フィルムの透過色b*を測定した。このb*は、JIS Z 8729に規定されているL*a*b表色系における値である。
<全光線透過率>
ヘイズメーター(「NDH2000」、日本電色工業(株)製)により透明導電性フィルムの全光線透過率(%)を測定した。
<鉛筆硬度>
透明導電性フィルムのITO層側をJIS K5600−1999に準拠して測定した。
【0055】
【表4】
【0056】
(比較例1−1)
厚さ125μmのPETフィルム上にハードコート層用塗液(HC1−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層を形成した。次に、ハードコート層上に、色調補正層用塗液(C1−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化することにより色調補正層を形成し色調補正フィルムを作製した。
【0057】
次に、色調補正フィルムの色調補正層上に、インジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行い透明導電層としての錫ドープ酸化インジウム層を形成し透明導電性フィルムを作製した。得られた透明導電性フィルム2枚を、透明性接着剤転写テープ[商品名:8146−2、住友スリーエム(株)製]を介してPETフィルム同士が面するように貼合し、比較例1−1の透明導電性フィルムを作製した。得られた透明導電性フィルムについて、ITO層の屈折率、透明導電性フィルムの透過色b*、全光線透過率、及び鉛筆硬度を上記方法で測定した。その結果を表5に示す。
【表5】
【0058】
(比較例2−1〜比較例2−6)
ハードコート層、色調補正層をそれぞれ下記表6に記載した材料及び膜厚とした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S’1−1〜S’1−6)を作製した。
【表6】
【0059】
(比較例3−1〜比較例3−7)
下記表7に示す色調補正フィルムを用いて、錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)をそれぞれ表7に記載した膜厚とした以外は、実施例2−1と同様にして透明導電性フィルムを作製し、得られた透明導電性フィルムについて、ITO層の屈折率、透明導電性フィルムの透過色b*、全光線透過率、及び鉛筆硬度を上記方法で測定した。その結果も表7に示す。
【0060】
【表7】
【0061】
表4の結果から、実施例2−1〜実施例2−12では、ハードコート層及び色調補正層、錫ドープ酸化インジウム層の屈折率と膜厚が本発明で規定される範囲に設定されていることから、透過色b*の値が小さく、透明導電性フィルムの着色を十分に抑え、更に、優れた全光線透過率を実現することが出来た。加えて、ハードコート層が積層されていることから、十分な硬度を有することが出来た。
【0062】
その一方、表5,7の結果から、比較例1-1、3−1〜3−5、3−7は、ハードコート層、色調補正層、錫ドープ酸化インジウム層の屈折率、及び膜厚のいずれかが本発明で規定される範囲外に設定されているため、透過色b*の値が大きく、透明導電性フィルムが着色する、若しくは、全光線透過率が低い結果となった。比較例3−6は、ハードコート層膜厚が本発明で規定される範囲よりも薄く設定されているため、硬度が弱い結果となった。